【発明の詳細な説明】
水性フルオロポリマ組成物およびその調製方法
発明の分野
本発明は、α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド組成物、それらの
調製、およびそれらの使用に関する。もう1つの態様において、本発明は、α-
分枝フルオロアルキルカルボニル基含有組成物を調製するためのα-分枝フルオ
ロアルキルカルボニルフルオリド組成物の使用に関する。更にもう1つの態様に
おいて、本発明は、中間体、モノマ、反撥性(repellent)処理剤およびコーティ
ング、界面活性剤、乳化剤、ならびに水性皮膜形成性発泡性溶液に関する。
発明の背景
直鎖ペルフルオロアルキル基、環状ペルフルオロアルキル基、およびそれらの
誘導体を含有するペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドのクラスは、公知
である。例えば、米国特許第2,567,011号(Diesslinら)には、開鎖(すなわち、非
環状)および閉鎖(すなわち、環状)ペルフルオロアルキル基、ならびに環状およ
び非環状フッ素化アルキル部分基(sub-radical)の組合せが記載されている。Die
sslinらが列挙している開鎖構造はすべて直鎖構造(例えば、CF3(CF2)n−)であり
、分枝開鎖構造は記されていない。
米国特許第3,351,644号(Hauptscheinら)には、構造Rf(CF2CF2)nCOF〔式中、Rf
は、ペルフルオロアルキル基またはモノクロロペルフルオロアルキル基であり、
nは、1〜約8の小さな数である〕を有する直鎖テロマ型酸フルオリドが記載さ
れている。
英国補正特許第1,092,141号には、オメガ(ω)−分枝ペルフルオロアルキル鎖
を含有する、すなわち、構造(CF3)2CF(CF2)n−を有するペルフルオロアルキルカ
ルボニルフルオリドが記載されている。報告によると、これらのω-分枝ペルフ
ルオロアルキルカルボニルフルオリドは、直鎖炭化水素カルボニルフルオリドお
よび誘導体の電気化学的フッ素化の際に少量成分として生成する。
米国特許第4,749,526号(Flynn)には、一般式RfCF2O[CF(CF3)CF2O)]pCF(CF3)CO
Fを有するα-分枝ペルフルオロポリエーテルカルボニルフルオリドが記載されて
いる。これらの物質から誘導される酸は、ペルフルオロポリエーテル鎖の脱炭酸
に対して安定であることが示された。
短鎖α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドおよび酸、ならびに
短鎖環状基含有α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドの特定のク
ラスは、公知である。Gambarettoら(Chim.Ind.,1971,53,1033-8)は、電気化
学的フッ素化によるC4F9CF(C2F5)CO2Hおよび(CF3)2CFCO2Hの調製ならびにそれに
続くこれらの酸の脱炭酸について報告している。また、α-アルキル置換酸クロ
リドおよびメチルエステルを電気化学的にフッ素化すると、ペルフルオロオキソ
ランおよびペルフルオロオキサンならびに少量(すなわち、9パーセント)の対応
するペルフルオロアルカノイルフル[オリド(例えば、C5F11CF(CF3)COF)が得られ
るとの報告もなされている。(Abe,T.et al.,J.Fluorine Chem.,1978,12,1
-25)この論文において、Abeらはまた、C4F9CF(C4F9)COFの存在を報告している
。
特定の環状アルキル基末端α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルハリドは
、公知である。c-C6F11CF2CF(CF3)COFについての報告が出されているとともに("
Preparation,Properties,and Industrial Applications of Organofluorine C
ompounds,"R.E.Banks,ed.,Ellis
Horwood Ltd.,Holsted Press(1982)の第1章(T.Abe et al.))、c-C5F9CF(CF3)
COFおよびc-C5F9CF(C2F5)COClについての開示もなされている(Abe,T.et al.,J
.Fluorine Chem.,1983,23,123-146)。
構造RfCF2COOHを有する直鎖ペルフルオロカルボン酸およびその誘導体は水性
環境暴露下においても劣化しないことが知られているが、少なくとも180〜200℃
までは熱的に脱炭酸を起こさない(JAm.Chem.Soc.,1953,75,4525-28)。これ
らの化合物は非常に安定であり、従って、環境抵抗性でもある。また、直鎖ペル
フルオロカルボン酸およびそのカルボン酸塩は中程度の毒性があり、特に、n-C9
F19COO-NH4 -のような長鎖の塩がこうした毒性を有することが知られている(例え
ば、Goeche-Flora et al.,Chem.Res.Toxicol.1996,9,689-95を参照されたい)
。
(Rf)2CFCO2H〔式中、RfはCF3およびC2F5のような短鎖である〕型のフルオロケ
ミカル酸は水溶液中で不安定であることが知られているが(例えば、Chim.Ind.
,1971,53,1033-8を参照されたい)、これらの化合物は、一般的には、劣悪な
界面活性剤特性を有する。
今日の化学市場において望まれるこうした特性を兼備したフルオロアルキルカ
ルボニルフルオリド誘導体は知られていない。非常に望ましいフルオロケミカル
化合物は、液体中に溶解させた時に優れた界面活性剤特性を呈し(すなわち、液
体の表面張力を20ダイン/cm未満の値まで低下されることができ)、比較的非毒
性であるかもしくは非常に毒性が低く、しかも環境抵抗性を示さない(すなわち
、周囲条件下の環境で見られるような温和な条件下において、生化学的、熱的、
または光化学的に完全に分解できる)ものである。
発明の概要
簡潔に述べると、1態様において、本発明は、式:
〔式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、環式もしくは非環式、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合せ)で
あってもよくかつ場合により窒素、硫黄、または酸素などの1個以上のカテナリ
ーヘテロ原子を含有していてもよい、フッ素化基、好ましくは過フッ素化基とし
て選択され、RfまたはR'fは、1個以上の水素原子または1個以上の他のハロゲ
ン原子(例えば、塩素)を含有していてもよいが、ただし、炭素主鎖に結合した原
子のうちの少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%はフッ素原子であり、
pは、1、2、中程度の数、または大きな数であってもよく、Xの価数に等しく、
Xは、ハロゲン、ヒドロキシル基、またはα-分枝フルオロアルキルカルボニル
フルオリドと少なくとも1個の活性(すなわち、酸性)水素原子を含有する試薬と
の反応の後かつフッ化水素の脱離の後に残存する部分であるが、
Xがフッ素であるかまたはヒドロキシル基である場合、pは1に等しく、Rfおよ
びR'fは非環式アルキル基であり、このRfおよびR'fのうちの少なくとも1つは少
なくとも5個の炭素原子を含有し、しかもこのRf基およびR'f基中の炭素原子の
合計数は7以上、好ましくは約24以下であり、好ましくは、このRf部分およびR
'f部分中の炭素原子の比は少なくとも2対1である〕
で一般に表すことのできる開鎖α-分枝フルオロアルキルカルボニ
ルフルオリドおよびその誘導体の組成物を提供する。
もう1つの態様において、本発明は、上記の式Iで表される化合物の誘導体を
含むα-枝フルオロアルキルカルボニル基含有化合物を提供する。このような誘
導体は、例えば、界面活性剤および乳化剤ならびに防汚性、撥水性、および撥油
性組成物として有用である。更にもう1つの態様において、本発明は、1種以上
のα-分枝フルオロアルキルカルボニル基含有界面活性剤を含む水性皮膜形成性
発泡性(AFFF)組成物を提供する。
本発明のα-分枝フルオロアルキルカルボニル誘導体は、環境抵抗性がなく、
直鎖および環状の同族体よりも毒性がかなり低い。本明細書中に記載のα-分枝
フルオロアルキルカルボン酸塩組成物は、毒性が非常に低く、水性媒体中におい
て約80℃〜約100℃の温度で迅速に熱分解を起こし、環境中では蒸散性生物の体
から放出される揮発性の非界面活性種にまで分解される。
好ましい実施態様の詳細な説明
1態様において、本発明は、α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド
を提供する。これらの化合物の好ましいクラスは、一般に、次式で表すことがで
きる。
式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合
せ)であってもよくかつ場合により窒素、硫黄、または酸素などの1個以上のカ
テナリーヘテロ原子を含有していてもよい、非環式のフッ素化基、好ましくは過
フッ素化基として選択され、RfまたはR'fは、1個以上の水素原子または1個以
上の他のハロゲン原子(例えば、塩素)を含有していてもよいが、ただし、炭素主
鎖に結合した原子のうちの少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%はフッ素
原子であり、
更に、このRf基およびR'f基のうちの少なくとも1つは少なくとも5個の炭素
原子を含有し、このRf部分およびR'f部分中の炭素原子の合計数は7以上、好ま
しくは約24以下であり、好ましくは、このRf部分およびR'f部分中の炭素原子の
比は少なくとも2対1である。
フッ素化α-置換カルボニルフルオリドの特に好ましいクラスは、式III:
〔式中、
nは、両端を含めて5〜約18であり、
mは、両端を含めて0〜約9であるが、好ましくは、nおよびmは、(n+1)対(m+1)
の比が少なくとも2対1であるように選択される〕で表すことができる。
一般的には、上記の式IIおよびIIIで表されるようなα-分枝フルオロアルキル
カルボニルフルオリドは、非フッ素化有機同族体(例えば、アルキルカルボニル
ハリドもしくはアルキルカルボニルエステル)をフッ素化することにより調製す
ることが可能である。フッ
素化反応は、例えば米国特許第2,519,983号(Simons)に記載されているようにフ
ッ化水素を用いて電気化学的フッ素化(「ECF」)(「Simons法」と呼ばれることも
ある)を行うか、または例えば米国特許第5,488,142号(Fallら)に記載されている
ように元素のフッ素を用いて直接的フッ素化を行うことにより実施可能であるが
、これらの記載内容はいずれも、引用により本明細書中に含まれるものとする。
「Simons法」または「Simons電気化学的フッ素化法」は、無水HFを特定のクラ
スの有機化合物と反応させるために商業的に実用されている公知の方法である。
Simons電気化学的フッ素化によりα-分枝トリフルオロメチルペルフルオロアル
キルカルボニルフルオリドを生成させる典型的なフッ素化反応を以下に示す。
この技法について記載している初期の特許は米国特許第2,519,983号(Simons)で
あり、この特許にはSimonsセルおよびその付属品の図面が含まれている。またAc
ademic Press,Inc.,New Yorkから1950年に出版されたJ.H.Simons編"Fluorine C hemistry
"の第1巻の416
〜418頁には、実験用およびパイロットプラント用のセルの説明および写真が記
載されている。Simons法による電気化学的フッ素化についてはまた、S.Nagase,F
luorine Chem.Rev.,1(1)77-106(1967)および"Preparation,Properties,and In
dustrial Applications of Organofluorine Compounds,"R.E.Banks,ed.,Elli
s Horwood Ltd.,Holsted Press(1982)の第1章(T.Abe et al.)にも説明がある
。HFを用いて電気化学的にフッ素化できる他の好適な供給原料としては、不飽和
アルキルカルボニルフルオリド(例えば、CH3(CH2)5CH=C(CH3)COF)、飽和メチル
エステル(例えば、CH3(CH2)6CH(CH3)CO2CH3)、および酸クロリド(例えば、C7H1 5
CH(CH3)COCl)が挙げられる。
一般的には、比較的大規模な設備において、本発明を実施するうえで有用なSi
monsセルには、典型的には炭素鋼から作製され通常は冷却ジャケットを備えたセ
ル本体が含まれ、この中には、有機出発原料を含有する本質的に無水のフッ化水
素の導電性溶液中に浸漬された状態で交互に近接して配置された一連の陰極板(
典型的には、鉄、ニッケル、もしくはニッケル合金から作製される)および陽極
板(典型的には、ニッケルから作製される)を含んでなる電極パックが吊り下げら
れている。揮発した電気化学的フッ素化生成物および揮発したフッ化水素を含有
するガス状セル流出物は、バルブ付き送出ラインを介してオーバヘッド流として
取り出すことができる。所望の飽和した完全フッ素化もしくは部分的フッ素化生
成物の得られる所望の濃度(典型的には、5〜30パーセント)の有機出発原料(α-
