JP2011001564A - 耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工性の劣化を招くことなく、成形加工した後に肌荒れが生じることがないフェライト系ステンレス鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.15質量%以下,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.020質量%以下、Cr:11〜25質量%,N:0.03質量%以下、さらにTi:0.5質量%以下及びNb:1.0質量%以下の一種又は二種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、しかも含有C,N,Ti,Nbの間で下記の式(1)の関係を満たす成分組成を有し、表面から50μmまでの間の表層部の平均結晶粒径が25μm以下であり、しかも板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍以上になった組織とする。(Ti/22+Nb/41)/(C/12+N/14)>7・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、曲げ,絞り,張出し,或いはそれらの混合加工で製造される部品に供する成形加工後の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。なお、本発明における鋼板は鋼帯を含むものであり、以下「鋼板」と記す。
SUS430LXに代表されるフェライト系ステンレス鋼は、良好な耐食性を有し、しかも高価なNiを含有しないためにオーステナイト系ステンレス鋼に比べると経済的な利点を有している。このため、耐久消費財を中心に広く使用されている。
しかしながら、近年、用途の多様化に伴って、フェライト系ステンレス鋼板のプレス成形加工においてより厳しい条件の加工が行われる場合が多くなっている。しかも表面外観も厳しく要求されるようになっている。
フェライト系ステンレス鋼の場合、成形加工時にオレンジピールとも称される肌荒れが生じやすく、この肌荒れが製品の表面外観を低下させている。鋼板の結晶粒度は最終冷延及びその後の最終焼鈍の条件によりある程度は制御可能であり、肌荒れが生じない微細な結晶粒も得ることはできる。しかしながら、結晶粒を微細化すると硬質になり、曲げ性や深絞り性、張出し性等の加工性が劣化してしまう。
加工性を損なうことなく成形加工後の耐肌荒れ性を改善する例として、特許文献1のようにV,Bの複合添加や、特許文献2のように板厚中心から表層に向かい漸次小さくなる結晶粒径傾斜組織を得る方法が提案されている。
特許第3064871号公報 特開2004−197197号公報
しかしながら、特許文献1で提案されたV,Bの複合添加は硬質化を招く。また特許文献2で提案された方法は、500℃以上900℃以下の温度域でレベラーによる繰り返しの曲げ及び曲げ戻しを行うために設備投資に莫大な費用がかかるばかりでなく、板厚中心部と表層部の結晶粒径の差もごく僅かである。
このように、従来技術では、十分な耐肌荒れ性、特に厳しい成形加工後に十分な耐肌荒れ性が得られていないのが現状である。
本発明は、このような問題を解決すべく案出されたものであり、加工性の劣化を招くことなく、成形加工した後に肌荒れが生じることがないフェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
本発明の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、C:0.15質量%以下,Si:0.5質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.020質量%以下、Cr:11〜25質量%、N:0.03質量%以下、さらにTi:0.5質量%以下及びNb:1.0質量%以下の一種又は二種を含み、必要に応じてさらにいずれも3.0質量%以下のNi,Cu,Moを一種又は二種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、しかも含有C,N,Ti,Nbの間で下記の式(1)の関係を満たす成分組成と、表面から50μmまでの間の表層部の平均結晶粒径が25μm以下であり、しかも板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍以上になった組織を備えていることを特徴とする。
