JP2002002450A - シートベルト巻取り装置 - Google Patents

シートベルト巻取り装置

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JP2002002450A
JP2002002450A JP2000194025A JP2000194025A JP2002002450A JP 2002002450 A JP2002002450 A JP 2002002450A JP 2000194025 A JP2000194025 A JP 2000194025A JP 2000194025 A JP2000194025 A JP 2000194025A JP 2002002450 A JP2002002450 A JP 2002002450A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通常装着時においては乗員に圧迫感を与え
ず、緊急時には確実に乗員をシートに拘束することがで
きるシートベルト巻取り装置を提供する。 【解決手段】 通常装着時にはスラッグを解消するため
の巻取りを行わない。これは、全く巻取りを行わない
か、人間に圧迫感を与えないようなごく弱い張力又はモ
ータトルクが検出されたときにモータの巻取りを停止す
ることにより実現できる。衝突等の緊急時においては、
存在するスラッグの分だけ余分に巻取りを行わなければ
ならず、実際の緊急事態の発生を検出してから巻取りを
行ったのでは間に合わない場合が発生する。よって、本
手段においては、衝突等の危険が予測された時点で、モ
ータにより、乗員を強力にシートベルトに拘束するまで
シートベルトを巻き取るようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車等の車両に装
備されるシートベルト巻取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等に装備されるシートベルト巻取
装置は、乗員が着席してシートベルトを引き出し、タン
グをバックル装置に締結した際に、その余分な引き出し
分を吸収する機能を有している。この機能を実現するた
めに、従来のシートベルト巻取装置においては単一のリ
ターンスプリングが使用されている。シートベルトの装
着の際には、人間がこのリターンスプリングの付勢力に
抗してシートベルトを引き出し、タングをバックルに係
合させてから手を離すと、リターンスプリングの力によ
り、余分に引き出された部分が、人間の体にフィットす
るまでシートベルト巻取装置に引き込まれる。
【0003】
【発明が解決使用とする課題】以上説明したように、シ
ートベルト巻取装置においては、 (1)余分に引き出されたシートベルトを、人間の体に
フィットするまで確実に巻き取ること、また、人間が装
着しない場合においては、引き出されたシートベルトを
確実に収納部に収納するまで巻き取ること (2)正常装着した状態で乗員の胸部等に不必要な圧追
感を与えないようにすることを同時に満足することが必
要とされる。
【0004】しかしながら、単一のリターンスプリング
の付勢力を利用したシートベルト巻取装置においては、
装着時における乗員の胸部への圧迫感を小さくするため
に付勢カの弱いスプリングを使用すると、ベルト巻取り
時(収容時)の巻込み力が弱くなり、操作性、格納性が
低下すると共に、装着時に弛み(スラッグ)が発生しや
すくなる。反対に、巻取り時に充分な巻取り力を発揮す
るために付勢力の強いスプリングを使用すると、正常装
着時における乗員の胸部への圧追感が大きくなってしま
うという問題があった。
【0005】また、従来のシートベルト巻取装置では、
単一のリターンスプリングが内蔵されているので、シー
トベルトの引き出し量が増すにつれてリターンスプリン
グが巻回されてその付勢力が増大し、シートベルトの引
き出し量が増すにつれて、引き出しカも増大するという
問題もあった。
【0006】このような問題点を解決する1手段とし
て、本出願人の出願に係る発明が、特開平3−552号
公報に開示されている。これは、リターンスプリングと
して、主スプリングと付加スプリングの2つのスプリン
