JP2002026459A - 窒化物半導体発光素子とそれを含む光学装置 - Google Patents

窒化物半導体発光素子とそれを含む光学装置

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JP2002026459A JP2000203676A JP2000203676A JP2002026459A JP 2002026459 A JP2002026459 A JP 2002026459A JP 2000203676 A JP2000203676 A JP 2000203676A JP 2000203676 A JP2000203676 A JP 2000203676A JP 2002026459 A JP2002026459 A JP 2002026459A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発光効率の高い窒化物半導体発光素子を提供
する。 【解決手段】 窒化物半導体発光素子は、複数の量子井
戸層と複数の障壁層とが交互に積層された多重量子井戸
構造を有する発光層106を含み、その量子井戸層はI
nGaNPからなり、障壁層は窒化物半導体層からなる
ことを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光効率の高い窒
化物半導体発光素子とこれを利用した光学装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、窒化物半導体は、発光素子や
ハイパワー半導体デバイスとして利用または研究されて
いる。窒化物半導体発光素子の場合、その発光層(多重
量子井戸構造の発光層ではその井戸層)としては一般に
InGaNが用いられ、そのIn含有率を変えることに
よって青色から橙色までの広い色範囲内の発光素子を作
製することができる。近年では、その窒化物半導体発光
素子の特性を利用して、青色や緑色の発光ダイオード
や、青紫色の半導体レーザなどが開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、InG
aN量子井戸層を含む発光層を気相成長させる場合、そ
の下地となるGaN層に対する格子不整合が大きいこと
と、InGaN層は化学的熱平衡状態が不安定であるこ
とから、結晶性の良好な発光層を得ることが困難であ
る。特に、井戸層のIn含有率が高くなれば、その成長
温度に依存してInGaN結晶がIn成分の高い領域と
低い領域とに相分離されやすく、このような相分離が発
光素子における色斑の要因となっている。また、In成
分の高い領域は非発光領域になりやすく、このことに起
因して、発光素子における発光効率の低下が生じやす
い。
【0004】そこで、本発明では、窒化物半導体からな
る量子井戸構造を有する発光層を含む窒化物半導体発光
素子において、その発光層の結晶性を改善するとともに
相分離を抑制することによって、その発光効率を向上さ
せることを主目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、窒化物
半導体発光素子は、複数の量子井戸層と複数の障壁層と
が交互に積層された多重量子井戸構造を有する発光層を
含み、それらの量子井戸層はInGaNPからなり、障
壁層は窒化物半導体からなることを特徴としている。
【0006】このように、光を発する作用を生じる発光
層は量子井戸層と障壁層とを含んでおり、量子井戸層は
障壁層に比べて小さなエネルギバンドギャップを有して
いる。
【0007】InGaNP井戸層は、それに含まれるV
族元素のNとPのうちで、原子比率で20%以下のPを
含んでいることが好ましい。
【0008】窒化物半導体障壁層は、実質的にAs、
P、およびSbのいずれの元素をも含んでいないことが
好ましい。
【0009】他方、窒化物半導体障壁層は、それに含ま
れるV族元素のうちで、原子比率で7%以下のAs、1
0%以下のP、または2%以下のSbの少なくともいず
れかを含んでいてもよい。その場合には、障壁層に含ま
れるIII族元素のうちで、Inは原子比率で15%未
満であることが好ましい。
【0010】窒化物半導体発光素子は基板を含み、発光
層の両主面のうちでその基板に近い第1主面に接する第
1隣接半導体層と基板から遠い第2主面に接する第2隣
接半導体層とにおいて、少なくとも第2隣接半導体層は
少なくともAlを含む窒化物半導体からなることが好ま
しい。第1隣接半導体層または第2隣接半導体層と直接
接しているのは、量子井戸層であることが好ましい。
【0011】発光層は、2層以上で10層以下の井戸層
を含んでいることが好ましい。量子井戸層は、0.4n
m以上で20nm以下の厚さを有していることが好まし
い。障壁層は、1nm以上で20nm以下の厚さを有し
ていることが好ましい。
【0012】井戸層と障壁層の少なくとも一方は、S
i、O、S、C、Ge、Zn、Cd、およびMgから選
択された少なくとも1種のドーパントが添加されている
ことが好ましい。そのようなドーパントの添加量は、1
×1016〜1×1020/cm3の範囲内にあることが好
ましい。
【0013】窒化物半導体発光素子の基板材料として
は、GaNが好ましく用いられ得る。以上のような窒化
物半導体発光素子は、光情報読出装置、光情報書込装
置、光ピックアップ装置、レーザプリンタ装置、プロジ
ェクタ装置、表示装置、白色光源装置などの種々の光学
装置において好ましく用いられ得るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態のより具体的
な例として、種々の実施例が以下において説明される。
【0015】一般に、窒化物半導体結晶層を成長させる
際には、GaN、サファイア、6H−SiC、4H−S
iC、3C−SiC、Si、スピネル(MgAl24
などが基板材料として用いられる。GaN基板と同様
に、窒化物半導体からなる他の基板をも用いることもで
き、たとえばAlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y
≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)基板を用いること
もできる。窒化物半導体レーザの場合では、垂直横モー
ドの単峰化のためにはクラッド層よりも屈折率の低い層
がそのクラッド層の外側に接している必要があり、Al
GaN基板を用いることが好ましい。さらに、Si、
O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、As、ま
たはBeが基板にドーピングされてもよい。n型窒化物
半導体基板のためには、これらのドーピング剤のうちで
Si、O、およびClが特に好ましい。
【0016】以下の実施例においては上述のような基板
のうちで主にサファイア基板と窒化物半導体のC面{0
001}基板について説明されるが、その基板の主面と
なる面方位としては、C面のほかに、A面{11−2
0}、R面{1−102}、またはM面{1−100}
を用いてもよい。また、それらの面方位から2度以内の
オフ角度を有する基板であれば、その上に成長させられ
る半導体結晶層の表面モフォロジが良好になる。
【0017】結晶層を成長させる方法としては、有機金
属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシ法(M
BE)、ハイドライド気相成長法(HVPE)などが一
般的に利用される。これらの中でも、作製される窒化物
半導体層の結晶性や生産性を考慮すれば、基板としては
GaNまたはサファイアを使用し、結晶成長方法として
はMOCVD法を利用するのが最も一般的である。
【0018】(実施例1)以下において、本発明の実施
例1による窒化物半導体レーザダイオード素子が説明さ
れる。
【0019】図1の模式的な断面図に示された実施例1
による窒化物半導体レーザダイオード素子は、C面(0
001)サファイア基板100、GaNバッファ層10
1、n型GaNコンタクト層102、n型In0.07Ga
