JP2002019011A - ガスバリア性積層材およびその製造方法 - Google Patents

ガスバリア性積層材およびその製造方法

Info

Publication number
JP2002019011A
JP2002019011A JP2000205600A JP2000205600A JP2002019011A JP 2002019011 A JP2002019011 A JP 2002019011A JP 2000205600 A JP2000205600 A JP 2000205600A JP 2000205600 A JP2000205600 A JP 2000205600A JP 2002019011 A JP2002019011 A JP 2002019011A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
functional group
triazine derivative
gas barrier
layer
barrier laminate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000205600A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3906013B2 (ja
Inventor
Yoshihiro Kishimoto
好弘 岸本
Hiroaki Usui
博明 臼井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2000205600A priority Critical patent/JP3906013B2/ja
Publication of JP2002019011A publication Critical patent/JP2002019011A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3906013B2 publication Critical patent/JP3906013B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Polyamides (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
  • Polyurethanes Or Polyureas (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 トリアジン化合物を基材上に蒸着して得られ
るガスバリア性フィルムの利点を有しつつ、湿度の存在
下でもそのガスバリア性が低下しないガスバリア性積層
材を提供することを主目的とするものである。 【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、
基材と、下記化学式(A)においてR1、R2、およびR
3の内の少なくとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着
材料として使用可能な1,3,5−トリアジン誘導体、
および上記第1官能基と反応結合する第2官能基を有
し、かつ蒸着材料として使用可能な重合剤が上記基材上
に共蒸着されてなる共蒸着層とを有することを特徴とす
るガスバリア性積層材を提供する。 【化6】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明でありかつガ
スバリア性に優れ、例えば、食品の包装または工業用膜
として使用される包装用のガスバリア性積層材に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】食品、医薬品、化学薬品等の包装には、
水蒸気や酸素の透過防止のため、ガスバリア性のプラス
チックフィルムが使用されている。そして、内容物の変
質を防ぐためさらに良好な水蒸気や酸素の透過防止性が
必要な用途には、高度なガスバリア性を有するフィルム
が用いられている。
【0003】このようなフィルムとしては、従来よりア
ルミ箔が知られているが、使用後の廃棄処理が問題にな
っている他に、基本的に不透明であり、内容物を外から
見ることができない問題がある。
【0004】その他、ポリ塩化ビニリデン樹脂や塩化ビ
ニリデンと他のポリマーとの共重合体樹脂からなる基
材、あるいはこれらの塩化ビニリデン系樹脂をポリプロ
ピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂にコー
ティングしてガスバリア性を付与したものが、特に包装
材料として広く使用されているが、焼却処理で塩素系ガ
スが発生するため、環境保護の点で現在、問題となって
おり、さらに、ガスバリア性が必ずしも充分でなく、高
度なバリア性が要求される内容物には使用できない。
【0005】さらに、ポリビニルアルコール(PVA)
やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)も用
いられるが、これらは絶乾条件では、比較的優れたガス
バリア性を示すが、水蒸気バリア性は充分でなく、ま
た、湿度条件で酸素バリアが悪化するため、現実的な条
件では充分なガスバリア性材料とは言えない。
【0006】このような問題点を解決したガスバリア性
フィルムとして、真空蒸着法、例えば物理蒸着法(PV
D)で二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)
等のプラスチックフィルム基材上に珪素酸化物、酸化ア
ルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の薄膜を
蒸着したフィルムが提案されている。しかしながら、こ
のようなフィルムは。原料と製造装置が高価であり、蒸
着方法に高い技術を必要とするので、コストダウンが期
待できないといった問題があった。また、無機酸化物を
蒸着させる際には、高温で行う必要があるため、ポリエ
チレンのようなTg(ガラス転移温度、以下、Tgとす
る。)の低いポリマーには蒸着できないといった欠点も
あった。
【0007】これらの問題点を解決した蒸着膜として、
有機物であるトリアジン化合物を基材上に蒸着したガス
バリア性フィルムが提案されている(WO99/660
97)。このようなガスバリア性フィルムは、基材上に
蒸着されたトリアジン化合物が結晶構造を取り、この結
晶構造中を酸素や水蒸気が透過されないことから、高度
のガスバリア性が得られ、かつ、蒸着温度を低く抑える
ことができることから、ポリオレフィン等のTgの低い
基材を用いることが可能になるという利点がある。
【0008】しかしながら、このようなトリアジン化合
物を基材上に蒸着したガスバリア性フィルムは、湿度が
ある程度存在する状態で用いた場合にガスバリア性が大
きく低下してしまうという欠点を有し、よって、実際に
用いることができる用途が非常に限られてしまうという
問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するためになされたものであり、上述したような
トリアジン化合物を基材上に蒸着して得られるガスバリ
ア性フィルムの利点を有しつつ、湿度の存在下でもその
ガスバリア性が低下しないガスバリア性積層材を提供す
ることを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、請求項1に記載するように、基材と、下
記化学式(A)においてR1、R2、およびR3の内の少
なくとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料として
使用可能な1,3,5−トリアジン誘導体、および上記
第1官能基と反応して結合する第2官能基を有し、かつ
蒸着材料として使用可能な重合剤が上記基材上に共蒸着
されてなる共蒸着層とを有することを特徴とするガスバ
リア性積層材を提供する。
【0011】
【化4】 このように、本発明は、第1官能基を有する1,3,5
−トリアジン誘導体と、上記第1官能基と反応して結合
することができる第2官能基を有する重合剤とを共蒸着
してなる共蒸着層を有するものであるので、この共蒸着
層中においてはトリアジン誘導体が所定の範囲で重合し
た化合物となる。これにより、湿度がある状態であって
もガスバリア性が低下することがなく、用途範囲の広い
ガスバリア性積層材とすることができる。
【0012】この場合、請求項2に記載するように、上
記共蒸着層中の上記1,3,5−トリアジン誘導体と上
記重合剤とのモル比が、10:1〜1:8の範囲内であ
ることが好ましい。上記範囲より重合剤のモル比率が低
い場合は、1,3,5−トリアジン誘導体を所定の範囲
で重合させることができないことから、湿度のある状態
でガスバリア性を保つことができず、本発明の効果を奏
することができない可能性があるため好ましくない。一
方、上記範囲より重合剤のモル比率が高い場合は、層中
のトリアジン誘導体の量が低下することから、トリアジ
ン誘導体の結晶化によるガスバリア性の効果を得ること
ができない可能性や、所定の重合度を保つことができな
い可能性が生じる場合があるため好ましくない。
【0013】上記請求項1または請求項2に記載の発明
においては、請求項3に記載するように、上記共蒸着層
の膜厚が、0.5nm〜1000nmの範囲内であるこ
とが好ましい。上記範囲より膜厚が薄い場合は、本発明
の目的である湿度に対する耐性をガスバリア性積層材に
付与するという効果があまり大きくない可能性があり、
上記範囲より膜厚が厚い場合は、クラック等の生じる可
能性が高くなると同時に得られるガスバリア性との関係
で、材料費等のコストが見合わなくなってしまう可能性
があるからである。
【0014】また、上記請求項1から請求項3までのい
ずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記
載するように、上記基材と上記共蒸着層との間に、上記
1,3,5−トリアジン誘導体からなる層が形成されて
いてもよい。上記1,3,5−トリアジン誘導体からな
る層は、湿度に対する耐性は低いものの、結晶構造を有
することからガスバリア性が高い。したがって、湿度に
対する耐性の高い共蒸着層を表面に形成しておくことに
より、高いガスバリア性を有し、かつ湿度に対する耐性
も有するガスバリア性積層材とすることができるからで
ある。
【0015】本発明は、請求項5に記載するように、基
材と、上記基材上に蒸着され、下記化学式(A)におい
てR1、R2、およびR3の内の少なくとも一つが第1官
能基であり、かつ蒸着材料として使用可能な1,3,5
−トリアジン誘導体蒸着層と、上記1,3,5−トリア
ジン誘導体蒸着層上に蒸着され、上記第1官能基と反応
して結合する第2官能基を有し、かつ蒸着材料として使
用可能な重合剤蒸着層とを有することを特徴とするガス
バリア性積層材を提供する。
【0016】このような、ガスバリア性積層材は、二つ
