JP2001358561A - サンプリングレート変換装置 - Google Patents
サンプリングレート変換装置Info
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Abstract
ト変換を行う。 【解決手段】 インタポレータとデシメータとでデジタ
ルフィルタを分割し、それぞれのフィルタをサンプル値
H∞制御により設計する。例えば前者では、入力アナロ
グ信号wcをアンチエリアシングフィルタ11により帯
域制限した信号に時間遅れを加味した信号と、オーバー
サンプリングD/A変換部13を通した復元信号zcと
の連続時間の誤差信号ecが小さくなるようにIIR型
のデジタルフィルタ15を構成する条件式を設定し、そ
れを有限次元離散時間系に変換して近似的な計算式を得
る。そして、フィルタ11、17等の条件を決めた上で
その計算式をサンプル値設計の一手法であるH∞制御の
問題として解き、フィルタのパラメータを算出する。
Description
オ信号、デジタル画像信号等のデジタル信号のサンプリ
ングレート(サンプリング周波数)を変換するためのサ
ンプリングレート変換装置に関する。
を代表とするデジタルオーディオ機器は、既に一般に広
く普及している。また、DVDプレーヤやMP3レコー
ダ/プレーヤといった新たな機器も市場に登場し始めて
おり、今後、大きな普及が期待されている。更にまた、
デジタル画像処理が普及し、質の良い画像の圧縮や解像
度変換なども今後大きな需要が見込まれている。
の連続的なアナログ信号を所定のサンプリング周期でも
ってサンプリングして離散信号として変換されたもので
ある。上に挙げたようなオーディオ機器では、そこで取
り扱われるデジタルオーディオ信号のサンプリング周波
数は必ずしも同一ではなく、主なものだけみても、CD
やMDでは44.1kHz、DATでは48kHz、D
VDでは96kHzが使用されている。また、サンプリ
ング周期はオーディオ特性(具体的には周波数特性)を
左右する要素であるため、将来的には更に異なるサンプ
リング周波数が使用されることも考えられる。
VDレコーダに記録しようとする場合、一旦、CDプレ
ーヤにおいてアナログ信号に変換したあとDVDレコー
ダで再びデジタル信号に変換するという方法を採ること
ができる。しかし、一般に、D/A、A/Dを通すと音
質が劣化することから、アナログ信号を介すことなしに
デジタル信号のまま接続することが好ましい。これが、
いわゆるデジタルインターフェイスと呼ばれるものであ
る。信号の送り出し側と受け側とのサンプリング周波数
が同一であるとき、場合によってはジッタを吸収するP
LLなどを利用する必要はあるものの、基本的に両者を
直結することが可能である。ところが、信号の送り出し
側と受け側とのサンプリング周波数が相違する場合に
は、両者の間に、サンプリング周波数を変換するための
サンプリングレート変換器というインタフェース装置が
必要となる。また、画像の圧縮や、画像を拡大/縮小す
るのにもサンプリングレート変換の技術が必要であり、
元のアナログ画像の画質を保存するような変換が望まれ
る。
装置の原理構成図である。この装置は、L倍のアップサ
ンプラ30と、伝達関数がC(z)であるデジタルロー
パスフィルタ31と、1/Mのダウンサンプラ32とか
ら構成される。
る場合を例に挙げて、図28の信号波形図を参照しなが
らサンプリングレートの変換原理を説明する。この場
合、L=3、M=2である。まず、アップサンプラ30
により、原信号のサンプル点の間に(L−1)個、つま
り2個の0点を挿入し、サンプリング周波数をL倍つま
り3倍に引き上げる(図28(b)参照)。そのあと、
間引き後に折返し雑音が発生しないように、アップサン
プラ30の処理により発生したイメージング成分を、1
/L帯域又は1/M帯域のうちの帯域が狭い方の一方の
LPF31により除去する。そして、ダウンサンプラ3
2により1個おきにサンプル点を間引いて、サンプリン
グ周波数を1/Mつまり1/2に落とす(図28(c)
参照)。
たような従来のサンプリングレート変換法では、次のよ
うな問題がある。
ある。上述したようなLPFは図29に示すような特
性、つまり帯域内は平坦な周波数特性であって、帯域外
では急激に大きく減衰が得られるような特性が理想的で
ある。このような特性をそのままハードウエアで実現す
ることは不可能であるから、一種の近似手法として、等
