JP2001357858A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池

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JP2001357858A
JP2001357858A JP2000178678A JP2000178678A JP2001357858A JP 2001357858 A JP2001357858 A JP 2001357858A JP 2000178678 A JP2000178678 A JP 2000178678A JP 2000178678 A JP2000178678 A JP 2000178678A JP 2001357858 A JP2001357858 A JP 2001357858A
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polymer
catalyst
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Masaru Yoshitake
優 吉武
Yasuhiro Kunihaza
康弘 国狭
Eiji Endo
栄治 遠藤
Toyoaki Ishizaki
豊暁 石崎
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 起動初期において大電流を流す場合であって
もフラッディングの発生が十分に防止され、高い電池出
力を起動初期から長期間にわたり安定して得ることので
きる固体高分子型燃料電池を提供する。 【解決手段】 燃料電池FCは、アノード8とカソード5
と高分子電解質膜PEMとを有しており、更にカソード
が、ガス拡散層4とガス拡散層と高分子電解質膜との間
に配置される触媒層1と触媒層2とを備えており、高分
子電解質膜側の触媒層1中のイオン交換基を実質的に有
しない溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率X[質量%]
及びガス拡散層側の触媒層2中のイオン交換基を実質的
に有しない溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率Y[質量
%]が、それぞれ下記式(1)〜(3)の条件:2≦X
≦28…(1),5≦Y≦30…(2),2≦(Y−
X)≦28…(3)を同時に満たしていることを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子型燃料
電池に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、電池反応による生成物が原
理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないク
リーンな発電システムとして注目されている。
【0003】特に、高分子電解質膜を有する固体高分子
型燃料電池は、(1)高いイオン導電性を有する高分子
電解質膜が開発されたこと、(2)高分子電解質膜と同
種或いは異種のイオン交換樹脂(高分子電解質)で被覆
した触媒担持カーボン微粒子を電極触媒層の構成材料と
して使用し、いわゆる触媒層内の反応サイトの3次元化
が図られるようになったこと等によって、電池特性が飛
躍的に向上した。そして、このような高い電池特性を得
られることに加え、小型軽量化が容易であることから、
固体高分子型燃料電池は、電気自動車等の移動車両や、
小型コジェネレーションシステムの電源等としての実用
化が期待されている。
【0004】そして、現在検討されている固体高分子型
燃料電池は、その作動温度領域が高分子電解質膜の耐熱
性やイオン伝導性等の制約により一般的に50〜120
℃と低く、その排熱を利用しにくいので、その実用化に
向けて、特に、純水素等のアノード反応ガス利用率及び
空気等のカソード反応ガス利用率の高い作動条件下にお
いて、高い発電効率、高い出力密度を得ることのできる
性能が要求されている。
【0005】通常、固体高分子型燃料電池に使用される
ガス拡散電極は、上記のイオン交換樹脂で被覆された触
媒担持カーボン微粒子を含有する触媒層と、この触媒層
への反応ガスの供給と触媒層中の反応生成水の排出と触
媒層において発生する電荷の集電とを担うガス拡散層と
からなる。そして、ガス拡散電極の触媒層内には、上記
の構成材料となるカーボン微粒子の二次粒子間或いは三