0.93Nクラック防止層103、n型Al0.1Ga0.9Nク
ラッド層104、n型GaN光ガイド層105、発光層
106、p型Al0.2Ga0.8N遮蔽層107、p型Ga
N光ガイド層108、p型Al0.1Ga0.9クラッド層1
09、p型GaNコンタクト層110、n型電極11
1、p型電極112、およびSiO2誘電体膜113を
含んでいる。
【0020】図1のレーザダイオード素子を作製する場
合、まずMOCVD装置内へサファイア基板100をセ
ットし、V族元素のN用原料としてのNH3(アンモニ
ア)とIII族元素のGa用原料としてのTMGa(ト
リメチルガリウム)を利用して、比較的低い550℃の
基板温度の下でGaNバッファ層101を25nmの厚
さに成長させる。次に、上記のN用とGa用の原料に加
えてSiH4(シラン)をも利用して、1050℃の温
度の下でn型GaNコンタクト層102(Si不純物濃
度:1×1018/cm3)を3μmの厚さに成長させ
る。続いて、基板温度を700℃ないし800℃程度に
下げ、III族元素のIn用原料としてTMIn(トリ
メチルインジウム)を利用して、n型In0.07Ga0.93
Nクラック防止層103を40nmの厚さに成長させ
る。再び基板温度を1050℃に上げて、III族元素
のAl用原料としてTMAl(トリメチルアルミニウ
ム)を利用して厚さ0.8μmのn型Al0.1Ga0.9
クラッド層104(Si不純物濃度:1×1018/cm
3)を成長させ、続いてn型GaN光ガイド層105
(Si不純物濃度:1×1018/cm3)を0.1μm
の厚さに成長させる。
【0021】その後、基板温度が800℃に下げられ、
厚さ6nmのIn0.05Ga0.95N障壁層の複数と厚さ4
nmのIn0.05Ga0.950.980.02井戸層の複数とが
交互に積層された多重量子井戸構造を有する発光層10
6を形成する。この実施例では、発光層106は障壁層
で開始して障壁層で終了する多重量子井戸構造を有し、
3層の量子井戸層を含んでいる。これらの障壁層と井戸
層の成長の際には、それらの両方が1×1018/cm3
のSi不純物濃度を有するように、SiH4が添加され
た。なお、障壁層と井戸層の成長の間または井戸層と障
壁層の成長の間に、1秒以上で180秒以下の成長中断
期間を挿入してもよい。こうすることによって、障壁層
と井戸層の平坦性が向上し、発光半値幅を小さくするこ
とができる。
【0022】一般に、井戸層中におけるPの含有量は、
目的とする発光素子の発光波長に応じて調節することが
できる。すなわち、井戸層としてInGaNP系の半導
体を用いる場合に、目的とする発光波長を得るために
は、Inの含有割合yに応じて、表1に示された数値を
Pの含有割合xの値として採用すればよい。
【0023】
【表1】
【0024】発光層106を形成した後には、基板を再
び1050℃まで昇温して、厚さ20nmのp型Al
0.2Ga0.8N遮蔽層107、厚さ0.1μmのp型Ga
N光ガイド層108、厚さ0.5μmのp型Al0.1
0.9Nクラッド層109、および厚さ0.1μmのp
型GaNコンタクト層110を順次成長させる。なお、
p型不純物としては、EtCP2Mg(ビスエチルシク
ロペンタジエニルマグネシウム)を利用して5×1019
〜2×1020/cm3の濃度でMgが添加され得る。
【0025】p型GaNコンタクト層110におけるp
型不純物濃度は、p型電極112との接合面に近づくに
従って高められることが好ましい。そうすれば、p型電
極との間のコンタクト抵抗がより低減され得る。また、
p型層内におけるp型不純物であるMgの活性化を妨げ
る残留水素を除去するために、p型層の成長中に微量の
酸素を混入させてもよい。
【0026】p型GaNコンタクト層110の成長後、
MOCVD装置のリアクタ内の全ガスを窒素キャリアガ
スとNH3に代えて、60℃/分の冷却速度で温度を降
下させる。基板温度が800℃に低下した時点でNH3
の供給を停止し、その800℃の基板温度を5分間維持
してから室温まで冷却させる。なお、このような一時的
な基板の保持温度は650℃から900℃の範囲内であ
ることが好ましく、保持時間は3分から10分の範囲内
であることが好ましい。また、その保持温度から室温ま
での冷却速度は、30℃/分以上であることが好まし
い。
【0027】こうして形成された成長膜の表面をラマン
測定によって評価したところ、従来の窒化物半導体膜で
利用されているp型化アニールを行なわなくても、成長
直後において既にp型の特性を示していた。また、p型
電極112を形成したときに、そのコンタクト抵抗も低
減していた。なお、従来と同様にp型化アニールをも施
せば、成長膜中のMgの活性化率がさらに向上すること
はいうまでもない。
【0028】次に、MOCVD装置から取出したエピタ
キシャルウェハをレーザダイオード素子に加工するプロ
セスについて説明する。
【0029】まず、反応性イオンエッチング装置を用い
てn型GaNコンタクト層102の一部を露出させ、こ
の露出部分上にHf/Auの順の積層からなるn型電極
111を形成する。このn型電極111の材料として
は、Ti/Al、Ti/Mo、Hf/Alなどの積層を
用いることもできる。Hfは、n型電極のコンタクト抵
抗を下げるのに有効である。p型電極部分では、サファ
イア基板100の<1−100>方向に沿ってストライ
プ状にエッチングを行ない、SiO2誘電体膜113を
蒸着し、p型GaNコンタクト層110を露出させ、P
d/Auの順序の積層を蒸着し、こうして幅2μmのリ
ッジストライプ状のp型電極112を形成する。このp
型電極の材料としては、Ni/Au、Pd/Pt/Au
またはPd/Mo/Auなどの積層を用いることもでき
る。
【0030】最後に、劈開またはドライエッチングを利
用して、共振器長が500μmのファブリ・ペロー共振
器を作製する。この共振器長は、一般に300μmから
1000μmの範囲内にあることが好ましい。共振器の
ミラー端面は、サファイア基板のM面と一致するように
形成される(図2参照)。劈開とレーザ素子のチップ分
割は、図2中の破線2Aと2Bに沿って基板側からスク
ライバを用いて行なわれる。こうすることによって、レ
ーザ端面の平面性が得られるとともにスクライブによる
削り滓がエピタキシャル層の表面に付着しないので、発
光素子の歩留りが良好になる。
【0031】なお、レーザ共振器の帰還法としては、フ
ァブリ・ペロー型に限られず、一般に知られているDF
B(分布帰還)型、DBR(分布ブラグ反射)型なども
用い得ることはいうまでもない。
【0032】ファブリ・ペロー共振器のミラー端面を形
成した後には、そのミラー端面にSiO2とTiO2の誘
電体膜を交互に蒸着し、70%の反射率を有する誘電体
多層反射膜を形成する。この誘電体多層反射膜として
は、SiO2/Al23などの多層膜を用いることもで
きる。
【0033】なお、n型GaNコンタクト層102の一
部を反応性イオンエッチングを用いて露出させたのは、
絶縁性のサファイア基板100が使用されているからで
ある。したがって、GaN基板、Si基板、またはSi
C基板のような導電性を有する基板を使用する場合に
は、n型GaN層102の一部を露出させる必要はな
く、その導電性基板の裏面上にn型電極を形成してもよ
い。
【0034】次に、上述のようなレーザダイオードチッ
プをパッケージに実装する方法について述べる。まず、
上述のような発光層を含むレーザダイオードがその特性
を生かして高密度記録用光ディスクに適した青紫色(波
長410nm)の高出力(50mW)レーザとして用い
られる場合、サファイア基板は熱伝導率が低いので、放
熱対策に注意を払わなければならない。たとえば、In
半田材を用いて半導体接合を下側にしてチップをパッケ
ージ本体に接続することが好ましい。また、パッケージ
本体やヒートシンク部に直接にチップを取付けるのでは
なくて、Si、AlN、ダイヤモンド、Mo、CuW、
BN、Cu、Au、Feなどの良好な熱伝導性を有する
サブマウントを介して接合させてもよい。
【0035】他方、熱伝導率の高いSiC基板、窒化物
