JP2002018893A - インサート成形品およびその製造方法 - Google Patents

インサート成形品およびその製造方法

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JP2002018893A
JP2002018893A JP2000205748A JP2000205748A JP2002018893A JP 2002018893 A JP2002018893 A JP 2002018893A JP 2000205748 A JP2000205748 A JP 2000205748A JP 2000205748 A JP2000205748 A JP 2000205748A JP 2002018893 A JP2002018893 A JP 2002018893A
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insert
resin
molding
molded product
sheet
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JP2000205748A
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Fujio Mori
富士男 森
Tadatake Taniguchi
忠壮 谷口
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Nissha Printing Co Ltd
Original Assignee
Nissha Printing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 最表面層である基材フィルム表面に金型のキ
ャビティ形成面の表面形状が正確に写し取られているイ
ンサート成形品およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 インサート成形用シートを用いたインサ
ート成形品の製造方法において、成形樹脂の金型内への
注入開始前におけるキャビティ形成面の表面温度T
インサート成形品の最表面層となる基材フィルムの軟化
点Tよりも5℃以上低く、成形樹脂のキャビティ内へ
の注入開始時から成形樹脂が固化する時までのいずれか
の時点におけるキャビティ形成面の最高表面温度T
maxが上記基材フィルムの軟化点Tよりも10℃以
上高くなり、成形樹脂の樹脂圧力が13MPa 以上で
ある成形条件で成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、コンソールボッ
クス、センタークラスター、スイッチベースなどの自動
車内装部品や、携帯電話の筐体などの通信機器部品など
に用いられる、樹脂成形品の表面に加飾の施されたイン
サート成形品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記自動車内装部品や通信機器部
品を加飾する方法としては、樹脂成形品表面に所望の色
・パターンに着色塗装やメッキなどを施して絵柄を形成
したり、オーバーコート塗装をしたりする方法が知られ
ている。しかし、これら塗装やメッキによる方法は環境
衛生上問題があった。
【0003】これに対して塗装を行なわないで表面を加
飾する方法として、インサート成形用シートを用いたイ
ンサート成形法がある。
【0004】この方法は、少なくとも絵柄層と該絵柄層
を被覆して保護する機能を持つ基材フィルムとから構成
されるインサート成形用シート1を用い、これを射出成
形用の金型内に挿入し、型閉め後、溶融状態の射出成形
樹脂16をキャビティ内に射出し、射出成形樹脂15を
固化させることによって、樹脂成形品7を形成すると同
時にその表面にインサート成形用シート1を一体化接着
させてインサート成形品8を得るものである(図9およ
び図10参照)。上記インサート成形用シート1として
は、通常、少なくとも絵柄層3と該絵柄層3を被覆して
保護する機能を持つ基材フィルム2とから構成され(図
12参照)、基材フィルム2には塩化ビニル樹脂、アク
リル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポ
リウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明な樹
脂から成膜されたものを使用する。
【0005】ところで、自動車内装部品等などの意匠面
は、高光沢の艶感や高透明性の艶感が要求される場合
と、所望の凹凸形状の表面シボを要求される場合とがあ
る。そして、そのような意匠を得る方法として、上記イ
ンサート成形法において、金型のキャビティ形成面14
を鏡面としたり、キャビティ形成面14にシボ凹凸を形
成したりしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記樹脂から
なる基材フィルム2は、そのフィルム成膜時において発
生するテンションの面内バラツキ・残留応力・フィッシ
ュアイ等のために、厚みが不均一となり又微小な凹凸を
有している。そのため、キャビティ形成面14がいくら
鏡面であっても、成形条件によっては、キャビティ形成
面14の鏡面形状が基材フィルム2に反映されず、厚み
の不均一さや微小な凹凸を有したまま基材フィルム2が
樹脂成形品に一体化されて高光沢の艶感や高透明性の艶
感が得られない場合があった。その場合、樹脂成形品7
上の絵付け面を塗装によってクリアコート層で覆ったも
のと比べて、透明性が不足して表面が曇った状態になっ
ており、樹脂成形品表面に施した意匠がぼやけて見え
た。
【0007】また、キャビティ形成面14にシボ凹凸を
形成してインサート成形することにより、インサート成
形用シート1のキャビティ形成面14と接する面、すな
わち基材フィルム2をキャビティ形成面14の表面形状
に変化させるときも、成形条件によっては、キャビティ
形成面14のシボ凹凸形状が基材フィルム2に反映され
ず、所望の凹凸形状に近い表面シボを有するインサート
成形品8を得られない場合があった。あらかじめインサ
ート成形用シート1の表面をエンボス加工したインサー
ト成形用シート1を用いる方法もあるが、インサート成
形時に射出成形樹脂16の熱圧でもってインサート成形
用シート表面の凹凸形状が崩れてだれてくるという問題
がある。
【0008】したがって、本発明の目的は、上記の問題
点を解決することにあり、最表面層である基材フィルム
表面にインサート成形で用いた金型のキャビティ形成面
の表面形状が正確に写し取られているインサート成形品
およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のインサート成形品は、少なくとも絵柄層と
