JP2002038234A - アルミニウム合金箔地及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金箔地及びその製造方法

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JP2002038234A JP2000226005A JP2000226005A JP2002038234A JP 2002038234 A JP2002038234 A JP 2002038234A JP 2000226005 A JP2000226005 A JP 2000226005A JP 2000226005 A JP2000226005 A JP 2000226005A JP 2002038234 A JP2002038234 A JP 2002038234A
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Katsura Kajiwara
桂 梶原
Yasuaki Sugizaki
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 経済性が優れ、強度が高く、箔を製造する際
に破断及びピンホール等が発生することがないアルミニ
ウム合金箔地及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウム合金は、Fe:0.90乃
至1.60質量%、Si:0.03乃至0.20質量%及
びCu:0.0005乃至0.030質量%を含有し、残
部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、冷間
圧延時に中間焼鈍を行わず、引張強度が170乃至21
0MPaである。この箔地は、例えば、冷間圧延の総圧
下率が85乃至95%であり、その箔地厚さは0.18
乃至0.3mmである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は薬品及び食品等の包
装材料に使用されるアルミニウム合金箔のアルミニウム
合金箔地及びその製造方法に関し、特に経済性が優れ、
強度が高く、箔を製造する際の破断及びピンホール等の
発生を抑制したアルミニウム合金箔地及びその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、アルミニウム合金箔は用途によ
り5乃至100μm程度の厚さのものが使い分けられて
いる。これらのアルミニウム合金箔は包装用としても使
用されている。従来、包装用のアルミニウム合金箔とし
てはJIS H4160に規定されている1N30が主
に使用されていた。
【0003】また、近時、箔厚を更に一層低下させるこ
とが要求されており、1N30材よりも強度が高く、か
つ薄肉化した時にピンホールの発生が少ない8079合
金及び8021合金等のFeの含有量が比較的多い合金
が多用されている。
【0004】Feの含有量が比較的多い、アルミニウム
箔地に関しては、従来から多数提案されている。しか
し、Feの含有量が多いことに起因して箔圧延が困難で
ある。このため、箔地を製造する際に、冷間圧延の途中
で焼鈍を施し、強度を低下させて圧延しやすくして使用
されている(特開平2−50932号公報及び特開平4
−41645号公報)。
【0005】また、経済性を重視した製造方法として
は、Si:0.08質量%、Fe:0.84質量%及びC
u:0.03質量%を含有し、残部が実質的にアルミニ
ウムからなる組成を有するインゴットを厚さが2.54
mmになるまで熱間圧延し、その後、焼鈍することな
く、冷間圧延し、実質的に平坦な加工硬化曲線を保ちな
がら、厚さが18.9μmの箔に圧延できる製造方法が
提案されている(特公昭51−18362号公報)。し
かし、この製造方法においては、厚さが0.2乃至0.3
mmで引張強さが214乃至219MPaに達してい
る。このため、実質的には箔圧延自体は容易ではなく、
圧延中に箔地が破断したり、仕上げ箔においてピンホー
ルが発生する等の問題がある。このように、従来のアル
ミニウム合金箔地においては、冷間圧延工程前又は冷間
圧延工程の途中で焼鈍して箔地及び箔の強度の絶対値並
びに加工硬化挙動を制御している。
【0006】一方、熱間圧延を調整し、強度を抑えるこ
とにより、実質的に厚さが0.2mmで引張強度を17
0MPaとし、圧延しやすい状態を得ることができるこ
とが提案されている(特開昭63−1804号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、箔地につ
いては種々提案されている。しかしながら、近時、箔の
価格は低下傾向にあることから、価格が低く、歩留まり
良く及び生産性が優れ、経済性が高い箔地が望まれてい
る。このため、箔破断の抑制、ピンホールの抑制及び箔
強度の向上について下記に示す課題を解決する必要があ
る。
【0008】箔破断の抑制においては、箔圧延時に発生
する箔破断は歩留まりを悪化させるだけでなく、破断
後、破断部を処置する必要があるので、生産性が低下す
る。このため、箔破断は可能な限り少なく抑える必要が
ある。従来のアルミニウム合金箔地では、箔地強度を低
くし、箔圧延の段階においても強度を低くし、かつ加工
硬化曲線を平坦にすることが実施されていた。しかし、