リップル法、窓関数法、ジョンストンフィルタ等の設計
手法が用いられる。しかしながら、一般に、急峻な減衰
特性を得ようとすると通過帯域内のリップルが大きくな
る傾向にある。また、時間応答ではギブス(Gibbs)現
象として知られるリンギングが発生する傾向にあり、特
に音の急峻な立ち上がり及び立ち下がり時に顕著に現れ
る。すなわち、従来のこの種のデジタルフィルタは、聴
音上で最良になるように考慮して設計されたものではな
く、サンプリングレート変換を行うとアナログオーディ
オとしての音質が損なわれてしまうという問題がある。
なお、このような問題は、サンプリングレート変換装置
のみならず、オーバーサンプリング変換を行うD/A変
換器などにも共通する問題であって、例えば、一般に、
CD等のデジタルオーディオの音は「硬い」、「刺激が
強い」或いは「冷たい」等と言われることが多いが、上
述のような現象がその一因であるものと推察できる。
ある。すなわち、変換前後の周波数比が簡単な整数比に
なる場合、例えば32kHzと48kHzとの間の変換
では、上述したように2乃至3倍にオーバサンプリング
したデータに対してフィルタリング処理を実行すればよ
い。しかしながら、44.1kHzと32kHz又は4
8kHzとのようにサンプリング周波数の比が簡単な整
数比にならない場合、オーバサンプリングの次数が非常
に大きくなり、例えば320倍にオーバサンプリングし
たデータに対してフィルタリング処理を行わなければな
らない。このため、フィルタの次数は非常に大きなもの
となり、或る程度の精度をもった演算を行おうとする
と、ハードウエア規模は膨大なものとなってしまう。
のであり、その第1の目的とするところは、音質や画質
の劣化の少ない、具体的に言えば、サンプリングレート
変換したあとのデジタルオーディオ信号をアナログオー
ディオ信号に戻したときに、特に聴感上、自然な音楽信
号を得ることができる、或いは、サンプリングレート変
換したあとのデジタル画像信号を復元して表示したとき
に、良質でごく自然な画像を得ることができるようなサ
ンプリングレート変換装置を提供することにある。ま
た、本発明の第2の目的は、サンプリングレート変換前
後の周波数比が簡単な整数比にならない場合であって
も、ハードウエア構成の規模を抑えることができるサン
プリングレート変換装置を提供することにある。
に成された第1の発明は、第1のサンプリング周波数を
有するデジタル信号列を第2のサンプリング周波数を有
するデジタル信号列に変換するサンプリングレート変換
装置において、時系列的に隣接するサンプル間に(n−
1)個の0点データを挿入してサンプリング周波数をn
(nは2以上の整数)倍にするアップサンプラ、及び、
アップサンプリングされたサンプルから成る信号の帯域
を制限する低域通過型の第1のデジタルフィルタから成
るインタポレータと、ダウンサンプリングによるエリア
シングを回避するための低域通過型の第2のデジタルフ
ィルタ、及び、該第2のデジタルフィルタにより得られ
る信号列の隣接するm個のサンプルに1個の割合でサン
プルを間引くダウンサンプラから成るデシメータとを含
み、第1及び第2のデジタルフィルタは、帯域制限され
た元のアナログ信号とアナログ/デジタル/アナログ変
換を通して得られるアナログ信号との誤差信号を小さく
するようにIIR型フィルタを設計すべく設定した条件
式を有限次元離散時間系に近似的に変換して得た計算式
を用い、所定の条件に基づいてその近似式をH∞ 制御
により解くことによって算出されたパラメータを有して
成ることを特徴としている。
変換装置に含まれる第1及び第2のデジタルフィルタ
は、理想周波数特性等に着目して設計を行う従来の手法
とは全く発想を異にする手法で設計されるものである。
すなわち、従来の手法では、標本化される連続時間信号
は完全に帯域制限されていると仮定しているが、実際に
はエリアシング(折返し)の影響が無視できない。そこ
で、より良い信号復元性を達成するには、デジタル信号
のサンプルを単に離散時間信号としてのみ捉えるのでは
なく、サンプル間応答に含まれるアナログ特性をも考慮
した設計を行う必要がある。このようなことから、本発
明者は連続時間特性を扱うことができるサンプル値制御
理論、より詳しくはサンプル値H∞制御をデジタルオー
ディオ信号を扱うD/A変換技術やサンプリングレート
変換技術に導入する試みについて長年研究を続けてき
た。
を用いてFIR型デジタルフィルタを設計する方法につ