の蒸着層間において上記第1官能基と第2官能基とが反
応し、これにより耐湿度性が向上する。したがって、ト
リアジン蒸着層の有する高いガスバリア性を保ちつつ耐
湿度性を有するガスバリア性積層材とすることが可能で
ある。また、重合剤の選択によってはこの層に他の機能
をもたせることも可能となる。なお、本発明において、
耐湿度性とは、湿度によるガスバリア性の低下を防止す
る特性をいうこととする。
【0017】上記請求項1から請求項5までのいずれか
の請求項に記載の発明においては、請求項6に記載する
ように、上記1,3,5−トリアジン誘導体において、
上記化学式に示すR1、R2、およびR3の全てが同一の
第1官能基であることが好ましい。上述したように、ト
リアジン誘導体には、少なくとも一つの第1官能基が結
合されていればよいのであるが、3つの置換基が全て同
一の第1官能基である化合物が一般的であることから入
手が容易であり、またこのような化合物を用いることに
より、均一な網目構造を共蒸着層中に導入することがで
きるからである。
【0018】また、上記請求項1から請求項6までのい
ずれかの請求項に記載のガスバリア性積層材において
は、請求項7に記載するように、上記1,3,5−トリ
アジン誘導体の分子量が、85以上1000以下であ
り、かつ平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が500℃
以下であり、さらに平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度
で熱分解しない化合物であることが好ましい。
【0019】分子量が上記範囲内であれば、トリアジン
骨格に付加された置換基の大きさが所定の範囲内となる
ことから、トリアジン誘導体の結晶化を阻害する可能性
が低く、トリアジン誘導体が有する結晶化によるガスバ
リア性を損なうことがないからである。また、トリアジ
ン誘導体の平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が上記範
囲内であれば、蒸着に際して高温にする必要が生じる等
の問題が起こる可能性が低いからである。
【0020】また、請求項1から請求項7までのいずれ
かの請求項に記載の発明においては、請求項8に記載す
るように、上記第1官能基が、−NH2、−OH、もし
くは−CHOのいずれかを有する官能基であることが好
ましい。これらを末端に有する官能基を第1官能基とす
れば、これと反応する第2官能基を有する重合剤の選択
が容易であるからである。本発明においては、請求項9
に記載するように、上記1,3,5−トリアジン誘導体
が、中でもメラミンもしくはシアヌール酸であることが
好ましい。
【0021】上記請求項1から請求項9までのいずれか
の請求項に記載の発明においては、請求項10に記載す
るように、上記重合剤が少なくとも二つの第2官能基を
有するものであることが好ましい。第2官能基を二つ有
する重合剤、すなわち2官能以上の重合剤であれば、ト
リアジン誘導体との反応において、高分子化が円滑に生
じ、これにより湿度によるガスバリア性の低下を効率的
に抑えることが可能となるからである。
【0022】さらに、請求項1から請求項10までのい
ずれかの請求項に記載の発明においては、請求項11に
記載するように、80以上1000以下であり、かつ平
衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が500℃以下であ
り、さらに平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度で熱分解
しない化合物であることが好ましい。重合剤の分子量が
上記範囲より大きい場合は、トリアジン誘導体内に導入
された際にトリアジン誘導体の結晶化を阻害する可能性
が高く、結晶化によるガスバリア性の発現が低下してし
まう可能性があるからである。また、重合剤の平衡蒸気
圧が10-3Torrとなる温度が上記範囲内であることによ
り、例えば蒸着に際して高温が必要である等の問題が生
じることがなく、Tgの比較的低い材料を基材とした場
合でも高品質のガスバリア性積層材を得ることができる
からである。
【0023】さらに、上記請求項1から請求項11まで
のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項1
2に記載するように、上記第1官能基が、−NH2もし
くは−OHを有する官能基であり、上記第2官能基がイ
ソシアネート基を有する化合物、酸無水物もしくは酸塩
化物であることが好ましい。このような官能基を選択す
ることにより、共蒸着層内、もしくは各蒸着層間での第
1官能基と第2官能基との反応・結合が円滑に進み、耐
湿度性を有するガスバリア性積層材を容易に得ることが
できるからである。本発明においては、請求項13に記
載するように、中でも上記重合剤が、4,4’−ジフェ
ニルメタンジイソシアネートもしくはピロメリット酸無
水物であることが好ましい。
【0024】本発明は、さらに請求項14に記載するよ
うに、基材を準備する工程と、上記基材上に、上述した
化学式(A)においてR1、R2、およびR3の内の少な
くとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料として使
用可能な1,3,5−トリアジン誘導体、および上記第
1官能基と反応結合する第2官能基を有し、かつ蒸着材
料として使用可能な重合剤を共蒸着させる工程とを含む
ことを特徴とするガスバリア性積層材の製造方法を提供
する。
【0025】このようにガスバリア性積層材を製造する
に際して、トリアジン誘導体と重合剤とを共蒸着させる
工程を設けることにより、湿度が存在する用途であって
も、ガスバリア性が大きく低下することのないガスバリ
ア性積層材を提供することが可能となる。
【0026】上記請求項14に記載されたガスバリア性
積層材の製造方法においては、請求項15に記載するよ
うに、上記共蒸着させる工程の前に、上記1,3,5−
トリアジン誘導体を蒸着させる工程を有するようにして
もよい。このようなトリアジン誘導体単独の蒸着層はそ
の結晶化度が高いことから、高いガスバリア性が期待で
きる。このような層上に上記共蒸着層を形成することに
より、耐湿度性を有し、かつガスバリア性も高いガスバ
リア性積層材を製造することができるからである。
【0027】本発明は、さらに請求項16に記載するよ
うに、基材を準備する工程と、上記基材上に、上述した
化学式(A)においてR1、R2、およびR3の内の少な
くとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料として使
用可能な1,3,5−トリアジン誘導体を蒸着させる工
程と、1,3,5−トリアジン誘導体の蒸着層上に上記
第1官能基と反応して結合する第2官能基を有し、かつ
蒸着材料として使用可能な重合剤を蒸着させる工程とを
有することを特徴とするガスバリア性積層材の製造方法
を提供する。
【0028】このように製造した場合でも、上記トリア
ジン誘導体蒸着層と重合剤蒸着層の界面において、第1
官能基と第2官能基との反応が生じ、これにより耐湿度
性を向上させることが可能となる。よって、このような
方法により製造したガスバリア性積層材であっても、耐
湿度性を有し高いガスバリア性を有する積層材とするこ
とができる。
【0029】上記請求項14から請求項16までのいず
れかの請求項に記載のガスバリア性積層材の製造方法に
おいては、請求項17に記載するように、上記蒸着を行
う工程中、もしくは蒸着を行う工程の後に、上記1,
3,5−トリアジン誘導体と上記重合剤との反応を促進
させる反応促進手段を用いた反応促進工程を有するもの
であってもよい。第1官能基および第2官能基の選択に
よっては、反応性の悪い場合がある。また強度等の関係
等により、共蒸着層内の反応度合いを上げたい場合もあ
る。このような場合には反応促進手段を用いた反応促進
工程を上記製造方法中に設けることが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】まず、本発明のガスバリア性積層
材について説明し、その後本発明のガスバリア性積層材
の製造方法について説明する。
【0031】A.ガスバリア性積層材 本発明のガスバリア性積層材は、基材と、上述した化学
式(A)においてR1、R2、およびR3の内の少なくと
も一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料として使用可
能な1,3,5−トリアジン誘導体、および上記第1官
能基と反応結合する第2官能基を有し、かつ蒸着材料と
して使用可能な重合剤が上記基材上に共蒸着されてなる
共蒸着層とを有することを特徴とするものである。
【0032】本発明のガスバリア性積層材は、上述した
ように、上記1,3,5−トリアジン誘導体と上記重合
剤との共蒸着層を有するものであるので、上記1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着層の有する結晶構造由来のガ
スバリア性に加えて、重合剤との反応により架橋等がな
されることから、上記トリアジン誘導体の結晶構造由来
のガスバリア性の欠点であった湿度の存在下でのガスバ
リア性の低下を防止することが可能となる。
【0033】以下、このようなガスバリア性積層材につ
いて詳細に説明するが、まず本発明の特徴である共蒸着
層を形成するための材料、すなわち1,3,5−トリア
ジン誘導体および重合剤について説明し、次にこれらの
材料から形成される各層について説明する。
【0034】1.共蒸着層を形成するための材料につい
て 本発明において、共蒸着層を形成する材料は、上述した
ように(1)上述した化学式(A)においてR1、R2
およびR3の内の少なくとも一つが第1官能基であり、
かつ蒸着材料として使用可能な1,3,5−トリアジン
誘導体、および(2)上記第1官能基と反応結合する第
2官能基を有し、かつ蒸着材料として使用可能な重合剤
を主とするものである。
【0035】以下、各々について詳細に説明する。
【0036】(1)1,3,5−トリアジン誘導体 本発明に用いられる1,3,5−トリアジン誘導体の第
1の特徴は、上記化学式(A)に示される化合物の
1、R2、およびR3の内の少なくとも一つが第1官能
基である点にある。
【0037】本発明において、この第1官能基は特に限
定されるものではなく、後述する重合剤の第2官能基と
反応して結合することが可能な官能基であればいかなる
ものであってもよい。
【0038】このような第1官能基としては、例えば−
NH2、−OH、−CHO、−COOH、−R−NH2
−R−OH、−R−CHO、−R−COOH、−CN、
−OCH3、−OC25、−OC(CH33、−COO
CH3、−O−Si(CH33、−NHCH2OH、−C
60、−CH=CH2、−NCO、−COCl
【0039】
【化5】 (上記式中、Rは全て炭素数1〜6までのアルキル鎖を
示す。)等を挙げることができる。本発明においては、
