JP2002075960A - 炭素系材料のエッチング方法 - Google Patents

炭素系材料のエッチング方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特別な加熱を必要とせず、極めて良好な平坦
性及びマスク選択比を保ち、且つマスク形状に忠実な形
状及び高いエッチング速度を得ることができる炭素系材
料のエッチング方法を提供する。 【解決手段】 ダイヤモンド上のエッチングすべき部分
以外の領域をSi酸化物からなるマスクにより被覆し、
対向電極又は反応容器を基準として陰極に500V以
上、好ましくは1000V以上の高周波電位を印加し
て、O2、Ar、又はO2及びArの混合ガスから生成し
たプラズマにダイヤモンドを曝してダイヤモンドをエッ
チングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイヤモンド、ダ
イヤモンド状炭素、グラファイト、フラーレン、カーボ
ンナノチューブ、カルビン、炭素成形物、及び有機物等
の炭素系材料のエッチング方法に関し、特に、トランジ
スタ、ダイオード、各種センサ等の電子装置、表面弾性
波素子及び電子放出素子、これらの基板、X線窓等の光
学関連材料、並びに装飾品等に使用される炭素系材料の
エッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、耐熱性が優れており、
バンドギャップが大きく(5.47eV)、通常は絶縁
体であるが、不純物ドーピングにより半導体化できる。
また、絶縁破壊電圧及び飽和ドリフト速度が大きく、誘
電率が小さいという優れた電気特性を有する。このよう
な特徴により、ダイヤモンドは高温・高周波・高電界用
の電子デバイス・センサ材料として期待されている。
【0003】また、ダイヤモンドのエネルギーギャップ
が大きいことを利用した紫外線等の短波長領域に対応す
る光センサ及び発光素子への応用、熱伝導率が大きく、
比熱が小さいことを利用した放熱基板材料への応用、物
質中において最も硬いという特性を利用した表面弾性波
素子への応用、並びに高い光透過性及び屈折率を利用し
たX線窓及び光学材料への応用等が研究されている。更
に、ダイヤモンドは、工具の耐摩耗部にも使用されてお
り、装飾品としても使用されている。
【0004】これらの種々の応用において、ダイヤモン
ド製品を作製するためには、その用途に応じてダイヤモ
ンド表面を所望の形状に加工、又はパターニングする必
要がある。しかし、ダイヤモンドは固体の中で最も硬度
が高く、また、化学的にも極めて安定であるため、物理
的エッチング及び化学的エッチングが困難である。
【0005】例えば、電子デバイスを作製し高特性を得
るためには、1mm以下、更には1μm以下の微細なパ
ターンを選択的にエッチングして回路等をパターニング
する必要があり、例えば、K. Kobashi, S. Miyauchi,
K. Miyata, K. Nishimura, Journal of Materials Rese
arch, Vol.11, No.11(1996)p,2744、及びK. Miyata eta
l, IEEE Trans. Electron Devises, Vol.42, No.11(199
5)P.2010に記載されている。
【0006】ダイヤモンドは炭素でできているため可燃
性である。このため、酸素が存在する雰囲気ではダイヤ
モンドをエッチングすることができる(例えば、特開昭
63−220524号公報)。酸素雰囲気でダイヤモン
ドをエッチングする場合、600℃以上の高温において
は、単に熱的に酸素ガスと反応し、エッチングされる。
しかしながら、このような熱的過程による場合、ダイヤ
モンドはその結晶面及び転位等結晶中の欠陥等によりエ
ッチング速度が異なるため、エッチング表面には走査型
顕微鏡で確認できる程度の大きな凹凸ができてしまうと
いう問題点がある。
【0007】一方、もう少しマクロに見れば、ダイヤモ
ンドは等方的にエッチングされる特徴があるため、たと
え部分的にSiO2等のマスクで覆ってもマスクの端部
に露出する被エッチング材料の側面においてもエッチン
グされ、マスクのパターンを正確に投影した形状を得る
ことができないという問題点がある。
【0008】そこで、特開平6−132254号公報で
は、不活性ガス及び酸素原子を含む混合ガスを使用して
ダイヤモンドを選択的にプラズマエッチングする方法に
おいて、不活性ガス及び酸素原子を含む混合ガスの混合
比(2×[O]/[不活性ガス+酸素原子を含むガ
ス])を0.01乃至20体積%に限定する方法が開示
されている(従来例1)。これにより、エッチング表面
が平坦で且つエッチング選択比が実用的に十分大きいエ
ッチングが可能となる。プラズマを発生させる気体の混
合比の範囲を規定する理由として、酸素が多いとマスク
材料とダイヤモンドとのエッチング選択比が高いが、表
面に凹凸が発生しやすく、酸素が少ないと表面が平坦に
なるがエッチング選択比が低くなることが挙げられてい
る。即ち、表面の平坦性と選択比とはトレードオフの関
係があり、酸素と不活性ガスとの混合比を上記の範囲に
することによって、実用的な妥協条件を得ているもので
ある。従来、上記の混合ガス比範囲外では実用的なエッ
チング方法が見出されていない。
【0009】また、特開平6−275575号公報で
は、酸素を含むガスのプラズマとSiO2マスクとを使
用して、ECR(電子サイクロトロン共鳴(electron c
yclotron resonance))プラズマによりダイヤモンドを
エッチングする方法が開示されている(従来例2)。従
来例2のエッチング方法においては、基板温度を100
乃至400℃に上げることにより実用的なエッチング速
度を得ている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例
1のダイヤモンドのエッチング速度については、実施例
1に記載されているように、混合ガスの混合比が0.0
1乃至20体積%の範囲でエッチング速度が極大となる
が、その速度は最大でも22nm/分程度となってい