(Ti/22+Nb/41)/(C/12+N/14)>7 ・・・(1)
また、成形加工後の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、上記の成分組成を有するステンレス鋼の冷延板に、15体積%以上の窒素を含む還元性ガス主体の雰囲気中で850℃以下に300秒以上保持する熱処理を施した後、そのまま連続して、或いはさらに冷間圧延を施した後に、大気中焼鈍又は光輝焼鈍を施すことにより製造される。
本発明では、所定堂のTi.Nbを含有するフェライト系ステンレス鋼の冷延板を、窒素を含む還元性ガス主体の雰囲気中での中間熱処理により、表層部にTi窒化物又はNb窒化物若しくはTiとNbの複合窒化物が形成され、最組焼鈍時に表層の窒化物がピンニング作用を発揮して表層部のみ結晶粒を微細化させることができている。
このため、従来の素材ではなし得なかった表層部のみ結晶粒が微細化した組織が得られ、成形加工後の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が提供される。本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、板厚中心部の結晶粒は微細化されていないため、優れた加工性を維持しており、曲げ,絞り,張出し或いはそれらの混合加工で製造される部品用の素材として好適に使用できる。
本発明者らは、加工性を低下させることなく、成形加工後に肌荒れを生じさせることのないフェライト系ステンレス鋼阪を開発すべく、様々な手段及びその組み合わせについて検討を重ねてきた。
耐肌荒れ性を改善するには結晶粒を微細化すればよいことは定説である。このため、耐肌荒れ性が要求させる用途には、最終の冷延率を増大させ、しかも最終焼鈍を通常よりも低温で行って鋼板全体の結晶粒径を25μmより微細にすることが行われてきた。
しかしながら、最終の冷延率を増大させるには限界があり、冷間圧延での負荷を増大させる。また、低温で最終焼鈍を施すと鋼板全体の結晶粒径が微細化されることになり硬質化されて、曲げ性、深絞り性、張出し性が低下してしまう。最終焼鈍温度が低いと、未再結晶粒が残存し、これまた加工性を低下させる要因になる。
そこで、中間熱処理での窒化処理を利用した表層部のみの結晶粒を微細化させる方法について鋭意検討を行った。
その結果、所定量のTi,Nbを含むフェライト系ステンレス鋼板の冷延板に、窒素を含む還元性雰囲気中で中間熱処理を施して表層部を窒化させた後に最終焼鈍を施すと、Ti窒化物またはNb窒化物若しくはTi又はNbの複合窒化物が生成し、これらの窒化物の作用により表層部の結晶粒のみが微細化した組織であって、表面から50μmまでの間の表層部の平均結晶粒径が25μm以下であり、しかも板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍以上になった組織を作り出せることを見出した。このような組織調整により、優れた加工性を維持しつつ成形加工した後にあっても肌荒れが生じないフェライト系ステンレス鋼板を得ることできたものである。以下に、その詳細を説明する。
まず、本発明においてステンレス鋼の成分組成を特定した理由について説明する。なお各元素の含有最を示す「%」は、特に示さない限り「質量%」を意味する。
C:0.15%以下
Cは、強度を上昇させるために加工性を低下させる。また炭化物析出に起因して耐食性を低下させる。このため、可能な限り低減することが好ましい。加工性及び耐食性の観点から、C含有量の上限は0.15%とした。
Si:0.5%以下
Siは、製鋼時に脱酸剤として添加される合金元素であるが、固溶強化能が高く、過剰に含有すると材質を硬化して延性を低下させる。また、中間熱処理時に表層に濃化し、窒化を阻害する。このような観点から、Si含有量の上限は0.5%とした。
Mn:1.0%以下
Mnは、固溶強化能が小さいため、材質を強化する影響も少ないが、過剰に含有されると溶製時にMn系ヒュームが生成するなど悪影響を与えるため、Mn含有量の上限は1.0%に設定した。
P:0.050%以下
Pは、熱間加工性に有害な成分であり、加工性の観点からその含有量の上限は0.050%に設定した。
S:0.020%以下
Sは、結晶粒界に偏析して結晶粒界を脆化する等の有害成分であり、その含有量の上限は0.020%に設定した。
Cr:11〜25%
Crは、十分な耐食性を確保し、中間熱処理時での窒化によりマルテンサイト相の生成を抑制する観点からは11%以上の含有が必要である。しかしながら、過剰の含有は靭性や加工性の低下を招くことから、その上限は25%とした。