次粒子間に形成される微少な細孔からなる空隙部が存在
し、当該空隙部が反応ガスの拡散流路として機能してい
る。
【0006】しかし、上記のような電池反応の反応速度
が比較的高い作動条件のもとでは、アノードからカソー
ドに向けて高分子電解質膜中を移動するプロトンに伴っ
て移動する水(以下、プロトン同伴水という)の量と、
カソードの電極反応により生成し凝縮する生成水の量と
が多くなる。そのため、これらの水がカソードから外部
に速やかに排出されず、カソードの触媒層内の空隙部が
これらの水により閉塞されてしまう現象、いわゆるフラ
ッディングの現象が起こり易かった。このようなフラッ
ディングが起こると、カソード反応ガスの触媒層の反応
サイトへの供給が妨げられ、所望の電池出力を安定的に
得られなくなる。そのため、フラッディングの発生を防
止して所望の電池出力を長期間にわたり安定して得るた
めには、カソードの良好な排水性の確保が必要となる。
【0007】そのため、特開平5−36418号公報に
は、撥水化剤として、ポリテトラフルオロエチレン(以
下、PTFEという)、テトラフルオロエチレン/ヘキ
サフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレ
ン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体
等の含フッ素重合体をカソード触媒層中に含有させた固
体高分子型燃料電池が提案されている。ここで、「A/
B共重合体」とは、Aに基づく重合単位とBに基づく重
合単位とからなる共重合体を示す。
【0008】しかし、このような含フッ素重合体を触媒
層に含有させると以下の問題があった。すなわち、この
ような含フッ素重合体は、使用条件下において溶解でき
る溶媒が存在しないため、触媒層を形成するための少な
くともイオン交換樹脂及び触媒を溶媒に溶解又は分散し
た液(以下、触媒層形成インクという)中に含フッ素重
合体を高分散させた状態とさせるためには界面活性剤を
使用しなければならなかった。この界面活性剤は親水性
物質であり、焼成によって触媒層中から除去しないと十
分な撥水効果を得ることが困難となるが、その焼成温度
が触媒層中のイオン交換樹脂の耐熱温度よりもはるかに
高温であるので、触媒層中にイオン交換樹脂を予め含有
させた状態或いは高分子電解質膜に触媒層を予め接合さ
せた状態で焼成処理を行うことはできず、電極製造上の
制限が多かった。また、この含フッ素重合体は溶媒不溶
性でかつ粒子形状がほぼ球状であり、触媒層中に分散さ
せる場合には少量では撥水性の高い空間領域が連続的に
形成されにくく、触媒層は局所的な撥水性しか得られな
いという問題があった。そして、含フッ素重合体は、焼
成処理してもカーボン粉末への付着力は弱く、長期間使
用すると一部の含フッ素重合体が脱落する問題もあっ
た。
【0009】更に、このような触媒層を備えた固体高分
子型燃料電池は、起動初期から比較的短時間で触媒層中
の撥水性に乏しい部分から徐々に湿潤域が広がり、触媒
層の細孔部が水によって閉塞されるなど触媒層全体の撥
水性が大幅に低下していく。そして、触媒層におけるガ
ス拡散性が低下し、濃度過電圧が増大して出力電圧が大
幅に低下する問題があった。また、十分な撥水性を得る
ために大量の含フッ素重合体を触媒層中に含有させる
と、含フッ素重合体の絶縁性による電極の電気抵抗の増
大、含フッ素重合体粒子自体による触媒層中の細孔の閉
塞、触媒層の層厚の増大による触媒層内のガス拡散性の
低下等により、かえって電池出力が低下する問題があっ
た。
【0010】一方、特開平9−320611号公報に
は、溶媒可溶性含フッ素重合体を撥水化剤として含有す
る触媒層を備えた固体高分子型燃料電池が提案されてい
る。この溶媒可溶性含フッ素重合体は、触媒層の形成後
に溶媒を低温で容易に除去することができる。従って、
触媒層中にイオン交換樹脂を予め含有させた状態で溶媒
可溶性含フッ素重合体を添加させることが可能であり、
電極製造上の自由度が高くなる。また、溶媒可溶性含フ
ッ素重合体は、溶液状の状態で添加することができるの
で造膜性を有しており少量で効率よく触媒層に高い撥水
性を付与することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者らは、上記特開平9−320611号公報に記載の固
体高分子型燃料電池であっても、起動初期の電池出力を