例えば平坦な加工硬化曲線を示しても強度の絶対値が高
すぎると、圧延時の負荷が高くなりすぎ、箔破断が生じ
やすくなり好ましくない。
【0009】ピンホールの抑制においては、薄箔の場合
には、ピンホールが発生しやすい。ピンホールの発生を
少なく抑えるためには、仕上げ圧延前の箔にて強度が高
すぎないこと、圧延により強度が停滞した状態、即ち、
加工硬化が停滞した状態になっていること及び伸びが高
いこと等につき、これらを有機的に組み合わせることが
必要である。
【0010】箔強度の向上については、箔製品は長さを
基準に販売されており、公称箔厚に対する許容誤差範囲
の中で可能な限り薄くすることで経済的メリットを得る
ことができる。しかしながら、単に製品の箔厚を薄くし
ただけでは強度が不足し、箔の長さ方向又は幅方向で裁
断する時に、箔の破断又はシワの発生原因になる。これ
を防ぐには、軟質化された箔の強度を向上させる必要が
あるが、従来の箔地の製造方法では達成することができ
ないという問題点がある。
【0011】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、経済性が優れ、強度が高く、箔を製造する
際に破断及びピンホール等が発生することがないアルミ
ニウム合金箔地及びその製造方法を提供することを目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアルミニウ
ム合金箔地は、Fe:0.90乃至1.60質量%、S
i:0.03乃至0.20質量%及びCu:0.0005
乃至0.030質量%を含有し、残部がAl及び不可避
的不純物からなる組成を有し、冷間圧延時に中間焼鈍を
行わず、引張強度が170乃至210MPaであること
を特徴とする。
【0013】この場合、前記冷間圧延の総圧下率が85
乃至95%であることが好ましい。また、箔地厚が0.
18乃至0.3mmであるものとすることができる。
【0014】本発明に係るアルミニウム合金箔地の製造
方法は、Fe:0.90乃至1.60質量%、Si:0.
03乃至0.20質量%及びCu:0.0005乃至0.
030質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物
からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、400
乃至600℃の均熱温度に、2時間以上保持して均質化
熱処理を行う工程と、熱間圧延終了温度が260℃以
上、熱間圧延終了板厚が3.5mm以下で熱間圧延する
工程と、中間焼鈍することなく冷間圧延総圧下率が85
乃至95%で冷間圧延する工程とを有することを特徴と
する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について詳
細に説明する。本願発明者等が箔地用アルミニウム合金
材の組成及び加工方法について鋭意実験研究を重ねた結
果、成分、熱間圧延条件及び冷間圧延条件を調整するこ
とにより、引張強度が170乃至210MPaの間で平
坦な加工硬化曲線とする手段を見出した。即ち、本願発
明者等は、アルミニウム合金中に添加されるFe、Si
及びCuの含有量を適切に規定し、微量不純物量を規制
し、熱間圧延条件を規定することにより、箔での圧延加
工工程において、加工硬化が進まない箔地を得ることが
できることを知見した。これより、冷間圧延工程の途中
で行われていた中間焼鈍工程を省略することが可能であ
り、かつ箔地の製作期間も短縮が可能となり経済性が優
れた箔地を得ることができる。
【0016】本発明に係るアルミニウム合金箔地は、加
工硬化が進まないか、又は若干加工軟化し、それに伴い
高い伸びを示すため、箔圧延が容易であり、箔破断が発
生せず、かつピンホールの発生も少なく抑えることがで
きる。また、箔圧延後に軟質材とした際にも高い強度が
得られるので、許容公差内で薄箔化することができ、裁
断時のシワの発生も防止することができる。
【0017】以下、本発明のアルミニウム合金箔地及び
その製造方法の数値限理由について説明する。
【0018】Fe:0.90乃至1.60質量% Feはアルミニウム合金の強度の絶対値及び加工硬化挙
動を制御するために添加する。Feの含有量が0.90
質量%未満では、強度を向上させる効果が十分でない。
一方、Feの含有量が1.60質量%を超えると、例え
ば加工硬化が停滞しても強度の絶対値が高くなりすぎて
箔圧延が困難になり、圧延割れの原因となる。従って、
Feの含有量は0.90乃至1.60質量%とする。
【0019】Si:0.03乃至0.20質量% SiはFeと共に化合物を形成しやすい。Siの含有量
が0.03質量%未満では、アルミニウム合金の鋳造が
困難になる。一方、Siの含有量が0.20質量%を超
えると、Feの固溶状態及び析出状態が不安定になりや
すく、箔圧延時の発熱により突如強度が低下することが
ある。従って、Siの含有量は0.03乃至0.20質量
%をする。
【0020】Cu:0.0005乃至0.030質量% Cuは箔圧延時の発熱による加工軟化を制御するために
添加する。Cuの含有量が0.0005質量%未満で
は、加工軟化を抑制する効果が少ない。一方、Cuの含
有量が0.030質量%を超えると、加工硬化が進みや
すくなる。従って、Cuの含有量は0.0005乃至0.
