JP2002048762A - ガス濃度センサのヒータ制御装置 - Google Patents

ガス濃度センサのヒータ制御装置

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JP2002048762A
JP2002048762A JP2000238832A JP2000238832A JP2002048762A JP 2002048762 A JP2002048762 A JP 2002048762A JP 2000238832 A JP2000238832 A JP 2000238832A JP 2000238832 A JP2000238832 A JP 2000238832A JP 2002048762 A JP2002048762 A JP 2002048762A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ヒータ通電の制御性を改善し、検出素子を適正
に活性化させること。 【解決手段】A/Fセンサ30は、エンジン排出ガス中
の酸素濃度にほぼ比例した限界電流を出力する検出素子
61と該検出素子61を加熱するヒータ64とを有す
る。マイコン21内のCPU22は、検出素子61のイ
ンピーダンスが目標値に一致するようヒータ64への通
電をフィードバック制御する。また、CPU22は、エ
ンジン10の低温始動時において、検出素子61の検出
インピーダンスと素子温度との相関を崩す要因(リード
部温度)に基づき、目標インピーダンスを補正する。具
体的には、エンジン始動開始からの積算空気量に応じて
目標インピーダンスを補正し、検出インピーダンスと素
子温度との相関ズレによる問題を解消する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス濃度センサの
ヒータ制御装置に係り、詳しくは、ガス濃度センサを活
性化するためのヒータの通電を好適に制御するための技
術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のガス濃度センサとして、例え
ば、エンジンの排出ガス中の酸素濃度を検出する限界電
流式空燃比センサが知られており、当該センサのヒータ
制御装置として、特開平8−278279号公報、特開
平10−300716号公報などの技術が開示されてい
る。
【0003】また、空燃比センサは一般に、断面コップ
状を成すコップ型構造のものと、板状の検出素子やヒー
タ部材等を積層して構成される積層型構造のものとが知
られており、近年では、小型化、低コスト化に適し、且
つ検出素子の昇温特性に優れる積層型構造のものが多用
されつつある。この積層型構造の空燃比センサは、例え
ば特開平11−344466号公報に開示されており、
検出素子とヒータとが間近に配置され、素子温度とヒー
タ温度との差が比較的小さいことから、ヒータ抵抗の検
出値によるヒータ電力制御に代えて、検出素子の内部抵
抗(インピーダンス)によるヒータ通電制御が実施され
る。つまり、検出素子のインピーダンスが所定の目標値
になるよう、ヒータ通電量がフィードバック制御され
る。ここで、このヒータ通電制御では、検出素子のイン
ピーダンスと素子温度とが相関を持つことを前提に、活
性温度相当のインピーダンスを目標値として、掃引法等
により検出したインピーダンスがその目標値になるよう
ヒータ通電量を制御していた。一般には、素子温度が上
昇すればインピーダンスが小さくなることが知られてお
り、一例として、検出素子の活性温度が750℃の場
合、インピーダンスの目標値は30Ω程度となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、空燃比セン
サの構造として通常は、固体電解質等から成る検出素子
がセンサ先端部に配され、リード部を介して検出素子の
出力が取り出されるようになっている。従って、検出素
子の出力(電流信号)を取り出し、その出力からインピ
ーダンスを検出する場合には、その検出値は検出素子の
抵抗成分と、リード部の抵抗成分とを含むことになる。
かかる場合、検出素子の温度に対してリード部の温度が
大きく相違すると、検出素子としてのインピーダンス検
出に影響が出てしまい、それによりヒータ通電の制御性
が悪化する。
【0005】具体的には、例えば、エンジンの低温始動
時等において検出素子が比較的早く昇温するのに対して
リード部の昇温が遅い場合、インピーダンスの検出値が
本来の値(検出素子単体の値)よりも小さくなり、素子
温度が昇温途中であるにも拘わらずあたかも目標値(活
性温度)に達したかのように間違えてしまう。実際に
は、検出素子はヒータによる加熱に加えて排出ガスから