半導体基板(たとえばGaN基板)、またはGaN厚膜
基板(たとえば図8に示す基板800の種基板801を
研削除去したもの)上に前述の発光層を含む窒化物半導
体レーザダイオードを作製した場合には、たとえばIn
半田材を用いて半導体接合を上側にしてパッケージ本体
に接続することが好ましい。この場合にも、パッケージ
本体やヒートシンク部に直接チップの基板を取付けるの
ではなくてSi、AlN、ダイヤモンド、Mo、Cu
W、BN、Cu、Au、Feなどのサブマウントを介し
て接続してもよい。
【0036】以上のようにして、発光層を構成している
井戸層にPを含む窒化物半導体を用いたレーザダイオー
ドを作製することができる。
【0037】次に、上述の実施例のレーザダイオードに
含まれる発光層106に関連してさらに詳細に説明す
る。
【0038】前述ように、InGaN量子井戸層を含む
発光層を気相成長させる場合、その下地となるGaN層
に対する格子不整合が大きいことと、InGaN層は化
学的熱平衡状態が不安定であることから、目的とするI
n含有率を有する井戸層を作製することが困難である。
特に、In含有率が高い場合(井戸層に含まれるIII
族元素のGaとInのうちでInの原子比率が約15%
以上の場合)、InGaN混晶の組成制御が容易でな
い。すなわち、その混晶の組成比率は結晶成長温度に強
く依存し、InGaN結晶中でIn成分の高い領域と低
い領域とに相分離を生じやすい。このような相分離が生
じることは、発光波長の半値幅が広くなることを意味
し、色斑の原因となる。また、In成分の高い領域は非
発光領域になりやすく、発光素子における発光効率の低
下や歩留まりの低下の原因となる。
【0039】InGaN結晶の相分離は、In自体の偏
析(凝集)効果と、V族元素のNがその非常に高い揮発
性のために結晶中に取込まれにくいことに起因してい
る。
【0040】V族元素のNが結晶中に取込まれにくいと
いうことは、NとInの結合が形成されにくいことを意
味する。Nと結合できなかったInは、In同士が凝縮
し合って(偏析)、In成分の高い領域を形成してしま
う。これが相分離である。同様に、GaとNについて
も、Nと結合できなかったGaが存在するが、GaはI
nと異なりエピ表面をしばらく拡散した後に再蒸発す
る。したがって、Ga同士の偏析効果はInのそれと比
べて極めて小さい。
【0041】本発明では、井戸層としてのInGaNP
を用いることによって、Nに比べて揮発性の低いV族元
素のPを容易にInと結合させることができる。なぜな
らば、PはNに比べてInとの結合力が強く、しかもN
に比べて揮発性が低いために結晶中から抜け出にくいか
らである。このように、InとPとの結合が形成される
ことによって、In同士が凝縮し合って偏析することを
防止する。また、本発明のInGaNP井戸層は、従来
のInGaNに比べて、目的発光波長を得るために必要
とされるIn含有率を低くすることができる。なぜなら
ば、Inと同様にPがエネルギバンドギャップを調節す
るように作用し得るからである。もちろん、井戸層中に
おけるInの低い含有率は、In自体の偏析効果を低減
するように作用する。さらに、InGaNP井戸層にお
いては、Pの含有率変化によるエネルギバンドギャップ
のボウイング効果が非常に大きく、InGaN結晶に比
べて下地のGaN層とのわずかな格子不整合で目的発光
波長を得ることができる。このことは、そのような井戸
層を含む発光層中の結晶欠陥を減少させ、高い結晶性を
有する発光層の実現を可能にする。
【0042】本発明による井戸層においてNの置換元素
としてPを選択した理由は、Nに比べて揮発性の低いV
族元素(たとえば、P、As、Sbなど)のうちで、P
が最もNの原子半径に近いからである。このことによっ
て、窒化物半導体結晶中のV族原子の格子位置にPが容
易に組込まれ、その結晶性を損なうことがない。もちろ
ん、井戸層はキャリアが発光再結合を起こす層であるの
で、障壁層に比べても特に高い結晶性が望まれる。この
ような結晶性の観点からも、井戸層中においてNの置換
元素としてPを含有させることは特に好ましい。
【0043】また、InGaNP井戸層においては従来
のInGaN井戸層に比べて電子とホールの有効質量が
小さくなるので、InGaNP井戸層を含むレーザ素子
においては従来に比べてレーザ発振しきい値電流密度を
低くすることができる。このことによって、低消費電力
かつ高出力で長寿命のレーザ素子を実現することができ
る。さらに、従来のInGaN井戸層を含む琥珀色発光
ダイオードはその井戸層中のIn含有率が高くて信頼性
と発光強度の観点から商品化レベルに達していなかった
が、本発明によるInGaNP井戸層は、前述のように
従来に比べてIn含有率が低くかつ格子整合性が良好で
あるので、長波長の色の発光ダイオードにも適してい
る。
【0044】次に、発光層に含まれる井戸層と障壁層の
好ましい構成およびそれらの成長条件について述べる。
【0045】まず、本発明によるInGaNP井戸層
は、600℃以上900℃以下のもとで成長させるのが
好ましい。また、InGaN1-xx井戸層中のPの平均
含有率xは0<x<0.5の範囲内にあることが好まし
く、0<x≦0.2の範囲内にあることがさらに好まし
い。なぜならば、これらの条件から外れれば、Pを含有
させることによる井戸層の相分離を抑制する効果より
も、Pが含まれたことによる結晶性の悪化が顕著になり
始めるからである。
【0046】すなわち、井戸層の成長温度が900℃よ
り高くなれば、井戸層中において揮発性が高いNの抜け
が顕著になり、局所的にPの含有率xが0.5以上にな
ってしまう。Pの含有率xが高くて0.5≦x≦1の領
域はxが小さい場合の六方晶系ではなくて立方晶系(閃
亜鉛鉱構造)に属するので、同じ井戸層中に異なる結晶
系が混在してその井戸層の結晶性が悪化することにな
る。このようなことから、井戸層が900℃以下の温度
のもとで成長させられる場合であっても、それに含まれ
るPの平均含有率xは0.5未満であることが望まれ
る。なお、以後において、異なる結晶系(六方晶系と立
方晶系)が混在する状態を結晶系分離と呼ぶことにす
る。一方、井戸層の成長温度が600℃より低くなれ
ば、井戸層の結晶性が低下するため好ましくない。
【0047】InGaNP井戸層の厚さについては、上
記の成長条件の範囲内であれば従来のInGaN層に比
べて厚く成長させても結晶欠陥が生じにくく、Inの含
有率にも依存するが300nm程度の厚さまで成長させ
ることが可能である。しかしながら、量子井戸効果を利
用する発光素子の観点からは、InGaNP井戸層の厚
さは20nm以下であることが好ましい。他方、井戸層
は、0.4nm未満の厚さになれば発光作用を生じなく
なるので、それ以上の厚さを有することが必要である。
【0048】上述の好ましいInGaN1-xx(0<x
≦0.2)井戸層に対して最も好ましい障壁層は、A
s、P、およびSbのいずれをも含まない窒化物半導体
障壁層である。これは、以下のような理由による。
【0049】上述のように、適正な条件のもとでInG
aN1-xx(0<x≦0.2)井戸層を堆積すれば、そ
の結晶成長の際に結晶系分離が生じることを防止し得
る。しかしながら、発光素子を作製するためには発光層
の堆積後にp型層を堆積しなければならず、このp型層
の成長温度は少なくとも1000℃以上の高温にしなけ
ればならない。したがって、井戸層中のPの含有量にも
よるが、井戸層がその成長中に結晶系分離を起こしてい
なくても、p型層の高温成長の際に結晶系分離を生じる
ことがある。この結晶系分離が井戸層と障壁層との界面
で生じた場合、その井戸層に接する障壁層へその結晶系
分離の影響が伝播する。この影響が強い場合にはその伝
播が発光層全体に広がり、多重量子井戸構造の形成が困
難になる。ところが、障壁層自体がAs、P、およびS
bのいずれをも含有していない場合には、結晶系分離を
生じた井戸層にその障壁層が接していても、障壁層全体
が異なる結晶系(立方晶系)に相転移することはなく、
六方晶系を維持することができる。したがって、そのよ
うな障壁層は結晶系分離の影響が他の層に伝播すること