グを使用し、シートベルトのタングとバックルが係合し
たことを検出器により検出し、タングとバックルが係合
していない状態においては主スプリングと付加スプリン
グの両方の付勢力を、タングとバックルが係合している
場合においては主スプリングのみの付勢力を、巻取機構
に伝達することにより、ベルト巻取り時の巻き込み力を
確保しながら、正常装着時における乗員の圧迫感を低減
しようとするものである。
【0007】しかしながら、この場合においても、シー
トベルトの引き出し量が増すにつれて引き出し力が増大
するという問題は避けられず、かつ、シートベルトを外
すときに、タングとバックルの係合を外したとたんに急
激に巻取り力が強くなり、タングが窓ガラスやドアトリ
ム等に激しくぶつかるという、別の問題点が発生してい
た。
【0008】このような問題点を解消する方法として、
スプリングを用いず、モータだけで巻取りを行う方式の
ものも提案されているが、シートベルトの弛みを確実に
取り去り、かつ、乗員に圧迫感を与えないような巻取り
を行うには、精密なセンサを複数必要とし、制御機構が
複雑となるという問題点があった。
【0009】本発明は、シートベルトが有しなければな
らない本質的な機能に注目することより、通常装着時に
おいては乗員に圧迫感を与えず、緊急時には確実に乗員
をシートに拘束することができるシートベルト巻取り装
置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の第1の手段は、モータによりシートベルトを巻き取る
機能を有するシートベルト巻取り装置であって、通常装
着時にはスラッグを解消するための巻取りを行わず、衝
突等の危険が予知された段階で、モータにより、乗員を
強力にシートベルトに拘束するまでシートベルトを巻き
取る機能を有することを特徴とするシートベルト巻取り
装置(請求項1)である。
【0011】シートベルトの本質的な機能は、衝突等の
緊急時において乗員をシートに拘束することであり、通
常装着時においては、シートベルトに弛みがあっても差
し支えない。本発明はこのような新しい着眼点に立って
なされたものである。すなわち、通常装着時にはスラッ
グを解消するための巻取りを行わない。これは、全く巻
取りを行わないか、人間に圧迫感を与えないようなごく
弱い張力又はモータトルクが検出されたときにモータの
巻取りを停止することにより実現できる。
【0012】このような場合には、衝突等の緊急時にお
いては、存在するスラッグの分だけ余分に巻取りを行わ
なければならず、実際の緊急事態の発生を検出してから
巻取りを行ったのでは間に合わない場合が発生する。よ
って、本手段においては、衝突等の危険が予測された時
点で、モータにより、乗員を強力にシートベルトに拘束
するまでシートベルトを巻き取るようにしている。
【0013】衝突等の危険の予測は、乗員による急なブ
レーキ操作、車間距離センサの出力、車両間相対速度セ
ンサ、加速度センサ、スリップセンサ等の出力、又はこ
れらを組み合わせることにより行うことができる。
【0014】本手段においては、実際に衝突等が発生し
た時点でなく、それらが予知された時点でシートベルト
の巻取りを行っているので、スラッグがある場合でも遅
滞無く乗員をシートベルトに拘束することができる。
【0015】前記課題を解決するための第2の手段は、
モータとスプリングによりシートベルトを巻き取る機能
を有するシートベルトであって、通常装着時には、スプ
リングにより乗員に圧迫感を与えない弱い巻取り力でシ
ートベルトの巻取りを行い、衝突等の危険が予知された
段階で、モータにより、乗員を強力にシートベルトに拘
束するまでシートベルトを巻き取る機能を有することを
特徴とするシートベルト巻取り装置(請求項2)であ
る。
【0016】本手段においては、シートベルト装着時の
スラッグをとるための巻取をスプリングにより行うが、
このスプリングの力を従来のものより弱くしておき、乗
員に圧迫感を与えないようなものとしておく。このよう
な状態では、スラッグが取りきれない場合があるが、本
手段においてはこれは問題とならない。
【0017】すなわち、前記第1の手段と同じように、