分枝アルキルカルボニル前駆物質)を含んでなる導電性溶液を用いてセルを作動
させる。
セルを作動させる相対温度および圧力は、所望のフッ素化生成物の形成を助長
するように設定される。一般的には、導電性溶液中の
有機出発原料の濃度を増大させると(これにより HF反応体の濃度を減少させる
と)、得られるフッ素化生成物の水素含有量は増大するが、これは反応混合物がH
Fの「不足」した状態にあることを意味する。一般的には、電気化学的フッ素化
時のセルの温度は、0〜70℃、好ましくは20〜60℃であってよい。操作中、セル
は、760〜4000トルの範囲、好ましくは1000〜3000トルの範囲の圧力で作動させ
ることができる。セルは、4〜9ボルトの範囲のセル電圧、および10〜100、好ま
しくは20〜80mAmp/活性アノード表面積(この部分で電解が起こる)1cm2の範囲の
電流密度で作動させることができる。セルは、定電流または定電圧のいずれかで
作動させることができる。
フッ素化付加物、フッ化水素、水素、および他のガス状生成物を含む反応器ガ
ス状流出物は、上述したように反応器の上部から取り出して冷却システムへ送る
ことができる。フッ素化生成物は、ガス状流出物の一部分としてセルから取り出
すことができる。流出物を冷却することにより、前述の飽和した部分的もしくは
完全フッ素化α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドを凝縮させて採取
もしくは回収することができる。また、未反応のHFまたは副生物はいずれも、冷
却させてセルへ再循環させることができる。
簡潔に述べるために、本明細書中では、Simons電気化学的フッ素化法およびセ
ルについてのその他の詳細な説明は省略するが、このような技術に対して先に引
用した文献中の該当技術の開示内容を参照することによりこうした詳細な説明を
行うことが可能であり、この目的のために、これらの文献の記載内容は本明細書
中に含まれるものとする。
また、α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド前駆物質は、公知の方
法により元素のフッ素を過剰に用いて直接的にフッ素化を行うことによって調製
してもよい。元素のフッ素を用いてα-
分枝フルオロアルキルカルボニル誘導体を得る直接的フッ素化反応は、次のよう
に表される。
これまでに説明した直接的フッ素化法に有用な他の好適な供給原料としては、分
枝エステル(例えば、CH3(CH2)6CH(CH3)CH2OCOCH3)および不飽和エステル(例えば
、CH3(CH2)5CH=C(CH3)COOCH3)が挙げられる。
米国特許第5,488,142号(Fallら)には、有用な直接的フッ素化法についての記
載があるが、この記載内容は引用により本明細書中に含まれるものとする。この
方法によれば、副生物のフッ化水素HFを揮発させるのに十分な温度および不活性
ガス(使用する場合)の流量で前駆物質をフッ素化させるべく、温度制御された乱
流管状流動型反応器中で、通常は液体である不活性媒体(例えば、ペルフルオロ
メチルモルホリン)で希釈された有機前駆物質(典型的には、α-分枝カルボン酸
の短鎖アルキルエステル)の溶液を、好ましくは窒素のような不活性ガスで希釈
された理論量よりも過剰のフッ素ガスF2と直接接触させる。フッ化水素の存在
しない環境下で実質的にフッ素化が行われるように、フッ化水素はその生成時に
反応器から除去される(再循環はさせない)。次に、こうして得られたフッ素化有
機物質(典型的には、α-分枝カルボン酸の過フッ素化短鎖アルキルエステル)の
溶液を反応器から取り出す。この方法により得られ
たフッ素化生成物を、例えば蒸留により不活性媒体から分離することによって、
このプロセスの生成物としてフッ素化生成物を得ることができるか、あるいはフ
ッ素化アルキルエステルの場合には、アセトン中においてヨウ化カリウムで処理
することによって容易にフッ素化カルボニルフルオリドに変換することができる
。
簡潔に述べるために、この好ましい直接的フッ素化法についてのその他の詳細
な内容およびこのほかの有用な直接的フッ素化法についての詳細な内容は省略す
る。なぜなら、これらの詳細な内容については周知であり、当該技術分野で定着
しているからである。
電気化学的フッ素化により得られる本発明のα-分枝カルボニル誘導体の収率
は、典型的には、約20〜約50パーセントの範囲であり(これに対して、異性体の
直鎖カルボニル誘導体を用いた場合には約15%の収率にすぎない)、一方、直接
的フッ素化による典型的な収率は60〜80%程度の高い値に達する。好ましいフッ
素化法の選択は、もちろん、任意の所定のビジネス上および技術上の関心が組み
合わさって決定されるものであろう。本明細書中で教示されているα-分枝組成
物の電気化学的フッ素化の収率は、驚くほど高い。かなりの程度の分解または直
鎖化合物への異性化を起こすことが予想されるであろうが、そうした予想に反し
て、ECFの収率は、α-分枝組成物の直鎖同族体に対して得られる収率よりもかな
り改良される。
本発明の第2の態様において、α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリ
ドの誘導体が提供される。本明細書中に記載のα-分枝フルオロアルキルカルボ
ニルフルオリドから調製しうる有用な誘導体の多種多様なクラスの中には、カル
ボン酸塩、エステル誘導体(例えば、アクリレートおよびメタクリレート)、アミ
ド誘導体、およびジヒドロフルオロアルキル誘導体がある。オリゴマおよびポリ
マのクラスを得ることも可能である。
一般的には、最も有用なα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド誘導
体は、α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドと少なくとも1個の活性
水素原子を含有する試薬との反応により調製されるものであろう。一般的には、
これらの化合物のうちで最も単純なものは、単一のα-分枝フルオロアルキルカ
ルボニル部分が、フッ化水素の離脱後に残存する活性水素含有試薬の残基に結合
された以下の一般式VIで表すことのできる化合物である。
式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、環式もしくは非環式、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合せ)で
あってもよくかつ場合により窒素、硫黄、または酸素などの1個以上のカテナリ
ーヘテロ原子を含有していてもよい、フッ素化基、好ましくは過フッ素化基とし
て選択され、RfまたはR'fは、1個以上の水素原子または1個以上の他のハロゲ
ン原子(例えば、塩素)を含有していてもよいが、ただし、炭素主鎖に結合した原
子のうちの少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%はフッ素原子であり、好
ましくは、このRf部分およびR'f部分中の炭素原子の比は少なくとも2対1であ
り、
Xは、塩素または臭素であるか、あるいは式-N(R1)(R2)、-OR"f、-YQOR、-YQN(
R1)(R2)、-YQZ、または-O- 1/qMq+(q=Mの原子価)で表される基であり、式中、R
"fは、フッ素化アルキル基であり、R、R1、およびR2は、互いに独立して、水素
、または置換もしく
は無置換、飽和、直鎖もしくは分枝状、環式もしくは非環式であってもよくかつ
酸素または窒素などの1個以上のカテナリーヘテロ原子を含有していてもよいア
ルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基(あるいはこれらの任意
の組合せ)として選択され、R1およびR2が存在する場合には、これらは記載の窒
素と一緒になって、ピペリジノ基またはモルホリノ基のようなヘテロ環を形成し
ていてよく、Yは、O、S、またはNR(ただし、Rは先に規定した通りである)であり
、Qは、置換もしくは無置換の二価有機基であり、Mは、H+(すなわち、遊離カル
ボン酸)、金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Fe3+、Al3+、また
はZn2+)、アンモニウムカチオン(すなわちH4N+)、置換アンモニウムカチオン(例
えば、H1 〜3N+(CH3)3 〜1、H1 〜3N+(C2H5)3 〜1、H1 〜3N+(C2H4OH)3 〜1、(CH3)4N+
、または(C4H9)4N+)、およびポリアンモニウムカチオン(例えば、H3N+(C2H4NH)0 〜3
C2H4N+H3)から成る群より選ばれるカチオンであり、Zは、アニオン、カチオ
ン、ノニオン、もしくは両性の水可溶化基(例えば、スルホネート、スルフェー
ト、エーテルスルフェート、ホスフェート、第四級アンモニウム、ベタイン、ス
ルホベタイン、またはポリオキシエチレン)であるか、またはエチレン系不飽和
基(例えば、-OC(O)CH=CH2および-OC(O)C(CH3)=CH2)である。
これらのα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド誘導体の好ましいサ
ブクラスは、以下の式VII:
〔式中、
nは、両端を含めて4〜約18であり、
mは、両端を含めて0〜約9であるが、好ましくは、nおよびmは、(n+1)対(m+1)
の比が少なくとも2対1であるように選択され、
Xは、上記の式VIで表された通りである〕
で表されるサブクラスである。
α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドの酸誘導体は、α-分枝フルオ
ロアルキルカルボニルフルオリドから容易に合成することが可能である。フルオ
ロアルキルカルボニルクロリドを形成するために、例えば、米国特許第2,950,31
7号(Brownら)に記載の手順を用いて、カルボニルフルオリドをヒドラジンと反応
させ、続いて塩素と反応させることができる。フルオロカルボン酸は、好ましく
は酸も存在させてカルボニルフルオリドもしくはクロリドを水と反応させること
により得ることが可能であり、カルボン酸塩は、最も便利な方法としては、カル
ボニルフルオリドもしくはカルボン酸を好ましくは水中で塩基と反応させること
より製造される。エステルは、カルボニルフルオリドもしくはクロリドを、第一
級、第二級、もしくは第三級アルコールと反応させることにより製造することが
できる。フルオロカルボン酸が関与するこれらの反応は、米国特許第2,567,011
号(Diesslinら)中に記載されているように実施することができる。
アミドは、フルオロアルキルカルボニルフルオリドを、アンモニア、第一級ア
ミン、もしくは第二級アミンと反応させることによって調製できる特に有用な中
間体である。第一級アミドは、米国特許第2,567,011号の教示に従って製造する
ことができる。第一級アミドは更に、例えば、グリコールエステルと反応させて
から鹸化を行うことにより誘導体化させると、カルボン酸塩を生成することが可
能であるが、これについては、例えば、米国特許第2,809,991号(Brown)に記載さ
れている。N,N-ジメチルアミノプロピルアミンと
の反応により第三級アミドアミン中間体を形成することは特に興味深いものであ
るが、これは米国特許第2,764,603号(Ahlbrecht)の記載に従って調製することが
できる。その後でアミドアミンを多数の方法で反応させて様々なカチオンおよび
両性の界面活性剤を形成することが可能である。例えば、米国特許第2,764,602
号(Ahlbrecht)に記載されているように、アルキルハリドで四級化させると第四
級アンモニウムが得られ、英国特許明細書第1,302,612号に記載されているよう
に、過酸化水素で酸化させるとアミンオキシドが得られ、クロロアルキルカルボ
ン酸塩もしくはクロロアルキルスルホン酸塩と反応させるとそれぞれベタインも
しくはスルタイン両性界面活性剤が得られ、米国特許第5,144,069号(Sternら)に
記載されているように、アクリル酸と反応させるとアミン窒素へのMichael付加
物が得られ、あるいは米国特許第3,661,776号(Fletcherら)に記載されているよ
うに、β-プロピオラクトンと反応させるとカルボキシエチル両性界面活性剤が
得られる。直鎖フルオロカルボン酸のエステルおよびアミドは加水分解に対して
不安定であるが、α-分枝フルオロカルボン酸のエステルおよびアミドは加水分
解に対してより安定である。
また、Ahlbrechtの実施例1のn-ペルフルオロオクタンカルボニルフルオリド
をα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドに置き換えて、米国特許第2,8
03,656号(Ahlbrechtら)に記載されているように、(N-メチル)-2-アミノエタノー
ルおよび(N-エチル)-2-アミノエタノールのようなアミノアルコールと反応させ
ることにより、有用なフッ素化アミドアルコールを生成させてもよい。こうして
得られたアミドアルコールを、エトキシル化(例えば、米国特許第2,567,011号(D
iesslinら)に記載されているように)、スルフェート化(例えば、米国特許第2,80
3,656号(Ahlbrechtら)に記載されてい
るように)、またはホスフェート化(例えば、米国特許第3,094,547号(Heine)に記
