JP2002060502A - 繊維強化熱可塑性樹脂ペレットおよびその製法 - Google Patents
繊維強化熱可塑性樹脂ペレットおよびその製法Info
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Abstract
に利用し、連続生産性、成形材料としての品質安定性、
成形品としての強度特性などを全て満たし得る様な繊維
強化熱可塑性樹脂ペレットとその製法を提供すること。 【解決手段】 天然植物繊維紡績糸40〜65質量%と
合成有機繊維2〜20質量%が、互いに逆方向に撚られ
た状態で熱可塑性樹脂ペレットの長手方向に略整列状態
で存在している繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを開示す
る。このペレットは、加熱溶融した熱可塑性樹脂浴に、
天然植物繊維性紡績糸40〜65質量部と合成有機繊維
2〜20質量部を撚り合せた状態で通過させ、樹脂含浸
量が15〜58質量%となる様に含浸・被覆してから引
き抜き、冷却固化後所定寸法に切断することによって製
造する。
Description
材料として用いられる繊維強化熱可塑性樹脂ペレットと
その製造方法に関し、より詳細には、強化繊維として天
然植物繊維紡績糸と合成有機繊維を含み、射出成形、射
出圧縮成形、押出成形、ブロー成形などの成形原料とし
て使用することにより、剛性および耐衝撃性に優れた成
形品を与える繊維強化熱可塑性樹脂ペレットとその製法
に関するものである。
の天然植物繊維を強化繊維として用いた繊維強化樹脂に
ついての研究が盛んに進められている。ちなみに、廃棄
物公害についての認識が高まっている昨今、天然繊維強
化樹脂は、強化繊維としてガラス繊維を用いた強化樹脂
製品を廃棄する際に見られる離脱ガラス繊維の飛散など
による人体等への影響に対する懸念がなく、また、焼却
処理する場合でも全てを熱エネルギーとして回収するこ
とができ、更には、ガラス繊維やタルク等の無機フィラ
ーに由来する残灰の発生や有害ガスの発生も起こさない
からである。
ら繊維強化樹脂用の強化繊維として汎用されてきたガラ
ス繊維や炭素繊維、金属繊維、各種合成繊維などの連続
繊維に対して、繊維が非連続であることから、これを樹
脂と複合し、長繊維の特徴を活かした成形用の樹脂ペレ
ットを製造する際には特別の技術が必要となる。例え
ば、長繊維の連続ストランドであれば、これを溶融樹脂
浴に連続的に含浸させて引き取り、冷却して樹脂を固化
させてから任意の長さに切断する汎用の製法によって繊
維強化樹脂ペレットを連続的に生産性よく製造できる
が、非連続の天然繊維では、これを撚り合わせて紡績糸
状にするにしても、樹脂含浸時に十分な張力を確保する
ことができず、溶融樹脂浴中に含浸走行させたときに非
連続繊維が樹脂浴中で解れて切断することがあり、安定
した連続操業を確保することが困難であるからである。
として用いて繊維強化樹脂ペレットを製造する方法とし
て、例えば下記の様な方法が提案されているが、それぞ
れ一長一短がある。
可塑性樹脂に天然植物繊維を均一に混練し、冷却固化さ
せてから破砕して樹脂ペレットを製造する方法(例えば
特開昭57−108161号公報など)。この方法であ
れば、非連続繊維がマトリックス樹脂中に均一に分散さ
れた成形材料を得ることができるが、樹脂ペレットのサ
イズが不揃いであるため、成形工程を含めた成形材料と
しての取扱い性や成形品の品質安定性に問題がある。
状、不織布状、マット状等に加工しておき、これを溶融
樹脂浴に含浸してから冷却固化し、適当な寸法形状に切
断して樹脂ペレットを製造する方法(特開昭58−28
307号、特開平3−7307号、同3−30916
号、同9−41280号など)。この方法は、樹脂含浸
物をシート状などの2次成形材料として使用する用途に
は適しているが、ペレット状の成形材料とするには、こ
れを冷却固化してから更に適当な寸法・形状に切断しな