の受熱により早く昇温するのに対し、リード部はハウジ
ングや排気管壁への放熱等により昇温が遅れる。そし
て、検出素子が活性化したと間違えて判断することによ
り、素子温度の上昇が制約されてしまい実際の素子活性
化が遅れる。
【0006】特に、積層型構造の空燃比センサでは、検
出素子と出力取り出し用のリード部とが一体にして作り
込まれ、リード部の影響が大きいことから、上記した不
都合が生じ易く、制御性悪化を招く可能性が高いと考え
られる。
【0007】本発明は、上記問題に着目してなされたも
のであって、その目的とするところは、ヒータ通電の制
御性を改善し、検出素子を適正に活性化させることがで
きるガス濃度センサのヒータ制御装置を提供することで
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】ガス濃度センサは、素子
抵抗(検出素子のインピーダンス)の検出値が目標値に
一致するようヒータ通電量がフィードバック制御される
(ヒータ制御手段)。そして、このヒータ通電制御にて
検出素子が活性化されることにより、検出素子は、被検
出ガス中の特定成分濃度にほぼ比例した限界電流を出力
する。特に請求項1に記載の発明では、素子抵抗の検出
値と素子温度との相関を崩す要因に基づき、素子抵抗の
検出値又は目標値の少なくとも何れか一方を補正する
(補正手段)。ここで、素子抵抗の検出値と素子温度と
の相関を崩す要因とは、センサ出力を取り出すためのリ
ード部の温度であり(請求項2)、前記補正手段は、前
記リード部の温度が低いほど、素子抵抗の検出値を増加
側に補正する或いは素子抵抗の目標値を減少側に補正す
ると良い(請求項3)。
【0009】要するに、リード部温度等を要因として素
子抵抗の検出値又は目標値の何れかを補正することによ
り、素子抵抗の検出値と素子温度との相関ズレによる問
題を解消することが可能となる。その結果、ヒータ通電
の制御性を改善し、検出素子を適正に活性化させること
ができる。因みに、リード部の温度が低いほど、素子抵
抗の検出値を増加側に補正する或いは素子抵抗の目標値
を減少側に補正することは、何れの補正の場合にも、ヒ
ータのフィードバック制御における素子抵抗の偏差を故
意に大きくし、ヒータ通電量を増加させることを意味す
る。
【0010】特に、固体電解質を有する検出素子にヒー
タを積層して配置した、いわゆる積層型構造のガス濃度
センサ(請求項8)では、検出素子と出力取り出し用の
リード部とが一体にして作り込まれ、リード部の影響が
大きいことから相関ズレが生じ易いが、本発明では、上
記の通り適正な補正を行うことにより相関ズレの影響が
排除できる。故に、検出素子が適正に活性化できるとい
った効果がより一層有効的に得られることとなる。
【0011】また、以下の請求項4〜6の如く前記補正
手段を具体化することにより、リード部温度を間接的に
モニタすることができ、抵抗値の補正が簡易に実施でき
る。すなわち、 ・請求項4に記載の発明では、内燃機関の始動開始から
の吸入空気量の積算値に応じて抵抗値の補正を行う。 ・請求項5に記載の発明では、内燃機関からの排出ガス
の温度に応じて抵抗値の補正を行う。 ・請求項6に記載の発明では、内燃機関の始動当初に抵
抗値の補正値を初期設定し、その初期設定した補正値を
時間の経過に従い減衰させる。
【0012】また、請求項7に記載の発明では、内燃機
関の低温始動時にのみ、前記補正手段による補正を実施
する。すなわち、内燃機関の低温始動時には、素子温度
とリード部温度との温度差が生じ、素子抵抗の検出値と
素子温度との相関が崩れがちになる。この場合、上記の
如く補正を行うことにより、目標温度に対して検出素子
がいち早く昇温されるようになり、内燃機関の冷間始動
に際し、検出素子の早期活性化が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を車載エンジンの
空燃比制御システムに具体化した一実施の形態を図面に
従って説明する。本制御システムは、空燃比センサ(A
/Fセンサ)による検出結果を基にエンジンへの燃料噴
射量を所望の空燃比にて制御するものであり、本実施の
形態では特に、A/Fセンサを良好に活性化するための
ヒータ通電制御の内容を中心に以下に詳しく説明する。
【0014】図1は、本実施の形態における空燃比制御
システムの概要を示す全体構成図である。図1におい
て、限界電流式空燃比センサ(以下、A/Fセンサとい
う)30は、エンジン10のエンジン本体11から延び
る排気管12に取り付けられており、電子制御ユニット
(以下、ECUという)20から指令される電圧の印加
に伴い、排ガス中の酸素濃度に比例したリニアな空燃比
検出信号(センサ電流信号)を出力する。