高くして大電流を流そうとすると起動から比較的短時間
で電池出力が低下し、更にはカソード触媒層におけるフ
ラッディングが発生してしまうという問題、或いは、カ
ソード触媒層におけるフラッディングを防止しようとす
ると起動初期の電池出力が低くなり、従って高い電池出
力を長期間にわたり得ることができなくなるという問題
があり、未だ十分なものではないことを見出した。
【0012】本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑
みてなされたものであり、起動初期において大電流を流
す場合であってもフラッディングの発生が十分に防止さ
れ、高い電池出力を起動初期から長期間にわたり安定し
て得ることのできる固体高分子型燃料電池を提供するこ
とを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、かかる特開平9
−320611号公報に記載の固体高分子型燃料電池が
有する問題の原因は、溶媒可溶性含フッ素重合体の触媒
層中の分布状態が均一であり、触媒層全域にわたって一
定の排水性を得ることができるものの、撥水化剤を含有
しない触媒層に比べ触媒層中のイオン交換樹脂の被覆さ
れた触媒の密度が触媒層全域にわたって少なくなり、特
に触媒層の高分子電解質膜近傍の領域において反応サイ
トを十分に確保できていないことであることを見出し
た。
【0014】そこで、本発明は、アノードと、カソード
と、アノードとカソードとの間に配置された高分子電解
質膜とを備えた固体高分子型燃料電池であって、カソー
ドが、ガス拡散層と、当該ガス拡散層と高分子電解質膜
との間に配置されるイオン交換基を実質的に有しない溶
媒可溶性含フッ素重合体とイオン交換樹脂と触媒とを含
有する複数の触媒層と、を備えており、高分子電解質膜
に接する最内部の触媒層に含有されている溶媒可溶性含
フッ素重合体の含有率X[質量%]、及びガス拡散層に
接する最外部の触媒層に含有されている溶媒可溶性含フ
ッ素重合体の含有率Y[質量%]が、それぞれ下記式
(1)〜(3)の条件:2≦X≦28…(1),5≦Y
≦30…(2),2≦(Y−X)≦28…(3)を同時
に満たしていること、を特徴とする固体高分子型燃料電
池を提供する。
【0015】このように、上記のXとYの値が(1)及
び(2)の条件を満たす範囲内において、(Y−X)の
値を2質量%以上とすることで、最内部の触媒層と最外
部の触媒層とのそれぞれに対して異なる機能を明確に差
別化して持たせることができる。すなわち、反応生成水
の累積量が少ない最内部の触媒層には、溶媒可溶性含フ
ッ素重合体の含有率を低くして触媒や触媒を被覆するイ
オン交換樹脂への撥水化剤の被覆量を少なくすることに
より、反応サイトの密度を高くして電極反応を主として
担う機能を持たせることができる。
【0016】一方、反応生成水の累積量が多い最外部の
触媒層には、溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率を高く
して触媒や触媒を被覆するイオン交換樹脂への撥水化剤
の被覆量を多くすることにより、その離水性を高くして
優れた排水性を持たせて反応生成水やプロトン同伴水の
外部への排水を主として担う機能を持たせることができ
る。
【0017】その結果、高分子電解質膜の近傍の触媒層
領域においては、多数の反応サイトが有効に利用される
ので電池の高出力密度化を図ることができ、一方、ガス
拡散層の近傍の触媒層領域においては、反応生成水やプ
ロトン同伴水をスムーズに外部に排水することができる
ので、フラッディングの発生の防止を図ることができ
る。従って、このように固体高分子型燃料電池を構成す
ることにより、作動中の固体高分子型燃料電池の電極に
おいて、フラッディングの発生を防止しつつ反応サイト
への反応ガス及びプロトンの十分な供給を長期間にわた
り保持できる、良好な排水構造を有するカソード触媒層
を構築することができる。
【0018】ここで、最内部の触媒層に含有されている
溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率Xの値が、2質量%
未満となると十分な撥水性を得ることが困難となる。一
方、このXの値が、28質量%を超えると、撥水化剤は
絶縁体であることから電気的抵抗が大きくなり十分な電
池出力を得ることが困難となる。また、触媒層内の細孔
が溶媒可溶性含フッ素重合体により閉塞されてしまいこ
れによっても十分な電池出力を得ることが困難となる。
