JP3857234B2 - 改良された水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体、その製造方法およびこの共重合体を用いる光学材料などに関する。さらに詳しくは耐熱性、成形性、透明性、光学等方性、寸法安定性(低吸水性)および/または機械的物性に優れた、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体、およびそのような重合体から主としてなる光学材料などに関する。
背景技術
光ディスク、光学用レンズ、液晶表示基板等の光学材料に用いられるプラスチックには透明性の他に、光学等方性(低複屈折性)、寸法安定性、耐光性、耐候性、熱安定性等、様々な特性が要求される。従来、これらの透明プラスチックとしてはポリカーボネートあるいはポリメチルメタクリレートが用いられてきた。しかしながらポリカーボネートに関しては芳香族環を分子中に有しているため固有複屈折率が大きく成形物に光学異方性が生じやすいこと、ポリメチルメタクリレートは吸水率が極めて高いために、寸法安定性に乏しく、物理的耐熱性も低いことが問題となっていた。
光ディスク基板に関しては現在ポリカーボネートが専ら用いられているが、近年、光磁気記録ディスク(MOD)の大容量化、あるいはデジタル多用途ディスク(DVD)の開発、ブルーレーザーの開発に代表される記録密度の高密度化の進展に伴い、ポリカーボネートの複屈折の大きさ、吸湿によるディスクの反りの問題が懸念されるようになってきている。
かかる状況から、近年、ポリカーボネートの代替材料として非晶性ポリオレフィン系樹脂の開発が盛んである。これらの一例としてポリスチレンの芳香族環を水素化し、ポリビニルシクロヘキサン構造にした水素化ポリスチレン、およびその共重合体が提案されている。例えば特公平7−114030号公報においてはビニルシクロヘキサン含有率80重量%以上の水素化ポリスチレンからなる基板を有することを特徴とする光ディスクが開示されている。
この樹脂は光線透過率が高く、ポリカーボネートと比較して複屈折や吸水率が非常に小さいという特徴を有しているものの、力学的に脆いという欠点を有する。そこで、かかる樹脂の有する欠点の改善を目指したものとして、スチレンにイソプレンやブタジエンといった共役ジエンをブロック共重合させてゴム成分を導入したスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素化物を光ディスク基板をはじめとする光学用途に用いることが、特許2668945号公報、特許2730053号公報等に開示されている。
このようなゴム成分の導入により力学的な脆さはある程度は改善されるものの、熱変形温度の低下という新たな懸念事項が浮上してきた。
光ディスクに関してはその生産工程並びに使用時に熱の負荷がかかることが往々にしてある。例えば生産工程においては、特にライトワンス型と呼ばれる記録−再生専用の光ディスク、イレーザブル型と呼ばれる記録−再生−消去−再記録用の光ディスク等では、基板に金属酸化物や合金化合物等、数層もの膜を高温、高真空下でスパッタリングする必要があり、耐熱性の低い樹脂では基板全体が変形する恐れがある。また、光ディスクへの記録、再生、消去、再記録といった操作の際には高エネルギーレーザーの照射により記録膜が200℃以上にもなり、基板も相当高温になることが予想され、ピットあるいはランド、グルーブが変形する恐れがある。さらに光ディスクを車載用途に用いる場合にも100℃程度で長時間放置される場合もあり、基板全体あるいはピット、ランド、グルーブが変形する恐れがある。
上記のような懸念に関しては、従来のスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素化物では克服することができず、靭性、熱変形温度といった主要特性の優れた樹脂の開発が望まれていた。
発明の開示
従来技術から明らかなように、本発明の課題は靭性、熱変形温度、成形性に優れた水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を提供することにある。本発明の他の課題は、該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の課題は、該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を含む水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物よりなる成形材料、及び該成形材料からなる光学材料を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するにあたり、水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体の分子量の分布が諸物性に与える影響に着目した。通常、分子量分布の指標としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが用いられる。水素化スチレン重合体については既に下記に示すような方法を用いることにより分子量分布(Mw/Mn)が1〜2程度の重合体を合成することが可能である。
▲1▼スチレン重合体を水素化する際に時として併発する分子鎖切断反応を利用して、水素化スチレン重合体の分子量分布をスチレン重合体よりも広げる方法(国際公開WO00/34340号明細書など)。
▲2▼原料であるスチレン重合体の重合方法を変えることによりスチレン重合体の分子量分布を変え、それを水素化する方法(米国特許第5,612,422号明細書など)。具体的に、例えばアニオン重合開始剤を開始剤とするアニオン重合の手法を用いれば分布が非常に狭いスチレン重合体(Mw/Mn〜1.1)を合成することができ、ラジカル重合の手法を用いれば、分布の広い重合体(Mw/Mn〜2.0)を合成することができる。これらを分子鎖切断反応の伴わない方法で水素化することにより、それぞれの分子量分布を維持した水素化重合体を合成することができる。
しかしながら、水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体については分子量分布を大きく変えたものを合成することができなかった。具体的に上記▲1▼の方法を用いると、分子量分布を変えたものは合成できるものの、分子鎖切断反応がランダムな位置で起こるため、結果的に水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体の他に水素化スチレン重合体、水素化共役ジエン重合体等が生成する。特に水素化共役ジエン重合体が含まれると透明性が低下してしまい、光学材料として使用することはできなかった。また、上記▲2▼の方法については、現在のところ、スチレン−共役ジエンブロック共重合体を好適に合成できるのはアニオン重合だけであり、その結果、分子量分布はMw/Mnで1.0〜1.3と極めて狭い領域でしか変えることができなかった。
上記のような従来技術に鑑み、鋭意研究した結果、例えば完全混合槽型の連続重合装置を用いてスチレン−共役ジエンブロック重合体を合成した場合には、分子量分布の大きく異なる重合体が合成できることを見出した。さらに、この重合体を水素化して得た水素化スチレン−共役ジエンブロック重合体について、共重合比、分子量分布等の化学構造と各種物性の相関について調べた結果、高分子量側に裾をひくような特異な分子量分布を持った水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体であると、靭性、熱変形温度および成形性にも優れ、力学的性質が改良された樹脂になることを見出した。さらに、かかる水素化共重合体は光ディスク基板をはじめとする光学材料として好適に使用できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明は、スチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから主としてなるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を水素化することによって得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体であって(ア)水素化スチレン重合体ブロック/水素化共役ジエン重合体ブロックの重量比が75/25〜97/3であり、(イ)水素化率が90%以上であり、(ウ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で求めた数平均分子量(Mn)が30,000〜200,000g/molであり、かつ(エ)GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20重量%含有する水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体である。
また、本発明は、完全混合槽型重合槽を用いてスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を連続的に合成する工程および該共重合体を水素化する工程からなる水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の製造方法である。
また、本発明は前記の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を含む水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物から主としてなる成形材料である。
また、本発明は上記成形材料からなる光学材料である。
また、本発明は上記成形材料からなる光ディスク基板である。
発明の好ましい実施態様
以下、本発明について詳述する。
(スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体)
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体はスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから主としてなり、共役ジエン重合体ブロックがスチレン重合体ブロックに挟まれたブロック共重合体である。
共役ジエンとしては1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエンおよびそれらの誘導体等の環状共役ジエン、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン等の鎖状共役ジエン等を挙げることができる。これらのうち、反応性が高く、また入手しやすいという点からイソプレン、ブタジエンが好ましく、イソプレンがさらに好ましい。これら共役ジエンは単独であるいは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
スチレン重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックはそれぞれスチレン由来の単位、共役ジエン由来の単位から主としてなるが、それぞれの重合体ブロックに共役ジエン由来の単位、スチレン由来の単位がそれぞれの重合体ブロックの5重量%程度以下の範囲でランダムに導入されていてもよい。また、スチレン、共役ジエン以外の成分として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチル−ビニルナフタレン等のスチレン系単量体が共重合体全体の10重量%以下程度の範囲で導入されていてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、スチレン以外のモノマーを併用する場合には、本発明のブロックまたは水素化スチレン重合体のブロックの重量比等の規定は、全スチレン類について適用するものとする。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の(スチレン重合体ブロック)/(共役ジエン重合体ブロック)の重量比としては、74/26〜97/3であることが好ましい。この範囲の共重合体を水素化することにより、水素化共重合体における(水素化スチレン重合体ブロック)/(水素化共役ジエン重合体ブロック)の重量比を75/25〜97/3にすることができる。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体はスチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体から主としてなる。該スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体にはスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/またはスチレン重合体が含まれていてもよく、その含有量としては0〜20重量%であることが好ましい。含有量はより好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量はGPC法により得られるポリスチレン換算の分子量で40,000〜300,000g/mol、好ましくは50,000〜250,000g/mol、より好ましくは60,000〜200,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、水素化反応が困難になり、また、水素化共重合体の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では、水素化反応も容易になり、水素化共重合体の溶融粘度も下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の高分子量成分を1〜20重量%含有することが好ましい。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。また、分子量分布はGPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.2が好ましく、より好ましくは1.4〜1.8、さらに好ましくは1.4〜1.7である。また、GPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mwの値で1.1〜2.5が好ましく、より好ましくは1.2〜2.0、さらに好ましくは1.3〜1.6である。高分子量成分量がそれ未満あるいは分子量分布がそれ未満であると水素化後の重合体の靭性が低下するため好ましくなく、高分子量成分量がそれより多くなる、あるいは分子量分布がそれぞれより大きくなると本発明のような水素化共重合体の合成が困難になる上に、水素化共重合体の成形物の熱変形温度が低下するため好ましくない。
なお、本明細書中におけるGPC法によって得られる分子量はすべてポリスチレン換算の分子量であり、テトラヒドロフランを展開溶媒として、温度40℃で測定した値を基準としている。この条件は一般的にGPC法による分子量の測定で使用されているものである。また、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)はそれぞれ下記式によって表される分子量である。
Mn={Σ(Mi×Ni)}/(ΣNi)
Mw={Σ(Mi2×Ni)}/{Σ(Mi×Ni)}
Mz={Σ(Mi3×Ni)}/{Σ(Mi2×Ni)}
上式中、Miはi成分の分子量、Niはi成分の数である。また、Mw/Mnは分子量分布の広がりの程度を示す指標であり、Mz/Mwは高分子量成分の寄与をより反映した分子量分布を表現した指標である。
(水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は該スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を90%以上水素化することによって得られる重合体である。水素化率は好ましくは95%以上、また好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。それ未満では不飽和結合が多くなりすぎて、透明性が低下するため好ましくない。ここでいう水素化率とは芳香族環のモル数を二重結合に相当するモル数に置き換え、共重合体中の共役ジエン由来の二重結合のモル数と併せた全体のモル数に対する水素化率のことを指す。例えば、水素化されていないスチレン由来の芳香族環は二重結合3モルとして計算されたものである。通常、共役ジエンに由来する二重結合は芳香族環よりはるかに水素化されやすく、本発明においてはほぼ完全に水素化されている。一方、芳香族環が水素化されない場合には、大部分は芳香族環のままであるが、芳香族環が部分的に水素化されて二重結合となっている場合もわずかながら存在することがある。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体における(水素化スチレン重合体ブロック)/(水素化共役ジエン重合体ブロック)の重量比としては、上述したように75/25〜97/3であることが好ましい。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られるポリスチレン換算の分子量で30,000〜200,000g/mol、好ましくは50,000〜180,000g/mol、より好ましくは60,000〜160,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、水素化反応が困難になり、また、水素化共重合体の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では、水素化反応も容易になり、水素化共重合体の溶融粘度も下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20%含有する。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。高分子量成分量がそれ未満であると熱変形温度が低下したり靭性が低下するため好ましくなく、またそれより大きくなると本発明のような水素化共重合体の合成が困難になる上に、成形性が著しく低下するため好ましくない。
また、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布が、GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.2であることが好ましく、より好ましくは1.4〜1.8、さらに好ましくは1.4〜1.7である。また、同様にGPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mwの値で1.1〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.0、さらに好ましくは1.3〜1.6である。
さらに本発明においては該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体のGPC法で求めた分子量分布曲線において、その頂点ピークの分子量以上の領域における分布曲線が実質的に下記式(1)で表される領域の範囲内にあることが好ましい。