中でも上記第1官能基が、−NH2、−OH、もしくは
−CHOのいずれかを有する官能基であることが好まし
い。これらを末端に有する官能基は一般的であることか
ら、これと反応する第2官能基を有する重合剤の選択が
容易となるからである。
【0040】一方、1,3,5−トリアジン誘導体中の
上記第1官能基自体が大きすぎる場合は、1,3,5−
トリアジン誘導体を蒸着した場合の結晶構造の形成を阻
害する可能性があり、高いガスバリア性が得られないお
それがある。したがって、第1官能基の分子量は小さい
方が好ましい。具体的には、この第1官能基の分子量が
7〜750の範囲内、好ましくは16〜46の範囲内の
ものが好適に用いられる。
【0041】以上の条件を考慮した場合、本発明に用い
られる1,3,5−トリアジン誘導体中の第1官能基と
しては、−NH2、−OH、もしくは−CHOのいずれ
か自体を用いることが特に好ましい。
【0042】なお、本発明においては、上記R1、R2
およびR3の内の少なくとも一つが第1官能基であれば
よい。この場合の、第1官能基で無いR1、R2、および
3としては、結晶化に悪影響を与えない置換基であれ
ば特に限定されるものではない。このような置換基の分
子量としては、上記結晶化に悪影響を与えない点を考慮
して、100以下、特に46以下であることが好まし
い。
【0043】本発明においては、上述したように上記化
学式(A)に示される化合物のR1、R2、およびR3
内の少なくとも一つがこのような第1官能基であればよ
いが、共蒸着層内で後述する重合剤と反応した場合に、
均一な網目構造を形成し、より良い耐湿度性を得ること
ができる点等から、R1、R2、およびR3の全てが第1
官能基であるものが好ましく、中でもR1、R2、および
3の全てが同一の第1官能基である1,3,5−トリ
アジン誘導体が最も好ましい。
【0044】次に、本発明に用いられる1,3,5−ト
リアジン誘導体の第2の特徴は、蒸着材料として使用可
能なものである点にある。すなわち、この1,3,5−
トリアジン誘導体は、基材上に蒸着させて用いられるも
のであることから、蒸着できることが必須条件であり、
蒸着に際して取扱が容易であるものが好適に用いられ
る。ここで、蒸着できるか否かもしくは蒸着に際しての
取扱が容易であるか否かは、用いる材料の平衡蒸気圧が
10-3Torrとなる温度により判断することが可能であ
る。したがって、本発明に用いられる1,3,5−トリ
アジン誘導体としては、平衡蒸気圧が10-3Torrとなる
温度が50℃〜500℃の範囲内である化合物が好まし
く、特に50℃〜400℃の範囲内となる化合物が好ま
しい。また、本発明に用いられる1,3,5−トリアジ
ン誘導体としては、上記平衡蒸気圧が10-3Torrとなる
温度で熱分解しない化合物を用いることが好ましい。
【0045】さらに、本発明に用いられる1,3,5−
トリアジン誘導体において、分子量が大きい場合は、通
常平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が高くなる点、お
よび分子量が大きい場合は、トリアジン骨格に付加され
た置換基が大きいことを意味し、これは基材上に蒸着し
た際の結晶構造に悪影響を与える点等から、分子量は小
さい方が好ましい。具体的には、85〜1000の範囲
内であり、好ましくは85〜220の範囲内、特に好ま
しくは85〜166の範囲内である。なお、上記分子量
の下限値は、トリアジン骨格の分子量が81である点を
考慮して決定したものである。
【0046】本発明に用いられる1,3,5−トリアジ
ン誘導体としては、例えば、メラミン、アンメリン、ア
ンメリド、シアヌル酸、2−ウレイドメラミン等を挙げ
ることができるが、中でも上述した条件、および入手の
容易性、取扱の容易性を考慮すると、メラミンまたはシ
アヌール酸が最も好適に用いられる。
【0047】(2)重合剤 次に、本発明に用いられる重合剤について説明する。本
発明に用いられる重合剤の第1の特徴は、上記第1官能
基と反応して結合する第2官能基を有する点にある。
【0048】このような第2官能基としては、本発明で
は上述した条件、すなわち第1官能基と反応して結合す
るものであれば特に限定されるものではないが、具体的
には、第1官能基が末端に−NH2、−OHを有する官
能基である場合は、第2官能基がイソシアネート基を末
端に有する基もしくは酸無水物であることが好ましい。
【0049】上記第2官能基の重合剤中の数は、本発明
においては特に限定されるものではいが、少なくとも2
以上であることが好ましい。第2官能基を2以上有する
ことにより、共蒸着して第1官能基と結合した場合に高
分子化しやすく、したがって耐湿度性の向上を図ること
ができるからである。
【0050】なお、本発明においては、上述したように
第2官能基を1つしか有さない重合剤、すなわち単官能
の重合剤を排除するものではない。例えば、単官能の重
合剤であっても、第2官能基を2以上有する重合剤と混
合して用いる場合や、1,3,5−トリアジン誘導体蒸
着層中に疎水基を導入して耐湿度性を向上させる場合等
においては、単官能の重合剤であっても用いる可能性が
あるからである。
【0051】本発明に用いられる重合剤の第2の特徴
は、蒸着材料として使用可能である点にある。すなわ
ち、この重合剤は蒸着させて用いられるものであること
から、蒸着できることが必須条件であり、蒸着に際して
取扱が容易であるものが好適に用いられる。ここで、蒸
着できるか否かもしくは蒸着に際しての取扱が容易であ
るか否かは、用いる材料の平衡蒸気圧が10-3Torrとな
る温度により判断することが可能である。この温度が高
すぎる場合は、蒸着に際して高温が必要となり、基材の
Tgが低い場合等においては蒸着することができない等
の問題が生じる場合がある。また、この温度が低すぎる
場合は、基材等に常温で付着させることが困難となり、
チャンバーを冷却する必要が生じる等の問題が生じるこ
とになる。したがって、本発明に用いられる重合剤とし
ては、平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が50℃〜5
00℃の範囲内である化合物が好ましく、特に50℃〜
400℃となる化合物が好ましい。
【0052】また、用いられる重合剤の分解温度が低い
場合は、蒸着に際しての加熱によって分解されてしまう
ことになり、蒸着することができない等の問題が生じる
ことになる。したがって、重合剤の分解温度としては、
平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度以上であることが好
ましい。
【0053】また、重合剤においても分子量が大きいも
のは、通常平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度が高くな
り、蒸着に際して高温を必要とするといった問題が生じ
る場合が多い。また、上記1,3,5−トリアジン誘導
体と共蒸着した場合に、分子量が大きいと上記1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着膜中の結晶構造を乱すことに
なり、ガスバリア性を低下させる要因になる場合がる。
一方、分子量が小さすぎる場合は、平衡蒸気圧が10-3
Torrとなる温度等が低すぎ、上述したような問題が生じ
ることになる。したがって、本発明において好適な重合
剤の分子量としては80〜1000の範囲内であり、特
に95〜500の範囲内、中でも100〜300の範囲
内であることが好ましい。
【0054】本発明において用いることができる重合剤
としては、例えば、ピロメリット酸無水物、4クロロフ
ォルミルフタル酸無水物、テレフタル酸塩化物、4,4
ビフェニルジカルボニルクロリド、4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシア
ナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナ
ートビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジ
イソシアナートビフェニル、4,4’−ビス(4−イソ
シアナートフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4
−イソシアナートフェノキシ)ベンゼン、2,6ナフタ
レンジイソシアナート、4,4′−ジイソシアン酸メチ
レンジフェニル、3,3′−ジメチルジフェニル−4,
4′−ジイソシアナート、o−ジアニシジンジイソシア
ナート、メチレンビス(4−イソシアナート−3−メチ
ルベンゼン)、メチレンビス(4−イソシアナート−2
−メチルベンゼン)、メチレンビス(o−クロロフェニ
ルイソシアナート)、5−クロロ−2,4−トルエンジ
イソシアナート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシ
アナート(MDI)、2,4−トルエンジイソシアナー
ト(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアナ
ート(2,6−TDI)、3,5−ジイソシアナートベ
ンゾトリフルオライド、ビス(4−イソシアナートフエ
ニル)エーテル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−
ジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナートメチ
ル、p−フェニレンジイソシアナート、p−キシレンジ
イソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナー
ト、1,5−ナフタレンジイソシアナート、2,6−ナ
フタレンジイソシアナート、トランス−1,4−シクロ
ヘキシルジイソシアナート、イソフォロンジイソシアナ
ート1,3−ビス(イソシアナートメチル)ベンゼンな
どの一種または二種以上の混合物等を挙げることができ
るが、中でも上述した条件および入手の容易性、取扱の
容易性等を考慮すると、本発明に用いられる重合剤とし
ては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートも
しくはピロメリット酸無水物が最も好適に用いられる。
【0055】なお、本発明においては、後述するように
この重合剤のみを蒸着させた重合剤蒸着層を形成し、こ
れにプライマー層等の機能をもたせる場合がある。この
ような場合には、必要な機能に応じて重合剤の種類が決
定される。
【0056】2.ガスバリア性積層材の層構成について 次に、本発明のガスバリア性積層材の層構成について説
明する。本発明のガスバリア性積層材の層構成は、基材
と、この基材の少なくとも一方の面に形成された上記共
蒸着層とを有するものである。なお、上記共蒸着層は、
基材の一方の面に形成されていればよいが、用途等に応
じて、両面に形成されたものであってもよい。
【0057】本発明においては、上記共蒸着層と基材と