該絵柄層を被覆して保護する機能を持つ基材フィルムと
から構成されるインサート成形用シートが樹脂成形品の
表面に一体化接着されたインサート成形品であって、J
IS K 7105の測定方法におけるインサート成形
品表面の60°反射表面光沢度をGとし、インサート
成形前に測定したインサート成形用シートの基材フィル
ム表面の60°反射表面光沢度をGとしたとき、G
×(G−G)/100≧1.2となるように、最表
面層である基材フィルム表面にインサート成形で用いた
金型のキャビティ形成面の表面形状が正確に写し取られ
ているように構成した。
【0010】また、本発明のインサート成形品は、少な
くとも絵柄層と該絵柄層を被覆して保護する機能を持つ
基材フィルムとから構成されるインサート成形用シート
が樹脂成形品の表面に一体化接着されたインサート成形
品であって、JIS K 7105の測定方法における
インサート成形品表面のヘイズ値をH(%)とし、イ
ンサート成形前に測定したインサート成形用シートの基
材フィルム表面のヘイズ値をH(%)としたとき、
(H−H)/H≧0.05となるように、最表面
層である基材フィルム表面にインサート成形で用いた金
型のキャビティ形成面の表面形状が正確に写し取られて
いるように構成した。
【0011】また、本発明のインサート成形品は、少な
くとも絵柄層と該絵柄層を被覆して保護する機能を持つ
基材フィルムとから構成されるインサート成形用シート
が樹脂成形品の表面に一体化接着されたインサート成形
品であって、凹凸の深さh(μm)と巾w(μm)の比
h/wが0.006〜0.5となるように、最表面層で
ある基材フィルム表面にインサート成形で用いた金型の
キャビティ形成面の表面形状が正確に写し取られている
ように構成した。
【0012】また、本発明は、少なくとも絵柄層と該絵
柄層を被覆して保護する機能を持つ基材フィルムとから
構成されるインサート成形用シートを用い、所定の表面
形状に加工されたキャビティ形成面を有する射出成形用
の金型内にインサート成形用シートを挿入し、型閉め
後、溶融状態の射出成形樹脂をキャビティ内に注入し、
射出成形樹脂を固化させることによって、樹脂成形品を
形成すると同時にその表面にインサート成形用シートを
一体化接着させ、型開き後にインサート成形品を金型か
ら取りだすインサート成形品の製造方法において、射出
成形樹脂の金型内への注入開始前におけるキャビティ形
成面の表面温度Tがインサート成形品の最表面層とな
る基材フィルムの軟化点Tよりも5℃以上低く、射出
成形樹脂のキャビティ内への注入開始時から射出成形樹
脂が固化する時までのいずれかの時点におけるキャビテ
ィ形成面の最高表面温度Tmaxがインサート成形品の
最表面層となる基材フィルムの軟化点Tよりも10℃
以上高くなり、射出成形樹脂の樹脂圧力が13MPa
以上である成形条件で成形することにより、前記したい
ずれかのインサート成形品を得るように構成した。
【0013】上記インサート成形品の製造方法の構成に
おいて、キャビティ形成面の上記最高表面温度Tmax
がインサート成形品の最表面層となる基材フィルムの軟
化点Tよりも20℃以上高くなり、射出成形樹脂が固
化した後、型開きした時点におけるキャビティ形成面の
表面温度Tがインサート成形品の最表面層となる基材
フィルムの軟化点Tよりも20℃以上低くなるように
した。
【0014】上記インサート成形品の製造方法の構成に
おいて、射出成形樹脂の樹脂圧力を17MPa 以上と
した。
【0015】また、上記各構成で使用する基材フィルム
の材質が、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピ
レン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ
カーボネート樹脂から選ばれた少なくとも一つの透明な
樹脂であるようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
をさらに詳しく説明する。
【0017】図1は本発明に係るインサート成形品の製
造方法における金属キャビティの表面温度の推移の一例
を示すグラフ、図2はビカット針込み試験を説明する
図、図3〜5は本発明において用いるインサート成形用
シートのインサート成形前後の表面状態変化の一実施例
を示す断面図、図6〜10は本発明に係るインサート成
形品の製造方法の一実施例の一工程を示す断面図、図1
1は樹脂圧力の測定方法を示す断面図である。図中、1
はインサート成形用シート、2は基材フィルム、3は絵
柄層、31は金属薄膜層、32は第1絵柄層、33は第
2絵柄層、34は第3絵柄層、4は接着層、5はアンカ
ー層、6は裏打ちシート、7は樹脂成形品、8はインサ
ート成形品、9はフィルム成膜時の表面、10は可動
型、11は固定型12はクランプ部材、13は真空吸引
孔、14はキャビティ形成面、15は加熱板、16は射
出成形樹脂、17はゲート部、18は鏡面、19は表面
シボ、20は圧力センサー、21は埋め込みピン、22
は金型内壁面、23は外部処理装置、24は針、25は
分銅、26はキャビティをそれぞれ示す。
【0018】本発明の目的は、少なくとも絵柄層3と該
絵柄層3を被覆して保護する機能を持つ基材フィルム2
とから構成されるインサート成形用シート1について従
来と同じ材料からなる基材フィルム2を用いても、得ら
れるインサート成形品8表面、すなわち基材フィルム2
表面にインサート成形で用いた金型のキャビティ形成面
14の表面形状が正確に写し取られているようにするこ
とにある。
【0019】たとえば、キャビティ形成面14を鏡面の
ように平滑にしてインサート成形した場合に、最終製品
であるインサート成形品8において鏡面のように艶感の
ある製品を得ることである。具体的には、JIS K
7105の測定方法におけるインサート成形品表面の6
0°反射表面光沢度をGとし、インサート成形前に測
定したインサート成形用シートの基材フィルム表面の6
0°反射表面光沢度をGとしたとき、G×(G
)/100≧1.2となる高光沢の艶感を有するイ
ンサート成形品8を得ることである。また、JIS K
7105の測定方法におけるインサート成形品表面の
ヘイズ値をH(%)とし、インサート成形前に測定し
たインサート成形用シートの基材フィルム表面のヘイズ
値をH(%)としたとき、(H−H)/H
0.05となる高透明性の艶感を有するインサート成形
品8を得ることである。
【0020】また、キャビティ形成面14に所望のシボ
凹凸を形成してインサート成形した場合に、最終製品で
あるインサート成形品8において所望の凹凸形状に近い
表面シボを有する製品を得ることである。具体的には、
表面に深さh(μm)と巾w(μm)の比h/wが0.