(式中、xは分子量、x0はGPC法で求めた分子量分布曲線における頂点ピーク分子量、HはGPC法で求めた分子量分布曲線におけるx0の高さを表し、w、ρはそれぞれ1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0を満足する。)
w/x0およびρのより好ましい範囲は1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である。GPC法で求めた分子量分布曲線が式(1)で表される範囲をはずれる場合には靭性が低下したり、あるいは溶融粘度が高くなり、成形性が劣るため好ましくない。
式(1)で表されるように高分子量側にある程度の裾をひくような分子量分布をもった水素化共重合体は熱変形温度が高く、靭性も高く、また、成形性も優れるため、好ましい。
上記のように水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体に含まれる高分子量成分は、少量でも靭性向上、熱変形温度向上に寄与し、また、上記の範囲内であれば、共重合体の溶融粘度に与える影響は少なく、成形性には大きな効果を与えない。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は水素化スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体から主としてなる。該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体には水素化スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/または水素化スチレン重合体が含まれていてもよく、その含有量としては0〜20重量%であることが好ましい。含有量はより好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。つまり、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体における水素化スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体含有量が、85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが最も好ましい。水素化スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/または水素化スチレン重合体の含有量が、上記より多いと靭性、透明性が低下するため好ましくない。含有する水素化スチレン−共役ジエン二元共重合体、水素化スチレン重合体の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜200,000g/mol、より好ましくは2,000〜180,000g/mol、さらに好ましくは3,000〜160,000g/molである。
(水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の製造方法)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は完全混合槽型重合槽を用いてスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を連続的に合成する工程および該共重合体を水素化する工程を経て好適に製造される。より好ましくは、下記工程(I)〜(IV)、スチレンおよびアニオン重合開始剤の溶液を完全混合槽型第一重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的に重合する工程(I)、工程(I)で得られた反応混合物および共役ジエンを完全混合槽型第二重合槽に連続的に供給し、共役ジエンを連続的にブロック共重合する工程(II)、工程(II)で得られた反応混合物およびスチレンを完全混合槽型第三重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的にブロック共重合する工程(III)、工程(III)で得られた反応混合物に水素化触媒を添加し、水素化反応を行う工程(IV)を経ることが好ましい。
さらに、工程(I)〜(III)において下記式(a)〜(g)
(a)1≦V1/v1≦500
(b)1≦V2/(v1+v2)≦500
(c)1≦V3/(v1+v2+v3)≦500
(d)0.01≦CS1≦9
(e)0.01≦CI≦10
(f)0.01≦CS3≦9
(g)2×102≦(CS1v1+CIv2+CS3v3)/CBv1≦2×104
(式中、V1は第一重合槽中の反応混合物の体積(L)、v1は第一重合槽に供給するスチレン、アニオン重合開始剤および必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V2は第二重合槽中の反応混合物の体積(L)、v2は第二重合槽に供給する共役ジエンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V3は第三重合槽中の反応混合物の体積(L)、v3は第三重合槽に供給するスチレンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、CS1は第一重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CIは第二重合槽に供給する共役ジエンの濃度(mol/L)、CS3は第三重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CBは第一重合槽に供給するアニオン重合開始剤の濃度(mol/L))を全て満足することが好ましい。さらにV1=V2=V3であることが好ましい。また、工程(I)〜(III)を温度30〜100℃で行うことが好ましい。
以下、工程(I)〜(IV)について説明する。
工程(I)においては完全混合槽型第一重合槽にスチレンおよびアニオン重合開始剤の溶液を連続的に添加する。完全混合槽において添加された溶液は、既に重合槽中に存在している溶液と均一に混合される。アニオン重合開始剤としては周期律表1〜2族の金属およびそれらの有機金属化合物を挙げることができる。
具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のアルカリ土類金属、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、フェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム等の有機リチウム化合物、メチルナトリウム、エチルナトリウム、n−プロピルナトリウム、iso−プロピルナトリウム、n−ブチルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物、ジメチルマグネシウム、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ジメチルカルシウム、ビス(シクロペンタジエニル)カルシウム等の有機アルカリ土類金属化合物を挙げることができる。これらのうち、入手性、操作性の点から有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。このうち、n−ブチルリチウムを用いると、スチレンとn−ブチルリチウムの反応によるスチリルリチウムの生成(いわゆる開始反応)がスチレンのアニオン重合反応(いわゆる成長反応)よりも遅いので分子量分布のより広い重合体が得られる。また、sec−ブチルリチウムを用いる場合には逆に開始反応の方が成長反応よりもはるかに速いので分子量分布のより狭い重合体が得られる。つまり、スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体において、スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体含有量を85重量%以上とするには、sec−ブチルリチウム等の開始反応の速いアニオン重合開始剤を用いることが好ましい。
この際、上記の開始剤をさらに活性化させ、反応速度の向上、分子量の増大、アニオンの失活防止を図る目的で電子供与性化合物を添加してもよい。電子供与性化合物とは開始剤の機能を損なうことなく開始剤の金属に電子供与し得る化合物であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子を含む化合物である。具体的にはフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチル1,3−プロパンジアミン、テトラメチルフェニレンジアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の三級アミン;ジメチルスルフィド、チオフェン、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルホスフィノメタン、ジメチルホスフィノエタン、ジメチルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノメタン、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン等の三級ホスフィン類;ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−フェノキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−フェノキシド等の金属アルコキシドを挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしてテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。本発明においては、リン原子を含まない電子供与性化合物が好ましく用いられる。
電子供与性化合物の添加量としては、開始剤と電子供与性化合物の種類にもよるが、開始剤1molに対し、0.1〜100mol、好ましくは0.2〜50mol、より好ましくは0.3〜10molである。添加量が少なすぎると活性化効果が得られず、また、多すぎても活性化効果が増大するわけでもなく、電子供与性化合物を浪費するだけなので、好ましくない。ただし、電子供与性化合物を溶媒として用いる場合にはこの限りではない。
第一重合槽に添加されるスチレンおよびアニオン重合開始剤は溶液の状態で添加されることが好ましい。ここで用いる溶媒としては重合体を溶解し、スチレンとアニオン重合開始剤の反応を阻害させるものであれば特に限定されないが、好ましい例として、ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のC4〜12の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等のC4〜12の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、テトラリン、ナフタレン等のC6〜12の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル等のC4〜12のエーテル類を挙げることができる。これらのうち、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルが特に好ましい。また、重合反応時には活性末端が水、酸素等に対して非常に敏感であるため、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、あるいは液密の条件下で、試薬、溶媒、不活性ガスを十分に脱水した環境下で行うことが好ましい。具体的に試薬、溶媒に含まれる水の量としては100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
第一重合槽にて添加する溶液(スチレン、アニオン重合開始剤および溶媒の和)の添加速度v1(L/min)は下記式(a)
(ここでV1は第一重合槽中の反応混合物の体積(L)v1は第一重合槽に供給するスチレン、アニオン重合開始剤および必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)である。)を満足することが好ましい。式(a)におけるV1/v1は第一重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V1/v1が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第一重合槽におけるスチレンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V1/v1≦400である。
また、第一重合槽に添加するスチレンの濃度(CS1(mol/L))としては下記式(d)
を満足することが好ましい。0.01より低いと生産性が上がらず、また9より高いと反応混合物の粘度が上がりすぎたり、重合反応時の発熱によって温度を制御することが困難になるため好ましくない。また、アニオン重合開始剤の濃度(CB(mol/L))としては下記式(g)
(ここで、v1、CS1は式(a)、(d)における定義と同義であり、v2は第二重合槽に供給する共役ジエンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、v3は第三重合槽に供給するスチレンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、CIは第二重合槽に供給する共役ジエンの濃度(mol/L)、CS3は第三重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CBは第一重合槽に供給するアニオン重合開始剤の濃度(mol/L)である。)
を満足することが好ましい。第一重合槽におけるスチレン重合体の分子量は(CS1v1+CIv2+CS3v3)/CBv1の値によってある程度規定される。従って、この値が2×102より低いと分子量が小さくなりすぎ、最終的に実用に耐える強度をもった重合体が得られず、また2×104より高いと成形性の良好な重合体を得ることができず、好ましくない。
かくして工程(I)では第一重合槽においてスチレンとアニオン重合開始剤との反応により末端がアニオン化されたスチレン重合体ブロックを含む反応混合物が得られ、該反応混合物は添加された溶液の速度とほぼ同等の速度で第二重合槽へと添加される。
工程(II)においては工程(I)で得られた反応混合物および共役ジエンを完全混合槽型第二重合槽に連続的に供給し、共役ジエンを連続的にブロック共重合する。共役ジエンはそのままあるいは溶液状態で添加することができる。溶液として添加する場合に使用する溶媒としては上述した工程(I)で例示した溶媒を使用することができるが、工程(I)で使用するものと同一の溶媒を使用することが好ましい。
工程(II)において第二重合槽に添加される共役ジエンあるいは共役ジエン溶液の添加速度v2(L/min)は下記式(b)
(ここでV2は第二重合槽の反応混合物の体積、v1、v2は前式(g)における定義と同義である。)
を満足することが好ましい。第二重合槽においては工程(I)で得られた反応混合物がほぼv1の速度で、また共役ジエンあるいは共役ジエン溶液がv2の速度で供給されるので、V2/(v1+v2)は第二重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V2/(v1+v2)が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第二重合槽における共役ジエンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V2/(v1+v2)≦400である。
また、第二重合槽に添加する共役ジエンの濃度(CI(mol/L))としては下記式(e)
を満足することが好ましい。CIが0.1より低いと生産性が上がらず、好ましくない。
工程(II)において共役ジエンは工程(I)から供給された反応混合物に含まれるアニオン化されたスチレン重合体ブロックを開始剤とレてそこから共役ジエン重合体ブロックが生成し、最終的に末端がアニオン化されたスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体が形成される。また、工程(I)から供給された反応混合物には未反応のアニオン重合開始剤が含まれることがあり、その場合にはそのアニオン重合開始剤を開始剤として共役ジエンの重合反応も進行する。その結果、末端がアニオン化された共役ジエン重合体が形成される。かくして第二重合槽で形成される上記のような反応混合物は添加された溶液の速度(v1+v2)とほぼ同等の速度で第三重合槽へと添加される。
工程(III)においては工程(II)で得られた反応混合物およびスチレンを完全混合槽型第三重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的にブロック共重合する。スチレンはそのままあるいは溶液状態で添加することができる。溶液として添加する場合に使用する溶媒としては上述した工程(I)で例示した溶媒を使用することができるが、工程(I)で使用するものと同一の溶媒を使用することが好ましい。
工程(III)において第二重合槽に添加されるスチレンあるいはスチレン溶液の添加速度v3(L/min)は下記式(c)
(ここでV3(L)は第三重合槽の反応混合物の体積、v1、v2、v3は前式(g)における定義と同義である。)
を満足することが好ましい。第三重合槽においては工程(II)で得られた反応混合物がほぼv1+v2の速度で、またスチレンあるいはスチレン溶液がv3の速度で供給されるので、V3/(v1+v2+v3)は第三重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V3/(v1+v2+v3)が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第三重合槽におけるスチレンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V3/(v1+v2+v3)≦400である。
また、第二重合槽に添加するスチレンの濃度(CS3(mol/L))としては下記式(f)
を満足することが好ましい。CS3が0.01より低いと生産性が上がらず、好ましくない。
工程(III)において供給されるスチレンは、工程(II)から供給された反応混合物に含まれるアニオン化されたスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体を開始剤として重合され、そこからスチレン重合体ブロックが生成し、最終的に末端がアニオン化されたスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体が形成される。また、工程(II)から供給された反応混合物には末端がアニオン化された共役ジエン重合体および未反応のアニオン重合開始剤が含まれることがあり、その場合にはそれらを開始剤としてスチレンの重合反応も進行する。その結果、末端がアニオン化された共役ジエン−スチレン二元ブロック共重合体およびスチレン重合体が形成される。かくして第三重合槽で形成される上記のような反応混合物は添加された溶液の速度(v1+v2+v3)とほぼ同等の速度で第三重合槽から排出される。