載されているように)することにより、ノニオンまたはアニオンの分解性フルオ
ロ脂肪族界面活性剤を調製することができる。これらのフッ素化アミドアルコー
ルから有用な撥油性および撥水性処理剤を製造することが可能である。例えば、
(1)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリロイルクロリドもしくはメタ
クリロイルクロリドと反応させることによりアクリレートモノマもしくはメタク
リレートモノマを形成し、次いで標準的な遊離基開始剤を用いてこのモノマを重
合もしくは共重合させることにより、反撥性ポリマが得られ(例えば、米国特許
第2,803,615号(Ahlbrechtら)を参照されたい)、(2)イソシアネートと反応させる
ことにより、反撥性フルオロ脂肪族ウレタン、ウレア、もしくはカルボジイミド
が得られ(例えば、米国特許第3,398,615号(Guenthnerら)および同第3,896,251号
(Landucci)を参照されたい)、あるいは(3)カルボン酸(もしくはその誘導体)と反
応させることにより、反撥性エステルが得られる(例えば、米国特許第4,264,484
号(Patel)を参照されたい)。
本発明により提供される組成物のもう1つの新規なクラスは、α-分枝1,1-ジ
ヒドロフルオロアルキル誘導体である。このような組成物は、α-分枝フルオロ
アルキルカルボニルフルオリドを還元することによって調製可能であり、以下の
式VIII:
〔式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、環式もしくは非環式、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合せ)で
あってもよくかつ場合により窒素、硫
黄、または酸素などの1個以上のカテナリーヘテロ原子を含有していてもよい、
フッ素化基、好ましくは過フッ素化基として選択され、RfまたはR'fは、1個以
上の水素原子または1個以上の他のハロゲン原子(例えば、塩素)を含有していて
もよいが、ただし、炭素主鎖に結合した原子のうちの少なくとも75%、好ましく
は少なくとも90%はフッ素原子であり、好ましくは、このRf部分およびR'f部分
中の炭素原子の比は少なくとも2対1であり、
X'は、-OR、-OSO2R、-OCOR、-N(R1)(R2)、-SR、ハロゲン、またはエチレン系
不飽和部分(例えば、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニルエーテル
、ビニルベンジルオキシ)であるが、ただし、R、R1、およびR2は、先に式VIで規
定した通りである〕で表すことができる。
これらの上記α-分枝1,1-ジヒドロフルオロアルキル誘導体の好ましいクラス
としては、以下の式IX:
〔式中、
nは、両端を含めて4〜約18であり、
mは、両端を含めて0〜約9であるが、好ましくは、nおよびmは、(n+1)対(m+1)
の比が少なくとも2対1であるように選択され、
X'は、先に式VIIIで規定した通りである〕
で表される1,1-ジヒドロフルオロアルキル誘導体が挙げられる。
α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド誘導体は、優れた水溶性、優
れた表面張力対濃度プロフィル、および同じ炭素数を有する異性体の直鎖フルオ
ロアルキルカルボニルフルオリド誘導体に匹敵する臨界ミセル濃度(CMC)を示す
場合が多い。従って、これ
らは、環境抵抗性が問題となる用途において乳化剤もしくは界面活性剤としての
優れた候補である。このような用途としては、フルオロポリマエマルション、ク
リーニング溶液、水性皮膜形成性フォーム、コーティング添加剤、メッキ浴、湿
潤剤、床磨き用均展剤、分散助剤、油井用刺激薬品、および写真用カップリング
剤が挙げられる。典型的には、最も好ましい界面特性を呈するα-分枝フルオロ
アルキルカルボニルフルオリド誘導体は、長いフッ素化アルキル基(すなわち、
5個以上の炭素原子を有するもの)と短いα-分枝アルキル基(すなわち、ペルフ
ルオロメチルもしくはペルフルオロエチル)を有するものであろう。
安定なフルオロポリマエマルション、ラテックス、および懸濁液(例えば、ポ
リテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンエマルション)を調製す
る(米国特許第4,360,652号(Dohany)に記載されている調製方法が含まれるが、こ
の特許は引用により本明細書中に含まれるものとする)ための乳化剤として特に
好ましいα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド誘導体は、一般に以下
の式Xで表しうるα-分枝フルオロカルボン酸塩である。
式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、環式もしくは非環式、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合せ)で
あってもよくかつ場合により窒素、硫黄、または酸素などの1個以上のカテナリ
ーヘテロ原子を含有していてもよい、フッ素化基、好ましくは過フッ素化基とし
て選択され、
RfまたはR'fは、1個以上の水素原子または1個以上の他のハロゲン原子(例えば
、塩素)を含有していてもよいが、ただし、炭素主鎖に結合した原子のうちの少
なくとも75%、好ましくは少なくとも90%はフッ素原子であり、好ましくは、こ
のRf部分およびR'f部分中の炭素原子の比は少なくとも2対1であり、
Mは、H+(すなわち、遊離カルボン酸)、金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、
Ca2+、Mg2+、Fe3+、Al3+、またはZn2+)、アンモニウムカチオン(すなわちH4N+)
、置換アンモニウムカチオン(例えば、H1 〜3N+(CH3)3 〜1、H1 〜3N+(C2H5)3 〜1、
H1 〜3N+(C2H4OH)3 〜1、(CH3)4N+、または(C4H9)4N+)、およびポリアンモニウム
カチオン(例えば、H3N+(C2H4NH)0 〜3C2H4N+H3)から成る群より選ばれるカチオン
であり、
qは、Mの原子価に等しい。
これらの上記α-分枝フルオロカルボン酸塩の好ましいクラスは、以下の式XI
:
〔式中、
nは、両端を含めて4〜約18であり、
mは、両端を含めて0〜約9であるが、好ましくは、nおよびmは、(n+1)対(m+1)
の比が少なくとも2対1であるように選択され、
Mおよびqは、先に式Xで規定した通りである〕
で表されるものである。
乾燥状態では、α-分枝フルオロカルボン酸塩は、以下に具体的な種に対して
示されているように、約140〜190℃の温度で脱炭酸
を起こして、主として内部フルオロオレフィンを生成する。
直鎖異性体は(この場合にも乾燥状態で)、密閉された管中において、これよりも
わずかに高い約180〜200℃の温度で分解して、以下のように末端フルオロオレフ
ィンを生成する。
水溶液中において、α-分枝フルオロカルボン酸塩は、60〜100℃もしくはそれ
以下の温度において容易に脱炭酸を起こして、およそ85%の一水素化物および15
%のオレフィンを含有する混合物を生成するが、これは共沸蒸留により単離およ
び回収が可能である。しかしながら、直鎖の異性体は、100℃未満の温度の水中
において(例えば、還流水中において)分解を起こさない。水中において、pHおよ
びα-分枝塩の初期濃度もまた、熱的脱炭酸の速度に大きく影響し、酸性の強い
水溶液中ほど、または乳化剤濃度が高いほど、脱炭酸反応は遅くなる。しかしな
がら、カチオンの性質を変化させても(例えばナトリウムからアンモニウムへ変
化させても)、環境下における熱分解の速度は大きな影響を受けない。
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、α-分枝フルオロカルボ
ン酸およびその誘導体の分解は、α-分枝フルオロカルボン酸アニオン(加水分解
および/または酸化により生成する場合が多い)の脱炭酸によって起こり、その
結果、大気中で難分解性を呈することのない揮発性フルオロカーボン種(例えば
、オレフィ
ンおよび一水素化物)を生じるものと考えられる。カルボン酸アニオンは、他の
α-分枝誘導体の加水分解および/または酸化から生成させることが可能である
。蒸散性生物が摂取した場合、α-分枝フルオロカルボン酸およびその誘導体は
、長期間にわたり生体内で不変のまま保持されるそれらの直鎖の酸類似体とは異
なり、生体から容易に除去される上記の揮発性物質に分解される。生物はまた、
生物により容易に除去される揮発性物質へのα-分枝物質の分解を促進するであ
ろう。分解機構は生化学的機構とは独立していると思われるので、分解および除
去は、すべての蒸散性生物(げっ歯類および霊長類)中で起こるはずである。従っ
て、α-分枝フルオロカルボン酸の塩は、生物の体内にいつまでも残存すること
はできないが、それらの直鎖の類似体の中にはいつまでも残存するものがある。
しかしながら、α-分枝フルオロカルボン酸のエステルおよびアミドは、加水分
解に関して、それらの直鎖類似体よりもかなり安定である。
乳化重合プロセス時にフルオロポリマ水系エマルションからフッ素化乳化剤を
回収し再利用することが、環境上、経済上、および性能上の観点から極めて重要
になってきている。α-分枝フルオロカルボン酸アンモニウム塩は、このような
フッ素化乳化剤として特に有用である。一般的には、乳化重合を実施する際、最
初に、乳化剤および遊離基開始剤が水に添加され、続いて、フルオロモノマが添
加される。これについてのより詳細な説明は米国特許第4,576,869号(Malholtra)
に記載されているが、この記載内容は引用により本明細書中に含まれるものとす
る。利用される典型的な遊離基開始剤としては、ジイソプロピルペルオキシジカ
ルボネートおよび式XMnO4〔式中、Xは、水素、アンモニウム、アルカリ土類金属
、またはアルカリ土類金属〕で表される過マンガン酸化合物が挙げられる。ま
た、イソプロピルアルコールなどの1種以上の連鎖移動剤を使用してポリマの分
子量を調節してもよい。有用なフルオロモノマとしては、例えば、テトラフルオ
ロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエ
チレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、およびペンタフルオロプロペ
ンのような任意のエチレン系不飽和フッ素化化合物が挙げられる。重合は、典型
的には約50〜125℃の温度および典型的には約15〜40kg/cm2の圧力において水性
媒体中で前述の成分を混合することによって行うことが可能であるが、一般的に
は、オートクレーブ中で穏やかに攪拌しながら行われる。乳化重合技術について
のその他の詳細な内容に関しては、資料が十分に整っており、当該技術分野にお
いて理解も行き届いているうえに、このような教示が記載されている資料を引用
することも可能であるので、簡潔にするために、こうした詳細な説明は省略する
。フルオロポリマ重合が終了した後、簡単な共沸蒸留によってα-分枝アンモニ
ウム塩は容易に分解可能であり、生成物として揮発性の一水素化物およびフルオ
ロオレフィンを生じるが、他の用途に使用するために、この生成物を回収および
誘導体化することができる。
最近の試験によれば、α-分枝フルオロカルボン酸の塩は、直鎖の(非α-分枝)
類似体よりも1桁少ない急性毒性を有する(すなわち、LD50レベルが10倍の大き
さである)。具体的には、直鎖長鎖アンモニウムカルボン酸塩C9F19COO-NH4 +は中
程度の毒性であるが、そのα-分枝異性体C7F15CF(CF3)COO-NH4 +は比較的低い毒
性を呈する。
好ましいα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリド誘導体のもう1つの
クラスは、分解性フルオロ脂肪族界面活性剤の調製に有用な第三級アミドアミン
中間体である。このクラスの組成物は、
一般に以下の式XIIで表すことが可能である。
式中、
RfおよびR'fは、互いに独立して、炭素を介して結合された置換もしくは無置
換、環式もしくは非環式、直鎖もしくは分枝状(またはこれらの任意の組合せ)で
あってもよくかつ場合により窒素、硫黄、または酸素などの1個以上のカテナリ
ーヘテロ原子を含有していてもよい、フッ素化基、好ましくは過フッ素化基とし
て選択され、RfまたはR'fは、1個以上の水素原子または1個以上の他のハロゲ
ン原子(例えば、塩素)を含有していてもよいが、ただし、炭素主鎖に結合した原
子のうちの少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%はフッ素原子であり、好
ましくは、このRf部分およびR'f部分中の炭素原子の比は少なくとも2対1であ
り、
kは、2〜6であり、
R"は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基(好ましくはメチル基)である
か、またはN(R")2は、ヘテロ環(例えば、ピルジル基、ピペリジノ基、またはモ
ルホリノ基)であってもよい。
これらの上記α-分枝第三級アミドアミン中間体の好ましいクラスは、以下の
式XIII:
〔式中、
kおよびR"は、先に式XIIで規定した通りであり、
nは、両端を含めて4〜約18であり、