【0015】ECU20は、各種制御の中枢をなすマイ
クロコンピュータ(以下、マイコンという)21を備え
ており、マイコン21は、各種の演算プログラムを実行
するCPU22と、各種プログラムや制御データを予め
記憶するROM23と、演算データを一時的に記憶する
NRAM(ノーマルRAM)24と、電源遮断時にも記
憶内容を保持するデータバックアップ用のSRAM(ス
タンバイRAM)25等により構成されている。マイコ
ン21は、エンジン10の燃料噴射制御や点火制御を実
施する他に、A/Fセンサ30への印加電圧制御や同セ
ンサ30のヒータ通電制御を実施する。
【0016】A/Fセンサ30に関する制御を略述すれ
ば、マイコン21は、A/Fセンサ30に電圧を印加す
るためのバイアス指令信号Vrを、D/A変換器26及
びLPF(ローパスフィルタ)27を介してバイアス制
御回路40に出力する。このとき、D/A変換器26に
てバイアス指令信号Vrがアナログ信号Vbに変換さ
れ、更にLPF27にてアナログ信号Vbの高周波成分
が除去された後、出力電圧Vcがバイアス制御回路40
に入力される。
【0017】バイアス制御回路40内の電流検出回路5
0は、A/Fセンサ30への電圧の印加に伴い流れる電
流値を検出する。当該電流検出回路50にて検出された
電流値のアナログ信号は、A/D変換器28を介してマ
イコン21に入力される。マイコン21は、所定の時間
周期(例えば数ミリ秒毎)でセンサ電流を取り込み、そ
の電流値をA/Fに変換する。また、A/Fセンサ30
のインピーダンス検出に際しては、マイコン21から出
力される矩形状のバイアス指令信号Vrにより、単発的
で且つ所定の時定数を持った電圧がA/Fセンサ30に
印加される。
【0018】更に、マイコン21は、ヒータ制御回路2
9に対してヒータ制御信号を出力する。これにより、A
/Fセンサ30に設けられたヒータ64の通電がデュー
ティ制御される。
【0019】A/Fセンサ30は、積層型のセンサ素子
部(セル)60を有するものであって、その構成を図2
及び図3を用いて説明する。ここで、図2は、A/Fセ
ンサ30の全体構成を示す断面図、図3は、A/Fセン
サ30を構成するセンサ素子部60の断面図である。
【0020】図2に示されるように、A/Fセンサ30
は、排気管壁に螺着される筒状の金属製ハウジング31
を有し、そのハウジング31の下側開口部には素子カバ
ー32が取り付けられている。素子カバー32内には、
長板状のセンサ素子部60の先端(下端)が配設されて
いる。素子カバー32は有底二重構造をなし、排ガスを
カバー内部に取り込むための複数の排気口32aを有す
る。センサ素子部60は、ハウジング31内に配設され
た絶縁部材33を貫通するように図の上方に延び、その
上端部には一対のリード部34が接続されている。
【0021】ハウジング31の上端には本体カバー35
がカシメ着されている。また、本体カバー35の上方に
はダストカバー36が取り付けられ、これら本体カバー
35及びダストカバー36の二重構造によりセンサ上部
が保護される。各カバー35,36には、カバー内部に
大気を取り込むための複数の大気口35a,36aが設
けられている。
【0022】次に、センサ素子部60の構成を図3を用
いて説明する。センサ素子部60は大別して、固体電解
質からなる検出素子61、ガス拡散抵抗層62、大気導
入ダクト63及びヒータ64からなり、これら各部材を
積層して構成されている。また、各部材の周囲には保護
層65が設けられている。
【0023】長方形板状の検出素子(固体電解質)61
は部分安定化ジルコニア製のシートであり、その上面
(ガス拡散抵抗層62側)には白金等からなる多孔質の
計測電極66が形成されると共に、下面(大気導入ダク
ト63側)には同じく白金等からなる多孔質の大気側電
極67が形成されている。計測電極66及び大気側電極
67には、リード部66a,67aが接続されており、
その先はECU20に接続されている。
【0024】ガス拡散抵抗層62は、計測電極66へ排
ガスを導入するための多孔質シートからなるガス透過層
62aと、排ガスの透過を抑制するための緻密層からな
るガス遮蔽層62bとを有する。ガス透過層62a及び
ガス遮蔽層62bは何れも、アルミナ、スピネル、ジル
コニア等のセラミックスをシート成形法等により成形し
たものであるが、ポロシティの平均孔径及び気孔率の違
いによりガス透過率が相違するものとなっている。この
場合、ガス透過層62aの表面はガス遮蔽層62bに被
われているため、センサ素子部周囲の排ガスはガス透過
層62aの側方(図の左右方向)から侵入し、計測電極
66に達する。
【0025】大気導入ダクト63はアルミナ等の高熱伝