N:0.030%以下
Nは、Cと同様な作用効果があり、冷延焼鈍後の強度を上昇させる。しかし、過剰に含まれると靭性を低下させる。このため、N含有量の上限は0.03%に設定した。
Ti:0.50%以下
Tiは、C,Nを固定し、加工性及び耐食性を向上させる元素であり、本発明では中間熱処理時に窒化され窒化物を形成して表層部結晶粒の微細化を図る上で重要な元素である。しかし、Tiの過剰添加は鋼材コストの増大を招くばかりでなく、Ti系介在物が原因となった表面欠陥が現れやすくなる。このためTi含有量は0.5%以下にする。
Nb:1.0%以下
Nbは、C,Nを固定し、加工性を向上させる元素であり、本発明では中間熱処理時に窒化され窒化物を形成して表層部結晶粒の微細化を図る上で重要な元素である。しかし、Nbを過剰に添加すると靭性低下を招くことになるため、Nb含有量は1.0%以下にする。
本発明におけるステンレス鋼は上記成分を必須とするが、必要に応じてさらにNi,Cu,Moを含むこともできる。
これらの元素は、ステンレス鋼材の耐食性を向上させる作用を有しているが、過剰に含有されると硬質化し、加工性に悪影響を及ぼすので、添加する場合にはそれぞれ3.0%を上限とする。
(Ti/22+Nb/41)/(C/12+N/14)>7
本発明の最大の特徴点は、中間熱処理時の窒化によりTi窒化物又はNb窒化物若しくはTiとNbの複合窒化物を生成させ、最終焼鈍時にその窒化物のピンニング作用により表層部の結晶粒のみを微細化する点である。窒化物を生成させるためには、マトリックス中に固溶したTi若しくはNbが必要であり、そのためには、(Ti/22+Nb/41)/(C/12+N/14)が7よりも大きくなるように、Ti,Nbの添加量を調整する必要がある。
上記成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼板の冷廷板に、後記するような所定の条件の下で中間熱処理を施した後、後記するような最終の焼鈍を施すことにより、表層部の結晶粒のみ微細化した組織が得られる。
得られた微細化組織と加工性及び耐肌荒れ性の関係を調査した結果は後記の実施例で示すが、その結果から、表面から50μmまでの間の表層部の平均結晶粒径が25μm以下 であり、しかも板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍以上になった組織を備えていることが必要である。
表層部の平均結晶粒径が25μmを超えると十分な耐肌荒れ性が得られない。また板厚中心部の平均結晶粒律が表層部の平均結晶粒径の1.2倍に満たないほどに小さいと、所望の加工性が得られない。
次に本発明により、表層部の結晶粒のみを微細化する方法について説明する。
上記のように成分組成が規制されたフェライト系ステンレス鋼であれば、冷間圧延以前の工程に制限はない。通常のフェライト系ステンレス鋼に施される熱延,冷延焼鈍及び酸洗等を組み合わせて所望板厚の鋼板とした後、最終の焼鈍の前に施す焼鈍等の熱処理を特殊な条件で行い、かつ最終の焼鈍を対象鋼の再結晶温度以上の温度で行えばよい。
以下に、その条件を詳しく説明する。
中間熱処理条件
前記したように、本発明の最大の特徴点は、中間熱処理時の窒化によりTi窒化物又はNb窒化物若しくはTiとNbの複合窒化物を生成させ、最終焼鈍時にその窒化物により表層部の結晶粒を微細化する点である。
本発明者等が鋭意検討した結果、窒化物を生成させるためには、窒素を15体積%以上含む還元性ガス主体の雰囲気中で鋼板を850℃以上で保持時間300秒以上の熱処理が必要であることを見出した。
この熱処理を施した後の鋼板組織は、表層部に窒素が固溶した状態で、窒化物も形成されている。Cr含有量が少ない場合には表層に一部マルテンサイト変態を起こしていることもあるが、本発明で規定した範囲内の成分組成を有していれば、その後の最終焼鈍時に全てフェライト組織となる。
しかし、中間熱処理時の過度の窒化は鋼板の硬質化を招き、鋼板の巻取りや次工程での通板に支障をきたす為、好ましくない。熱処理温度は1050℃以下に抑えることが好ましく、また保持時間も30分以内に止めることが好ましい。
最終焼鈍後の板厚とその後の成形加工の度合いにもよるが、表面から50μmまでの範囲で結晶粒が微細化される条件を設定することが好ましい。
加熱雰囲気の窒素濃度が15体積%に満たない場合、窒化が十分に進行しない。このため、熱処理雰囲気は、窒素を15体積%以上含む還元性ガス主体のものとする。