mは、両端を含めて0〜約9であるが、好ましくは、nおよびmは、(n+1)対(m+1)
の比が少なくとも2対1であるように選択される〕
で表されるものである。
上記の式XIIIで表されるアミドアミン中間体は、その後、(1)無機ハロゲン酸(
例えば、HClもしくはHBr)、硫黄含有無機酸(例えば、硫酸)、有機カルボン酸(例
えば、CH3COOH)、もしくは有機スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸)でプロ
トン付加を行うか、またはアルキル化剤(例えば、アルキルハリド、ジアルキル
スルフェート、もしくはアルキルスルホネート)で四級化することによって、カ
チオンフルオロ脂肪族界面活性剤を生成させてもよいし、(2)スルトン(例えば、
γ-プロパンスルトン)、ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン)、アクリル酸型
化合物(例えば、アクリル酸)、スルホナト官能性アクリルアミド(例えば、N-(3-
スルホ-2,2-ジメチルプロピル)アクリルアミド)、もしくは類似化合物と反応さ
せることにより、両性双性イオンフルオロ脂肪族界面活性剤を生成させてもよい
し、あるいは(3)酸化剤(例えば、過酸化水素)と反応させることにより、最も好
ましい両性アミンオキシド界面活性剤を生成させてもよい。このような反応の詳
細については周知であり、当該技術分野で定着している。
このようにして調製可能な界面活性剤の多数のクラスの中には、第三級アミド
アミンオキシド界面活性剤および第四級アンモニウム界面活性剤がある。前者の
クラスの好ましいメンバとしては、以下の式XIVで表されるものが挙げられる。
式中、
Rf、R'f、k、およびR"は、先に式XIIで規定した通りである。
好ましい第四級アンモニウム界面活性剤は、以下の式XVで表すことができる。
式中、
Rf、R'f、k、およびR"は、先に式XIIで規定した通りであり、
R"'は、水素、または置換もしくは無置換の一価有機基であり、
A-は、アルキル化剤R"'Aまたは酸HAの残基のアニオンである。
α-分枝第三級アミドアミン中間体から調製可能な好ましい両性界面活性剤は
、以下の式XVIおよびXVIIで表される異性体である。式中、
Rf、R'f、k、およびRは、先に式XIIで規定した通りであり、
Qは、先に式VIで規定した通りであり、
X"は、-SO3または-COOのいずれかである。
本発明のα-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドおよび誘導体の例を
以下に示す。各式中のRf-基(CnF2n+1-)基は、主に直鎖である(すなわち、分枝が
ない)。カルボニルフルオリド 酸および塩 1,1- ジヒドロアルコール アミド エステル (ただし、Py=ピリジル)チオエステル アミンオキシド界面活性剤 カチオン界面活性剤 ノニオン界面活性剤 両性界面活性剤 エチレン系不飽和モノマ 本発明に従って製造されたα-分枝フルオロ脂肪族界面活性剤は、界面活性剤
を必要とする任意の用途に使用することが可能であり、
例えば、保護コーティングおよび類似の用途などに使用可能である。本明細書中
に詳述されているこれらの界面活性剤は、炭化水素や他の引火性液体の火災を鎮
火するために使用される濃縮物のような水性皮膜形成性フォーム(AFFF)濃縮物を
配合するうえで特に有用である。希釈して予備混合溶液(一般的には「プレミッ
クス」と呼ばれる)にし空気を混入すると水性皮膜形成性フォームを生じる濃厚
水性フルオロ脂肪族界面活性剤含有溶液(通常は「コンセントレート」と呼ばれ
る)は、引火性液体の火災を鎮火するのに有効ないくつかの臨界特性を兼備して
いなければならない。これらのコンセントレートは、典型的には、1%、3%、も
しくは6%濃縮物のように指定され、それぞれ99%、97%、もしくは94%の淡水
または海水で希釈されてプレミックスを形成する。希釈時、プレミックスは、火
災の迅速な縮小、制御、鎮火、および再燃防止を行いかつ火災の鎮火後、かなり
の時間にわたって残存する厚いフォームブラケットを形成すべく、優れた発泡特
性を呈するものでなければならない。先に詳述したフルオロケミカル界面活性剤
を含有する水溶液は、皮膜形成性フォームを生成させるためのコンセントレート
として有用である。これらのα-分枝フルオロ脂肪族界面活性剤は著しく低い表
面張力を与えるので、これらの水溶液の表面張力は、引火性液体の表面張力より
も十分に低い値まで低下し、結果として、そのフォームから流れ出る蒸気封止性
皮膜は、引火性液体の上を容易に拡がる。このため、これらの溶液によって形成
された皮膜は、外乱または破壊を生じた場合に再形成される傾向が強く、従って
、例えば、フォームの表面上に風が吹いて皮膜が外乱を受けた場所においても火
災の再発する傾向は減少する。
水性皮膜形成性フォームコンセントレートを利用する場合、加圧下で消化ホー
スから放出される水により、典型的には、ベンチュリ
の作用で3容量パーセントの3%コンセントレートをホースライン中に排出させ
、水で希釈されたコンセントレートの予備混合物(または「プレミックス」)を形
成する。プレミックスに空気を混入すると、ホースの出口端に位置する吸気ノズ
ルの働きでフォームを生成するようになる。このフォームを燃えている燃料また
は他の引火性液体の主要部分に適用すると、移動性の厚いブラケットとして表面
上を急速に拡がり、迅速な消火が行われる。引火性液体の表面上のフォームが流
れるにつれて、水性皮膜が形成されるが、この皮膜は、たとえ外乱または破壊を
生じても、再形成されて熱い蒸気を封止し、火災の再発を防止する傾向を呈する
。本発明のコンセントレートは、貯蔵安定性が高く、米国政府規格(MIL-F-24385
F)を満たすものと考えられる。この規格では、コンセントレートならびにその淡
水および海水プレミックス(すなわち、コンセントレートを水で希釈したもの)を
65℃におけて10日間にたわり保存した場合(この条件はおよそ10年間の室温貯蔵
期間に相当するように設定されたものである)、コンセントレートの発泡性およ
び皮膜形成性が悪影響を受けないことが必要とされる。
本発明の水性皮膜形成性発泡性溶液(すなわち、コンセントレート)には、1種
以上の本発明のα-分枝フルオロ脂肪族界面活性剤と、1種以上の実質的にフッ
素を含まない水溶性の界面活性剤とを含有する水溶液が含まれる。本明細書中に
記載のα-分枝フルオロ脂肪族界面活性剤はいずれも、本発明のAFFFコンセント
レート中で利用可能であるが、両性α-分枝フルオロ脂肪族界面活性剤が好まし
く、両性アミンオキシド界面活性剤が特に好ましい。また、フッ素化アミノカル
ボキシレートまたはペルフルオロアルカンスルホネートなどの1種以上の他のフ
ルオロ脂肪族の両性および/またはアニオン界面活性剤を配合物に添加してもよ
い。このような他の界面活
性剤は、米国特許第5,085,786号(Almら)に記載されているが、その記載内容も引
用により本明細書中に含まれるものとする。
フッ素を含まない有用な界面活性剤としては、(1)約10以上の親水性親油性バ
ランス(HLB)値を有するノニオン界面活性剤、(2)両端の値を含めて約6〜約16個
の炭素原子を含む炭素鎖長を有するアニオン界面活性剤、および(3)単独でまた
はブレンドとして使用される両性界面活性剤が挙げられる。
フッ素を含まない代表的なノニオン界面活性剤としては、CnH2+1O(C2H4O)mH〔
式中、nは約8〜18の整数であり、mは約10以上である〕のような、エチレンオキ
シドを基剤とするノニオン界面活性剤、
〔式中、pは約4〜約12の整数であり、zは約10以上である〕のようなエトキシル
化アルキルフェノール、ミシガン州WyandotteのBASF Corp.から入手可能なPluro
nicTMF-77界面活性剤(少なくとも約30wt%のエチレンオキシドを含有する)のよ
うな、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマが挙げられ
る。
フッ素を含まない代表的な短鎖アニオン界面活性剤としては、オクチル硫酸ナ
トリウム(例えば、ニュージャージー州CranberryのRhone-Poulenc Corp.から市
販されているSipexTMOLS)およびデシル硫酸ナトリウム(例えば、イリノイ州Nort
hfieldのStepan Co.から市販されているPolystepTMB-25)のようなアルキルスル
フェート、CnH2n+1(OC2H4)2OSO3Na〔ただし、6≦n≦10〕(例えば、イリノイ州Ch
icagoのWitco Corp.から市販されているWitcolateTM7093)のようなアルキルエー
テルスルフェート、ならびにCnH2n+1SO3Na〔ただし、6≦n≦10〕のようなアルキ
ルスルホネートが挙げられる。
代表的な両性界面活性剤としては、アミンオキシド、アミノプロピオネート、
スルタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、ジヒドロキシエチル
グリシネート、イミダゾリンアセテート、イミダゾリンプロピオネート、および
イミダゾリンスルホネートが挙げられる。好ましい両性界面活性剤としては、n-
オクチルアミンジプロピオン酸の塩、例えば、C8H17N(CH2CH2COOM)2〔式中、Mは
ナトリウムまたはカリウムである〕;MirataineTMH2C-HA(ラウリミノジプロピオ
ン酸ナトリウム)、MiranolTMC2M-SF Conc.(ココアンホプロピオン酸ナトリウム)
、MirataineTMCB(コカミドプロピルベタイン)、MirataineTMCBS(コカミドプロピ
ルヒドロキシスルタイン)、およびMiranolTMJS Conc.(カプリルアンホヒドロキ
シプロピルスルタインナトリウム){いずれもRhone-Poulenc Corp.から市販され
ている};ならびに米国特許第3,957,657号(Chiesa,Jr.)(この特許の記載内容は
引用により本明細書中に含まれるものとする)に記載の、イミダゾールを基剤と
する界面活性剤が挙げられる。
上記の好ましい両性界面活性剤は、本発明のフッ素化α-分枝フルオロアルキ
ルカルボニルアミドアミンオキシド界面活性剤と併用して優れたAFFF剤を配合す
るのに特に有用である。こうした薬剤は発泡性が優れているだけではなく、その
コンセントレートから得られるプレミックスの表面張力が非常に低く、例えば、
約17ダイン/cm未満となるが、皮膜形成には約2.5ダイン/cmの界面張力が最適
である。これにより、プレミックスは、燃料または他の引火性液体の上を拡がっ
て優れた消火性能を呈する厚い安定な非乳化水性皮膜を形成できるようになる。
場合により、1種または複数種のフルオロ脂肪族界面活性剤の可溶化を促進す
るために使用される水溶性溶剤のような他の成分をAFFFコンセントレートに添加
してもよく、こうした他の成分とし
ては、エチレングリコール、グリセロール、ブチルCarbitolTM、ジプロピレング
リコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテ
ル、およびヘキシレングリコールが挙げられる。これらの溶剤はまた、気泡安定
剤および凍結防止剤として作用することも可能である。安定剤や増粘剤のような
他の成分を本発明のコンセントレート中に導入することにより、プレミックスへ
の空気混入後に生成するフォームの気泡安定性を強化することができる。安定剤
および増粘剤としては、例えば、部分的に加水分解されたタンパク質、澱粉、ポ
リビニル樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリア
クリルアミド、カルボキシビニルポリマ)、アルカノールアミド界面活性剤、長
鎖アルカノール、ポリ(オキシエチレン)-グリコール、グァーガム、およびロー
カストビーンガムが挙げられる。特に、キサンタンガムおよび他のバイオガムの
ような多糖樹脂は、アルコール、ケトン、およびエーテルのような極性溶剤の火
災時に使用することを目的としたコンセントレート中の気泡安定剤として導入す
ることができる。耐極性溶剤性を改良するための他の有用な樹脂は、フルオロケ
ミカル型の改質が加えられたアクリレートまたはポリマである。また、腐食抑制
剤、緩衝剤、抗菌剤もしくは他の保存剤、および二価イオン塩を利用してもよい
。本発明のAFFF配合物に添加しうる他の添加剤については、米国特許第5,085,78
6号(Almら)および同第3,772,195号(Francen)に詳細に記載されているが、これら
の記載内容はいずれも、こうした目的のために、引用により本明細書中に含まれ
るものとする。
典型的には、1〜10重量%の1種または複数種のフルオロケミカル界面活性剤
および1〜30重量%のフッ素を含まない1種または複数種の界面活性剤を利用し
てAFFFコンセントレートが製造される
であろう。他の添加剤成分が存在する場合、そうした成分の全固形分含量は、プ
レミックスがその発泡性を保持しかつそれから調製されるフォームの密度が約1g
/cc未満となるように、割り当てなければならない。一般的には、このような任
意成分に割り当てられるコンセントレート中の固形分含量は、コンセントレート
の約50重量%未満、好ましくは約30重量%未満であろう。コンセントレート中で
使用される溶剤の量は、典型的には、コンセントレートの5〜40重量%である。
一般的には、安定剤、増粘剤、腐食抑制剤、緩衝剤、抗菌剤、および二価イオン