第三重合槽から排出された反応混合物は末端のアニオンを失活させるため、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのプロトン供与性試薬と接触させることが好ましい。プロトン供与性試薬の量としては第一重合槽に添加するアニオン重合開始剤1molに対して0.1〜10molが好ましい。
かくして工程(I)〜(III)によって得られる反応混合物にはスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体、および場合によってスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体が含まれる。スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体の総量は反応混合物に含まれる重合体の総量の20重量%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であることが好ましい。つまり、スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体の総量がそれより多いと靭性、HDTが低下するため好ましくない。
また、スチレン、共役ジエン等の単量体の重合体への変換率は90%以上より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が好ましい。
なお、工程(I)〜(III)においてスチレン、共役ジエンを添加する際にスチレン、共役ジエン以外の成分として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチル−ビニルナフタレン等のスチレン系単量体を、スチレン及び共役ジエン全体の10重量%以下程度の範囲で添加してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、さらに工程(IV)において、上記のような重合体を水素化することにより、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を得ることができる。
水素化は水素化触媒の存在下、スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体に含まれるスチレン由来の芳香族環および共役ジエン由来の炭素間二重結合を水素化することにより達成される。
水素化触媒は、該共重合体に含まれる芳香族環および炭素間二重結合を水素化し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的にはニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはその酸化物、塩、錯体等のカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒を挙げることができる。これらの中でもニッケル、パラジウム、白金、ルテニウムをアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土に担持したものが高い反応性を示すため、好ましく用いられる。具体的にはニッケル/シリカ、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ・アルミナ、ニッケル/珪藻土、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、パラジウム/シリカア・ルミナ、パラジウム/珪藻土、白金/シリカ、白金/アルミナ、白金/シリカ・アルミナ、白金/珪藻土、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナ、ルテニウム/シリカ・アルミナ、ルテニウム/珪藻土等を挙げることができ、中でもニッケル/シリカ、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ・アルミナ、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、パラジウム/シリカ・アルミナが好ましい。かかる水素化触媒は、その触媒活性にもよるが、該共重合体に対して0.5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
水素化反応は重合反応後の重合体を一旦単離してから行ってもよいが、工程(III)から出てきた反応混合物にプロトン供与性試薬を添加後したものをそのまま用いて、あるいはさらに必要な溶媒を加えて行うことも可能である。かかる溶媒は、水素化触媒能、分子鎖切断等の副反応の有無、水素化反応前後の重合体の溶解度等を勘案して選択することが好ましいが、具体的にはブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のC4〜12の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等のC4〜12の脂環族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル等のC4〜12のエーテル類を挙げることができる。これらのうち、触媒の種類に依存するものの、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルが特に好ましい。その他、反応の活性を高める、あるいは水素化分解による分子鎖の切断による分子量低下を抑制する目的でエステル類、アルコール類などの極性溶媒を、重合体の溶解度を妨げない範囲内で上記溶媒に加えてもよい。
本発明では、上記の溶媒系で、該共重合体の濃度が3〜50重量%の範囲で水素化反応を行うことが好ましい。該共重合体の濃度が3重量%未満では生産性、経済性の面から好ましくなく、50重量%を超えると溶液粘度が上がりすぎて取り扱い面、また反応性の面からも好ましくない。
水素化反応条件は、用いる触媒にもよるが、通常水素圧3〜25MPa、反応温度70〜220℃の範囲内で行われる。反応温度が低すぎると反応が進行しにくく、反応温度が高すぎると水素化分解による分子量低下が起こりやすくなり、好ましくない。分子鎖の切断による分子量低下を防ぎ、かつ円滑に反応を進行させるためには用いる触媒の種類、濃度、共重合体の溶液濃度、分子量等により、適宜決定される適切な温度、水素圧により水素化反応を行うことが好ましい。
また、本発明に用いられる水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の水素化率は90〜100%、好ましくは95〜100%、また好ましくは98〜100%、より好ましくは99〜100%であることが好ましい。水素化率が低すぎると共重合体の透明性、物理的耐熱性が低下するため好ましくない。なお、共役ジエン単量体由来の単位に含まれる炭素間二重結合の水素化は、スチレン由来の芳香族環の水素化よりもはるかに起こり易いため、該水素化率が90%以上の場合は環状共役ジエンおよび鎖状系単量体由来の単位に含まれる炭素間二重結合は実質的に完全に水素化されている。
上記方法によって得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)はGPC法により得られるポリスチレン換算の数平均分子量で前述の数値範囲である。通常、GPC法により得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量は水素化前の共重合体の数平均分子量の50%〜100%程度の値となるが、これは分子鎖が切断するためではなく、ポリスチレンの換算による影響である。
上記の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の水素化反応においては分子鎖の切断が伴わないことが好ましく、このことは水素化前後における分子量分布がほとんど変わらないことから明らかにすることができる。すなわち、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布の状態としては水素化前のスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布の状態とほぼ同じであることが好ましく、具体的にはGPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20%含有することが好ましい。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。水素化反応終了後は、遠心分離、ろ過等の公知の後処理方法により触媒の除去を行うことができる。水素化共重合体を光学材料用途に用いる本発明では、水素化触媒として用いた樹脂内の残留金属触媒成分をできる限り少なくする必要があり、かかる残留金属触媒量が10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは500ppb以下である。特に、本発明では、残留金属触媒のなかでも、遷移金属含有量が10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体とすることが好ましい。水素化触媒を除去した重合体溶液から、溶媒の蒸発留去、ストリッピング、あるいは再沈殿等の方法により目的の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を得ることができる。
(組成物、成形材料)
本発明において得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は目的に応じて分子量の異なる該共重合体のブレンド、他の重合体との組成物として用いてもよい。混合の割合は、特に限定されず、組成物の物性を考慮して適宜決定すればよいが、通常、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体/混合する重合体の重量比で1/99〜99/1が好ましく、より好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは、40/60〜60/40である。他の重合体としては、例えば特開昭63−4391号公報に記載の水素化スチレン系重合体、特開平10−116442号公報に記載の水素化スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体等を挙げることができる。これらのうち、水素化スチレン重合体が特に好ましい。
水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物の数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られるポリスチレン換算の分子量で30,000〜300,000g/mol、好ましくは50,000〜250,000g/mol、より好ましくは60,000〜200,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、該組成物の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では組成物の溶融粘度は下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜30%含有することが好ましい。より好ましくは3〜25%、さらに好ましくは4〜20%である。高分子量成分量がそれ未満であると熱変形温度が低下したり靭性が低下するため好ましくなく、またそれより大きくなると成形性が著しく悪化するため好ましくない。
また、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物の分子量分布が、GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.4〜2.2である。また、同様にGPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mnの値で1.1〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.5、さらに好ましくは1.3〜2.2である。
上記のように水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物に含まれる高分子量成分は、少量でも熱変形温度向上に寄与し、また、上記の範囲内であれば、組成物の溶融粘度に与える影響は少なく、成形性には大きな効果を与えない。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は200℃における緩和スペクトルが下記式(2)
(式(2)中、logは常用対数、τは緩和時間(sec)、H(τ)(Pa)は200℃での緩和スペクトルを表す。)を満たすことが好ましい。こうした条件は先述の条件を満たす水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物において実現することが可能である。
緩和スペクトルが上述した式(2)の範囲外の場合には、該水素化共重合体を例えば高記録密度の光ディスク基板用樹脂材料として使用する場合に十分なピットあるいはランドグルーブ転写性と光ディスク基板のそりを満足することが困難となりがちである。これは、緩和スペクトルが式(2)の範囲外では成形時の残留応力が十分に緩和されずに残り、その残留応力が転写性不良や、そりの発生する原因になり得るからである。
こうした緩和スペクトルは、振動実験等から得られる複素弾性率の結果から、例えば、「新物理学進歩シリーズ 8 レオロジー」(山本 三三三著 槙書店版 1964年発行)等に記載の方法によって求めることができる。式(2)は200℃での10−2≦τ≦104の緩和時間の範囲において緩和スペクトルH(τ)が(2)式で表される範囲に入ることが好ましいことを示している。緩和スペクトルの範囲としては転写性やそりなどの観点から上記式中の積、H(τ)・τが小さいほど好ましいが、あまり小さなものは分子量、還元粘度が小さくなりすぎ、実用的なものは得られにくい。上記式におけるより好ましい範囲は下記式(2a)の範囲である。
(式(2a)中、logは常用対数、τは緩和時間(sec)、H(τ)(Pa)は200℃での緩和スペクトルを表す。)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は温度300℃、せん断速度103(1/s)における溶融粘度が10〜200(Pa・sec)(100〜2,000ポイズ)であることが好ましい。こうした条件は先述の条件を満たす水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物において実現することが可能である。溶融粘度がそれより低い場合には成形性、特に高密度光ディスク基板用材料として使用する場合にはピットあるいはランドグルーブ転写性に優れるものの、実用に耐えるだけの靭性を維持することができないため好ましくなく、また、溶融粘度がそれより高い場合には靭性はある程度高いものの、成形性、転写性が悪くなるため好ましくない。より好ましい範囲としては温度300℃、せん断速度103(1/s)における溶融粘度が50〜130Pa/sec(500〜1,300ポイズ)である。
本発明の水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体には、溶融成形時の熱化学安定性を向上させるため、あるいは自動酸化を防止するために、イルガノックス1010、1076(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等のヒンダードフェノール系安定化剤、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等のホスフィン系安定化剤、あるいはスミライザーGMやスミライザーGS(住友化学(株)製)等のアクリルヒンダードフェノール系安定剤を加えることが好ましい。本発明においては、非リン系の安定化剤が好ましく用いられる。また、必要に応じて長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族エステル等の離型剤、その他滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の成形材料は、上述の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物から主としてなる。
本発明の成形材料は、射出成形、射出圧縮成形、押し出し成形、溶液流延法等の公知の方法により成形することができる。特に射出成形、射出圧縮成形法による光ディスク基板あるいは光学用レンズ等の光学部材の製造、特にブルーレーザー用の光ディスク基板の製造に好適に用いることができる。かかる成形では、樹脂温度250〜360℃、好ましくは270〜350℃、さらに好ましくは280〜340℃の範囲が用いられ、金型温度は60〜140℃、好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは80〜125℃の範囲が用いられる。
かくして得られる光ディスク基板や光学用レンズをはじめとする各種成形物において、水素化共役ジエン重合体ブロック部が島構造になったミクロ相分離構造を形成していることが好ましい。ミクロ相分離構造を有していない場合には靭性や耐熱性が低下するため好ましくない。
本発明によれば、分子量の分布が限定された水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体および光学材料が提供される。この水素化共重合体は、例えば透明性など従来の樹脂本来の特性の他に、機械特性に優れ、耐熱性、成形性にも優れるため、光ディスク基板をはじめとする光学材料として好適に用いることができる。
実施例
以下に実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
(試薬、溶媒)
スチレン、イソプレンは水素化カルシウムから蒸留精製し、十分乾燥したものを用いた。シクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルは脱水グレードのものを購入し、さらに4Aモレキュラーシーブあるいは塩基性アルミナに接触させて十分乾燥したものを用いた。
n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムは市販品であるシクロヘキサン溶液をそのまま用いた。
(物性測定)
イソプレン含量:JEOL JNR−EX270型核磁気共鳴吸収装置を用い、1H−NMR測定により定量した。なお、水素化反応が殆ど進行した場合、水素化反応により、スチレン由来の重合単位とイソプレン由来の重合単位との重量分率は殆ど変化しないので、この測定値を水素化共役ジエン重合体ブロックの重量比率とした。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)z平均分子量(Mz):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工(株)製GPC、Syodex System−11)により、テトラヒドロフランを溶媒に用いて測定し、40℃におけるポリスチレン換算の分子量の分布状態から求めた。