ければならないので工程数が多く生産性が低い。しかも
切断によるロスが多かったり、切断時に生じるダスト
(切屑)により作業環境が汚染されるといった問題も生
じてくる。
樹脂と非連続繊維を混練し、棒状に溶融押出してから冷
却固化し任意の長さに切断する方法(特開昭62−14
6945号、同62−146947号など)。これらの
公報には、強化繊維として天然繊維35%と合成有機繊
維65%を併用した例が示されている。また特開平3−
290453号公報には、ポリプロピレン系樹脂に、剛
性の向上を目的として天然繊維を、また耐衝撃性の向上
を目的としてポリエステル繊維を配合した複合繊維強化
樹脂組成物が開示され、この公報には、ポリエステル以
外の繊維として麻や綿の如き天然繊維が使用できること
も明らかにされている。しかしこれらの方法では、綿状
の繊維を混練押出機に投入する際の供給が困難であった
り、また、樹脂を加熱して溶融混練する際に強化繊維が
熱劣化を起こしたり混練力により機械的な破損を受け、
強化効果が損なわれる。特に木材パルプや麻などの植物
繊維は、通常180℃程度の温度で熱分解を開始するの
で、繊維の種類は混練時間に応じてこうした問題を引き
起こし難い熱可塑性樹脂を選択して複合しなければなら
ず、マトリックス樹脂の選択の幅が狭い。しかも、その
様な低融点の樹脂は概して強度不足であるため、繊維強
化樹脂成形品の用途も自ずと制限される。
の特許請求の範囲には、ポリエステル繊維と共にそれ以
外の繊維、例えば天然繊維を1〜25質量%程度併用す
ることが記載されているが、この程度の配合量では満足
のいく高剛性の成形品を得ることは困難であり、そのた
め、無機フィラーを併用して剛性改善を図っていること
が読み取れる。
脂繊維との複合繊維束を作製し、これを加熱して熱可塑
性樹脂繊維を溶融させてから固化し適当な長さのペレッ
トに切断する方法(特開平4−163002号など)。
この方法を実施するには、予め熱可塑性樹脂繊維を製造
し、あるいは強化繊維との混合糸を製造しなければなら
ず、工程数が多いため経済的に有利な方法とは言えず、
しかも熱可塑性樹脂繊維の加熱溶融条件によっては含浸
不足となって空隙欠陥を生じることがある。
4号、特開平1−178411号、同4−119807
号、特公平6−57407号などには、強化用繊維の繊
維束に溶融させた熱可塑性樹脂を含浸し、これを冷却固
化させてから適当な長さに切断して樹脂ペレットを製造
する方法が開示されており、これらの中には、強化繊維
としてジュート(麻繊維)などを使用し得る旨の記述も
見られる。しかし、そこに開示されている強化繊維の大
半は連続長繊維であり、非連続繊維を強化繊維として熱
可塑性樹脂と複合する際の具体的な問題点については何
らの課題も提起されていない。
繊維強化樹脂ペレットを公知の技術によって別々に製造
し、それらをブレンドし成形材料として使用することも
可能であるが、合成有機繊維と天然繊維を均一に分散さ
せてそれらの複合強化効果を有効に発揮させる上では、
それらの強化繊維が同一ペレット内に含有されているこ
とが好ましい。
な従来技術の下で、強化用繊維として最近その使用が注
目されている天然の植物繊維に注目し、これを強化用繊
維として熱可塑性樹脂と複合して成形用の繊維強化樹脂
ペレットを製造する際に、前述した様な樹脂ペレットに
指摘される問題、特に連続生産性、成形材料としての品
質安定性、成形品としての強度特性などを全て満たし得
る様な繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの開発を期して研
究を進めてきた。従って本発明の課題は、主たる強化繊
維として天然の植物繊維を有効に利用し、連続生産性、
成形材料としての品質安定性、成形品としての強度特性
などを全て満たし得る様な繊維強化熱可塑性樹脂ペレッ
トとその製法を提供することにある。
のできた本発明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂ペレット
とは、天然植物繊維紡績糸40〜65質量%と合成有機
繊維2〜20質量%が、熱可塑性樹脂ペレットの長手方
向に略整列状態で存在しているところに要旨を有してい
る。強化繊維として用いられる上記天然植物繊維紡績糸
と合成有機繊維は、該樹脂ペレット内において、共に撚
られた状態で当該ペレットの長手方向に略整列状態で存
在しているものが好ましく、中でも、天然植物繊維紡績
糸と合成有機繊維とが互いに逆方向に撚られた状態でペ
レットの長手方向に略整列状態で存在しているものは、
ペレット自体の生産性や成形材料として優れた強度特性
を与えるものとして特に好ましい。
た熱可塑性樹脂浴に、天然植物繊維性紡績糸40〜65
質量部と合成有機繊維2〜20質量部を撚り合せた状態
で通過させ、熱可塑性樹脂の含浸量が15〜58質量%
となる様に含浸・被覆してから引き抜き、冷却固化後所
定寸法に切断するところに要旨を有している。
として長尺繊維のマルチフィラメントを使用し、これ
を、天然植物繊維紡績糸の撚り方向と反対方向に撚り合
わせながら熱可塑性樹脂浴に通過させることにより、該
ペレットの連続生産性を一層高めることができるので好
ましい。
塑性樹脂ペレットは、天然植物繊維紡績糸40〜65質
量%と合成有機繊維2〜20質量%が、熱可塑性樹脂ペ
レットの長手方向に略整列状態で存在しているところに
最大の特徴を有しており、この様に天然植物繊維紡績糸
と合成有機繊維を適正比率で複合使用することによっ
て、優れた強度特性を有する成形品を与える繊維強化樹
脂ペレットを優れた生産性の下で効率よく製造可能にし
たもので、以下、本発明にかかる繊維強化樹脂ペレット
とその製法を詳細に説明していく。
合成有機繊維を所定の配合比率となる様に使用し、これ
らを引き揃えて、加熱溶融した熱可塑性樹脂浴に浸漬・
通過させると共に、該溶融樹脂浴中でそれら繊維に撚り
をかけながら集束させ、これら強化繊維束に熱可塑性樹
脂を含浸させる。そして、熱可塑性樹脂の含浸された強
化用繊維束をノズルを通して引き出し、得られる強化繊
維ストランドを冷却してから一定の長さに切断すること
により、ペレットの長手方向に前記天然植物繊維紡績糸
と合成有機繊維が撚り合わされた状態で埋没された繊維
強化樹脂ペレットを得る。
の繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、上記製法上の特徴
から、天然植物繊維紡績糸が合成有機繊維と共に撚りが
掛けられた状態で、ペレット長手方向に略整列状態で熱
可塑性樹脂中に存在(埋没)している点で特徴的構造を
有している。
られる天然植物繊維紡績糸のペレット中に占める含有比
率を40〜65質量%の範囲に設定すると共に、合成有
機繊維の含有比率を2〜20質量%の範囲に設定するこ
とが重要な要件となっている。これは、天然植物繊維紡
績糸の強化作用、特に成形材料としての合成強化作用を
有効に発揮させると共に、該天然植物繊維紡績糸と共に
適量の合成有機繊維を使用することにより、該紡績糸に
張力を掛けた状態で溶融樹脂浴を通過させる際の該紡績
糸の切断を防止し、安定した連続生産を実現する上で重
要な要件となる。
を単独で使用し、これを加熱溶融した熱可塑性樹脂浴に
通して樹脂の含浸を行なおうとすると、該紡績糸が含浸
浴中で張力を受けたときに、短繊維が絡まり合った状態
の該紡績糸は、溶融樹脂浴中で解れて切断し易く、連続
的な含浸引き抜きを円滑に遂行できなくなる。ところ
が、該紡績糸と共に合成有機繊維、特に長繊維マルチフ
ィラメント状の合成有機繊維を含浸浴中に通すと、天然
植物繊維紡績糸に掛かる含浸引き抜きのための張力は該
合成有機繊維によって支持され、その結果として、該紡
績糸が含浸浴中で切断するといったことが防止される。
より合わせながら含浸浴中に通せば、合成有機繊維が該
紡績糸の外面側に巻付いてその解れを防止する作用も発
揮し、引き抜き繊維全体としての張力に対する抵抗力が
高められると共に、該紡績糸の一部が毛羽立ち状となっ