の間に上述した1,3,5−トリアジン誘導体からなる
1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層が形成されていて
もよい。この1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層は、
少なくとも1種類の上記1,3,5−トリアジン誘導体
から形成されるものであるので、1,3,5−トリアジ
ン誘導体蒸着層が有する結晶構造を構成し、高いガスバ
リア性を有することになる。しかも、この場合はこの
1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層上には上記共蒸着
層が形成されていることから、湿度に対する影響も低下
させることが可能となる。よって、基材と共蒸着層との
間に、1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層を設けた構
成とすることにより、基材上に共蒸着層のみを形成した
ガスバリア性積層材より、高いガスバリア性を得ること
ができる可能性がある。
【0058】なお、本発明においてける1,3,5−ト
リアジン誘導体蒸着層と共蒸着層との組合せは、上述し
たものに限定されるものではなく、例えば基材上に共蒸
着層を形成し、その上に1,3,5−トリアジン誘導体
蒸着層を形成し、さらにその上に共蒸着層を形成する等
の構成であってもよい。すなわち、表面側に少なくとも
一層の共蒸着層を有し、基材側に少なくとも一層の1,
3,5−トリアジン誘導体蒸着層を有する構成であれ
ば、特にその他の層について限定されるものではない。
【0059】また、本発明においては、上記共蒸着層上
に、少なくとも一種類の重合剤からなる重合剤蒸着層が
形成されていてもよい。この重合剤蒸着層は、例えばプ
ライマー層としての機能を有する等の他の機能を有する
層とすることが可能である。したがって、このような重
合剤蒸着層を形成することにより、共蒸着層上に他の機
能を付与することができるという利点を有する点で好ま
しい。なお、本発明のガスバリア性積層材においては、
この重合剤蒸着層に関しても、共蒸着層表面側の一層に
限定されるものではなく、必要であれば複数層形成され
ていてもよい。
【0060】本発明においては、上述したように共蒸着
層を形成する層構成の他に、基材上に1,3,5−トリ
アジン誘導体蒸着層が形成され、さらにこの1,3,5
−トリアジン誘導体蒸着層上に重合剤蒸着層が形成され
た構成、すなわち共蒸着層を有しない層構成であっても
よい。
【0061】このような層構成の場合は、上記1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着層と重合剤蒸着層と層間にお
いて、上記1,3,5−トリアジン誘導体の第1官能基
と上記重合剤の第2官能基とが反応し、これにより1,
3,5−トリアジン誘導体蒸着層における湿度の存在に
よるガスバリア性の低下を防止することが可能となる。
また、1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層は、高い結
晶構造を維持していることから、高いガスバリア性を有
するものとなる。したがって、このような層構成とした
場合でも、高いガスバリア性を有し、かつ湿度の存在下
でもガスバリア性の低下しないガスバリア性積層材とす
ることが可能となる。また、外側に形成された重合剤蒸
着層は、例えばプライマー層として機能する重合剤を選
択することにより、プライマー層として用いる等、種々
の機能を本発明のガスバリア性積層材に付与することが
可能となる。
【0062】なお、この場合も1,3,5−トリアジン
誘導体蒸着層および重合剤蒸着層はがそれぞれ一層以上
形成されたものであってもよいことは、上述した場合と
同様である。
【0063】本発明のガスバリア性積層材は、上述した
層の他、必要に応じて他の層を形成するようにしてもよ
い。例えば、最外層に防湿性を有する層を形成し、湿度
によるガスバリア性の低下をさらに抑えるようにしても
よい。
【0064】3.ガスバリア性積層材の各層について 次に、上記ガスバリア性積層材の層構成において述べた
各層について詳細に説明する。
【0065】(1)共蒸着層について 本発明でいう共蒸着層とは、上で詳述した1,3,5−
トリアジン誘導体および重合剤をそれぞれ少なくとも1
種類用い、これらを共蒸着させて形成した層をいい、好
ましくは共蒸着層内において上記第1官能基および第2
官能基の一部が反応して結合している層をいう。また、
本発明において共蒸着とは必ずしも同時に蒸着すること
に限定されるものではなく、蒸着層内に上記1,3,5
−トリアジン誘導体と重合剤とを共に含み、その一部が
反応している層を形成する蒸着法であれば、蒸着が前後
していても本発明においては共蒸着であるとする。
【0066】上記共蒸着層内での1,3,5−トリアジ
ン誘導体と重合剤の割合は、特に限定されるものではな
く、両者が混合されていれば本発明でいう共蒸着層であ
るが、耐湿度性を向上させる効果等の観点から、1,
3,5−トリアジン誘導体と重合剤とのモル比が10:
1〜1:8の範囲内、特に5:1〜1:4の範囲内、中
でも1:1の範囲内である場合が、共蒸着層として好ま
しい。
【0067】なお、上記1,3,5−トリアジン誘導体
と重合剤とのモル比は、共蒸着層内で一定である必要は
なく、一方の面から他方の面にかけてモル比が連続的に
変化するように形成されたものであってもよい。
【0068】このような共蒸着層の膜厚は、特に限定さ
れるものではないが、0.5nm〜1000nmの範囲
内、特に5nm〜500nmの範囲内、中でも10nm
〜200nmの範囲内とすることが好ましい。上記範囲
より膜厚が薄い場合は、必要とする耐湿度性が得られな
い可能性が生じるからであり、上記範囲より厚い場合は
得られる耐湿度性に鑑みた場合にコスト面で問題が生じ
る可能性があるからである。
【0069】なお、上記共蒸着層は、上記1,3,5−
トリアジン誘導体および重合剤のみから形成されるもの
であってもよいが、その他必要に応じて他の成分が蒸着
されたものであってもよい。例えば、触媒成分や、着色
剤等が共蒸着層内に含まれてもよい。
【0070】(2)1,3,5−トリアジン誘導体蒸着
層 本発明に用いられる1,3,5−トリアジン誘導体蒸着
層は、上述した1,3,5−トリアジン誘導体を少なく
とも1種類用いて形成されるものである。この層は、
1,3,5−トリアジン誘導体の結晶構造を有すること
から、高いガスバリア性を有する層であり、本発明のガ
スバリア性積層材のガスバリア性を向上させる効果を有
するものである。
【0071】このような1,3,5−トリアジン誘導体
蒸着層は、上述した層構成によって、1,3,5−ト
リアジン誘導体および重合剤との共蒸着層が形成されて
おり、この共蒸着層の基材側に1,3,5−トリアジン
誘導体蒸着層が形成される場合と、基材上に1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着層が形成され、その上に直に
後述する重合剤蒸着層が形成される場合の二つ場合があ
る。
【0072】の場合の膜厚としては、共蒸着層の膜厚
により要求される膜厚は大きく変動するものではある
が、一般に5nm〜1000nmの範囲内、特に10n
m〜300nmの範囲内、中でも20nm〜150nm
の範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が薄
い場合は、共蒸着層の内側に別個に1,3,5−トリア
ジン誘導体蒸着層を設けても、ガスバリア性が特に向上
しない可能性があるからであり、上記範囲より膜厚が厚
い場合は、得られるガスバリア性に比較してコスト面で
問題が生じる可能性があるからである。
【0073】一方、の場合は、ガスバリア性はこの
1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層のみで得られるも
のであることから、その膜厚は10nm〜1000nm
の範囲内、特に20nm〜500nmの範囲内、中でも
30〜200nmの範囲内であることが好ましい。上記
範囲より膜厚が薄い場合は、要求されるガスバリア性が
不足するため好ましくなく、上記範囲より膜厚が厚い場
合は、得られるガスバリア性に比較してコストが高くな
りすぎるといった問題が生じる可能性があるからであ
る。
【0074】(3)重合剤蒸着層 本発明に用いられる重合剤蒸着層は、上述した重合剤を
少なくとも1種類用いて形成されるものである。このよ
うな重合剤蒸着層は、一般的にはガスバリア性に寄与す
る割合は極めて低いが、用いる重合剤を選択することに
より、プライマー層としての機能や、防水層としての機
能等を付与することが可能であり、この機能を有効に活
かすことにより、重合剤蒸着層を形成する利点を得るこ
とができる。
【0075】このような重合剤蒸着層の膜厚は、付加す
る機能により大きく異なるものであり、一律に決定でき
るものではないが、一般には0.5nm〜100nmの
範囲内、特に1nm〜40nmの範囲内とすることが好
ましい。
【0076】(4)基材 本発明のガスバリア性積層材は、基材上に上述した各層
が形成されてなるものである。このような基材として
は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中
密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、特にメタロセ
ン触媒を用いて重合した上記それぞれのポリエチレン、
アイソタティックポリエチレン、ポリプロピレン、エチ
レン−ポリプロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチ
レン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共
重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチ
レン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢
酸ビニル共重合体、アイオノマーに代表されるイオン架
橋オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリビニ
ルアルコール、超高分子量ポリエチレン等のポリオレフ
ィン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、ポリスチレ
ン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプ
レン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(A
S)樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブ
チレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン
樹脂、エチレンメタクリル酸共重合体、プロピレン−メ
タクリル酸共重合体、トリアセチルセルロース、エチル
セルロース等のセルロース系樹脂等から選択された材料
からなるものが用いられ、これらの樹脂を組み合わせた
組成、さらには2層以上積層したものであってもよい。
【0077】本発明においては、基材はフィルム状のも
のが好適に用いられ、未延伸のフィルムであっても、1
軸もしくは2軸延伸したフィルムであってもよい。
【0078】本発明のガスバリア性積層材は、特に金属
酸化物の蒸着膜を形成することが困難であるTgの低い
材料を用いた基材であっても、ガスバリア性積層材とす
ることができる点に大きな特徴を有するものである。し
たがって、この点から本発明に用いられる基材として
は、Tgが65℃以下のもの、好ましくは50℃以下の
ものが本発明の利点を享受し得る点で好ましい。具体的
にはポリプロピレン、ナイロン、トリアセチルセルロー
ス、エチルセルロース、ポリメタクリル酸エチル、ポリ
ビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸
プロピルを用いることが好ましく、中でもポリプロピレ
ンおよびナイロンが好ましく、特にポリプロピレンが好
ましい。
【0079】また、本発明においては、表面上に予め蒸
着層との接着性を向上させるための表面処理を施した基
材を用いることが好ましい。具体的な表面処理の方法と
しては、プラズマ処理、コロナ放電処理を挙げることが
できる。
【0080】これらの処理は、基材の被蒸着面に対して
基材単独で別工程で行っても、基材に対して樹脂を溶融
押出しコーテイングする場合はその直前に行ってもよ
い。また、被蒸着面に、イソシアネート系化合物を主と
するプライマー処理を施したり、溶融押し出しコーティ
ングでは溶融状態の樹脂接着面をオゾンガスによる接着
強化処理を施したりしても良い。そのほかの表面処理方
法としては、例えばグロー放電処理、スパッタリング処
理、スパッタエッチング処理などの真空中での処理、あ
るいはサンドブラスト法のごとき機械的な粗面化処理、
アルカリ処理などによる化学的処理、化学的エッチング
処理、さらには金属酸化物被膜を形成する方法などが用
いられる。
【0081】(5)防湿層 本発明においては、基材表面上に上述した蒸着層を形成
した後、さらに防湿層をその上に形成してもよい。
【0082】このような防湿層として用いることができ
る材料としては、防湿性の観点から、延伸もしくは無延
伸の、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、もし
くはメタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン等の
ポリエチレン材料、延伸もしくは無延伸のポリプロピレ
ン、非結晶ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン
ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化
ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の材料を挙げることがで
き、さらに酸化アルミニウムやシリカを蒸着させたバリ
ア性フィルムを用いてもよい。
【0083】本発明においては、中でもシーラントとし
て使用可能な無延伸ポリエチレンまたは無延伸ポリプロ
ピレンを防湿層として用いることが好ましい。これらの
材料を防湿層とすることにより、シーラント層を別途形
成する必要がなく、工程の簡略化が可能となり、コスト
面で有利であるからであり、さらに防湿面でも効果的で
あるからである。
【0084】このような防湿層の膜厚は、用いる材料や
その形成方法等により大きく異なるものではあるが、一
般に、5μm〜500μmの範囲内、好ましくは12μ
m〜100μmの範囲内とされる。
【0085】このような防湿層の有する水蒸気透過性と
しては、50g/m2・day以下、特に20g/m2
day以下、中でも7g/m2・day以下の水蒸気透
過度を有するものが好ましい。なお、この水蒸気透過度
は、防湿層を、温度37.8℃、湿度100%Rhの条
件で、例えば米国モコン(MOCON)社製の測定機(機種名
パーマトラン(PERMTRAN3/31))を用いて測定した場合の
値である。
【0086】このような防湿層の形成方法としては、特
に限定されるものではないが、例えば、グラビア版を用
いたグラビアコート、ゴムあるいはスチールロールによ
るロールコート、エアナイフコート、スプレーコート、
スピンコート、ディップコート、ドクターナイフ、バー
コーター、カーテンコーターなどの公知の塗工機械を用
いる従来のコート法や浸漬法、さらにはドライラミネー
ション法、ウェットラミネーション法、押出ラミネーシ
ョン法、T台押出成形法、共押出ラミネーション法等の
従来の積層法により防湿層を1,3,5−トリアジン誘
導体蒸着層上に貼り合わせることができる。
【0087】このように、防湿層を形成することによ
り、さらに本発明のガスバリア性積層材の耐湿度性が向
上し、湿度の高い用途であっても問題なく用いることが
可能となる。
【0088】B.ガスバリア性積層材の製造方法 本発明のガスバリア性積層材の製造方法は、基材を準備
する工程と、上記基材上に、上記化学式(A)において
1、R2、およびR3の内の少なくとも一つが第1官能
基であり、かつ蒸着材料として使用可能な1,3,5−
トリアジン誘導体、および上記第1官能基と反応結合す
る第2官能基を有し、かつ蒸着材料として使用可能な重
合剤を共蒸着させる工程とを含むことを特徴とするもの
である。
【0089】本発明のガスバリア性積層材の製造方法に
おいては、まず基材を準備する工程が行われる。ここで
用いられる基材としては、上記ガスバリア性積層材と同
様であるのでここでの説明は省略する。また、この場合
上記ガスバリア性積層材の項で説明したように、この基
材の準備工程において、蒸着膜との接着性を向上させる
ために基材表面を前処理する工程を行ってもよい。
【0090】次に、このようにして準備された基材表面
に、上記化学式(A)においてR1、R2、およびR3
内の少なくとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料
として使用可能な1,3,5−トリアジン誘導体、およ
び上記第1官能基と反応結合する第2官能基を有し、か
つ蒸着材料として使用可能な重合剤を共蒸着させる工程
を行う。ここで用いられる材料に関しては上記ガスバリ
ア積層材の項で説明したものと同様の材料を用いること
ができる。
【0091】共蒸着の温度条件や真空条件等に関して
は、用いる材料等に応じて適宜選択される。また蒸着時
間等に関しては、上記ガスバリア積層材の項で説明した
膜厚の範囲内となるように調整されて行われる。
【0092】本発明においては、上記共蒸着を行う工程
の前に、上記1,3,5−トリアジン誘導体を蒸着させ
る工程を行うようにしてもよい。予め基材上に1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着層を形成しておくことによ
り、共蒸着層のみの場合よりもガスバリア性を向上させ
ることができるからである。この場合の蒸着条件等に関
しても、材料や必要とされる膜厚等に鑑みて適宜設定さ
れる。また、必要であれば、共蒸着を行う工程の後に、
重合剤を蒸着させる工程を行ってもよい。
【0093】一方、共蒸着を行う工程を有しない場合
は、同様に基材を準備する工程をおこなった後、この基
材上に、上記1,3,5−トリアジン誘導体を蒸着させ
る工程を行う。次いで、この1,3,5−トリアジン誘
導体蒸着層上に上記重合剤を蒸着させる工程を行うこと
によりガスバリア性積層材を製造する。この場合の各蒸
着条件も、上述した共蒸着層を有するガスバリア性積層
材の製造方法の場合と同様に、用いる材料および必要な
膜厚等により適宜設定される。
【0094】なお、本発明における蒸着法としては、通
常行われている方法、例えば一般的な抵抗加熱型蒸着装
置を用いて行う方法等により行われる。
【0095】本発明のガスバリア性積層材の製造方法に
おいては、上記蒸着を行う工程中、もしくは蒸着を行う
工程の後に、上記1,3,5−トリアジン誘導体と上記
重合剤との反応を促進させる反応促進手段を用いた反応
促進工程を行ってもよい。
【0096】上記1,3,5−トリアジン誘導体と重合
剤の種類によっては、反応性が良好でない場合がある。
このような場合は、共蒸着した場合でも共蒸着層内で
1,3,5−トリアジン誘導体中の第1官能基と重合体
中の第2官能基とが反応して結合する割合が少ないこと
が考えられる。また、1,3,5−トリアジン誘導体蒸
着層上に重合剤蒸着層を形成する場合は、その界面にお
いて反応が生じない可能性がある。このような場合は、
耐湿度性を向上させることができない可能性があり、例
えば湿度の高い条件で用いるような場合は、ガスバリア
性を維持することが困難となる可能性がある。このよう
な場合に上記反応促進手段を用いた反応促進工程を行う
ことにより、ガスバリア性積層材の耐湿度性を向上させ
ることが可能となる。
【0097】上記反応促進手段としては、具体的には、
原料を基材へ蒸着する過程において、イオン化させる方
法や、共蒸着後等においてプラズマ処理を施す方法、触
媒作用を有する材料を共蒸着させる方法等を挙げること
ができる。
【0098】具体的には、例えばイオン化させる方法の
場合は、蒸着工程中に、蒸発材料と基材との間に配置し
た熱電子発生装置を用いて、蒸発材料をイオン化し、共
蒸着層内での反応を促進させる方法を挙げることができ
る。また、プラズマ処理の場合は、蒸着工程終了後、プ
ラズマを発生させ、蒸着層表面からプラズマ処理するこ
とにより反応を促進させる方法を挙げることができる。
【0099】このようにして蒸着層を形成した後、上記
ガスバリア性積層材の項で説明したように、必要に応じ
て防湿層を蒸着層上に形成するようにしてもよい。
【0100】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明
の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同
一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いか
なるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0101】例えば、上記ガスバリア性積層材の製造方
法の説明および下記の実施例において、蒸着層の形成を
バッチ式の製造方法により説明したが、本発明はこれに
限定されるものではなく、連続的に製造される場合、す
なわち基材が連続的に蒸着装置内に供給されて蒸着され
る場合も含むものである。このように連続的に形成する
場合は、上記共蒸着層内における1,3,5−トリアジ
ン誘導体と重合剤との厚み方向のモル比は連続的に変化
するようになる。