を防止するように作用し、多重量子井戸構造を支障なく
作製することが可能になる。
【0050】As、P、およびSbのいずれをも含まな
い窒化物半導体障壁層としては、たとえば、AlGa
N、GaN、InGaN、またはInAlGaNなどを
用いることができる。障壁層がAlGaNを含む場合、
AlはV族元素との結合力が強いので、高い成長温度の
もとでもその障壁層が安定であって結晶系分離の伝播を
防止することができる。ただし、AlGaNは、高温で
成長しなければ結晶性が良くないため、井戸層の適正成
長温度との関連から900℃で成長することが好まし
い。他方、GaN障壁層は、Inを含まないので、もと
もと相分離および結晶系分離とは無縁であるため好まし
い。ただし、GaNは高温で成長しなければ結晶性が良
くないため、井戸層の適正成長温度との関連から900
℃で成長することが好ましい。
【0051】InGaN障壁層については、Inを含有
することによってその成長温度を井戸層と同程度(60
0℃〜900℃)まで低くすることができる。したがっ
て、発光層の結晶成長中に井戸層が結晶系分離を生じる
高温にされることがなく、障壁層の結晶性も良好にな
る。なお、このInGaN障壁層におけるIII族元素
のうちでInの原子比率は15%未満であることが望ま
れる。さらに好ましくは、8%以下である。このような
Inの含有率であれば、上述のようなInGaN層中の
相分離(In成分の高い領域と低い領域に分離するこ
と)が生じない。
【0052】InAlGaN障壁層は、Alを含有して
いるため上記AlGaNと同様の特性を有する。しか
も、Inも含有されているため、井戸層と同程度(60
0℃〜900℃)の成長温度で作製できる。したがっ
て、井戸層が結晶成長中に、結晶系分離を生じることな
く、かつ障壁層の結晶性も良好であるため好ましい。
【0053】他方、窒化物半導体障壁層がAs、P、ま
たはSbの少なくともいずれかを含有する場合には、そ
の障壁層に含まれるV族元素のうちでAsは原子比率で
7%以下、Pは10%以下、そしてSbは2%以下であ
ることを要する。なぜならば、上述のように、障壁層が
As、P、またはSbを含有する場合には結晶系分離の
影響を他の層へ伝播させる可能性があり、このような伝
播を防止するためにはAs、P、およびSbの含有率を
制限しなければならないからである。
【0054】このような制限のもとにおいて、障壁層に
あえてAs、P、またはSbを含有させることが好まし
い点は、第1に、これらの元素を含有する障壁層はIn
GaNP井戸層とほぼ同一の温度で結晶成長させること
ができるので、発光層全体の結晶性が良好になることで
ある。第2に、As、P、またはSbを含有する障壁層
は屈折率が大きくなる傾向を有するので、光閉じ込め効
率が向上して、レーザ発振しきい値電流密度の低減や光
学特性の向上を図り得ることである。
【0055】このような障壁層として、たとえばInG
aNX(XはAs、P、およびSbから選択された1以
上のもの、以下同じ)、GaNX、AlGaNX、In
AlGaNXなどが用いられ得る。なお、InGaNX
障壁層においては、基本的には本発明によるInGaN
P井戸層と同様の効果が得られる。他方、AlGaNは
その結晶性をよくするためには一般に成長温度を高くし
なければならないが、AlGaNXはAs、P、または
Sbのいずれかの元素を含んでいるので、その結晶成長
温度をInGaNP井戸層の場合と同様に低くすること
ができる。
【0056】障壁層の厚さについては、それがAs、
P、またはSbを含むか否かに関わらず、1〜20nm
の範囲内にあることが好ましい。障壁層の厚さが1nm
よりも薄いと、井戸層に結晶系分離が生じた場合にその
影響を遮蔽することが非常に困難であるため好ましくな
い。一方、障壁層の厚さが20nmよりも厚くなると、
多重量子井戸構造のエネルギサブバンドを構成するのが
困難になるため好ましくない。
【0057】また、井戸層と障壁層との層厚の関係につ
いては、障壁層の厚さが井戸層の厚さと同じかまたは薄
くすることによって多重量子井戸構造のエネルギサブバ
ンドを構成しやすくなるため好ましい。一方、障壁層の
厚さが井戸層の厚さと同じかまたは厚くなると井戸層の
結晶系分離の影響を遮蔽する効果が大きくなるため好ま
しい。
【0058】発光層の不純物の添加に関しては、本実施
例では井戸層と障壁層の両方に不純物としてSiH
4(Si)を添加したが、片方の層のみに添加してもよ
いし、両層ともに添加されなくてもレーザ発振は可能で
ある。しかし、フォトルミネッセンス(PL)測定によ
れば、井戸層と障壁層との両方にSiH4を添加した場
合に、添加しない場合に比べてPL発光強度が約1.2
倍から1.4倍程度強くなった。このことから、発光ダ
イオードにおいては、発光層中にSiH4などの不純物
を添加する方が好ましい。
【0059】この理由としては、本発明によるInGa
NP井戸層はPを含むことによって従来のInGaN層
中の相分離(In偏析など)による非発光部(In成分
の高い領域)の発生を抑制できる代わりに、全くPを含
まないInGaN井戸層に比べて、適度に形成されるべ
きInの局在準位(量子ドット)が形成されにくくなる
ことが考えられる。このような局在準位はキャリアをト
ラップする働きを有するので、井戸層中に結晶欠陥が多
く存在していても、効率的な発光再結合に寄与すること
ができる。したがって、そのような局在準位が形成され
にくいInGaNP井戸層の発光強度を高めるために
は、その結晶性をよくすることが必要である。したがっ
て、Siなどの不純物を添加することは、InGaNP
井戸層の結晶成長のための核を形成し、その核を元にし
て結晶性の良好な井戸層の成長が可能になるので好まし
い。本実施例ではSi(SiH4)を1×1018/cm3
の濃度で添加したが、Si以外にO、S、C、Ge、Z
n、Cd、Mgなどを添加しても同様の効果が得られ
る。また、これらの添加原子の濃度は約1×1016〜1
×1020/cm3程度が好ましい。添加濃度が1×10
16/cm3よりも低いと、前記核形成が十分に行なわれ
ないために結晶性が低下して好ましくない。一方、添加
濃度が1×1020/cm3よりも高いと、不純物自体を
添加したことによる結晶欠陥が増大し始め、結晶性が低
下して好ましくない。
【0060】一般に、レーザダイオードの場合には、障
壁層のみに不純物を添加する変調ドープを行なえば、井
戸層内でのキャリア吸収がないためにしきい値電流密度
が低下するが、むしろ本発明の井戸層においては不純物
を添加した方がレーザのしきい値が低かった。これは、
本実施例においては窒化物半導体基板と異なるサファイ
ア基板から出発して結晶成長を進めているので、結晶欠
陥が多く(貫通転位密度が約1×1010/cm2)、井
戸層内での不純物によるキャリア吸収を考慮するよりも
不純物を添加して結晶性を向上させた方がレーザしきい
値電流密度の低減に有効であったと考えられる。
【0061】図3において、発光層(多重量子井戸構
造)に含まれる井戸層の数とレーザしきい値電流密度と
の関係が示されている。すなわち、このグラフの横軸は
井戸層の数を表わし、縦軸はしきい値電流密度(kA/
cm2)を表わしている。また、○印はサファイア基板
を用いた場合のレーザしきい値電流密度を表わし、●印
はGaN基板を用いた場合を表わしている。図3からわ
かるように、井戸層数が10層以下のときにしきい値電
流密度が10kA/cm2以下になり、室温連続発振が
可能となる。また、発振しきい値電流密度をさらに低減
するためには、井戸層数が2層以上で6層以下であるこ
とが好ましい。さらに、サファイア基板よりもGaN基
板を用いた場合にしきい値電流密度が低くなることがわ
かる。
【0062】GaN基板(窒化物半導体基板)を用いた
本発明の発光層を有するレーザ素子の方がサファイア基
板を用いたそれと比べてしきい値電流密度が低くなった
のは、結晶欠陥(特に貫通電位)が減少したことによる
と考えられる。
【0063】発明者らの実験によれば、InGaNP井
戸層中に添加したPは、窒化物半導体膜の貫通転位近傍
に偏析しやすいことがわかった。このようなPの偏析は