て樹脂浴内へ脱落して堆積する現象(樹脂浴中の脱落繊
維の堆積量が増大すると、樹脂浴の粘性が高まると共に
該堆積繊維が含浸用繊維繊維の円滑走行を阻害する現
象)も抑えられ、連続操業を一層円滑に行なうことがで
きる。
た様に、植物繊維マットと樹脂を複合した繊維強化樹脂
としては、植物繊維含量が50質量%程度のものが知ら
れている。またバッチ式ミキサーを使用した方法では、
天然植物繊維含量が60質量%程度のものも試作されて
いる。しかしながら、押出機などを用いた連続ストラン
ド方式で繊維強化樹脂ペレットを製造する方法に関する
限り、35質量%を超える量の植物繊維を強化繊維とし
て含む繊維強化樹脂材は提案されていない。ところが本
発明では、前述の如く植物繊維を紡績糸として使用し、
且つこれを適量の合成有機繊維と併用することによって
40質量%以上の多量の植物性繊維を強化繊維として支
障なく含有せしめ得る様にしたが、それに伴って、以下
に示す如く、これまで認識されたことのない特有の作用
効果も享受できることが確認された。
量%前後のリグニン質が含まれており、これはともすれ
ば熱劣化や変色などの原因になることから不要成分乃至
有害成分として嫌われていた。ところが、前述の如く多
量の植物繊維を利用する本発明においては、該リグニン
質がマトリックスとなる熱可塑性樹脂と植物繊維あるい
は併用される有機合成繊維との間でバインダー的作用を
発揮し、複合樹脂成形材料としての一体性を高め、成形
品の強度特性や均質性を高める上で有効に作用すること
が確認された。
りがあり、中でもZ撚りが一般的であるが、本発明で樹
脂を含浸被覆させた強化繊維に撚りをかけて引き抜く際
の撚り方向について、例えばZ撚りの天然紡績糸に対し
全体にS撚りを加えると、含浸工程で植物繊維紡績糸が
少し撚り戻されることになるため、溶融樹脂の含浸をよ
り効果的に行うことができる。この際、合成有機繊維も
一緒にS撚りを付与されながら引き取られることになる
ので、撚りの戻った天然紡績糸に合成有機繊維が巻付い
た状態となり、植物繊維紡績糸が撚り戻りにより解れて
切断されることはない。
りにより溶融樹脂浴中で切断する恐れが生じるので、含
浸・引き抜きの条件設定が非常に難しくなる。また、全
体に撚りをかけることにより、たとえ製造時に植物繊維
紡績糸の一部が解れて毛羽立ったとしても、再度一緒に
巻き込みながら強化繊維ストランドを引き取ることがで
きるので、毛羽が溶融樹脂浴に溜まってストランドの走
行を阻害し、走行抵抗の増大により繊維束が完全に切断
して製造がストップするといったトラブルを起こすこと
もなく、安定した高速生産が可能となる。
より、ペレット長に比ベてペレット内に含まれる強化繊
維の長さは若干長くなり、より長い強化繊維を含むペレ
ットをハンドリング上有利(ペレット長が長いと成形時
にホッパーでブリッジを起こし易くなる)に取り扱うこ
とができる。
しては、亜麻、苧麻、マニラ麻、サイザル麻、黄麻(ジ
ュート)、大麻、ケナフ、カラムシ、ココナッツ繊維、
綿、パンヤ綿、しゅろなどの紡績糸が例示され、これら
は単独で使用し得る他、必要により複数種を組み合わせ
て用いることもできる。複数種を併用する場合には、複
数種を組み合わせて紡績してもよいし、或いは、単独種
の紡績糸を熱可塑性樹脂と複合(含浸)する際に、複数
種引き揃えて組み合わせることもできる。天然植物繊維
の選択は、最終的に得られる成形品に期待される物性に
応じて適切なものを選べばよい。
S L 0101に規定されたジュート番手(恒長式)
で表わすと5〜80番手(29,029mで1kgの重
さの紡績糸を1番手という)のものを使用することが好
ましい。紡績糸の太さが5番手より小さいと紡績糸全体
としての強度が不足気味となって含浸・引取り時に切断
を起こし易くなり、安定した連続操業が害されることが
ある。一方、80番手を超えて過度に太い紡績糸を使用
すると、樹脂が含浸不足となって成形時の繊維の分散が
悪くなり、成形品の機械的物性値が不均一且つ不十分と