分子量分布曲線:GPC法によって得られた時間−強度の関係曲線f(t)を下記式(3)を用いて分子量−強度の関係曲線f(x)に補正することにより導出した。
(式中f(x)は分子量xにおける強度、f(t)は時間(t)における強度、A、B、Cは標準ポリスチレンを用いて得られる時間と分子量の関係でlog(x)=At3+Bt2+Ct+Dを満足する定数である。)
水素化率:JEOL JNR−EX270型核磁気共鳴吸収装置を用い、1H−NMR測定により水素化率を定量した。
全光線透過率:JIS K7105に従い、測定した。
Izod衝撃強度:JIS K7110に従い、ノッチ無しで衝撃試験を行い、測定した。
破断伸度:JIS K7113に従い、引張り破壊伸びを測定した。
熱変形温度:JIS K7206に従い測定した。
緩和スペクトル:レオメトリック・サイエンティフィック(株)社製RDAII型を使用し、コーンプレート型で200℃、230℃、280℃において振動実験を行った。得られた曲線から時間温度の換算を行い、200℃を基準としたマスター曲線を作成した。マスター曲線を用いて、「新物理学シリーズ 8 レオロジー」(山本 三三三著 槙書店版、1964年発行 第39頁.2.複素弾性率の求め方)等に記載の方法により、緩和スペクトルへの変換を行った。
溶融粘度:(株)島津製作所製、高化式(キャピラリータイプ)フローテスターを用いて測定し、せん断速度が103(s−1)における溶融粘度を算出した。
ミクロ相分離構造の有無:成形片を四酸化ルテニウムを用いて染色して、観察した。
成形片の成形:射出成形機(名機製作所(株)製M50B)により成形した。
光ディスク基板成形:射出成形機(日精樹脂工業(株)製MO40D3H)により、DVD用の金型とランドグルーブ構造を有するスタンパー(容量2.6GB)を使用し、0.6mm厚の光ディスク基板を射出圧縮成形により成形した。
転写率:転写性の評価は、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業製SFA−300)を用い、中心から58mmの位置での断面形状からグルーブ深さを測定し、下記式により算出した。
転写率=(基板のグルーブ深さ)/(スタンパーのグルーブ深さ)
[実施例1]
攪拌翼を供えた金属製の第一重合槽、第二重合槽および第三重合槽をこの順にパイプで連結した装置を用い、重合反応を行った。重合槽の内部は十分に乾燥し窒素置換した。第一重合槽にスチレン、n−ブチルリチウムおよびシクロヘキサンを総量で0.18L/minとなる速度で添加した。加えられるスチレン、n−ブチルリチウムの濃度はそれぞれ0.94mol/L、0.0044mol/Lであった。また、第二重合槽には4.2mol/Lのイソプレン−シクロヘキサン溶液を0.014L/minで添加した。また、第三重合槽には1.1mol/Lのスチレン−シクロヘキサン溶液を0.16L/minで添加した。第一〜第三重合槽の反応混合物の温度は70℃にした。重合反応は全ての重合槽を液密にした状態で行った。第三重合槽から反応混合物を取り出し、イソプロパノールを添加することによりスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液を得た。反応混合物中の重合体の分子量の経時変化を追跡し、ほぼ一定の値になった時点から反応混合物を回収した。この時点での重合体の収率(モノマーの重合体への変換率)は99%以上であり、また、各重合槽を出たところの重合体の収率も99%以上だった。回収した反応混合物にパラジウム/シリカを重合体に対して15重量%加え、水素圧9.8MPa、温度180℃で12時間水素化反応を行った。反応終了後、反応混合物から水素化触媒を除去し、スミライザーGSを水素化共重合体に対して2700ppm添加した後、溶媒を除去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。重合反応および水素化反応の条件、重合反応後の共重合体および水素化反応後の水素化共重合体の性質を表1に示す。また、GPC法によって求めた分子量分布曲線を第1図に示す。第1図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を射出成形機を用いて成形した。成形はシリンダー温度280℃、金型温度70℃で行った。得られた成形片を用いて各種物性を測定した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
また、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を射出成形機を用いて光ディスク基板に成形した。成形はシリンダー温度330℃、金型温度110℃で行った。成形時にクラックを発生することはなかった。転写率は98%であり、十分な転写を実現することができた。また、80℃、8時間アニール後の転写率は96%であり、ランドグルーブの変形の度合いも十分低かった。結果をまとめて表2に示す。
[参考例1]
実施例1において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムが5.7×10−4mol/L(第一重合槽で添加したn−ブチルリチウムの13%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のn−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、共役ジエン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して13重量%以下であると見積もられた。従って、実施例1で得られた水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体には13重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[実施例2]
反応条件を変えた以外は実施例1と同様な方法を用い、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。結果を表1に示す。また、GPC法によって得られた分子量分布曲線を第3図に示す。第3図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
さらに、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いて実施例1と同様に物性、光ディスク基板特性を評価した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[参考例2]
参考例1と同様に、実施例2において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムが3.8×10−4mol/L(第一重合槽で添加したn−ブチルリチウムの10%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のn−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、イソプレン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して10重量%以下であると見積もられた。従って、実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体には10重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[実施例3]
n−ブチルリチウムをsec−ブチルリチウムに変え、反応条件を変えた以外は実施例1と同様な方法を用い、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。結果を表1に示す。また、GPC法によって得られた分子量分布曲線を第4図に示す。第4図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
さらに、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いて実施例1と同様に物性、光ディスク基板特性を評価した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[参考例3]
参考例1と同様に、実施例3において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったsec−ブチルリチウムが6.0×10−5mol/L(第一重合槽で添加したsec−ブチルリチウムの2%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のsec−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったsec−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、イソプレン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して2重量%以下であると見積もられた。従って、実施例3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体には2重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[比較例1]
窒素置換した金属製オートクレーブに数平均分子量170,000、分子量分布2.20であるポリスチレン500g、シクロヘキサン3,300g、メチル−t−ブチルエーテル700g、ニッケル/シリカ・アルミナ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で8時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化スチレン重合体は熱変形温度が115℃と高かったものの、靭性が低く、光ディスク基板成形時にクラックが多数発生した。この水素化スチレン重合体の各種物性、光ディスク基板成形結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液と比較例1で得られた水素化スチレン重合体溶液を重合体の重量比で50:50となるように混合した。得られた溶液にスミライザーGSを重合体全体に対して2,700ppm添加し、溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および水素化スチレン重合体からなる組成物を得た。この組成物の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[実施例5]
実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液と比較例1で得られた水素化スチレン重合体溶液を重合体の重量比で75:25となるように混合した。得られた溶液にスミライザーGSを重合体全体に対して2,700ppm添加し、溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および水素化スチレン重合体からなる組成物を得た。この組成物の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[比較例2]
十分に乾燥し、窒素置換した金属製オートクレーブにスチレン270g、シクロヘキサン2,500gを仕込んだ。溶液を40℃まで加熱した後、1.6Mのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液4.6mLを加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。次いでイソプレン61gをシクロヘキサン溶液として加え,さらに2時間反応させた。さらに続いて、スチレン270g、シクロヘキサン700gを加え、2時間反応させた。反応終了後、イソプロパノール0.7gを加え,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。GPCから求めた数平均分子量は83,000であり、1H−NMRから求めたスチレン/イソプレンの重量比は90/10だった。
この溶液にシクロヘキサン1,300g、メチル−t−ブチルエーテル700gニッケル/シリカ・アルミナ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で4時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化共重合体に含まれる数平均分子量の3倍以上の成分は0%だった。この水素化共重合体は、靭性がそれほど高くなく、光ディスク基板成形時にクラックが若干発生した。また、熱変形温度も96℃と高くなく、成形した光ディスク基板の転写率はアニール前後で97%から86%に低下してしまった。この水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。
[比較例3]
十分に乾燥し、窒素置換した金属製オートクレーブにスチレン270g、シクロヘキサン2,500gを仕込んだ。溶液を40℃まで加熱した後、1.6Mのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液4.5mLを加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。次いでイソプレン96gをシクロヘキサン溶液として加え,さらに2時間反応させた。さらに続いて、スチレン270g、シクロヘキサン700gを加え、2時間反応させた。反応終了後、イソプロパノール0.7gを加え,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。GPCから求めた数平均分子量は91,000であり、1H−NMRから求めたスチレン/イソプレンの重量比は85/15だった。
この溶液にパラジウム/シリカ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で8時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレン重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化共重合体に含まれる数平均分子量の3倍以上の成分は0%だった。この水素化共重合体は、靭性が高く、光ディスク基板成形時にクラックは発生しなかった。しかし、熱変形温度も93℃と高くなく、成形した光ディスク基板の転写率はアニール前後で93%から80%に低下してしまった。この水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
第2図は実施例1〜3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および実施例4、5で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体組成物の200℃を基準とした緩和スペクトルを示す。実線は、式(2)において等号の成り立つ場合を示し、点線は、式(2a)において等号の成り立つ場合を示す。
第3図は実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
第4図は実施例3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
本発明は、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体、その製造方法およびこの共重合体を用いる光学材料などに関する。さらに詳しくは耐熱性、成形性、透明性、光学等方性、寸法安定性(低吸水性)および/または機械的物性に優れた、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体、およびそのような重合体から主としてなる光学材料などに関する。
背景技術
光ディスク、光学用レンズ、液晶表示基板等の光学材料に用いられるプラスチックには透明性の他に、光学等方性(低複屈折性)、寸法安定性、耐光性、耐候性、熱安定性等、様々な特性が要求される。従来、これらの透明プラスチックとしてはポリカーボネートあるいはポリメチルメタクリレートが用いられてきた。しかしながらポリカーボネートに関しては芳香族環を分子中に有しているため固有複屈折率が大きく成形物に光学異方性が生じやすいこと、ポリメチルメタクリレートは吸水率が極めて高いために、寸法安定性に乏しく、物理的耐熱性も低いことが問題となっていた。
光ディスク基板に関しては現在ポリカーボネートが専ら用いられているが、近年、光磁気記録ディスク(MOD)の大容量化、あるいはデジタル多用途ディスク(DVD)の開発、ブルーレーザーの開発に代表される記録密度の高密度化の進展に伴い、ポリカーボネートの複屈折の大きさ、吸湿によるディスクの反りの問題が懸念されるようになってきている。
かかる状況から、近年、ポリカーボネートの代替材料として非晶性ポリオレフィン系樹脂の開発が盛んである。これらの一例としてポリスチレンの芳香族環を水素化し、ポリビニルシクロヘキサン構造にした水素化ポリスチレン、およびその共重合体が提案されている。例えば特公平7−114030号公報においてはビニルシクロヘキサン含有率80重量%以上の水素化ポリスチレンからなる基板を有することを特徴とする光ディスクが開示されている。
この樹脂は光線透過率が高く、ポリカーボネートと比較して複屈折や吸水率が非常に小さいという特徴を有しているものの、力学的に脆いという欠点を有する。そこで、かかる樹脂の有する欠点の改善を目指したものとして、スチレンにイソプレンやブタジエンといった共役ジエンをブロック共重合させてゴム成分を導入したスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素化物を光ディスク基板をはじめとする光学用途に用いることが、特許2668945号公報、特許2730053号公報等に開示されている。
このようなゴム成分の導入により力学的な脆さはある程度は改善されるものの、熱変形温度の低下という新たな懸念事項が浮上してきた。
光ディスクに関してはその生産工程並びに使用時に熱の負荷がかかることが往々にしてある。例えば生産工程においては、特にライトワンス型と呼ばれる記録−再生専用の光ディスク、イレーザブル型と呼ばれる記録−再生−消去−再記録用の光ディスク等では、基板に金属酸化物や合金化合物等、数層もの膜を高温、高真空下でスパッタリングする必要があり、耐熱性の低い樹脂では基板全体が変形する恐れがある。また、光ディスクへの記録、再生、消去、再記録といった操作の際には高エネルギーレーザーの照射により記録膜が200℃以上にもなり、基板も相当高温になることが予想され、ピットあるいはランド、グルーブが変形する恐れがある。さらに光ディスクを車載用途に用いる場合にも100℃程度で長時間放置される場合もあり、基板全体あるいはピット、ランド、グルーブが変形する恐れがある。