井戸層の結晶性を低下させ、ひいては結晶系分離に発展
してしまう。また、結晶系分離が生じてしまうと、多層
積層構造を有する多重量子井戸構造の作製も困難になっ
てしまう。したがって、本発明の発光層を有する発光素
子の発光効率をさらに向上させるためには、前述の不純
物添加の他に、貫通転位密度の低い(貫通転位密度1×
107/cm2以下)窒化物半導体基板(たとえばGaN
基板)を用いることは特に好ましい。
【0064】発光層106上には、p型AlGaN遮蔽
層107とp型層108がこの順に積層するように設け
られている。このp型層108は、レーザダイオードの
場合にはp型光ガイド層に対応するが、発光ダイオード
の場合にはp型クラッド層またはp型コンタクト層に対
応する。
【0065】PL測定によれば、遮蔽層107がない場
合とある場合との比較では、遮蔽層がある場合の方が設
計発光波長からのシフト量が小さくてPL発光強度も強
かった。上述のレーザダイオードの発光層に関連して述
べたように、発光層106に比べてその上のp型層10
8の成長温度は高いので発光層の結晶系分離を促すよう
に作用することがある。しかし、発光層とその上のp型
層との間に接する界面にAlを含有する遮蔽層107を
設けることによって、発光層の結晶系分離を抑制しかつ
Pを含有する井戸層106からの影響(結晶系分離な
ど)がp型層108へ伝播することをも防止し得ると考
えられる。AlはV族元素に対して強い結合力を有して
いて高い結晶成長温度でもその結合が安定であるので、
たとえ発光層からV族原子の抜けが生じたとしてもそれ
が遮断層内部に拡散していくことを防止し得る。特に、
多重量子井戸構造を有する発光層106が井戸層で開始
して井戸層で終了する図4(b)の構造を有する場合
に、遮蔽層107の効果が顕著に認められた。
【0066】以上のことから、遮蔽層107は、少なく
ともAlを含有していることが重要である。また、遮蔽
層の極性はp型であることが好ましい。なぜならば、遮
蔽層がp型でなければ発光層近傍のpn接合の位置が変
化して発光効率が低下するからである。
【0067】上述の場合と同様に、n型AlGaN遮蔽
層を発光層106とn型層105との間に接するように
設けてもよい。このn型層105は、レーザダイオード
の場合にはn型光ガイド層に相当するが、発光ダイオー
ドの場合にはn型クラッド層またはn型コンタクト層に
相当する。そのようなn型AlGaN遮蔽層の効果は、
p型AlGaN遮蔽層107とほぼ同様である。
【0068】次に、発光層のバンドギャップ構造に関し
ては、図6におけるバンドギャップ構造では、光ガイド
層と障壁層が同一の窒化物半導体材料であるので、それ
らのエネルギバンドギャップと屈折率も同じである。し
たがって、この場合にはサブバンドによる多重量子井戸
効果を得にくく、レーザダイオードの場合には利得の減
少(しきい値電流密度の増加)を、発光ダイオードの場
合には波長の半値幅の増加(色斑の原因)を招きやす
い。
【0069】そこで、本実施例においては、図4(a)
に示されているように、光ガイド層に比べて障壁層のエ
ネルギバンドギャップが小さくされる。これによって、
図6に示されたバンドギャップ構造と比べてサブバンド
による多重量子井戸効果が得やすくなり、かつ光ガイド
層よりも障壁層の屈折率が大きくなって光閉じ込め効果
が向上し、垂直横モードの特性(単峰化)が改善され
る。特に、障壁層がAs、P、またはSbを含有してい
る場合に、その屈折率が大きくなる傾向が顕著であって
好ましい。
【0070】上述のように光ガイド層に比べて障壁層の
エネルギバンドギャップを小さくする発光層の構成は、
図4(a)と(b)に示されているように2種類が可能
である。すなわち、多重量子井戸構造を有する発光層が
障壁層で始まって障壁層で終わる構成と井戸層で始まっ
て井戸層で終わる構成のいずれであってもよい。また、
遮蔽層を用いない場合の発光層のバンドギャップ構造
は、図5(a)と(b)に示された状態になる。
【0071】(実施例2)実施例2では、実施例1で述
べられた多重量子井戸構造を有する発光層中の障壁層の
窒化物半導体材料が種々に変えられた。これらの障壁層
の窒化物半導体材料が表2に示されている。
【0072】このような実施例2による発光素子におけ
るその他の条件は実施例1の場合と同様にされたが、実
施例1と同様な効果が得られた。
【0073】
【表2】
【0074】(実施例3)図7に示された実施例3にお
いては、実施例1で用いられたサファイア基板100の
代わりに主面としてC面({0001}面)を有するn
型GaN基板700が用いられた。GaN基板を用いる
場合、GaNバッファ層101を省略してn型GaN層
102を直接GaN基板上に成長させてもよい。しか
し、現在商業的に入手可能なGaN基板はその結晶性や
表面モホロジーが十分に良好ではないので、これらの改
善のためにGaNバッファ層101を挿入する方が好ま
しい。
【0075】この実施例3ではn型GaN基板700を
用いているので、n型電極111はGaN基板700の
裏面に形成することができる。また、GaN基板は劈開
端面が非常に平滑であるので、共振器長が300μmの
ファブリ・ペロー共振器を低いミラー損失で作製するこ
とができる。なお、実施例1の場合と同様に、共振器長
は、一般に300μmから1000μmの範囲内にある
ことが好ましい。共振器のミラー端面は、GaN基板7
00の{1−100}面に対応するように形成される。
また、レーザ素子の劈開とチップ分割は、前述の図2の
場合と同様に基板側からスクライバによって行なわれ
る。さらに、レーザ共振器の帰還手法として、前述のD
FBやTBRを用いることももちろん可能であり、さら
にミラー端面に実施例1の場合と同様の誘電多層反射膜
が形成されてもよいことも言うまでもない。
【0076】サファイア基板の代わりにGaN基板を用
いることによって、エピタキシャルウェハ中にクラック
を生じることなく、n型AlGaNクラッド層104と
p型AlGaNクラッド層109の厚さを大きくするこ
とができる。好ましくは、これらのAlGaNクラッド
層の厚さは、0.8〜1.0μmの範囲内に設定され
る。これによって、垂直横モードの単峰化と光閉じ込め
効率が改善され、レーザ素子の光学特性の向上とレーザ
しきい値電流密度の低減を図ることができる。
【0077】ところで、前述のように本発明による発光
層に含まれる井戸層の特性はその井戸層の結晶性(結晶
欠陥)に強く依存するので、本実施例におけるようにG
aN基板を用いて該井戸層を含む窒化物半導体レーザダ
イオード素子を作製すれば、その発光層中の結晶欠陥密
度(たとえば貫通転位密度)が低減され、サファイア基
板が用いられた実施例1に比べてレーザ発振しきい値電
流密度が低減する(図3参照)。
【0078】なお、本実施例における発光層に関するそ
の他の条件については、実施例1の場合と同様である。
ただし、発光層中の不純物濃度に関しては、障壁層中の
みに不純物を添加する変調ドープ、または井戸層に3×
1018/cm3以下の濃度の不純物を添加することによ
って、レーザしきい値電流密度が実施例1に比べて低減
した。これは、前述のように発光層の結晶性がサファイ
ア基板を用いた場合に比べて向上したためであると考え
られる。
【0079】(実施例4)実施例4は、実施例1のサフ
ァイア基板100を図8に示された基板800に置き換
えたことを除いて、実施例1または実施例3と同様であ
る。図8の基板800は、順次積層された種基板80
1、バッファ層802、n型GaN膜803、誘電体膜
804、およびn型GaN厚膜805を含んでいる。
【0080】このような基板800の作製においては、
まず、種基板801上にMOCVD法によって550℃
の比較的低温でバッファ層802を積層する。その上
に、1050℃の温度においてSiをドーピングしなが
ら厚さ1μmのn型GaN膜803が形成される。
【0081】n型GaN膜803の形成されたウェハを
MOCVD装置から取出し、スパッタ法、CVD法、ま
たはEB蒸着法を利用して誘電体膜804を厚さ100
