JP2002053837A - 接着剤組成物、組立品及びモータ - Google Patents

接着剤組成物、組立品及びモータ

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JP2002053837A
JP2002053837A JP2000241299A JP2000241299A JP2002053837A JP 2002053837 A JP2002053837 A JP 2002053837A JP 2000241299 A JP2000241299 A JP 2000241299A JP 2000241299 A JP2000241299 A JP 2000241299A JP 2002053837 A JP2002053837 A JP 2002053837A
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Hiromitsu Ibe
博光 井辺
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Asmo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高温・高湿条件下にさらされる使い方がされ
ても、メッキなどの卑金属の腐食速度を抑制でき、接着
強度の著しい低下を防ぐことができる接着剤組成物を提
供する。 【解決手段】 接着剤樹脂に被着体金属より卑な金属が
混合されていることを特徴とする接着剤組成物。モータ
1のヨーク2の内周面には接着剤13を介してマグネッ
ト4が固着されている具体例において、接着剤13を構
成する接着剤組成物は、エポキシ樹脂に、50〜400
メッシュの範囲の粒径をもつアルミニウム粉が、添加量
5〜50重量%の範囲で添加されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛メッキ鋼板な
どのように表面に卑金属が存在する被着体金属に、他の
部材を接着した場合、被着体金属の被着面にある卑金属
の防食効果がある接着剤組成物、組立品及びモータに関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばモータは自動車などに搭載
される場合、高温・高湿環境下の使用にさらされること
になる。そのため、モータのヨーク(ハウジング)は、
溶剤塗装等が施されることによって耐食性を確保してい
た。しかし、近年、地球環境問題およびモータのコスト
ダウンの要請等から溶剤塗装は減少し、代わってヨーク
として亜鉛メッキ鋼板が使用されるようになってきた。
すなわち、表面の亜鉛メッキの犠牲腐食によって内部の
鋼板を防食するものである。
【0003】ところが、亜鉛メッキ鋼板をヨークとして
使用した場合、ヨークの内側に固定する必要があるマグ
ネットを亜鉛メッキ表面に接着することになる。一般に
ヨークの接着剤には、熱硬化型の一液性エポキシ系接着
剤が使用されている。高温・高湿環境下でモータが使用
された場合、ヨークの接着面の亜鉛が腐食してマグネッ
トの接着強度が低下したり、さらに腐食が進んでマグネ
ットが接着剤と亜鉛メッキ鋼板の界面で剥離してマグネ
ットが脱落する恐れもあった。
【0004】従来、亜鉛メッキ鋼板が使用された場合の
この対策として幾つかの方法が実施されている。一つ
は、マグネットのヨークへの固定をスプリングで行い、
接着剤を廃止する方法である。他の一つはマグネット接
着面の亜鉛をブラシ等で掻き取り、その後、従来と同様
に接着する方法である。さらに、亜鉛メッキ表面に防錆
剤等を塗布した後にマグネットを接着する方法も実施さ
れていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法を実施した場合、以下の問題があった。まず、スプ
リング方式ではスプリングが必要となり、従来の接着方
式に比べ、モータとしての部品点数が増えるという問題
がある。また、亜鉛メッキを掻き取る方法では、亜鉛メ
ッキを掻き取る作業が必要になり、従来の接着だけの方