上記のような懸念に関しては、従来のスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素化物では克服することができず、靭性、熱変形温度といった主要特性の優れた樹脂の開発が望まれていた。
発明の開示
従来技術から明らかなように、本発明の課題は靭性、熱変形温度、成形性に優れた水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を提供することにある。本発明の他の課題は、該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の課題は、該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を含む水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物よりなる成形材料、及び該成形材料からなる光学材料を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するにあたり、水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体の分子量の分布が諸物性に与える影響に着目した。通常、分子量分布の指標としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが用いられる。水素化スチレン重合体については既に下記に示すような方法を用いることにより分子量分布(Mw/Mn)が1〜2程度の重合体を合成することが可能である。
▲1▼スチレン重合体を水素化する際に時として併発する分子鎖切断反応を利用して、水素化スチレン重合体の分子量分布をスチレン重合体よりも広げる方法(国際公開WO00/34340号明細書など)。
▲2▼原料であるスチレン重合体の重合方法を変えることによりスチレン重合体の分子量分布を変え、それを水素化する方法(米国特許第5,612,422号明細書など)。具体的に、例えばアニオン重合開始剤を開始剤とするアニオン重合の手法を用いれば分布が非常に狭いスチレン重合体(Mw/Mn〜1.1)を合成することができ、ラジカル重合の手法を用いれば、分布の広い重合体(Mw/Mn〜2.0)を合成することができる。これらを分子鎖切断反応の伴わない方法で水素化することにより、それぞれの分子量分布を維持した水素化重合体を合成することができる。
しかしながら、水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体については分子量分布を大きく変えたものを合成することができなかった。具体的に上記▲1▼の方法を用いると、分子量分布を変えたものは合成できるものの、分子鎖切断反応がランダムな位置で起こるため、結果的に水素化スチレン−共役ジエンブロック共重合体の他に水素化スチレン重合体、水素化共役ジエン重合体等が生成する。特に水素化共役ジエン重合体が含まれると透明性が低下してしまい、光学材料として使用することはできなかった。また、上記▲2▼の方法については、現在のところ、スチレン−共役ジエンブロック共重合体を好適に合成できるのはアニオン重合だけであり、その結果、分子量分布はMw/Mnで1.0〜1.3と極めて狭い領域でしか変えることができなかった。
上記のような従来技術に鑑み、鋭意研究した結果、例えば完全混合槽型の連続重合装置を用いてスチレン−共役ジエンブロック重合体を合成した場合には、分子量分布の大きく異なる重合体が合成できることを見出した。さらに、この重合体を水素化して得た水素化スチレン−共役ジエンブロック重合体について、共重合比、分子量分布等の化学構造と各種物性の相関について調べた結果、高分子量側に裾をひくような特異な分子量分布を持った水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体であると、靭性、熱変形温度および成形性にも優れ、力学的性質が改良された樹脂になることを見出した。さらに、かかる水素化共重合体は光ディスク基板をはじめとする光学材料として好適に使用できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明は、スチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから主としてなるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を水素化することによって得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体であって(ア)水素化スチレン重合体ブロック/水素化共役ジエン重合体ブロックの重量比が75/25〜97/3であり、(イ)水素化率が90%以上であり、(ウ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で求めた数平均分子量(Mn)が30,000〜200,000g/molであり、かつ(エ)GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20重量%含有する水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体である。
また、本発明は、完全混合槽型重合槽を用いてスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を連続的に合成する工程および該共重合体を水素化する工程からなる水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の製造方法である。
また、本発明は前記の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を含む水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物から主としてなる成形材料である。
また、本発明は上記成形材料からなる光学材料である。
また、本発明は上記成形材料からなる光ディスク基板である。
発明の好ましい実施態様
以下、本発明について詳述する。
(スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体)
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体はスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから主としてなり、共役ジエン重合体ブロックがスチレン重合体ブロックに挟まれたブロック共重合体である。
共役ジエンとしては1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエンおよびそれらの誘導体等の環状共役ジエン、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン等の鎖状共役ジエン等を挙げることができる。これらのうち、反応性が高く、また入手しやすいという点からイソプレン、ブタジエンが好ましく、イソプレンがさらに好ましい。これら共役ジエンは単独であるいは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
スチレン重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックはそれぞれスチレン由来の単位、共役ジエン由来の単位から主としてなるが、それぞれの重合体ブロックに共役ジエン由来の単位、スチレン由来の単位がそれぞれの重合体ブロックの5重量%程度以下の範囲でランダムに導入されていてもよい。また、スチレン、共役ジエン以外の成分として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチル−ビニルナフタレン等のスチレン系単量体が共重合体全体の10重量%以下程度の範囲で導入されていてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、スチレン以外のモノマーを併用する場合には、本発明のブロックまたは水素化スチレン重合体のブロックの重量比等の規定は、全スチレン類について適用するものとする。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の(スチレン重合体ブロック)/(共役ジエン重合体ブロック)の重量比としては、74/26〜97/3であることが好ましい。この範囲の共重合体を水素化することにより、水素化共重合体における(水素化スチレン重合体ブロック)/(水素化共役ジエン重合体ブロック)の重量比を75/25〜97/3にすることができる。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体はスチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体から主としてなる。該スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体にはスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/またはスチレン重合体が含まれていてもよく、その含有量としては0〜20重量%であることが好ましい。含有量はより好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量はGPC法により得られるポリスチレン換算の分子量で40,000〜300,000g/mol、好ましくは50,000〜250,000g/mol、より好ましくは60,000〜200,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、水素化反応が困難になり、また、水素化共重合体の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では、水素化反応も容易になり、水素化共重合体の溶融粘度も下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
本発明におけるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の高分子量成分を1〜20重量%含有することが好ましい。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。また、分子量分布はGPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.2が好ましく、より好ましくは1.4〜1.8、さらに好ましくは1.4〜1.7である。また、GPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mwの値で1.1〜2.5が好ましく、より好ましくは1.2〜2.0、さらに好ましくは1.3〜1.6である。高分子量成分量がそれ未満あるいは分子量分布がそれ未満であると水素化後の重合体の靭性が低下するため好ましくなく、高分子量成分量がそれより多くなる、あるいは分子量分布がそれぞれより大きくなると本発明のような水素化共重合体の合成が困難になる上に、水素化共重合体の成形物の熱変形温度が低下するため好ましくない。
なお、本明細書中におけるGPC法によって得られる分子量はすべてポリスチレン換算の分子量であり、テトラヒドロフランを展開溶媒として、温度40℃で測定した値を基準としている。この条件は一般的にGPC法による分子量の測定で使用されているものである。また、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)はそれぞれ下記式によって表される分子量である。
Mn={Σ(Mi×Ni)}/(ΣNi)
Mw={Σ(Mi2×Ni)}/{Σ(Mi×Ni)}
Mz={Σ(Mi3×Ni)}/{Σ(Mi2×Ni)}
上式中、Miはi成分の分子量、Niはi成分の数である。また、Mw/Mnは分子量分布の広がりの程度を示す指標であり、Mz/Mwは高分子量成分の寄与をより反映した分子量分布を表現した指標である。
(水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は該スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を90%以上水素化することによって得られる重合体である。水素化率は好ましくは95%以上、また好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。それ未満では不飽和結合が多くなりすぎて、透明性が低下するため好ましくない。ここでいう水素化率とは芳香族環のモル数を二重結合に相当するモル数に置き換え、共重合体中の共役ジエン由来の二重結合のモル数と併せた全体のモル数に対する水素化率のことを指す。例えば、水素化されていないスチレン由来の芳香族環は二重結合3モルとして計算されたものである。通常、共役ジエンに由来する二重結合は芳香族環よりはるかに水素化されやすく、本発明においてはほぼ完全に水素化されている。一方、芳香族環が水素化されない場合には、大部分は芳香族環のままであるが、芳香族環が部分的に水素化されて二重結合となっている場合もわずかながら存在することがある。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体における(水素化スチレン重合体ブロック)/(水素化共役ジエン重合体ブロック)の重量比としては、上述したように75/25〜97/3であることが好ましい。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られるポリスチレン換算の分子量で30,000〜200,000g/mol、好ましくは50,000〜180,000g/mol、より好ましくは60,000〜160,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、水素化反応が困難になり、また、水素化共重合体の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では、水素化反応も容易になり、水素化共重合体の溶融粘度も下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20%含有する。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。高分子量成分量がそれ未満であると熱変形温度が低下したり靭性が低下するため好ましくなく、またそれより大きくなると本発明のような水素化共重合体の合成が困難になる上に、成形性が著しく低下するため好ましくない。
また、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布が、GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.2であることが好ましく、より好ましくは1.4〜1.8、さらに好ましくは1.4〜1.7である。また、同様にGPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mwの値で1.1〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.0、さらに好ましくは1.3〜1.6である。
さらに本発明においては該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体のGPC法で求めた分子量分布曲線において、その頂点ピークの分子量以上の領域における分布曲線が実質的に下記式(1)で表される領域の範囲内にあることが好ましい。
(式中、xは分子量、x0はGPC法で求めた分子量分布曲線における頂点ピーク分子量、HはGPC法で求めた分子量分布曲線におけるx0の高さを表し、w、ρはそれぞれ1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0を満足する。)
w/x0およびρのより好ましい範囲は1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である。GPC法で求めた分子量分布曲線が式(1)で表される範囲をはずれる場合には靭性が低下したり、あるいは溶融粘度が高くなり、成形性が劣るため好ましくない。
式(1)で表されるように高分子量側にある程度の裾をひくような分子量分布をもった水素化共重合体は熱変形温度が高く、靭性も高く、また、成形性も優れるため、好ましい。
上記のように水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体に含まれる高分子量成分は、少量でも靭性向上、熱変形温度向上に寄与し、また、上記の範囲内であれば、共重合体の溶融粘度に与える影響は少なく、成形性には大きな効果を与えない。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は水素化スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体から主としてなる。該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体には水素化スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/または水素化スチレン重合体が含まれていてもよく、その含有量としては0〜20重量%であることが好ましい。含有量はより好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。つまり、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体における水素化スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体含有量が、85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが最も好ましい。水素化スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/または水素化スチレン重合体の含有量が、上記より多いと靭性、透明性が低下するため好ましくない。含有する水素化スチレン−共役ジエン二元共重合体、水素化スチレン重合体の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜200,000g/mol、より好ましくは2,000〜180,000g/mol、さらに好ましくは3,000〜160,000g/molである。