いて明らかにしている(例えば「マルチレートD/A変
換器のサンプル値H∞,H2/H∞設計」(システム制
御情報学会論文誌、Vol.11,No.10,pp.585-592,1998)等
を参照)。しかしながら、全周波数帯域において最適性
を保証するために、次数を限定したFIR型デジタルフ
ィルタを対象とするという制約があった。また、その制
約のため、一般的なH∞制御の解法でなく、数理計画法
の中の凸最適化問題の一つに帰着させて解く必要がある
が、これが高次元であるため、H∞制御の解法を与える
一般に入手可能なツールで容易に解くことが困難であっ
た。
果、次数の制限を設けず、またFIR型のみならず一般
的なIIR型フィルタを対象とした最適設計問題がサン
プル値制御の問題に帰着されること、更にそのサンプル
値制御系の設計にFSFH(ファーストサンプル・ファ
ーストホールド)の手法を導入することにより有効な近
似最適化解法が得られるという知見を得るに至った。こ
の手法によれば、FIR型デジタルフィルタに対象を限
らないで、しかも一般に次数が少なくて済むIIR型デ
ジタルフィルタを容易に設計することができる。また、
フィルタの次数の制約等がない、一般的な形式での最適
性が保証されると共に、特殊な解法を用いることなく一
般的なH∞制御理論の解法が適用できる。そのため、一
般に入手容易な種々のソフトウエア等を利用して設計を
行うことができる。
第2の発明は、第1のサンプリング周波数を有するデジ
タル信号列を第2のサンプリング周波数を有するデジタ
ル信号列に変換するサンプリングレート変換装置におい
て、時系列的に隣接するサンプル間に(n−1)個の0
点データを挿入してサンプリング周波数をn(nは2以
上の整数)倍にするアップサンプラ、及び、アップサン
プリングされたサンプルから成る信号の帯域を制限する
低域通過型の第1のデジタルフィルタから成るインタポ
レータと、ダウンサンプリングによるエリアシングを回
避するための低域通過型の第2のデジタルフィルタ、及
び、該第2のデジタルフィルタにより得られる信号列の
隣接するm個のサンプルに1個の割合でサンプルを間引
くダウンサンプラから成るデシメータとを含み、インタ
ポレータ及び/又はデシメータは、第1及び第2のサン
プリング周波数の比に応じた整数比の少なくとも一方の
整数を複数の整数の乗算に分解し、該分解の結果得られ
た整数に応じたアップサンプラ及びデジタルフィルタ、
又はデジタルフィルタ及びダウンサンプラを直列的に接
続して構成したことを特徴としている。
レート変換装置によれば、複数に分割された各段のオー
バーサンプリング次数又はダウンサンプリング次数は元
の周波数比の整数に比べて小さくなり、それに応じて各
デジタルフィルタの次数も小さくすることができる。ま
た、複数に分割されたインターポレータ及びデシメータ
をそれぞれ縦続に接続することにより、複雑な周波数比
を有するサンプリングレート変換装置を容易に構成する
ことができる。
変換装置の設計方法の原理を以下に説明する。図27に
示したようなサンプリングレート変換装置は、デジタル
フィルタを2つに分割することにより、図1に示すよう
に構成することができる。すなわち、このサンプリング
レート変換装置は、アップサンプラ1a及び第1デジタ
ルフィルタ1bから成るインタポレータ1と、第2デジ
タルフィルタ2a及びダウンサンプラ2bから成るデシ
メータ2とから構成される。
れぞれL1L2…Lm、M1M2…Mnに分解すること
ができる場合には、図2に示すように、インタポレータ
1をそれぞれ複数のアップサンプラ1a1,…,1am
及びデジタルフィルタ1b1,…,1bmの縦属接続で
構成するとともに、デシメータ2も複数のデジタルフィ
ルタ2a1,…,2an及びダウンサンプラ2b1,
…,2bmの縦属接続で構成する。これにより、各デジ
タルフィルタ1b1,…,1bm,2a1,…,2an
の次数は元のデジタルフィルタ1b,2aの次数と比べ
てかなり小さくすることができる。勿論、通常、上記の
ように分解できないような整数L、Mであれば、それ自
身があまり大きくなく、フィルタの次数も比較的小さ
い。
ある48kHzからCDの規格周波数である44.1k
Hzにサンプリングレートを変換する場合について考え
る。この場合、図1の構成では、Lは147、Mは16
0となるから、L=3×72、M=25×5と分解する
ことができる。したがって、上述した縦属接続の手法を
用いれば、このサンプリングレート変換装置は図3に示