030質量%をする。なお、加工硬化の停滞又は加工軟
化は、Feの含有量が多いほど進みやすい。このため、
Cuの含有量はFeの含有量に応じて調整することが望
ましい。
【0021】本発明に係るアルミニウム合金箔地におい
ては、上述の添加元素以外にも他の元素を添加すること
ができる。例えば、Tiは、本発明の効果と直接関係し
ないが、鋳塊組織の微細化のために0.005乃至0.0
3質量%添加することが望ましい。Tiの含有量が0.
005質量%未満では、鋳塊組織の微細化効果がない。
一方、Tiの含有量が0.03質量%を超えると、鋳塊
組織の微細化効果は飽和しており、コストが嵩み経済性
に欠ける。また、その他の不純物元素としては、例えば
8079合金のJIS規格で規定されている不純物の範
囲内で含有されている限り、実質上問題はない。
【0022】引張強度:170乃至210MPa 本発明において、箔強度の向上には、箔地強度を可及的
に高くすることが望ましい。箔地の引張強度が170M
Pa未満では、箔圧延後に軟質材とした場合の強度が不
足する。しかしながら、箔地の引張強度が210MPa
を超えた場合、加工硬化が停滞し、箔圧延中に強度向上
を起こさなくとも、強度の絶対値が高すぎるため、破断
の原因となる。従って、引張強度は170乃至210M
Paとする。
【0023】箔地厚さ:0.18乃至0.3mm 箔地の厚さは、後の箔圧延工程における負荷が低減され
るため、可及的に薄い方が望ましい。しかしながら、箔
地厚さを0.18mm未満にすることは設備の性能上困
難で、冷間圧延中に圧延割れ等を起こし、箔地を得るこ
とができない。一方、箔地厚さが0.3mmよりも厚い
場合は、所定の箔厚を得るために、箔圧延時に圧下率を
高くするか、又は箔圧延のパス回数を多くしなければな
らない。しかし、圧下率を高くすることは、負荷がかか
るため、箔圧延中の発熱が大きくなり、加工軟化が起き
やすくなる。また、パス回数を多くすることは、生産性
を低下させる原因となる。従って、箔地厚さは0.18
乃至0.3mmとすることが好ましい。
【0024】均質化熱処理:400乃至600℃の均熱
温度で2時間以上保持 均質化熱処理は、鋳塊に熱間圧延を実施するためになさ
れるものである。経済面からは均熱温度は低いことが望
ましい。しかし、均熱温度が400℃未満では、熱間圧
延が困難となる。一方、均熱温度が600℃を超える
と、アルミニウム合金中のFe等の元素が固溶しすぎ、
箔圧延で加工硬化が進みやすくなる。また、熱間圧延に
てアルミニウム合金材の表面に焼付き等の表面異常が発
生し、ピンホールが大量に発生しやすくなる。また、保
持時間についても短い方が望ましい。しかし、保持時間
が2時間未満では、鋳塊の幅方向及び長さ方向の均一性
に欠ける。本発明においては、保持時間の上限値は特に
規定されるものではないが、経済性から24時間以下と
することが好ましい。従って、均質化熱処理は400乃
至600℃の均熱温度で2時間以上保持する。
【0025】熱間圧延:熱間圧延終了温度が260℃以
上、熱間圧延終了板厚が3.5mm以下 熱間圧延は可能な限り薄く、かつ高温で終了することが
必要である。従って、熱間圧延は熱間圧延終了温度が2
60℃以上、熱間圧延終了板厚が3.5mm以下とす
る。熱間圧延終了板厚が厚過ぎるか、又は熱間圧延終了
温度が低すぎると、箔地強度が高くなりすぎ、箔圧延が
困難になる。熱間圧延が可能な板厚は設備の制約上、例
えば1.5mm程度であるので、板厚は1.5mm以上
とする。また、熱間圧延終了温度はその上限値は高い方
が望ましい。しかし、熱間圧延終了板厚が薄い場合に
は、実質的に熱間圧延終了温度が350℃以下になる。
このため、好ましくは、熱間圧延終了温度は270乃至
340℃であり、熱間圧延終了板厚は1.7乃至3.5
mmである。
【0026】冷間圧延:冷間圧延総圧下率が85乃至9
5% 熱間圧延後に、得られた圧延材に対して箔地になるまで
冷間圧延が実施される。なお、ここで箔地とは厚さが
0.18乃至0.3mmものとする。冷間圧延の冷間圧
延総圧下率が85%未満では、強度が170MPaに達
せず、かつ箔圧延にて強度が停滞するに至らない。即
ち、加工硬化が停滞しない。一方、冷間圧延の冷間圧延
総圧下率が95%を超えると、箔地での強度が210M
Paを超え、実質的に箔圧延が困難になると共に、箔の
段階で材料中の化合物のうち、ノッチ効果を発揮する化
合物の比率が高まり、伸びが低下し、箔圧延中の破断が
生じやすくなる。従って、冷間圧延の冷間圧延総圧下率
は85乃至95%とする。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例に係るアルミニウム合
金箔地を製造し、その特性を比較例と比較して具体的に
説明する。
【0028】第1実施例 下記表1に示す成分を有するアルミニウム合金を、半連
続鋳造法により厚さが500mmの鋳塊に鋳造し、54
0℃の温度で10時間の均質化熱処理を施す。その後、
直ちにこの鋳塊に熱間圧延を施し、板厚が2.8mm、
熱間圧延終了温度が300℃で熱間圧延を施した。次
に、得られた圧延材に冷間圧延を行い厚さが0.2mm
の箔地を製造した。なお、冷間圧延終了直後のコイルア
ップ温度は100℃以下であった。なお、表1に示すア
ルミニウム合金において、Mn、Mg、Cr、Zn及び
Tiは不純物であり、これらは8079合金で規定され
る不純物量の範囲内にある。
【0029】得られた箔地の強度及び箔地から箔を製造
する際の箔圧延時の特性を調べた。箔地又は箔の引張強
さ及び伸びは、幅が15mmで長さが200mmの短冊
状試験片を使用した引張試験で求めた。また、箔を製造
する途中で29μm厚の箔の耐軟化性を調べた。耐軟化
性とは、160℃の温度で20分の焼鈍した場合、焼鈍
の前後において引張強度が低下した値のことであり、数
値が大きいほど軟化しやすく、箔圧延時に発熱の影響を
受けやすい。即ち、箔圧延時に箔地が不安定になる。こ
れらの結果を表2及び3に示す。表3に示す「−」は試
験を実施していないことを示す。
【0030】なお、箔の最終箔厚は12μmとした。こ
の箔は家庭用の箔であり片面が光沢面、残る面が艶消し
面である。また、最終箔厚に仕上げる前の箔の箔厚は2
9μmであった。ここで、箔厚の絶対値は説明で便宜上
使用するものであり、最終箔厚12μmは仕上げ箔の厚
さを意味し、29μmの箔厚は仕上げ1パス前の箔の箔
厚の意味している。
【0031】圧延性の評価は箔破断回数により行った。
箔破断回数は、箔地から厚さが12μmの箔になるまで
の圧延中に生じた破断の回数を、圧延後の12μm厚の
箔の総質量で除したものであり、この数値が高い程、箔
圧延中の破断が生じやすいことを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】上記表2及び3に示すように、実施例No.
1乃至5は、軟化及び加工硬化の停滞の結果並びにノッ
チ効果の発現が少ないため、箔厚が29μmの箔におい
て、伸びも高く、箔破断が少なかった。また、箔強度も
178MPa以上であり、シワ等の発生も少なかった。
また、29μm厚の耐軟化性も全て10MPa以下であ
り、箔圧延時の発熱(コイルアップ直後で70乃至12
0℃)に対しても安定していた。
【0036】一方、比較例No.11はSiの含有量が本
発明の上限値を超えているので、29μm厚の箔の耐軟
化性が低く、箔圧延の途中で自己焼鈍効果により軟化し
てしまった。また、最終箔厚の軟質材でも強度が低下
し、箔の裁断時にシワ等が発生しやすかった。比較例N
o.12はFeの含有量が本発明の上限値を超えているの
で、箔地の引張強さが高くなりすぎ、圧延が困難であっ
た。また、29μm厚箔における伸びが2%以下とな
り、箔圧延中に破断しやすくなった。
【0037】比較例No.13はCu含有量が本発明の上
限値を超えているので、箔地の引張強さが高くなりす
ぎ、圧延が困難であった。また、29μm厚箔における
伸びが2%以下となり、箔圧延中に破断しやすくなっ
た。比較例No.14はSiの含有量が本発明の下限値未
満であるため、鋳造時に湯もれが発生し、鋳塊を得るこ
とができなかった。このため、箔地の強度及び箔地から
箔を製造する際の箔圧延時の特性については、評価しな
かった。
【0038】比較例No.15はFeの含有量が本発明の
下限値未満であるため、箔の強度向上が充分でなかっ
た。比較例No.16はCuの含有量が本発明の下限値未
満であるため、箔圧延中に発熱の影響を受けやすい。こ
のため、箔厚が29μmの箔の耐軟化特性が低下した。
また、軟質材でも強度が低下し、箔の裁断時にしわが入
りやすかった。
【0039】第2実施例 上記表1に示す合金No.1の組成を有する箔地を第1実
施例と同様の工程により製造した。この箔地を圧延し、
箔厚が6μmの箔を製造した。また、比較例として、上
記表1に示す合金No.7の組成を有するアルミニウム合
金の鋳塊に610℃の温度で4時間の均質化熱処理を施
した。その後、直ちに鋳塊を熱間圧延し、板厚が3.2
mm、終了温度が330℃で熱間圧延を終了した。次
に、冷間圧延し箔地を製造した。その後、第1の実施例
と同様の工程により箔地を製造した。そして、この箔地
を圧延し、箔厚が6μmの箔を製造した。なお、表4に
示す13μm厚箔硬質材特性とは、6μmの箔を製造す
る際の1パス前の箔のことである。
【0040】箔地及び箔について、第1実施例と同様の
試験を行った。また、光照射式ピンホール検出器を使用
して箔のピンホール数を測定した。これらの結果を表4
及び5に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】上記表4及び5に示すように、実施例No.
6は箔破断回数が0.0であり、圧延時に破断しなかっ
た。また、13μm厚箔の硬質材においては、引張強さ
及び伸びが良好であった。6μm厚箔の軟質材において
も、ピンホール数が少なく、引張強さ及び伸びも良好で
あった。
【0044】一方、比較例No.17はFeの含有量が本
発明の上限値を超えているので、箔地の引張強さが高く
なりすぎ、箔破断回数が多くなり、箔圧延中に破断しや
すかった。また、13μm厚箔の硬質材においては、引
張強さが高く、伸びが乏しかった。更に、熱間圧延時の
表面品質も相まって、6μm厚箔の軟質材においても、
ピンホール数が多く、伸びが乏しかった。
【0045】第3実施例 上記表1に示す合金No.3の組成を有する箔地を下記表
6に示す条件で製造した。得られた箔地を厚さが12μ
mの家庭用箔に圧延した。
【0046】箔地及び箔について、第1実施例と同様の
試験を行った。これらの結果を表7に示す。なお、表6
に示す「均熱条件」とは「均熱化熱処理条件」を示す。
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】上記表7に示すように、実施例No.7乃至
10は箔地の引張強さが本発明の範囲に入っており、箔
破断回数が少なく箔圧延時に破断が少なかった。また、
29μm厚の硬質材及び13μmの軟質材についても、
いずれも引張強さ及び伸びが良好であった。
【0050】一方、比較例No.18は冷間圧延総圧下率
が本発明の下限値未満であり、かつ箔地の製造途中で焼
鈍されているので、軟質材の強度が低かった。また、冷
間圧延の途中で焼鈍しているのでコストが嵩み経済的に
好ましくない。また、比較例No.19は冷間圧延総圧下
率が本発明の上限値を超えているので、箔地の強度が高
くなりすぎ、箔破断が生じた。また、29μm厚箔及び
12μm厚箔での伸びが低下した。これにより、箔破断
が生じる。
【0051】比較例No.20は均熱温度が本発明の下限
値未満であるため、熱間粗圧延時に板割れが生じ、箔地
を得ることができなかった。比較例No.21は均熱温度
が本発明の上限値を超えているため、Feの固溶量が多
く、箔圧延中の発熱の影響を受けやすくなり、大幅な加
工軟化を起こし、箔強度が低下した。比較例No.22は
均熱温度の保持時間が本発明の下限値未満であるため、
鋳塊の均一性が欠け、得られる箔地の組織も不均一であ
ったため、箔圧延中に破断が多発した。
【0052】比較例No.23は熱間圧延終了温度が本発
明の下限値未満であるため、箔地強度が高くなり、箔圧
延中に破断が多発した。比較例No.24は熱間圧延終了
時の板厚が本発明の上限値を超えているため、箔地強度
が高くなり、箔圧延中に破断が多発した。比較例No.2
5は冷間圧延総圧下率が本発明の下限値未満であるた
め、箔地強度が低く、かつ箔圧延で強度が停滞しなかっ
たので、箔の強度向上が充分ではなかった。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ア
ルミニウム合金箔地の組成及び引張強度を適切に規定し
ているので、箔圧延時に箔破断及びピンホールの発生を
抑制することができる。また、焼鈍工程を省略して製造
することができるので、コストを低くすることができ経
済的に優れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 683 C22F 1/00 683 691 691B 691C 694 694A (72)発明者 田波 信希 栃木県真岡市鬼怒ヶ丘15番地 株式会社神 戸製鋼所真岡製造所内 (72)発明者 梶原 桂 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 杉崎 康昭 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:0.90乃至1.60質量%、S
    i:0.03乃至0.20質量%及びCu:0.0005
    乃至0.030質量%を含有し、残部がAl及び不可避
    的不純物からなる組成を有し、冷間圧延時に中間焼鈍を
    行わず、引張強度が170乃至210MPaであること
    を特徴とするアルミニウム合金箔地。
  2. 【請求項2】 前記冷間圧延の総圧下率が85乃至95
    %であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウ
    ム合金箔地。
  3. 【請求項3】 箔地厚が0.18乃至0.3mmであるこ
    とを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム合金箔
    地。
  4. 【請求項4】 Fe:0.90乃至1.60質量%、S
    i:0.03乃至0.20質量%及びCu:0.0005
    乃至0.030質量%を含有し、残部がAl及び不可避
    的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊
    を、400乃至600℃の均熱温度に、2時間以上保持
    して均質化熱処理を行う工程と、熱間圧延終了温度が2
    60℃以上、熱間圧延終了板厚が3.5mm以下で熱間
    圧延する工程と、中間焼鈍することなく冷間圧延総圧下
    率が85乃至95%で冷間圧延する工程とを有すること
    を特徴とするアルミニウム合金箔地の製造方法。
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