塩のような、界面活性剤および溶剤以外の成分に割り当てられる固形分(すなわ
ち、不揮発性物質)の含量は、コンセントレートの約20重量%未満、好ましくは
約10重量%未満であろう。
本発明をより良く理解するための助けとなるように、以下に実施例を提示する
。これらの実施例は、本発明のすべての実施態様を網羅的に編集したものとみな
されるべきものではなく、これにより本発明の範囲が不必要に制限されるもので
はない。
実施例
試験方法
以下の試験方法および手順を用いて、フッ素化乳化剤、界面活性剤、およびそ
れから製造されたAFFF剤の性能を評価した。
表面張力(ST):Software K 122を用いてK-12 Processor Tensiometer
GmbHから入手可能である)、界面活性剤水溶液および3%AFFFプレミックスの表面
張力をダイン/cmの単位で測定した。プレミックスに最大の皮膜形成効率をもた
せるためには、表面張力をできるかぎり低くする必要がある。
界面張力(IT):3%プレミックスとn-ヘプタン(純度>99%、表面
張力=20.4ダイン/cm)との間に形成される界面の界面張力(ダイン/cm単位)を
、K-12 Processor Tensiometerを使用して測定した。厚い安定な皮膜を生成させ
、しかも燃料の乳化を防止するためには、界面張力をできりかぎり大きくする必
要があるが、ただし、正の広がり係数が得られる程度に十分小さくする必要があ
る。
広がり係数(SC):広がり係数(ダイン/cm単位)は、プレミックスを用いて測定
される表面張力および界面張力の値から次のようにして計算される。
SC=ST(燃料)−[ST(プレミックス)+IT(プレミックス/燃料)]広がり係数を
正にすることは、プレミックスが燃料の表面上に蒸気封止性水性皮膜を形成する
ための最低必要条件である。
臨界ミセル濃度(CMC):臨界ミセル濃度は、界面活性剤のレベルを増大させて
もそれ以上表面張力が低下しない濃度として定義される。CMCを決定するために
、665 Dosimat自動界面活性剤注入デバ
Processor Tensiometerを用いて、界面活性剤の濃度の関数として表面張力を測
定する。次に、濃度の対数に対して表面張力をプロットし、データ点をつなげる
。得られた曲線は、CMCを超えた濃度ではほぼ水平な平坦部をもち、CMC未満の濃
度ではマイナスの鋭い勾配をもつ。CMCは、曲線の水平な平坦部中の最低界面活
性剤濃度として定義される。
フォーム膨張およびドレン時間:生成したフォームの体積をフォームの生成に
使用した液体の体積で割ったものとして定義されるフォーム膨張は、米国政府軍
規格MIL-F-24385改訂Fの記載に従って決定される。この試験では、標準のNation
al Foam Systcm製2gal/min(7.6 L/min)ノズルを使用して、ステンレス鋼加圧タ
ンク中に入った3%プレミックス(すなわち、3容量部のコンセントレート
を97容量部の淡水または海水と混合したもの)からフォームを発生させる。フォ
ームを45°バックストップに当てて流れの向きを変え、1Lの風袋計量済メスシリ
ンダ中に送入し、シリンダ+フォームの重量をグラム単位で記録する。フォーム
膨張は、計量容器の実際の体積(mL)(すなわち、公称容積の1Lではない)をフォー
ムの重量(g)で割ることによって求める。
フォームに対する25%ドレン時間についても同様に米国政府軍規格MIL-F-2438
5改訂Fに記載されているが、この時間は、フォーム回収後にフォームの重量(す
なわち、体積)の25%が計量容器の底に排水される時間として定義されている(比
重を1.0と仮定してメスシリンダ中でミリリットル単位で読み取る)。
皮膜形成および封止:皮膜形成および封止試験は、AFFF プレミックスがn-ヘ
プタン上に安定な皮膜を形成できるかを調べるものである。この試験では、40mL
のn-ヘプタン(純度>99%、表面張力=20.4ダイン/cm)の入った直径10cmのガラ
スペトリ皿の中央に、No.8平頭ネジを上下反転させて配置する。1mLの使い捨て
シリンジから反転ネジの先端に約30〜60秒間にわたり0.75mLの試験プレミックス
を静かに滴下することにより、n-ヘプタンの表面上に水性皮膜を形成する。プレ
ミックス溶液の最初の一滴を滴下した2分後に、n-ヘプタンの表面上約0.5イン
チ(1.3cm)の高さで、小さな炎を約10秒間移動させる。良好な蒸気封止がなされ
ている場合には燃焼が持続することはないはずであるが、ただし、間欠的な小さ
な発火は許容される。
消火および再燃試験:実施例中のAFFF剤の評価に使用した火災試験手順は、米
国国防総省軍規格No.MIL-F-24385改訂F第4.713.2節に概説されている。この手順
に従って、体積3の3%コンセントレートを体積97の人工海水(ASTM D1141に従っ
て作製した海水)
と混合することにより、3.0ガロンの3.0%(体積)プレミックスを作製する。ホー
スおよびフォームノズルの取り付けられたタンク中にプレミックスを注ぎ、充填
されたタンクを加圧する。次に、50ft2(4.7m2)の円形ピット中に入っている水ベ
ース上に、15ガロン(57L)の自動車用ガソリンを注ぐ。ガソリンに点火し、10秒
間予備燃焼させた後、National Foam System製吸気ノズルに2.0gal/minの流量で
プレミックスを通すことによりプレミックスから発生させたフォームを用いて、
作業者が積極的に火災の消火に努める。火災が完全に鎮火するまで、10秒刻みで
火災の消火パーセントを記録する。また、正確な鎮火時間も記録する。10、20、
30、および40秒の時点で記録した消火パーセントの値の合計として定義された「
40秒合計値」で消火の効率を定量化する。鎮火後、プレミックス溶液を使い尽く
した状態である90秒の時点まで、フォームをピットに加え続ける。
鎮火後60秒以内に、燃えているガソリンの入った直径1フィートの円形パンを
円形ピットの中央に配置する。フォームで覆われた面積の25%(12.5ft2すなわち
1.16m2)が再び燃焼するまでの時間を測定し、「25%再燃時間」として記録する
。
実施例A .α-分枝フルオロアルキルカルボニルフルオリドの合成 実施例A1
以下の電気化学的フッ素化手順を用いて、α-分枝フルオロアルキルカルボニ
ルフルオリドであるC7F15CF(CF3)COFを調製した。
米国特許第2,713,593号(Briccら)に記載されているタイプの電気化学的フッ素
化セルを用いて、94%(wt)C7H15CH(CH3)COCl(2754g)と6%(wt)ジメチルジスルフ
ィド(DMDS)(17.6g)の混合物を、0.037m2
のニッケル陽極を備えた750mLセル中に入っている1380torrおよび38℃の沸騰し
たHF中で、電気的フッ素化中の平均電流を7.74アンペアおよび平均導電率を6.8
ボルトに設定して合計300時間にわたり電気化学的にフッ素化した。粗製の過フ
ッ素化カルボニルフルオリドの生成率は、実験の間増大し続け、200g/50アンペ
ア-時間のピークレベルに達した。アリコートをメチルエステルに誘導体化してG
C/FTIR分析を行ったところ、生成した官能性ペルフルオロアルキルカルボニルフ
ルオリドの収率は、セル中の生原料を基準に理論量の約17%であった。続いて、
GC/MSを用いて官能性ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド混合物を分析
したところ、その21%がC7F15CF(CF3)COFであることが分かった。
実施例A1に記載のものと本質的に同じ電気化学的フッ素化手順を用いて、以下
のα-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド(実施例A2〜A3)を、それ
らの未フッ素化カルボニルクロリド類似体から合成した。実施例
A2. C6F13CF(CF3)COF
A3. C4F9CF(CF2CF3)COF直接フッ素化によるメチルエステル中間体の合成
次のような直接フッ素化手順を用いて、C6H13CH(CH3)COOCH3からC6F13CF(CF3)
COOCF3を調製した。米国特許第5,488,142号に記載のものと類似の反応器系を用
いて、直接フッ素化実験を行った。3MブランドのPF-5052 Performance Fluid 64
49gを反応器系の気液分離器に仕込み、循環ポンプを用いて11.8kg/minの速度で
反応器系を介して循環させた。PF-5052の循環流に2007cm3/minの速度で窒素を導
入し、2つのオーバヘッド冷却器の温度をそれぞれ10℃および-32℃に保持した
状態で循環流の温度を28℃に保った。十分な
窒素で蒸気スペースをパージし、酸素濃度を0.1%未満(系から流出するガス流中
で測定した場合)に低下させた後、538cm3/minの速度で管型反応器中にフッ素を
導入した。464gの供給原料C6H13CH(CH3)COOCH3を、混合ゾーン中のPF-5052中に
徐々に導入し、59時間にわたりフッ素と反応させた。この有機供給原料をすべて
添加した後、スクラバとして使用したアルミナカラムのガス状流出物の酸素ガス
含有量が5%を超えるまで(すなわち、アルミナがフッ素と反応して酸素を放出す
るまで)、希釈フッ素添加を続けた。フッ素の供給を停止し、未反応のフッ素が
系から排出されるまで窒素の供給を続け、その後で循環ポンプを停止させた。C6
F13CF(CF3)COOCF3の収率パーセントは72%であった。蒸留により生成物の精製を
行った。
直前で説明したものと同じような直接フッ素化手順を用いて、以下のフッ素化
エステル誘導体を、それらの炭化水素類似体から調製した。
実施例A4
実施例A4では、C7F15CF(CF3)COOCF3からC7F15CF(CF3)COFを調製した。4500g(7
.73mol)のC7F15CF(CF3)COOCF3を含有する
1700mLのアセトンに、室温で200g(1.2mol)のKIを一度に添加した。この混合物を
室温で2時間、次いで40℃で更に2時間攪拌した。副生物の無機塩を濾別し、所
望の生成物を含有する底部の層を、142〜147℃における蒸留で回収した(3598g、
収率90.2%)。所望の生成物C7F15CF(CF3)COFの構造は、IRおよび19F NMRスペク
トルの解析により確認した。
(読者への注意事項:このサイズの反応を行うと、かなりの濃度の有害なカル
ボニルフルオリド(COF2)が生成するので、適宜、水性アルカリ中に吸収させるこ
とによってCOF2を除去するように注意を払わなければならない。)実施例A5〜A13
実施例A4に記載したものと同じKI反応手順を用いて、以下のフルオロアルキル
カルボニルフルオリドを、それらの過フッ素化メチルエステル類似体から調製し
た。
B .α-分枝ペルフルオロアルキルカルボキサミドの合成 実施例B1
以下の手順を用いてC7F15CF(CF3)COF(実施例A1から得られた
もの)をN,N-ジメチルアミノプロピルアミンと反応させることにより、C7F15CF(C
F3)CONH(CH2)3N(CH3)2を調製した。320g(3.1mol)のN,N-ジメチルアミノプロピル
アミンと1200mLのテトラヒドロフラン(THF)との混合物に、室温において約2時
間にわたり1084g(2.1mol)のC7F15CF(CF3)COFを滴下した。添加完了後、混合物を
3時間還流させた。冷却させた後、NaHCO3水溶液でTHF溶液を2回洗浄し、次い
で、脱イオン水で2回洗浄した。クロロホルムの150mLアリコートを用いて水性
部分を2回抽出し、クロロホルム溶液をTHF溶液と合わせ、得られた合体溶液を
無水MgSO4を用いて脱水した。減圧下で溶剤を除去し、残分を減圧下で蒸留して
所望の生成物1025g(収率82%)を得た。この生成物の構造は、IR スペクトルなら
びに1H、13C、および19F NMR スペクトルにより確認した。
実施例B1に記載したものと同じ反応手順を用い、カルボニルフルオリドと活性
水素含有アミンとのモル比を同じにして、実施例A1〜A13に示されているα-分枝
ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド類似体を、N,N-ジメチルアミノプロ
ピルアミン、ジメチルアミノプロパノール、または第一級モノ-もしくはジアミ
ンと反応させることにより、以下のα-分枝ペルフルオロアルキルカルボンアミ
ドアミンおよびペルフルオロアルキルカルボンアミド中間体(実施例B2〜B15)を
合成した。いくつかの実施例では、THFの代わりにジイソプロピルエーテル(IPE)
を溶剤として使用した。
実施例B15
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)COF(実施例A1から得られたもの)をHN[(C3H6
N(CH3)2]2と反応させることにより、C7F15CF(CF3)CON[(C3H6N(CH3)2]2を調製し
た。スターラ、ヒータ、温度計、および還流冷却器を備えた三つ口丸底フラスコ
中において、18.7g(0.10モル)のHN[(C3H6N(CH3)2]2と50.5gのジイソプロピルエ
ーテルとの混合物に、25.8g(0.05mol)のC7F15CF(CF3)COFを添加し、得られた溶
液を3時間還流してから冷却させた。次に、150gの脱イオン水を添加し、フラス
コの内容物を激しく攪拌した。内容物のpHを10から9に低下するように酢酸を用
いて調節し、2つの異なる相を生成させた。下側の水相を排出させ、上側の有機