す構成とすることができる。インタポレータ1はアップ
サンプリングが3倍及び7倍の2種類、デシメータ2は
ダウンサンプリングが1/2及び1/5の2種類をそれ
ぞれ設計し、それらを図3に示すように複数段縦属接続
すればよい。
タポレータ1とデシメータ2とにそれぞれ含まれるデジ
タルフィルタは、それぞれ別個に設計される。次に、こ
のデジタルフィルタの設計方法を説明する。以下の説明
により、IIR型フィルタを設計すべく設定した条件
式、その条件式を有限次元離散時間系に近似的に変換す
る方法が明らかになる。
ルタの設計方法を説明する。 (A1)設計の命題の設定 図4は、インタポレータによる信号復元系モデルを示す
ブロック図である。連続時間信号である入力wcは、A
/D変換部10に含まれるアンチエリアシングフィルタ
11で帯域制限されたあと、サンプラ12においてサン
プル周期hでサンプリングされ離散時間信号ydとな
る。この離散時間信号ydが続くインタポレータにより
レート変換される。まず、この離散時間信号ydをアッ
プサンプラ14によりサンプル周期h/Mの離散時間信
号xdに変換する。その際、次の(1)式のようにydに
0信号が挿入される。
タルフィルタ15で処理されることにより上記挿入され
た0信号が適宜な値に修正され、周期h/Mで動作する
0次ホールド16により連続時間信号ucとなる。最後
に、この信号u cをアナログローパスフィルタ(LP
F)17により平滑化し復元信号zcを得る。このイン
タポレータ(つまりアップサンプラ14及びデジタルフ
ィルタ15)、0次ホールド16及びLPF17により
構成されるシステムは、速いサンプル周期で動作するホ
ールド回路によりデジタル信号をアナログ信号に変換す
るオーバーサンプリング型D/A変換器13と看做すこ
とができる。
には或る程度の時間遅延が許される。そこで、この時間
遅れを考慮して信号復元の際の誤差系モデルを考える
と、図5に示すようになる。図5では、下側の信号経路
がインタポレータによるレート変換の信号処理系であ
り、上側の信号経路がその信号処理系による時間遅れを
考慮した遅延系である。時間遅れ要素18は帯域制限信
号ycに上述した信号処理による時間遅れmhを与え、
減算器19により復元信号zcと遅延した帯域制限信号
との誤差信号ecを取り出す。この誤差信号ecも連続
時間信号であるから、次の(2)式のようにおく。 ec(t)=zc(t)−yc(t−mh) …(2)
小さくなるようにIIR型デジタルフィルタを構成す
る。すなわち、安定な連続時間フィルタ(アンチエリア
シングフィルタ11及びLPF17)と正の整数m、
N、Mとが与えられている条件下で、IIR型デジタル
フィルタを設計する。そのために、連続時間信号wcか
ら誤差信号ecへ変換するシステムをTewとおいたと
き、与えられたγに対し、次の(3)式を満たすようなK
(z)を求める。
すべく設定した条件式である。ここでγは誤差の大きさ
を支配するものであり、小さいほどよい。H∞制御で
は、これを繰り返し計算によって最小化する方法が採ら
れる。
む系(マルチレート系)を単一のサンプル周期の有限次
元系(単一レート系)に変換する。そのためには、次の
式(4)で定義される離散時間リフティングLM及び逆リ
フティングLM −1を導入する。
される。
ングを用いてK(z)(↑M)、つまりアップサンプラ
14とデジタルフィルタ15とによる処理を変換する。
I:Linear Time-Invariant)システムであり、K
(z)との関係は次の(7)式で与えられる。
〈Hh〉’を導入する。
に示す単一レート系のモデルに等価的に変換される。
−mhsを有限次元化するために、系の入力をmステッ
プだけ遅らせるような変換を行う。これにより、所望の
設計問題は、K’(z)の代わりに非因果的なフィルタ
zmK’(z)を設計する問題に変換される。また、こ
れを更に有限次元離散時間系の設計問題に帰着させるこ
ともできる。その手法の詳細は、カルゴネカー、山本:
「ディレイド・シグナル・リコンストラクション・ユー
ジング・サンプルド−データ・コントロール」、プロシ
ーディングス・オブ・35ス・コンファレンス・オン・
デシジョン・アンド・コントロール、1259頁〜12
63頁(1996年)(P.P.Khargonekarand Y.Yamamot
o:"Delayed signal reconstruction using sampled-dat