nmに形成し、リソグラフィ技術を用いてその誘電体膜
804が周期的なストライプ状パターンに加工される。
これらのストライプはn型GaN膜803の<1−10
0>方向に沿っており、この方向に直交する方向の<1
1−20>方向に10μmの周期的ピッチと5μmのス
トライプ幅とを有している。
【0082】次に、ストライプ状に加工された誘電体膜
804が形成されたウェハがHVPE装置内にセットさ
れ、1×1018/cm3のSi濃度と350μmの厚さ
を有するn型GaN厚膜805が1100℃の成長温度
において堆積される。
【0083】n型GaN厚膜805が形成されたウェハ
はHVPE装置から取出され、その上に実施例1(図1
参照)と同様のレーザダイオードが作製された。ただ
し、この実施例4においては、レーザダイオードのリッ
ジストライプ部分1Aが図8のライン810と811の
直上に位置しないように作製された。これは、貫通転位
密度(すなわち結晶欠陥密度)の少ない部分にレーザ素
子を作製するためである。このようにして作製された実
施例4のレーザダイオードの特性は、基本的に実施例3
の場合と同様であった。
【0084】なお、基板800は、研磨機で種基板80
1を除去した後にレーザダイオード用基板として用いら
れてもよい。また、基板800はバッファ層802以下
のすべての層を研磨機で除去した後にレーザダイオード
基板として用いられてもよい。さらに、基板800は、
誘電体膜804以下のすべての層を研磨機で除去した後
にレーザダイオード用基板として用いられもよい。種基
板801が除去される場合、実施例3の場合と同様に、
その基板の裏面上にn型電極111を形成することがで
きる。なお、種基板801は、レーザダイオードが作製
された後に除去することも可能である。
【0085】上記の基板800の作製において、種基板
801としては、C面サファイア、M面サファイア、A
面サファイア、R面サファイア、GaAs、ZnO、M
gO、スピネル、Ge、GaAs、Si、6H−Si
C、4H−SiC、3C−SiCなどのいずれが用いら
れてもよい。バッファ層802としては、450℃から
600℃の比較的低温で成長させられたGaN層、Al
N層、AlxGa1-xN(0<x<1)層、またはIny
Ga1-yN(0<y≦1)層のいずれが用いられてもよ
い。n型GaN膜803の代わりとして、n型Alz
1-zN(0<z<1)膜が用いられ得る。誘電体膜8
04としては、SiO2膜、SiNx膜、TiO 2膜、ま
たはAl23膜のいずれが用いられてもよい。n型Ga
N厚膜805の代わりとして、n型AlwGa1-wN(0
<w≦1)厚膜であってもよく、その膜厚は20μm以
上であればよい。
【0086】(実施例5)実施例5においては、実施例
1の光ガイド層の材料が種々変えられた。実施例1では
n型光ガイド層105とp型光ガイド層108の両方が
GaNで形成されていたが、それらのGaN層の窒素原
子の一部がAs、P、またはSbのいずれかの元素で置
換されてもよい。すなわち、GaN1-x-y-zAsxy
z(0≦x≦0.07、0≦y≦0.1、0≦z≦
0.02、x+y+z>0)の光ガイド層を用いること
ができる。
【0087】従来のAlGaNクラッド層/GaN光ガ
イド層では、たとえクラッド層中のAl含有量を増大さ
せたとしても、これらの互いの層の屈折率差が小さく、
逆に格子不整合が増加してクラックの発生や結晶性の低
下を招く。他方、AlGaNクラッド層とGaNAsP
Sb光ガイド層との組合せの場合、As、P、またはS
bによるバンドギャップにおける非常に大きなボウイン
グ効果のために、従来に比べてわずかな格子不整合でエ
ネルギギャップ差が大きくなるとともに屈折率差も大き
くなる。このことによって、窒化物半導体レーザダイオ
ード素子においてレーザ光を効率よく閉じ込めることが
でき、垂直横モード特性(単峰化)が向上する。
【0088】GaN1-x-y-zAsxySbz(0≦x≦
0.07、0≦y≦0.1、0≦z≦0.02、x+y
+z>0)光ガイド層における組成比率に関しては、そ
の光ガイド層が発光層中の障壁層に比べてエネルギバン
ドギャップが大きくなるようにx、y、およびzの組成
比を調整すればよい。たとえば、青紫色レーザ(波長4
10nm)素子中のGaN1-xAsx光ガイド層の場合に
はAsの組成比率xが0.02以下、GaN1-yy光ガ
イド層の場合にはPの組成比率yが0.03以下、そし
てGaN1-zSbz光ガイド層の場合にはSbの組成比率
zが0.01以下に調整される。なお、この実施例5に
おける発光層に関する他の条件は、実施例1の場合と同
様である。
【0089】(実施例6)実施例6は、窒化物半導体発
光ダイオード素子に関するものである。図9において、
この実施例6の窒化物半導体発光ダイオード素子の模式
的な縦断面図(a)と上面図(b)が示されている。
【0090】図9(a)の発光ダイオード素子は、C面
(0001)サファイア基板900、GaNバッファ層
901(膜厚30nm)、n型GaN層コンタクト90
2(膜厚3μm、Si不純物濃度1×1018/c
3)、n型Al0.1Ga0.9N遮蔽層兼クラッド層90
3(膜厚20nm、Si不純物濃度1×1018/c
3)、発光層904、p型Al0.1Ga0.9N遮蔽層兼
クラッド層905(膜厚20nm、Mg不純物濃度6×
1019/cm3)、p型GaNコンタクト層906(膜
厚200nm、Mg不純物濃度1×1020/cm3)、
透光性電極907、p型電極908、n型電極909、
および誘電体膜910を含んでいる。
【0091】ただし、このような発光ダイオード素子に
おいて、n型Al0.1Ga0.9N遮蔽層兼クラッド層90
3は省略されてもよい。また、透光性電極907はNi
またはPdで形成され、p型電極908はAuで形成さ
れ、そしてn型電極909はHf/Au、Ti/Al、
Ti/Mo、またはHf/Alの積層体で形成され得
る。
【0092】この実施例の発光層においては、井戸層と
障壁層のそれぞれにSiH4(Si不純物濃度5×10
17/cm3)が添加されている。なお、これらの井戸層
と障壁層の窒化物半導体材料については、実施例1と2
の場合と同様である。また、サファイア基板900の代
わりにGaN基板を用いた場合は実施例3と同様の効果
が得られ、図8に示す基板を用いた場合には実施例4と
同様の効果が得られる。さらに、GaN基板は導電性基
板であるので、図9(b)のように発光素子の片面側に
p型電極908とn型電極909の両方を形成してもよ
いし、GaN基板の裏面上にn型電極を形成してエピタ
キシャル最外表面上にp型電極を形成してもよい。
【0093】なお、この実施例6における発光層904
に含まれる井戸層と障壁層に関するその他の条件は、実
施例1の場合と同様である。
【0094】図10においては、発光ダイオード素子の
発光層に含まれる井戸層数と発光強度の関係が示されて
いる。すなわち、このグラフにおいて横軸は井戸層数を
表わし、縦軸は発光強度(arb.units:規格化
された任意単位)を表わしている。すなわち、図10に
おいて、発光ダイオードの発光強度は、従来のInGa
N井戸層を用いた場合を基準(破線)にして規格化され
て示されている。また、グラフ中の○印はサファイア基
板を用いた場合の発光強度を示し、●印はGaN基板を
用いた場合の発光強度を示している。このグラフから、
発光ダイオードに含まれる井戸層の好ましい数は2層以
上で10層以下であることがわかる。また、サファイア
基板よりもGaN基板を用いた場合に発光強度が向上す
ることがわかる。実施例4で説明した基板800を用い
ても、図10のGaN基板を用いたときの結果とほぼ同
様であった。GaN基板(または基板800)を用いる
と発光強度が向上する理由については実施例1と同じで
ある。
【0095】(実施例7)実施例7は、窒化物半導体ス
ーパールミネッセントダイオード素子に関するものであ
る。この発光素子における構成や結晶成長方法は実施例
1の場合と同様である。なお、サファイア基板の代わり
にGaN基板を用いた場合には実施例3と同様の効果が
得られ、図8に示された基板を用いた場合には実施例4