相を残した。次に、50gの水で有機相を洗浄し(内容物のpHを9に再調節する)、
再び水相を排出させた。洗浄された有機相を無水MgSO4を用いて脱水し、濾過し
、減圧オーブン中で蒸発乾固させ、琥珀色の油30.0gを得た。この油は所望の生
成物であった(IRおよび1H NMR分析により確認した)。C .α-分枝ペルフルオロカルボン酸メチルエステルの合成 実施例C1
以下の手順に従って、メチルエステルC7F15CF(CF3)COCH3を調製した。C7F15CF
(CF3)COOCF3を理論量よりも過剰のメタノールと混合し、攪拌しながら混合物を
2時間還流させた。未反応メタノールを留去し、所望のメチルエステルC7F15CF(
CF3)COCH3を脱イオン水で洗浄し、無水MgSO4を用いて脱水し、蒸留により精製し
た。
実施例C1に記載したものと同じ手順を用いて、以下のメチルエステル(実施例C
2〜C9)を合成した。実施例 *これらのメチルエステルに対する環状過フッ素化メチルエステル前駆物質は、
実施例A4に記載の手順に従って調製した。D.α-分枝ペルフルオロカルボン酸(メタ)アクリレートおよび長鎖エステルの 合成 実施例D1
以下の手順に従って、アクリレートC7F15CF(CF3)COOCH2CH2OCOCH=CH2を調製し
た。41g(0.35mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレート、31g(0.3mol)のトリエチ
ルアミン、および350mLのTHFの混合物に、室温で155g(0.3mol)のC7F15CF(CF3)CO
F(実施例A1か
ら得られたもの)を滴下した。滴下が完了した後、攪拌しながら3時間にわたり5
0℃まで加熱するこにより、得られた混合物を反応させた。反応混合物を脱イオ
ン水で3回洗浄し、得られた水溶液を一緒に注いで、クロロホルムで抽出し、得
られたクロロホルム溶液を反応混合物と合わせて、反応混合物/クロロホルム合
体液を無水MgSO4を用いて脱水した。次いで、溶剤を除去し、残分を95〜102℃、
3mmHgで蒸留し、所望の生成物130gを得た。この構造は、IRおよびNMR分析を利用
して確認した。
実施例D1に記載のものと同じ手順を用いて、以下のアクリレート、メタクリレ
ート、ならびにアルキル-、アリール-、置換アルキル-、および置換アリールエ
ステル(実施例D2〜D31)を合成した。実施例 (ただし、Py=ピリジル)
実施例D1〜D11より得られたアクリレートおよびメタクリレートエステルは、
2日間にわたり濃厚水酸化ナトリウム水溶液と共に攪拌した後も本質的に分解を
起こすことなく完全に回収可能であった。従って、α-分枝エステルは、塩基性
溶液中においてさえも、乳化重合を利用して重合しうる程度に、加水分解に対し
て安定であることが判明した。これとは対照的に、例えばC7F15COOCH2CH2OCOCH=
CH2などの非α-分枝ペルフルオロカルボン酸は、同等の条
件下で容易に加水分解された。E .α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルアミンオキシド界面活性剤の合成 実施例E1
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)CONH(CH2)3N(CH3)2(実施例B1から得られた
もの)を過酸化水素と反応させることにより、C7F15CF(CF3)CONH(CH2)3N+(CH3)2O-
を調製した。スターラ、温度計、および水冷却器を備えた三つ口丸底フラスコ
に、12.0g(0.02mol)のC7F15CF(CF3)CONH(CH2)3N(CH3)2および12.0gのエタノール
を添加した。この攪拌された溶液に、5分間にわたり57g(0.05mol)の30%H2O2水
溶液を添加し、周囲実験室温度で攪拌を72時間続けた。得られた溶液を4時間還
流させ、0.2gの脱色/活性炭を添加し、混合物を更に3時間穏やかに還流させた
。反応させた混合物をCeliteTM濾過助剤に通して濾過し、70℃においてアスピレ
ータで減圧しながら3時間かけて濾液を蒸発乾固させ、粘稠な黄色の油を生成さ
せた。IR分析ならびに1Hおよび9F NMR分析は、構造C7F15CF(CF3)CONH(CH2)3N+(C
H3)2O-と一致した。
実施例E1に記載のものと同じ反応手順を用い、反応体のモル比を同じに保って
、α-分枝第三級ペルフルオロアルキルカルボンアミドアミン類似体を過酸化水
素と反応させることにより、以下のα-分枝第三級ペルフルオロアルキルカルボ
ンアミドアミンオキシド(実施例E2〜E9)を合成した。
実施例E10
以下の手順を用いて、ペルフルオロアルキルカルボニルピリジニウムアミンオ
キシドを調製した。0.04molのC7F15CF(CF3)COOCH2CH2NHCO-4-Py(実施例D23から得られ
たもの)および0.1molの過酢酸を含有する100mLのエタノールの混合物を、9時間
還流することにより反応させた。次に、2gの活性炭を添加し、混合物を更に3時
間還流させた。混合物を濾過し、濾液から溶剤を除去して所望の生成物を得た。
実施例E10に記載のものと同じ反応手順を用い、反応体のモル比を同じに保っ
て、α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルピリジン類似体を過酢酸と反応さ
せることにより、以下のα-分枝第三級ペルフルオロアルキルカルボニルピリジ
ニウムアミンオキシド(実施例E11〜E13)を合成した。
実施例E14
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)CON[(CH2)3N+(CH3)2O-]2を調製した。100g
(0.0146mol)のC7F15CF(CF3)CON[C3H6N(CH3)2]2(実施例B16から得られたもの)に
、100gのエタノールを添加した。7.9g(0.07mol)の30%H2O2水溶液を添加し、混
合物を5時間にわたり70℃で加熱し、次いで室温まで冷却させた。冷却後、混合
物を1時間還流させ、次いで0.2gの活性炭を添加し、混合物を更に3時間還流さ
せた。溶液を濾過し、70℃、25torrで溶剤を除去して黄色の油の所望の生成物10
.7gを得た。F .α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルカチオン界面活性剤の合成 実施例F1
以下の手順を用いて、ピリジニウム塩
を調製した。理論量よりもわずかに過剰のヨウ化メチルを含有するTHFに、C7F15
CF(CF3)COOCH2CH2NHCO-4-Py(実施例D22から得られたもの)を添加し、2時間還流
させることにより混合物を反応させた。得られたオレンジ色の固体を濾別し、TH
Fで洗浄し、エタノールより黄色の結晶として再結晶させた。実施例F2
実施例F1に記載のものと同じ反応手順を用い、反応体のモル比を同じに保って
、類似体のα-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルピリジン(実施例D23から得
られたもの)をヨウ化メチルと反応させることにより、以下のα-分枝ペルフルオ
ロアルキルカルボニルピリジニウムヨージドを合成した。
実施例F3
実施例B2から得られたアミドアミン10.0g(0.02ml)および2-クロロエタノール1
.77g(0.022mol)を丸底フラスコに添加した。混合物を加熱して70℃で24時間攪拌
し、冷却することにより琥珀色の樹脂状物質を得た。赤外分光法を利用して、生
成物の構造が所望のカチオン系フルオロ脂肪族界面活性剤
であることを確認した。実施例F4
実施例F3に記載のものと類似の合成手順を用いて、以下のα-分枝ペルフルオ
ロアルキルカルボニルアミドアミン(実施例F4〜F6)
を合成したが、ただし、実施例B2から得られたアミドの代わりに、それぞれ実施
例B1、B14、およびB15のアミドを使用した。実施例 実施例F7
実施例B14から得られたアミドアミン1.0g(0.0016mol)、氷酢酸1.22g(0.02mol)
、および脱イオン水1.11gを、丸底フラスコ中で合わせ、周囲温度で1時間攪拌
し、所望の界面活性剤塩
の透明な溶液を生成させた。実施例F8
C5F11CF(CF3)COO(CH2)3N(CH3)2(実施例D35から得られたもの)100g(0.02mol)
、クエン酸(純度>99.5%)3.84g(0.02mol)、および
エタノール100gを、丸底フラスコ中で合わせ、透明な溶液が形成されるまで加温
しながら攪拌した。減圧下でエタノールを蒸発させて除去し、得られた生成物を
更に、70℃、25torrの減圧オーブン中で4時間乾燥させ、界面活性剤クエン酸塩
を得た。IR分光法で分析することにより、この構造が
であることを確認した。実施例F9
以下の手順を用いて、アミン塩C7F15CF(CF3)CON[C3H6N+(CH3)2H]22[-OOCCH3]
を調製した。50gのC7F15CF(CF3)CON[C3H6N(CH3)2]2(実施例B15から得られたもの
)を、5.0gの氷酢酸および100gの脱イオン水と混合し、所望のアミン塩の水溶液
を生成させた。G .α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルチオエステルの合成 実施例G1
次の手順を用いて、チオエステルC7F15CF(CF3)COSCH2CH2CH2CH3を調製した。0
.02molのC7F15CF(CF3)COF(実施例A1から得られたもの)、0.025molの1-ブタンチ
オール、0.025molのピリジン、および50mLのTHFを、3時間還流させることによ
り反応させた。混合しながら希薄HCl水溶液を添加し、2相を生成させた。有機
相を分離した後、30mLのクロロホルムで水相を2回抽出し、2つのクロロホルム
溶液を有機相と合わせた。次いで、クロロホルム/有機相混合物から溶剤を除去
し、残分を蒸留して、202〜205℃の沸点領域を有する所望の生成物を得た。
実施例G1に記載のものと同じ手順を用いて、以下のチオエステル(実施例G2〜G
7)を合成した。実施例 H .α-分枝1,1-ジヒドロペルフルオロアルカノールの合成 実施例H1
以下の手順を用いて、ジヒドロペルフルオロアルカノールC7F15CF(CF3)CH2OH
を調製した。25gのC7F15CF(CF3)COF(実施例A1から得られたもの)と100mLのTHFと
の混合物に、室温で4gの水素化ホウ素ナトリウムを何回かに分けて添加した。得
られた混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、脱イオン水を注意深く加えて過剰
の水素化ホウ素ナトリウムを破壊し、塩酸を加えてpHを7〜8の範囲に調節するこ
とにより、下側に有機相を、上側に水相を生成させた。有機相を分離し、蒸留し
て所望の生成物19gを得た。この構造は、IRおよびNMR分析により確認した。
実施例H1に記載のものと同じ手順を用いて、以下のジヒドロペルフルオロアル
カノール(実施例H2〜H7)を合成した。実施例 I .α-分枝ペルフルオロアルキルアクリレートおよびメタクリレートを含有する ポリマの合成および評価 実施例I1
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)COOCH2CH2OCOCH=CH2のホモポリマを調製
した。100mL 三つ口フラスコに、10gのニートなC7F15CF(CF3)COOCH2CH2OCOCH=CH2
(実施例D1から得られたアクリレートモノマ)および0.2gのアゾビス(イソブチロ
ニトリル)(AIBN)を仕込んだ。フラスコを脱気し、窒素でパージした。フラスコ
の内容物を1時間にわたり攪拌しながら60℃まで加熱し、所望のポリアクリレー
トを得た。実施例I2〜I4
実施例I2〜I4において、実施例D1のモノマからホモポリマを調製するのに使用
したものと本質的に同じ手順を用いて、それぞれ実施例D8、D6、およびD3で得ら
れたメタクリレートモノマからホモポリマを調製した。ホモポリマのガラス転移
温度を試験方法ASTM E 1356-91に従って評価し、結果を表1に示した。
表1のデータは、アクリレートおよびメタクリレートホモポリマはいずれも、
比較的低いガラス転移温度を有することを示している。実施例I5〜I12
実施例I5〜I12において、実施例D1のモノマからホモポリマを
調製するのに使用したものと本質的に同じ手順を用いて、それぞれ実施例D2、D3
、D4、D5、D6、D8、D10、およびD11で得られたアクリレートおよびメタクリレー
トからホモポリマを調製した。次に、各ホモポリマをトリフルオロトルエン中に
溶解し、ガラスカバースリップ上にコーティングし、空気乾燥させた。乾燥後、
各被覆スリップを120℃で15分間熱処理し、ポリマを硬化させた。次に、CahnDyn
amic Contact Angle Analyzcr,Modcl 322(Wilhelmy天秤ならびに制御およびデ
ータ処理用のコンピュータ)を使用し、ステージ速度を毎秒150ミクロンに設定し
て、各ポリマ被覆ガラスカバースリップ上で脱イオン水およびn-ヘキサデカンを
用いて前進接触角の測定を行った。接触角は表2に報告されているが、これらは
3回の反復実験の平均である。 表2のデータは、α-分枝ペルフルオロアルキル含有アクリレートおよびメタ
クリレートポリマがそれぞれ、水性および有機液体のいずれに対しても優れた反