a control"; Proc. of 35th Conf. on Decision and Co
ntrol, pp.1259-1263(1996))に記載されている。ただ
し、これには近似は入らないものの、中間段階での設計
フィルタの非因果性により、最終的に因果的なフィルタ
を得るために、後述するような強い制約条件が課せられ
ており、その仮定は本デジタルフィルタの設計問題では
余り満たされないことに注意しておく必要がある。した
がって、より実際的な離散時間問題への変換法が求めら
れる。
時間系設計問題に帰着できることを示す。そのために、
ここではFSFH(ファーストサンプル・ファーストホ
ールド)手法を適用する。FSFH手法はサンプル値制
御系の性能を評価する一手法であって、h周期のサンプ
ル値系の連続時間入出力をh/N(Nは自然数)周期で
動作するサンプラとホールドによって離散化し、十分に
大きなNに対する離散時間信号で連続時間信号を近似す
る方法である。なお、FSFH手法の詳細は、山本、マ
ディエフスキ、アンダーソン:「コンピュテーション・
アンド・コンバージェンス・オブ・フリクエンシ・レス
ポンス・ビア・ファスト・サンプリング・フォー・サン
プルド−データ・コントロール・システムズ」、プロシ
ーディングス・オブ・36ス・コンファレンス・オン・
デシジョン・アンド・コントロール、2157頁〜21
62頁(1997年)(Y.Yamamoto, A.G.Madievski an
d B.D.O.Anderson:"Computation and convergence of f
requency response via fast sampling for sampled-da
ta control systems"; Proc. of 36thConf. on Decisio
n and Control, pp.2157-2162(1997))に記載されてい
る。
描き直したものが図7である。この図7中に示したサン
プル値系gs は次の(11)式で定義される。
離散時間系は次の(12-1)式で与えられる。ただし、FS
FHにおいてN=Ml(lは自然数)としている。
る。
(3)式は次の(13)式で近似され、(3)式を満たすようなK
(z)を求めるということは近似的に有限次元離散時間
系の問題に帰着される。
系に変換されることになる。
<γの下で図7のサンプル値系とH ∞ノルム上界等価な
離散時間系を計算する方法が従来提案されているが(藤
岡、臼井、山本:「マルチレートフィルタバンクのサン
プル値H∞設計−Mチャンネルの場合−」、第27回制
御理論シンポジウム(1998年)参照)、ここでは通
常のサンプル値H∞制御とは異なり、‖D11‖<γは
(3)式において非常に強い制約となる。これが上述した
ようなFSFH近似を必要とする(また上記のカルゴネ
カー及び山本による文献に記載の、近似無しの離散時間
系への変換手法を適用し難い)理由である。ただし、
ィルタ11のF(s)の実現である。
時間H∞制御問題を解けば、所望のIIR型フィルタK
(z)が得られることになる。
の設計方法を説明する。デシメータの設計方法も上記イ
ンタポレータ1側のデジタルフィルタの設計方法と基本
的に同一の手法であるので、重複する部分については説
明を簡単に済ませる。
ク図である。連続時間信号である入力wcは、アンチエ
リアシングフィルタ21で帯域制限されたあと、サンプ
ラ22においてサンプル周期h/Mでサンプリングされ
離散時間信号y dとなる。この離散時間信号ydが続く
デシメータによりレート変換される。まず、この離散時
間信号ydはH(z)で表現されるデジタルフィルタ2
3で処理され、そのあとダウンサンプラ24によりサン
プル周期hの離散時間信号xdに変換される。このxd
が周期hで動作する0次ホールド26によって連続時間
信号ucに変換され、最後に、この信号ucをアナログ
ローパスフィルタ(LPF)27により平滑化し復元信
号zcを得る。フィルタ21、サンプラ22及びデシメ
ータ(つまりデジタルフィルタ23及びダウンサンプラ
24)により構成されるシステムは、速いサンプル周期
で動作するサンプラにより離散化したあと、遅い周期の
離散時間信号に変換するオーバーサンプリング型A/D
変換器20と看做すことができる。
時間遅れを考慮して信号復元の際の誤差系モデルを考え
ると、図10に示すようになる。図10では、下側の信
号経路がデシメータによるレート変換の信号処理系であ