る。即ち、ダイヤモンドを1μmエッチングするため
に、最短で45分もの長い時間を要してしまう。
【0011】プラズマ中に長時間、被エッチング材料を
曝すことは、被エッチング材の温度上昇及び破損等の影
響が顕著化する。ダイヤモンドは、一般的に熱に強い
が、例えば、ダイヤモンドに付随して金属電極又は絶縁
層を形成して電子デバイスを作製する場合等には、耐熱
性が低い金属又は絶縁膜を形成した後にエッチングを行
うと、エッチング時間が長時間になるほど、それらが変
性、破損、汚染及び剥離等を引き起こしやすい。金属又
は絶縁膜を形成する前にエッチングを行えばよいが、そ
の場合、製造プロセスの自由度が著しく損なわれてしま
う。従って、従来例1のようにエッチング速度が最大で
22nm/分程度では、エッチング速度が不十分な場合
がある。
【0012】また、従来例2のエッチング方法において
は、基板温度が100℃程度と低いときにはエッチング
が促進されず、実用的なエッチング速度は得られない。
即ち、エッチング速度を上げるためには、数百℃まで基
板温度を上げなければならず、この場合、熱の影響によ
り、従来例1と同様な問題点がある。
【0013】このように、従来例1及び2の技術におい
ては、平坦性を確保するという方法が開示されているも
のの、そのためにエッチング速度が犠牲になっており、
十分ではないという問題点がある。
【0014】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、特別な加熱を必要とせず、極めて良好な平
坦性及びマスク選択比を保ち、且つマスク形状に忠実な
形状及び高いエッチング速度を得ることができる炭素系
材料のエッチング方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係る炭素系材料
のエッチング方法は、被エッチング材上のエッチングす
べき部分以外の領域を酸素プラズマ耐性材料からなるマ
スクにより被覆する工程と、対向電極又は反応容器を基
準として陰極に500V以上の高周波電位を印加し、酸
素原子を含有する気体から生成したプラズマに前記被エ
ッチング材を曝して前記被エッチング材をエッチングす
る工程と、を有することを特徴とする。
【0016】本発明においては、陰極に500V以上、
好ましくは1000V以上の高周波電位を印加すること
によって負電位によりイオンのエネルギを高めることが
できる。これにより、基板を加熱することなく、良好な
エッチング選択比及び平坦性を保ちつつエッチング速度
を速くすることができる。
【0017】なお、前記プラズマ耐性材料は、酸化物又
は酸化物が主成分として含有された混合物とすることが
できる。
【0018】また、前記酸化物が、Be、B、Al、S
i、Ti、Zn、Mg、Zr、Nb、In、Sn、H
f、Ta、及びWからなる群から選択された1種以上の
元素を含む酸化物、又はこの酸化物を含む混合物とする
ことができる。
【0019】更に、前記気体は、O2ガス及び不活性ガ
スからなる群から選択された少なくとも1種の気体を含
有することが好ましい。この場合、前記不活性ガスは、
Arガスであることが好ましく、前記気体は、この気体
全体に対するAr分子の割合であるAr分子比が0.3
乃至0.9であることが好ましい。
【0020】更にまた、前記気体がO2ガスを含む場合
は、O2分子の割合であるO2分子比が0.2以上である
ことが好ましい。また、前記気体がCO2ガスを含む場
合は、前記気体全体に対するCO2分子の割合であるC
2分子比が0.2以上であることが好ましい。更に、
前記気体がCO2ガス及びO2ガスを含む場合は、前記気
体全体に対する(CO2+O2)分子の割合である(CO
2+O2)分子比が0.2以上であることが好ましい。
【0021】また、前記気体の気圧が133mPa以
上、前記プラズマの電子密度が5×1010cm-3以上で
あることが好ましい。
【0022】更に、前記プラズマが誘電結合プラズマ又
は有磁場マイクロ波プラズマとすることができ、更に、
そのプラズマを維持するための投入電力が70W以上、
好ましくは100W以上であることが好ましい。
【0023】更にまた、前記被エッチング材料は、ダイ
ヤモンド、ダイヤモンド状炭素、グラファイト、フラー
レン、カーボンナノチューブ、カルビン、炭素成形物、
及び有機物からなる群から選択された1種以上の材料と
することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】上述の課題を解決すべく本願発明
者等が鋭意実験研究を行った結果、酸素を含有する気体
及び/又は不揮発性ガスからなる気体から発生したプラ
ズマにダイヤモンドを曝して行うダイヤモンドのエッチ
ング加工方法において、対向電極又は反応容器を基準と
して陰極に500V以上の高周波電位を印加することに
より、エッチング速度が増加し、エッチングの選択比を
高くとることができることを見出した。これは、プラズ
マによるエッチングがイオンを使用したエッチングであ
るため、負電位によりイオンのエネルギを高めることに
よってエッチング速度が高まるためである。
【0025】本発明は、ダイヤモンド、ダイヤモンド状
炭素、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチュー
ブ、カルビン、炭素成形物、及び有機物等の炭素系材料
のエッチング方法であるが、以下、炭素系材料として特
にダイヤモンドのエッチング法を例にとり、エッチング
条件及びその数値限定理由について説明する。なお、周
知の通り、ダイヤモンドは、炭素の結晶であり、以下に
説明するエッチング法が主に酸素による化学的反応をそ
のメカニズムとすると考えられる。従って、本発明方法
はダイヤモンド以外の他の炭素系材料、例えば、ダイヤ
モンド状炭素、グラファイト、フラーレン、カーボンナ
ノチューブ、カルビン、炭素成形物、及び有機物等につ
いても、ダイヤモンドと同様のメカニズムを有するもの
であると考えられ、適用可能である。
【0026】次に、本発明の実施例について添付の図面