撥性を呈することを示しているが、このことは、これらのポリマが、布、カーペ
ット、皮革などの繊維質基
材用の優れた反撥性物質であることを示唆する。実施例I13
以下の手順を用いて、実施例D1で調製したアクリレートモノマC7F15CF(CF3)CO
OCH2CH2OCOCH=CH2から、有機溶剤中および水中の両方においで活性なポリマ界面
活性剤を調製した。モノマD1 6.0g、50%(wt)PluronicTM L-44ジアクリレート
を含有するトルエン(米国特許第3,787,351号(Olson)の実施例1の記載に従って
調製したもの)28g、メルカプトプロパンジオール0.8g、t-ブチルペルオクトエー
ト0.4g、およびイソプロパノール113gを、8オンス(225mL)細口瓶に添加した。
内容物の入った瓶を密封し、90℃において約4〜5時間タンブルさせてモノマを重
合した。次に、タンブリングを停止し、瓶を室温まで冷却させてから蓋を開け、
空気を流入させた。得られたポリマの濃度は15重量%であった。この濃度は、溶
液の少量を小さな皿に秤取って100℃の強制通風オーブン中で1時間エバポレー
トすることにより求めたものである。
ポリマ溶液をトルエンおよび脱イオン水の両方に加えて固形分0.5%(wt)まで
希釈し、希釈溶液の表面張力をFisher Model 20 duNuoy Tensiometerを用いて測
定したところ、トルエンでは25.7ダイン/cm、水では21.3ダイン/cmであった。実施例114
以下の手順により、α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルのアクリレート
誘導体から水性コポリマを調製した。C8F17CF(CF3)COOCH2CH2OCOCH=CH2(実施例D
2から得られたもの)36g、アクリル酸15g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2Si(OCH3)22.5g、
イソプロパノール40g、N-メチルピロリドン20g、およびAIBN0.40gを、16oz(225m
L)瓶に仕込んだ。仕込みの済んだ瓶を窒素で約5分間パージし、瓶を密封し、内
容物を80℃で5時間重合させた。
生成したポリマをフラスコに移し、70℃において減圧下でイソプロパノールを除
去した。次に、150gの2.4%(wt)水酸化アンモニウム水溶液中に分散させること
により、ポリマを中和した。80℃において2時間にわたり少量のサンプルをエバ
ポレートすることによりこの溶液の固形分含量を測定したところ、16.2重量%で
あった。
こうして調製された溶液50gに、41gのCX-WS-300架橋剤(85%イソプロペニルオ
キサゾリン、10%メチルメタクリレート、および5%エチルメタクリレートから
調製されたオキサゾリンターポリマの10%水性分散液であり、日本のNippon Sho
kubaiから市販されている)を添加し、更に、非常の少量のアンモニア水を添加す
ることにより配合物のpHを7.5に調節した。次に、この配合物を室温で1週間エ
ージングし、その後、#15線巻ロッドを用いて少量のサンプルを透明ポリエチレ
ンテレフタレート(PET)フィルムにコーティングした。コーティングされたPETフ
ィルムを120℃で10分間硬化させ、透明コーティングを生成させた。このコーテ
ィングは、青色SharpicTMパーマネントマーカから被覆フィルムに適用されたイ
ンクのはじきを引き起こした。J .α-分枝ペルフルオロアルキル基を含有するノニオン界面活性剤の合成 実施例J1
以下の手順を用いて、C8F17CF(CF3)CO(OCH2CH2)16OCH3を調製した。C8F17CF(C
F3)COF(実施例A7から得られたもの)とCarbowaxTM750メトキシ末端ジオール(コネ
ティカット州DanburyのUnionCarbidc Corp.から市販されている)との等モル混合
物を、攪拌された還流テトラヒドロフラン(THF)中で5時間反応させた。次に、
減圧下でTHFを除去し、所望のノニオン界面活性剤を得た。この構造は、IR分析
を利用して確認した。K .α-分枝ペルフルオロアルキル基を含有する両性界面活性剤の合成 実施例K1
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)CONH(CH2)3N+(CH3)2C2H4COO-を調製した。
実施例B1のアミドアミン中間体12.0g(0.02mol)およびアクリル酸1.66g(0.023mol
)を丸底フラスコに添加し、得られた混合物を室温で6日間攪拌し、粘稠な琥珀
色の液体を得た。この琥珀色の液体1重量%を脱イオン水に溶解させ、得られた
溶液のpHを、希薄NaOH水溶液を用いて8に調節することにより、反応の終了を確
認した。この溶液は、アミドアミン出発原料の析出を伴うことなく透明な状態を
保った。このことは、反応が良好に終了し、所望の生成物C7F15CF(CF3)CONH(CH2
)3N+(CH3)2C2H4COO-を生じたことを示唆するものである。1H NMR分光法は、所望
の生成物と一致するものであった。実施例K2
スターラおよび温度計を備えた三つ口丸底フラスコに、実施例B3のアミドアミ
ン中間体21.9g(0.04mol)およびγ-プロパンスルトン4.9g(0.04mol)を添加した。
攪拌しながら混合物を80℃まで加熱したが、その際、発熱が起こり135℃に達し
た。15分間にわたり温度を135℃に保ち、次いで、フラスコの内容物を室温で冷
却させた。冷却時、クリーム色の固体26.8gが得られたが、スパチュラで破壊し
た。少量の固体を脱イオン水に溶解させ、得られた水溶液のpHを、希薄NaOH水溶
液を用いて8まで上昇させることにより、反応の終了を確認した。この溶液は、
アミドアミン中間体の析出を伴うことなく透明な状態を保った。このことは、反
応が良好に終了したことを示唆するものである。赤外および1H NMR分光法で分析
することにより、生成物が、主に、両性界面活性剤C6F13CF(CF3)CON
(C3H6SO3 -)(CH2)3N+(CH3)2HとC6F13CF(CF3)CONH(CH2)3N+(CH3)2C3H6SO3 -との混
合物であることを確認した。
実施例K1に記載のものと類似した手順を用いて、以下のアクリル酸付加物(実
施例K3およびK4)を合成した。ただし、実施例B1のアミドアミンの代わりにそれ
ぞれ実施例B14およびB15のアミドアミンを利用した。実施例 α-分枝ペルフルオロアルキル界面活性剤の評価
先のいくつかの実施例で調製されたα-分枝ペルフルオロアルキル界面活性剤
を種々の濃度で脱イオン水に溶解させ、生成した各界面活性剤水溶液の表面張力
を、K-12 Precessor Tensiometerおよび665 DosimatTM測定法を用いて測定した
。その際、各界面活性剤に対して、臨界ミセル濃度(CMC)を決定した。各界面活
性剤のCMCおよびCMCにおける対応する表面張力は、表3中に提示されている。 表3のデータは、α-分枝ペルフルオロアルキル界面活性剤が水において良好
な表面張力の低下を呈し、アミンオキシドおよびピリジニウムヨージドの場合に
は特に良好な結果が得られることを示している。L .AFFF配合物におけるα-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルアミンオキシド 界面活性剤の評価 実施例L1
実施例L1において、3%AFFF コンセントレートを次のように配合した。
(氷酢酸を用いて、コンセントレートのpHを約8.3に調節した。)
得られたコンセントレート3容量部を、それぞれ97容量部の淡水および人工海
水(ASTM D1141-52)で希釈して、3%プレミックスを形成し、次の試験方法:すな
わち、フォーム膨張およびドレン時間、皮膜形成および封止性、表面張力および
界面張力を用いてAFFF性能を評価した。3%プレミックスの評価結果は、表4に
示されてい
る。
表4のデータは、コンセントレート中にα-分枝ペルフルオロアルキルカルボ
ニルアミンオキシド界面活性剤をわずかに1.5重量%導入するだけで優れたAFFF3
%コンセントレートを調製できることを示している。M .α-分枝ペルフルオロカルボン酸およびα-分枝ペルフルオロカルボン酸塩の 合成および評価 実施例M1
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)COF(実施例A1から得られたもの)を加水分
解することによりC7F15CF(CF3)COOHを調製した。860gのC7F15CF(CF3)COFを、300
0mLの脱イオン水と共に室温で6時間攪拌した。濃塩酸を添加して相分離を起こ
させた。底部の層を分離し、減圧下(120〜125℃/2torr)で蒸留することにより
、生じた粗製の酸を精製した。室温まで冷却した後、白色固体として770gの酸を
得た。酸の構造は、19F NMR分析を利用して確認した。実施例M2〜M7
実施例M1に記載のものと同じ手順を用いて、種々のα-分枝ペルフルオロアル
キルカルボニルフルオリドから以下のα-分枝ペルフルオロアルキルカルボン酸(
実施例M2〜M9)を調製した。
実施例M10
以下の手順を用いて、C7F15CF(CF3)COOH(実施例M1から得られたもの)をアン
モニアで中和することによりC7F15CF(CF3)COO-H4N+を調製した。300gのC7F15CF(
CF3)COOHを、室温で500mLのFluorinertTM FC-77 Electronic Liquid(ミネソタ州
St.Paulの3M Companyから市販されている)に溶解させた。理論量の無水アンモ
ニアガスを溶液に通し、徐々に白色沈殿を生成させた。中和に続いて、減圧下で
溶剤を除去し、得られた白色固体を周囲条件下で乾燥させた。実施例M11〜M13
実施例M10に記載のものと同じ手順を用いて、以下のアンモニウムカルボン酸
塩を調製した。
実施例M14
以下の手順を用いて、遊離酸からC7F15CF(CF3)COO-H4N+を調製した。C7F15CF(
CF3)COOH(実施例M1から得られたもの)の水性分
散液を、室温において理論量の濃水酸化アンモニウム水溶液(28〜30%)で中和す
ることによりC7F15CF(CF3)COO- H4N+の水溶液を生成させた。周囲条件下でこの
水溶液を乾燥させ、白色固体として所望のアンモニウム塩を得た。実施例M15〜M27
実施例M14に記載のものと同じ中和手順を用い、反応体のモル比を同じに保っ
て、α-分枝ペルフルオロカルボン酸類似体(実施例M1〜M9)から、以下のα-分枝
ペルフルオロカルボン酸塩(実施例M15〜M27)を合成したが、ただし、水酸化アン
モニウム、エタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、または水酸
化リチウムを用いて塩基を変化させた。 実施例M30
以下の手順を用いて、遊離酸からC7F15CF(CF3)COO- 1/2[H3N+C2H4NHC2H4N+H3
]を調製した。4.0g(7.78mmol)のC7F15CF(CF3)COOH(実施例M1から得られたもの)
、0.40g(3.89mmol)のジエチレントリアミン、および82.6gの脱イオン水を合わせ
、60℃まで加温し、次いで冷却することにより、固形分5.06%(wt)の所望のポ
リアンモニウムペルフルオロカルボン酸塩を含有する白色ペースト状の分散溶液
を得た。
実施例M14〜M30から得られたカルボン酸塩を、種々の固形分濃度で脱イオン水
中に溶解し、得られた各界面活性剤水溶液の表面張力を測定した。次に、各界面
活性剤に対して臨界ミセル濃度(CMC)を決定した。各界面活性剤のCMCおよびCMC
における対応する表面張力は、表5に提示されている。表5にはまた、比較のた
めに、主に直鎖のペルフルオロ基を含有し、本質的にα-分枝のない構造C7F15CO
O-H4N+で表されるペルフルオロカルボン酸アンモニウム塩であるFluoradTM FC-1
43 Fluorocheml calSurfactant(ミネソタ州St.Paulの3M Companyから市販され
ている)に対して測定した表面張力の値も提示されている。
表5のデータは、本発明のα-分枝ペルフルオロカルボン酸塩が水において優
れた界面張力の低下を呈したことを示している。表面張力およびCMCはいずれも
、より長いRf鎖の塩を用いることによって、より低い値が得られた。また、ナト
リウム塩およびリチウム塩と比べて、アンモニウム塩、ポリアンモニウム塩、お
よびカリウム塩の場合の方が、より小さな表面張力の値が得られた。α-分枝ペ
ルフルオロカルボン酸アンモニウム塩によって得られる表面張力は、主に直鎖の
ペルフルオロカルボン酸アンモニウム塩であるFC-143の示す表面張力よりも低か
った。優れた表面特性のおかげで、本発明のα-分枝ペルフルオロカルボン酸塩
は、現在、フルオロポリマ乳化剤として商用されている直鎖分枝状ペルフルオロ
カルボン酸塩に対する優れた生分解性代替物となることが期待される。N .α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニル誘導体の分解性の測定 実施例N1
以下の手順を用いて、水性α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリ
ドの熱分解および分解によって生じた生成物のキャラクタリゼーションを行った
。8gのC7F15CF(CF3)COF(実施例A4の場合と同様に調製したもの)を脱イオン水中