なる傾向が生じてくる。更には、溶融樹脂の含浸・引取
り後冷却してペレット状に切断する際に毛羽が発生し易
くなり、作業環境を汚染する恐れが生じるばかりでな
く、ペレットを射出成形機等のホッパーに投入する際
に、生じた毛羽が原因となってホッパー部でブリッジを
起し易くなり、連続生産の障害になることがある。こう
した点も考慮して、紡績糸のより好ましい番手の下限は
7番手以上、更に好ましくは10番手以上、より好まし
い番手の上限は70番手以下、更に好ましくは50番手
以下である。
績糸の含有量は、ペレット全量中に占める比率で40質
量%以上、より好ましくは45質量%以上で、65質量
%以下、より好ましくは60質量%以下が好ましい。天
然植物繊維紡績糸の含有量が40質量%未満では、強化
繊維としての絶対量不足により成形品の弾性率が不足気
味となり、逆に65質量%を超えて過度に多くなると、
成形材料として加熱溶融時の流動性が悪くなり、成形品
形状に制約が生じたり成形品外観が悪くなるといった問
題を生じる原因になる。
合成有機繊維は、使用する熱可塑性樹脂の溶融軟化温度
と合成有機繊維の耐熱性との関係において最適のものを
選択すればよく、成形温度域でダメージを受けない耐熱
性を有するものであれば特に制限されないが、好ましい
ものとしては、例えば、ポリプロピレン系繊維、ポリア
ミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、
ポリアリレート系繊維、ポリカーボネート系繊維、シン
ジオタクチックポリスチレン系繊維、ポリアルキレンパ
ラオキシベンゾエート系繊維などが例示される。これら
の合成繊維も、単独で使用し得るほか必要により複数種
を組み合せて用いることができる。これら合成有機繊維
は、前述した如く溶融樹脂浴での含浸走行時における張
力に耐える強度を確保するうえで、連続繊維のマルチフ
ィラメントロービングを使用することが望ましい。
の面から特に好ましいのはポリエチレンテレフタレート
繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエス
テル系繊維、ポリアミド6やポリアミド6・6などのポ
リアミド系繊維であり、中でもポリエチレンテレフタレ
ート繊維が最適である。ポリエチレンテレフタレート繊
維の場合、強度として4.44dtex(4g/デニー
ル)以上、好ましくは6.7dtex(6g/デニー
ル)以上の繊維を用いることが耐衝撃性を改善する上で
特に好ましい。
扱い性や該ペレットを用いて得られる成形品の強度特性
等を考慮して、0.5μm以上、より好ましくは1μm
以上で、100μm以下、より好ましくは50μm以下
であるのが好ましい。
上、より好ましくは3質量%以上で、20質量%以下、
より好ましくは15質量%以下が好ましく、2質量%未
満では、強化繊維としての配合量不足により満足のいく
耐衝撃性改善効果が得られ難くなる他、含浸走行時に張
力不足となって繊維切れを起こす恐れが生じ、逆に20
質量%を超えると、該繊維の分散が悪くなって成形品の
物性値がバラツキを生じる原因になったり、成形材料と
しての熱時流動性が低下して成形性が悪くなり、成形品
形状に制約を受けたり成形品外観が悪くなる。
繊維を熱可塑性樹脂浴に通過させて含浸させる際には、
両者を天然植物繊維性紡績糸40〜65質量部に対して
合成有機繊維2〜20質量部の比率で使用し、これらを
撚り合せた状態で樹脂浴に通過させ、その下流側でノズ
ル等から引き抜く際に、溶融樹脂の絞り量を調整するこ
とにより、得られる含浸ストランドの樹脂含有量が15
〜58質量%となる様にコントロールしながら引き抜き
を行なう。
可塑性樹脂としては、好ましくは溶融軟化温度が220
℃程度以下、より好ましくは200℃程度以下、さらに
好ましくは180℃程度以下のものを選択することが望
ましい。その理由は、該熱可塑性樹脂の溶融軟化温度が
高すぎると、本発明によって得られたペレットを成形し