006〜0.5である凹凸が形成されているインサート
成形品8を得ることである。
【0021】成形条件を検討した結果(表1〜3参
照)、本発明のインサート成形品8の製造方法におい
て、射出成形樹脂16の金型内への注入開始前における
キャビティ形成面14の表面温度Tがインサート成形
用シートの最表面層となる基材フィルムの軟化点T
りも5℃以上低く、射出成形樹脂16の金型内への注入
開始時から射出成形樹脂16が固化する時までのいずれ
かの時点におけるキャビティ形成面14の最高表面温度
maxがインサート成形用シートの最表面層となる基
材フィルムの軟化点Tよりも10℃以上高くなり(図
1参照)、射出成形樹脂の樹脂圧力が13MPa 以上
である成形条件で成形すればよいことがわかった。
【0022】なお、ここでいう軟化点Tとは、AST
M D 1525に基づきビカット針込み試験を実施し
た際(図2a参照)、針24が基材フィルム2をつき破
る(図2c参照)か、あるいは基材フィルム2が1mm
以上変形し始める(図2b参照)ときの温度のことを示
す。試験条件としては、直径1mmの針24を用い、1
kgの分銅25で荷重をかけながら50℃/時間の昇温
を行う。
【0023】射出成形樹脂15の金型内への注入開始前
におけるキャビティ形成面14の表面温度Tをインサ
ート成形用シートの最表面層となる基材フィルムの軟化
点T よりも5℃以上低く設定する理由は、Tをそれ
以上高くすると、キャビティ形成面14から伝わる熱で
もってインサート成形用シートの最表面層となる基材フ
ィルムが射出成形樹脂15の注入前に軟化または溶融し
て波打ち状に変形し、そのまま射出成形するとシワにな
るか破損してしまうためである。
【0024】また、射出成形樹脂16の金型内への注入
開始時から射出成形樹脂16が固化する時までのいずれ
かの時点におけるキャビティ形成面14の最高表面温度
maxをインサート成形品の最表面層となる基材フィ
ルムの軟化点Tよりも10℃以上高く設定する理由
は、射出成形樹脂の樹脂圧力だけではインサート成形用
シート1がキャビティ形成面14の表面形状、つまり鏡
面やシボ凹凸等に沿って密着しない場合があるため、キ
ャビティ形成面14と接する基材フィルムの表面をキャ
ビティ形成面14から伝わる熱により軟化させ、キャビ
ティ形成面14の形状に沿って密着しやすくするためで
ある。
【0025】より好ましくは、射出成形樹脂16の金型
内への注入開始時からインサート成形品8を金型から取
り出す時までのいずれかの時点におけるキャビティ形成
面14の最高表面温度Tmaxがインサート成形品の最
表面層となる基材フィルムの軟化点Tよりも20℃以
上高くなり、射出成形樹脂が固化した後、型開きした時
点におけるキャビティ形成面14の表面温度Tがイン
サート成形品の最表面層となる基材フィルムの軟化点T
よりも20℃以上低くなるような成形条件である。加
熱冷却が急激な条件の方が、連続成形するため生産性お
よび表面の奇麗な意匠を得やすいからである。
【0026】以上のような成形条件を実現するために
は、金型内部に温水や油などを通して温度調節するだけ
でなく、射出成形樹脂の熱をできるだけ損失なく金型面
に伝えるためにシート全体として熱伝導率が良く厚みの
薄いインサート成形用シートを選択したり、溶融温度が
高く急激に冷えやすい射出成形樹脂を選択したりするの
が好ましい。
【0027】また、射出成形樹脂を金型内へ注入した時
の熱でもってキャビティ形成面14の最高表面温度T
maxがインサート成形用シートの最表面層となる基材
フィルムの軟化点Tよりも10℃以上高くなることを
確認する手段としては、キャビティ形成面14に熱電対
や不可逆の温度指示ラベルを貼り付けておく方法があ
る。
【0028】また、射出成形樹脂を金型内へ注入した時
の樹脂圧力を13MPa以上に設定する理由は、樹脂圧
力が13MPa未満であるとキャビティ形成面14にイ
ンサート成形用シートの基材フィルムが密着しにくく、
そのためインサート成形品8がキャビティ形成面14の
表面形状に近い表明形状を得られないからである。樹脂
圧力を13MPa以上に設定することにより、基材フィ
ルムをキャビティ形成面14に充分に押し付けながら、
前記したように基材フィルムの表面の軟化を行なうこと
ができるため、インサート成形用シートの基材フィルム
をキャビティ形成面14に密着させやすくなる。好まし
くは、樹脂圧力を17MPa以上に設定する。その理由
は、キャビティ形成面14に基材フィルムを沿いやすく
するだけでなく、射出成形樹脂の熱をキャビティ形成面
14に伝えやすくするためである。なお、樹脂圧力の測
定方法としては、圧力センサー20と該圧力センサーに
樹脂圧力を伝える埋め込めピン21を金型内壁面22に
設定しておき、圧力センサー20で感知した値を電気信
号によってパソコン端末等の外部処理装置23に伝え表
示させる方法がある(図11参照)。
【0029】このような条件(表1の成形条件3〜6及
び表2の成形条件8,10)にて得られたインサート成
形品8は、キャビティ形成面14を鏡面に加工した場
合、表1,表2に示すように、目視にて高光沢の艶感や
高透明性の艶感を有する鏡面が充分確認できた(鏡面評
価)。また、上記条件にて得られたインサート成形品8
の表面は、JIS K 7105の測定方法における6
0°反射表面光沢度をG とし、インサート成形前に測
定したインサート成形用シートの基材フィルム表面の6
0°反射表面光沢度をGとしたとき、G×(G
)/100が1.2以上となっていた。また、上記
条件にて得られたインサート成形品8の表面は、JIS
K 7105の測定方法におけるヘイズ値をH
(%)とし、インサート成形前に測定したインサート
成形用シートの基材フィルム表面のヘイズ値をH
(%)としたとき、(H−H)/Hが0.05
以上となっていた。一方、従来の成形条件(表1の成形
条件1,2及び表2の成形条件7,9,11,12)で
は、同様の鏡面加工をキャビティ形成面14に施して
も、インサート成形品8の表面は目視判定で鏡面とは言
えるものではなく、また60°反射表面光沢度及びヘイ
