JP2002038268A - 炭素被膜及びその製造方法 - Google Patents

炭素被膜及びその製造方法

Info

Publication number
JP2002038268A
JP2002038268A JP2001148558A JP2001148558A JP2002038268A JP 2002038268 A JP2002038268 A JP 2002038268A JP 2001148558 A JP2001148558 A JP 2001148558A JP 2001148558 A JP2001148558 A JP 2001148558A JP 2002038268 A JP2002038268 A JP 2002038268A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon
carbon coating
gas
carbon film
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001148558A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiromasa Yagi
弘雅 八木
Yoichi Domoto
洋一 堂本
Hisaki Tarui
久樹 樽井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Electric Co Ltd
Original Assignee
Sanyo Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sanyo Electric Co Ltd filed Critical Sanyo Electric Co Ltd
Priority to JP2001148558A priority Critical patent/JP2002038268A/ja
Publication of JP2002038268A publication Critical patent/JP2002038268A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬質炭素被膜の機械的特性及び化学的安定性
を維持しながら、高い導電性を持たせることができる炭
素被膜及びその製造方法を得る。 【解決手段】 基体上に形成された炭素被膜であって、
CO2 分子を含むことを特徴としており、赤外吸収スペ
クトルにおいて、CO2 分子に基づく2350cm-1
近の吸収ピークAと670cm-1付近の吸収ピークBと
が認められることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素被膜及びその
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
ダイヤモンド状炭素被膜等の炭素被膜は、機械的特性及
び化学的安定性に優れているため、種々の分野において
コーティング材料として注目を集めている。例えば、電
気シェーバー等の刃、スクリーン印刷用マスク、オフィ
スオートメーション(OA)機器部品、その他の摺動部
品、太陽電池、SAWデバイス等の電子デバイス、半導
体デバイス等においてコーティング薄膜として用いられ
ている。
【0003】しかしながら、ダイヤモンド状炭素被膜等
の硬質炭素被膜は、一般に絶縁性が高く、その導電性を
高めようとすると、グラファイト構造に近くなるため、
高い硬度が得られなくなるという問題があった。
【0004】本発明の目的は、硬質炭素被膜の機械的特
性及び化学的安定性を維持しながら、高い導電性を持た
せることができる炭素被膜及びその製造方法を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炭素被膜
にCO2分子を含ませることにより、炭素被膜本来の機
械的特性及び化学的安定性を維持しながら、高い導電性
を付与することができることを見出し、本発明の第1の
局面を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明の第1の局面は、基体上
に形成された炭素被膜であり、CO 2分子を含むことを
特徴としている。
【0007】本発明の第1の局面に従う炭素被膜が、C
2 分子を含むことは、炭素被膜の赤外吸収スペクトル
において、CO2 分子に基づく吸収ピークが認められる
ことにより確認することができる。CO2 分子に基づく
吸収ピークは、一般に2350cm-1付近、及び670
cm-1付近に認められる。従って、本発明の第1の局面
に従う好ましい実施形態においては、赤外吸収スペクト
ルにおいて、CO2分子に基づく2350cm-1付近及
び670cm-1付近の吸収ピークが認められることを特
徴としている。
【0008】本発明の第1の局面に従う炭素被膜は、高
い導電性を有しており、例えば10 9Ω・cm以下の体
積抵抗率を有している。
【0009】本発明の第1の局面に従う炭素被膜は、高
い硬度を有していることが好ましく、例えば2500H
v以上の硬度を有している。
【0010】さらに、本発明者らは、炭素被膜の表面
を、CO2を含むガスで表面処理することにより、炭素
被膜の表面に高い導電性を付与することができることを
見出し、本発明の第2の局面を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明の第2の局面は、基体上