衝突等の危険が予知された段階で、モータにより、乗員
を強力にシートベルトに拘束するまでシートベルトを巻
き取る機能を有するので、スラッグがある場合でも遅滞
無く乗員をシートベルトに拘束することができる。
【0018】前記課題を解決するための第3の手段は、
前記第1の手段又は第2の手段であって、衝突等の危険
の予知が解除された段階で、モータにより、シートベル
トを所定量だけ巻き戻す機能を有することを特徴とする
もの(請求項3)である。
【0019】本手段においては、実際に衝突等が発生せ
ず、衝突等の危険の予知が解除された段階で、モータに
より、シートベルトを所定量だけ巻き戻すようにしてい
るので、この段階で乗員がシートに拘束される状態が解
除され、その後通常の姿勢で運転を行うことができる。
【0020】前記課題を解決するための第4の手段は、
前記第1の手段又は第2の手段であって、前記モータの
巻取力をシートベルトに伝達する動力伝達機構が、外力
によりシートベルトが引き出される方向に駆動されたと
き、又は前記モーターがシートベルトを巻き取る方向に
駆動されていないときには、前記モータとシートベルト
との間の機械的な動力伝達経路を切り離すクラッチ機構
を有するものであることを特徴とするもの(請求項4)
である。
【0021】本手段においては、外力によりシートベル
トが引き出される方向に駆動されたときには、クラッチ
機構により、モータとシートベルトとの間の機械的な動
力伝達経路が切り離される。よって、モーターが引き出
し力の負荷とならないので、小さな力でシートベルトを
引き出すことができる。また、モーターがシートベルト
を巻き取る方向に駆動されていないときにも、クラッチ
機構により、モータとシートベルトとの間の機械的な動
力伝達経路が切り離される。よって、モーターがばね部
材による巻取力の負荷とならないので、ばね部材の付勢
力が小さくても、シートベルトの弛みを吸収することが
できる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例を
図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1
例であるシートベルト巻取装置の分解斜視図、図2はそ
の組立図である。図1、図2において、1はリテーナ、
2はモータ、3はモータギア、4はLギア(特許請求の
範囲の第1の回転部材に相当)、5はSギア(特許請求
の範囲の第2の回転部材に相当)、5aはローラ保持
部、6は保持部材、7はローラ、8はコネクトギア、9
はブッシュギア、9aは摺動部、9bはスプライン部、
10はリターンスプリング、11はスプリングカバー、
12は回転方向検出スイッチ、12aはスイッチプレー
ト、12bはスイッチスプリング、13はリミットスイ
ッチ、14はカバーである。図2(a)はカバー14を
外した状態でカバー14側から見た正面図、(b)は
(a)における切断線A−A’に沿って切断した断面を
示す。
【0023】リテーナ1に取り付けられたモータ2の駆
動力は、モータギア3からLギア4に伝達される。そし
て、後に述べるように、Sギア5、保持部材6、ローラ
7で構成されるクラッチ機構を介してSギア5に伝達さ
れ、Sギア5からコネクトギア8を介してブッシュギア
9に伝達される。図2に示されるように、ブッシュギア
9の回転軸にはリターンスプリング10が結合されてお
り、ブッシュギア9の回転を、シートベルトの巻取方向
に付勢している。
【0024】なお、実際のシートベルト巻取装置におい
ては、ブッシュギア9のスプライン部9bに、シートベ
ルトを巻き付けるスプールが結合されているが、図1、
図2においてはこの部分の図示を省略している。なお、
Lギア4、Sギア5、保持部材6はリテーナ1に設けら
れた回転軸に同軸状に保持され、コネクトギア8はリテ
ーナ1に設けられた別の回転軸に保持されている。ブッ
シュギア9はカバー14に設けられた回転軸に保持され
ている。
【0025】ブッシュギア9には摺動部9aが設けら
れ、その外周部に回転方向検出スイッチ12のスイッチ
スプリング12bが弾接している。そして、ブッシュギ
ア9の回転方向に応じて、スイッチプレート12aが時