ズ値の向上がほとんど見られなかった。なお、キャビテ
ィ形成面14の鏡面加工は、本発明のインサート成形品
8の製造方法によって上記効果が得られるのに充分な加
工であるのは言うまでもない。また、表1,2の鏡面評
価の欄の◎,○,△,×,は、それぞれ下記の状態を意
味する。 ◎:目視でも精密な表面粗差計でも平滑な鏡面である。 ○:目視でみる限りは鏡面であるが、精密な表面粗差計
では微小な凹凸が検出される。 △:目視では鏡面のようにも見えるが、手の感触では明
確な凹凸が残っている。 ×:目視でもインサート
成形前と変化なし
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】また、このような条件(表3の成形条件1
3〜15,16,18)にして得られたインサート成形
品8は、キャビティ形成面14を凹凸シボ加工した場
合、下記の表3に示すように、インサート成形品8の最
表面層である基材フィルム2表面に深さh(μm)と巾
w(μm)の比h/wが0.006〜0.5である凹凸
をつけることができ、表面シボの凹凸感が充分であっ
た。一方、従来の成形条件(表3の成形条件17)で
は、同様の凹凸シボ加工をキャビティ形成面14に施し
ても、インサート成形品8の最表面層である基材フィル
ム2表面に深さh(μm)と巾w(μm)の比h/wが
0.006〜0.5である凹凸をつけることができず、
表面シボの凹凸感はなかった。なお、ここで行なう凹凸
シボ加工は、本発明のインサート成形品8の製造方法に
よってインサート成形品8表面に上記凹凸が得られるの
に充分な加工であるのは言うまでもない。表3の表面シ
ボの凹凸感の欄の◎,○,△,×は、それぞれ下記の状
態を意味する。 ◎:キャビティ形成面の凹凸とほぼ同一の凹凸がついて
いる ○:目視でも凹凸がついているのはわかるが、キャビテ
ィ形成面の凹凸とは異なる △:目視ではわからないが、手の感触では凹凸がついて
いるのがわかる。 ×:手の感触でも凹凸がついているのがわからない
【0033】
【表3】
【0034】以下、本発明のインサート成形品8の製造
方法で使用するインサート成形用シート1ついて更に詳
しく説明する。
【0035】本発明に係るインサート成形用シート1
は、前記したように、少なくとも絵柄層3と該絵柄層3
を被覆して保護する機能を持つ基材フィルム2とから構
成されるものである(図3〜4参照)。
【0036】基材フィルム2の材質は、塩化ビニル樹
脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル
樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂から選
ばれた少なくとも一つの透明な樹脂から成膜されたもの
など、通常の成形条件のインサート成形品8の製造方法
で使用するインサート成形用シート1と同様のものを使
用することができる。すなわち、これらの基材フィルム
2は、一般にそのフィルム成膜時において発生するテン
ションの面内バラツキ・残留応力・フィッシュアイ等の
ために厚みが不均一となり又微小な凹凸を有しているも
のであり、従来と同様の成形条件でインサート成形を行
なえば、キャビティ形成面14を鏡面加工しても、ある
いはキャビティ形成面14を凹凸シボ加工しても、キャ
ビティ形成面14のそれらの形状が基材フィルム2に反
映されないものである。また、これらの基材フィルム2
は、従来と同様の成形条件でインサート成形を行なえ
ば、金型内にセットする前に基材フィルム2表面に凹凸
形状をあらかじめ形成しておいても該凹凸形状がインサ
ート成形時に射出成形樹脂の熱圧でもって崩れてだれて
くるものである。
【0037】絵柄層3は、樹脂成形品7の表面に文字や
図形、記号などを表わしたり、着色表面を表わしたりす
るためのものである。絵柄層3は、黒色やシルバーメタ
リック色などの、パターンが無い全面べた1色のもので
あってもよく、あるいは、木目模様や石目模様などのパ
ターンがある1色または多色のものであってもよい。ま
た、絵柄層3は、透明黄色の層とシルバーメタリック色
の層とを積層して金色全面べた又は金色パターン層を表
現するようにしてもよい。絵柄層3は、通常、印刷層と
して形成する。印刷層の材質としては、ウレタン系樹
脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系
樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニ
ルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セ
ルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂、熱可塑性エラ
ストマーなどの樹脂、好ましくは柔軟な皮膜を作ること
ができる樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または
染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよ
い。また、前記バインダーにパール顔料を着色剤として
含有する光輝性インキを用いてもよい。印刷層の形成方
法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スク
リーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。
特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷
法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合に
は、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート
法などのコート法を採用することもできる。印刷層は、
表現したい図柄に応じて、全面ベタで設ける場合や部分
的に設ける場合がある。絵柄層3の厚みとしては、0.
1〜20μmが好ましい。通常の印刷法によれば、この
範囲となる。
【0038】また、絵柄層3は金属薄膜層31から構成
されるもの、あるいは金属薄膜層と印刷層との組み合わ
せから構成されるものでもよい。金属薄膜層31は絵柄
層3として金属光沢を表現するためのものであり、真空
蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、
または鍍金法などで形成する。表現したい金属光沢色に
応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、
鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、また
は亜鉛などの金属、またはこれらの合金若しくは化合物
を使用する。
【0039】インサート成形用シート1を2種以上の積
層フィルムにしても良い。たとえば、基材フィルム2と
絵柄層3の間に他のフィルムを積層してもよいし、基材
フィルム2と裏打ちシート(backing shee
t)6等の他のフィルムとの間に絵柄層3を形成しても
よい(図3、図4参照)。裏打ちシート6は、インサー
ト成形用シート1に腰の強さを付与して射出成形の型外
で予備成形をする場合や射出成形型にインサートする場
合の取り扱いを容易にし、射出成形樹脂16と融着させ
るためのものである。また、裏打ちシート6はそれ自身
で加飾機能を持っていてもよい。積層方法としては、一
方のフィルム表面が接着性を呈するまで加熱して他方の
フィルムを貼り合わせるいわゆる熱ラミネート法や、接
着剤を介して2枚のフィルムを貼り合わせるいわゆるド
ライラミネート法などがある。また、裏打ちシート6等
の一方のフィルムに絵柄層3を形成しておき、この絵柄
層3を覆うように基材フィルム材料となる樹脂(特にポ
リプロピレンの場合)を押出し成形により被覆するいわ
ゆる押出しコート法などもある。
【0040】また、射出成形樹脂16に接着される面の
接着性を向上させるためやインサート成形用シート1を
構成する各フィルムの間の接着のために、必要に応じて
接着層4を設けてもよい。接着層4は、ポリ塩化ビニル
酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂、またはウ
レタン系樹脂などから構成していてもよい。接着層4の
形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート
法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、
スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0041】インサート成形用シート1の厚みとして
は、5〜700μmが好ましい。5μmに満たないと、
フィルム強度が低く成形の際にフィルムが破れる問題が
ある。700μmを超えると、巻き状態のインサート成
形用シートとすることが困難であり、生産性が劣るもの
となる。より好ましくは20〜150μmがよい。20
μm未満ではシワが入りやすく成形条件が限定される。
150μmを超えると射出成形樹脂の溶融熱がキャビテ
ィ形成面14まで伝わり難く艶感のある意匠が得難い。
【0042】次に、インサート成形品の製造方法を説明
する。
【0043】まず、インサート成形用シート1を射出成
形用金型の可動型10の表面にクランプ部材12により
セットする(図6参照)。可動型10へのセットの仕方
の具体例としては、長尺のインサート成形用シート1を
一旦巻き取ってロール状巻物とし、このロール状巻物を
射出成形用の可動型10の上部に可動型10と一体的に
移動可能に載置し、ロール状巻物からインサート成形用
シート1を巻き出しながら、退避した可動型10と固定
型11との間を通過させ、射出成形用の可動型10の下
部に可動型10と一体的に移動可能に設置したフィルム
巻き取り手段のロール軸によりインサート成形用シート
1を巻き取るようにすればよい。別の例としては、枚葉
のインサート成形用シート1を用いて、ロボットや人手
により可動型10の表面にセットしてもよい。インサー
ト成形用シート1の可動型10の表面へのセットに際し
ては、インサート成形用シート1を可動型10の表面に
配置した後、可動型10の表面に対するインサート成形
用シート1の位置を位置決めセンサーなどにより決定
し、インサート成形用シート1を射出成形用の可動型1
0の表面にクランプ部材12によって押さえ付けるとよ
い。
【0044】次いで、インサート成形用シート1を射出
成形用の可動型10の表面にセットした後に、射出成形
用の可動型10に形成された真空吸引孔13を利用し
て、インサート成形用シート1を可動型10のキャビテ
ィ形成面14に沿わせるように真空吸引することによ
り、射出成形用の可動型10の凹部すなわちキャビティ
形成面14に沿うように立体形状に加工する(図7作
成)。具体例としては、可動型10と固定型11との間
に挿入した加熱板15などで、可動型10の表面にセッ
トしたインサート成形用シート1を加熱して軟化させ、
射出成形用の可動型10の凹部とインサート成形用シー
ト1との間の空間を密閉して真空吸引孔13から排気及
び空間内の気圧を下げることによって真空吸引し、射出
成形用の可動型10の凹部内面(キャビティ形成面1
4)にインサート成形用シート1を密着させる方法があ
る。立体形状に加工する際、あるいはクランプ部材12
でインサート成形用シート1を押さえ付けて固定する際
に、インサート成形用シート1の不要部分の打抜き加工
をしてもよい。
【0045】上記方法に代えて、インサート成形用シー
ト1を射出成形用の可動型10の表面にセットする前
に、射出成形用の可動型10と固定型11とは別の立体
加工成形用型を用いてインサート成形用シート1をあら
かじめ所望の形状に立体加工し、また所望の形状に打抜
き加工したのち、射出成形用の可動型10の凹部内に、
立体加工されたインサート成形用シート1をはめ込むよ
うにしてもよい(図8作成)。ここで、立体加工とは、
平面の状態から立体的形状(たとえば、底の深いコンソ
ールボックス)にインサート成形用シート1を形状変化
させることをいう。所望の形状としては、射出成形用の
可動型10または固定型11のキャビティ形成面14に
合致する形状などがある。立体形状に加工する方法とし
ては、真空成形法や圧空成形法、熱せられたゴムを押し
つける押圧成形法、またはプレス成形法などがある。こ
こで、真空成形法とは、インサート成形用シート1をそ
の軟化点以上に加熱して軟化させ、真空成形金型の凹部
とインサート成形用シート1との間の空間を密閉して真
空吸引し、真空成形金型の凹部内面にインサート成形用
シート1を密着させ、射出成形用の可動型10のキャビ
ティ形成面14に合致した立体形状にインサート成形用
シート1を成形する方法である。所望の形状に打抜き加
工する方法としては、トムソン打抜き法、金型によるプ
レス法などがある。打抜き形状としては、所定形状の外
周に沿った線や所定形状の孔などがある。なお、立体形
状に加工する際に同時に打抜き加工をしてもよい。
【0046】次に、固定型11に対して可動型10を型
閉めして溶融状態の射出成形樹脂16を固定型11のゲ
ート部17からキャビティ26内に射出し、射出成形樹
脂16を固化させてキャビティ内で樹脂成形品7を形成
すると同時にその表面にインサート成形用シート1を一
体化接着させる(図9作成)。
【0047】その後、樹脂成形品7、すなわちインサー
ト成形品8を可動型10から取り出したのち、樹脂成形
品7に接着したインサート成形用シート1のうち不要な
部分を除去する(図10作成)。なお、前述したように
あらかじめ所望の形状に打ち抜き加工していた場合に
は、インサート成形用シート1の不要な部分を除去する
作業は不要である。
【0048】射出成形用の金型としての可動型10と固
定型11は、前述した実施形態に特に限定されることは
ないが、射出成形樹脂16を射出するゲート部17を有
する固定型11と可動型10から構成され、固定型11
と可動型10とが型閉めされることによって、固定型1
1および可動型10のキャビティ形成面14によって囲
まれた単数あるいは複数のキャビティ26が形成される
ものを使用すればよい。射出成形用の可動型10と固定
型11とにより形成されるキャビティ26内にセットさ
れたインサート成形用シート1は、キャビティ形成面1
4を覆うことになる。キャビティは樹脂成形品7に孔部
を形成するものであってもよい。キャビティ26を形成
する凹部は固定型11あるいは可動型10のいずれかに
形成されていてもよい。可動型10または固定型11
は、凹部の周囲でインサート成形用シート1を押さえ付
けて固定するクランプ部材12を有してもよい。クラン
プ部材12は固定型11あるいは可動型10に設置され
てもよい。
【0049】射出成形樹脂16は、特に限定されること
はない。自動車の内装部品や外装部品に用いられる代表
的な射出成形樹脂としては、アクリロニトリルブタジエ
ンスチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカー
ボネート樹脂などが一般的に使用される。
【0050】なお、横型射出成形機の場合には、上記の
とおりであるが、竪型射出成形機の場合には、固定型と
可動型の関係が横型射出成形機の場合と逆になる。ま
た、射出成形機の金型は2枚型の場合だけでなく、3枚
型の場合にも同様に適用することができる。
【0051】
【実施例】以下に、より具体的な実施例を挙げる。 <実施例1>以下の条件で、木目模様のポリプロピレン
樹脂製自動車内装部品を製造した(図3参照)。
【0052】厚さ50μmのアクリルフィルム(T
75℃)を基材フィルム2上に、アクリル樹脂系インキ
を用いて絵柄層3を形成し、その上にビニル樹脂系イン
キを用いてアンカー層5を形成した。
【0053】このアンカー層5の上にウレタン樹脂系ド
ライラミネート接着剤をコートした後、裏打ちシート6
として、酸化鉄/チタンホワイト=1/10を含有した
アイソタクティクポリプロピレン樹脂(10重量部)と
エチレン−プロピレン共重合ゴム(1重量部)とから構
成される厚さ400μmのピンク色のものを用い、ラミ
ネートした。
【0054】以上のようにして得られたインサート成形
用シート1の最表面層(基材フィルム2)は、艶である
もの60°反射表面光沢度=62、ヘイズ値=3.7
(%)と若干の曇りが気になる状況であった。
【0055】上記のインサート成形用シート1を、キャ
ビティ形成面14が鏡面でキャビティ形成面14の表面
温度が35℃の射出成形用の可動型5内にセットして真
空成形し、型閉め後、タルクを含有したポリプロピレン
からなる射出成形樹脂16(溶融温度220℃ 樹脂圧
力17MPa)をキャビティ内に射出し、射出成形樹脂
16を固化させて樹脂成形品7を形成すると同時にその
表面にインサート成形用シート1のポリプロピレンフィ
ルム側を一体化接着させ、木目模様のポリプロピレン樹
脂製自動車内装部品を得た。この過程においてキャビテ
ィ形成面14の表面温度は、射出成形樹脂16を射出す
る直前までは35℃であったが、射出直後約0.2秒で
90℃まで急激に上昇し、さらにその2秒後には75℃
未満に急激に下降し、20秒後の射出成形樹脂16が固
化して型開き工程に移る時には40℃程度まで戻ってい
た。このようにして得たインサート成形品8の意匠表面
は、60°反射表面光沢度=75、ヘイズ値=2.2
(%)と優れた鏡面18が形成されていた(表1の成形
条件5)。
【0056】<実施例2>以下の条件で、クロム色のア
クリルニトリルブタジエンスチレン樹脂製携帯電話筐体
を製造した(図3参照)。
【0057】厚さ150μmのアクリルニトリルブタジ
エンスチレンフィルムからなる裏打ちシート6上に、厚
み30nmのクロム蒸着から構成される金属薄膜層31
を絵柄層として形成し、その上に基材フィルム2として
アクリル系のオーバーコート層(T=85℃)を形成
した。以上のようにして得られたインサート成形用シー
ト1の最表面層(基材フィルム2)は、艶であるもの6
0°反射表面光沢度=60、ヘイズ値=4.7と若干の
曇りが気になる状況であった。
【0058】上記のインサート成形用シート1を、キャ
ビティ形成面14が鏡面でキャビティ形成面14の表面
温度が45℃の射出成形用の可動型内にセットして真空
成形し、型閉め後、アクリルニトリルブタジエンスチレ
ンからなる射出成形樹脂16(溶融温度240℃ 樹脂
圧力29MPa)をキャビティ内に射出し、射出成形樹
脂16を固化させて樹脂成形品7を形成すると同時にそ
の表面にインサート成形用シート1のアクリルニトリル
ブタジエンスチレンフィルム側を一体化接着させ、メタ
リック模様のアクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂
製携帯電話筐体を得た。この過程においてキャビティ形
成面14の表面温度は、射出成形樹脂16を射出する直
前までは45℃であったが、射出直後約0.15秒で最
高115℃まで急激に上昇し、さらにその3秒後には8
5℃未満に急激に下降し、20秒後の射出成形樹脂16
が固化して型開き工程に移る時には55℃程度まで戻っ
ていた。このようにして得たインサート成形品の意匠表
面は、60°反射表面光沢度=77、ヘイズ値=2.2
(%)と優れた鏡面18が形成されていた(表2の成形
条件8)。
【0059】<実施例3>以下の条件で、黒色艶消し状
のポリカーボネート樹脂製透過照光ヒーターコントロー
ルパネルを製造した(図5参照)。
【0060】厚さ130μmのポリカーボネートフィル
ム(T=155℃)を基材フィルム2とし、その上
に、第1絵柄層32として黒色ビニル樹脂系インキを用
いた照光隠蔽パターン層を形成し、その上に第2絵柄層
33として乳白色ビニル樹脂系インキを用いた照光パタ
ーン層を形成し、それに並列して第3絵柄層34として
赤色ビニル樹脂系インキを用いた照光パターン層を形成
した。このようにして得られたインサート成形用シート
1を所望の形状に真空成形して、トムソン型で打ち抜い
た。
【0061】上記真空成形および打抜き後のインサート
成形用シート1を、キャビティ形成面14がシボ加工面
(シボ加工の凹凸h=300μm, w=500μm)
でその表面温度が60℃の射出成形用の可動型10内に
セットして型閉め後、ポリカーボネートからなる射出成
形樹脂16(溶融温度290℃ 樹脂圧力49MPa)
をキャビティ内に射出し、射出成形樹脂16を固化させ
て樹脂成形品7を形成すると同時にその表面にインサー
ト成形用シート1の印刷面側を一体化接着させ、全面シ
ボ艶消し模様のポリカーボネート樹脂製自動車内装部品
を得た。この過程においてキャビティ形成面14の表面
温度は、射出成形樹脂を射出する直前までは60℃であ
ったが、射出直後約0.15秒で195℃まで急激に上
昇し、さらにその2秒後には125℃未満に急激に下降
し、20秒後の射出成形樹脂16が固化して型開き工程
に移る時には65℃程度まで戻っていた。このようにし
て得たインサート成形品8の意匠表面には、h=250
μm,w=500μmの金型シボ加工とほぼ同じパター
ンの表面シボ19が形成されていた(表3の成形条件1
6)。
【0062】<比較例1>実施例2において用いた厚さ
150μmのアクリルニトリルブタジエンスチレンフィ
ルムに代えて厚み300μmのアクリルニトリルブタジ
エンスチレンフィルムを用いたほかは実施例2と同様に
してメタリック模様のアクリルニトリルブタジエンスチ
レン樹脂製自動車内装部品を製造した。その過程におい
てキャビティ形成面14の表面温度は、射出成形樹脂を
射出する直前までは45℃であったが、射出直後約0.
25秒で最高80℃までしか上がらず、3秒後には70
℃程度、20秒後の射出成形樹脂16が固化して型開き
工程に移る時で60℃程度であった。このようにして得
たインサート成形品の意匠表面は、60°反射表面光沢
度=59、ヘイズ値=4.7(%)と、インサート成形
前と変わらず意匠的に不充分であった(表2の成形条件
12)。
【0063】<比較例2>実施例1において樹脂圧力を
12MPa にしたほかは実施例1と同様にした。この
ようにして得たインサート成形品の意匠表面は、60°
反射表面光沢度=61、ヘイズ値=3.7(%)と、イ
ンサート成形前と変わらず意匠的に不充分であった(表
1の成形条件1)。
【0064】
【発明の効果】本発明のインサート成形品とその製造方
法は、以上のとおりの構成を有するので、次のような優
れた効果を有する。
【0065】すなわち、インサート成形品の製造方法に
おいて、射出成形樹脂の金型内への注入開始前における
キャビティ形成面の表面温度Tがインサート成形品の
最表面層となる基材フィルムの軟化点Tよりも5℃以
上低く、射出成形樹脂のキャビティ内への注入開始時か
ら射出成形樹脂が固化する時までのいずれかの時点にお
けるキャビティ形成面の最高表面温度Tmaxがインサ
ート成形品の最表面層となる基材フィルムの軟化点T
よりも10℃以上高くなり、射出成形樹脂の樹脂圧力が
13MPa 以上である成形条件で成形する。
【0066】したがって、樹脂圧力により基材フィルム
をキャビティ形成面に充分に押し付けながら、キャビテ
ィ形成面と接する基材フィルムの表面をキャビティ形成
面から伝わる熱により軟化させ、キャビティ形成面の表
面形状に沿って密着させるため、最表面層である基材フ
ィルム表面にインサート成形で用いたキャビティ形成面
の表面形状が正確に写し取られているインサート成形品
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインサート成形品の製造方法にお
ける金属キャビティの表面温度の推移の一例を示すグラ
フである。
【図2】ビカット針込み試験を説明する図である。
【図3】本発明において用いるインサート成形用シート
のインサート成形前後の表面状態変化の一実施例を示す
断面図である。
【図4】本発明において用いるインサート成形用シート
のインサート成形前後の表面状態変化の一実施例を示す
断面図である。
【図5】本発明において用いるインサート成形用シート
のインサート成形前後の表面状態変化の一実施例を示す
断面図である。
【図6】本発明に係るインサート成形品の製造方法の一
実施例の一工程を示す断面図である。
【図7】本発明に係るインサート成形品の製造方法の一
実施例の一工程を示す断面図である。
【図8】本発明に係るインサート成形品の製造方法の一
実施例の一工程を示す断面図である。
【図9】本発明に係るインサート成形品の製造方法の一
実施例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明に係るインサート成形品の製造方法の