り、上側の信号経路がその信号処理系による時間遅れを
考慮した遅延系である。この誤差信号ecができる限り
小さくなるようにIIR型デジタルフィルタを構成する
ことを考えると、上記(3)式がIIR型フィルタを設計
すべく設定した条件式となる。
ート系)を単一のサンプル周期の有限次元系(単一レー
ト系)に変換する。そのためには、上述したような離散
時間リフティング及び逆リフティングを導入する。この
離散時間リフティング及び逆リフティングを用いて、
(↓M)H(z)つまりデジタルフィルタ23とダウン
サンプラ24とによる処理を変換すると次の(14)式とな
る。
ムであり、H(z)との関係は次の(15)式で与えられ
る。
h’を導入する。
11に示す単一レート系のモデルに等価的に変換され
る。
う。その設計のために図11を一般化プラント形式に描
き直したものが図12である。上述したようにFSFH
により、この図12中に示されたサンプル値系gs の
近似離散時間系G dNを用いて、このデシメータ設計に
おいても上記(3)式は(19)式で近似され、(3)式を満たす
ようなH(z)を求めるということは近似的に有限次元
離散時間系の問題に帰着されることになる。
時間系に変換される。
時間H∞制御問題を解けば、所望のIIR型フィルタH
(z)が得られることになる。
設計方法はコンピュータで所定のプログラムを実行する
ことにより実現される。そのプログラムの一部は後述の
如く既存のものを利用することができる。
具体的なフィルタ設計の一例を説明する。
して、アップサンプリング次数M=2(つまり2倍オー
バーサンプリング)、サンプル周期h=1、信号復元に
許容する遅れのステップ数m=2とした場合を考える。
アンチエリアシングフィルタ11の特性F(s)は、 F(s)=1/(Ts+1)(0.1Ts+1) T=22.05/π≒7.0187 とする。したがって、ナイキスト周波数はπ[rad/
sec]=0.5[Hz]となる。このフィルタの周波
数特性は、0.14248[rad/sec]から1次
特性で減衰し、更に1.4248[rad/sec]か
ら2次特性で減衰する。これをCDのサンプリング周波
数fs=44.1kHzに換算すると、1kHzから1
次特性で減衰し、更に10kHzから2次特性で減衰す
るフィルタに相当する。
数帯域を有しているが、実際に収録されている音楽の周
波数スペクトルはこの帯域内で平坦ではなく、高域にお
いて減衰している。実際、オーケストラなどの広帯域の
ソースで優秀録音と言われているものを観測しても、2
0kHzまでほぼ平坦に伸びているものは殆どなく、1
0kHz以上でなだらかに減衰する特性となっている。
したがって、上記のような特性のアンチエリアシングフ
ィルタは、音楽信号の自然なエネルギー分布を反映した
ものと考えられる。すなわち、従来のように完全に帯域
制限された信号を原音楽信号のモデルとするのではな
く、このような周波数分布に対する重み付けを反映して
CDに対応するデジタルフィルタを設計するのが、より
自然なアプローチであると言える。
の信号平滑化のためのLPF17の特性はP(s)=1
としている。実際には1次遅れ型LPFなどが適当であ
るが、この場合でも減衰特性が緩やかであるため殆ど周
波数特性には影響を与えず、本例と類似した結果が得ら
れる。
によりデジタルフィルタの設計を行った。まず、F
(s)は次のような状態空間表現を持つ。
ラントgsに対応する式である。
ラメータが得られるので、以降は式(12−1)によりG
dN(z)を求める。この計算は、マトラブ(Matl
ab)等、既存のCADを利用して行うことができる。
更に、図9に従って離散時間H ∞制御を利用して解を求
める。この計算も例えばMatlabのミューツールズ
(μTools)やロバスト・コントロール・ツールボック
ス(Robust Control Toolbox)を利用して行うことがで
きる。
フィルタの特性の計算を行った。このフィルタが23次
であって、次のような伝達関数を有する。
よるデジタルフィルタとして、いわゆるジョンストンフ
ィルタによる特性も計算した。このジョンストンフィル
タは31次であって、次のような伝達関数を有する。
トンフィルタとの特性の計算結果を図14〜図17に示
す。図14は両フィルタの利得の周波数特性(本発明に
よるフィルタを実線で、従来のフィルタを点線で示す。
以下同様)、図15は本発明による方形波パルス応答、
図16はジョンストンフィルタによる方形波パルス応