更に、このXの値は、上記と同様の観点から、5〜20
質量%であることがより好ましい。
【0019】また、最外部の触媒層に含有されている溶
媒可溶性含フッ素重合体の含有率Yの値が、5質量%未
満となると、排水量の多い最外部の触媒層において十分
な撥水性を得ることが困難となる。一方、このYの値
が、30質量%を超えると、電気的抵抗が大きくなり十
分な電池出力を得ることが困難となる。また、触媒層内
の細孔が溶媒可溶性含フッ素重合体により閉塞されてし
まいこれによっても十分な電池出力を得ることが困難と
なる。更に、このYの値は、上記と同様の観点から、6
〜25質量%であることがより好ましい。
【0020】更に、最外部の触媒層に含有されている溶
媒可溶性含フッ素重合体の含有率Yと最内部の触媒層に
含有されている溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率Xと
の差(Y−X)が、2質量%未満であると、最内部の触
媒層と最外部の触媒層とのそれぞれに対して、前者には
電極反応を主として担う機能、後者には反応生成水やプ
ロトン同伴水の外部への排水を主として担う機能を明確
に差別化して持たせることが困難となる。
【0021】一方、この(Y−X)の値が、28質量%
を超えると、最内部の触媒層に含有されている溶媒可溶
性含フッ素重合体の含有率が著しく低くなり、十分な撥
水性を得ることが困難となる問題、及び/又は、最外部
の触媒層に含有されている溶媒可溶性含フッ素重合体の
含有率が著しく高くなり、電気的抵抗の増大や溶媒可溶
性含フッ素重合体による触媒層内の細孔の閉塞の問題が
発生する。
【0022】なお、本発明における「イオン交換基を実
質的に有しない溶媒可溶性含フッ素重合体」とは、分子
中のイオン交換容量(以下、ARという)が0〜0.1
0ミリ当量/g乾燥樹脂(以下、meq./gとする)
であり、かつ、溶解可能な溶媒が存在する含フッ素重合
体を示す。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の固体高分子型燃料電池の好適な実施形態について詳細
に説明する。
【0024】図1は、本発明の固体高分子型燃料電池の
好適な実施形態にかかる単位セル及びセパレータを示す
断面図である。この燃料電池FCは、アノード反応ガス
と、カソード反応ガスとを利用した電気化学反応によっ
て電気エネルギーを発生する。
【0025】この燃料電池FCは、平板状の単位セルU
Cと、単位セルUCの両側に配置された2つのセパレー
タSP1とSP2とから構成されている。更に、単位セ
ルUCは、カソード5と、アノード8と、プロトン伝導
性を有する高分子電解質膜PEMから構成されている。
【0026】この燃料電池FCの電極活物質としては、
例えばメタノールや天然ガスといった炭化水素系原燃料
を水蒸気改質して生成される水素含有ガス(燃料ガス)
がアノード反応ガスとして用いられ、例えば空気等の酸
素含有ガスがカソード反応ガスとして用いられる。この
場合、アノード8においては、以下の(4)式に、カソ
ード5においては以下の(5)式に、それぞれ示す電極
反応が進行し、全体として(6)式に示す全電池反応が
進行して起電力が発生する。 H2→2H++2e- …(4) (1/2)O2+2H++2e-→H2O …(5) H2+(1/2)O2→H2O …(6) 以下、図1に基づいて本実施形態の各構成要素の詳細に
ついて説明する。
【0027】高分子電解質膜PEMは、例えば、含フッ
素重合体等の固体高分子材料によって形成されており、
湿潤状態下で良好なイオン伝導性を示すイオン交換膜で
ある。高分子電解質膜PEMを構成する固体高分子材料
としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン
重合体(以下、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合
体という)、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカル
ボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用い
ることができる。中でも、スルホン酸型パーフルオロカ
ーボン重合体が好ましく、商品としては例えば、ナフィ
オン(デュポン社製)、フレミオン(旭硝子社製)等が
挙げられる。