て製品とする際に繊維が高温に曝されて熱分解や熱劣化
を起こし、強化繊維としての機能が損なわれることがあ
るからである。この様な観点から、好ましい熱可塑性樹
脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹
脂、α−オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエ
ステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、AS樹脂、あるい
は、ポリ乳酸系の生分解性樹脂などの如き単独重合樹脂
や共重合樹脂、更には、それらの2種以上を併用したブ
レンド樹脂などが好ましいものとして例示される。それ
ら熱可塑性樹脂の選別に当たっては、最終製品として得
られる繊維強化樹脂成形品の要求特性などを考慮して任
意に選択される。
やコストなどのバランスを考慮して特に好ましいのは、
ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリ
エチレン、低密度ポリエチレン、ブテン−1、ヘキセン
−1、オクテン−1などのα−オレフィン、あるいはそ
れらの共重合体などのポリオレフィン系樹脂、不飽和カ
ルボン酸やその誘導体で変性された変性ポリオレフィン
樹脂、あるいはそれらの2種類以上のブレンド樹脂であ
る。
るいはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル
酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、あるいはそれ
ら酸のエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸など
が挙げられる。特に好ましいのは、無水マレイン酸とメ
タクリル酸グリシジルエステルである。
紡績糸に含まれている前記リグニン成分などの熱分解に
よって生じる臭いを抑えるため、結晶性の熱可塑性樹脂
を使用することが望ましく、結晶化度は高い方が好まし
い。これは結晶化部分に臭気成分が取り込まれ、臭いを
抑制する作用が期待されるからである。こうした観点か
ら、前記樹脂の中でも、高結晶性プラスチックであるポ
リプロピレンや高密度ポリエチレンは好ましいものとし
て推奨される。
然植物繊維中に含まれるリグニン質により強化繊維と熱
可塑性樹脂の親和性が高められ、均一で一体性の高いペ
レットを得ることができるが、強化繊維と熱可塑性樹脂
の密着性を更に改善するため、繊維および樹脂の両者に
対して親和性の良好な各種の変性樹脂を添加することも
有効である。例えばポリオレフィン系樹脂に対しては、
無水マレイン酸変性ポリオレフィン、オキサゾリン変性
ポリオレフィン、メタクリル酸グリシジルエステル変性
ポリオレフィン等を添加すると、複合材料としての一体
性が高められ、成形品の物性向上が期待できる。その際
に添加される変性ポリオレフィン樹脂の量は、ポリオレ
フィン系樹脂に対して0.1〜15質量%、より好まし
くは0.2〜12質量%、更に好ましくは0.5〜10
質量%である。
は、成形品に求められる物性や用途に応じて各種の添加
剤を加えることができる。それらの添加剤としては、分
散剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定
剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、結晶化促進剤
(増粘剤)、可塑剤、顔料、染料などが挙げられ、これ
らも必要に応じて2種類以上併用することができる。
トのペレット長は2〜24mmの範囲が好ましく、2m
m未満の短尺物では、強化繊維が短尺となるため十分な
強度特性が得られ難くなり、逆に24mmを越えて過度
に長尺になると、成形時に該ペレットがホッパーでブリ
ッジを引き起こし、安定供給が阻害されてスムーズな成
形ができなくなる。こうした観点から、ペレットのより