導性セラミックスからなり、同ダクト63により大気室
68が形成されている。この大気導入ダクト63は大気
室68内の大気側電極67に大気を導入する役割をな
す。因みに、大気室68は、前記図2に示すカバー3
5,36の大気口35a,36aに連通している。
【0026】大気導入ダクト63の下面にはヒータ64
が取り付けられている。ヒータ64は、車載バッテリか
らの通電により発熱する発熱体64aと、それを覆う絶
縁シート64bとからなり、発熱体64aの両端にはリ
ード部64cが接続されている。但し、図3の構成以外
に、発熱体64aを検出素子61に埋設したり、発熱体
64aをガス拡散抵抗層62に埋設したりする構成も可
能である。
【0027】上記構成のA/Fセンサ30は、図4に示
す電圧−電流特性を持つ。すなわち、センサ素子部60
(検出素子61)は、酸素濃度を直線的特性にて検出し
得るものであり、酸素濃度に応じた限界電流を発生す
る。限界電流(センサ電流)の増減はA/F値の増減
(すなわち、リーン・リッチの程度)に対応しており、
A/F値がリーン側になるほど限界電流は増大し、A/
F値がリッチ側になるほど限界電流は減少する。ここ
で、検出素子61のインピーダンス(素子抵抗)と同素
子61の温度(素子温度)とは相関があり、素子温度が
上昇するほど、インピーダンスが低下する傾向にある。
この場合、検出素子61のインピーダンスが目標値(例
えば30Ω)になるようヒータ通電をF/B制御するこ
とにより、素子温度が目標温度(例えば750℃)に保
持される。
【0028】次に、ヒータ通電制御の概要について説明
する。本実施の形態のヒータ通電制御では、エンジン1
0の低温始動時等、検出素子61のインピーダンス(検
出値)と素子温度との相関が崩れる場合において目標イ
ンピーダンスZtgの補正を行うことを特徴としてお
り、先ず始めにその概要を説明する。
【0029】要するに、検出素子61のインピーダンス
と素子温度とは図6に実線で示す相関を持っており、掃
引法等により検出される検出インピーダンスZreが検
出素子61単体のインピーダンスに一致していれば、上
記相関により適正なヒータF/B制御が可能となる。と
ころが、検出インピーダンスZreとして検出される値
は、検出素子61の抵抗成分のみならずリード部(図2
ではセンサ素子部60に接続されたリード部34、図3
ではリード部66a,67a)の抵抗成分を含む。それ
故に、エンジン10の低温始動時においては、上記した
相関が図6の二点差線のように崩れてしまう。これは、
A/Fセンサ30おいて、リード部の温度上昇速度と検
出素子61の温度速度とが一致せず、実際の素子温度が
上昇していても、リード部の影響により検出インピーダ
ンスZreが実際の素子温度相当の値よりも低い値にな
ってしまうからである。更に言えば、これは、検出素子
61はヒータ64による過熱と排気熱により比較的早く
昇温されるのに対し、リード部はハウジングや排気管壁
等への放熱により昇温が比較的遅いことに起因する。
【0030】本願発明者によれば、A/Fセンサ30の
リード部温度と検出インピーダンスZreとは図7に示
す関係を持つことが判明している。図7では、リード部
温度が高く素子温度とほぼ一致する場合(図のAの場
合)、検出インピーダンスが所定の目標値(30Ω)に
なることで、素子温度が所定の活性温度(750℃)に
達する。これに対して、リード部温度が低い場合(図の
Bの場合)には、検出インピーダンスが22Ωになるこ
とで、素子温度が所定の活性温度(750℃)に達する
ことが分かる。そこで、エンジン10の低温始動時に
は、検出素子61の検出インピーダンスと素子温度との
相関が崩れることを考慮し、図7の関係に基づいて目標
インピーダンスZtgの補正を行う。
【0031】具体的には本実施の形態では、リード部温
度を簡易的に推定する手法として、エンジン始動開始か
らの吸入吸気量の積算値(積算空気量sumq)を求
め、その積算空気量sumqに基づいてZtg補正を行
う。図8は、エンジン始動開始からの積算空気量sum
qと検出インピーダンスZreとの関係を示す図であ
る。図8では、積算空気量sumqが例えば比較的小さ
いQ1であれば検出インピーダンスZreが22Ωにな
ることで、素子温度が活性温度(750℃)に達し、積
算空気量sumqがQ2付近になると、検出インピーダ
ンスが30Ωになることで、素子温度が活性温度(75
0℃)に達する。またより詳しくは、積算空気量sum
qが小さい領域では、インピーダンス変化の勾配は比較
的大きく、同sumqが大きくなると、次第にインピー
ダンス変化の勾配が緩やかになる。
【0032】ここで、検出素子61を早期に活性温度ま
で昇温するには、積算空気量sumqに応じて目標イン