【0102】また、本発明においては、1,3,5−ト
リアジン誘導体以外のトリアジン誘導体であっても、結
晶化によりガスバリア性を有するものであれば1,3,
5−トリアジン誘導体蒸着層もしくは共蒸着層用の材料
として用いることが可能であり、具体的にはメラン(mel
an)、メレン(melem)、メロン(melon)等を用いること
が可能である。
【0103】なお、上記実施形態においては、本発明の
バリア性積層フィルムの奏する効果をガスバリア性とし
ているが、このガスバリア性には酸素等のガスの透過防
止性のみならず水蒸気透過防止性をも含む概念である。
【0104】
【実施例】以下、本発明のバリア性積層フィルムについ
て、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明は
以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】[実施例1]基材として、膜厚20μmの
OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム(商品名:太閤
FOR、二村化学工業株式会社製、片面コロナ処理)を用
い、図1に示すような一般的な抵抗加熱型蒸着装置を用
い蒸着した。まず、図示略のポンプを用い、蒸着室1内
を9.5×10-5torrに真空排気した。上記基材は、蒸
着室1上方に設けられた基盤2上にコロナ処理面が下面
側(るつぼ側)となるように配置された。次いで、蒸着
室1内の下方に配置された第1るつぼ3内にメラミン
(純正化学株式会社製、純度98.0%)を投入し、第
1るつぼ用ヒータ4を用いて220℃に温度調節した。
この状態でシャッター5を開け基材であるOPPフィル
ムのコロナ処理面に1000オングストローム蒸着した
後、シャッター5を閉めた。次いで、同様に蒸着室1の
下方に配置された第2るつぼ6に4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート(MDI、東京化成工業社製、
純度98.0%)を投入し、第2るつぼ用ヒータ7を用
いて110℃に温度調整した。そして、この状態で同様
にシャッター5を開け、メラミン蒸着層上に50オング
ストローム蒸着した後、シャッター5を閉め、ガスバリ
ア性積層材を形成した。
【0106】各蒸着層の膜厚は、水晶振動子の周波数か
ら換算し求めた。すなわち、予めガラス基板上にマスク
を用いて被測定物質を蒸着し、その膜厚を触針式の膜厚
計(DEKTAKIIA、SLOAN社製)で測定し、その物質の膜厚と
水晶振動子の周波数との相関関係を決定する。次いで、
上記ガスバリア性積層材上の被測定物質の水晶振動子の
周波数を測定し、厚みに換算する方法により測定した。
【0107】[実施例2]第2るつぼ6にピロメリット
酸無水物(PMDA、純正化学株式会社製、純度98.0
%)を投入し、るつぼの温度を210℃に温度調整した
以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層材を形成
した。膜厚は実施例1と同様にして測定した。
【0108】[実施例3]実施例1で用いた基材と同様
の基材を用い、蒸着装置も同様のものを用いた。まず、
実施例1と同様に図示略のポンプを用い、蒸着室1内を
9.5×10-5torrに真空排気した。基材も同様にして
基盤2上に配置した。次いで、第1るつぼ3内にメラミ
ン(純正化学株式会社製、純度98.0%)を投入し、
第1るつぼ用ヒータ4を用いて220℃に温度調節し
た。また、同時に第2るつぼ6に4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート(MDI、東京化成工業社製、
純度98%)を投入し、第2るつぼ用ヒータ7を用いて
110℃に温度調整した。この状態でシャッター5を開
けて基材上のコロナ面に共蒸着層を1050オングスト
ローム蒸着した後、シャッター5を閉め、ガスバリア性
積層材を形成した。膜厚は実施例1と同様にして測定し
た。
【0109】[実施例4]第2るつぼ6にピロメリット
酸無水物(PMDA、純正化学株式会社製、純度98.0
%)を投入し、るつぼの温度を210℃に温度調整した
以外は実施例3と同様にしてガスバリア性積層材を形成
した。膜厚は実施例1と同様にして測定した。
【0110】[実施例5]まず、実施例1と同様にして
1000オングストロームの膜厚のメラミン蒸着層を基
材上に形成した。次いで、実施例3と同様にして、メラ
ミンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと
の共蒸着層を50オングストローム形成してガスバリア
性積層材とした。膜厚は実施例1と同様にして測定し
た。
【0111】[実施例6]タングステンフィラメントと
箱型陽極グリッドとからなる熱電子発生装置をるつぼ
3、6と基盤2の間に導入し、共蒸着の間フィラメント
電流を80mAとしてイオン化した以外は、実施例3と
同様にしてガスバリア性積層材を形成した。膜厚は実施
例1と同様にして測定した。
【0112】[実施例7]実施例1と同様にしてガスバ
リア性積層材を形成した後、蒸着室1内に酸素ガスを導
入し2.0×10-2torrに真空度を調節し、マイクロウ
ェーブ発生装置8を用いてMDI蒸着表面にプラズマ処
理を施した。放電電力を20W・分/m2とした。膜厚
は実施例1と同様にして測定した。
【0113】[実施例8]基材として、厚み12μmの
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋
紡社製、商品名:E5100、片面コロナ処理)を用いた以
外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層材を形成
した。膜厚は実施例1と同様にして測定した。
【0114】[実施例9]第1るつぼ3にシアヌル酸
(純正化学株式会社製、試薬特級)を投入し、第1るつ
ぼ用ヒータ4により280℃に温度調整した以外は、実
施例1と同様にしてガスバリア性積層材を形成した。膜
厚は実施例1と同様にして測定した。
【0115】[比較例1]実施例1と同様の基材を用
い、同様な蒸着装置を用い蒸着した。まず、図示略のポ
ンプを用い、蒸着室1内を9.5×10-5torrに真空排
気した。上記基材は、蒸着室1上方に設けられた基盤2
上にコロナ処理面が下面側(るつぼ側)となるように配
置された。次いで、蒸着室1内の下方に配置された第1
るつぼ3内にメラミン(純正化学株式会社製、純度9
8.0%)を投入し、第1るつぼ用ヒータ4を用いて2
20℃に温度調節した。この状態でシャッター5を開け
基材であるOPPフィルムのコロナ処理面に1050オ
ングストローム蒸着した後、シャッター5を閉め、ガス
バリア性積層材を形成した。膜厚は実施例1と同様にし
て測定した。
【0116】[比較例2]基材として、厚み12μmの
PETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100、片面コ
ロナ処理)を用いた以外は、比較例1と同様にしてガス
バリア性積層材を形成した。膜厚は実施例1と同様にし
て測定した。
【0117】[評価]上記実施例1から実施例9、比較
例1および比較例2で得たバリア性積層材を用いて、酸
素透過度および水蒸気透過度を測定した。
【0118】(1)酸素透過度の測定 上記各々のガスバリア性積層材を温度23℃で、湿度0
%Rhと90%Rhの二つの条件で、酸素透過度を測定
した。測定機としては、米国モコン(MOCON)社製の測定
機(機種名オクストラン(OXTRAN2/20))を用いた。結果
を表1にまとめる。
【0119】(2)水蒸気透過度の測定 上記各々のガスバリア性積層材を、温度37.8℃、湿
度100%Rhの条件で、米国モコン(MOCON)社製の測
定機(機種名パーマトラン(PERMTRAN3/31))を用いて水
蒸気透過度を測定した。結果を表1にまとめる。
【0120】
【表1】
【0121】表1から明らかなように、実施例のガスバ
リア性積層材は、高湿度条件下での酸素透過性、および
水蒸気透過性のいずれもが良好であるのに対し、比較例
のものは、大幅に低下していることがわかる。
【0122】
【発明の効果】本発明によれば、第1官能基を有する
1,3,5−トリアジン誘導体と、上記第1官能基と反
応して結合することができる第2官能基を有する重合剤
とを共蒸着してなる共蒸着層を有するものであるので、
この共蒸着層中においてはトリアジン誘導体が所定の範
囲で重合した化合物となる。これにより、湿度がある状
態であってもガスバリア性が低下することがなく、用途
範囲の広いガスバリア性積層材とすることができるとい
う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に用いられた蒸着装置を示す概略図であ
る。
【符号の説明】
1 …… 蒸着室 2 …… 基盤 3 …… 第1るつぼ 4 …… 第1るつぼ用ヒータ 5 …… シャッター 6 …… 第2るつぼ 7 …… 第2るつぼ用ヒータ 8 …… マイクロウェーブ発生装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08G 69/28 C08G 69/28 4K029 C08J 7/04 CES C08J 7/04 CESP C23C 14/06 C23C 14/06 Z 14/24 14/24 E // C08L 75:04 C08L 75:04 Fターム(参考) 4F006 AA02 AA04 AA12 AA13 AA14 AA15 AA19 AA22 AA35 AA38 AB35 AB37 AB38 BA05 CA07 DA01 4F100 AH02B AH02C AK07 AK31B AK31C AK31J AK36B AK36C AK51B AK51C AL01B AL06B AL06C AT00A BA02 BA03 BA10A BA10B EH66B EH66C EH661 EH662 EJ081 EJ591 EJ592 GB16 GB23 JA07B JA07C JA20B JA20C JD02 YY00B YY00C 4J001 DA01 DB01 DC14 DC26 EC02 EC77 ED02 ED57 GA15 GA20 GB02 JA13 JB29 4J029 AA01 AB07 AC01 AE03 AE11 BH01 DA13 FC32 FC38 FC45 HA01 HB06 KB13 KB22 KD02 KE03 KE11 KE12 KF07 KF09 4J034 BA02 CA04 CA05 CA15 CA16 CB03 CB04 CC30 CC35 CC45 CC52 CC61 CC65 CD01 HA07 HA11 HC12 HC22 HC46 HC52 HC61 HC73 JA06 JA23 JA25 JA32 LA26 LB10 QA05 QC03 QC08 RA06 4K029 AA11 AA25 BA62 BC00 CA01 DB06 EA01 GA02