と同様の効果が得られる。また、発光層に含まれる井戸
層数と発光強度との関係については、実施例6の場合と
同様である。
【0096】(実施例8)実施例8においては、実施例
1、3、4、6、および7における発光層中の井戸層と
障壁層に不純物Siの代わりに1×1020/cm3のC
が添加された。このように、井戸層と障壁層において不
純物Siの代わりにCを用いた場合にも同様の効果が得
られた。
【0097】(実施例9)実施例9においては、実施例
1、3、4、6、および7における発光層中の井戸層と
障壁層に不純物としてSiの代わりに1×1016/cm
3のMgが添加された。このように、井戸層と障壁層に
おいて不純物としてSiの代わりにMgを用いた場合に
も同様の効果が得られた。
【0098】(実施例10)実施例10においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が3周期のIn0.05Ga0.950.99
0.01井戸層(厚さ4nm)/In0.05Ga0.95N障壁層
(厚さ8nm)に変更されたが、それぞれの実施例と同
様の効果が得られた。
【0099】(実施例11)実施例11においては、実
施例1、3、4、6、および7の発光層に含まれる井戸
層と障壁層は5周期のIn0.02Ga0.980.980.02
戸層(厚さ2nm)/GaN障壁層(厚さ4nm)に変
更されたが、それぞれの実施例と同様の効果が得られ
た。
【0100】(実施例12)実施例12においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が3周期のIn0.02Ga0.980.98
0.02井戸層(厚さ4nm)/GaN障壁層(7nm)に
変更されたが、それぞれの実施例と同様の効果が得られ
た。
【0101】(実施例13)実施例13においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が10周期のIn0.35Ga0.650.94
0.06井戸層(厚さ0.4nm)/GaN障壁層(1n
m、Al濃度5×1018/cm3)に変えられたが、そ
れぞれの実施例と同様の効果が得られた。
【0102】(実施例14)実施例14においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が3周期のIn0.05Ga0.950.98
0.02井戸層(厚さ4nm)/Al0.01In0.06Ga0.93
N障壁層(厚さ8nm)に変えられたが、それぞれの実
施例と同様の効果が得られた。
【0103】(実施例15)実施例15においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が2周期のIn0.1Ga0.90.96
0.04井戸層(厚さ6nm)/GaN0.960.04障壁層
(厚さ6nm)に変えられたが、それぞれの実施例と同
様の効果が得られた。
【0104】(実施例16)実施例16においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が4周期のIn0.2Ga0.80.98
0.02井戸層(厚さ3nm)/GaN0.99As0.01障壁層
(厚さ6nm)に変えられたが、それぞれの実施例と同
様の効果が得られた。
【0105】(実施例17)実施例17においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が6周期のIn0.2Ga0.80.96
0.04井戸層(厚さ4nm)/In0.02Ga0.980.98
0.02障壁層(厚さ10nm)に変えられたが、それぞ
れの実施例と同様の効果が得られた。
【0106】(実施例18)実施例18においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が4周期のIn0.35Ga0.650.94
0.06井戸層(厚さ4nm)/Al0.01Ga0.990.99
0.01障壁層(厚さ10nm)に変えられたが、それぞ
れの実施例と同様の効果が得られた。
【0107】(実施例19)実施例19においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が3周期のIn0.1Ga0.90.99
0.01井戸層(厚さ18nm)/Al0.01Ga0.990.98
0.02障壁層(厚さ20nm)に変えられたが、それぞ
れの実施例と同様の効果が得られた。
【0108】(実施例20)実施例20においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が3周期のIn0.35Ga0.650.94
0.06井戸層(厚さ5nm)/In0.01Ga0.990.94
0.06障壁層(厚さ5nm)に変えられたが、それぞれの
実施例と同様の効果が得られた。
【0109】(実施例21)実施例21においては、実
施例1、3、4、6、および7における発光層に含まれ
る井戸層と障壁層が2周期のIn0.5Ga0.50.96
0.04井戸層(厚さ6nm)/GaN障壁層(厚さ6n
m)に変えられたが、それぞれの実施例と同様の効果が
得られた。
【0110】(実施例22)実施例22においては、実
施例1から5による窒化物半導体レーザを利用した光学
装置が作製された。本発明によるたとえば青紫色(40
0〜410nmの発光波長)窒化物半導体レーザを利用
した光学装置では、従来の窒化物半導体レーザに比べて
レーザ発振しきい値電流密度が低くて、レーザ光中の自
然放出光が減少してノイズ光も低減する。また、そのよ
うなレーザ素子は高出力(50mW)でかつ高温雰囲気
中で安定して動作し得るので、高密度記録再生用光ディ
スクの記録再生用光学装置に適している。
【0111】図11において、本発明によるレーザ素子
1を含む光学装置の一例として、光ピックアップ装置2
を含む光ディスク情報記録再生装置が模式的なブロック
図で示されている。この光学情報記録再生装置におい
て、レーザ光3は入力情報に応じて光変調器4で変調さ
れ、走査ミラー5およびレンズ6を介してディスク7上
に記録される。ディスク7は、モータ8によって回転さ
せられる。再生時にはディスク7上のピット配列によっ
て光学的に変調された反射レーザ光がビームスプリッタ
9を通して検出器10で検出され、これによって再生信
号が得られる。これらの各要素の動作は、制御回路11
によって制御される。レーザ素子1の出力については、
通常は記録時に30mWであり、再生時には5mW程度
である。
【0112】本発明によるレーザ素子は上述のような光
ディスク記録再生装置に利用され得るのみならず、レー
ザプリンタ、バーコーリーダ、光の三原色(青色、緑
色、赤色)レーザダイオードによるプロジェクタなどに
利用し得る。
【0113】(実施例23)実施例23においては、実
施例6と7による窒化物半導体発光ダイオードが光学装
置に利用された。一例として、本発明による発光層を用
いた光の三原色(赤色、緑色、青色)による発光ダイオ
ードまたはスーパールミネッセントダイオードを用いて
白色光源を作製することができ、またそれらの三原色を
用いたディスプレイを作製することもできた。さらに、
400nm以下の発光波長を有する本発明の発光ダイオ
ードもしくはスーパールミネッセントダイオードを作製
し、蛍光塗料を塗布して白色光源装置としてもよい。特
に、窒化物半導体を利用した赤色発光ダイオードは、I
nGaN井戸層を用いて作製することが困難であった
が、InGaNP井戸層を用いることによってそれが容
易となる。
【0114】従来の液晶ディスプレイに用いられていた
ハロゲン光源に代わってこのような本発明による発光素
子を利用した白色光源を用いることによって、低消費電
力でかつ高輝度のバックライトを得ることができる。す
なわち、本発明の発光素子を利用した白色光源は、携帯
ノートパソコン、携帯電話などによるマン・マシンイン
ターフェイスの液晶ディスプレイ用バックライトとして
利用でき、小型化されかつ高鮮明な液晶ディスプレイを
提供することが可能になる。