ピーダンスZtgをマイナス側に補正し、その補正後の
Ztgによりヒータ通電をF/B制御する。この場合、
目標インピーダンスZtgの補正量Zhは図9の関係に
基づいて設定される。図9の関係は、前記図8に基づい
て与えられるものであり、図9によれば、エンジン始動
開始からの積算空気量sumqが大きくなるほど、すな
わち暖機が進むほど、インピーダンス補正量Zhが小さ
くなる。
【0033】図10は、マイコン21内のCPU22に
より実施されるヒータ制御量算出ルーチンを示すフロー
チャートであり、例えば131ミリ秒毎に実行される。
図10では、大きくは全通電制御、第1のヒータF/B
制御、第2のヒータF/B制御が順次実施されるように
なっており、概略として、エンジンの始動当初には全通
電制御が実施され、その全通電制御ではヒータ制御量
(Duty)が100%で制御される。また、全通電制
御に引き続き第1のヒータF/B制御が実施され、この
第1のヒータF/B制御では、インピーダンスの偏差に
応じてヒータ制御量(Duty)が0〜80%の範囲内
で制御される。更に、第1のヒータF/B制御に引き続
き第2のヒータF/B制御が実施され、この第2のヒー
タF/B制御では、インピーダンスの偏差に応じてヒー
タ制御量(Duty)が0〜60%の範囲内で制御され
る。
【0034】具体的には、センサ新品時のインピーダン
ス特性を示す図12において、検出インピーダンスZr
eと素子温度とが図の実線の関係にあり、目標インピー
ダンスZtgが素子温度750℃相当の「30Ω」であ
る場合、インピーダンスの偏差ΔZ(=Zre−Zt
g)が所定値K1(例えば、20Ω)よりも大きけれ
ば、全通電制御が実施される。また、インピーダンスの
偏差ΔZが所定値K2〜K3の範囲内(例えば、10〜
20Ω)にあれば、第1のヒータF/B制御が実施さ
れ、ΔZが所定値K2(例えば、10Ω)よりも小さけ
れば、第2のヒータF/B制御が実施される。
【0035】なおここで、検出インピーダンスZre
は、周知の掃引法により検出されるようになっており、
詳しくは図5に示すように、A/Fセンサ30の印加電
圧を一時的に正方向及び負方向に変化させる。そして、
この電圧変化時における正負何れか一方の電圧変化量Δ
Vと電流変化量ΔIとから検出インピーダンスZreを
算出する(Zre=ΔV/ΔI)。このインピーダンス
検出の処理は、CPU22により実施され、これが「素
子抵抗検出手段」に相当する(但し、詳細な処理につい
て図示を略す)。
【0036】以下には、ヒータ通電の詳しい内容を図1
0に従い説明する。先ず図10のステップ101では、
目標インピーダンスZtgの設定を行う。このとき、例
えばZtg=30Ωが設定される。その後、ステップ1
02〜104では、必要に応じて目標インピーダンスZ
tgの補正を実施する。つまり、ステップ102では、
今回がエンジン10の低温始動時であるか否かを判別す
る。例えば、(1)その時点のエンジン水温が60℃未
満であること、(2)その時点のエンジン水温が、前回
のエンジン停止時における水温よりも30℃以上低い温
度であること、といった条件を判別し、上記(1),
(2)が共に満たされる場合、低温始動時であると判別
する。但し、それ以外に、吸気温度、外気温度、ソーク
時間(車両放置時間)等を考慮してエンジン10の低温
始動判定を行うようにしても良い。
【0037】低温始動時である場合ステップ103に進
み、前述の図9の関係を用い、エンジン始動開始からの
積算空気量sumqに基づいてインピーダンス補正量Z
hを算出する。そしてその後、ステップ104では、イ
ンピーダンス補正量Zhにより目標インピーダンスZt
gを補正する(Ztg=Ztg−Zh)。これにより、
積算空気量sumqが小さいほど(すなわちリード部温
度が低いほど)、目標インピーダンスZtgが小さな値
に補正されることとなる。
【0038】上記ステップ103,104のインピーダ
ンス補正は、エンジン10の低温始動時に繰り返し実施
されるようになっており、例えば、ステップ102がY
ESの時に「補正実行フラグ」がセットされ、補正実行
フラグがセットされている期間でインピーダンス補正
(ステップ103,104)が行われる。そして、イン
ピーダンス補正量Zhが0まで減衰した時に補正実行フ
ラグがクリアされ、インピーダンス補正が終了されるよ
うになっている。なお、エンジン始動後の所定時間(例
えば360秒)で区切ってインピーダンス補正を終了す
るようにしても良い。
【0039】因みに、積算空気量sumqは、例えば図
11の処理により4ms毎に算出される。つまり、図1
1において、ステップ201では、エアフロメータ等の