に分散し、2時間還流させた。次に、Dean-Stark装置を用いて共沸蒸留を行うこ
とにより
5.7gの揮発性分解生成物を回収した。生成物の構造およびそれらの量を19F NMR
およびGCスペクトル分析により調べたところ、一水素化物C7F15CFHCF3 85%、お
よびオレフィンC6F13CF=CFCF3(cis-およびtrans-異性体の混合物)15%であった
。C7F15CF(CF3)COFの代わりに、n-C7H15COFの電気化学的フッ素化により調製し
た非α-分枝ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドであるn-C7F15COFを用
いた場合、揮発性の生成物は生じなかった。
また、約80℃において水性混合物を数時間加熱することにより、水中に分散さ
れたC7F15CF(CF3)COF(実施例A4から得られたもの)の熱分解を行った。実施例N
1の場合と同じ揮発性の生成物を生じた。これを層分離およびそれに続く蒸留に
よって回収した。
同じようにしてC7F15CF(CF3)COOH(実施例L1から得られたもの)の水溶液の熱分
解を行ったところ、同じ一水素化物およびオレフィンが得られた。実施例N2〜N9
いくつかのα-分枝開鎖構造体(実施例N2〜N9)、主に直鎖の開鎖構造体(実施例
N10−FluoradTM FC143 Fluorochemical Surfactant、ミネソタ州St.Paulの3Mか
ら市販されている)、閉鎖(すなわち、環状)構造体(実施例N11−米国特許第2,567
,011号(Diesslinら)に記載されているように、安息香酸の電気化学的フッ素化お
よびKOHの存在下における加水分解を行うことにより調製される)などの一連のニ
ートなペルフルオロカルボン酸塩について、熱分解測定を行った。
Perkin-Elmer TGA 7熱重量分析装置を使用し、塩サンプルサイズ約5mg、加熱
速度10℃/min、窒素ガス流量40〜45mL/minの条件で、ペルフルオロカルボン酸塩
を試験した。TGA 7ソフトウェアを利用して、次の温度:すなわち、(1)分解の
開始温度、(2)サンプル重量
の50%が失われた温度、(3)サンプル重量の90%が失われた温度、を記録した。
これらの熱分解実験の結果は、表6に示されている。
*残存する塩KIが揮発性でないため、重量損失85%のときに中止した。
表6のデータは、ニートな塩として熱分解させた場合、α-分枝開鎖構造体の
分解した温度が、主に直鎖の開鎖構造体の分解した温度よりも少しだけ低かった
ことを示している。このことは、水性媒体中においてα-分枝開鎖構造体が、主
に直鎖の開鎖構造体よりもかなり低い温度で分解を起こした実施例N1の場合とは
極めて対照的である。ニートな開鎖ペルフルオロシクロヘキシル構造体は、α-
分枝または主に直鎖の開鎖構造体のいずれよりも著しく低い温度で分解を起こし
た。実施例N10
実施例N3〜N6から得られたα-分枝開鎖アンモニウム塩化合物
を、5重量%の濃度で脱イオン水に溶解させ(水10mL中に0.5gのアンモニウム塩
を含む)、室温で保存した。多数の構造体が1年後に約20〜30%の分解を呈した
。
主に直鎖であるC7F15COO-NH4 +の水溶液は、同じ1年間で分解の兆候が現れな
い。実施例N11
細菌スラッジ接触試験を利用して、周囲条件下でC6F13CF(CF3)COO-NH4 -の耐環
境安定性を調べた。この試験において、細菌スラッジは、ミネソタ州Pig's Eye
にある都市廃棄物処理プラントから入手したものであり、スラッジを遠心処理に
かけて水不溶性の高密度固形分を回収し、再懸濁固形分の全量が約2000ppmの標
準レベルとなるように水中に再構成した。2000ppmのスラッジを含有する水の5mL
アリコートをいくつかの20mLバイアルのそれぞれに入れ、約496ppmの濃度(1ミ
リモル)にするのに十分なカルボン酸塩を各バイアルに添加した。各バイアルを
セプタムキャップでぴったりと蓋をし、室温で放置した。ヘッドスペースサンプ
ル採取アクセサリを備えたHewlitt Packard Gas Chromatographを用いて所定の
時間間隔で液体上のスペースからガスサンプルを取り出すことにより、各ヘッド
スペース中のペルフルオロオレフィンガスおよびペルフルオロ一水素化物ガスの
濃度を測定した。各サンプルから決定されたピーク面積を、一連の標準試料のも
のと比較した。この標準試料のピーク面積は、ペルフルオロオレフィンとペルフ
ルオロ一水素化物との規定の混合物を増加する種々の濃度で含有する水を同じタ
イプのバイアルに入れて、これらのバイアル中のヘッドスペースに対して同じ分
析手順を適用することにより求めたものである。以下に示されている結果は、塩
が揮発性フルオロカーボンに完全に転化されたとみなした場合の生成量に対する
ペルフルオロオレフィン/ペルフルオ
ロ一水素化物混合物の生成量の理論パーセントを基準にした場合、完全な転化が
得られることを示している。28日後の試験のときは、スラッジを含まない水を使
用した対照実験も行った。
生成したペルフルオロオレフィン/ペルフルオロ一水素化物の%
1日後‐4%
4日後‐13%
7日後‐23%
14日後‐44%
28日後‐70%
28日後(スラッジなし)‐32%
上記のデータは、周囲条件下では28日後において、スラッジの存在により、ペ
ルフルオロオレフィン/ペルフルオロ一水素化物混合物の生成量が2倍以上に増
大したことを示している。O .α-分枝ペルフルオロカルボン酸塩の毒性の測定 実施例O1
α-分枝ペルフルオロカルボン酸塩C7F15CF(CF3)COO-NH4 +およびその直鎖異性
体CF3(CF2)8COO-NH4 +の両方に対して、21日間にわたりラットへの1回投与試験
による急性LD50測定を行った。
C7F15CF(CF3)COO-NH4 +に対するLD50値は、毒性がごくわずかである500〜1000m
g/kgの範囲内で得られた。毒性の現れる用量を投与した場合、死亡が2〜3日以内
で発生したので、消耗性疾患は認められなかった。これにより、α-分枝異性体
はラット中に残存しなかったことが示唆される。毒性の現れない用量で投与され
たラットは、3日後に体重がもとに戻った。
C9F19COO-NH4 +に対するLD50値は、中程度の毒性である50〜100mg/kg(α-分枝
異性体の濃度の1/10)の範囲内で得られた。また、消耗性疾患が原因で多数の死
亡が発生した。これは、ラットが直鎖
異性体を体外へ効果的に排出できなかったことを示している。実施例O2
以下の試験装置を使用して、ラットを用いたC7F15CF(CF3)COO-NH4 +の慢性毒性
試験を行った。上部および底部を有する摂取用デシケータジャーチャンバをデザ
インした。上部は、入口、出口、酸素モニタ、および圧力計を備えていた。酸素
ガスタンクにより酸素を入口に供給し、チャンバ中の酸素レベルは、酸素モニタ
および圧力計で測定しながら通常の周囲レベルに保った。出口を二酸化炭素スク
ラバおよび微粒子フィルタと一列に連結し、これを更に、約2L/minで作動するス
テンレス鋼ベローズポンプを含むループに連結させた。ループ中のガスのほとん
どは入口に再循環させたが、約100mL/minは、第2のループを介して、0.5mLガス
採取ループを備えたガスクロマトグラフに誘導した。
500mg/kgの用量で投与されたラットを、チャンバの底部に入れ、上部を取り付
け、組み立てられたチャンバを、氷で満たされたパン中に配置して水を凝縮させ
た。酸素の流動を開始し、排出ガスをモニタし、C7F15CF(CF3)COOHの水系分解生
成物であるCF3CF=CF(C6F13)およびC7F15CFHCF3が存在するかを、ガスクロマトグ
ラフ中のこのオレフィンおよび水素化物の標準を利用して調べた。初期には、排
出ガス中にオレフィンも水素化物も検出されなかった。24分後、一水素化物に対
応する一本のわずかなクロマトグラフピークが観測された。92分後、ピークは目
立って大きくなった。217分後、ピークはかなり大きくなり、第2の大きなピー
クが生じたが、これもまた、水素化物に対応ずるスペクトル位置に一致した。暴
露後の観察では、毒性(死亡)の証拠または消耗性疾患の証拠は認められなかった
。このように毒性が低下したのは、恐らく、α-分枝によるものであり、脱炭酸
によるものではなかった。
この実験により、α-分枝ペルフルオロカルボン酸塩はラットによる代謝を受
けて一水素化物代謝産物となり、この代謝産物は蒸散を介してラットから排出さ
れるため、ラットに対して毒性が認められないことが判明した。P .乳化重合における界面活性剤の使用 実施例P1
以下の手順を用いて、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデンと
の共重合を行うための乳化剤としてC7F15CF(CF3)COO-NH4 +(実施例M1から得られ
たもの)を評価した。
圧力および温度制御機能付きの1ガロン垂直攪拌ステンレス鋼反応器を脱気し
、窒素で2回パージした。孤立減圧系を用いて、2gの過硫酸アンモニウム(開始
剤)と6gのリン酸二カリウムとを2800gの脱イオン水に溶解させてなる溶液を反応
器に導入した。減圧状態の反応器に窒素を送入し、攪拌した状態で減圧および窒
素パージを交互に2回行って溶液を脱気した。60〜70℃の脱イオン水約20g中にC7
F15CF(CF3)COO-NH4 +を溶解してなる十分量の溶液を孤立減圧系下で反応器に導
入し、水溶液中の乳化剤の最終濃度計算値が350ppmとなるようにした。反応器に
窒素を送入し、溶液を非常に軽く攪拌し、反応器を減圧して窒素を除去し、単離
した。次に、約10psig(全圧力1280torr)の圧力になるまでヘキサフルオロプロピ
レンモノマを反応器に送入し、このバッチの温度を、強く攪拌しながら72℃まで
上昇させた。温度を72℃に保持した状態で、フッ化ビニリデン60%(wt)とヘキサ
フルオロプロピレン40%(wt)とのモノマ混合物を、風袋計量済みガスシリンダか
ら反応器のヘッドスペース中に供給し、反応器の圧力を130psig(全圧力7480)に
保った。約1kgのモノマでブレンドを供給した後(持続時間約375時間)、モノマの
導入を停止して、反応体を室温まで冷却させ、残存する未
反応モノマを取り除いた。
生成したラテックスポリマを反応器から送出し、10gのラテックスを105℃の強
制通風オーブン中で16時間乾燥させることにより、ラテックスの固形分パーセン
トを調べたところ、25重量%であった。
反応器本体を反応器ヘッドから分離し、反応器中で凝結したポリマの量を調べ
るために、反応器の目視検査を行った(良好な重合反応においてはこの量が最小
限に抑えられなければならない)。「なし」〜「わずか」〜「すこし」の範囲で
、定性的な等級付けを行った。
16oz(450mL)ジャーにラテックスを半分満たし、水平位置で数時間振盪させ、
振盪後、0=非常に安定〜3=不安定の範囲の3段階評価法によりラテックスを定量
的に等級付けした。
ラテックス中の粒子サイズは、Coulter サブミクロン粒子サイズアナライザを
用いて90°散乱により決定した。
発泡度は、次のような定性的な尺度:すなわち、0=発泡なし、1=発泡わずか、
2=発泡中程度、および3=発泡多し、を用いて等級付けした。実施例P2
実施例P2では、実施例P1の場合と同じ実験を行ったが、ただし、乳化剤C7F15C
F(CF3)COO-NH4 +の濃度を3500ppmまで増大させ、反応時間を3.75から3.5時間に減
少させ、更に、反応温度を72℃から78℃に上昇させた。比較例P3〜P7
比較例P3〜P6では、実施例P1の場合と同じ実験を行ったが、ただし、乳化剤C7
F15CF(CF3)COO-NH4 +の代わりに、C8F17SO2N(C2H5)CH2COO-K+(FluoradTM FC-128
Fluorochemical Surfactant、ミネソタ州St.Paulの3Mから入手可能である)、C7
F15COO-H4N+(FluoradTM
FC-143 Fluorochcmical Surfactant)、および SurflonTM SIIIS Fluorochemic
al Surfactant(名目上はテロマを基剤とするn-C9F19COO-H4N+であると考えられ
ている。日本のAsahi Glass Corp.から市販されている)を使用した。
比較例P7では、実施例P1の場合と同じ実験を行ったが、ただし、乳化剤を使用
しなかった。
すべてのフルオロポリマ実験に対する反応条件および結果が、表7に示されて
いる。
表7のデータから、より低い濃度(350ppm)では、C7F15CF(CF3)COO-NH4 +は、Fl
uoradTMFC-143およびSurflonTMSIIIS(これらはいずれも、
フルオロポリマ乳化剤として頻繁に使用される市販のフルオロケミカル界面活性
剤である)に匹敵する性能を示し、生成する粒子サイズが小さく、凝結が起こら
ず、発泡が少ないことが分かる。C7F15CF(CF3)COO-NH4 +のより高い濃度(3500ppm
)では、粒子サイズが210nmから69nmに減少し、発泡が減り(3段階評価で「2」か
ら「1」に低下)、凝結がなくなり、全体としての性能はFluoradTMFC-128に匹敵
する。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,
LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,
UZ,VN,YU