答、図17は図6に示したような誤差信号ecの利得の
周波数数特性を上記実施例とジョンストンフィルタとに
ついて示したグラフである。
に、本発明によるデジタルフィルタでは立ち上がり及び
立ち下がり時のリンギングがジョンストンフィルタより
も小さくなっている。既述したように、このような相違
は特に音の「硬さ」や「刺激の強さ」等に影響を与える
ものと考えられる。また図17では、誤差信号が小さい
ほど原音(厳密にはアンチエリアシングフィルタの出
力)に忠実に再生されていると言うことができ、本発明
によるデジタルフィルタを用いれば広い周波数帯域にお
いて再現音の忠実性が高いことがわかる。これは、本発
明によるフィルタと従来のジョンストンフィルタとにお
ける上記の時間応答の差異を反映した結果になってい
る。
しても、ダウンサンプリング次数M=2とし、サンプル
値設計は上記インタポレータと同様の条件として設計し
た。その結果、フィルタの次数は6次となり、ジョンス
トンフィルタに比べて大幅に低い次数となる。このとき
の本発明によるデジタルフィルタと従来のフィルタとの
特性の計算結果を図18〜図21に示す。図18は両フ
ィルタの利得の周波数特性、図19は本発明による方形
波パルス応答、図20はジョンストンフィルタによる方
形波パルス応答、図21は図11に示したような誤差信
号ecの利得の周波数数特性を上記実施例とジョンスト
ンフィルタとについて示したグラフである。インタポレ
ータの場合と同様に、本発明によるフィルタは広い周波
数帯域において再現音の忠実性が高い。
ィルタとして設計したものであるが、実際にインパルス
応答を計算してみると、所定のステップ数以降は実質的
に応答は零となっている。これは、そのステップ数まで
で打ち切ったFIR型フィルタで実現可能であることを
示している。このことは、実際にハードウエアで構成す
る場合に、規模を抑制するために非常に有利な性質であ
る。
2=4/3に変換するサンプリングレート変換装置の設
計の一例を説明する。つまり、図1に示す構成におい
て、L=3、M=4である。また、設計の際のパラメー
タは次の通りとした。 h=1 m1=m2=1 F1(s)=1/(Ts+1)(0.1Ts+1) T=22.05/π≒7.0187 F2(s)=1/(T2s+1)(0.1T2s+1) T2=T/L P(s)=1
ンプル値設計によりそれぞれ得られたインタポレータ1
のフィルタK(z)とデシメータ側のフィルタH(z)
とを直列に接続したフィルタC(z)=H(z)K
(z)は23次となった。このフィルタC(z)の伝達
関数は次式のようになる。
リップルフィルタとの特性の計算結果を図22〜図24
に示す。図22は両フィルタの利得の周波数特性、図2
3は本発明による方形波パルス応答、図24は等リップ
ルフィルタによる方形波パルス応答である。図23及び
図24を見ればわかる通り、等リップルフィルタでは方
形波のエッジの部分に大きなリンギングが生じているの
に対し、本発明のフィルタによればこのようなリンギン
グが殆ど発生しない。また、図25に示すような誤差系
に対して、連続時間入力wcから連続時間出力ecまで
の周波数応答の計算結果を図26に示す。これにより、
本発明のデジタルフィルタによれば、特に低周波域と高
周波域とで約10dB程度の改善効果が得られることが
わかる。すなわち、各デジタルフィルタを上記手法によ
り最適設計することにより、これらを組み合わせたフィ
ルタでも高い原音忠実性が保たれる。
にフィルタを構成した場合の計算結果であるが、このフ
ィルタをハードウエアで具現化する際には周知の構成と
すればよい(例えば、三谷:「ディジタルフィルタデザ
イン」昭晃堂(1987年)等を参照)。実際に、汎用
のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)やワンチップ
のLSIで容易に構成することができる。
本発明を適用した例であるが、同様の手法を画像信号に
適用できることは当業者には明らかである。
ンプリングレート変換装置によれば、サンプリングレー
ト変換によるアナログ信号の復元誤差が広い周波数帯域
に亘って小さくなるように保証されているので、音質や
画質の劣化が少なくなる。つまり、本発明をデジタルオ
ーディオ信号に適用すれば、サンプリングレート変換後
のデジタルオーディオ信号をアナログ信号に戻したとき
に、きわめて原音(集音又は録音時の音)に忠実なオー
ディオ信号を得ることができる。特に、聴感上きわめて