なお、還元性ガスとしては、露点にもよるが5%以上含んでおけばよく、通常、水素が用いられる。
本発明による窒化物による表層結晶粒微細化作用を有効に発揮させるため、中間熱処理後に連続して、或いは冷間圧延後に、当該鋼の再結晶温度以上の温度で最終焼鈍を施す必要がある。この最終焼鈍により、TiやNbの窒化物が存在しない板厚中心部は再結晶が進行して結晶粒が大きくなるが、表層部は窒化物のピンニング作用により微細な結晶粒のままで留め置かれる。このため 加工性を有しつつ耐肌荒れ性が改善できた鋼板が得られることになる。より軟質化を図り加工性を向上させるためには、表層にマルテンサイト相が生成しない範囲で、比較的高い温度かつ長時間保持する焼鈍を施すことが好ましい。ただし、通常の最終焼鈍は連続焼鈍炉を使用することから、焼鈍温度が高すぎると高温強度が不足し、板切れを生じてしまい、保持時間を長くすると生産性を低下させることから、1150℃以下および1分以内で行うことが好ましい。
また、この最終焼鈍は、大気中焼鈍または窒化が生じない雰囲気下での光輝焼鈍で実施する。
実施例1:
表1に示す供試鋼Aについて、表2に示す製造工程により供試材A1〜A10を作製した。そして、供試材A1〜A10について、最終焼鈍板から圧延方向断面を光学顕微鏡で観察し、表面層の表裏面から50μmの範囲の平均結晶粒径と板厚中心線より25μmずつの範囲での平均結晶粒径を求めた。また、耐肌荒れ性と曲げ性も調査した。
耐肌荒れ性は、鋼坂表面を#1000の研磨紙で研磨した後、圧延方向にJIS13B号試験片を切り出し、20%の引張歪みを付与した後に引張方向の表面粗さ(Ra)を測定することで調査した。曲げ性は、圧延方向と直角な方向を稜線に密着曲げを行い、亀裂の有無及び肌荒れの有無を観察することにより調査した。
その結果を表3に示す。
Figure 2011001564
Figure 2011001564
Figure 2011001564
通常の工程を採用したA1では、最終焼鈍後の平均結晶粒径は約33μmであった。最終焼鈍を低温で施したA2では、一部に未再結晶粒が残存し、最終焼鈍後の平均結晶粒径は板厚方向の全体で約20μmであった。A3〜A10は中間の熱処理で窒化処理を施したものである。その際の均熱温度が低いA3,均熱時間が短いA4では表層の結晶粒径が小さくなっていなかった。中間熱処理の均熱温度及び時間が十分なA5〜A9では焼鈍後の平均結晶粒径は約20〜24μmになっている。中間熱処理での雰囲気に含まれる窒素の割合が低いA10では、最終焼鈍後の平均結晶粒径は約29μmであった。
耐肌荒れ性と曲げ性については、A1では粒径が大きく、肌荒れが確認され、A2では微細結晶粒に伴い曲げ性が低下している。A3及びA4では、それぞれ中間熱処理の温度が低いか若しく均熱時間が十分でないために、表層の結晶粒が十分に微細化しておらず、肌荒れが生じている。A5は、板厚中心部の結晶粒が微細化しているために曲げ性が十分でない。A10は、中間熱処理での雰囲気に含まれる窒素の割合が低いために窒化の効果が十分でなく、表層の微細化が進行していない。
A5〜A9は、期待した通り、引張後の表面粗さも5μm以下と小さく、曲げ性も良好で、加工性を低下させることなく耐肌荒れ性を改善することができている。
これらの結果から、前記したように、表面から50μmの平均結晶粒径が25μm以下になるように微細化されていると、成形加工後の肌荒れが抑制されることがわかった。しかし、板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍より小さい場合、板厚全体にわたり微細組織になって硬質化し、加工性が阻害されることがわかった。
このように、中間での熱処理条件と最終焼鈍後の組織を制御することにより、加工性を有しつつ耐肌荒れ性が改善できることがわかった。
次いで、A7の表層部をEPMAによる元素マッピングを行った。その結果、TiとNbの複合窒化物が確認された。
この結果から、中間熱処理を窒素が含まれる雰囲気中で施すことにより表層部に窒化が生じ、最終焼鈍時に表層の窒化物によるピンニング作用が働いて表層部のみの結晶粒の微細化が図られたものと推測される。表層部のみ結晶粒が微細化された鋼板は、その板厚中心部においては再結晶が進行して加工性を発揮し得る結晶粒従を備えているので、加工性の低下を招くことなく耐肌荒れ性を改善することができたと推測される。
なお、A6〜A9の表層部には、マルテンサイト相は存在せず、板厚全体にわたりフェライト組織であった。
実施例2:
