JP2002088260A - 樹脂組成物、フィルム及び成形方法 - Google Patents

樹脂組成物、フィルム及び成形方法

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JP2002088260A
JP2002088260A JP2000283822A JP2000283822A JP2002088260A JP 2002088260 A JP2002088260 A JP 2002088260A JP 2000283822 A JP2000283822 A JP 2000283822A JP 2000283822 A JP2000283822 A JP 2000283822A JP 2002088260 A JP2002088260 A JP 2002088260A
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weight
resin
film
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JP2000283822A
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English (en)
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Takahiko Sawada
貴彦 澤田
Katsuo Fushimi
勝夫 伏見
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 点状やスジ状の外観欠陥の発生や着色や変色
の発生が少なく、且つ、優れた透明性、優れた耐熱性、
良好な二次加工性等を兼備する、特に光学用途むけとし
て好適な成形品を得るに適する樹脂組成物、その樹脂組
成物からなるフィルム及びその樹脂組成物を用いる成形
方法を提供する。 【解決手段】 全光線透過率が88%以上、光弾性係数
の絶対値が1.0×10 -11 Pa-1以下、ガラス転移温
度が120〜200℃及び飽和吸水率が0.05〜1重
量%であり、且つ、含水率が0.05重量%未満とされ
ている熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対して、リン
系酸化防止剤0.01〜1重量部が添加されてなること
を特徴とする樹脂組成物、上記樹脂組成物から形成され
てなることを特徴とするフィルム及び光学用フィルムで
あることを特徴とする上記フィルム、並びに、上記樹脂
組成物を作製し、組成物の含水率が0.05重量%に到
達する前に該樹脂組成物の熱可塑成形を行うことを特徴
とする成形方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂組成物、フィ
ルム及び成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学用途、特に液晶表示素子部品に用い
られる樹脂成形品には、高い透明性、絶対値が小さい光
弾性係数、高い耐熱性、二次加工に必要な適度な吸水
性、点状やスジ状の外観欠陥が少ないこと、着色や変色
が少ないこと等が要求されている。尚、本発明で言う点
状やスジ状の外観欠陥とは、成形品の表面または内部に
認められる円形、楕円形、直線状、曲線状、不定形等の
欠陥を意味する。上記欠陥には、樹脂が熱劣化した結果
発生する、架橋生成物に由来するブツ、フィッシュア
イ、それらの凝集物等や、分解ガスに由来する成形品内
部の気泡、成形品表面の破泡等が包含される。また、本
発明で言う着色や変色とは、本来透明である成形品が黄
色から褐色に着色や変色することを意味する。上記着色
や変色には、樹脂の分解劣化に由来する着色や変色や、
例えばフェノール系酸化防止剤等の添加剤の分解劣化に
由来する着色や変色等が包含される。
【0003】高い透明性及び絶対値が小さい光弾性係数
を得るには結晶性樹脂よりも非晶性樹脂の方が有利であ
り、また、高い耐熱性を得るにはガラス転移温度が高い
樹脂の方が有利であるため、ガラス転移温度が高い非晶
性樹脂を成形して得られる樹脂成形品が特に上記用途に
は好適である。
【0004】ところが、一般に非晶性樹脂は、結晶性樹
脂に比較して溶融粘度が高いため、熱可塑成形を行う場
合に高温で成形する必要がある。特に、120〜200
℃程度の高いガラス転移温度を有する非晶性樹脂を用い
て、歪みの少ない光学用途むけ部品を熱可塑成形するた
めには、260℃以上の高温で成形する必要があるが、
260℃以上の高温の成形温度は樹脂の分解温度に近い
ため、樹脂の部分分解により、成形品に点状やスジ状の