計回り又は半時計周りに回動する。ブッシュギア9がシ
ートベルトが引き出される方向に回転したとき、スイッ
チプレート12aのストライカ部がリミットスイッチ1
3の接点をオンとするように作動させるようになってい
る。このリミットスイッチプレート12aも、リテーナ
1に保持されている。
【0026】モータ2は1方向回転のモータであり、シ
ートベルトを巻き取る方向、すなわち、リターンスプリ
ング10の付勢方向と同一方向に駆動されるようになっ
ている。
【0027】図3にLギア4の構造図を示す。以下の図
面においても、前出の図面に表された部位には同じ符号
を付してその説明を省略する。Lギア4は外周にモータ
ギア3と噛み合う歯車が切られたドーナツ型をしてお
り、その内部に、Sギア5、保持部材6の一部とローラ
7を収納するようになっている。さらに詳しく説明する
と、内径部の断面は図に示すようにT字型をしており、
両側の内径の大きい部分に、それぞれSギア5と保持部
材6が嵌まり込み、中央部の径の小さい部分がローラ7
と接する部分となっている。
【0028】図4にSギア5の構造図を示す。図4にお
いて、5bはギア部、5cは拡径部である。Sギア5
は、コネクトギア8と噛み合うギア部5bと、それに隣
接しLギア4の内径よりわずかに小さい外径を有する拡
径部5cを主要部としてなり、拡径部5cには、3個の
ローラ保持部5cが設けられている。
【0029】拡径部5bがLギア4の内径の大きな部分
に内部に嵌まり込む。ローラ保持部5cにはローラ7が
嵌め込まれて、このローラ7は、Lギア4の内径の小さ
い部分と、後述する保持部材6の切り欠き部との間に収
納されるようになっている。さらに、ローラ保持部5c
の先端は、後述する保持部材6に設けられた円弧状の長
穴に嵌まり込むようになっている。
【0030】図5に保持部材6の構造図を示す。図5に
おいて、6aは切り欠き部、6bは長穴、6cは突出部
である。保持部材6の外径は、Lギア4の内径の大きな
部分の内径よりわずかに小さくされており、Lギア4の
内径の大きな部分中に嵌まり込むようになっている。さ
らにSギア5には、Lギア4の内径の小さい部分の内径
よりわずかに小さい外径を有する、扇風機の羽根状の突
出部6cが設けられている。そして、これにより、突出
部6cが設けられていない部分には、3個の切り欠き部
6aが形成されている。切り欠き部6aには、円弧状の
長穴6bがそれぞれ形成されており、この長穴6bに
は、前述のようにSギア4のローラ保持部5aが嵌まり
込むようになっている。
【0031】Sギア5のローラ保持部5aに保持された
ローラ7は、Lギア6の内径の小さい部分と切り欠き部
6aの間に収納される。図5に示すように、切り欠き部
6aの形状は、その1端(図では反時計回り側の端)で
は、Lギア6の内径部と突出部6cで挟まれる切り欠き
部6aの空間が、ローラ7の直径よりも小さくなり、他
端(図では時計回り側の端)では、この空間がローラ7
の直径よりも大きくなるようになっている。
【0032】ローラ7は、Sギア5の回転に伴って、ロ
ーラ保持部5aに保持されて、保持部材6の軸(Lギア
4とSギア5の軸でもある)を中心にして公転するが、
この際、ローラ7の外周部がLギア4の内径の小さい部
分に当接して自転又は滑動しながら、ローラ7が公転す
るように、ローラ保持部5aの位置が決定されている。
【0033】このように構成されたSギア5、保持部材
6、ローラ7がLギア4の内部に収納されてクラッチ機
構を構成するが、その作動を図6を使用して説明する。
図6においては、説明を分かりやすくするために、断面
図を除いて、各部品が透明であると仮定してその主要部
を表している。図6(a)は組立図を示すものである。
Lギア4の内径の大きな部分に、右側からSギア5が、
左側から保持部材6が嵌まり込み、ローラ保持部5aに
回転自在に保持されたローラ7が、Lギア3の内径の小
さい部分の内周に当接している。ローラ保持部5aは、
保持部材6に設けられた長穴6bに嵌まり込んでいる。
【0034】モータ2が駆動されず、かつシートベルト
に引き出し力がかけられていない状態では、リターンス
プリング10の付勢力が働いてシートベルトを巻き取