法に比べ、非常に作業が面倒でコストが高くなるという
問題がある。さらに防錆剤を塗布する方法では、従来の
マグネット接着作業の前に防錆剤等を塗布する工程が必
要になり、工程が複雑になるとともにコストが高くなる
という問題がある。
【0006】これらの問題があることから、例えば製造
コストを低く抑える要請が厳しい製品では、上記方法を
採用するとかえって製造コスト上昇に繋がるので、鋼鈑
に溶剤塗装を施す従来の方法を採用せざるを得なかっ
た。このため、環境や人体への影響の配慮、およびモー
タのコストダウンを図るために、亜鉛メッキの腐食を抑
えることができる接着剤が要望されていた。なお、これ
らの問題はモータに限るものではなく、亜鉛メッキなど
の卑金属メッキ鋼板のメッキ表面に部品等が接着される
全てのものについて言えることであって、高温高湿など
の使用環境によってはメッキ腐食による接着強度の低下
の対策を図る必要があった。
【0007】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであって、その目的は、高温・高湿条件下にさら
される使い方がされても、メッキなどの卑金属の腐食速
度を抑制でき、接着強度の著しい低下を防ぐことができ
る接着剤組成物、組立品及びモータを提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1に記載の発明は、接着剤組成物では、接着剤
樹脂に被着体金属より卑な金属が混合されている。
【0009】請求項2に記載の発明は、請求項1の発明
において、卑な金属は、金属粉と金属片と金属繊維のう
ち少なくとも1つの形態をとり、接着剤樹脂に1種又は
複数種混合されている。
【0010】請求項3に記載の発明は、請求項1又は2
の発明において、前記被着体金属は卑金属メッキ金属で
あって、前記卑な金属は前記卑金属メッキ金属のメッキ
に使用されている卑金属よりも卑な金属である。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の
いずれか一項の発明において、前記被着体金属は少なく
とも被着面が亜鉛であって、前記卑な金属は、亜鉛より
も卑な金属である。
【0012】請求項5に記載の発明は、請求項4の発明
において、前記卑な金属は、アルミニウム系金属とマグ
ネシウム系金属のうちの少なくとも一方である。亜鉛よ
り卑な金属のうちアルミニウムとマグネシウムは、ナト
リウムやカリウム等と比べ化学的に比較的安定であるの
で、接着剤樹脂に混合する卑な金属として、アルミニウ
ム系金属とマグネシウム系金属の少なくとも一方を用い
るのが実用的である。
【0013】請求項6に記載の発明は、請求項4の発明
において、前記卑な金属として少なくともアルミニウム
が混合されている。請求項7に記載の発明は、請求項5
又は6の発明において、前記卑な金属はアルミニウムで
ある。
【0014】請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の
いずれか一項の発明において、前記卑な金属の添加量
は、5〜50重量%の範囲である。添加量5重量%未満
では被着体金属の防食効果が低く、添加量50重量%を
超えると接着剤組成物の粘度が高過ぎて使い難い。
【0015】請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の
いずれか一項の発明において、前記卑な金属のサイズ
は、50〜400メッシュの範囲にある。一般に接着強
度は接着剤層の厚さに大きく依存し、卑な金属からなる
金属粉や金属片の粒径が大きくなると、おのずと接着剤
層の厚みが厚くなって接着強度が低下する。また、粒径
が細かくなり過ぎると、金属粉や金属片が酸化(防食)
し易くなる。このため、卑な金属のサイズは50〜40
0メッシュの範囲が好ましい。
【0016】請求項10に記載の発明は、組立品では、
卑金属メッキ鋼板からなる部品と他の部品とが、請求項
1〜9のいずれか一項に記載の接着剤組成物を接着剤に