【0028】一方、ガス拡散電極であるカソード5及び
アノード8は、何れもガス拡散層4及び7と、これらの
ガス拡散層上に形成された触媒層3及び6とからなる。
【0029】ガス拡散層4及び7は、単セルUCに供給
された燃料ガス又は空気を触媒層側に円滑かつ均一に供
給すると共に、触媒層3及び8における上記(4)及び
(5)式に示す電極反応によって生じる電荷を単セルU
Cの外部に放出させる役割や反応生成水等の水や未反応
ガス等を外部に放出する役割を担うものである。ガス拡
散層4及び7の構成材料としては、例えば、電子伝導性
を有する多孔質体(例えば、撥水化剤とカーボン粉末と
からなる層が表面に形成されたカーボンクロスやカーボ
ンペーパー)が使用される。
【0030】燃料電池FCのカソード触媒層3は、上記
(5)式に示す電極反応が起こる反応場となる。カソー
ド触媒層3は、イオン交換樹脂で被覆された表面積の大
きな触媒担持カーボンブラック微粒子を主体として構成
されている。
【0031】図1に示すように、この触媒層3は、高分
子電解質膜PEM側に配置される触媒層1と、ガス拡散
層4側に配置された触媒層2とから構成されている。
【0032】これらの触媒層1と触媒層2とは、高分子
電解質膜PEMに接する触媒層1に含有されている溶媒
可溶性含フッ素重合体の含有率X質量%、及びガス拡散
層に接する触媒層2に含有されている溶媒可溶性含フッ
素重合体の含有率Y質量%が、それぞれ下記式(1)〜
(3)の条件:2≦X≦28…(1),5≦Y≦30…
(2),2≦(Y−X)≦28…(3)を同時に満たす
ようにして形成されている。
【0033】この(1)〜(3)式の条件を同時に満た
す時に、触媒層3における反応サイトへのイオン伝導経
路と良好な排水性を有するガス拡散経路とを燃料電池F
Cの作動中にバランスよく確保することができる。
【0034】つまり、触媒層1は、触媒や触媒を被覆す
るイオン交換樹脂への溶媒可溶性含フッ素重合体の被覆
量が少ないので、十分にプロトンが移動できる経路や気
相との接触面積を確保し易く、反応サイトを広く設ける
ことができる。また、触媒層1においては、高分子電解
質膜PEM中を移動してくるプロトン同伴水の凝縮分
と、高分子電解質膜PEMと触媒層1との界面から触媒
層1の厚さ方向に向けて移動しながら累積される反応生
成水等が存在しているが、これらを合わせた水量は、触
媒層2中の水量に比較して反応生成水の累積分が少量で
あり、撥水化剤の量が少なくてもガス拡散性に大きな支
障はきたさない。しかも、高分子電解質膜PEM近傍で
はカソード3からアノード8への水の濃度勾配を駆動力
とする逆拡散水もあるため、さらに排水の負担は軽減さ
れることになる。
【0035】その一方で、触媒層2においては、触媒層
1と同様にプロトン同伴水の凝縮分と、反応生成水の累
積分等が存在している。これらのうち累積生成水は触媒
層1から累積される分も加わるため触媒層1中の水量に
比較して通過水量が多量となる。しかし、触媒層2は、
撥水化剤としての溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率が
高く、触媒や触媒を被覆するイオン交換樹脂への溶媒可
溶性含フッ素重合体の被覆量が多いので、離水し易くな
るため排水性が良好となり十分にガスが拡散する経路を
確保することができる。
【0036】このように触媒層3内には、十分多く確保
された反応サイトへのスムーズな反応ガスの供給を、長
期間にわたり保持することのできる良好な排水構造が構
築されている。そのため、作動中の触媒層3におけるフ
ラッディングの発生を防止して当該触媒層3内の反応サ
イトを有効に利用することが可能となるので、高い電池
出力を起動初期から長期間にわたり安定して得ることが
できる。
【0037】更に、上記の触媒層2に含有されている溶
媒可溶性含フッ素重合体の含有率Yと触媒層1に含有さ
れている溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率Xとの差
(Y−X)を十分に大きくとることにより生じる作用効
果を効果的に発揮させる観点から、触媒層1に含有され
ている溶媒可溶性含フッ素重合体の含有量と触媒層2に
含有されている溶媒可溶性含フッ素重合体の含有量との
差は、0〜1.5mg/cm3であることが好ましい。
【0038】触媒層3中に含有される溶媒可溶性含フッ
素重合体は、イオン交換基を実質的に含有せず、かつ、
溶解可能な溶媒が存在する含フッ素重合体である。以