(水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の製造方法)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は完全混合槽型重合槽を用いてスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を連続的に合成する工程および該共重合体を水素化する工程を経て好適に製造される。より好ましくは、下記工程(I)〜(IV)、スチレンおよびアニオン重合開始剤の溶液を完全混合槽型第一重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的に重合する工程(I)、工程(I)で得られた反応混合物および共役ジエンを完全混合槽型第二重合槽に連続的に供給し、共役ジエンを連続的にブロック共重合する工程(II)、工程(II)で得られた反応混合物およびスチレンを完全混合槽型第三重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的にブロック共重合する工程(III)、工程(III)で得られた反応混合物に水素化触媒を添加し、水素化反応を行う工程(IV)を経ることが好ましい。
さらに、工程(I)〜(III)において下記式(a)〜(g)
(a)1≦V1/v1≦500
(b)1≦V2/(v1+v2)≦500
(c)1≦V3/(v1+v2+v3)≦500
(d)0.01≦CS1≦9
(e)0.01≦CI≦10
(f)0.01≦CS3≦9
(g)2×102≦(CS1v1+CIv2+CS3v3)/CBv1≦2×104
(式中、V1は第一重合槽中の反応混合物の体積(L)、v1は第一重合槽に供給するスチレン、アニオン重合開始剤および必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V2は第二重合槽中の反応混合物の体積(L)、v2は第二重合槽に供給する共役ジエンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V3は第三重合槽中の反応混合物の体積(L)、v3は第三重合槽に供給するスチレンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、CS1は第一重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CIは第二重合槽に供給する共役ジエンの濃度(mol/L)、CS3は第三重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CBは第一重合槽に供給するアニオン重合開始剤の濃度(mol/L))を全て満足することが好ましい。さらにV1=V2=V3であることが好ましい。また、工程(I)〜(III)を温度30〜100℃で行うことが好ましい。
以下、工程(I)〜(IV)について説明する。
工程(I)においては完全混合槽型第一重合槽にスチレンおよびアニオン重合開始剤の溶液を連続的に添加する。完全混合槽において添加された溶液は、既に重合槽中に存在している溶液と均一に混合される。アニオン重合開始剤としては周期律表1〜2族の金属およびそれらの有機金属化合物を挙げることができる。
具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のアルカリ土類金属、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、フェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム等の有機リチウム化合物、メチルナトリウム、エチルナトリウム、n−プロピルナトリウム、iso−プロピルナトリウム、n−ブチルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物、ジメチルマグネシウム、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ジメチルカルシウム、ビス(シクロペンタジエニル)カルシウム等の有機アルカリ土類金属化合物を挙げることができる。これらのうち、入手性、操作性の点から有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。このうち、n−ブチルリチウムを用いると、スチレンとn−ブチルリチウムの反応によるスチリルリチウムの生成(いわゆる開始反応)がスチレンのアニオン重合反応(いわゆる成長反応)よりも遅いので分子量分布のより広い重合体が得られる。また、sec−ブチルリチウムを用いる場合には逆に開始反応の方が成長反応よりもはるかに速いので分子量分布のより狭い重合体が得られる。つまり、スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体において、スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体含有量を85重量%以上とするには、sec−ブチルリチウム等の開始反応の速いアニオン重合開始剤を用いることが好ましい。
この際、上記の開始剤をさらに活性化させ、反応速度の向上、分子量の増大、アニオンの失活防止を図る目的で電子供与性化合物を添加してもよい。電子供与性化合物とは開始剤の機能を損なうことなく開始剤の金属に電子供与し得る化合物であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子を含む化合物である。具体的にはフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチル1,3−プロパンジアミン、テトラメチルフェニレンジアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の三級アミン;ジメチルスルフィド、チオフェン、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルホスフィノメタン、ジメチルホスフィノエタン、ジメチルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノメタン、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン等の三級ホスフィン類;ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−フェノキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−フェノキシド等の金属アルコキシドを挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしてテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。本発明においては、リン原子を含まない電子供与性化合物が好ましく用いられる。
電子供与性化合物の添加量としては、開始剤と電子供与性化合物の種類にもよるが、開始剤1molに対し、0.1〜100mol、好ましくは0.2〜50mol、より好ましくは0.3〜10molである。添加量が少なすぎると活性化効果が得られず、また、多すぎても活性化効果が増大するわけでもなく、電子供与性化合物を浪費するだけなので、好ましくない。ただし、電子供与性化合物を溶媒として用いる場合にはこの限りではない。
第一重合槽に添加されるスチレンおよびアニオン重合開始剤は溶液の状態で添加されることが好ましい。ここで用いる溶媒としては重合体を溶解し、スチレンとアニオン重合開始剤の反応を阻害させるものであれば特に限定されないが、好ましい例として、ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のC4〜12の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等のC4〜12の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、テトラリン、ナフタレン等のC6〜12の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル等のC4〜12のエーテル類を挙げることができる。これらのうち、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルが特に好ましい。また、重合反応時には活性末端が水、酸素等に対して非常に敏感であるため、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、あるいは液密の条件下で、試薬、溶媒、不活性ガスを十分に脱水した環境下で行うことが好ましい。具体的に試薬、溶媒に含まれる水の量としては100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
第一重合槽にて添加する溶液(スチレン、アニオン重合開始剤および溶媒の和)の添加速度v1(L/min)は下記式(a)
(ここでV1は第一重合槽中の反応混合物の体積(L)v1は第一重合槽に供給するスチレン、アニオン重合開始剤および必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)である。)を満足することが好ましい。式(a)におけるV1/v1は第一重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V1/v1が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第一重合槽におけるスチレンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V1/v1≦400である。
また、第一重合槽に添加するスチレンの濃度(CS1(mol/L))としては下記式(d)
を満足することが好ましい。0.01より低いと生産性が上がらず、また9より高いと反応混合物の粘度が上がりすぎたり、重合反応時の発熱によって温度を制御することが困難になるため好ましくない。また、アニオン重合開始剤の濃度(CB(mol/L))としては下記式(g)
(ここで、v1、CS1は式(a)、(d)における定義と同義であり、v2は第二重合槽に供給する共役ジエンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、v3は第三重合槽に供給するスチレンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、CIは第二重合槽に供給する共役ジエンの濃度(mol/L)、CS3は第三重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CBは第一重合槽に供給するアニオン重合開始剤の濃度(mol/L)である。)
を満足することが好ましい。第一重合槽におけるスチレン重合体の分子量は(CS1v1+CIv2+CS3v3)/CBv1の値によってある程度規定される。従って、この値が2×102より低いと分子量が小さくなりすぎ、最終的に実用に耐える強度をもった重合体が得られず、また2×104より高いと成形性の良好な重合体を得ることができず、好ましくない。
かくして工程(I)では第一重合槽においてスチレンとアニオン重合開始剤との反応により末端がアニオン化されたスチレン重合体ブロックを含む反応混合物が得られ、該反応混合物は添加された溶液の速度とほぼ同等の速度で第二重合槽へと添加される。
工程(II)においては工程(I)で得られた反応混合物および共役ジエンを完全混合槽型第二重合槽に連続的に供給し、共役ジエンを連続的にブロック共重合する。共役ジエンはそのままあるいは溶液状態で添加することができる。溶液として添加する場合に使用する溶媒としては上述した工程(I)で例示した溶媒を使用することができるが、工程(I)で使用するものと同一の溶媒を使用することが好ましい。
工程(II)において第二重合槽に添加される共役ジエンあるいは共役ジエン溶液の添加速度v2(L/min)は下記式(b)
(ここでV2は第二重合槽の反応混合物の体積、v1、v2は前式(g)における定義と同義である。)
を満足することが好ましい。第二重合槽においては工程(I)で得られた反応混合物がほぼv1の速度で、また共役ジエンあるいは共役ジエン溶液がv2の速度で供給されるので、V2/(v1+v2)は第二重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V2/(v1+v2)が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第二重合槽における共役ジエンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V2/(v1+v2)≦400である。
また、第二重合槽に添加する共役ジエンの濃度(CI(mol/L))としては下記式(e)
を満足することが好ましい。CIが0.1より低いと生産性が上がらず、好ましくない。
工程(II)において共役ジエンは工程(I)から供給された反応混合物に含まれるアニオン化されたスチレン重合体ブロックを開始剤とレてそこから共役ジエン重合体ブロックが生成し、最終的に末端がアニオン化されたスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体が形成される。また、工程(I)から供給された反応混合物には未反応のアニオン重合開始剤が含まれることがあり、その場合にはそのアニオン重合開始剤を開始剤として共役ジエンの重合反応も進行する。その結果、末端がアニオン化された共役ジエン重合体が形成される。かくして第二重合槽で形成される上記のような反応混合物は添加された溶液の速度(v1+v2)とほぼ同等の速度で第三重合槽へと添加される。
工程(III)においては工程(II)で得られた反応混合物およびスチレンを完全混合槽型第三重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的にブロック共重合する。スチレンはそのままあるいは溶液状態で添加することができる。溶液として添加する場合に使用する溶媒としては上述した工程(I)で例示した溶媒を使用することができるが、工程(I)で使用するものと同一の溶媒を使用することが好ましい。
工程(III)において第二重合槽に添加されるスチレンあるいはスチレン溶液の添加速度v3(L/min)は下記式(c)
(ここでV3(L)は第三重合槽の反応混合物の体積、v1、v2、v3は前式(g)における定義と同義である。)
を満足することが好ましい。第三重合槽においては工程(II)で得られた反応混合物がほぼv1+v2の速度で、またスチレンあるいはスチレン溶液がv3の速度で供給されるので、V3/(v1+v2+v3)は第三重合槽における反応混合物の平均滞留時間(min)を意味する。V3/(v1+v2+v3)が1より小さいと重合反応に比べて滞留時間が小さくなり、第三重合槽におけるスチレンの重合体への変換効率が低くなり、好ましくない。また、500より大きい場合には変換効率は非常に高くなるが、生産性が低くなるため好ましくない。さらに好ましい範囲としては20≦V3/(v1+v2+v3)≦400である。
また、第二重合槽に添加するスチレンの濃度(CS3(mol/L))としては下記式(f)
を満足することが好ましい。CS3が0.01より低いと生産性が上がらず、好ましくない。
工程(III)において供給されるスチレンは、工程(II)から供給された反応混合物に含まれるアニオン化されたスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体を開始剤として重合され、そこからスチレン重合体ブロックが生成し、最終的に末端がアニオン化されたスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体が形成される。また、工程(II)から供給された反応混合物には末端がアニオン化された共役ジエン重合体および未反応のアニオン重合開始剤が含まれることがあり、その場合にはそれらを開始剤としてスチレンの重合反応も進行する。その結果、末端がアニオン化された共役ジエン−スチレン二元ブロック共重合体およびスチレン重合体が形成される。かくして第三重合槽で形成される上記のような反応混合物は添加された溶液の速度(v1+v2+v3)とほぼ同等の速度で第三重合槽から排出される。
第三重合槽から排出された反応混合物は末端のアニオンを失活させるため、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのプロトン供与性試薬と接触させることが好ましい。プロトン供与性試薬の量としては第一重合槽に添加するアニオン重合開始剤1molに対して0.1〜10molが好ましい。
かくして工程(I)〜(III)によって得られる反応混合物にはスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体、および場合によってスチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体が含まれる。スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体の総量は反応混合物に含まれる重合体の総量の20重量%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であることが好ましい。つまり、スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体、スチレン重合体の総量がそれより多いと靭性、HDTが低下するため好ましくない。
また、スチレン、共役ジエン等の単量体の重合体への変換率は90%以上より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が好ましい。
なお、工程(I)〜(III)においてスチレン、共役ジエンを添加する際にスチレン、共役ジエン以外の成分として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチル−ビニルナフタレン等のスチレン系単量体を、スチレン及び共役ジエン全体の10重量%以下程度の範囲で添加してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、さらに工程(IV)において、上記のような重合体を水素化することにより、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を得ることができる。
水素化は水素化触媒の存在下、スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体に含まれるスチレン由来の芳香族環および共役ジエン由来の炭素間二重結合を水素化することにより達成される。