に形成された炭素被膜であって、その表面がCO2を含
むガスで表面処理されたことを特徴としている。
【0012】本発明の第2の局面に従う炭素被膜は、そ
の表面に高い導電性を有しており、例えば106Ω/□
以下の表面抵抗を有している。
【0013】本発明の第2の局面に従う炭素被膜は、高
い硬度を有していることが好ましく、例えば2500H
v以上の硬度を有することが好ましい。
【0014】本発明の第1の局面及び第2の局面におけ
る炭素被膜の概念には、ダイヤモンド結晶構造を有する
ダイヤモンド薄膜、及びダイヤモンド状炭素被膜などの
非晶質炭素被膜が含まれ、さらにはダイヤモンド構造と
非晶質炭素構造とが混在している炭素被膜も含まれる。
【0015】本発明の第1の局面及び第2の局面におい
ては、基体上に中間層を設け、この中間層の上に炭素被
膜を形成してもよい。このような中間層は、基体に対す
る炭素被膜の密着性が不十分である場合に、基体に対す
る炭素被膜の密着性を向上させるために設けられること
が好ましい。中間層の具体的な材料としては、例えば、
Si、Ti、Zr、Ge、Ru、Mo、及びWからなる
グループより選ばれる少なくとも1種、並びにこれらの
酸化物、窒化物、または炭化物などが挙げられる。ま
た、中間層は複数の異なる層を積層した構造を有してい
てもよい。
【0016】本発明の第3の局面は、本発明の第1の局
面に従う炭素被膜を製造することができる方法であり、
CO2を含む原料ガスを用いることを特徴とする炭素被
膜の製造方法である。
【0017】原料ガスとして、具体的には、CO2と炭
化水素の混合ガスが挙げられる。炭化水素は、炭素被膜
中の炭素成分を与える原料ガス成分であり、CO2は、
炭素被膜中のCO2 成分を与える原料ガス成分である。
炭化水素としては、CH4(メタン)、C26(エタ
ン)、C38(プロパン)、C410(ブタン)、C2
4(エチレン)、及びC22(アセチレン)から選ばれ
る少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0018】炭素被膜は、例えば、上記の原料ガスを用
いたプラズマ気相合成法等のCVD法或いはイオンビー
ム照射法により形成することができる。これらの方法に
より炭素被膜を形成する場合、イオンビームの加速電圧
あるいはプラズマ気相合成時の基体バイアス電圧が20
0V以上であることが好ましい。基体バイアス電圧は、
基体または基体のホルダーに高周波電力を印加すること
により発生させることができる。
【0019】また、気相合成法を用いる場合には、形成
時の条件を、形成速度が5nm/min以上、或いはガ
ス圧力と形成速度の積が0.5Pa・nm/min以上
となるように調整して炭素被膜を形成することが好まし
い。
【0020】本発明の第4の局面は、本発明の第2の局
面の炭素被膜を製造することができる方法であり、CO
2を含むガスを処理用ガスとして用いて、炭素被膜の表
面を処理することを特徴とする炭素被膜の製造方法であ
る。
【0021】本発明の第4の局面では、炭素被膜を形成
した後、炭素被膜の表面をCO2を含むガスで表面処理
する。炭素被膜の形成方法は特に限定されるものではな
いが、例えば、本発明の第3の局面において説明した炭
化水素ガスを原料ガスとして用い、CVD法等により形
成させることができる。この炭素被膜は、本発明の第1
の局面に従うCO2を含む炭素被膜であってもよい。
【0022】本発明の第4の局面に従うことにより、炭
素被膜の表面に導電性を付与することができる。このよ
うな炭素被膜表面の導電性は、CO2を含むガスで表面
処理することにより、炭素被膜表面にCO2分子が含ま
れることにより与えられるものと思われる。
【0023】処理用ガスとしては、CO2のみを含むガ
スであってもよいし、CO2に水素ガスあるいは希ガス
等を添加したガスであってもよい。炭素被膜の表面処理
は、上記処理用ガスをソースガスとして用いたイオンビ
ームの照射、あるいは上記処理用ガス雰囲気中でのプラ
ズマの照射等により行うことができる。
【0024】また、表面処理の際、上記第3の局面と同
様に、イオンビームの加速電圧あるいはプラズマ処理時
の基体バイアス電圧を200V以上としてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】図3は、本発明の実施例において
用いる炭素被膜形成装置を示す概略断面図である。図3
に示すように、この炭素被膜形成装置において、真空チ
ャンバー8の外側にはプラズマ発生室4が設けられてい
る。プラズマ発生室4には、導波管2の一端が取り付け
られており、導波管2の他端には、マイクロ波供給手段
1が設けられている。
【0026】マイクロ波供給手段1で発生したマイクロ
波は、導波管2及びマイクロ波導入窓3を通って、プラ
ズマ発生室4に導かれる。プラズマ発生室4には、CH
4、CO2などの原料ガスを導入するためのガス導入管5
が設けられている。また、プラズマ発生室4の周囲に
は、プラズマ磁界発生装置6が設けられている。
【0027】マイクロ波による高周波磁界と、プラズマ
磁界発生装置6からの磁界を作用させることにより、プ
ラズマ発生室4内に高密度の電子サイクロトロン共鳴
(ECR)プラズマを発生させる。
【0028】一方、真空チャンバー8内には、基体ホル
ダー7が設けられている。基体ホルダー7は、支持棒1
2によって支持されており、支持棒12は回転中心部1
2aを中心として回転し得るように設けられている。従
って、基体ホルダー7は、図3に実線で示す位置と、点