る。このときの巻取力が、人間に圧迫感を与えないよう
な弱い力に設定されている。この付勢力によりブッシュ
ギア9が回転すると、その回転はSギアに伝達され、S
ギアが反時計回りに回転する。
【0035】すると、ローラ保持部5aに保持されたロ
ーラがLギア4の内周面とのフリクションにより自転し
ながら、Sギア5の軸を中心として公転して移動し、保
持部材6の突出部6cにぶつかり、保持部材6に反時計
回りの回転力を与える。保持部材6は、その軸に回転自
在に保持されているため、ローラ7から回転力を与えら
れるとほとんど抵抗なく回転する。
【0036】最終的には、ローラ7がLギア4の内周部
と保持部材6の突出部6cとの間に挟まることになる
が、保持部材6がほとんど抵抗なくSギア5と共に回転
することになるので、ローラ7とLギア4の内周面との
フリクションは増加しない。従って、Sギア5が回転し
たとき、ローラ7はLギア4の内周面に沿って滑動又は
回転し、Lギア4にはSギア5の回転力は伝達されな
い。逆にいえば、リターンスプリング10のみによって
シートベルトの巻取が行われているときには、モータ2
は、その負荷とならないことになる。よって、小さなト
ルクによって、シートベルトを巻き取ることが可能とな
る。
【0037】図6(b)は、外力によりシートベルトの
引出しが行われた場合の動作を示す図である。この場
合、Sギア5は、矢印のように反時計回りに駆動され
る。すると、ローラ保持部5aに保持されたローラがL
ギア4の内周面とのフリクションにより自転しながら、
Sギア5の軸を中心として公転して移動し、保持部材6
の突出部6cにぶつかり、保持部材6に時計回りの回転
力を与える。保持部材6は、その軸に回転自在に保持さ
れているため、ローラ7から回転力を与えられるとほと
んど抵抗なく回転する。
【0038】この場合は、前記(a)で説明した場合と
異なり、ローラ7は、Lギア6の内径部と突出部6cで
挟まれる切り欠き部6aの空間が、ローラ7の直径より
も大きくされている側で突出部6cにぶつかる。よっ
て、ローラ7がLギア6の内径部と突出部6cで挟まれ
ることがないので、ローラ7のフリクションが増すこと
がない。従って、Sギア5が回転したとき、ローラ7は
Lギア4の内周面に沿って滑動又は回転し、Lギア4に
はSギア5の回転力は伝達されない。逆にいえば、外力
によってシートベルトの引き出しが行われているときに
は、モータ2は、その負荷とならないことになる。よっ
て、人間がシートベルトを引き出す場合にも、モータ2
がその負荷とならないので、小さな力で引出しが可能と
なる。また、上記の動作はモータ2の駆動中でも行われ
るので、モータ2の駆動中においても、容易にシートベ
ルトを引き出すことができる。
【0039】図6(c)は、外部からシートベルトの引
き出しが行われていない状態で、モータ2による巻取駆
動が行われている状態を示すものである。(a)で説明
したように、初期状態においては、リターンスプリング
10の付勢力により、ローラ7はLギア4の内周部と保
持部材6の突出部6cとの間に、フリクションを増大さ
せない状態で挟まっている。
【0040】この状態において、Lギア4が矢印のよう
に反時計方向に駆動されると、ローラ7をLギア4の内
周部と保持部材6の突出部6cとの間にさらに挟み込む
ような力が作用する。この力はローラ7を介して突出部
6cを押すことになるので、保持部材6がSギア5に対
して相対的に反時計回りに回転し、ローラ7が挟み込ま
れる空間を広げようとする。しかしながら、Sギア5の
ローラ保持部5aが保持部材6の長穴6b中に嵌まり込
んでいるため、Sギア5と保持部材6との相対的な回転
量は長穴6bの寸法によって規制され、所定値以上には
ならない。
【0041】よって、この相対的な回転量が最大値に達
した状態で、ローラ7がLギア4の内周部と保持部材6
の突出部6cとの間に挟み込まれ、ローラ7とLギア4
の内周面とのフリクションが大きくなる。よって、ロー
ラ7は滑動も回転もできなくなり、Lギア4の回転力が
ローラ7とローラ保持部材5aを介してSギア5に伝達
される。この回転力は最終的にはブッシュギア9に伝達
され、シートベルトの巻取が行われる。モータ2のシー