外観欠陥が生じたり、着色や変色が生じるという問題点
がある。
【0005】一般に、熱可塑性樹脂が成形中に外観欠陥
を生じたり、着色や変色を生じるのを防止するために、
熱可塑性樹脂にフェノール系酸化防止剤を添加すること
が広く行われている。しかし、フェノール系酸化防止剤
の添加のみでは上記外観欠陥や着色や変色等の発生を十
分に防止することができないばかりか、樹脂の種類やフ
ェノール系酸化防止剤の種類によっては、却って成形品
の着色や変色が顕著になることもある。
【0006】また、フェノール系酸化防止剤とリン系酸
化防止剤とを併用して、その相乗効果により、成形品の
外観欠陥や着色や変色等の発生を防止することも行われ
ている。しかし、リン系酸化防止剤を併用しても、フェ
ノール系酸化防止剤に由来する成形品の着色や変色を防
止する効果はあるものの、成形品の外観欠陥の発生を十
分に防止することはできない。
【0007】このように、ガラス転移温度の高い熱可塑
性非晶性樹脂に単にフェノール系酸化防止剤やリン系酸
化防止剤を添加する従来技術では、点状やスジ状の外観
欠陥が少なく、着色や変色も少ない成形品を経済的に有
利な熱可塑成形法によって得ることは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点に鑑み、点状やスジ状の外観欠陥の発生や着色や
変色の発生が少なく、且つ、優れた透明性、優れた耐熱
性、良好な二次加工性等を兼備する、特に光学用途むけ
として好適な成形品を得るに適する樹脂組成物、その樹
脂組成物からなるフィルム及びその樹脂組成物を用いる
成形方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よる樹脂組成物は、全光線透過率が88%以上、光弾性
係数の絶対値が1.0×10-11 Pa-1以下、ガラス転
移温度が120〜200℃及び飽和吸水率が0.05〜
1重量%であり、且つ、含水率が0.05重量%未満と
されている熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対して、
リン系酸化防止剤0.01〜1重量部が添加されてなる
ことを特徴とする。
【0010】請求項2に記載の発明によるフィルムは、
上記請求項1に記載の樹脂組成物から形成されてなるこ
とを特徴とする。
【0011】請求項3に記載のフィルムは、上記請求項
2に記載のフィルムが光学用フィルムであることを特徴
とする。
【0012】また、請求項4に記載の発明による成形方
法は、全光線透過率が88%以上、光弾性係数の絶対値
が1.0×10-11 Pa-1以下、ガラス転移温度が12
0〜200℃及び飽和吸水率が0.05〜1重量%であ
る熱可塑性非晶性樹脂の含水率を0.05重量%未満と
した後に、該熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対し
て、リン系酸化防止剤0.01〜1重量部を添加して樹
脂組成物を作製し、組成物の含水率が0.05重量%に
到達する前に該樹脂組成物の熱可塑成形を行うことを特
徴とする。
【0013】本発明で用いられる熱可塑性非晶性樹脂
は、全光線透過率が88%以上であり、光弾性係数の絶
対値が1.0×10-11 Pa-1以下であり、ガラス転移
温度が120〜200℃であり、飽和吸水率が0.05
〜1重量%であることが必要であり、好ましくは、全光
線透過率が90%以上であり、光弾性係数の絶対値が
5.0×10-12 Pa-1以下であり、ガラス転移温度が
140〜180℃であり、飽和吸水率が0.1〜0.7
重量%である。
【0014】本発明で言う全光線透過率、光弾性係数、
ガラス転移温度及び飽和吸水率とは、それぞれ以下の方
法で測定される全光線透過率、光弾性係数、ガラス転移
温度及び飽和吸水率を意味する。
【0015】〔全光線透過率の測定方法〕ASTM D
1003に準拠して、熱可塑性非晶性樹脂を厚み3.2
mmのシートに成形し、ヘーズメーターを用いて、該成
形シートの全光線透過率を測定する。 [光弾性係数の測定方法〕複屈折測定装置を用いて、熱
可塑性非晶性樹脂の光弾性係数を測定する。 〔ガラス転移温度の測定方法〕示差走査熱量計(DS
C)を用いて、熱可塑性非晶性樹脂のガラス転移温度を
測定する。 〔飽和吸水率の測定方法〕ASTM D570に準拠し
て、上記成形シートを23℃の蒸留水中に1週間浸漬
し、浸漬前後の重量変化率を測定し、飽和吸水率を求め
る。
【0016】熱可塑性非晶性樹脂の上記全光線透過率が
88%未満であると、得られる樹脂組成物からなる成形
品を例えば液晶表示装置に搭載した時に輝度が不十分と