水素化触媒は、該共重合体に含まれる芳香族環および炭素間二重結合を水素化し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的にはニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはその酸化物、塩、錯体等のカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒を挙げることができる。これらの中でもニッケル、パラジウム、白金、ルテニウムをアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土に担持したものが高い反応性を示すため、好ましく用いられる。具体的にはニッケル/シリカ、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ・アルミナ、ニッケル/珪藻土、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、パラジウム/シリカア・ルミナ、パラジウム/珪藻土、白金/シリカ、白金/アルミナ、白金/シリカ・アルミナ、白金/珪藻土、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナ、ルテニウム/シリカ・アルミナ、ルテニウム/珪藻土等を挙げることができ、中でもニッケル/シリカ、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ・アルミナ、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、パラジウム/シリカ・アルミナが好ましい。かかる水素化触媒は、その触媒活性にもよるが、該共重合体に対して0.5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
水素化反応は重合反応後の重合体を一旦単離してから行ってもよいが、工程(III)から出てきた反応混合物にプロトン供与性試薬を添加後したものをそのまま用いて、あるいはさらに必要な溶媒を加えて行うことも可能である。かかる溶媒は、水素化触媒能、分子鎖切断等の副反応の有無、水素化反応前後の重合体の溶解度等を勘案して選択することが好ましいが、具体的にはブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のC4〜12の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等のC4〜12の脂環族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル等のC4〜12のエーテル類を挙げることができる。これらのうち、触媒の種類に依存するものの、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルが特に好ましい。その他、反応の活性を高める、あるいは水素化分解による分子鎖の切断による分子量低下を抑制する目的でエステル類、アルコール類などの極性溶媒を、重合体の溶解度を妨げない範囲内で上記溶媒に加えてもよい。
本発明では、上記の溶媒系で、該共重合体の濃度が3〜50重量%の範囲で水素化反応を行うことが好ましい。該共重合体の濃度が3重量%未満では生産性、経済性の面から好ましくなく、50重量%を超えると溶液粘度が上がりすぎて取り扱い面、また反応性の面からも好ましくない。
水素化反応条件は、用いる触媒にもよるが、通常水素圧3〜25MPa、反応温度70〜220℃の範囲内で行われる。反応温度が低すぎると反応が進行しにくく、反応温度が高すぎると水素化分解による分子量低下が起こりやすくなり、好ましくない。分子鎖の切断による分子量低下を防ぎ、かつ円滑に反応を進行させるためには用いる触媒の種類、濃度、共重合体の溶液濃度、分子量等により、適宜決定される適切な温度、水素圧により水素化反応を行うことが好ましい。
また、本発明に用いられる水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の水素化率は90〜100%、好ましくは95〜100%、また好ましくは98〜100%、より好ましくは99〜100%であることが好ましい。水素化率が低すぎると共重合体の透明性、物理的耐熱性が低下するため好ましくない。なお、共役ジエン単量体由来の単位に含まれる炭素間二重結合の水素化は、スチレン由来の芳香族環の水素化よりもはるかに起こり易いため、該水素化率が90%以上の場合は環状共役ジエンおよび鎖状系単量体由来の単位に含まれる炭素間二重結合は実質的に完全に水素化されている。
上記方法によって得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)はGPC法により得られるポリスチレン換算の数平均分子量で前述の数値範囲である。通常、GPC法により得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の数平均分子量は水素化前の共重合体の数平均分子量の50%〜100%程度の値となるが、これは分子鎖が切断するためではなく、ポリスチレンの換算による影響である。
上記の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の水素化反応においては分子鎖の切断が伴わないことが好ましく、このことは水素化前後における分子量分布がほとんど変わらないことから明らかにすることができる。すなわち、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布の状態としては水素化前のスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の分子量分布の状態とほぼ同じであることが好ましく、具体的にはGPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20%含有することが好ましい。より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15%である。水素化反応終了後は、遠心分離、ろ過等の公知の後処理方法により触媒の除去を行うことができる。水素化共重合体を光学材料用途に用いる本発明では、水素化触媒として用いた樹脂内の残留金属触媒成分をできる限り少なくする必要があり、かかる残留金属触媒量が10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは500ppb以下である。特に、本発明では、残留金属触媒のなかでも、遷移金属含有量が10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体とすることが好ましい。水素化触媒を除去した重合体溶液から、溶媒の蒸発留去、ストリッピング、あるいは再沈殿等の方法により目的の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を得ることができる。
(組成物、成形材料)
本発明において得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体は目的に応じて分子量の異なる該共重合体のブレンド、他の重合体との組成物として用いてもよい。混合の割合は、特に限定されず、組成物の物性を考慮して適宜決定すればよいが、通常、水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体/混合する重合体の重量比で1/99〜99/1が好ましく、より好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは、40/60〜60/40である。他の重合体としては、例えば特開昭63−4391号公報に記載の水素化スチレン系重合体、特開平10−116442号公報に記載の水素化スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体等を挙げることができる。これらのうち、水素化スチレン重合体が特に好ましい。
水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物の数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られるポリスチレン換算の分子量で30,000〜300,000g/mol、好ましくは50,000〜250,000g/mol、より好ましくは60,000〜200,000g/molの範囲である。数平均分子量がそれより大きいと、該組成物の溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくない。また、それ未満では組成物の溶融粘度は下がるが、靭性が低下するため好ましくない。
また、希薄溶液中で測定した還元粘度も分子量把握の重要な尺度である。本発明においては、濃度0.5g/dLのトルエン溶液中、30℃で測定した還元粘度ηsp/cで表示すると、還元粘度としては好ましくは0.1〜5dL/g、より好ましくは0.2〜2dL/gの範囲である。
水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は、GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜30%含有することが好ましい。より好ましくは3〜25%、さらに好ましくは4〜20%である。高分子量成分量がそれ未満であると熱変形温度が低下したり靭性が低下するため好ましくなく、またそれより大きくなると成形性が著しく悪化するため好ましくない。
また、水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物の分子量分布が、GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)とMnの比、Mw/Mnの値で1.3〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.4〜2.2である。また、同様にGPC法により得られるz平均分子量(Mz)とMwの比、Mz/Mnの値で1.1〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.5、さらに好ましくは1.3〜2.2である。
上記のように水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物に含まれる高分子量成分は、少量でも熱変形温度向上に寄与し、また、上記の範囲内であれば、組成物の溶融粘度に与える影響は少なく、成形性には大きな効果を与えない。
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は200℃における緩和スペクトルが下記式(2)
(式(2)中、logは常用対数、τは緩和時間(sec)、H(τ)(Pa)は200℃での緩和スペクトルを表す。)を満たすことが好ましい。こうした条件は先述の条件を満たす水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物において実現することが可能である。
緩和スペクトルが上述した式(2)の範囲外の場合には、該水素化共重合体を例えば高記録密度の光ディスク基板用樹脂材料として使用する場合に十分なピットあるいはランドグルーブ転写性と光ディスク基板のそりを満足することが困難となりがちである。これは、緩和スペクトルが式(2)の範囲外では成形時の残留応力が十分に緩和されずに残り、その残留応力が転写性不良や、そりの発生する原因になり得るからである。
こうした緩和スペクトルは、振動実験等から得られる複素弾性率の結果から、例えば、「新物理学進歩シリーズ 8 レオロジー」(山本 三三三著 槙書店版 1964年発行)等に記載の方法によって求めることができる。式(2)は200℃での10−2≦τ≦104の緩和時間の範囲において緩和スペクトルH(τ)が(2)式で表される範囲に入ることが好ましいことを示している。緩和スペクトルの範囲としては転写性やそりなどの観点から上記式中の積、H(τ)・τが小さいほど好ましいが、あまり小さなものは分子量、還元粘度が小さくなりすぎ、実用的なものは得られにくい。上記式におけるより好ましい範囲は下記式(2a)の範囲である。
(式(2a)中、logは常用対数、τは緩和時間(sec)、H(τ)(Pa)は200℃での緩和スペクトルを表す。)
本発明における水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物は温度300℃、せん断速度103(1/s)における溶融粘度が10〜200(Pa・sec)(100〜2,000ポイズ)であることが好ましい。こうした条件は先述の条件を満たす水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物において実現することが可能である。溶融粘度がそれより低い場合には成形性、特に高密度光ディスク基板用材料として使用する場合にはピットあるいはランドグルーブ転写性に優れるものの、実用に耐えるだけの靭性を維持することができないため好ましくなく、また、溶融粘度がそれより高い場合には靭性はある程度高いものの、成形性、転写性が悪くなるため好ましくない。より好ましい範囲としては温度300℃、せん断速度103(1/s)における溶融粘度が50〜130Pa/sec(500〜1,300ポイズ)である。
本発明の水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体には、溶融成形時の熱化学安定性を向上させるため、あるいは自動酸化を防止するために、イルガノックス1010、1076(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等のヒンダードフェノール系安定化剤、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等のホスフィン系安定化剤、あるいはスミライザーGMやスミライザーGS(住友化学(株)製)等のアクリルヒンダードフェノール系安定剤を加えることが好ましい。本発明においては、非リン系の安定化剤が好ましく用いられる。また、必要に応じて長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族エステル等の離型剤、その他滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の成形材料は、上述の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体または水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物から主としてなる。
本発明の成形材料は、射出成形、射出圧縮成形、押し出し成形、溶液流延法等の公知の方法により成形することができる。特に射出成形、射出圧縮成形法による光ディスク基板あるいは光学用レンズ等の光学部材の製造、特にブルーレーザー用の光ディスク基板の製造に好適に用いることができる。かかる成形では、樹脂温度250〜360℃、好ましくは270〜350℃、さらに好ましくは280〜340℃の範囲が用いられ、金型温度は60〜140℃、好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは80〜125℃の範囲が用いられる。
かくして得られる光ディスク基板や光学用レンズをはじめとする各種成形物において、水素化共役ジエン重合体ブロック部が島構造になったミクロ相分離構造を形成していることが好ましい。ミクロ相分離構造を有していない場合には靭性や耐熱性が低下するため好ましくない。
本発明によれば、分子量の分布が限定された水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体および光学材料が提供される。この水素化共重合体は、例えば透明性など従来の樹脂本来の特性の他に、機械特性に優れ、耐熱性、成形性にも優れるため、光ディスク基板をはじめとする光学材料として好適に用いることができる。
実施例
以下に実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
(試薬、溶媒)
スチレン、イソプレンは水素化カルシウムから蒸留精製し、十分乾燥したものを用いた。シクロヘキサン、メチル−t−ブチルエーテルは脱水グレードのものを購入し、さらに4Aモレキュラーシーブあるいは塩基性アルミナに接触させて十分乾燥したものを用いた。
n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムは市販品であるシクロヘキサン溶液をそのまま用いた。
(物性測定)
イソプレン含量:JEOL JNR−EX270型核磁気共鳴吸収装置を用い、1H−NMR測定により定量した。なお、水素化反応が殆ど進行した場合、水素化反応により、スチレン由来の重合単位とイソプレン由来の重合単位との重量分率は殆ど変化しないので、この測定値を水素化共役ジエン重合体ブロックの重量比率とした。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)z平均分子量(Mz):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工(株)製GPC、Syodex System−11)により、テトラヒドロフランを溶媒に用いて測定し、40℃におけるポリスチレン換算の分子量の分布状態から求めた。
分子量分布曲線:GPC法によって得られた時間−強度の関係曲線f(t)を下記式(3)を用いて分子量−強度の関係曲線f(x)に補正することにより導出した。
(式中f(x)は分子量xにおける強度、f(t)は時間(t)における強度、A、B、Cは標準ポリスチレンを用いて得られる時間と分子量の関係でlog(x)=At3+Bt2+Ct+Dを満足する定数である。)
水素化率:JEOL JNR−EX270型核磁気共鳴吸収装置を用い、1H−NMR測定により水素化率を定量した。
全光線透過率:JIS K7105に従い、測定した。
Izod衝撃強度:JIS K7110に従い、ノッチ無しで衝撃試験を行い、測定した。
破断伸度:JIS K7113に従い、引張り破壊伸びを測定した。
熱変形温度:JIS K7206に従い測定した。
緩和スペクトル:レオメトリック・サイエンティフィック(株)社製RDAII型を使用し、コーンプレート型で200℃、230℃、280℃において振動実験を行った。得られた曲線から時間温度の換算を行い、200℃を基準としたマスター曲線を作成した。マスター曲線を用いて、「新物理学シリーズ 8 レオロジー」(山本 三三三著 槙書店版、1964年発行 第39頁.2.複素弾性率の求め方)等に記載の方法により、緩和スペクトルへの変換を行った。
溶融粘度:(株)島津製作所製、高化式(キャピラリータイプ)フローテスターを用いて測定し、せん断速度が103(s−1)における溶融粘度を算出した。
ミクロ相分離構造の有無:成形片を四酸化ルテニウムを用いて染色して、観察した。
成形片の成形:射出成形機(名機製作所(株)製M50B)により成形した。
光ディスク基板成形:射出成形機(日精樹脂工業(株)製MO40D3H)により、DVD用の金型とランドグルーブ構造を有するスタンパー(容量2.6GB)を使用し、0.6mm厚の光ディスク基板を射出圧縮成形により成形した。
転写率:転写性の評価は、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業製SFA−300)を用い、中心から58mmの位置での断面形状からグルーブ深さを測定し、下記式により算出した。
転写率=(基板のグルーブ深さ)/(スタンパーのグルーブ深さ)
[実施例1]