を参照して詳細に説明する。図1(a)乃至(c)並び
に図2(a)及び(b)は、本実施例のダイヤモンドの
エッチング方法をその工程順に示す図であり、右側は平
面図、左側は夫々A−A乃至E−E線による断面図であ
る。
【0027】本実施例においては、プラズマ耐性材料か
らなる酸化膜マスク形成用エッチング工程及びダイヤモ
ンドエッチングの2段階のエッチング工程からなる。先
ず、図1(a)に示すように、エッチング対象であるダ
イヤモンド1の表面上に、ダイヤモンドのエッチング用
マスクとして使用するためのシリコン酸化膜2を形成す
る。シリコン酸化膜2としては、例えばテトラエトキシ
シラン(TEOS)を原料として、化学気相堆積(CV
D:chemical vapor deposition)法により形成するこ
とができる。また、エッチングマスク材としては、例え
ばBe、B、Al、Si、Ti、Zn、Mg、Zr、N
b、In、Sn、Hf、Ta、又はW等の酸化物を使用
することもできる。続いて、シリコン酸化膜2の上にフ
ォトレジスト3を塗布する。
【0028】次いで、図1(b)に示すように、電子ビ
ームリソグラフィによりフォトレジスト3をパターニン
グしマスク3aを形成する。このマスク3aはシリコン
酸化膜2のパターニング用マスクとして使用する。
【0029】次に、図1(c)に示すように、フォトレ
ジストマスク3aをマスクにシリコン酸化膜2をエッチ
ングする。エッチングは、例えばCF4及びArの混合
気体とその誘電結合プラズマ(ICP:Inductively Co
upled Plasma)とによるドライエッチング法により行う
ことができる。
【0030】そして、図2(a)に示すように、パター
ニングされたシリコン酸化膜マスク2aをダイヤモンド
1の選択的エッチング用マスクとして使用し、ダイヤモ
ンド1のエッチングを行い、最後に、図2(b)に示す
ように、シリコン酸化膜マスク2aを除去する。
【0031】本発明においては、ダイヤモンド上のエッ
チングすべき部分以外の領域をシリコン酸化膜等のプラ
ズマ耐性材料からなるマスクにより被覆し、酸素原子を
含む気体、不活性ガス、又は酸素原子を含む気体及び不
活性ガスの混合ガスを含有する気体から生成したプラズ
マにダイヤモンドを曝すことにより、ダイヤモンドをエ
ッチングする。その際、対向電極又は反応容器を基準と
して、陰極となる基板側に500V以上、好ましくは1
000V以上の高周波電位を印加することを特徴として
いる。
【0032】先ず、500V以上、好ましくは1000
V以上の高周波電位(陰極電位(V pp))を印加する理
由について説明する。負電位はダイヤモンドを設置する
サセプタに付加される高周波電力により調整することが
できる。即ち、印加する高周波電力に対して、ダイヤモ
ンドを載置するサセプタ側で測定したサセプタ電圧によ
り、その負電位を制御することができ、この負電位によ
りプラズマ中のイオンのエネルギを高めてエッチング速
度を速くすることができる。このサセプタ電圧により、
負電位を制御できる理由を以下に説明する。
【0033】サセプタ電圧が振幅(Vpp/2)の高周波
で変化すると、正電位の場合は、プラズマ中に存在する
電子がサセプタ側へ流入する。これに対し、サセプタが
負電位の場合は、電子がサセプタ側から排斥され、逆に
プラズマ中の正のイオンがサセプタ側に流入する。高周
波領域では、電子の移動速度がイオンの移動速度に比べ
て遙かに速いため、正負対称な電圧変化であればプラズ
マ中の正負のバランスが崩れてしまう。実際には、この
正負バランスを保つためにサセプタ側の電位が自ずと負
方向にバイアスされる。この負電位が自己バイアス(V
dc)と呼ばれる。
【0034】ダイヤモンドをエッチングするイオンは、
(自己バイアスVdc+サセプタ電圧の振幅(Vpp
2))で表される電圧により加速され、ダイヤモンド表
面に衝突、エッチングを行う。これらVdc及びVppは下
記数式1の関係を満たす。
【0035】
【数1】
【0036】ここで、Te:電子温度、M:原子核質
量、m:電子質量である。従って、陰極電位Vppを規定
することにより、自己バイアスVdcが決定され、結果的
にエッチングを行うイオンエネルギが決まることにな
る。
【0037】本願発明者等は、この陰極電位Vppの値に
対してエッチング性能を種々調査し、極めて効果が高い
陰極電位Vpp値の領域を見出した。即ち、対向電極又は
反応容器を基準として陰極にVpp=500V以上の高周
波電位を印加することにより、飛躍的にエッチング速度
が増大することを知見した。
【0038】図3は、横軸に陰極の高周波電位Vppをと
って、縦軸にエッチング速度をとって、ダイヤモンドを
エッチングした場合の本発明の効果を示すグラフ図であ
る。ICPエッチング装置を使用し、プラズマ維持のた
めの投入RF(radio frequency)電力は100W、プ
ラズマを生成する気体として、O2100%を使用し、
チャンバ内の気圧を266mPaとした。図3には、下
記数式2及び数式3に示す夫々二次近似曲線及び一次近
似直線を併記した。
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】いずれにせよ、図3においては、エッチン
グ速度が急激に増加するのは陰極電位(Vpp)が500
V以上であり、電位が増加するほどエッチング速度が増
加する。また、エッチング速度が少なくとも10nm/
分以上を実用的なエッチング速度とすると、上記の条件
においては、1000V以上とすればよい。なお、数式
2及び数式3に示す夫々二次近似曲線及び一次近似直線
において、yはエッチング速度(nm/分)、xは陰極
の高周波電位Vpp(V)、a1、b1、c1は、近似パラ
メータである。図3においては、a1=1.4×1
-5,b1=0.044、c1=−33であった。
【0042】このように、陰極電位Vppは500V未満
ではイオンによるエッチングの促進効果が低いため、十
分なエッチング速度が得られない。一方、陰極電位Vpp
を500V以上に高くすると、垂直方向に強くエッチン
グを促進させることができ、異方性が高いエッチングを
することができる。更に、陰極電位Vppが500V以上
では、結晶方位、結晶欠陥及び粒界の存在に関係なく、
エッチング速度が均一になる。即ち、エッチング前の基
材表面の凹凸をそのまま引き継いだエッチング後表面を
得ることができる。
【0043】また、本発明においては、ダイヤモンド又
はこれを設置する基板の温度は特に加熱する必要がな
い。例えば、陰極電位Vppを500V未満の電位とする
か又は意図的に電位を与えない場合でも、ダイヤモンド
又はこれを載置する基板を加熱し50℃以上の温度にす
ればエッチング速度が増大する。しかしながら、加熱と
いう工程パラメータが増すことにより、装置の複雑化、
工程時間の延長、及び条件設定の不安定性等の悪影響が
生じ、また、垂直形状の鈍化等も生じる。しかし、50
0V以上においては、ダイヤモンドを加熱しなくても、
電位を高くするに従いエッチング速度は増大し、且つよ
り垂直形状に近づく。以上の理由により、陰極にVpp
500V以上の高周波電位を印加する。更に、陰極電位
ppはより高くすることが好ましく、Vpp=1000V
以上がより好ましい。
【0044】更に、本発明のエッチング方法では、垂直
方向に異方性が高いエッチングができることを利用し
て、エッチングしたくない部分をマスクすることによ
り、マスクパターンに忠実に選択的エッチングを行うこ
とができる。マスク材料としては、プラズマ耐性が高い
材料を被覆して使用することにより、マスクがエッチン
グされにくく、被エッチング材料のみを選択的にエッチ
ングすることができる。なお、全面的にエッチングする
場合には、当然マスクを使用する必要はない。また、何
らかの理由により選択比が低いマスクを使用せざるを得
ない場合等、マスクが全てエッチングされてしまうこと
があるが、このような場合でも、本発明方法では、ダイ
ヤモンドは垂直にエッチングされるため、マスクがなく
なった時点の凹凸を忠実に引き継いだままエッチングす
ることができ、パターンの角が丸みを帯びたり、鈍化し
たりすることがほとんどないという利点がある。
【0045】次に、本発明で使用することができるマス
ク材について説明する。マスクとしては、実質SiO2
からなるSi酸化物を使用することにより、SiO2
成膜、リソグラフィ及びエッチング等において、既に確
立されたSi集積回路作製プロセス及び装置を格別な工
夫することなく流用することができる。この点で、マス
ク材料はSi酸化物が便利であり、且つ高精度でパター
ン形成することができる。Si酸化物が酸素プラズマ耐
性がある要因は、最大酸化数まで酸素が結合しているこ
とが最も大きいと考えられる。従って、マスク材として
酸化物又は酸化物を主成分として含有する混合物が使用
できる。このようなマスク材としては、例えば、Be、
B、Al、Si、Ti、Zn、Mg、Zr、Nb、I
n、Sn、Hf、Ta、及びWの酸化物等は比較的安定
で容易に入手できるという利点がある。これら酸化物の
うちの1種、若しくは2種以上の複数種の混合物、これ
らの酸化物を含有する混合物、又は混合酸化物等の派生
物を使用してもよい。
【0046】次に、本発明のエッチング加工を行うため
のプラズマを生成する気体について説明する。本発明に
おいては、上述した如く、酸素原子を含む気体、不活性
ガス、又は酸素原子を含む気体及び不活性ガスの混合ガ
スからなる気体から生成したプラズマを使用するが、プ
ラズマを発生させる気体としてO2を使用すると、入手
しやすく、安定且つ無害で、他の元素が混入しておら
ず、プロセスパラメータを単純化できるという利点があ
る。O2が100%の気体から生成したプラズマは、S
iO2マスクと最も高い選択比が得られ、場合によって
は十分に速いエッチング速度を得ることができる。しか
しながら、選択比が高いことは、酸化物マスクがほんの
少しでも残っていればその下は全くエッチングされない
ため、柱状にエッチング残り、即ち残渣ができてしまう
場合がある。酸化物マスク形成プロセスにおいては、上
述した如く、先ず、ダイヤモンド上の全面に酸化物膜を
成膜し、その上にフォトレジストを塗布する。その後、
フォトリソグラフィによりレジストをパターニングし、
ドライエッチングで酸化物膜を選択的にエッチングする
という方法で行うことができる。この際、最後のドライ
エッチング工程で、ダイヤモンドを露出させるべき領域
の酸化物膜を少しでも残した場合、O2のみを使用した
プラズマでエッチングするとダイヤモンドの残渣が発生
する。これは、上記酸化物膜のドライエッチングを完全
に行えばよいのであるが、実際には困難である。
【0047】本願発明者等は、酸化物マスクを使用して
ダイヤモンドを選択的にエッチングするような場合は、
ダイヤモンドエッチング時にプラズマを発生させる気体
としてO2にArを10%以上混入させれば、ダイヤモ
ンドの残渣の発生を防止することができることを知見し
た。その理由は、Ar添加により、酸化物のエッチング
速度が上がるため、エッチング滓として残った酸化物マ
スクもダイヤモンドエッチング工程初期に取り去られる
ためである。これは、ダイヤモンドエッチング時にO2
にAr等の不活性ガスを混入した混合気体から発生させ
たプラズマを使用しても、Si酸化物マスクのエッチン
グ速度はそれほど上がらないためダイヤモンドのエッチ
ング用マスクとしては十分使用でき、且つ、マスク形成
時に残った程度のSi酸化膜であれば、ダイヤモンドと
共にエッチング除去できることを示している。なお、酸
素に混入する不活性ガスとしては、Arだけでなく他の
不活性ガスでもよい。
【0048】本願発明者等は、ダイヤモンドのエッチン
グ速度は酸素と不活性ガスとの比によって変化するが、
特にArを使用する場合、エッチング時の気体全体に対
するAr分子の比(以下、Ar分子比という)が0.3
乃至0.9の範囲のとき、エッチング速度が最も大きい
極大値となることを知見した。また、気体全体に対する
2分子の比(以下、O2分子比という)は、陰極にVpp
=500V以上の高周波電位を印加することにより、O
2分子の比がどのような値でも大きなエッチング速度及
び選択比が得られるが、特に、O2分子比を0.2以上
とすることにより、より高速にエッチングできると共に
更に高い選択比が得られることを知見した。このO2
子比の範囲は、従来、ダイヤモンドのエッチングにはエ
ッチング表面が平坦でなくなるため不適であるとされて
いた範囲であり、本願発明が従来技術と最も異なる点で
ある。
【0049】また、Ar及びO2の両方を使用する場合
は、上記の範囲を同時に満たす範囲、即ち、気体中の分
子比O2/(O2+Ar)を0.2乃至0.7とすること
により、ダイヤモンドのエッチング速度が速く、良好な
エッチング選択比を得ることができる。
【0050】図4は、横軸にエッチングに使用したO2
及びArからなる混合気体の分子比(O2/(O2+A
r))をとり、縦軸にダイヤモンド及びSiO2のエッ
チング速度及び選択比をとって、ダイヤモンドをエッチ
ングした場合の本発明の効果を示すグラフ図である。I
CPエッチング装置を使用し、チャンバ内の気圧は13
30mPa、陰極にはVpp=1900Vの高周波電位、
投入電力は100Wとした。図4に示すように、ダイヤ
モンドのエッチング速度は、O2/(O2+Ar)の値に
よって変化し、その値が0.1乃至0.7の範囲にエッ
チング速度が最も速くなる極大値が存在することがわか
る。一方、O2/(O2+Ar)の値が大きくなるほど選
択比、即ちダイヤモンドとSiO2とのエッチング速度
比が大きくなることがわかる。特に、O2/(O2+A
r)の値が0.2を境に急激に選択比が大きくなること
がわかる。
【0051】更に、ダイヤモンドのエッチングのメカニ
ズムとして、酸素との化学反応が最も有力である。従っ
て、プラズマ中では分子が解離しているため、O2以外
でも、酸素原子を含有する気体であれば、酸素と類似の
効果を示す。この場合、分子中の酸素原子の割合が大き
い方がより効果が高く、例えば、CO2は、CO又はH2
Oより酸素原子の割合が大きいのでその効果が高い。C
2を混入させ、O2を混入させない場合には、気体全体
に対するCO2分子比が0.2以上とし、CO2及びO2
の両方を混入させる場合には、気体全体に対する(CO
2+O2)の分子比が0.2以上とすることにより、O2
単独の場合と同様の効果が得られる。但し、CO2には
炭素原子が含まれているため、O2単独の場合と比較す
ると、エッチング速度が低下する。
【0052】図5及び図6は、夫々分子比(O2/(O2
+Ar))=1及び0.5のプラズマによるエッチング
後のダイヤモンド表面の形状を示す電子顕微鏡写真であ
る。なお、写真はエッチング面に対して斜め方向から見
たものであり、被エッチング材料として、単結晶ダイヤ
モンドを使用した。酸化物マスクとしては厚さ300n
mのSiO2膜を使用した。ダイヤモンドのエッチング
には、ICPエッチング装置を使用し、陰極には、Vpp
=1900Vの高周波電位を印加し、チャンバ内の気圧
は2.66Pa、投入電力は100Wとし、7分間のエ
ッチングを行った後の状態を示す。SiO2膜が垂直に
エッチングされなかったため、SiO2マスクの表面側
からダイヤモンドに接する側にかけて側壁が斜め方向に
広がり、エッチング面に直交する面において、SiO2
マスクの断面形状が台形状になった。にも拘わらず、図
5及び図6のいずれの場合においても、ダイヤモンドが
夫々SiO2マスク40及び50のダイヤモンドに接す
る面の形状にほぼ忠実にエッチングされており、夫々エ
ッチング後のダイヤモンドの壁41及び51がダイヤモ
ンドのエッチング面に対してほぼ垂直になっている。更
に、SiO2マスク40、50はほとんどエッチングさ
れていなかった。また、図5及び図6に示すように、夫
々エッチング後のダイヤモンド表面42及び52は、極
めて平坦であった。但し、図5では、柱状の残渣43が
見られ、図6では見られない。図5におけるダイヤモン
ドの残渣43は、SiO2マスクをエッチングで形成す
る際、僅かに残ったSiO2の残渣がダイヤモンドエッ
チング時にSiO2に対してほとんどエッチング作用が
ないO2のみのガスでエッチングを行ったため、そのま
ま不必要なマスクとなり、ダイヤモンドもエッチングさ
れずに残ったものと考えられる。図6では、同様に僅か
にSiO2残渣が存在していたが、ダイヤモンドエッチ
ング時にArを混合することにより、SiO2のエッチ
ング速度がやや大きくなり、ダイヤモンド初期に一掃さ
れたものと考えられる。
【0053】また、本願発明者等は、エッチングチャン
バ内の気圧が高いほどエッチング速度が速くなることを
知見した。図7は、横軸にチャンバ内の気圧をとり、縦
軸にエッチング速度をとり、ダイヤモンドをエッチング
した場合の本発明の効果を示すグラフ図である。ICP
エッチング装置を使用し、プラズマ投入RF電力は10
0W、プラズマを生成する気体としてO2100%を使
用し、陰極をVpp=1900Vの高周波電位とした。図
7に示すように、チャンバ内の気圧が高くなるほどエッ
チング速度が上がることがわかる。また、実用的なエッ
チング速度を得るためには、少なくとも133mPa以
上の圧力が必要なことがわかる。なお、図7には、下記
数式4に示す近似式で近似した曲線を記入した。
【0054】
【数4】
【0055】ここで、yはエッチング速度(nm/
分)、xは気圧(Pa)、a2は近似パラメータで他の
エッチング条件によって異なるが、図5においては、a
2=27であった。エッチング速度は、陰極の高周波電
位Vpp、投入電力、及び酸素混入比に拘わらず、チャン
バ内の気圧が上がるに従いエッチング速度が上がる傾向
があった。上記の近似式の理論的な解明はできていない
が、単純な式にも拘わらず実験結果の再現性がよいこと
から、何らかのメカニズムを示すものと考えられる。
【0056】このように、チャンバ内の気圧を133m
Pa以上とすることにより、実質的に十分なエッチング
速度を得ることができる。なお、気圧を高くするほどエ
ッチング速度は速くなるが、気圧を高くして、例えば、
プラズマが発生しにくくなるか若しくはプラズマを維持
しにくくなるか、又は被エッチング材の電位を安定に保
てない等の副次的影響が生じない気圧にする必要があ
る。
【0057】次に、プラズマを発生方法について説明す
る。発生させたプラズマの電子密度を5×1010cm-3
以上とすることにより、ダイヤモンド表面に多くの酸素
活性種を付与することができ、それ以下の場合より、加
工速度を高めることができる。
【0058】このようなプラズマ発生方法としては、誘
電結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasm
a)がある。ICPでは高電子密度が得られることは公
知であるが、本願発明者等は、ICPにはその他の効果
として、O2分子比が1の気体でも容易にプラズマを点
灯、維持できること、及びVpp=1500V以上の高周
波電位を維持することが容易であることを知見した。そ
の理由はプラズマとチャンバ内壁の金属部分を離すこと
ができることが要因と考えられる。
【0059】ICPプラズマ発生装置には、例えば、ス
テンレス製箱形真空チャンバに、直径30cmの円形石
英窓を備え、更にその外側に備えた1回巻きのコイルに
マッチング回路を接続し、13.56MHzを印加でき
る構造の装置を使用することができる。図8は、ICP
エッチング装置を示す概略断面図である。図8に示すよ
うに、ICPエッチング装置100は、電気的に接地さ
れたステンレス製チャンバ11を有し、このチャンバ1
1は石英窓12、排気管13、及びステンレスのサセプ
タ支持台14が設けられている。
【0060】サセプタ支持台14の内部には、冷媒循環
パイプ15が設けられ、サセプタの温度が調整される。
このサセプタ支持台14上には電気的絶縁層16を介し
てアルミニウム等の材料からなり、陰極となるサセプタ
17が設けられ、更にサセプタ17上には静電チャック
18が搭載されている。静電チャック18は、銅板19
aの周囲が絶縁ポリイミドフィルム19bに覆われて形
成されている。ダイヤモンド板等の被エッチング材料2
0は、サイズが小さい場合には基板電位を均一にするた
め、シリコンウエハ等の導電性基板21上に接着し、こ
の導電性基板21を静電チャック18上に載置する。静
電チャック18以外の部分はプラズマに曝されないよう
にするため、アルミナ等の絶縁板22で覆われている。
【0061】銅板19aには、高圧直流電源23が接続
され、そのクーロン力により導電性基板21は静電チャ
ックに吸引保持されると共にサセプタ17と同一の温度
になる。サセプタ17には、マッチング回路25及びブ
ロッキングコンデンサ26を介して、高周波電源24が
接続され、高周波電源24からの高周波電力、例えば4
00kHz、1kWがマッチング回路25及びブロッキ
ングコンデンサ26を介して供給される。これにより、
陰極であるサセプタ17に電位を発生させる。
【0062】石英窓12には、ほぼ1回転のループ状ア
ンテナ27が設置され、一方側の端子には、インピーダ
ンス調整用キャパシタ28及びマッチング回路29を介
して13.56MHzの高周波電源30が接続され、高
周波電力がアンテナ27に供給されるようになってい
る。アンテナ27の他方側の端子は接地されている。
【0063】チャンバ11には、複数のガス導入管パイ
プ34が設けられ、酸化物マスクエッチング用ガスとし
て使用するCF4及びAr等、並びにダイヤモンド等を
エッチングするために使用するO2及びAr等の各種ガ
スボンベ31がレギュレータ(図示せず)、マスフロー
コントローラ32、及びバルブ33等を介して接続され
ている。これにより、各ガスボンベ31のガス流量を制
御し、チャンバ11内に所定の混合ガスが均一に導入さ
れる。
【0064】アンテナ27に供給された高周波電力は、
石英窓12を介して誘電結合によりチャンバ11内に供
給されて石英窓12と基板21との間にほぼ均一にプラ
ズマが発生し、保持される。その後、サセプタ17に高
周波電位が印加され、最適条件にてダイヤモンド等の被
エッチング材料がエッチングされる。このICPエッチ
ング装置100は、ガス及びその他の条件を変えること
により、ダイヤモンド等のエッチングと共にSiO2
の酸化物マスクのエッチングにも使用することができ
る。
【0065】また、他のプラズマ発生方法として、有磁
場マイクロ波プラズマを使用することもできる。有磁場
マイクロ波プラズマには、電子サイクロトン共鳴(EC
R)プラズマが含まれる。ECRプラズマでは、ICP
に比べ、1500V以上の高周波電位を安定に維持する
ことは可能であるが難しく、更に基板保持等のためのサ
セプタが高電界となるためか、絶縁破壊を起こす場合が
ある。しかし、500V以下の高周波電位では、5nm
/分以下のエッチング速度しか得られないが、ICP同
等に、電位を500V以上にすることにより、エッチン
グ速度を速くすることができる。なお、被エッチング材
料の温度を100℃以上にするとエッチング速度の増加
が認められたが、良好な垂直形状が得られず、金属を積
層した場合などには金属が剥離しやすくなる。従って、
特に高速のエッチング速度を必要としない場合等に限っ
ては、有磁場マイクロ波プラズマ又はECRプラズマを
使用することができる。
【0066】また、本願発明者等は上述のようなプラズ
マ発生装置で発生させたプラズマを維持するための投入
電力においては、70W以上が好ましく、より好ましく
は100W以上とすることを知見した。図9は、横軸に
プラズマ維持のために投入したRF電力をとり、縦軸に
ダイヤモンドのエッチング速度をとって、ダイヤモンド
をエッチングした場合の本発明の効果を示すグラフ図で
ある。プラズマを生成する気体としてO2が100%の
気体を使用し、チャンバ内の気圧を665mPa、陰極
を1900Vの高周波電位とした。図9に示すように、
エッチング速度は投入電力に対してほぼ線形的に上昇す
ることがわかる。更に、エッチングのしきい値はおよそ
70W、実用的なエッチング速度は100W以上で得ら
れることがわかる。なお、図9には、下記数式5に示す
一次式で表される直線を記入した。
【0067】
【数5】
【0068】ここで、yはエッチング速度(nm/
分)、xは投入電力(W)、a3及びb3は近似パラメー
タであり、他のエッチング条件によって変化するが、図