好ましい長さは3mm以上、更に好ましくは4mm以上
で、15mm以下、さらに好ましくは12mm以下であ
る。
ペレットを用いた成形時のハンドリング性等を考慮する
と1mm以上、5mm以下、より好ましくは、2mm以
上、4mm以下である。
長(L)とペレット径(D)の関係で表現すると、L/
D(アスペクト比)が1以上、6以下であることが好ま
しい。該ペレットのL/Dが1未満では、含浸・引き抜
き後のペレット切断時にペレットが割れを生じ易く、強
化用繊維の毛羽立ちが顕著となってハンドリング性が悪
くなる。また、該ペレットのL/Dが6を越えて過度に
細長いペレットになると、成形に際しスクリュー等ヘの
ペレットの噛込み時に破損し易く、強化用繊維長が短く
なって十分な強度特性の成形品が得られ難くなる。こう
した観点から、ペレットのより好ましいL/Dは2以
上、5以下である。
般的に180℃を超える付近から熱劣化を起し易くなる
傾向があるので、融点や軟化点の高い熱可塑性樹脂を用
いる場合には、合成有機繊維の耐熱性を含めて強化繊維
の劣化を配慮することが望まれる。強化繊維に樹脂を含
浸させる際の溶融樹脂温度は低い方が好ましいが、強化
繊維への樹脂の含浸度合いやストランド(樹脂が含浸さ
れた強化繊維束)の引取り速度に影響のある樹脂粘度と
のバランスを考慮して最適の温度を選択することにな
る。
は、強化繊維に含浸させるにのに適切な溶融粘度となる
ものを選択し、可能な範囲で溶融粘度が十分低くなる温
度に熱可塑性樹脂を加熱して溶融する。例えば、ポリプ
ロピレン樹脂の場合には、目安としてメルトフローレー
ト(MFR:230℃、2.16kgf)で5g/10
分以上、より好ましくは15g/10分以上、更に好ま
しくは30g/10分以上で、200g/10分以下、
より好ましくは150g/10分以下、更に好ましくは
100g/10分以上のものを選択するのが良い。
未満では、多量の植物繊維紡績糸を含むペレットの生産
性が低くなる傾向が現われ、製造できたとしても強化繊
維への樹脂の含浸が不十分となり、得られるペレットか
ら強化繊維の脱落が起こり易くなってハンドリング性に
問題を生じたり、成形品としての強化繊維の分散性不良
により強度特性値のバラツキが大きくなる傾向が生じて
くる。一方、MFRが上記好適範囲を超えると、成形品
の強度や弾性率、耐熱性といった特性が低下するため好
ましくない。
糸とポリエチレンテレフタレート繊維を選択した場合に
は、ポリプロピレン樹脂の溶融樹脂温度として、200
℃以上、280℃以下、より好ましくは220℃以上、
260℃以下、更に好ましくは230℃以上、255℃
以下が好ましい。
観点から、強化繊維が溶融樹脂浴中に入りノズルを通し
て取り出されるまでの時間が10秒以内、好ましくは5
秒以内となる様にコントロールすることが好ましい。こ
の時間が長くなり過ぎると強化繊維が熱劣化を起こす可
能性が高くなる。一方、この時間が短か過ぎると、熱可
塑性樹脂の含浸が不十分となるので、好ましくは浸漬時
間を0.1秒以上、より好ましくは0.15秒以上確保
することが望ましい。
明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を
受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲
で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それ
らはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
R(230℃、2.16kgf)が65g/10分、融
点が165℃のホモポリプロピレン樹脂(PP)95質
量%に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱
化学製)5質量%をブレンドしたペレット(PP系樹
脂)を使用した。
72g/m、Z撚り、50番手、リグニン含量;約8.