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、下記化学式(A)において
    1、R2、およびR3の内の少なくとも一つが第1官能
    基であり、かつ蒸着材料として使用可能な1,3,5−
    トリアジン誘導体、および前記第1官能基と反応して結
    合する第2官能基を有し、かつ蒸着材料として使用可能
    な重合剤が前記基材上に共蒸着されてなる共蒸着層とを
    有することを特徴とするガスバリア性積層材。 【化1】
  2. 【請求項2】 前記共蒸着層中の前記1,3,5−トリ
    アジン誘導体と前記重合剤とのモル比が、10:1〜
    1:8の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の
    ガスバリア性積層材。
  3. 【請求項3】 前記共蒸着層の膜厚が、0.5nm〜1
    000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2に記載のガスバリア性積層材。
  4. 【請求項4】 前記基材と前記共蒸着層との間に、前記
    1,3,5−トリアジン誘導体からなる層が形成されて
    いることを特徴とする請求項1から請求項3までのいず
    れかの請求項に記載のガスバリア性積層材。
  5. 【請求項5】 基材と、前記基材上に蒸着され、下記化
    学式(A)においてR1、R2、およびR3の内の少なく
    とも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料として使用
    可能な1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層と、前記
    1,3,5−トリアジン誘導体蒸着層上に蒸着され、前
    記第1官能基と反応して結合する第2官能基を有し、か
    つ蒸着材料として使用可能な重合剤蒸着層とを有するこ
    とを特徴とするガスバリア性積層材。
  6. 【請求項6】 前記1,3,5−トリアジン誘導体にお
    いて、前記化学式に示すR1、R2、およびR3の全てが
    同一の第1官能基であることを特徴とする請求項1から
    請求項5までのいずれかの請求項に記載のガスバリア性
    積層材。
  7. 【請求項7】 前記1,3,5−トリアジン誘導体の分
    子量が、85以上1000以下であり、かつ平衡蒸気圧
    が10-3Torrとなる温度が500℃以下であり、さらに
    平衡蒸気圧が10-3Torrとなる温度で熱分解しない化合
    物であることを特徴とする請求項1から請求項6までの
    いずれかの請求項に記載のガスバリア性積層材。
  8. 【請求項8】 前記第1官能基が、−NH2、−OH、
    もしくは−CHOのいずれかを有する官能基であること
    を特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請
    求項に記載のガスバリア性積層材。
  9. 【請求項9】 前記1,3,5−トリアジン誘導体が、
    メラミンもしくはシアヌール酸であることを特徴とする
    請求項8記載のガスバリア性積層材。
  10. 【請求項10】 前記重合剤が少なくとも二つの第2官
    能基を有することを特徴とする請求項1から請求項9ま
    でのいずれかの請求項に記載のガスバリア性積層材。
  11. 【請求項11】 前記重合剤の分子量が、80〜100
    0の範囲内であり、かつ平衡蒸気圧が10-3Torrとなる
    温度が500℃以下であり、さらに平衡蒸気圧が10-3
    Torrとなる温度で熱分解しない化合物であることを特徴
    とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項
    に記載のガスバリア性積層材。
  12. 【請求項12】 前記第1官能基が、−NH2もしくは
    −OHを有する官能基であり、前記第2官能基がイソシ
    アネート基を有する化合物、酸無水物、もしくは酸塩化
    物であることを特徴とする請求項1から請求項11まで
    のいずれかの請求項に記載のガスバリア性積層材。
  13. 【請求項13】 前記重合剤が、4,4’−ジフェニル
    メタンジイソシアネートもしくはピロメリット酸無水物
    であることを特徴とする請求項12記載のガスバリア性
    積層材。
  14. 【請求項14】 基材を準備する工程と、前記基材上
    に、下記化学式(A)においてR1、R2、およびR3
    内の少なくとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料
    として使用可能な1,3,5−トリアジン誘導体、およ
    び前記第1官能基と反応して結合する第2官能基を有
    し、かつ蒸着材料として使用可能な重合剤を共蒸着させ
    る工程とを含むことを特徴とするガスバリア性積層材の
    製造方法。 【化2】
  15. 【請求項15】 前記共蒸着させる工程の前に、前記
    1,3,5−トリアジン誘導体を蒸着させる工程を有す
    ることを特徴とする請求項14に記載のガスバリア性積
    層材の製造方法。
  16. 【請求項16】 基材を準備する工程と、前記基材上
    に、下記化学式(A)においてR1、R2、およびR3
    内の少なくとも一つが第1官能基であり、かつ蒸着材料
    として使用可能な1,3,5−トリアジン誘導体を蒸着
    させる工程と、1,3,5−トリアジン誘導体の蒸着層
    上に前記第1官能基と反応して結合する第2官能基を有
    し、かつ蒸着材料として使用可能な重合剤を蒸着させる
    工程とを有することを特徴とするガスバリア性積層材の
    製造方法。 【化3】
  17. 【請求項17】 前記蒸着を行う工程中、もしくは蒸着
    を行う工程の後に、前記1,3,5−トリアジン誘導体
    と前記重合剤との反応を促進させる反応促進手段を用い
    た反応促進工程を有することを特徴とする請求項14か
    ら請求項16までのいずれかの請求項に記載のガスバリ
    ア性積層材の製造方法。
JP2000205600A 2000-07-06 2000-07-06 ガスバリア性積層材およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3906013B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000205600A JP3906013B2 (ja) 2000-07-06 2000-07-06 ガスバリア性積層材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000205600A JP3906013B2 (ja) 2000-07-06 2000-07-06 ガスバリア性積層材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002019011A true JP2002019011A (ja) 2002-01-22
JP3906013B2 JP3906013B2 (ja) 2007-04-18