滑らかで、高音がきわめて素直に伸びた再生音を得るこ
とができる。また、本発明をデジタル画像信号に適用す
れば、サンプリングレート変換後のデジタル画像信号を
復元して画面上に表示したときに、きわめて元の画像に
近い自然な画像を得ることができる。
ト変換装置によれば、サンプリング周波数の変換比が簡
単な整数比にならないような場合であっても、デジタル
フィルタの次数を抑えることができるので、適切なハー
ドウエア規模でもって装置を構成することができる。
基本構成図。
多段縦属接続した場合の基本構成図。
多段縦属接続した場合の構成の一例。
インタポレータの信号復元系モデルを示すブロック図。
ルを示すブロック図。
変換したときのブロック図。
ときのブロック図。
デシメータの信号復元系モデルを示すブロック図。
デルを示すブロック図。
ルに変換したときのブロック図。
したときのブロック図。
のIIR型デジタルフィルタの利得の周波数特性を示す
図。
ルス応答を示す図。
ス応答を示す図。
従来のジョンストンフィルタとの誤差信号ecの利得の
周波数数特性を示す図。
IR型デジタルフィルタの利得の周波数特性を示す図。
ルス応答を示す図。
ス応答を示す図。
従来のジョンストンフィルタとの誤差信号ecの利得の
周波数数特性を示す図。
換装置のデジタルフィルタの利得の周波数特性を示す
図。
ルス応答を示す図。
ス応答を示す図。
換装置の誤差系モデルを示すブロック図。
従来のジョンストンフィルタとの誤差信号ecの利得の
周波数数特性を示す図。
構成図。
ための信号波形図。
23…デジタルローパスフィルタ 11、21…アンチエリアシングフィルタ 12、22…サンプラ 16、26…0次ホールド 17、27…アナログローパスフィルタ 18、28…遅れ時間要素 19、29…減算器
Claims (2)
- 【請求項1】 第1のサンプリング周波数を有するデジ
タル信号列を第2のサンプリング周波数を有するデジタ
ル信号列に変換するサンプリングレート変換装置におい
て、 時系列的に隣接するサンプル間に(n−1)個の0点デ
ータを挿入してサンプリング周波数をn(nは2以上の
整数)倍にするアップサンプラ、及び、アップサンプリ
ングされたサンプルから成る信号の帯域を制限する低域
通過型の第1のデジタルフィルタから成るインタポレー
タと、 ダウンサンプリングによるエリアシングを回避するため
の低域通過型の第2のデジタルフィルタ、及び、該第2
のデジタルフィルタにより得られる信号列の隣接するm
個のサンプルに1個の割合でサンプルを間引くダウンサ
ンプラから成るデシメータとを含み、 第1及び第2のデジタルフィルタは、 帯域制限された元のアナログ信号とアナログ/デジタル
/アナログ変換を通して得られるアナログ信号との誤差
信号を小さくするようにIIR型フィルタを設計すべく
設定した条件式を有限次元離散時間系に近似的に変換し
て得た計算式を用い、所定の条件に基づいてその近似式
をH∞ 制御により解くことによって算出されたパラメ
ータを有して成ることを特徴とするサンプリングレート
変換装置。 - 【請求項2】 第1のサンプリング周波数を有するデジ
タル信号列を第2のサンプリング周波数を有するデジタ
ル信号列に変換するサンプリングレート変換装置におい
て、 時系列的に隣接するサンプル間に(n−1)個の0点デ
ータを挿入してサンプリング周波数をn(nは2以上の
整数)倍にするアップサンプラ、及び、アップサンプリ
ングされたサンプルから成る信号の帯域を制限する低域
通過型の第1のデジタルフィルタから成るインタポレー
タと、 ダウンサンプリングによるエリアシングを回避するため
の低域通過型の第2のデジタルフィルタ、及び、該第2
のデジタルフィルタにより得られる信号列の隣接するm
個のサンプルに1個の割合でサンプルを間引くダウンサ
ンプラから成るデシメータとを含み、 インタポレータ及び/又はデシメータは、第1及び第2
のサンプリング周波数の比に応じた整数比の少なくとも
一方の整数を複数の整数の乗算に分解し、該分解の結果
得られた整数に応じたアップサンプラ及びデジタルフィ
ルタ、又はデジタルフィルタ及びダウンサンプラを直列
的に接続して構成したことを特徴とするサンプリングレ
ート変換装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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