トベルト巻取力は、リターンスプリング10のシートベ
ルト巻取力より大きく設定されているので、モータ2を
駆動したときは、大きな巻取力でシートベルトの巻取を
行うことができる。
【0042】以上の説明をまとめると、このクラッチ機
構は、外力によりシートベルトが引き出される方向に駆
動されたとき、又はモータがシートベルトを巻き取る方
向に駆動されていないときには、モータとシートベルト
との間の機械的な動力伝達経路を切り離す機能を有して
いるものである。
【0043】本発明においては、このような機構を設け
ることが好ましいが、必ずしも必要なものではなく、ク
ラッチ機構を解さずモータギア3とブッシュギア9を直
結したようなものも発明の範囲に含まれる。また、この
ような機械的なクラッチ機構でなく、通常用いられてい
る電気的なクラッチ機構を用いてもよいことは言うまで
も無い。さらに、本発明においては、リターンスプリン
グ10を設けず、モータ2のみでシートベルトの巻取り
を行うようにしてもよい。
【0044】図1に示すような構造のシートベルト巻取
り装置の制御方法を以下に説明する。まず、乗員がシー
トに着座し、シートベルトを装着してバックルとタング
を係合させて手を離すと、リターンスプリング10の力
により、シートベルトが巻き取られる。このとき、リタ
ーンスプリング10の巻取り力は、従来のものに比べて
極弱くしておき、乗員に圧迫感を与えるまで巻取りを行
わないようにしておく。このような弱い巻取り力ではス
ラッグが取りきれない場合があるが、本発明においては
そのような状態が発生しても差し支えない。
【0045】車間距離センサの検出する車間距離と車速
を比較して追突が予想されるような場合、車両間の相対
速度と車間距離とを比較して追突が予想されるような場
合、車体の走行加速度計が大きな減速状態を検出して、
衝突が予想されるような場合、車輪駆動系に設けられた
スリップセンサがスリップを検出して、衝突が予想され
るような場合等、緊急事態が予想されると、その時点
で、モータ2が巻取りを開始する。この巻取りは急速
に、かつ、乗員をシートに拘束するのに十分な大きな巻
取り力で行われる。
【0046】よって、実際の緊急事態の発生前に巻取り
が開始されるので、シートベルトにスラッグがある場合
においても、そのスラッグを吸収しつつ乗員をシートベ
ルトに拘束するだけの巻取りを行う余裕がある。よっ
て、通常状態に置いては、従来のようにスラッグを吸収
するだけの巻取りを行う必要が無く、乗員に圧迫感を与
えるような力で巻取りを行う必要が無い。また、従来の
ように緊急事態が発生してからシートベルトを巻き取る
方式とは異なっているので、火薬式プリテンショナを用
いなくても、十分早いタイミングで乗員をシートベルト
に拘束することができる。
【0047】乗員がシートに拘束された状態で衝突が発
生すると、乗員が前方に移動し、シートベルトに急激な
巻戻し力がかかる。このとき、ウェブセンサが作動し、
シートベルトが巻き付けられているスプールの軸の回転
が止められる。その後は、トーションバーの回転によ
り、エネルギーを吸収しながらスプールが所定回転数だ
け回転する。その後、シートベルトが自由に引き出され
るようになる。これらの機構については、従来周知のも
のであるので、その説明を省略する。
【0048】リターンスプリング10を有せず、モータ
2のみで巻取りをおこなうシートベルト巻取り装置の場
合、乗員がバックルとタングを係合しても巻取りを行わ
ず、シートベルトが弛んだままにしておいてもよいし、
ごく弱いトルクで巻取りを行い、モータが停止した時点
で巻取りを停止することにより、乗員に圧迫感を与えな
い程度の巻取りを行うようにしてもよい。この場合も、
スラッグを吸収するような巻取りを行う必要は無い。緊
急事態の発生が予測された場合の制御については、リタ
ーンスプリングを有する場合と同じである。
【0049】緊急事態の発生が予測された場合でも、結
果的に衝突等が回避され、危険の予知が解除されたとき
は、乗員の拘束を速やかに解くようにしてもよい。図1
に示すような構造のシートベルト巻取り装置において
は、モータ2の巻取り力がなくなると、モータ2の回転