Family

ID=18702660

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000205600A Expired - Fee Related JP3906013B2 (ja) 2000-07-06 2000-07-06 ガスバリア性積層材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3906013B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006199013A (ja) * 2004-12-24 2006-08-03 Toppan Printing Co Ltd 無機酸化物蒸着層及び保護層を有するガスバリア基材フィルム
JP2007508161A (ja) * 2003-05-15 2007-04-05 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 複合材料の調製方法
WO2009012878A1 (en) 2007-07-20 2009-01-29 Dsm Ip Assets B.V. A laminate and composite layer comprising a substrate and a coating, and a process and apparatus for preparation thereof
JP2010515599A (ja) * 2007-01-11 2010-05-13 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 高湿度においてバリヤー性を有する基材
JP2011527248A (ja) * 2008-07-10 2011-10-27 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. バリア層、その使用およびその作製方法
JP2013209490A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Nidek Co Ltd 多分岐高屈折材料,及び有機−無機複合物の多分岐高屈折材料
JP2014118417A (ja) * 2012-12-13 2014-06-30 Kojima Press Industry Co Ltd ポリユリア及びその製造方法並びにコンデンサ素子及びその製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007508161A (ja) * 2003-05-15 2007-04-05 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 複合材料の調製方法
JP4734250B2 (ja) * 2003-05-15 2011-07-27 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 複合材料の調製方法
JP2006199013A (ja) * 2004-12-24 2006-08-03 Toppan Printing Co Ltd 無機酸化物蒸着層及び保護層を有するガスバリア基材フィルム
JP2010515599A (ja) * 2007-01-11 2010-05-13 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 高湿度においてバリヤー性を有する基材
WO2009012878A1 (en) 2007-07-20 2009-01-29 Dsm Ip Assets B.V. A laminate and composite layer comprising a substrate and a coating, and a process and apparatus for preparation thereof
JP2011527248A (ja) * 2008-07-10 2011-10-27 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. バリア層、その使用およびその作製方法
JP2013209490A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Nidek Co Ltd 多分岐高屈折材料,及び有機−無機複合物の多分岐高屈折材料
CN103360560A (zh) * 2012-03-30 2013-10-23 株式会社尼德克 多支链高折射率材料及有机-无机复合物的多支链高折射率材料
TWI582148B (zh) * 2012-03-30 2017-05-11 Nidek Kk Coating materials
JP2014118417A (ja) * 2012-12-13 2014-06-30 Kojima Press Industry Co Ltd ポリユリア及びその製造方法並びにコンデンサ素子及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3906013B2 (ja) 2007-04-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3317099B1 (en) Flexible multilayer packaging film with ultra-high barrier properties
US20110236703A1 (en) Coated Metallized Films and Their Method of Manufacture
JP7068617B2 (ja) ガスバリア性積層フィルム
JP2011161778A (ja) 防湿性積層体
JP2000263722A (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材
JP2002019011A (ja) ガスバリア性積層材およびその製造方法
JP3443976B2 (ja) 透明なガスバリア性フィルムの製造方法
JP5522521B2 (ja) 防湿性積層体
CN110087880A (zh) 阻气膜
KR100969416B1 (ko) 알루미늄 산화물 증착 필름 및 그 제조 방법
JP2000127286A (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材
JP2001006632A (ja) 電池用包装材料
JP4122588B2 (ja) 包装用積層フィルムおよび蒸着包装用積層フィルム
JP2002019010A (ja) ガスバリア性積層材
JP5892761B2 (ja) ガスバリア性積層体
JP5084983B2 (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材
JP2003326636A (ja) 強密着性ガスバリア透明積層体
JP3906012B2 (ja) ガスバリア性積層材の製造方法
JP4120865B2 (ja) ガスバリアフィルムロールおよびそれを用いた積層体ならびに包装袋
JP3120653B2 (ja) バリアー性積層体
JP3191545B2 (ja) 包装用バリヤ性積層体及びその製造方法
JP4372966B2 (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材
JPH11300911A (ja) バリア性フィルム及びその製造法
JP2001353804A (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材
JP4372965B2 (ja) バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040126

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051005

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051018

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20051219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070104

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070115

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100119

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110119

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110119

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120119

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120119

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130119

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130119

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140119

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees