JP2002003506A - 芳香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物の製造方法およびその原料単量体 - Google Patents

芳香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物の製造方法およびその原料単量体

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JP2002003506A
JP2002003506A JP2000190498A JP2000190498A JP2002003506A JP 2002003506 A JP2002003506 A JP 2002003506A JP 2000190498 A JP2000190498 A JP 2000190498A JP 2000190498 A JP2000190498 A JP 2000190498A JP 2002003506 A JP2002003506 A JP 2002003506A
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vinyl polymer
polymer
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cycloalkene
aromatic vinyl
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JP2000190498A
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Tsutomu Nagamune
勉 長宗
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Zeon Corp
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Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分子量分布が狭くて水素添加率が極めて高い
芳香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビ
ニル重合体水素添加物を安定して製造する方法を提供す
ること。 【解決手段】 芳香族ビニル化合物またはシクロアルケ
ンビニル化合物の一部もしくは全部について重合禁止剤
除去および水分を除去し、次いでこれを重合して芳香族
ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体を得、
該重合体を水素添加することを特徴とする芳香族ビニル
重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水
素添加物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族ビニル重合
体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添
加物の製造方法およびその原料単量体に関し、詳しく
は、特定の単量体を用いて得られた芳香族ビニル重合体
またはシクロアルケンビニル重合体を使用して極めて高
い水素添加率を実現できる、芳香族ビニル重合体水素添
加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物の製
造方法およびその原料単量体に関する。
【0002】
【従来の技術】レンズや光ディスクなどの光学材料の成
形に使用されるプラスチック素材としてのポリマーが備
えるべき特性としては、透明性、低吸水性、成形性、機
械的強度、耐薬品性、耐熱性などに加えて複屈折の小さ
いことが挙げられる。ポリスチレンはこれらのほとんど
の特性に恵まれた優れた材料ではあるが、複屈折を生じ
易い欠点を有している。
【0003】複屈折とは、材料の光学的異方性に起因し
て、入射光が境界面で2以上の方向に屈折する現象であ
る。ポリマーの光学的異方性は、主として分子構造の繰
り返し単位の主分極率差の大きさに依存する。ベンゼン
環、シクロペンテン環などは、環の平面方向と垂直方向
の分極率の差が大きい。そのため、これら不飽和環を置
換基にもつビニル単量体の重合体は複屈折を起こしやす
い。
【0004】この対策として、特開平1−1706号公
報、特開平1−132603号公報、特開平4−750
01号公報などには、ポリスチレンに対して、水素添加
触媒の存在下でベンゼン環を水素添加することにより前
記の分極率差を減少させる試みが開示さされている。ま
た、特開昭63−43910号公報には、ビニルシクロ
ヘキサン系重合体80〜100重量%とビニル芳香族系
重合体0〜20重量%とを含有する、光線透過率85%
以上、吸水率0.1重量%以下、および複屈折50nm
以下の非晶性熱可塑性樹脂からなる光ディスク基板が開
示されている。同公報はビニルシクロヘキサン系重合体
の製造法として、ビニル芳香族系重合体を水素化するこ
とを教示している。これら芳香族環の水素添加により、
スチレン系重合体の複屈折についてはかなり低減するよ
うになった。
【0005】しかし、これらの開示技術によっても、9
6%以上の極めて高い水素添加率を安定に実現すること
は困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の状況に鑑み、本
発明は、分子量分布が狭くて水素添加率が極めて高い芳
香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニ
ル重合体水素添加物を安定して製造することを目的とし
てなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために鋭意研究した結果、特定の単量体を用い
て得られた芳香族ビニル重合体またはシクロアルケンビ
ニル重合体を使用して水素添加反応を行えば上記目的が
達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を
完成するに至った。
【0008】かくして本発明によれば、(1)芳香族ビ
ニル化合物またはシクロアルケンビニル化合物の一部も
しくは全部から重合禁止剤除去および水分除去を行い、
次いでこれを重合して芳香族ビニル重合体またはシクロ
アルケンビニル重合体を得、該重合体を水素添加するこ
とを特徴とする芳香族ビニル重合体水素添加物またはシ
クロアルケンビニル重合体水素添加物の製造方法、
(2)重合禁止剤濃度が100ppm以下で、かつ、水
分濃度が50ppm以下である芳香族ビニル化合物また
はシクロアルケンビニル化合物を重合して芳香族ビニル
重合体またはシクロアルケンビニル重合体を得、該重合
体を水素添加することを特徴とする芳香族ビニル重合体
水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加
物の製造方法、および、(3)重合禁止剤濃度が100
ppm以下で、かつ、水分濃度が50ppm以下である
芳香族ビニル化合物またはシクロアルケンビニル化合
物、が提供される。
【0009】また、好ましい態様として、(4)前記芳
香族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体
が、分子量500,000以上の成分が1重量%以下で
ある重量基準分子量分布を有することを特徴とする上記
(1)記載の芳香族ビニル重合体水素添加物またはシク
ロアルケンビニル重合体水素添加物の製造方法、が提供
される。
【0010】本発明方法は、重合禁止剤および水分の含
有量をそれぞれ特定値以下に抑えた芳香族ビニル化合物
またはシクロアルケンビニル化合物を重合して得られた
芳香族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体
を水素添加することを要旨とするものである。一般に、
単量体である化合物中には前記特定値を超える量の重合
禁止剤が添加されていて、その禁止作用にうち勝つ量の
重合触媒を用いればわずかな誘導期間が見られるだけで
問題なく重合が行えるとされている。しかし、本発明方
法は、単量体について重合禁止剤除去操作を行って特定
値以下の重合禁止剤濃度とし、また、単量体中の水分に
対しても除去操作を行ってから重合するものである。こ
うして得た重合体を水素添加することにより、従来より
少量の水素添加触媒でも極めて高い水素添加率を有する
芳香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビ
ニル重合体水素添加物を安定して製造できるのである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
【0012】(芳香族ビニル化合物およびシクロアルケ
ンビニル化合物)芳香族ビニル化合物としては、芳香環
を有し、かつ、重合性のビニル基を有する化合物であれ
ば格別な限定はない。芳香族ビニル化合物の例として
は、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレ
ン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレ
ン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3
−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメ
チルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−
t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチ
レン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフ
ルオロスチレンなどを挙げることができる。これらの中
でも、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチ
レン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレ
ン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3
−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメ
チルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−
t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチ
レンなどが好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、
α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソ
プロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチ
ルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレ
ン、4−t−ブチルスチレンなどが特に好ましい。
【0013】シクロアルケンビニル化合物としては、二
重結合を持つ炭素数5〜8の脂肪族環を有し、かつ、重
合性のビニル基を有する化合物であれば格別な限定はな
い。脂肪族環には炭素数1〜4のアルキル基またはハロ
ゲン原子基を置換基に持つことができる。
【0014】シクロアルケンビニル化合物の例として
は、2−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−ビニ
ルペンテン、3−ビニルシクロペンテン、3−t−ブチ
ル−4−ビニルペンテンなどのシクロペンテンビニル化
合物;4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニル
ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロ
ヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルビニルシク
ロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、
2−メチル−4−イソプロペニルビニルシクロヘキセン
などのシクロヘキセンビニル化合物;2−ビニルシクロ
ヘプテン、3−ビニルシクロヘプテン、4−ビニルシク
ロヘプテン、3−メチル−6−ビニルシクロヘプテン、
4−エチル−6−ビニルシクロヘプテン、3−t−ブチ
ル−5−ビニルシクロヘプテンなどのシクロヘプテンビ
ニル化合物;2−ビニルシクロオクテン、3―ビニルシ
クロオクテン、4−ビニルシクロオクテン、2−メチル
−5−ビニルシクロオクテン、4−エチル−6−ビニル
シクロオクテン、3−t−ブチル−7−ビニルシクロオ
クテンなどのシクロオクテンビニル化合物などが挙げら
れる。これらの中でもシクロペンテンビニル化合物およ
びシクロヘキセンビニル化合物が好ましく、シクロヘキ
センビニル化合物が特に好ましい。
【0015】これらの化合物の中でも芳香族ビニル化合
物、シクロペンテンビニル化合物およびシクロヘキセン
ビニル化合物が好ましく、芳香族ビニル化合物およびシ
クロヘキセンビニル化合物がより好ましい。これらは、
それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いる
ことができる。
【0016】本発明において芳香族ビニル重合体または
シクロアルケンビニル重合体は、重合体中の繰り返し単
位が50重量%以下となる範囲で、芳香族ビニル化合物
またはシクロアルケンビニル化合物と共重合可能な単量
体との共重合体であっても良い。共重合可能な単量体と
しては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合な
どの重合法により共重合可能なものであれば特に限定は
ない。
【0017】芳香族ビニル化合物またはシクロアルケン
ビニル化合物と共重合可能な単量体(共単量体)の例と
しては、エチレン、プロピレン、イソブテン、2−メチ
ル−1−ブテン、2−メチルー1−ペンテン、4−メチ
ル−1−ペンテンなどのα−オレフィン系単量体;シク
ロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−
メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジ
エン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−ジメチ
ルシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエン系単量
体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、
ジシクロペンタジエンなどの環状オレフィン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、フラ
ン、チオフェン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエ
ン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、
α−クロロアクリロニトリルなどのニトリル系単量体;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル
酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、
アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブ
チルなどのアクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、
メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系単
量体;フェニルマレイミド;エチレンオキサイド、プロ
ピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、トリオキ
サン、ジオキサン、シクロヘキセンオキサイド、スチレ
ンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラ
ンなどの環状エーテル系単量体;メチルビニルエーテ
ル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニル−2−ピロリ
ドンなどの複素環含有ビニル化合物系単量体などが挙げ
られる。
【0018】(単量体からの重合禁止剤および水分の除
去)これらの単量体が生成されてから重合反応に供され
るまでには、一般的には、貯蔵や輸送に、ある一定の期
間を必要とする。これらの単量体が長期間貯蔵される
と、あるいは比較的短期間であっても夏期など高温下で
貯蔵されると、熱重合などにより単量体中に重合体が生
成する。重合体の生成量が、例えppm単位の少量であ
っても、その単量体を用いて重合反応を行って得られる
重合体には前記生成重合体が核となった超高分子量の重
合体が含有され、それがしばしば重合体の成形品にフィ
ッシュアイ、粒状突起、筋引き、印刷ムラなどの種々の
品質不良を引き起こす。そのため、単量体には、一般
に、重合禁止剤が一定量添加されている。
【0019】単量体中に添加される重合禁止剤として
は、例えば、p−t−ブチルカテコール、p−メチルカ
テコールなどのカテコール系化合物;ヒドロキノン、メ
トキシヒドロキノンなどのヒドロキノン系化合物;ピラ
ジン、パラチアジン、1,3,5−トリアジン、フェノ
チアジンなどのアジン環化合物;1,2−ジフェニルヒ
ドラジン、ジフェニルピクリルヒドラジンなどのヒドラ
ジン系化合物;ニトロフェノール、ビスフェノールAな
どのフェノール系化合物などが挙げられる。重合禁止剤
が添加される量は、通常、300〜1000ppmであ
る。
【0020】芳香族ビニル化合物またはシクロアルケン
ビニル化合物および必要に応じてこれらの共単量体を重
合反応に使用するときは、一般に、単量体から重合禁止
剤を除去するための蒸留などの操作をすることなく、重
合禁止剤の禁止作用に打ち勝つ程度の余分の重合触媒を
用いて重合が行われている。それは、蒸留プラントを建
設してこれを運転するコストを省くためである。即ち、
一般に、重合禁止剤を除去しなくても、重合触媒を増量
することにより、重合反応に若干の誘導期間が見られる
だけで、重合反応速度や生成する重合体の品質は、重合
禁止剤を除去して重合する場合と変わらないとされてい
る。
【0021】しかし、本発明においては、単量体中の重
合禁止剤を好ましくは100ppm以下に、更に好まし
くは50ppm以下に低減して重合反応に使用する。従
って、単量体中の重合禁止剤を低減するための操作を行
うことが好ましい。単量体中の重合禁止剤濃度が過度に
大きいと、単に重合転化率が低下するばかりでなく、高
重合度の重合体が生成しやすくなり、また、重合体の分
子量分布が広くなり、これらが重合体を水素添加反応に
供した際に水素添加率を引低下させる原因となるので好
ましくない。
【0022】また、本発明においては、単量体中の水分
濃度を好ましくは50ppm以下に、更に好ましくは2
0ppm以下に低減して重合反応に使用する。従って、
単量体中の水分を低減するための操作を行うことが好ま
しい。単量体中の水分濃度が過度に大きいと、単に重合
反応の阻害作用が起きるばかりでなく、高重合度の重合
体が生成しやすくなり、また、重合体の分子量分布が広
くなり、これらが重合体に水素添加する際に水素添加率
を低下させる原因となるので好ましくない。
【0023】本発明において、単量体中の重合禁止剤や
水分を低減するための方法としては、蒸留法、吸着法、
洗浄法などがあり、特に限定されない。また、これらを
組み合わせて用いてもよい。
【0024】蒸留法は、単量体から重合禁止剤と水分と
を沸点の差を利用して蒸留により分離する方法である。
蒸留方法は特に限定されず、公知の方法が使用される。
充填塔、棚段塔などの形式の蒸留塔の塔頂には凝縮器を
設け、凝縮した低沸点物の液の一部を塔内に還流して流
下させ、上昇する蒸気と接触させる精留方式であると留
出液の純度を高くできるので好ましい。例えば、スチレ
ン(常圧での沸点145℃)中からp−t−ブチルカテ
コール(沸点270℃)と水(沸点100℃)を除去す
るには、蒸留塔2基使用して第一の蒸留塔で低沸点の水
を塔頂から留出させ、凝縮させた液から油水分離で水を
除いて油層を還流し、第二の蒸留塔でスチレンを蒸発、
凝縮して留出し、高沸点物のp−t−ブチルカテコール
(以後、TBCと略記する。)から分けることができ
る。また、蒸留塔1基で塔頂で前記と同様にして水を除
き、塔底でTBCの濃縮したスチレンを抜きつつ、精製
されたスチレンを塔央からサイドカットする方法でもよ
い。
【0025】吸着法は、単量体を吸着剤に接触させて単
量体中の混入物質を吸着除去する方法であり、接触手段
としては、攪拌槽であっても充填塔であってもよい。吸
着剤は特に限定されない。活性炭、活性アルミナ、シリ
カゲル、酸化チタン、酸性白土などの重合禁止剤と水分
の両方を吸着する吸着剤と、モレキュラーシーブスのよ
うに水のみ吸着する吸着剤とがあるので、適宜使い分け
る。
【0026】洗浄法は、単量体を洗浄液に接触させて禁
止剤を抽出して除く方法で、洗浄液との接触手段として
は、攪拌槽であっても充填塔であってもよい。例えば、
スチレンを水または5〜20重量%の苛性アルカリ水溶
液に通すことにより、TBCを抽出、除去するなどの方
法である。この場合、その後にモレキュラーシーブで処
理するなどしてスチレン中の水分濃度を低減することが
好ましい。
【0027】(芳香族ビニル重合体またはシクロアルケ
ンビニル重合体の調製)本発明の芳香族ビニル重合体水
素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物
の製造方法においては、重合禁止剤濃度が100ppm
以下で、かつ、水分濃度が50ppm以下である芳香族
ビニル化合物またはシクロアルケンビニル化合物を用い
て重合し、芳香族ビニル重合体またはシクロアルケンビ
ニル重合体を調製する。
【0028】芳香族ビニル化合物またはシクロアルケン
ビニル化合物の重合反応の様式はラジカル重合、アニオ
ン重合、カチオン重合などの公知の方法のいずれでもよ
く、また、懸濁重合、溶液重合、塊状重合のいずれでも
よい。
【0029】ラジカル重合を行う場合は、重合触媒とし
てアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシ
ドのごときラジカル開始剤を使用することができ、カチ
オン重合を行う場合は、重合触媒としてBF、BF
などを用いることができる。
【0030】アニオン重合は、具体的には有機溶媒中
で、重合触媒として有機アルカリ金属を使用する。所望
により、分子量分布の狭い重合体を得るためにルイス塩
基を添加する。
【0031】本発明では芳香族ビニル化合物またはシク
ロアルケンビニル化合物の重合反応の後に芳香族ビニル
重合体またはシクロアルケンビニル重合体の水素添加反
応を続けて行うので、有機溶媒中で重合する溶液重合が
工程を連続して行うのに好都合である。また、複屈折の
より小さな重合体として好ましい、分子量分布のより狭
い重合体を得るためにはアニオン重合が好ましい。
【0032】有機溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ま
しく、重合触媒を害さないもので、例えば、n−ブタ
ン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−
ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロ
ペンタン、シクロヘキサン、デカリンなどの脂環式炭化
水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;テト
ラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類などが挙
げられる。これらの中でも、脂肪族炭化水素や脂環式炭
化水素は重合反応後の水素添加反応の溶媒としても使え
るので好ましい。これら有機溶媒はそれぞれ単独で、ま
たは2種以上を組み合わせて使用することができる。有
機溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜40重量
%、好ましくは10〜30重量%になる量である。
【0033】有機アルカリ金属としては、n−ブチルリ
チウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウ
ム、ヘキシルリチウム。フェニルリチウム、スチルベン
リチウムなどのモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタ
ン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−
エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼ
ンなどの多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフ
タレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これら
の中でも、有機リチウム化合物が好ましく、モノ有機リ
チウムが特に好ましい。これらの有機アルカリ金属は、
単独、または2種以上を組み合わせて使用することがで
きる。有機アルカリ金属の使用量は、単量体100重量
部あたり、通常、0.05〜100ミリモル、好ましく
は0.10〜50ミリモル、より好ましくは0.15〜
20ミリモルである。
【0034】ルイス塩基としては、ジエチルエーテル、
ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジベンジル
エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物:
テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、ピ
リジンなどの第3級アミン化合物;カリウム−t−アミ
ルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアル
キル金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン
などのホスフィン化合物などが挙げられる。これらの中
でも特にエーテル化合物が分子量分布の狭い重合体を生
成するので好ましい。これらのルイス塩基化合物は、単
独で、または2種以上組み合わせて用いることができ
る。ルイス塩基化合物の使用量は、有機アルカリ金属に
対して、通常、0.001〜10.0ミリモル、好まし
くは0.01〜5.0ミリモル、より好ましくは0.1
〜2.0ミリモルである。
【0035】重合反応は、等温、断熱のいずれでもよ
く、通常、−70〜150℃、好ましくは−50〜12
0℃で行う。重合時間は、通常、0.01〜20時間、
好ましくは0.1〜10時間である。
【0036】重合反応は、重合添加率が高くなって単量
体がほとんど無くなれば停止するが、重合反応後の溶液
のゲル化を防ぐ目的で重合触媒の不活性化剤を添加して
もよい。重合触媒の不活性化剤としては、水;メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール、1,2−ブ
タンジオール、グリセリンなどのアルコール類;ギ酸、
酢酸、クエン酸、フタル酸などのカルボン酸類;フェノ
ル、クレゾールなどのフェノール類などが挙げられる。
【0037】重合反応後は、重合反応溶液から芳香族ビ
ニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体を分離回
収して芳香族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル
重合体の溶液を調製して水素添加反応を行ってもよい
が、溶液重合の溶媒を水素添加反応の溶媒と共通にして
重合後に重合体を分離回収することなく水素添加反応に
移行することが好ましい。重合反応がアニオン重合の溶
液重合であると、水素添加反応にそのまま移行できる利
点があるほかに、水素添加反応に入る前に重合触媒を除
去して水素添加反応率の向上を図ることができる利点が
ある。前記溶液重合反応後の重合触媒の除去法として
は、活性アルミナなどの吸着剤を添加して加温状態で攪
拌して吸着させて濾別する方法、イソプロピルアルコー
ルなどを少量添加して重合触媒を沈殿させて濾別する方
法などがある。
【0038】芳香族ビニル重合体またはシクロアルケン
ビニル重合体の分子量は、特に限定されないが、テトラ
ヒドロフラン溶液のゲル・パーミエーション・クロマト
グラフ(GPC)法で測定した標準ポリスチレン換算の
重量平均分子量(Mw)で、通常、10,000〜30
0,000、好ましくは50,000〜280,00
0、より好ましくは100,000〜250,000、
特に好ましくは150,000〜230,000の範囲
である。また、数平均分子量(Mn)も標準ポリスチレ
ンの換算値で表示する。重量平均分子量が過度に大きい
と水素添加率の低下を惹起するおそれがあり、逆に、重
量平均分子量が過度に小さいと成形品の機械的強度を悪
化させる可能性がある。
【0039】分子量分布の広さの指標である重量平均分
子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/M
n)は、通常、1.25以下、好ましくは1.20以
下、より好ましくは1.15以下である。Mw/Mn値
が過度に大きいと、水素添加率を悪化させ、また、ガラ
ス転移温度(Tg)が低下して耐熱性を悪化させる可能
性がある。また、重量基準の分子量分布における分子量
50万以上の超高分子の重合体の割合は、通常、1.0
重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、更に好まし
くは0.5重量%以下である。超高分子量重合体の割合
が過度に大きいと、水素添加率を引き下げるおそれがあ
る。
【0040】(水素添加反応)本発明においては、芳香
族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体に対
して水素添加反応を行う。芳香族ビニル重合体またはシ
クロアルケンビニル重合体の水素添加反応の方法は、特
に制限はなく、水素添加触媒を用いて常法に従って行う
ことができる。
【0041】水素添加触媒としては、ニッケル、コバル
ト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニ
ウムおよびレニウムから選ばれる少なくとも1種の元素
を含有するものであり、ニッケル触媒が重合体の分子量
分布が狭い、即ち、重量平均分子量/数平均分子量比M
w/Mnが1に近い水素添加物を与えるので好ましい。
水素添加触媒は不均一系触媒、均一系触媒のいずれでも
よい。不均一系触媒は、金属もしくは金属化合物のまま
か、または担体に担持させて用いることができる。
【0042】担体としては、活性炭、けいそう土、マグ
ネシア、シリカ、アルミナ、シリカ−マグネシア、シリ
カ−ジルコニア、けいそう土−ジルコニア、アルミナ−
ジルコニアなどが挙げられる。担体上の上記金属の担持
量は、通常、0.01〜80重量%、好ましくは0.0
5〜60重量%である。
【0043】均一系触媒としては、ニッケル、コバル
ト、チタンまたは鉄などの金属化合物と、有機アルミニ
ウムや有機リチウムのような有機金属化合物とを組み合
わせた触媒;ロジウム、パラジウム、、ルテニウム、レ
ニウムなどの有機金属錯体などを用いることができる。
【0044】上記金属化合物としては、各金属のアセチ
ルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化
合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物などが用い
られる。有機アルミニウムとしては、トリエチルアルミ
ニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルア
ルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルア
ルミニウムジクロリドなどのハロゲン化アルキルアルミ
ニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの
水素化アルキルアルミニウムなどが使用される。
【0045】有機金属錯体としては、上記各金属のγ−
ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリ
フェニルホスフィン)錯体、ヒドリッド−クロロ−トリ
ス(トリフェニルホスフィン)錯体などが挙げられる。
【0046】これらの水素添加触媒は、それぞれ単独
で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
水素添加触媒の使用量は、芳香族ビニル重合体またはシ
クロアルケンビニル重合体100重量部当たり、通常、
0.03〜50重量部、好ましくは0,16〜33重量
部、より好ましくは0.33〜15重量部である。
【0047】水素添加反応に用いる有機溶媒としては、
前述の溶液重合に用いた溶媒の他に、アルコール類も挙
げられる。これらの有機溶媒は、単独でも、2種以上組
み合わせて用いることもできる。有機溶媒の使用量は、
芳香族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体
の濃度が、通常、1〜50重量%、好ましくは3〜40
重量%となる量である。
【0048】芳香族ビニル重合体またはシクロアルケン
ビニル重合体の水素添加反応は、水素を水素添加反応液
中に導入することによって行われ、例えば、重合体の有
機溶媒溶液の撹拌下にて導入された水素を充分に重合体
と接触させる方法が好ましい。
【0049】水素添加反応の温度は、通常、10〜25
0℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80
〜180℃である。水素圧力は、通常、1〜30MP
a、好ましくは0.5〜25MPa、より好ましくは1
〜20MPaである。
【0050】水素添加反応後は、反応溶液に濾過助剤を
添加して、水素添加触媒および濾過助剤を濾別して次の
水素添加反応での再利用に供することが好ましい。
【0051】濾過助剤は濾過される物質が濾材に目詰ま
りしにくくするために用いる、化学的に不活性な多孔質
の粒子である。濾過助剤としては、けいそう土、シリ
カ、合成ゼオライト、パーライト、ラジオライトなどの
不活性で溶剤に溶けない粉状物が適している。濾過助剤
の使い方としては、濾過する懸濁液に予め添加するボデ
ィフィード法、濾材に濾過助剤のベッドを形成しておい
てから濾過するプリコート法などがあるが、ボディフィ
ード法が好ましい。濾過助剤の使用量は、水素添加触媒
と同程度とすることが好ましい。
【0052】芳香族ビニル重合体またはシクロアルケン
ビニル重合体についての次のバッチ(回分)の水素添加
反応に際しては、回収された水素添加触媒を濾過助剤が
混入した状態で、水素添加触媒として使用することが触
媒の使用量の節約になるので好ましい。必要に応じて、
回収された水素添加触媒に加えて新たな水素添加触媒や
濾過助剤を補充してもよい。原因は明確でないが、濾過
助剤が混入したままの方が水素添加率の低下を防止する
ことができる。
【0053】(水素添加物の回収・乾燥)水素添加触媒
および濾過助剤を濾別して得た芳香族ビニル重合体水素
添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物の
有機溶媒溶液は、例えば、外部から異物が混入しないよ
うに密閉系で、有機溶媒を主とする揮発成分を除去して
回収することができる。
【0054】揮発成分の除去方法としては、凝固法や直
接乾燥法など公知の方法を採用することができる。
【0055】凝固法は、水素添加物の溶液を芳香族ビニ
ル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体
水素添加物の貧溶媒と混合することにより、水素添加物
成分を析出させる方法であり、貧溶媒の種類は芳香族ビ
ニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合
体水素添加物の種類により変化するが、たとえばエチル
アルコール、n−プロピルアルコールもしくはイソプロ
ピルアルコールなどのアルコール類;アセトンもしくは
メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルもしく
は酢酸ブチルなどのエステル類などの極性溶媒を挙げる
ことができる。
【0056】凝固して得られた粒子状の成分は、たとえ
ば真空中または窒素中若しくは空気中で加熱して乾燥さ
せて粉末状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機か
ら押し出してペレット状にして成形加工に供することが
好ましい。
【0057】直接乾燥法は、溶液を減圧下加熱して溶媒
を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸
発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リ
アクタ装置などの公知の装置を用いて行うことができ
る。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限
定されない。
【0058】こうして製造された芳香族ビニル重合体水
素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素添加物
の不飽和環の水素添加率は、通常、95%以上、好まし
くは99%以上、より好ましくは99.5%以上水素添
加されることが望ましい。水素添加率が過度に小さいと
複屈折を十分に小さくし得ないおそれがあるので好まし
くない。不飽和環の水素添加率は、常法により H−
NMR測定法により求めることができる。
【0059】芳香族ビニル重合体水素添加物またはシク
ロアルケンビニル重合体水素添加物の分子量は、特に限
定されないが、水素添加前の重合体の場合と同様にテト
ラヒドロフラン溶液のゲル・パーミエーション・クロマ
トグラフ(GPC)法で測定した標準ポリスチレン換算
のMwで表示し、通常、10,000〜250,00
0、好ましくは30,000〜200,000、より好
ましくは50,000〜170,000の範囲である。
Mnも標準ポリスチレンの換算値で表示する。Mw/M
nは、通常、2.0以下、好ましくは1.7以下、より
好ましくは1.5以下である。Mw/Mn値が過度に大
きいと、成形品の機械的強度および耐熱性を悪化させる
可能性がある。
【0060】(芳香族ビニル重合体水素添加物またはシ
クロアルケンビニル重合体水素添加物の用途)本発明に
より得られた芳香族ビニル重合体水素添加物またはシク
ロアルケンビニル重合体水素添加物は、透明性、低吸水
性、成形性、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などに加え
て複屈折の小さい特徴があるので、プラスチックレンズ
や光ディスクなどの光学材料に好適である。
【0061】このような光学材料の成形のためには、芳
香族ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニ
ル重合体水素添加物を必須成分とし、必要に応じて通常
プラスチックレンズなどに使用される他の樹脂成分を配
合する。他の樹脂成分としては、ポリメチルメタクリレ
ート、ポリカーボネート、ポリ4−メチル−1ペンテ
ン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹
脂)、ノルボルネン環含有脂環族単量体付加重合体、ノ
ルボルネン環含有脂環族単量体開環重合体などがある。
【0062】また、熱可塑性樹脂材料で通常用いられて
いる配合剤が格別な制限なく添加することができる。そ
のような配合剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線
吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの
着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、難燃
剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤などの配合剤
が挙げられる。
【0063】これらの配合剤を添加して調製した芳香族
ビニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重
合体水素添加物組成物は、例えば押出機によりペレット
化して成形品の加工に供する。成形品の加工法として
は、例えば、プラスチックレンズや光ディスクを成形す
る方法としては、射出成形法、プレス成形法、押出成形
法などが適用される。また、偏光フィルムや位相差フィ
ルムを成形する方法としては、射出成形、インフレーシ
ョン成形、真空成形、キャスト成形などが用いられる。
【0064】こうして、本発明により得られた芳香族ビ
ニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合
体水素添加物は次のような光学材料を初めとする各種の
成形品となって利用される。
【0065】例えば、光学レンズ、光ディスク、プリズ
ム、光拡散板、光カード、光ファイバー、光学ミラー、
液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィ
ルムなどの光学材料;液体薬品容器、アンプル、バイア
ル、輸液用バッグ、密封薬袋、プレス・スルー・パッケ
ージ、固体薬品容器、点眼薬容器などの液体、粉体、ま
たは固体薬品の容器;注射器、プレフィルドシリンジ、
医療用輸液チューブなどの医療器具および医療用器材;
液晶基板、光メモリーなどが挙げられる。
【0066】
【実施例】以下に、参考例、実施例および比較例を挙げ
て、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されない。例中の部数および%は、特記しない限り重
量基準である。なお、各種物性の測定法は次のとおりで
ある。
【0067】(1)単量体中の重合禁止剤の定性・定量
分析は、赤外分光法により、また、JIS K 672
7に準じて行った。
【0068】(2)単量体溶存水分は、カールフィッシ
ャー法に依った。
【0069】(3)水素添加前または水素添加後の重合
体の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、テ
トラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエ
ーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリ
スチレン換算値として測定した。分子量50万以上の重
合体の割合は重量基準の重合度分布から求めた。
【0070】(4)芳香族ビニル重合体水素添加物また
はシクロアルケンビニル重合体水素添加物の水素添加率
(核水素添加率)は、H−NMRの測定より算出し
た。
【0071】(5)重合添加率は、ガスクロマトグラフ
ィーの測定に基づき算出した。
【0072】実施例1 (単量体処理)TBCが300ppm、水分が60pp
m存在するスチレン100部を、直径2〜4mmの活性
アルミナビーズ〔NKKHD−24HD、住友化学工業
(株)製〕が25部充填されている充填塔に通した。こ
れにより、スチレン中のTBC濃度は10ppm、水分
濃度は8ppmになった。
【0073】(重合)十分に乾燥し、窒素置換した、攪
拌装置を備えた反応容器に、脱水シクロヘキサン300
部、ジブチルエーテル0.2部を仕込み、nーブチルリ
チウム溶液(15%含有n−ヘキサン溶液)0.3部を
添加して攪拌しながら温度60℃にして、上記処理後の
スチレンを毎時25部連続的に反応器内に供給した。ス
チレン供給終了後さらに1時間重合を行った後、イソプ
ロピルアルコール0.1部を添加して重合を停止させ
た。重合転化率は100%であり、Mwは200,00
0、Mnは180,000、Mw/Mnは1.11で、
重量基準分子量500,000以上の重合体の割合は
0.5%であった。
【0074】(水素添加)得られたスチレン重合体反応
溶液に、水素添加触媒としてニッケル−シリカ担持触媒
〔E22U、日揮化学(株)製〕を20kg加え、水素
ガス圧を4.5MPaとして温度160℃で6時間反応
を行った。スチレン重合体水素添加物の水素添加率は9
9.6%、Mwは130,000、Mnは104,00
0、Mw/Mnは1.25であった。
【0075】実施例2 (単量体処理)TBCが300ppm、水分が60pp
m存在するスチレンを蒸留塔1基を用いて精留した。即
ち、塔頂から留出させ、凝縮させた液をデカンターで油
水分離して水を除いて油層を還流し、塔底でTBC20
%に濃縮したスチレンを抜きつつ、塔中央部からサイド
カットして精留スチレンを得た。
【0076】精製したスチレン中のTBCは20pp
m、水は6ppmであった。
【0077】(重合および水素添加)スチレン単量体と
して精留スチレンを使用した他は実施例1と同様にして
重合反応および水素添加反応を行ってスチレン重合体水
素添加物を製造した。
【0078】重合反応の結果、重合転化率は100%、
Mwは190,000、Mnは180,000、Mw/
Mnは1.06で、重量基準分子量500,000以上
の重合体の割合は0.1%であった。
【0079】また、水素添加反応の結果、水素添加率は
99.9%、Mwは128,000、Mnは105,0
00、Mw/Mnは1.22であった。
【0080】実施例3 (単量体処理)TBCが300ppm、水分が60pp
m存在するスチレンを、攪拌機を備えた槽に10倍容の
苛性ソーダ10%水溶液と共に入れて90分間激しく混
合した後、5時間静置して油水分離した。次いで油層を
モレキュラーシーブス〔MS−3A、ユニオン昭和
(株)製〕25部が充填された吸着塔に通した。処理後
のスチレン中のTBCは15ppm、水は5ppmであ
った。
【0081】(重合および水素添加)スチレン単量体と
してこのスチレンを使用した他は実施例1と同様にして
重合反応および水素添加反応を行ってスチレン重合体水
素添加物を製造した。
【0082】重合反応の結果、重合転化率は98%、M
wは200,000、Mnは175,000、Mw/M
nは1.14で、重量基準分子量500,000以上の
重合体の割合は0.5%であった。
【0083】また、水素転化反応の結果、水素添加率は
99.2%、Mwは134,000、Mnは109,0
00、Mw/Mnは1.23であった。
【0084】比較例1 単量体処理を行わずにスチレンをそのまま用いた他は実
施例1と同様にして重合反応および水素添加反応を行っ
てスチレン重合体水素添加物を製造した。
【0085】重合反応の結果、重合転化率は90%、M
wは350,000、Mnは230,000、Mw/M
nは1.54で、重量基準分子量500,000以上の
重合体の割合は4%であった。
【0086】また、水素転化反応の結果、水素添加率は
35。0%であった。水素添加が不十分なため分子量の
測定は打ち切った。
【0087】比較例2 実施例3の単量体処理における油層のモレキュラーシー
ブス処理を省略した他は実施例3と同様に単量体処理、
重合反応および水素添加反応を行った。単量体処理後の
スチレン中のTBCは15ppm、水は200ppmで
あった。
【0088】重合反応の結果、重合転化率は86%、M
wは400,000、Mnは250,000、Mw/M
nは1.60で、重量基準分子量500,000以上の
重合体の割合は7%であった。
【0089】また、水素転化反応の結果、水素添加率は
20%であった。水素添加が不十分なため分子量の測定
は打ち切った。
【0090】比較例3 実施例1の単量体処理における吸着塔の充填材にアルミ
ナビーズに変えてモレキュラーシーブス〔MS−3A、
ユニオン昭和(株)製〕を等部数使用した他は実施例1
と同様に単量体処理、重合反応および水素添加反応を行
った。単量体処理後のスチレン中のTBCは300pp
mで不変で、水は5ppmであった。
【0091】重合反応の結果、重合転化率は92%、M
wは330,000、Mnは230,000、Mw/M
nは1.43で、重量基準分子量500,000以上の
重合体の割合は2%であった。
【0092】また、水素転化反応の結果、水素添加率は
40%であった。水素添加が不十分なため分子量の測定
は割愛した。
【0093】実施例1〜3および比較例1〜3の結果を
表1に示す。
【0094】
【表1】 本発明方法によれば、スチレン重合体はいずれも重合転
化率が98%以上であり、Mw、Mnはとも各々略同様
の値で、Mw/Mnは1.1前後の極めて1に近い値と
なって狭い分子量分布であることを示している。分子量
50万以上の重合体も0.5%以下の少量しか生成して
いない。また、これらの重合体の水素添加物は、いずれ
も迅速な反応で水素添加率99%以上と高く、Mw約1
30,000、Mw/Mnが1.2台で安定した結果に
なっている(実施例1〜3)。
【0095】しかし、重合前の単量体の重合禁止剤およ
び水の除去を行わなかった場合(比較例1)、水分は除
去しても重合禁止剤の除去を行わなかった場合(比較例
3)および重合禁止剤を除去したものの水の除去を行わ
なかった場合(比較例2)のいずれにおいても、重合転
化率は90%前後に低下し、Mwは30万以上に増加
し、またMw/Mnも増加して分子量分布が拡大した。
また、分子量50万以上の重合体割合も数%に増えて、
その結果、これらの重合体の水素添加率を大きく引き下
げている。
【0096】
【発明の効果】本発明により、分子量分布が狭くて水素
添加率が極めて高い芳香族ビニル重合体水素添加物また
はシクロアルケンビニル重合体水素添加物を安定して製
造することが可能になった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 AA05 AC05 DA02 DA03 DA04 NA01 NA10 4J100 AB02P AB03P AB04P AB08P AS15P BC21P BC22P BC23P CA01 DA22 DA36 DA37 DA47 DA62 FA27 HA03 HB02 JA32 JA33 JA35 JA36

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ビニル化合物またはシクロアルケ
    ンビニル化合物の一部もしくは全部から重合禁止剤除去
    および水分除去を行い、次いでこれを重合して芳香族ビ
    ニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体を得、該
    重合体を水素添加することを特徴とする芳香族ビニル重
    合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合体水素
    添加物の製造方法。
  2. 【請求項2】 重合禁止剤濃度が100ppm以下で、
    かつ、水分濃度が50ppm以下である芳香族ビニル化
    合物またはシクロアルケンビニル化合物を重合して芳香
    族ビニル重合体またはシクロアルケンビニル重合体を
    得、該重合体を水素添加することを特徴とする芳香族ビ
    ニル重合体水素添加物またはシクロアルケンビニル重合
    体水素添加物の製造方法。
  3. 【請求項3】 重合禁止剤濃度が100ppm以下で、
    かつ、水分濃度が50ppm以下である芳香族ビニル化
    合物またはシクロアルケンビニル化合物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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