【0115】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、複数の
量子井戸層と複数の障壁層とが交互に積層された多重量
子井戸構造を有する発光層を含む窒化物半導体発光素子
において、その量子井戸層をInGaNで形成すること
により、その発光素子の発光効率を向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による窒化物半導体レーザ素
子の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】 実施例によるレーザ素子のチップ分割を説明
するための模式的な上面図である。
【図3】 レーザ素子の井戸層数としきい値電流密度と
の関係を示すグラフである。
【図4】 実施例による発光素子中のエネルギバンドギ
ャップ構造を模式的に示す図である。
【図5】 実施例による発光素子中のエネルギバンドギ
ャップ構造の他の例を模式的に示す図である。
【図6】 従来の発光素子中のエネルギバンドギャップ
構造を模式的に示す図である。
【図7】 実施例として窒化物半導体基板を用いたレー
ザ素子の構造を示す模式的な断面図である。
【図8】 本発明による発光素子において利用され得る
窒化物半導体厚膜基板を示す模式的な断面図である。
【図9】 (a)は本発明による発光ダイオード素子の
一例を示す模式的な断面図であり、(b)は(a)のダ
イオード素子に対応する模式的な上面図である。
【図10】 本発明による発光ダイオード素子の井戸層
数と発光強度との関係を示すグラフである。
【図11】 本発明による発光素子が用いられた光学装
置の一例としての光ディスク記録再生装置を示す模式的
なブロック図である。
【符号の説明】
100,900 サファイア基板、101,901 G
aNバッファ層、102,902 n型GaN層、10
3 n型In0.07Ga0.93Nクラック防止層、104
n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、105 n型GaN
光ガイド層、106,904 発光層、107 p型A
0.2Ga0.8N遮蔽層、108 p型GaN光ガイド
層、109 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、11
0,906p型GaNコンタクト層、111,909
n型電極、112 p型電極、113 SiO2誘電体
膜、700 n型GaN基板、800 基板、801
種基板、802 バッファ層、803 n型GaN膜、
804,910 誘電体膜、805 n型GaN厚膜、
903 n型Al0.1Ga0.9N遮蔽層兼クラッド層、9
05 p型Al0.1Ga0.9N遮蔽層兼クラッド層、90
7 透光性電極、908 p型電極、1A リッジスト
ライプ部、2A 劈開面、2B チップ分割面、1 レ
ーザ素子、2 光ピックアップ、3 レーザ光、4 光
変調器、5 走査ミラー、6 レンズ、7 ディスク、
8 モータ、9 ビームスプリッタ、10 光検出器、
11 制御回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 茂稔 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 5F041 AA03 AA14 CA05 CA34 CA40 CA46 CA53 CA54 CA56 CA57 CA64 CA65 CA66 CA74 CA82 CA92 FF01 FF11 FF13 FF16 5F073 AA13 AA45 AA51 AA55 CA17 CB05 CB07 CB22 DA05 EA29

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の量子井戸層と複数の障壁層とが交
    互に積層された多重量子井戸構造を有する発光層を含
    み、 前記量子井戸層はInGaNPからなり、 前記障壁層は窒化物半導体からなることを特徴とする窒
    化物半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 前記InGaNP井戸層は、それに含ま
    れるV族元素のNとPのうちで、原子比率で20%以下
    のPを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の窒
    化物半導体発光素子。
  3. 【請求項3】 前記窒化物半導体障壁層は、実質的にA
    s、PおよびSbのいずれの元素をも含まないことを特
    徴とする請求項1または2に記載の窒化物半導体発光素
    子。
  4. 【請求項4】 前記窒化物半導体障壁層は、それに含ま
    れるV族元素のうちで、原子比率で7%以下のAs、1
    0%以下のP、または2%以下のSbの少なくともいず
    れかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の
    窒化物半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 前記窒化物半導体障壁層は、それに含ま
    れるIII族元素のうちで、原子比率で15%未満のI
    nを含むことを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導
    体発光素子。
  6. 【請求項6】 前記窒化物半導体発光素子に含まれる複
    数の半導体層を成長させるための基板を含み、前記発光
    層の両主面のうちで前記基板に近い第1主面に接する第
    1隣接半導体層と前記基板から遠い第2主面に接する第
    2隣接半導体層とにおいて、少なくとも前記第2隣接半
    導体層は少なくともAlを含む窒化物半導体からなるこ
    とを特徴とする請求項1、2または4のいずれかの項に
    記載の窒化物半導体発光素子。
  7. 【請求項7】 前記第1隣接半導体層または前記第2隣
    接半導体層と直接接しているのは前記井戸層であること
    を特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体発光素子。
  8. 【請求項8】 前記発光層は2層以上で10層以下の前
    記井戸層を含んでいることを特徴とする請求項1または
    2に記載の窒化物半導体発光素子。
  9. 【請求項9】 前記井戸層は0.4nm以上で20nm
    以下の厚さを有していることを特徴とする請求項1また
    は2に記載の窒化物半導体発光素子。
  10. 【請求項10】 前記障壁層は1nm以上で20nm以
    下の厚さを有していることを特徴とする請求項1から5
    のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  11. 【請求項11】 前記井戸層と前記障壁層の少なくとも
    一方は、Si、O、S、C、Ge、Zn、Cd、および
    Mgから選択された少なくとも1種のドーパントが添加
    されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか
    の項に記載の窒化物半導体発光素子。
  12. 【請求項12】 前記ドーパントの添加量は1×1016
    〜1×1020/cm 3の範囲内にあることを特徴とする
    請求項11に記載の窒化物半導体発光素子。
  13. 【請求項13】 前記発光素子はGaN基板を利用して
    形成されていることを特徴とする請求項1から12のい
    ずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  14. 【請求項14】 請求項1から13のいずれかの項に記
    載された前記窒化物半導体発光素子を含むことを特徴と
    する光学装置。
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