線で示す位置の2つの位置状態が実現し得るように構成
されている。基体ホルダー7上に保持された基体の上に
炭素被膜を形成する場合には、プラズマ発生室4側に向
いた実線で示すような位置に設定される。また、後述す
るように中間層等をスパッタリング法により形成する場
合には、図3に点線で示すような、ターゲット11側に
向かう位置に設定される。ターゲット11には、高周波
電源13が接続されている。
【0029】ここでは、図3に実線で示すような位置に
基体ホルダー7が設定されており、基体ホルダー7の上
に基体が保持されている。プラズマ発生室4で発生した
プラズマ中のイオンは、グリッド9によって加速され、
真空チャンバー8内に引き出される。このとき、グリッ
ド9に印加される電圧の大きさにより、イオンの加速エ
ネルギーが制御される。このようなプラズマ中のイオン
を、基体ホルダー7上の基体に照射することにより、炭
素被膜を形成することができる。
【0030】(実験1)上記の炭素被膜形成装置を用い
て、炭素被膜を形成した。まず、真空チャンバー8内を
10-5Pa以下に排気する。次にプラズマ発生室4内に
CH4ガスをガス導入管5から導入する。また同時に、
CO2ガスをCH4ガスに対する流量比が25%となるよ
うにプラズマ発生室4内に導入した。そして、ガス圧
力,マイクロ波電力を変化させて炭素被膜を形成した。
尚、このときのグリッド9に印可する電圧は600Vと
した。
【0031】上記の薄膜形成条件で、基体としてのSi
ウエハーの上に、膜厚約1μmのダイヤモンド状炭素被
膜を形成した。
【0032】表1は、各ガス圧力,マイクロ波電力で形
成した炭素被膜の形成速度(nm/min)を示してい
る。また、各形成速度の下にガス圧力と形成速度の積
(Pa・nm/min)を括弧書きで示している。
【0033】
【表1】
【0034】同表に示すように、ガス圧力が高く、マイ
クロ波電力が大きいほど形成速度は大きくなる。
【0035】次いで、各炭素被膜について体積抵抗率を
測定した。
【0036】図4は、体積抵抗率の測定方法を説明する
ための模式図である。Siウエハー基板20の上には、
炭素被膜21が形成されており、この炭素被膜21の上
に、所定の面積を有するAl電極22が形成されてい
る。このAl電極22と、基板20の裏面との間に直流
電源25及び電流計26を直列に接続し、測定された電
流電圧特性から抵抗Rを求め、体積抵抗率ρVを以下に
示す式によって算出する。なお、SはAl電極の面積を
示し、tは炭素被膜の膜厚を示している。
【0037】ρV =R・S/t なお、この測定方法は、基板20としてSi基板のよう
に炭素被膜に比べ高い導電性を有する基板を用いた場合
に採用することができる。ガラス基板のように絶縁性の
基板を用いた場合には、後述する方法により体積抵抗率
を測定することができる。
【0038】上記のようにして求めた各炭素被膜の体積
抵抗率を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2に示す如く、体積抵抗率は、形成速度
或いはガス圧力と形成速度の積が大きくなるほど小さく
なり、形成速度が5nm/min以上或いはガス圧力と
形成速度の積が0.5Pa・nm/min以上となる条
件で形成した炭素被膜において、109Ω・cm以下の
低抵抗な炭素被膜を得られることがわかった。
【0041】図1は、表2において8.0×108Ω・
cmの体積抵抗率が得られた炭素被膜の赤外吸収スペク
トルである。また、図2は、表2において1.4×10
12Ω・cmの体積抵抗率が得られた炭素被膜の赤外吸収
スペクトルである。
【0042】図1及び図2の比較から明らかなように、
体積抵抗率が109Ω・cm以下の低抵抗な炭素被膜で
は、CO2分子に基づく2350cm-1付近の吸収ピー
クAと670cm-1付近の吸収ピークBが観察されてい
る。従って、CO2分子を含ませることによって、体積
抵抗率の小さい低抵抗な炭素被膜が得られることがわか
る。 (実験2)次に、CO2ガスをCH4ガスに対して流量比
で、0%、12.5%、25%、37.5%、及び50
%となるようにガス導入管5から供給し、プラズマ発生
室4内の真空度を1.0×10-1Pa、投入するマイク
ロ波の電力を200Wとした以外は実験1と同一の条件
で炭素被膜を形成し、得られた各炭素被膜について、体
積抵抗率を測定した。その結果を表3及び図7に示す。
【0043】
【表3】
【0044】表3及び図7から明らかなように、原料ガ
スとして、CO2ガスをCH4ガスに対して流量比で25
%以上混合して形成した炭素被膜は、109Ω・cm以
下の低い体積抵抗率が得られており、高い導電性を示し
ている。
【0045】また、CO2ガスをCH4ガスに対して3
7.5%及び50%混合して形成した炭素被膜について
赤外吸収スペクトルを観察したところ、CO2分子に基
づく2350cm-1付近の吸収ピークAと670cm-1
付近の吸収ピークBが観察された。
【0046】(実験3)次に、基体として、Siウエハ
ーに代えて、ステンレス基板を用い、このステンレス基
板の上に炭素被膜を形成した。ステンレス基板と炭素被
膜との密着性は一般に良好でないので、ステンレス基板
の上にSi中間層を形成した後、Si中間層の上に炭素
被膜を形成した。
【0047】図3に示す装置を用い、まず基体ホルダー
7を点線で示す下側の位置に設定した後、真空チャンバ
ー8内を10-5Pa以下に排気した。次に、ガス導入管
5からArガスを供給して、真空チャンバー8内を7.
6×10-2Paとし、Siからなるターゲット11に高