一実施例の一工程を示す断面図である。
【図11】樹脂圧力の測定方法を示す断面図である。
【図12】従来技術におけるインサート成形用シートの
インサート成形前後の表面状態変化の一実施例を示す断
面図である。
【符号の説明】
1 インサート成形用シート 2 基材フィルム 3 絵柄層 31 金属薄膜層 32 第1絵柄層 33 第2絵柄層 34 第3絵柄層 4 接着層 5 アンカー層 6 裏打ちシート 7 樹脂成形品 8 インサート成形品 9 フィルム成膜時の表面 10 可動型 11 固定型 12 クランプ部材 13 真空吸引孔 14 キャビティ形成面 15 加熱板 16 射出成形樹脂 17 ゲート部 18 鏡面 19 表面シボ 20 圧力センサー 21 埋め込みピン 22 金型内壁面 23 外部処理装置 24 針 25 分銅 26 キャビティ

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも絵柄層と該絵柄層を被覆し
    て保護する機能を持つ基材フィルムとから構成されるイ
    ンサート成形用シートが樹脂成形品の表面に一体化接着
    されたインサート成形品であって、JIS K 710
    5の測定方法におけるインサート成形品表面の60°反
    射表面光沢度をGとし、インサート成形前に測定した
    インサート成形用シートの基材フィルム表面の60°反
    射表面光沢度をGとしたとき、G×(G−G
    /100≧1.2となるように、最表面層である基材フ
    ィルム表面にインサート成形で用いた金型のキャビティ
    形成面の表面形状が正確に写し取られていることを特徴
    とするインサート成形品。
  2. 【請求項2】 少なくとも絵柄層と該絵柄層を被覆し
    て保護する機能を持つ基材フィルムとから構成されるイ
    ンサート成形用シートが樹脂成形品の表面に一体化接着
    されたインサート成形品であって、JIS K 710
    5の測定方法におけるインサート成形品表面のヘイズ値
    をH(%)とし、インサート成形前に測定したインサ
    ート成形用シートの基材フィルム表面のヘイズ値をH
    (%)としたとき、(H−H)/H≧0.05と
    なるように、最表面層である基材フィルム表面にインサ
    ート成形で用いた金型のキャビティ形成面の表面形状が
    正確に写し取られていることを特徴とするインサート成
    形品。
  3. 【請求項3】 少なくとも絵柄層と該絵柄層を被覆し
    て保護する機能を持つ基材フィルムとから構成されるイ
    ンサート成形用シートが樹脂成形品の表面に一体化接着
    されたインサート成形品であって、凹凸の深さh(μ
    m)と巾w(μm)の比h/wが0.006〜0.5と
    なるように、最表面層である基材フィルム表面にインサ
    ート成形で用いた金型のキャビティ形成面の表面形状が
    正確に写し取られていることを特徴とするインサート成
    形品。
  4. 【請求項4】 上記基材フィルムの材質が、塩化ビニ
    ル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエス
    テル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂か
    ら選ばれた少なくとも一つの透明な樹脂である請求項1
    〜3のいずれかに記載のインサート成形品。
  5. 【請求項5】 少なくとも絵柄層と該絵柄層を被覆し
    て保護する機能を持つ基材フィルムとから構成されるイ
    ンサート成形用シートを用い、所定の表面形状に加工さ
    れたキャビティ形成面を有する射出成形用の金型内にイ
    ンサート成形用シートを挿入し、型閉め後、溶融状態の
    射出成形樹脂をキャビティ内に注入し、射出成形樹脂を
    固化させることによって、樹脂成形品を形成すると同時
    にその表面にインサート成形用シートを一体化接着さ
    せ、型開き後にインサート成形品を金型から取りだすイ
    ンサート成形品の製造方法において、射出成形樹脂の金
    型内への注入開始前におけるキャビティ形成面の表面温
    度T がインサート成形品の最表面層となる基材フィル
    ムの軟化点Tよりも5℃以上低く、射出成形樹脂のキ
    ャビティ内への注入開始時から射出成形樹脂が固化する
    時までのいずれかの時点におけるキャビティ形成面の最
    高表面温度Tmaxがインサート成形品の最表面層とな
    る基材フィルムの軟化点Tよりも10℃以上高くな
    り、射出成形樹脂の樹脂圧力が13MPa 以上である
    成形条件で成形することにより、請求項1〜4のいずれ
    かのインサート成形品を得ることを特徴とするインサー
    ト成形品の製造方法。
  6. 【請求項6】 キャビティ形成面の上記最高表面温度
    maxがインサート成形品の最表面層となる基材フィ
    ルムの軟化点Tよりも20℃以上高くなり、射出成形
    樹脂が固化した後、型開きした時点におけるキャビティ
    形成面の表面温度Tがインサート成形品の最表面層と
    なる基材フィルムの軟化点Tよりも20℃以上低くな
    る請求項5記載のインサート成形品の製造方法。
  7. 【請求項7】 射出成形樹脂の樹脂圧力が17MPa
    以上である請求項5または請求項6のいずれかに記載の
    インサート成形品の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記基材フィルムの材質が、塩化ビニ
    ル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエス
    テル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂か
    ら選ばれた少なくとも一つの透明な樹脂である請求項5
    〜7のいずれかに記載のインサート成形品の製造方法。
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