表4に示すように、成分組成を種々変更したフェライト系ステンレス鋼を真空溶解炉で溶製し、鋳造,熱間圧延を行って板厚4.0mmの熱延板とした。この熱延板に、表5に示す条件の処理を施して板厚1.0mmの最終焼鈍板を得た。
この最終焼鈍板について、圧延方向断面を光学顕微鏡観察して、表層部の表裏面から50μmの範囲の平均結晶粒経と、板厚中心線より25μmずつの範囲の平均結晶粒径を求めた。
Figure 2011001564
Figure 2011001564
Figure 2011001564
また、耐肌荒れ性は、鋼板表面を#1000の研磨紙で研磨した後、圧延方向にJIS13B号試験片を切り出し、20%の引張歪みを付与した後に引賑方向の表面粗さ(Ra)を測定した。
さらに、曲げ性は、圧延方向と直角な方向を稜線に密着曲げを行い、亀裂の有無及び肌荒れの有無を観察した。
表6に、各鋼板の表層部の平均結晶粒径、板厚中心部の平均結晶粒径及びそれらの比、並びに引張試験後の表面粗さと曲げ試験結果の関係を示す。
鋼種B,C,D,E,F及びGは、本発明で規定した範囲内の成分組成を有するものである。鋼種HはSi含有量が高く、鋼種Iは含有C,Nに対してTi,Nb量が少なく、前記式(1)式を満たさないものである。
なお、製造工程は全て本発明で規定した条件を満たしている。
表6に示した結果からわかるように、工程B1,C1,C2,D1,D2,E1,F1,C1では、いずれも引張後の表面粗さも5μm以下であり、曲げ性も良好で、加工性を低下させることなく耐肌荒れ性を改善することができている。
これに対して、工程H1では、本発明範囲内の条件の下で中間熱処理及び最終焼鈍を施しても、Si含有量が多すぎたために中間熱処理時に窒化が進行せず、表層部に窒化物が形成されないために、最終焼鈍後の表層部は結晶粒が粗大化していた。それに伴って、加工後に肌荒れが生じていた。また工程I1では、含有C,Nに対してTi,Nb量が少なすぎたために窒化が進行しても窒化物が十分に形成されず、結果的に固溶窒素により表面硬化のみが進行して、曲げ加工時に割れが生じていた。
以上の結果から、Si含有量は0.5質量%以下に抑え、C,N,Ti及びNbを所定の関係で含有させる必要があることがわかる。
加工性の劣化を招くことなく、成形加工した際に肌荒れが生じることがないフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。

Claims (4)

  1. C:0.15質量%以下 Si:0.5質量%以下、Mn1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.020質量%以下、Cr:11〜25質量%,N:0.03質量%以下、さらにTi:0.5質量%以下及びNb:1.0質量%以下の一種又は二種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、しかも含有C,N,Ti,Nbの間で下記の式(1)の関係を満たす成分組成と、表面から50μmまでの表層部の平均結晶粒径が25μm以下であり、しかも板厚中心部の平均結晶粒径が表層部の平均結晶粒径の1.2倍以上になった組織を備えていることを特徴とする成形加工後の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
    (Ti/22+Nb/41)/(C/12+N/14)>7 ・・・(1)
  2. さらに、いずれも3.0質量%以下のNi,Cu,Moを一種又は二種以上含む成分組成を有する請求項1に記載の耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1又は2に記鼓された成分組成を有するステンレス鋼の冷延板に、15体積%以上の窒素を含む還元性ガス主体の雰囲気中で850℃以上に300秒以上保持する熱処理を施し、その後連続して大気中焼鈍又は光輝焼鈍を施すことを特徴とする耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記蔵された成分組成を有するステンレス鋼の冷延板に、15体積%以上の窒素を含む還元性ガス主体の雰海気中で850℃以上に300秒以上保持する熱処理を施し、さらに冷間圧延を施した後、大気中焼組又は光輝焼鈍を施すことを特徴とする耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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