周波電源13からの高周波電力を印加し、ターゲット1
1と基体ホルダー7との間にArプラズマを発生させ、
プラズマ中のイオンにより、ターゲット11をスパッタ
リングし、基体ホルダー7上のステンレス基板上に膜厚
0.1μmのSiからなる中間層を形成した。
【0048】中間層を形成した後、基体ホルダー7の位
置を、図3に実線で示す上側の位置に戻し、上記実験2
と同様の条件で、原料ガス中のCO2 /CH4 混合比を
0〜50%に変化させて、ダイヤモンド状炭素被膜を膜
厚約1μmとなるように形成した。
【0049】得られた各炭素被膜について、上記実験1
と同様にして体積抵抗率を測定した。測定結果を表4及
び図8に示す。
【0050】
【表4】
【0051】表2及び図8から明らかなように、Si中
間層の上に炭素被膜を形成した場合にも、CO2ガスを
CH4ガスに対して流量比で12.5%以上混合するこ
とにより、109Ω・cm以下の低い体積抵抗率が得ら
れ、高い導電性を有する炭素被膜を形成することができ
た。
【0052】本実験では、Siターゲットを用い、Si
中間層を形成しているが、ターゲット材料を変えること
により、その他の材料の中間層を同様にして形成するこ
とができる。また、真空チャンバー内に流すガス中に、
2(酸素)、N2(窒素)、CH4(メタン)等を含有
させることにより、それぞれ酸化物、窒化物、炭化物等
の中間層を形成することができる。
【0053】(実験4)次に、上記実験1と同様の条件
で、グリッド9に印加するイオン加速電圧を、200
V、400V、600V、800V、及び1000Vと
それぞれ変化させて、Siウエハー基板の上に膜厚約1
μmのダイヤモンド状炭素被膜を形成した。得られた炭
素被膜のビッカース硬度を、表5及び図9に示す。
【0054】
【表5】
【0055】表5及び図9に示すように、600Vまで
は、イオン加速電圧を高くすることにより、ビッカース
硬度が高くなっていることがわかる。また、これらのビ
ッカース硬度は、CO2分子を含まない従来のダイヤモ
ンド状炭素被膜とほぼ同程度のビッカース硬度であるこ
とがわかる。
【0056】(実験5)次に、上記実験2において、原
料ガス中のCO2/CH4混合比を0%、すなわち原料ガ
ス中にCO2を混合しない状態で、ガラス基板上に膜厚
約1μmのダイヤモンド状炭素被膜を形成した。従っ
て、この炭素被膜は、CO2分子を含まない従来の炭素
被膜である。この炭素被膜に対して、図3に示す装置を
そのまま用いて、CO2ガスによる表面処理を行った。
【0057】まず、真空チャンバー8内を10-5Pa以
下に排気した後、ガス導入管5から、CO2ガスのみを
プラズマ発生室4内に6.7×10-2Paとなるように
導入し、グリッド9に加速電圧600Vを印加し、プラ
ズマ中に発生したイオンを、炭素被膜の表面に照射して
表面処理を行った。表面処理時間を、1分、2分、3
分、4分、及び5分と変化させ、表面処理後のそれぞれ
の炭素被膜の表面抵抗を測定した。なお、比較として表
面処理を行わなかったものについても同様に表面抵抗を
測定した。
【0058】図5は、このときの表面抵抗の測定方法を
説明するための模式図である。ガラス基板20の上には
炭素被膜21が形成されており、炭素被膜21の上に、
一対のAl電極23及び24が形成されている。図6
は、図5に示すAl電極を上方から見たときの平面図で
ある。図6に示すように、Al電極23及び24の幅は
Lであり、それらの間のギャップ間隔はdである。図5
に示すように、Al電極23と24の間に、直流電源2
5及び電流計26を直列に接続し、測定された電流電圧
特性から求められた抵抗Rを用いて、以下の式により表
面抵抗ρSを算出する。
【0059】ρS =R・L/d なお、必要であれば、体積抵抗率ρV を、以下の式から
求めることができる。
【0060】 ρV =R・L・t/d(t:炭素被膜の厚み) 以上のようにして求めた各炭素被膜の表面抵抗を、表6
及び図10に示す。
【0061】
【表6】
【0062】表6及び図10から明らかなように、CO
2ガスを用いて炭素被膜の表面を処理することにより、
表面抵抗が著しく低下し、高い導電性が得られているこ
とがわかる。
【0063】参考のため、Siウエハー基板の上に上記
と同様にしてCO2分子を含まない従来の炭素被膜を形
成した後、CO2 ガスを用いて表面処理した炭素被膜を
作製し、この炭素被膜について、図4に示す方法で体積
抵抗率を測定した。その結果、表面処理後の体積抵抗率
は、表面処理前と同等であり、体積抵抗率の低下は認め
られなかった。このことから、上記表面処理により、炭
素被膜の表面だけに高い導電性が付与されていることが
わかる。
【0064】本実験では、CO2のみを含むガスを処理
用ガスとして用いているが、CO2に水素ガスまたは希
ガス等を添加したガスを処理用ガスとしても、同様に表
面処理することができる。
【0065】上記各実験においては、図3に示すECR
プラズマCVD装置を用い、グリッドに電圧を印加し
て、プラズマからのイオンを加速させているが、基体ホ
ルダーまたは基体に高周波電源を接続し高周波電力を印
加することにより、基体にバイアス電圧を発生させ、プ
ラズマ中のイオンを加速して照射してもよい。
【0066】また、イオンガンのソースガスとしてCO
2を含む原料ガスを用い、CO2分子を含む炭素被膜を形
成してもよい。また、同様にイオンガンを用い、炭素被
膜にイオンビームを照射し、炭素被膜を表面処理しても
同様の効果を得ることができる。
【0067】本発明の炭素被膜は、その高い導電性を利
用して、種々の分野に用いることができる。従来の炭素
被膜と同様に、電気シェーバー等の刃、スクリーン印刷
用マスク、OA機器部品、その他の摺動部品、または太
陽電池、SAWデバイス等の電子デバイス、半導体装置
における機能性薄膜として用いることができるととも
に、リチウム二次電池などの二次電池の電極薄膜として
も用いることができるものである。
【0068】
【発明の効果】本発明の第1の局面によれば、硬質炭素
被膜の機械的特性及び化学的安定性を維持しながら、被
膜全体に高い導電性を有する炭素被膜とすることができ
る。
【0069】本発明の第2の局面によれば、硬質炭素被
膜の機械的特性及び化学的安定性を維持しながら、被膜
表面に高い導電性を有する炭素被膜とすることができ
る。
【0070】本発明の第3の局面によれば、上記本発明
の第1の局面の炭素被膜を製造することができ、本発明
の第4の局面によれば、本発明の第2の局面に従う炭素
被膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施例の炭素被膜の赤外吸収ス
ペクトルを示す図。
【図2】従来の炭素被膜の赤外吸収スペクトルを示す
図。
【図3】本発明に従う実施例において用いるECRプラ
ズマCVD装置を示す概略断面図。
【図4】体積抵抗率の測定方法を説明するための模式
図。
【図5】表面抵抗の測定方法を説明するための模式図。
【図6】図5における電極を示す平面図。
【図7】原料ガス中におけるCO2 /CH4 混合比と炭
素被膜の体積抵抗率との関係を示す図。
【図8】原料ガス中におけるCO2 /CH4 混合比と炭
素被膜の体積抵抗率との関係を示す図。
【図9】プラズマからのイオンを加速する加速電圧と炭
素被膜のビッカース硬度との関係を示す図。
【図10】炭素被膜の表面処理時間と表面抵抗との関係
を示す図。
【符号の説明】
1…マイクロ波供給手段 2…導波管 3…マイクロ波導入窓 4…プラズマ発生室 5…ガス導入管 6…プラズマ磁界発生装置 7…基体ホルダー 8…真空チャンバー 9…グリッド 11…ターゲット 12…支持棒 12a…支持棒の回転中心部 13…高周波電源 20…基板 21…炭素被膜 22,23,24…電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樽井 久樹 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 4G046 CA02 CB03 CB08 CC02 CC06 4K030 AA09 AA10 AA14 BA27 FA02 FA12 JA09 JA12 JA17 KA20

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に形成された炭素被膜であって、
    CO2分子を含むことを特徴とする炭素被膜。
  2. 【請求項2】 赤外吸収スペクトルにおいて、CO2
    子に基づく2350cm-1付近及び670cm-1付近の
    吸収ピークが認められることを特徴とする請求項1に記
    載の炭素被膜。
  3. 【請求項3】 被膜の体積抵抗率が109Ω・cm以下
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素
    被膜。
  4. 【請求項4】 基体上に形成された炭素被膜であって、
    その表面がCO2 を含むガスで表面処理されたことを特
    徴とする炭素被膜。
  5. 【請求項5】 被膜の表面抵抗が106Ω/□以下であ
    ることを特徴とする請求項4に記載の炭素被膜。
  6. 【請求項6】 被膜の硬度が2500Hv以上であるこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭
    素被膜。
  7. 【請求項7】 基体上に中間層が設けられており、該中
    間層の上に炭素被膜が形成されていることを特徴とする
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭素被膜。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3及び6〜7のいずれか1項
    に記載の炭素被膜を製造する方法であって、CO2を含
    む原料ガスを用いることを特徴とする炭素被膜の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記原料ガスとして、CO2 と炭化水素
    の混合ガスを用いることを特徴とする請求項8に記載の
    炭素被膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記炭化水素として、CH4、C
    26、C38、C410、C24、及びC22から選ば
    れる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項9
    に記載の炭素被膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記原料ガスを用いたイオンビーム照
    射またはプラズマ気相合成法により炭素被膜を製造する
    ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載
    の炭素被膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記イオンビームの加速電圧あるいは
    前記プラズマ気相合成時の基体バイアス電圧が200V
    以上であることを特徴とする請求項11に記載の炭素被
    膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項4〜7のいずれか1項に記載の
    炭素被膜を製造する方法であって、CO2を含むガスを
    処理用ガスとして用いて、炭素被膜の表面を処理するこ
    とを特徴とする炭素被膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記処理用ガスとしてCO2のみを含
    むガスを用いることを特徴とする請求項13に記載の炭
    素被膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記処理用ガスのイオンビームまたは
    プラズマを炭素被膜の表面に照射して表面処理すること
    を特徴とする請求項13または14に記載の炭素被膜の
    製造方法。
  16. 【請求項16】 前記原料ガスを用いたプラズマ気相合
    成法により炭素被膜を製造する方法であって、形成速度
    が5nm/min以上となる条件で前記炭素被膜を形成
    することを特徴とする請求項11記載の炭素被膜の製造
    方法。
  17. 【請求項17】 前記原料ガスを用いたプラズマ気相合
    成法により炭素被膜を製造する方法であって、形成時の
    ガス圧力と形成速度の積が0.5Pa・nm/min以
    上となる条件で前記炭素被膜を形成することを特徴とす
    る請求項11記載の炭素被膜の製造方法。
JP2001148558A 2000-05-19 2001-05-18 炭素被膜及びその製造方法 Pending JP2002038268A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001148558A JP2002038268A (ja) 2000-05-19 2001-05-18 炭素被膜及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000148381 2000-05-19
JP2000-148381 2000-05-19
JP2001148558A JP2002038268A (ja) 2000-05-19 2001-05-18 炭素被膜及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002038268A true JP2002038268A (ja) 2002-02-06

Family

ID=26592236

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001148558A Pending JP2002038268A (ja) 2000-05-19 2001-05-18 炭素被膜及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002038268A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007136131A1 (ja) 2006-05-22 2007-11-29 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
JP2010265123A (ja) * 2009-05-12 2010-11-25 Nagasaki Univ 親水性炭素質膜の製造方法及び製造装置
JP2012502188A (ja) * 2008-09-12 2012-01-26 ブリガム・ヤング・ユニバーシティ 酸素化ガスが注入された膜、およびその製造方法
WO2013114836A1 (ja) 2012-01-30 2013-08-08 株式会社豊田中央研究所 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007136131A1 (ja) 2006-05-22 2007-11-29 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
EP2361882A1 (en) 2006-05-22 2011-08-31 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Conductive member provided with amorphous carbon film, process for its manufacture and fuel cell separator
US8119242B2 (en) 2006-05-22 2012-02-21 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Amorphous carbon film, process for forming amorphous carbon film, conductive member provided with amorphous carbon film, and fuel cell separator
EP2784024A2 (en) 2006-05-22 2014-10-01 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Fuel cell separator and process for its production
JP2012502188A (ja) * 2008-09-12 2012-01-26 ブリガム・ヤング・ユニバーシティ 酸素化ガスが注入された膜、およびその製造方法
JP2010265123A (ja) * 2009-05-12 2010-11-25 Nagasaki Univ 親水性炭素質膜の製造方法及び製造装置
WO2013114836A1 (ja) 2012-01-30 2013-08-08 株式会社豊田中央研究所 非晶質炭素膜、非晶質炭素膜の形成方法、非晶質炭素膜を備えた導電性部材および燃料電池用セパレータ
US10283785B2 (en) 2012-01-30 2019-05-07 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Amorphous carbon film, process for forming amorphous carbon film, electrically conductive member and fuel cell bipolar plate having amorphous carbon film

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH0352433B2 (ja)
Zhang et al. Synthesis and characterization of boron incorporated diamond-like carbon thin films
JP4134315B2 (ja) 炭素薄膜及びその製造方法
JP2002038268A (ja) 炭素被膜及びその製造方法
JPH1112735A (ja) ダイヤモンド状炭素薄膜の製造方法
JP3649873B2 (ja) Cvd法による薄膜形成方法および薄膜ならびに摺動部品
Poplavsky et al. Effect of nitrogen ion irradiation parameters on properties of nitrogen-containing carbon coatings prepared by pulsed vacuum arc deposition method
JPS60195092A (ja) カ−ボン系薄膜の製造方法および装置
JP2837700B2 (ja) ダイヤモンド様薄膜を形成する方法
Bae et al. High-speed deposition of graphite-like carbon film by Ar/C6H6 surface-wave plasma with high-voltage pulse biasing
JP2000268357A (ja) 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置
JPH05117087A (ja) ダイヤモンド様薄膜の保護膜付き物品
KR20140110186A (ko) 압축잔류응력이 감소된 입방정질화붕소 박막의 제조 방법 및 이에 의해 제조된 입방정질화붕소 박막
JP2012233257A (ja) 非晶質炭素膜およびその成膜方法
Schultrich et al. Hydrogenated amorphous carbon films (aC: H)
JP3056827B2 (ja) ダイヤモンド様炭素保護膜を有する物品とその製造方法
JPS6196721A (ja) 被膜形成方法
Zhai et al. Fast growth of conductive amorphous carbon films by HFCVD with filament temperature control
JP3246780B2 (ja) 硬質カーボン膜の形成方法および形成装置
Çelikel et al. Catalyst-free carbon nanowalls grown on glass and silicon substrates by ECR-MPCVD method
JPH0283816A (ja) 磁気記録媒体
JPH01234397A (ja) ダイヤモンド状薄膜の製造方法及び装置
He et al. Characterization and optical properties of diamondlike carbon prepared by electron cyclotron resonance plasma
Mehta et al. Room-temperature deposition of diamond-like carbon films by the microwave plasma jet method
JP7406775B1 (ja) プラズマ処理装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050113

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20051227

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070717

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070724

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080408