なることがある。
【0017】熱可塑性非晶性樹脂の上記光弾性係数の絶
対値が1.0×10-11 Pa-1を超えると、得られる樹
脂組成物からなる成形品を例えば液晶表示装置に搭載し
て、液晶表示装置の耐久試験を行った時にコントラスト
が低下することがある。
【0018】熱可塑性非晶性樹脂の上記ガラス転移温度
が120℃未満であると、得られる樹脂組成物からなる
成形品の耐熱性が不十分となって、例えば自動車搭載部
品として用いた場合に高温で収縮を起こすことがあり、
逆に200℃を超えると、得られる樹脂組成物の溶融粘
度が高くなりすぎて、成形加工が著しく困難となること
がある。
【0019】また、熱可塑性非晶性樹脂の上記飽和吸水
率が0.05重量%未満であると、得られる樹脂組成物
からなる成形品の透湿度が不足して、例えば湿式法によ
る貼り合わせ等の成形品の二次加工性が悪くなることが
あり、逆に1重量%を超えると、得られる樹脂組成物か
らなる成形品の湿度による寸法変化が大きくなって、反
り等の変形を生じることがある。
【0020】本発明で用いられる熱可塑性非晶性樹脂と
しては、上記のような諸特性を兼備するものであれば如
何なる熱可塑性非晶性樹脂であっても良く、例えば、特
開平1−240517号公報に開示されているような熱
可塑性非晶性樹脂が挙げられ、その具体例としては、例
えば、ジェイエスアール社製の商品名「アートンG」シ
リーズ等が挙げられる。これらの熱可塑性非晶性樹脂
は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用され
ても良い。
【0021】本発明においては、上記熱可塑性非晶性樹
脂の含水率が0.05重量%未満とされていることが必
要である。尚、本発明で言う含水率とは、以下の方法で
測定される含水率を意味する。 〔含水率の測定方法〕カールフィッシャー水分計を用い
て測定した水分量より含水率を求める。
【0022】熱可塑性非晶性樹脂の上記含水率が0.0
5重量%以上であると、後述するように、この樹脂に添
加されたリン系酸化防止剤が加水分解を起こして、酸化
防止剤としての本来の機能を消失することがある。
【0023】即ち、一般的に、リン系酸化防止剤は、含
水率の高い樹脂に添加されて、高温で加熱溶融された樹
脂と混練されると、樹脂中の水分により加水分解を起こ
して酸化防止剤としての本来の機能を消失する。しか
し、本発明においては、含水率が0.05重量%未満と
されている熱可塑性非晶性樹脂を用いるので、この樹脂
に添加されたリン系酸化防止剤は、加水分解を起こすこ
とがなく、酸化防止剤としての本来の機能を効果的且つ
持続的に発揮する。
【0024】本発明で用いられる熱可塑性非晶性樹脂
は、飽和吸水率が0.05〜1重量%であるので、一般
的には0.05重量%以上の含水率を有している。従っ
て、使用前に熱可塑性非晶性樹脂を乾燥して、その含水
率を0.05重量%未満とした状態で使用する。上記熱
可塑性非晶性樹脂の乾燥方法は、樹脂の乾燥に一般的に
用いられる公知の乾燥方法で良く、例えば、熱風乾燥機
を用いる場合、120℃なら2〜5時間程度、100℃
なら4〜8時間程度、80℃なら8〜24時間程度の乾
燥を行うことにより、熱可塑性非晶性樹脂の含水率を
0.05重量%未満とすることができる。
【0025】本発明の樹脂組成物においては、前記諸特
性を兼備し、且つ、含水率が0.05重量%未満とされ
ている熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対して、リン
系酸化防止剤0.01〜1重量部が添加されていること
が必要であり、好ましくは0.03〜0.5重量部であ
る。
【0026】熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対する
リン系酸化防止剤の添加量が0.01重量部未満である
と、リン系酸化防止剤を添加することによる効果を十分
に得られないことがあり、逆に1重量部を超えると、得
られる成形品にブラウンスポットや目脂等の新たな外観
欠陥が発生することがある。
【0027】本発明で用いられるリン系酸化防止剤とし
ては、例えば、ホスファイト系酸化防止剤やホスフォナ
イト系酸化防止剤等が挙げられ、その具体例としては、
例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホ
スファイト(例えば、チバスペシャルティケミカルズ社
製の商品名「イルガフォス168」、旭電化工業社製の
商品名「アデカスタブ2112」、共同薬品社製の商品
名「スミライザーP−16」、吉富ファインケミカル社
製の商品名「トミホス202」等)、ビス(2,4−ジ
クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイ
ト(例えば、旭電化工業社製の商品名「アデカスタブP
EP−45」等)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4
−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファ
イト(例えば、旭電化工業社製の商品名「アデカスタブ
PEP−36」等)、テトラキス(2,4−t−ブチル
フェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイル
ビスホスフォナイト(例えば、サンド社製の商品名「サ
ンドスタブP−EPQ」、チバスペシャルティケミカル
ズ社製の商品名「イルガフォスP−EPQ」等)、ビス
[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチ
ルフェニル]エチルエステル亜リン酸(例えば、チバス
ぺシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガフォス3
8」等)、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナ
イト(例えば、吉富ファインケミカル社製の商品名「G
SY−P101」等)、ビス(2,4−ジ−t−ブチル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(例え
ば、チバスぺシャルティケミカルズ社製の商品名「イル
ガフォス126」、旭電化工業社製の商品名「アデカス
タブPEP−24」等)等が挙げられる。これらのリン
系酸化防止剤は、単独で用いられても良いし、2種類以
上が併用されても良い。尚、上記リン系酸化防止剤は、
耐加水分解性の高い順に記載されている。
【0028】上記リン系酸化防止剤のなかでも、耐加水
分解性が高く、より少量の添加で経済性良く優れた効果
を得られることから、トリス(2,4−ジ−t−ブチル
フェニル)ホスファイトが特に好適に用いられる。
【0029】また、一般にリン系酸化防止剤の加水分解
は酸性領域において著しいので、同種のリン系酸化防止
剤が複数のメーカーから提供されている場合には、酸性
不純物の含有量が極力少ないものを選択して用いること
が好ましい。リン系酸化防止剤に含有される可能性のあ
る酸性不純物としては、例えば、ハロゲン原子を含む不
純物が挙げられる。
【0030】本発明の樹脂組成物には、主成分としての
前記熱可塑性非晶性樹脂及び酸化防止剤としての上記リ
ン系酸化防止剤以外に、本発明の課題達成を阻害しない
範囲で必要に応じて、内部滑剤、目脂防止剤、アンチブ
ロッキング剤、スリップ剤、離型剤、帯電防止剤、難燃
剤、着色剤、リン系酸化防止剤以外の酸化防止剤、熱安
定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種も
しくは2種以上が添加されていても良い。尚、上記添加
剤も酸性を示さないものを選択して用いることが好まし
い。
【0031】次に、本発明のフィルムは、上述した本発
明の樹脂組成物から形成されてなる。上記本発明のフィ
ルムは、如何なる用途にも好適に用いられるが、優れた
諸性能を兼備していることから、光学用フィルムとして
特に好適に用いられる。
【0032】次に、本発明の成形方法においては、先
ず、例えば熱風乾燥機を用いて、前記諸特性を有する熱
可塑性非晶性樹脂を含水率が0.05重量%未満となる
まで乾燥する。次に、含水率が0.05重量%未満とさ
れた熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対して、リン系
酸化防止剤0.01〜1重量部を添加して樹脂組成物を
作製する。次いで、上記樹脂組成物の作製後、組成物の
含水率が0.05重量%に到達する前に該樹脂組成物の
熱可塑成形を行うことにより、所望の成形品を得ること
ができる。
【0033】熱可塑性非晶性樹脂に対するリン系酸化防
止剤の添加方法としては、例えば、固体状態の熱可塑性
非晶性樹脂の所定量と粉末状態のリン系酸化防止剤の所
定量とを予め混合した後に、加熱して、両者を溶融混練
する方法を採っても良いし、加熱溶融された熱可塑性非
晶性樹脂の所定量に対して、粉末状態もしくは加熱溶融
状態または少量の有機溶剤で溶解もしくは希釈された状
態のリン系酸化防止剤の所定量を添加し、混練する方法
を採っても良いし、また、熱可塑性非晶性樹脂とリン系
酸化防止剤とからなるマスターバッチを予め作製してお
き、熱可塑性非晶性樹脂の所定量とこのマスターバッチ
の所定量とを混合した後に、加熱して、両者を溶融混練
する方法を採っても良いが、簡便で混練の均一性に優れ
ることから、マスターバッチ法を採ることが好ましい。
【0034】こうして作製された樹脂組成物は、その含
水率が0.05重量%に到達する前に熱可塑成形される
ことが好ましい。通常の雰囲気下に樹脂組成物を長時間
放置すると、樹脂組成物中の熱可塑性非晶性樹脂が吸水
もしくは吸湿して、樹脂組成物の含水率が0.05重量
%以上となり、樹脂組成物中においてリン系酸化防止剤
の加水分解が促進されて、リン系酸化防止剤を添加する
ことによる効果を十分に得られなくなることがある。従
って、作製後の樹脂組成物は可及的速やかに熱可塑成形
されることが好ましいが、例えば防湿包装や乾燥窒素ガ
ス雰囲気下での保管等の樹脂組成物の吸水もしくは吸湿
を防止する手段により、樹脂組成物の含水率を0.05
重量%未満の状態に維持できる場合には、樹脂組成物の
作製から熱可塑成形の実施までに待ち時間(保管時間)
があっても良い。
【0035】熱可塑成形の方法は、例えば、Tダイを備
えた押出成形機による押出成形法等の通常の熱可塑成形
法で良い。また、樹脂組成物は、一旦固体状態とされた
後に熱可塑成形されても良いし、加熱溶融状態のままで
連続的に熱可塑成形されても良い。
【0036】本発明の成形方法は、如何なる形状の成形
品の成形や如何なる用途むけの成形品の成形にも好適で
あるが、より高温で成形することが可能なことから、厚
みの薄いフィルムの成形やTダイを備えた押出成形機に
よる押出成形法等に特に好適である。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明するた
め以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみ
に限定されるものではない。
【0038】(実施例1)全光線透過率が93%、光弾
性係数が2.6×10-12 Pa-1、ガラス転移温度が1
71℃及び飽和吸水率が0.4重量%である熱可塑性非
晶性樹脂として、ジェイエスアール社製の商品名「アー
トンG6810」を用いた。上記「アートンG681
0」を液体クロマトグラフ法で分析したところ、フェノ
ール系酸化防止剤を0.2重量%検出したが、リン系酸
化防止剤は検出されなかった。また、上記「アートンG
6810」を25℃−60%RHの雰囲気下に放置した
後、含水率を測定したところ、含水率は0.22重量%
であった。熱風乾燥機を用いて、上記「アートンG68
10」を100℃で6時間乾燥した後、含水率を測定し
たところ、含水率は0.02重量%であった。
【0039】次に、乾燥直後の上記「アートンG681
0」100重量部に対して、リン系酸化防止剤としてト
リス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
(商品名「イルガフォス168」、チバスペシャルティ
ケミカルズ社製)0.1重量部を添加して樹脂組成物を
作製した後、金型を備えた押出成形機(装置名「ラボプ
ラストミル」、東洋精機社製)を用いて、320℃、滞
留時間5分の条件で上記樹脂組成物を押し出し、金型か
ら吐出されたストランドを切断して、樹脂組成物のペレ
ットを作製した。熱風乾燥機を用いて、上記ペレットを
100℃で6時間乾燥した後、含水率を測定したとこ
ろ、含水率は0.02重量%であった。
【0040】次いで、押出成形機「ラボプラストミル」
を用いて、上記ペレットを340℃で加熱溶融し、Tダ
イ金型に導いて押出成形を行い、厚み50μmのフィル
ムを得た。
【0041】(実施例2)リン系酸化防止剤として、ト
リス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
「イルガフォス168」0.1重量部の代わりに、ビス
(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペン
タエリスリトール−ジホスファイト(商品名「アデカス
タブPEP−36」、旭電化工業社製)0.1重量部を
添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂
組成物及びこの樹脂組成物のペレットを作製した。熱風
乾燥機を用いて、上記ペレットを100℃で6時間乾燥
した後、含水率を測定したところ、含水率は0.03重
量%であった。次いで、このペレットを用い、実施例1
の場合と同様にして、厚み50μmのフィルムを得た。
【0042】(比較例1)熱可塑性非晶性樹脂「アート
ンG6810」を、熱風乾燥することなく、含水率0.
22重量%の状態のままで用いたこと以外は実施例1の
場合と同様にして、樹脂組成物及びこの樹脂組成物のペ
レットを作製した。熱風乾燥機を用いて、上記ペレット
を100℃で6時間乾燥した後、含水率を測定したとこ
ろ、含水率は0.03重量%であった。次いで、このペ
レットを用い、実施例1の場合と同様にして、厚み50
μmのフィルムを得た。
【0043】(比較例2)実施例1で作製したペレット
を用い、熱風乾燥することなく、25℃−60%RHの
雰囲気下に24時間放置した後、含水率を測定したとこ
ろ、含水率は0.23重量%であった。次いで、このペ
レットを用い、実施例1の場合と同様にして、厚み50
μmのフィルムを得た。
【0044】(比較例3)比較例1で作製したペレット
を用い、熱風乾燥することなく、25℃−60%RHの
雰囲気下に24時間放置した後、含水率を測定したとこ
ろ、含水率は0.24重量%であった。次いで、このペ
レットを用い、実施例1の場合と同様にして、厚み50
μmのフィルムを得た。
【0045】実施例1及び実施例2、並びに、比較例1
〜比較例3で得たフィルムの外観を目視で観察して、直
径50μm以上の点状欠陥のフィルム1m2 あたりの個
数をカウントすると共に、スジ状欠陥の有無を確認し
た。その結果は表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の樹脂組成物
は、予め含水率を0.05重量%未満とした熱可塑性非
晶性樹脂の特定量に対して、リン系酸化防止剤の特定量
が添加されてなるので、樹脂組成物中のリン系酸化防止
剤は加水分解を受けることが殆どなく、優れた酸化防止
機能を継続的に発現する。従って、高温で成形を行った
場合でも、樹脂の熱分解に起因する点状やスジ状の外観
欠陥や着色や変色の発生が少ない。
【0048】また、上記熱可塑性非晶性樹脂は、特定の
全光線透過率、光弾性係数、ガラス転移温度及び飽和吸
水率を有しているので、優れた透明性、優れた耐熱性、
良好な二次加工性等を発現する。
【0049】即ち、本発明の樹脂組成物は、点状やスジ
状の外観欠陥の発生や着色や変色の発生が少なく、且
つ、優れた透明性、優れた耐熱性、良好な二次加工性等
を兼備する、特に光学用途むけとして好適な成形品を得
るに適する。
【0050】また、本発明のフィルムは、上記本発明の
樹脂組成物から形成されてなるので、上記優れた諸性能
を兼備するものであり、各種用途むけのフィルムとして
好適に用いられるが、なかでも光学用フィルムとして特
に好適に用いられる。
【0051】さらに、本発明の成形方法は、上記本発明
の樹脂組成物を作製した後に、組成物の含水率が0.0
5重量%に到達する前に該樹脂組成物の熱可塑成形を行
うので、上記優れた諸性能を兼備する成形品を簡便且つ
経済的に有利に得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29L 7:00 B29L 7:00 11:00 11:00 Fターム(参考) 4F071 AA02 AA86 AC15 AE05 AF10 AF29 AF30 AH19 BB06 BC01 BC10 4F207 AB06 AE10 AF15 AG01 AH73 KA01 KA17 KL84 4J002 AA011 EW066 EW116 FD076 GP00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全光線透過率が88%以上、光弾性係数
    の絶対値が1.0×10-11 Pa-1以下、ガラス転移温
    度が120〜200℃及び飽和吸水率が0.05〜1重
    量%であり、且つ、含水率が0.05重量%未満とされ
    ている熱可塑性非晶性樹脂100重量部に対して、リン
    系酸化防止剤0.01〜1重量部が添加されてなること
    を特徴とする樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の樹脂組成物から形成さ
    れてなることを特徴とするフィルム。
  3. 【請求項3】 光学用フィルムであることを特徴とする
    請求項2に記載のフィルム。
  4. 【請求項4】 全光線透過率が88%以上、光弾性係数
    の絶対値が1.0×10-11 Pa-1以下、ガラス転移温
    度が120〜200℃及び飽和吸水率が0.05〜1重
    量%である熱可塑性非晶性樹脂の含水率を0.05重量
    %未満とした後に、該熱可塑性非晶性樹脂100重量部
    に対して、リン系酸化防止剤0.01〜1重量部を添加
    して樹脂組成物を作製し、組成物の含水率が0.05重
    量%に到達する前に該樹脂組成物の熱可塑成形を行うこ
    とを特徴とする成形方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005314522A (ja) * 2004-04-28 2005-11-10 Sumitomo Chemical Co Ltd 熱可塑性エラストマー組成物
US7078149B2 (en) * 2002-06-12 2006-07-18 Ritek Corporation Optical recording medium and method for making the same
JP2015155951A (ja) * 2014-02-20 2015-08-27 日東電工株式会社 光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物およびそれを用いた光導波路、ならびにフレキシブルプリント配線板

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