攪拌翼を供えた金属製の第一重合槽、第二重合槽および第三重合槽をこの順にパイプで連結した装置を用い、重合反応を行った。重合槽の内部は十分に乾燥し窒素置換した。第一重合槽にスチレン、n−ブチルリチウムおよびシクロヘキサンを総量で0.18L/minとなる速度で添加した。加えられるスチレン、n−ブチルリチウムの濃度はそれぞれ0.94mol/L、0.0044mol/Lであった。また、第二重合槽には4.2mol/Lのイソプレン−シクロヘキサン溶液を0.014L/minで添加した。また、第三重合槽には1.1mol/Lのスチレン−シクロヘキサン溶液を0.16L/minで添加した。第一〜第三重合槽の反応混合物の温度は70℃にした。重合反応は全ての重合槽を液密にした状態で行った。第三重合槽から反応混合物を取り出し、イソプロパノールを添加することによりスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液を得た。反応混合物中の重合体の分子量の経時変化を追跡し、ほぼ一定の値になった時点から反応混合物を回収した。この時点での重合体の収率(モノマーの重合体への変換率)は99%以上であり、また、各重合槽を出たところの重合体の収率も99%以上だった。回収した反応混合物にパラジウム/シリカを重合体に対して15重量%加え、水素圧9.8MPa、温度180℃で12時間水素化反応を行った。反応終了後、反応混合物から水素化触媒を除去し、スミライザーGSを水素化共重合体に対して2700ppm添加した後、溶媒を除去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。重合反応および水素化反応の条件、重合反応後の共重合体および水素化反応後の水素化共重合体の性質を表1に示す。また、GPC法によって求めた分子量分布曲線を第1図に示す。第1図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を射出成形機を用いて成形した。成形はシリンダー温度280℃、金型温度70℃で行った。得られた成形片を用いて各種物性を測定した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
また、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を射出成形機を用いて光ディスク基板に成形した。成形はシリンダー温度330℃、金型温度110℃で行った。成形時にクラックを発生することはなかった。転写率は98%であり、十分な転写を実現することができた。また、80℃、8時間アニール後の転写率は96%であり、ランドグルーブの変形の度合いも十分低かった。結果をまとめて表2に示す。
[参考例1]
実施例1において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムが5.7×10−4mol/L(第一重合槽で添加したn−ブチルリチウムの13%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のn−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、共役ジエン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して13重量%以下であると見積もられた。従って、実施例1で得られた水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体には13重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[実施例2]
反応条件を変えた以外は実施例1と同様な方法を用い、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。結果を表1に示す。また、GPC法によって得られた分子量分布曲線を第3図に示す。第3図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
さらに、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いて実施例1と同様に物性、光ディスク基板特性を評価した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[参考例2]
参考例1と同様に、実施例2において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムが3.8×10−4mol/L(第一重合槽で添加したn−ブチルリチウムの10%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のn−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったn−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、イソプレン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して10重量%以下であると見積もられた。従って、実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体には10重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[実施例3]
n−ブチルリチウムをsec−ブチルリチウムに変え、反応条件を変えた以外は実施例1と同様な方法を用い、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。結果を表1に示す。また、GPC法によって得られた分子量分布曲線を第4図に示す。第4図に示すように、分子量分布曲線は実質的に式(1)の範囲内であった。
さらに、得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いて実施例1と同様に物性、光ディスク基板特性を評価した。結果を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[参考例3]
参考例1と同様に、実施例3において各重合槽から出てきた溶液を分析した。その結果、第一重合槽から出てきた反応混合物には第一重合槽で未反応だったsec−ブチルリチウムが6.0×10−5mol/L(第一重合槽で添加したsec−ブチルリチウムの2%)含まれていた。また、第二重合槽から出てきた反応混合物には未反応のsec−ブチルリチウムは検出されなかった。このことから、第一重合槽で未反応だったsec−ブチルリチウムは第二重合槽でイソプレンと反応し、ポリイソプレニルリチウムになったことが示唆された。このポリイソプレニルリチウムはさらに第三重合槽においてスチレンと共重合し、イソプレン−スチレン二元ブロック共重合体になり、その量は全体の重合体に対して2重量%以下であると見積もられた。従って、実施例3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体には2重量%以下の水素化スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体が含まれていると見積もられた。
[比較例1]
窒素置換した金属製オートクレーブに数平均分子量170,000、分子量分布2.20であるポリスチレン500g、シクロヘキサン3,300g、メチル−t−ブチルエーテル700g、ニッケル/シリカ・アルミナ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で8時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化スチレン重合体は熱変形温度が115℃と高かったものの、靭性が低く、光ディスク基板成形時にクラックが多数発生した。この水素化スチレン重合体の各種物性、光ディスク基板成形結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液と比較例1で得られた水素化スチレン重合体溶液を重合体の重量比で50:50となるように混合した。得られた溶液にスミライザーGSを重合体全体に対して2,700ppm添加し、溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および水素化スチレン重合体からなる組成物を得た。この組成物の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[実施例5]
実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体溶液と比較例1で得られた水素化スチレン重合体溶液を重合体の重量比で75:25となるように混合した。得られた溶液にスミライザーGSを重合体全体に対して2,700ppm添加し、溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および水素化スチレン重合体からなる組成物を得た。この組成物の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。また、200℃における緩和スペクトルを第2図に示す。第2図に示すように緩和スペクトルは式(2)の範囲内であった。
[比較例2]
十分に乾燥し、窒素置換した金属製オートクレーブにスチレン270g、シクロヘキサン2,500gを仕込んだ。溶液を40℃まで加熱した後、1.6Mのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液4.6mLを加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。次いでイソプレン61gをシクロヘキサン溶液として加え,さらに2時間反応させた。さらに続いて、スチレン270g、シクロヘキサン700gを加え、2時間反応させた。反応終了後、イソプロパノール0.7gを加え,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。GPCから求めた数平均分子量は83,000であり、1H−NMRから求めたスチレン/イソプレンの重量比は90/10だった。
この溶液にシクロヘキサン1,300g、メチル−t−ブチルエーテル700gニッケル/シリカ・アルミナ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で4時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化共重合体に含まれる数平均分子量の3倍以上の成分は0%だった。この水素化共重合体は、靭性がそれほど高くなく、光ディスク基板成形時にクラックが若干発生した。また、熱変形温度も96℃と高くなく、成形した光ディスク基板の転写率はアニール前後で97%から86%に低下してしまった。この水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。
[比較例3]
十分に乾燥し、窒素置換した金属製オートクレーブにスチレン270g、シクロヘキサン2,500gを仕込んだ。溶液を40℃まで加熱した後、1.6Mのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液4.5mLを加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。次いでイソプレン96gをシクロヘキサン溶液として加え,さらに2時間反応させた。さらに続いて、スチレン270g、シクロヘキサン700gを加え、2時間反応させた。反応終了後、イソプロパノール0.7gを加え,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。GPCから求めた数平均分子量は91,000であり、1H−NMRから求めたスチレン/イソプレンの重量比は85/15だった。
この溶液にパラジウム/シリカ80gを加え、水素圧10MPa、温度180℃で8時間水素化反応を行った。溶液をオートクレーブより取り出した後、濾過によって水素化触媒を除去した。得られた溶液に安定剤としてスミライザーGSを重合体に対して2,700ppm加えてから溶媒を留去して、水素化スチレン−イソプレン−スチレン重合体を得た。水素化率は99%以上だった。この水素化共重合体に含まれる数平均分子量の3倍以上の成分は0%だった。この水素化共重合体は、靭性が高く、光ディスク基板成形時にクラックは発生しなかった。しかし、熱変形温度も93℃と高くなく、成形した光ディスク基板の転写率はアニール前後で93%から80%に低下してしまった。この水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体の各種物性、光ディスク基板成形評価を表2に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
第2図は実施例1〜3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および実施例4、5で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体組成物の200℃を基準とした緩和スペクトルを示す。実線は、式(2)において等号の成り立つ場合を示し、点線は、式(2a)において等号の成り立つ場合を示す。
第3図は実施例2で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
第4図は実施例3で得られた水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布曲線(実線)を示す。点線で囲まれた領域は式(1)において1.3≦w/x0≦3.0、1.5≦ρ≦3.0である領域を示す。また、破線で囲まれた領域は式(1)において1.5≦w/x0≦2.5、1.6≦ρ≦2.5である領域を示す。
Claims (12)
- スチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから主としてなるスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を水素化することによって得られる水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体であって
(ア)水素化スチレン重合体ブロック/水素化共役ジエン重合体ブロックの重量比が75/25〜97/3であり、
(イ)水素化率が90%以上であり、
(ウ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で求めた数平均分子量(Mn)が30,000〜200,000g/molであり、かつ
(エ)GPC法で求めた数平均分子量(Mn)の3倍以上の分子量をもった高分子量成分を1〜20重量%含有する
水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体。 - 共役ジエンがイソプレンである請求項1記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体。
- GPC法で求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.3〜2.2である請求項1または2記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体。
- GPC法で求めたz平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比Mz/Mwが1.1〜2.5である請求項1〜3いずれか1項記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体。
- 該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体が水素化スチレン−共役ジエン−スチレン三元ブロック共重合体から主としてなり、該水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体に含まれる水素化スチレン−共役ジエン二元ブロック共重合体および/または水素化スチレン重合体の含有量が0〜20重量%である請求項1〜5いずれか1項記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体。
- 完全混合槽型重合槽を用いてスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を連続的に合成する工程および該共重合体を水素化する工程からなる請求項1〜6いずれか1項記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の製造方法。
- スチレンおよびアニオン重合開始剤を完全混合槽型第一重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的に重合する工程(I)、工程(I)で得られた反応混合物および共役ジエンを完全混合槽型第二重合槽に連続的に供給し、共役ジエンを連続的にブロック共重合する工程(II)、工程(II)で得られた反応混合物およびスチレンを完全混合槽型第三重合槽に連続的に供給し、スチレンを連続的にブロック共重合する工程(III)、工程(III)で得られた反応混合物に水素化触媒を添加し、水素化反応を行う工程(IV)からなる、請求項7記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレン共重合体の製造方法。
- 工程(I)〜(III)において下記式(a)〜(g)を全て満足する条件で重合を行う、請求項8記載の製造方法。
(a)1≦V1/v1≦500
(b)1≦V2/(v1+v2)≦500
(c)1≦V3/(v1+v2+v3)≦500
(d)0.01≦CS1≦9
(e)0.01≦CI≦10
(f)0.01≦CS3≦9
(g)2×102≦(CS1v1+CIv2+CS3v3)/CBv1≦2×104
(式中、V1は第一重合槽中の反応混合物の体積(L)、v1は第一重合槽に供給するスチレン、アニオン重合開始剤および必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V2は第二重合槽中の反応混合物の体積(L)、v2は第二重合槽に供給する共役ジエンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、V3は第三重合槽中の反応混合物の体積(L)、v3は第三重合槽に供給するスチレンおよび必要に応じて加えられる溶媒の総量の供給速度(L/min)、CS1は第一重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CIは第二重合槽に供給する共役ジエンの濃度(mol/L)、CS3は第三重合槽に供給するスチレンの濃度(mol/L)、CBは第一重合槽に供給するアニオン重合開始剤の濃度(mol/L)である。) - 請求項1〜6いずれか1項記載の水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体を含む水素化スチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体組成物から主としてなる成形材料。
- 請求項10記載の成形材料からなる光学材料。
- 請求項10記載の成形材料からなる光ディスク基板。
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