検出値によりその時の吸入空気量を算出し、続くステッ
プ202では、始動開始からの積算空気量sumqを算
出する。
【0040】その後、ステップ105では、検出インピ
ーダンスZreと目標インピーダンスZtgとから偏差
ΔZを算出する(ΔZ=Zre−Ztg)。次に、ステ
ップ106では、ヒータ制御の許可条件が成立するか否
かを判別する。この許可条件としては、 ・エンジン始動後にエンジン回転数が所定値(例えば2
00rpm)以上に上昇したこと、 ・バッテリ電圧が低下していないこと、 ・ヒータ制御に関与するその他のセンサの異常がないこ
と、 等を含み、これらが成立する場合にヒータ制御が許可さ
れる。ヒータ制御の許可条件が不成立の場合、ステップ
107に進み、ヒータ制御量(Duty)を0%とす
る。
【0041】また、ヒータ制御の許可条件が成立した場
合はステップ108に進み、ヒータ全通電を実施するか
否かを判別する。ヒータ全通電の実施条件としては、全
通電の開始後の経過時間が所定時間(例えば10秒)以
内であり、且つインピーダンス偏差ΔZ(=Zre−Z
tg)が所定値K1以上であることを含み、エンジンの
低温始動時等においては検出インピーダンスZreが非
常に大きな値であることから、ステップ108がYES
となり、ヒータ全通電を実施する。つまり、ステップ1
09に進み、ヒータ制御量(Duty)を100%とす
る。
【0042】また、ステップ108がNOであればステ
ップ110に進み、インピーダンスの偏差ΔZが所定値
K2よりも大きいか否かを判別する。そして、ステップ
110がYESであればステップ111に進み、第1の
ヒータF/B制御を実施する。このとき、前述した通り
0〜80%の範囲でDutyが設定される。但し実際に
は、エンジンの始動直後はインピーダンスの偏差ΔZが
未だ大きいため、80%付近のDutyが設定されるこ
ととなる。
【0043】また、ステップ110がNOの場合、ステ
ップ112に進み、第2のヒータF/B制御を実施す
る。このとき、前述した通り0〜60%の範囲でDut
yが設定される。本実施の形態の場合、インピーダンス
の偏差ΔZに応じて、ヒータ制御量(Duty)が0
%,20%,40%,60%の何れかに設定されるよう
になっている(但し、第1のヒータF/B制御では、こ
れに80%が加わる)。図12を用いて具体的に説明す
れば、・素子温度が目標値よりも高温の場合において、
ΔZ<−K4であれば、Duty=0%とし、ΔZ=−
K3〜−K4であれば、Duty=20%とする。・素
子温度が目標値付近にあれば、すなわち、|ΔZ|≦K
3であれば、この温度が保持できるようDuty=40
%とする。・素子温度が目標値よりも低温の場合におい
て、ΔZ=K3〜K2であれば、Duty=60%とす
る。
【0044】最後に、ステップ113では、ヒータ制御
量の急変を防止すべく、今回設定したヒータ制御量(D
uty)になまし処理を実施する。例えば、 Duty=(3×Duty(i−1)+今回Duty)
/4 といった演算によりDutyを設定する。なお本実施の
形態では、ステップ110〜112が本発明の「ヒータ
制御手段」に相当し、ステップ103,104が「補正
手段」に相当する。
【0045】次に、ヒータ通電制御についてより具体的
な動作を図13のタイムチャートを用いて説明する。な
お、図13は、エンジン10の低温始動時におけるヒー
タ通電の様子を示しており、目標インピーダンス補正有
りの場合を実線、補正無しの場合を1点鎖線で図示す
る。
【0046】エンジン始動後、A/Fセンサ30のヒー
タ通電が開始されると、素子温度が次第に上昇し、それ
に伴い検出インピーダンスZreが低下する。また、エ
ンジン始動後、時間の経過に伴い積算空気量sumqが
増加していく。このA/Fセンサ30の暖機(活性化)
過程において、前述の通り検出インピーダンスZreと
素子温度との相関が崩れる。従って、目標インピーダン
スZtgの補正を行わず、設定当初の目標値(30Ω)
をそのまま使う従来制御(1点鎖線)では、素子温度が
活性温度(750℃)に達していなくても検出インピー
ダンスZreが目標値(30Ω)に収束する。そしてそ
れ以降、インピーダンス一定で制御される。この場合、
素子温度が目標温度(750℃)に達していなくても制
御Dutyが小さくなることから、検出素子61の実際
の活性化が遅れてしまう。
【0047】これに対して本実施の形態では、上記した
通り積算空気量sumqに応じてインピーダンス補正量
Zhが設定され、そのZhにより目標インピーダンスZ
tgが補正される。これにより、目標インピーダンスZ
tgは当初設定した目標値(30Ω)に対してマイナス
側に補正され、その補正後の目標値に対してヒータ通電
がフィードバック制御される。検出インピーダンスZr
eは、当初設定した目標値(30Ω)に対してマイナス
側に一旦オーバーシュートし、その後、補正後のZtg
の動きに沿って徐々に上昇していく。この場合、Ztg
補正を行わない従来技術に比べて検出素子61の活性化
が早くなり、早期に目標温度でのヒータ制御が開始でき
るようになる。
【0048】以上詳述した本実施の形態によれば、以下
に示す効果が得られる。エンジン始動開始からの積算空
気量sumqに応じて目標インピーダンスZtgを補正
するので、検出インピーダンスZreと素子温度との相
関ズレによる問題を解消することが可能となる。その結
果、ヒータ通電の制御性を改善し、検出素子61を適正
に活性化させることができる。
【0049】特に、積層型構造のA/Fセンサ30で
は、検出素子61と出力取り出し用のリード部とが一体
にして作り込まれ、リード部の影響が大きいことから相
関ズレが生じ易いが、上記の通り適正な補正を行うこと
により相関ズレの影響が排除できる。故に、検出素子6
1が適正に活性化できるといった効果がより一層有効的
に得られることとなる。
【0050】また、エンジン10の低温始動時に目標イ
ンピーダンスZtgを補正するので、目標とする活性温
度に対して検出素子61が昇温されるようになり、エン
ジン10の冷間始動に際し、検出素子61の早期活性化
が可能となる。
【0051】また、本実施の形態では、空燃比制御シス
テムの設計にあたりばらつき項目の削減が可能となる。
つまり、システム設計では、様々なセンサ系や制御系の
ばらつきを考慮してA/Fセンサの温度補償範囲を満足
させなくてはならないが、この際、既述の通りヒータ通
電の制御性が改善されればその分設計の適正化が容易と
なる。
【0052】加えて、空燃比制御システムとしては、上
記の通り検出素子61の早期活性化が可能となることか
ら、エンジン始動後早期にA/F検出が可能となり、い
ち早く適正な空燃比F/B制御が開始できる。故に、排
気エミッションが改善できるようになる。
【0053】なお本発明は、上記以外に次の形態にて具
体化できる。上記実施の形態では、エンジン始動開始か
らの積算空気量sumqを算出すると共に、図9の関係
に基づきsumqに応じて目標インピーダンスZtgを
補正したが、これを以下のように変更する。 (1)前記図9の関係に代えて、図14の関係を用い
る。図14では、積算空気量sumqに加えて始動時水
温の高低に応じてインピーダンス補正量Zhを設定して
おり、始動時水温が低いほど、インピーダンス補正量Z
hが大きな値に設定される。言い換えれば、始動時水温
が低いほど、目標インピーダンスZtgが小さい値に補
正される。この場合、始動時水温に応じて、インピーダ
ンス補正量の設定マップを複数設けても良い。また、図
9の関係により設定したインピーダンス補正量(基本
値)に対して水温補正係数を乗算し、インピーダンス補
正量Zhを算出するようにしても良い。 (2)排気温センサ等により排気温度を検出し、その排
気温度に応じて目標インピーダンスZtgを補正する。
この場合、排気温度は、検出素子61やヒータ64の昇
温速さに関係し、排気温度が低いほど昇温が遅い。そこ
で、図15に示すように、エンジン始動当初に設定した
初期値に対し、排気温度に応じてインピーダンス補正量
Zhを変更する。 (3)エンジン始動当初に、所定のインピーダンス補正
量Zhの初期値を設定し、時間経過に従い補正量Zhを
次第に減衰させるようにする。上記(2),(3)の場
合、補正量Zhの初期値は、エンジン始動当初における
エンジン水温に応じて設定されると良い。
【0054】上記実施の形態では、検出インピーダンス
Zreと素子温度との相関を崩す要因(リード部温度)
に基づき目標インピーダンスZtgを補正したが、この
構成を変更する。例えば、目標インピーダンスZtgの
補正に代えて、検出インピーダンスZreを補正した
り、或いは検出インピーダンスZreと目標インピーダ
ンスZtgの両方を補正したりしても良い。検出インピ
ーダンスZreを補正する場合には、リード部温度が低
いほど(例えば、sumqが小さいほど)、Zreを増
加側に補正する。何れにしろ、エンジンの低温始動時に
おいてインピーダンス偏差を故意に大きくし、ヒータ制
御量(Duty)を増加させるよう補正するのであれば
良い。
【0055】素子抵抗として、インピーダンスを検出す
る他、インピーダンスの逆数であるアドミタンスを検出
するようにしても良い。この場合、検出素子61の目標
温度はアドミタンスの目標値で制御される。
【0056】上記実施の形態では、積層型A/Fセンサ
を用いて空燃比制御システムを具体化したが、断面コッ
プ状の検出素子を持つ、いわゆるコップ型A/Fセンサ
を用いても良い。また、本発明は、A/Fセンサを用い
た空燃比検出装置以外にも適用できる。つまり、NO
x,HC,CO等のガス濃度成分が検出可能なガス濃度
センサを用いたガス濃度検出装置にも適用できる。当該
他のガス濃度検出装置においても上記実施の形態と同様
の手法を用いることで、ヒータ通電の制御性を改善し、
検出素子を適正に活性化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における空燃比制御システム
の概要を示す構成図。
【図2】A/Fセンサの構造を示す断面図。
【図3】センサ素子部の断面図。
【図4】A/Fセンサの出力特性を示す図。
【図5】インピーダンス検出時における電圧及び電流の
波形図。
【図6】検出素子のインピーダンス特性を示す図。
【図7】リード部温度と検出インピーダンスとの関係を
示す図。
【図8】積算空気量と検出インピーダンスとの関係を示
す図。
【図9】インピーダンス補正量を設定するための図。
【図10】ヒータ制御量算出ルーチンを示すフローチャ
ート。
【図11】積算空気量の算出ルーチンを示すフローチャ
ート。
【図12】検出素子のインピーダンス特性を示す図。
【図13】エンジン始動時におけるヒータ通電の様子を
示すタイムチャート。
【図14】他の形態においてインピーダンス補正量を設
定するための図。
【図15】他の形態においてインピーダンス補正量を設
定するための図。
【符号の説明】
10…エンジン(内燃機関)、12…排気管、20…E
CU、21…マイコン、22…CPU、30…A/Fセ
ンサ(ガス濃度センサ)、34…リード部、61…検出
素子、64…ヒータ、66a,67a…リード部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 27/46 331

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被検出ガス中の特定成分濃度にほぼ比例し
    た限界電流を出力する検出素子と該検出素子を加熱する
    ヒータとを有し、リード部を介して前記検出素子の出力
    が取り出されるガス濃度センサと、 前記ガス濃度センサの素子抵抗を検出する素子抵抗検出
    手段と、 素子抵抗の検出値が目標値に一致するようヒータへの通
    電をフィードバック制御するヒータ制御手段と、 素子抵抗の検出値と素子温度との相関を崩す要因に基づ
    き、素子抵抗の検出値又は目標値の少なくとも何れか一
    方を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とするガ
    ス濃度センサのヒータ制御装置。
  2. 【請求項2】素子抵抗の検出値と素子温度との相関を崩
    す要因とは、前記リード部の温度である請求項1に記載
    のガス濃度センサのヒータ制御装置。
  3. 【請求項3】請求項2に記載のヒータ制御装置におい
    て、 前記補正手段は、前記リード部の温度が低いほど、素子
    抵抗の検出値を増加側に補正する或いは素子抵抗の目標
    値を減少側に補正するガス濃度センサのヒータ制御装
    置。
  4. 【請求項4】内燃機関の排気管に前記ガス濃度センサが
    配設され、同センサは内燃機関からの排出ガス中の特定
    成分濃度を検出する装置であって、 前記補正手段は、内燃機関の始動開始からの吸入空気量
    の積算値に応じて抵抗値の補正を行う請求項1に記載の
    ガス濃度センサのヒータ制御装置。
  5. 【請求項5】内燃機関の排気管に前記ガス濃度センサが
    配設され、同センサは内燃機関からの排出ガス中の特定
    成分濃度を検出する装置であって、 前記補正手段は、内燃機関からの排出ガスの温度に応じ
    て抵抗値の補正を行う請求項1に記載のガス濃度センサ
    のヒータ制御装置。
  6. 【請求項6】前記補正手段は、内燃機関の始動当初に抵
    抗値の補正値を初期設定し、その初期設定した補正値を
    時間の経過に従い減衰させる請求項1に記載のガス濃度
    センサのヒータ制御装置。
  7. 【請求項7】内燃機関の低温始動時にのみ、前記補正手
    段による補正を実施する請求項1〜6の何れかに記載の
    ガス濃度センサのヒータ制御装置。
  8. 【請求項8】前記ガス濃度センサは、固体電解質を有す
    る検出素子にヒータを積層して配置した積層型構造を持
    つ請求項1〜7の何れかに記載のガス濃度センサのヒー
    タ制御装置。
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