2質量%)とサイザル紡績糸(2.4g/m、Z撚り、
70番手、リグニン含量;約3.4質量%)を、また合
成有機繊維として、タイヤコード用の繊維径5.6dt
ex、強度7.96cN/dtexで300本のポリエ
チレンテレフタレート(PET)繊維ロービングを用い
た。
融した樹脂浴に、表1に示す配合で、上記植物繊維紡績
糸とPET繊維ロービングを引き揃えて繊維束全体にS
撚りをかけながら通して含浸させ、15m/分のライン
速度で引き抜いた(繊維束の樹脂浴通過時間は約0.8
秒)。引き続いてストランド(樹脂が含浸・被覆した強
化樹脂繊維束)を冷却・固化させてから長さ6mmに切
断し、繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造した。
おけるストランド切断の有無を観察すると共に、切断し
て得たペレットの断面状態を観察し、表2に示す結果を
得た。また、得られた各ペレットを乾燥機で6時間乾燥
し、下記の成形に用いた。
形機(住友−ネスタール社製「SG220U−SYCA
P・MIIIA」、スクリュー径45mmφ、スクリュ
ーのL/Dは21.8、スクリューの圧縮比は2.3)
を用いて、シリンダー温度180℃、金型温度60℃で
物性測定用試験片(JIS規格)を成形し、各試験片に
ついて下記の方法で評価試験を行ない、結果を表3に示
した。
準拠)測定温度23℃、 2)ノッチ付アイゾット衝撃強度(JIS K7110
に準拠)測定温度23℃、 また、参考例として上記と同じポリプロピレン系樹脂を
マトリックス樹脂として使用し、これにポリプロピレン
樹脂用に表面処理されたガラス繊維を20質量%配合
し、混練押出機を用いてガラス織維強化ポリプロピレン
系樹脂ペレットを製造した。これを成形原料として、上
記と同様に物性測定用試験片の作製および評価試験を行
ない、結果を表3に併記した。
1,2では6時間の連続運転中に時々紡績糸の切断が生
じ、また成形品の衝撃特性も乏しい。これに対し実施例
では、ストランド切れによるトラブルは一度も見られ
ず、また曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃特性の全てにおい
てバランスの取れた強度特性を有している。また比較例
3は、強化繊維として合成有機繊維のみを使用したもの
で、成形品の衝撃特性は非常に良好であるが、植物繊維
紡績糸を使用していないため曲げ弾性率が低く、曲げ弾
性の求められる用途への適性を欠く。比較例4は植物繊
維量が不足するため曲げ弾性率が不足し、比較例5は合
成有機繊維量が不足するため衝撃特性が悪い。また、参
考例は強化繊維として従来のガラス繊維を使用したもの
で、曲げ特性は良好であるが、衝撃特性が乏しい。なお
参考例のペレットは、前述した如くガラス繊維使用によ
る様々の問題を有している。
たる強化繊維として天然の植物繊維紡績糸を使用し、こ
れを適量の合成有機繊維と併用することにより、植物繊
維の有する強化特性を有効に発揮させつつ、短繊維から
なる植物繊維の使用に起因する連続含浸操業の難点を克
服し、優れた生産性の下で優れた強度特性を備えた成形
品を与える繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを提供し得る
ことになった。
Claims (6)
- 【請求項1】 天然植物繊維紡績糸40〜65質量%と
合成有機繊維2〜20質量%が、熱可塑性樹脂ペレット
の長手方向に略整列状態で存在していることを特徴とす
る繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。 - 【請求項2】 天然植物繊維紡績糸と合成有機繊維と
が、共に撚られた状態でペレットの長手方向に略整列状
態で存在している請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹
脂ペレット。 - 【請求項3】 天然植物繊維紡績糸と合成有機繊維と
が、互いに逆方向に撚られた状態でペレットの長手方向
に略整列状態で存在している請求項2に記載の繊維強化
熱可塑性樹脂ペレット。 - 【請求項4】 加熱溶融した熱可塑性樹脂浴に、天然植
物繊維性紡績糸40〜65質量部と合成有機繊維2〜2
0質量部を撚り合せた状態で通過させ、樹脂含浸量が1
5〜58質量%となる様に含浸・被覆してから引き抜
き、冷却固化後所定寸法に切断することを特徴とする繊
維強化熱可塑性樹脂ペレットの製法。 - 【請求項5】 合成有機繊維を、天然植物繊維紡績糸の
撚り方向と反対方向に撚り合わせながら熱可塑性樹脂浴
に通過させる請求項4に記載の製法。 - 【請求項6】 合成有機繊維として、長尺繊維のマルチ
フィラメントを使用する請求項4または5に記載の製
法。
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