用いて接着されている。
【0017】請求項11に記載の発明は、モータは、卑
金属メッキ鋼板からなるヨークと、請求項1〜9のいず
れか一項に記載の接着剤組成物を接着剤として前記ヨー
クの内周面に接着されているマグネットとを備えてい
る。
【0018】なお、請求項1〜9のいずれかの発明で使
用される接着剤樹脂としては、エポキシ系接着剤(一液
性又は二液性)、アクリル系接着剤およびウレタン系接
着剤など、一般に使用される樹脂製の接着剤を挙げるこ
とができる。また、接着剤組成物には、所望により種々
の添加物、例えば充填剤、硬化促進剤、チキソ性付与
剤、粘着性付与剤、カップリング剤、着色剤など公知の
添加物を配合することができる。
【0019】請求項1〜9の発明によれば、接着剤組成
物には被着体金属より卑な金属が混合されているため、
例えば被着体金属が卑金属メッキ金属で、その表面にこ
の接着剤組成物を接着剤として用いて他の部材を接着し
た場合、接着剤組成物に混合されている卑な金属が、被
着体金属の被着面にあるメッキの腐食反応速度を低下さ
せる。従って、高温・高湿条件下などの使用環境下にお
いて接着強度が著しく低下することが回避される。
【0020】請求項10の発明によれば、組立品では、
卑金属メッキ鋼板からなる部品と他の部品とを接着する
接着剤組成物に混合された卑な金属が、卑金属メッキの
腐食反応速度を抑えるので、高温・高湿条件下に組立品
がさらされても、両部品の接着強度の著しい低下が防止
される。
【0021】請求項11の発明によれば、卑金属メッキ
鋼板からなるヨークに、請求項1〜9のいずれか一項に
記載の接着剤組成物を接着剤としてマグネットを接着し
てモータを構成しているので、例えば高温・高湿条件下
でモータが使用されても、ヨークとマグネットの接着強
度の著しい低下が防止される。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施
形態を図1,図2を用いて説明する。本実施形態では接
着剤組成物を、モータの構成部品の接着に使用してい
る。
【0023】図2に示すように、組立品としてのモータ
1は、ハウジングを兼ねた形状を有するヨーク2を備え
る。ヨーク2の内部には回転子3(鎖線で示す)が回転
可能な状態で挿着されている。ヨーク2の内周面には複
数のマグネット4が回転子3と所定のギャップを隔てて
配置された状態で固着されている。
【0024】図1はヨーク2とマグネット4の接着部分
(図2中のA部分)を示すものである。同図に示すよう
に、ヨーク2は、被着体金属、卑金属メッキ金属及び卑
金属メッキ鋼鈑としての亜鉛メッキ鋼板10により形成
されており、その母材である鋼板11の表面には、卑金
属メッキとしての亜鉛メッキ12が施されている。そし
て、ヨーク2の内周面に表れた亜鉛メッキ12の表面に
接着剤13を介してマグネット4が固着されている。
【0025】この接着剤13を構成する接着剤組成物
は、接着剤樹脂として一液性のエポキシ樹脂を使用し、
ヨーク2のメッキ金属である亜鉛より卑な金属からなる
1種または複数種の金属粉を、5〜50重量%の範囲で
添加している。亜鉛より卑な金属としてはアルミニウム
とマグネシウムのうちの少なくとも一方を使用するのが
よく、これはアルミニウムとマグネシウムが、亜鉛より
も卑な金属のうちで化学的に比較的安定で取り扱い易い
からである。特に少なくとアルミニウムを含むことが好
ましく、本実施形態では亜鉛より卑な金属粉としてアル
ミニウム粉のみを採用している。
【0026】接着剤樹脂として一液性のエポキシ樹脂を
用いるが、これに限定されず、接着剤樹脂の種類として
二液性のエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤およびウ
レタン系接着剤等を用いることもできる。また接着剤組
成物は、所望により種々の添加物、例えば充填剤、硬化
促進剤、チキソ性付与剤、粘着性付与剤、カップリング
剤、着色剤など公知の添加物を配合できる。充填剤とし
ては、例えば炭酸カルシウム、タルク、石膏、アルミ
ナ、シリカ、ガラス、クレー、各種金属又は合金の粉末
などの無機物質、架橋された共重合樹脂や熱硬化性樹脂
硬化物の粉状物などの有機系物質が挙げられる。また、
これら充填剤の配合量は任意に選択することができる
が、60重量%以下とすることが好ましい。
【0027】次に、接着剤組成物を亜鉛メッキ鋼鈑に使
用した場合の作用を説明する。この接着剤組成物では、
接着剤樹脂に添加された亜鉛より卑な金属からなる金属
粉(本例ではアルミニウム)が、ヨーク(亜鉛メッキ鋼
鈑)2の表面の亜鉛メッキ12の腐食反応を抑制する。
よって、亜鉛より卑な金属からなる金属粉が添加された
接着剤組成物を接着剤13として使用するモータ1で
は、高温・高湿条件下にモータ1がさらされてもマグネ
ット4の接着力が著しく低下することが回避される。
【0028】[実施例]接着剤組成物による腐食抑制効
果の確認試験(接着強度試験)を行った。 (a)試験片の作製 接着剤樹脂として市販の一液性エポキシ樹脂(商品名
「エピホームE518−01」:ソマール株式会社製)
を使用した。この一液性エポキシ樹脂に、約200メッ
シュのアルミニウム粉を15重量%添加し、その他、所
定の重量割合で硬化剤や顔料等を添加し、十分混練して
接着剤組成物(接着剤)を得たものを実施例とする。ま
た、この一液性エポキシ樹脂に、硬化剤や顔料等を、所
定の重量割合で添加し、十分混合して接着剤組成物を得
たものを比較例とする。なお、接着剤組成物の詳細組成
は、実施例が、エポキシ樹脂60重量%,アルミニウム
粉15重量%,硬化剤14重量%,顔料等6重量%であ
り、比較例が、エポキシ樹脂70重量%,硬化剤15重
量%、顔料等15重量%である。
【0029】次に表面をアセトンで脱脂した亜鉛メッキ
鋼板(亜鉛目付量:90g/m2、材料記号「SGCE
−90/90」NKK製)で作った引張りテストピース
(JIS1号形状:長さ200mm・厚さ1.6mm・
幅25mm)の接着面をやすり掛けして、新しい亜鉛金
属面を出した後、直ぐに有機溶剤で洗浄し、各々の片面
上に、接着剤組成物を塗布量が約0.05g/cm2
なるように塗布し、重ね代が12.5mmとなるように
2枚の亜鉛メッキ鋼板を貼り合わせ、クリップで加圧固
定した。この状態で150℃の恒温槽の中に30分入れ
て、接着剤組成物を完全に硬化させ、試験片(テストピ
ース)を得た。
【0030】また、ブランクとして、2枚の亜鉛メッキ
鋼板を金属粉無添加の一液性エポキシ樹脂を接着剤とし
て前記と同じ接着条件(同塗布量・同接着面積)で貼り
合わせた後、同条件(150℃・30分)で樹脂硬化さ
せてブランク(比較例)の試験片を得た。
【0031】(b)接着強度試験 上記各試験片を、高温・高湿雰囲気(80℃、95%R
H)中に入れて曝露し、500時間および1000時間
後にそれぞれ3本ずつのテストピースを取り出す。そし
て室温に戻した後、、曝露後の試験片の引張剪断強度
(MPa)を測定した(引張り速度5mm/cm2)。
【0032】(c)マグネットの重り落下強度試験 次に、亜鉛メッキ鋼鈑(SGCE−90/90)で作成
したパワーウインドモータの実ヨークの内面を有機溶剤
で洗浄した後、所定のフェライト製マグネットを実施例
および比較例の接着剤でそれぞれ接着する。接着剤を所
定の条件(150℃・30分)で硬化した後、それぞれ
のヨークをサンプルとして、高温・高湿雰囲気(80
℃、95%RH)中に入れた。このサンプルを500時
間後および1000時間後に取り出して室温に戻した
後、1kgの鉄製の重りを、マグネットを接着したヨー
ク面に落下し、マグネットがヨーク面から剥離するとき
の重りの高さを「マグネットの重り落下強度」として測
定した。
【0033】(d)アルミニウム粉添加量の接着強度依
存性100メッシュのアルミニウム粉をエポキシ樹脂に
添加し、添加量0,5,1 0,20,30,40,50,60重量%の接着剤組成
物を調合した。これらの接着剤を用いて、前記(a)で
述べた同じ方法で、亜鉛メッキ鋼鈑(SPGC−90/
90)製のテストピース(JIS1号形状:長さ200
mm・厚さ1.6mm・幅25mm)を添加量別に作成
した。これらのテストピースの引張剪断強度を、初期及
び高温・高湿内に500時間放置後、前記(c)で述べ
た同じ方法で測定した。
【0034】<測定結果>引張剪断強度測定結果は、図
3,図4に示すとおりで、図3は曝露時間の影響を示す
もので、図4はアルミニウム粉添加量依存性を示すもの
である。またマグネットの重り落下強度測定結果は、表
1のとおりである。
【0035】(引張剪断強度の曝露時間の影響)図3の
グラフに示すように、アルミニウム粉(約200メッシ
ュ)を15重量%添加した実施例(○印)では、曝露時
間1000時間後においても試験片の引張剪断強度が1
2MPa以上であった。これに対し、アルミニウム粉を
無添加の比較例(△印)では、500時間曝露後に既に
試験片の引張剪断強度が約3MPaにまで低下し、10
00時間曝露後においては試験片の引張剪断強度が1M
Pa以下に低下した。
【0036】図3に示した実施例の1000時間後の破
断面を調べると、亜鉛メッキの腐食はほとんど見られ
ず、破壊モードは凝集破壊であった。一方、比較例のも
のは、亜鉛メッキが腐食して斑点状の白錆が接着剤のほ
ぼ全面に発生していた。また破壊モードは、これらの白
錆面での接着破壊(界面破壊)であった。
【0037】(マグネットの重り落下強度)表1に示す
ように、曝露前においては実施例と比較例共に落下距離
40cmでマグネットが破壊し、接着面の剥離はなく接
着強度は十分高かった。曝露後は、比較例が500時間
曝露後に測定下限値である10cmからの落下で接着面
から剥離した。これに対し実施例は、500時間曝露後
でも接着面から剥離するのに落下距離30cmが必要
で、1000時間曝露後においても落下距離20cmが
必要であった。
【0038】次にパワーウインドモータの実ヨークを用
いたマグネットの重り落下強度測定後のマグネット接着
面を調べると、実施例の接着剤を用いたものは白錆の発
生は見られなかった。一方、比較例の接着剤を用いたも
のは多量の白錆が発生していた。図3および表1の結果
から、アルミニウム粉の添加により接着強度が大幅に向
上し、また500時間の曝露時間を過ぎた後は強度があ
る程度安定することが判る。
【0039】
【表1】 (引張剪断強度のアルミニウム粉添加量依存性)図4の
グラフに示すように、500時間曝露後の測定結果(○
印)では、アルミニウム粉(約100メッシュ)が添加
量5重量%未満では強度の点で効果がほとんど認められ
なかった。添加量5重量%を超えた辺りから強度が急激
に上昇し、アルミニウム粉の添加量8〜50重量%にお
いて、強度の点で一応の効果が得られた。特に添加量1
0〜45重量%において約10MPa以上のかなり高い
強度が得られた。但し、曝露前の初期強度は、添加量3
5重量%を超えた辺りから徐々に低下する。
【0040】また500時間曝露後に強度測定したテス
トピースの接着面を観察したところ、添加量0重量%で
は接着面に亜鉛の白錆が多量に発生し、添加量5重量%
では0重量%に比べ多少白錆の発生が少なく、10〜4
0重量%では接着面に白錆がほとんど見られなかった。
なお、上記各実験に用いたサンプルはいずれも接着面を
除いて全面に多量の白錆を発生した。
【0041】またアルミニウム粉の添加量が多いほど、
接着剤組成物の粘度が大きくなる傾向にあった。接着剤
組成物は約室温の温度で、添加量50重量%では粘度が
高いために使用し難く、この添加量50重量%が接着剤
として使用に耐え得る粘度の限界値と考えられる。また
添加量60重量%では、粘度が高くパテ状となり接着剤
として使用不可能であった。つまり添加量が50重量%
を超えると接着剤の流動性が著しく低下し、接着剤とし
て不適である。但し、接着剤組成物の粘度は、その主な
マトリクスである接着剤樹脂の粘度(重合度等)にある
程度依存するので、接着剤樹脂の選択によって添加量5
0重量%を超えても流動性を確保することが可能な場合
もあり、さらに室温下で高粘度であっても、接着剤を室
温より高温に温めて使用すれば使用に耐え得るだけの流
動性は確保できる。
【0042】以上の結果から、アルミニウム粉の添加量
として適切な範囲は「5〜50重量%」であり、この範
囲では防錆効果が得られるうえ、接着剤として使用に耐
えうる粘度(流動性)が得られる。またアルミニウム粉
の添加量としてより適切な範囲は「8〜45重量%」で
あり、この範囲では高い防錆効果により比較的高い強度
が得られる。そしてアルミニウム粉の添加量の最適範囲
は「10〜30重量%」であり、この範囲では非常に高
い防錆効果によりかなり高い強度が得られるとともに、
接着剤の流動性を十分確保でき、接着剤の塗布作業が非
常にし易い。
【0043】<金属粉の最適粒径>接着強度は、接着剤
層の厚さに大きく依存し、一般に10〜30μm位の厚
さが最適であることが多くの文献等に報告されている。
金属粉(または金属片)の粒径が大きくなると、おのず
と接着剤層の厚みが厚くなり、接着強度が低下する。ま
た、粒径が細かくなり過ぎると、金属粉の酸化(防食)
が容易になると共に、接着剤へのくさび効果等が低下す
るため、金属粉の大きさは、50〜400メッシュが好
ましい。
【0044】以上の結果より、亜鉛メッキ鋼鈑の接着に
対し、亜鉛より卑な金属(本例ではアルミニウム粉)を
添加した接着剤は、接着面の亜鉛の防食に対して非常に
有効であることが判った。従って、本実施形態の接着剤
は、高温高湿下にさらされる亜鉛メッキ鋼鈑の接着に使
用できる。また亜鉛メッキ製品の接着に対して、長時間
にわたって高い信頼性が維持できることが明確になっ
た。
【0045】以上詳述したように本実施形態によれば、
以下に示す効果が得られる。 (1)接着剤組成物中にメッキ金属である亜鉛より卑な
金属であるアルミニウム粉を添加したので、高温・高湿
条件下でもアルミニウム粉によって亜鉛メッキの腐食反
応速度が小さく抑制され、高温・高湿環境下において接
着強度が著しく低下することを回避できる。従って、モ
ータ1が市場環境で頻繁に起こる高温・高湿環境下にさ
らされても、マグネット4の安定した接着強度を保持す
ることができ、ひいては安定したモータ性能を維持する
ことができる。
【0046】(2)接着剤組成物をモータ1におけるマ
グネット4等の部品組付け用の接着剤に用いることによ
って、従来、鋼鈑に施していた溶剤塗装を廃止できるの
で、環境や人体にやさしい部品の接着方法を採用でき
る。また塗装工程の廃止により製造工程がシンプルで製
造時間も大幅に短縮できる。このため、在庫等も減り、
部品コストが低減する。また従来技術で述べたスプリン
グ固定方式、防錆処理方式、メッキ除去方式など他の方
法を採用しなくて済むので、モータ1の部品点数の増加
や工程の追加等の必要もない。
【0047】なお、実施の形態は、上記に限定されず次
のような態様でも実施できる。 ・ 接着剤樹脂に添加するのは金属粉に限定されない。
金属片でもよい。また金属繊維(金属糸、ファイバー、
針状結晶(ウィスカ)など))でもよい。要するに接着
剤組成物のマトリクスとなる接着剤樹脂に対して分散性
を有する形状・形態で、接着時に強度確保の点から期待
される接着剤層の厚みより少なくとも小さな粒径や太さ
のものであれば足りる。
【0048】・ 添加金属はアルミニウムに限定されな
い。例えば接着剤樹脂にマグネシウムを添加できる。さ
らに添加金属は1種に限定されない。例えばアルミニウ
ムとマグネシウムの2種を混合することもできる。この
場合、添加量はマグネシウム単味でまたは両者の総量
で、5〜50重量%の範囲が適当であり、また粒径は5
0〜400メッシュの範囲が適当である。両金属を混合
する場合、その添加比は総量が5〜50重量%となる範
囲内で適宜設定でき、また両金属の粒径分布が50〜4
00メッシュの範囲内で異なっても構わない。
【0049】・ アルミニウムやマグネシウムを金属粉
や金属片等として添加する場合、その純度約100%の
アルミニウムやマグネシウムのみに限定されない。例え
ばアルミニウムやマグネシウムと他の金属との金属化合
物や合金の形態をとるアルミニウム系金属やマグネシウ
ム系金属からなる金属粉や金属片等を、接着剤樹脂に添
加するものであってもよい。金属化合物や合金であって
もその主要成分がアルミニウムやマグネシウムであれば
亜鉛メッキ鋼鈑の防食効果が得られる。
【0050】・ 接着剤樹脂に対する金属粉や金属片の
添加量は、用途などによっては5〜50重量%の範囲に
限定されない。例えば金属添加量が5重量%未満や50
重量%を超えても、必要強度が低いレベルにあるなどの
ケースであればこれでも十分効果がある。
【0051】・ 接着剤組成物は、モータにおけるヨー
クとマグネットの接着用に限定されない。例えばモータ
におけるマグネット以外の部品の接着に使用してもよ
い。さらにモータに限定されず、高温・高湿条件下で使
用される自動車用部品の接着用として接着剤樹脂を適用
することもできる。
【0052】・ 接着剤組成物は、自動車用部品への使
用に限定されない。要するに卑金属メッキ鋼板と金属
(卑金属メッキ品以外)または無機物(セラミック等)
との接着用、あるいは卑金属メッキ品同士の接着用とし
て広く使用できる。
【0053】・ 卑金属メッキは亜鉛メッキに限定され
ない。卑金属メッキであれば足り、例えばクロムメッキ
でもよい。また、母材は鋼板に限定されない。また、卑
金属を母材の金属表面に被覆する方法がメッキ法である
ことに限定されず、母材の表面被膜の形成方法が化学的
蒸着法や物理的蒸着法であっても構わない。すなわち、
接着剤組成物により腐食保護される被着体金属は、メッ
キ金属に限らず、母材金属の表面に卑金属被膜が施され
た金属体を含む。
【0054】・ 卑金属メッキ鋼板ではない単なる鋼板
への接着剤として接着剤組成物を用いることもできる。
つまり、卑金属メッキが施されていない金属表面への接
着剤として使用することもできる。
【0055】なお、この明細書で使用する用語「卑な金
属」とは、金や白金などの貴金属に対する語で、一般に
空気中で酸化を受けやすく、耐食性に乏しい金属をい
う。なお、亜鉛より卑な金属とは、亜鉛より耐食性の乏
しい金属を指す。
【0056】前記実施形態及び別例から把握される請求
項以外の技術的思想を、以下に記載する。 (1)請求項1〜9のいずれか一項において、前記卑な
金属は、金属粉または金属片である。
【0057】(2)請求項1〜9のいずれか一項に記載
の接着剤組成物は、モータ部品(4)の接着に使用され
る。この場合、モータが高温・高湿条件下で使用されて
も、その部品の接着強度の著しい低下を抑えることがで
きる。
【0058】(3)請求項3〜9のいずれかにおいて、
前記卑金属メッキ金属は卑金属メッキ鋼板である。
(4)請求項3において、前記卑金属メッキ金属は亜鉛
メッキ鋼板であって、前記卑な金属は前記亜鉛メッキ鋼
板のメッキに使用される亜鉛よりも卑な金属である。
【0059】(5)請求項8において、前記卑な金属の
添加量は8〜50重量%である。この場合、高温高湿条
件下で使用されたとき、被着体金属(卑金属メッキ金
属)の防錆効果が一層高まり比較的高い強度を維持でき
る。
【0060】(6)請求項8において、前記卑な金属の
添加量は10〜30重量%である。この場合、被着体金
属(卑金属メッキ金属)の防錆効果が非常に高く強度を
高く維持できる。また接着剤組成物が使い易い粘度とな
る。
【0061】(7)請求項5において、前記卑な金属
は、アルミニウムとマグネシウムのうちの少なくとも一
方である。 (8)請求項1〜9及び前記(1)〜(7)の技術的思
想のいずれかにおいて、前記接着剤樹脂は、エポキシ系
接着剤、アクリル系接着剤およびウレタン系接着剤のう
ちの一つである。
【0062】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1〜9に記載
の発明によれば、接着剤樹脂に混合された卑な金属が、
被着体金属の被着面に存在する卑金属の腐食速度を抑え
るので、高温・高湿条件下に被着体金属がさらされても
接着強度の著しい低下を防ぐことができる。
【0063】請求項10に記載の発明によれば、請求項
1〜9のいずれか一項の接着剤組成物を接着剤に用いる
ので、組立品が高温・高湿条件下で使用されても、卑金
属メッキ鋼鈑からなる部品と他の部品との接着強度の著
しい低下を抑えることができる。
【0064】請求項11に記載の発明によれば、請求項
1〜9のいずれか一項の接着剤組成物を接着剤に用いる
ので、モータが高温・高湿条件下で使用されても、ヨー
クとマグネットの接着強度の著しい低下を抑えることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態におけるヨークとマグネットの接着
部分を示す模式断面図。
【図2】モータの一部破断した模式側面図。
【図3】曝露時間と引張剪断強度との関係を示すグラ
フ。
【図4】アルミニウム粉添加量と引張剪断強度との関係
を示すグラフ。
【符号の説明】
1…組立品としてのモータ、2…被着体金属としてのヨ
ーク、4…他の部品としてのマグネット、10…被着体
金属、卑金属メッキ金属及び卑金属メッキ鋼鈑としての
亜鉛メッキ鋼板、11…鋼板、12…卑金属メッキとし
ての亜鉛メッキ、13…接着剤組成物としての接着剤。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 接着剤樹脂に被着体金属より卑な金属が
    混合されていることを特徴とする接着剤組成物。
  2. 【請求項2】 前記卑な金属は、金属粉と金属片と金属
    繊維のうち少なくとも1つの形態をとり、前記接着剤樹
    脂に1種又は複数種混合されていることを特徴とする請
    求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 【請求項3】 前記被着体金属は卑金属メッキ金属であ
    って、前記卑な金属は前記卑金属メッキ金属のメッキに
    使用されている卑金属よりも卑な金属であることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  4. 【請求項4】 前記被着体金属は少なくとも被着面が亜
    鉛であって、前記卑な金属は、亜鉛よりも卑な金属であ
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載
    の接着剤組成物。
  5. 【請求項5】 前記卑な金属は、アルミニウム系金属と
    マグネシウム系金属のうちの少なくとも一方であること
    を特徴とする請求項4に記載の接着剤組成物。
  6. 【請求項6】 前記卑な金属として少なくともアルミニ
    ウムが混合されていることを特徴とする請求項4に記載
    の接着剤組成物。
  7. 【請求項7】 前記卑な金属はアルミニウムであること
    を特徴とする請求項5又は6に記載の接着剤組成物。
  8. 【請求項8】 前記卑な金属の添加量は、5〜50重量
    %の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれ
    か一項に記載の接着剤組成物。
  9. 【請求項9】 前記卑な金属のサイズは、50〜400
    メッシュの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8の
    いずれか一項に記載の接着剤組成物。
  10. 【請求項10】 組立品(1)を構成する卑金属メッキ
    鋼板からなる部品(2)と他の部品(4)とが、請求項
    1〜9のいずれか一項に記載の接着剤組成物を接着剤
    (13)に用いて接着されていることを特徴とする組立
    品。
  11. 【請求項11】 卑金属メッキ鋼板からなるヨーク
    (2)と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着剤
    組成物を接着剤(13)として前記ヨーク(2)の内周
    面に接着されているマグネット(4)とを備えたモー
    タ。
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