軸が動力伝達軸から切り離されるので、シートベルトを
徐々に引き出すような力が加われば、自然に乗員の拘束
が解除される。このようなクラッチ機構が無い場合に
は、モータ2を逆方向に一定量回転させて、乗員の拘束
を解除してやるようにすればよい。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求
項1に係る発明、請求項2に係る発明においては、スラ
ッグがある場合でも遅滞無く乗員をシートベルトに拘束
することができるので、無理をしてスラッグを解消する
必要が無く、従って、定常状態において乗員に圧迫感を
あたえるような巻取りを行う必要が無い。
【0051】請求項3に係る発明においては、衝突等の
危険の予知が解除された段階で、乗員がシートに拘束さ
れる状態が解除され、その後通常の姿勢で運転を行うこ
とができる。
【0052】請求項4に係る発明においては、モーター
がばね部材による巻取力の負荷とならないので、ばね部
材の付勢力が小さくても、シートベルトの弛みを吸収す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例であるシートベルト
巻取装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示したシートベルト巻取装置の組立図図
である。
【図3】Lギアの構造図である。
【図4】Sギアの構造図である。
【図5】保持部材の構造図である。
【図6】クラッチ機構の動作を示す図である。
【符号の説明】
1…リテーナー、2…モーター、2a…モーター軸、3
…モーターギア、4…Lギア、5…Sギア、5a…ロー
ラー保持部、5b…ギア部、5c…拡径部、6…保持部
材、6a…切り欠き部、6b…長穴、6c…突出部、7
…ローラー、8…コネクトギア、9…ブッシュギア、9
a…摺動部、9b…スプライン部、10…リターンスプ
リング、11…スプリングカバー、12…回転方向検出
スイッチ、12a…スイッチプレート、12b…スイッ
チスプリング、13…リミットスイッチ、14…カバー

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モータによりシートベルトを巻き取る機
    能を有するシートベルト巻取り装置であって、通常装着
    時にはスラッグを解消するための巻取りを行わず、衝突
    等の危険が予知された段階で、モータにより、乗員を強
    力にシートベルトに拘束するまでシートベルトを巻き取
    る機能を有することを特徴とするシートベルト巻取り装
    置。
  2. 【請求項2】 モータとスプリングによりシートベルト
    を巻き取る機能を有するシートベルトであって、通常装
    着時には、スプリングにより乗員に圧迫感を与えない弱
    い巻取り力でシートベルトの巻取りを行い、衝突等の危
    険が予知された段階で、モータにより、乗員を強力にシ
    ートベルトに拘束するまでシートベルトを巻き取る機能
    を有することを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のシートベ
    ルト巻取装置であって、衝突等の危険の予知が解除され
    た段階で、モータにより、シートベルトを所定量だけ巻
    き戻す機能を有することを特徴とするシートベルト巻取
    り装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載のシートベ
    ルト巻取り装置であって、前記モータ又は前記モータと
    前記スプリングの巻取力をシートベルトに伝達する動力
    伝達機構が、外力によりシートベルトが引き出される方
    向に駆動されたとき、又は前記モーターがシートベルト
    を巻き取る方向に駆動されていないときには、前記モー
    タとシートベルトとの間の機械的な動力伝達経路を切り
    離すクラッチ機構を有するものであることを特徴とする
    シートベルト巻取装置。
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