9においてはa3=0.66.b3=−47であった。
【0069】このように、投入電力が70W未満ではエ
ッチング速度が遅くなるが、70W以上とすることによ
り、エッチング速度を大きくすることができる。プラズ
マへの投入電力が大きいほど効果が大きいが、実用的な
エッチング速度を得るためには、100W以上であるこ
とがより好ましい。実用的なエッチング速度が得られる
投入電力は、他のパラメータ、例えば、気圧、被エッチ
ング材電位、気体混合比、及びチャンバの大きさ等によ
って多少異なるが、100W以上とすることが好まし
い。
【0070】
【実施例】以下、本発明方法に従って、実際にダイヤモ
ンドをエッチングした結果について説明する。
【0071】第1実施例 図3に示すICPエッチング装置を使用し、図1及び図
2に示す方法により、ダイヤモンドをエッチングした。
ダイヤモンドを選択エッチングするためのマスクとして
シリコン酸化膜を使用し、プラズマを発生させる気体と
してはO2及び/又はArを使用し、これらの混合気体
の流量、チャンバ内の気圧、投入電力、及び陰極電位
(Vpp)を種々変更してエッチング速度を測定した。こ
れらのエッチング条件及びエッチング速度を下記表1に
示す。比較例として、特開平6−132254号公報に
記載されている装置と原理的に同等な平行平板型エッチ
ング装置を使用して、上述の如く、ICPエッチング装
置を使用した実施例と同様にして混合気体の流量、チャ
ンバ内の気圧、投入電力、及び陰極電位(Vpp)を種々
変更してエッチング速度を測定した。これらのエッチン
グ条件及びエッチング速度を下記表2に示す。なお、本
実施例で使用した装置には被エッチング材を室温に保つ
能力を持つ冷却機構を備えていない。また、平行平板型
エッチング装置を使用した比較例では、いずれも電子密
度は5×1010cm-3未満であった。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】全てのダイヤモンド(試料)において、陰
極電位(Vpp)が1000V以上と高いため、ダイヤモ
ンドを加熱することなく、良好なエッチング速度が得ら
れた。また、得られたエッチング後のダイヤモンド表面
は平坦であった。
【0075】一方、比較例においては、比較例試料N
o.27を除いて、いずれの条件においても、ダイヤモ
ンドのエッチング速度が低く、実用的なエッチング速度
が得られないことがわかった。比較例試料No.27で
は、20nm/分のエッチング速度が得られているが、
この理由は、30分もの長時間エッチングで被エッチン
グ材の温度が550K以上に上がっていたことから、熱
的なエッチング過程が支配的になったと考えられる。前
述したように、温度を上げると、確かにエッチング速度
も上がるが、ダイヤモンド以外の材料が試料に成膜され
ている等の場合、熱膨張率の違いによる剥離等の重大な
悪影響を及ぼすことになる。特開平6−132254号
公報においても、30分以上のエッチングが示されてい
るが、被エッチング材冷却機構は示されておらず、この
時間では相当に温度が上がっていることが推測される。
いずれにせよ、本発明によるエッチング方法の優位性は
明らかである。
【0076】第2実施例 上述の第1実施例と同様にして、図3に示すICPエッ
チング装置を使用し、図1及び図2に示す方法により、
ダイヤモンドをエッチングした。ダイヤモンドを選択エ
ッチングするためのマスクとしてシリコン酸化膜を使用
し、プラズマを発生させる気体を種々変更してエッチン
グ速度を測定した。混合気体の流量、チャンバ内の気
圧、投入電力、及び陰極電位(Vpp)のエッチング条件
及びエッチング速度を下記表3に示す。なお、表3に示
す、Lは{(含酸素ガス分子中の酸素原子の数/2)×
流量}を混合する全ての含酸素ガスについて計算したも
のの合計であり、Mは不活性ガスの総流量である。即
ち、O2/(O2+Ar)の計算に準じて、O2+Ar以
外のガス系では、混合ガス中の酸素原子2個分をO2
して換算し、また、Ar以外の不活性ガスもArの分子
の数に含めて換算した。
【0077】
【表3】
【0078】全てのダイヤモンド(試料)において、良
好なエッチング速度が得られた。
【0079】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
特別な加熱を必要とすることがなく、エッチング後の表
面が極めて平坦で且つ高いマスク選択比を保つと共に、
マスク形状に忠実な形状で、高いエッチング速度を得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(c)は、本発明の実施例のダイヤ
モンドのエッチング方法をその工程順に示す図であり、
右側は平面図、左側は夫々A−A乃至C−C線による断
面図である。
【図2】(a)及び(b)は、同じく、本発明の実施例
のダイヤモンドのエッチング方法を示す図であり、図1
(a)乃至(c)の次の工程をその工程に示す図であっ
て、右側は平面図、左側は夫々D−D及びE−E線によ
る断面図である。
【図3】横軸に陰極の高周波電位Vppをとって、縦軸に
エッチング速度をとって、ダイヤモンドをエッチングし
た場合の本発明の効果を示すグラフ図である。
【図4】横軸に混合気体の分子比(O2/(O2+A
r))をとり、縦軸にダイヤモンド及びSiO2のエッ
チング速度及び選択比をとって、ダイヤモンドをエッチ
ングした場合の本発明の効果を示すグラフ図である。
【図5】分子比(O2/(O2+Ar))=1のプラズマ
によるエッチング後のダイヤモンド表面の形状を示す図
面代用写真である(倍率50000倍)。
【図6】分子比(O2/(O2+Ar))=0.5のプラ
ズマによるエッチング後のダイヤモンド表面の形状を示
す図面代用写真である(倍率40000倍)。
【図7】横軸にチャンバ内の気圧をとり、縦軸にエッチ
ング速度をとって、ダイヤモンドをエッチングした場合
の本発明の効果を示すグラフ図である。
【図8】ICPエッチング装置を示す概略断面図であ
る。
【図9】横軸にプラズマ維持のために投入したRF電力
をとって、縦軸にダイヤモンドのエッチング速度をとっ
て、ダイヤモンドをエッチングした場合の本発明の効果
を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1;ダイヤモンド 2;シリコン酸化膜 2a、3a;マスク 3;フォトレジスト 11;チャンバ 12;石英窓 13;排気管 14;サセプタ支持台 15;冷媒循環パイプ 16;電気的絶縁層 17;サセプタ 18;静電チャック 19a;銅板 19b;絶縁ポリイミドフィルム 20;被エッチング材料 21;導電性基板 22;絶縁板 23;高圧直流電源 25;マッチング回路 26;ブロッキングコンデンサ 24;高周波電源 27;ループ状アンテナ 28;インピーダンス調整用キャパシタ 29;マッチング回路 30;高周波電源 34;ガス導入管パイプ 31;ガスボンベ 32;マスフローコントローラ 33;バルブ 100;ICPエッチング装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木下 隆 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 Fターム(参考) 5F004 AA04 AA05 BA20 CA02 CA03 CA06 DA00 DA01 DA23 DA26 DA30 DB00 EA04

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被エッチング材上のエッチングすべき部
    分以外の領域を酸素プラズマ耐性材料からなるマスクに
    より被覆する工程と、対向電極又は反応容器を基準とし
    て陰極に500V以上の高周波電位を印加し、酸素原子
    を含有する気体から生成したプラズマに前記被エッチン
    グ材を曝して前記被エッチング材をエッチングする工程
    と、を有することを特徴とする炭素系材料のエッチング
    方法。
  2. 【請求項2】 前記プラズマ耐性材料は、酸化物又は酸
    化物が主成分として含有された混合物であることを特徴
    とする請求項1に記載の炭素系材料のエッチング方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化物が、Be、B、Al、Si、
    Ti、Zn、Mg、Zr、Nb、In、Sn、Hf、T
    a、及びWからなる群から選択された1種以上の元素を
    含む酸化物、又はこの酸化物を含む混合物であることを
    特徴とする請求項2に記載の炭素系材料のエッチング方
    法。
  4. 【請求項4】 前記気体は、O2ガス及び不活性ガスか
    らなる群から選択された少なくとも1種の気体を含有す
    ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記
    載の炭素系材料のエッチング方法。
  5. 【請求項5】 前記不活性ガスは、Arガスであること
    を特徴とする請求項4に記載の炭素系材料のエッチング
    方法。
  6. 【請求項6】 前記気体は、この気体全体に対するAr
    分子の割合であるAr分子比が0.3乃至0.9である
    ことを特徴とする請求項5に記載の炭素系材料のエッチ
    ング方法。
  7. 【請求項7】 前記気体は、O2ガスを含むものであっ
    て、前記気体全体に対するO2分子の割合であるO2分子
    比が0.2以上であることを特徴とする請求項4乃至6
    のいずれか1項に記載の炭素系材料のエッチング方法。
  8. 【請求項8】 前記気体は、CO2ガスを含むものであ
    って、前記気体全体に対するCO2分子の割合であるC
    2分子比が0.2以上であることを特徴とする請求項
    1乃至6のいずれか1項に記載の炭素系材料のエッチン
    グ方法。
  9. 【請求項9】 前記気体は、CO2ガス及びO2ガスを含
    むものであって、前記気体全体に対する(CO2+O2
    分子の割合である(CO2+O2)分子比が0.2以上で
    あることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に
    記載の炭素系材料のエッチング方法。
  10. 【請求項10】 前記気体の気圧が133mPa以上で
    あることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に
    記載の炭素系材料のエッチング方法。
  11. 【請求項11】 前記プラズマの電子密度が5×1010
    cm-3以上であることを特徴とする請求項1乃至10の
    いずれか1項に記載の炭素系材料のエッチング方法。
  12. 【請求項12】 前記プラズマが誘電結合プラズマであ
    ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に
    記載の炭素系材料のエッチング方法。
  13. 【請求項13】 前記プラズマが有磁場マイクロ波プラ
    ズマであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれ
    か1項に記載の炭素系材料のエッチング方法。
  14. 【請求項14】 前記プラズマを維持するための投入電
    力が70W以上であることを特徴とする請求項1乃至1
    3のいずれか1項に記載の炭素系材料のエッチング方
    法。
  15. 【請求項15】 前記被エッチング材料が、ダイヤモン
    ド、ダイヤモンド状炭素、グラファイト、フラーレン、
    カーボンナノチューブ、カルビン、炭素成形物、及び有
    機物からなる群から選択された1種以上の材料であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載
    の炭素系材料のエッチング方法。
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