下、イオン交換基を実質的に有しない溶媒可溶性含フッ
素重合体について詳細に説明する。
【0039】本明細書において、「溶媒可溶性」とは、
溶媒に溶質濃度として1質量%以上溶解できる溶解性を
示す。溶解性が高いと溶液粘度をより広範囲に制御でき
て触媒層形成時の自由度を大きくできるので望ましい。
この観点から溶媒可溶性含フッ素重合体の溶媒に対する
溶解度は、溶質濃度として5質量%以上であることが好
ましい。また、溶媒可溶性含フッ素重合体の溶解した溶
液の濃度が高いと溶液粘度が高くなるので、取り扱い易
い溶液粘度として使用する観点から、当該溶液中の溶媒
可溶性含フッ素重合体の濃度は、溶質濃度として1〜2
0質量%であることが好ましい。このような溶媒可溶性
含フッ素重合体は、溶液状であるので造膜性を有してお
り、従来の溶媒不溶性含フッ素重合体に比べて触媒層中
を微細孔内まで効率良く撥水化できると共に絶縁体であ
る撥水化剤の添加量を低減できる。そのため、触媒層の
電気抵抗を低減できると共に触媒層の空隙率も増大させ
ることができる。
【0040】次に、「イオン交換基を実質的に有しない
状態」とは、分子中ARが0〜0.10meq./gで
あることを示す。このARが0.10meq./gを超
えると、溶媒可溶性含フッ素重合体が撥水化剤として十
分に機能することが困難となる。また、この溶媒可溶性
含フッ素重合体のARは、同様の観点から、0〜0.0
5meq./gであることが好ましい。なお、ここでい
うイオン交換基とは、具体的にはスルホン酸基、カルボ
ン酸基等である。
【0041】また、溶媒可溶性含フッ素重合体は、含フ
ッ素脂肪族環構造を有する重合体であることが好まし
い。分子内に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、
その分子構造に起因する分子のねじれにより結晶化しに
くく、フッ素系溶剤に可溶である。溶媒可溶性含フッ素
重合体は、末端部分は水素原子が全部フッ素化されてい
ると耐薬品性に優れ、酸化・還元雰囲気でも安定なので
好ましい。このような分子内に含フッ素脂肪族環構造を
有する溶媒可溶性含フッ素重合体は、下記化学式(A)
〜(D)のいずれかで表される重合単位を含むことが好
ましい。
【0042】
【化3】 ここで、化学式(A)〜(D)中、R1、R2、及びR3
はそれぞれフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示
し、pは0〜5の整数を示し、qは0〜4の整数を示
し、rは0又は1を示し、p+q+rは1〜6の整数を
示し、s、t、uはそれぞれ0〜5の整数を示し、s+
t+uは1〜6の整数を示し、vは1又は2を示す。
【0043】更に、具体的に例示すると、溶媒可溶性含
フッ素重合体は、下記化学式(E)〜(H)、(J)、
(K)、(N)のいずれかで表される重合単位を含むこ
とが好ましい。また、(I)又は(L)で表される重合
単位を含むものも好ましい。
【0044】
【化4】 ここで、溶媒可溶性含フッ素重合体は、化学式(E)〜
(M)のいずれかで表される重合単位の単独重合体であ
ってもよく、これらの重合単位の2種以上を含む共重合
体であってもよい。また、テトラフルオロエチレンやヘ
キサフルオロプロピレン等の含フッ素環構造を有しない
単量体に基づく重合単位が含まれる共重合体であっても
よい。
【0045】また、溶媒可溶性含フッ素重合体の分子量
は、2千〜20万程度が好ましく、5千〜1万程度であ
ることがより好ましい。一般に、溶媒可溶性含フッ素重
合体の溶液は、溶質濃度が等しい場合には分子量が大き
い分子を溶解した溶液ほど粘度が高くなる。上記範囲の
分子量の溶媒可溶性含フッ素重合体を使用する場合、溶
媒に溶解した溶液は濃度を調整すれば触媒層を構成する
細孔構造への浸透性に優れる粘度にできる。そして、上
記範囲の分子量を有する溶媒可溶性含フッ素重合体の溶
液は造膜性を有しているので、溶液を乾燥して得られる
被膜は耐久性にも優れる。
【0046】更に、溶媒可溶性含フッ素重合体は、固体
高分子型燃料電池の作動温度及び保管温度範囲である−
40〜150℃までの範囲で固体状態であることが好ま
しい。加えて、この溶媒可溶性含フッ素重合体は、燃料
電池の電極反応における反応物や生成物となりうるアル
コールや水等の溶媒にはほとんど溶解しない含フッ素重
合体であることが好ましい。
【0047】また、溶媒可溶性含フッ素重合体が溶解可
能な溶媒とは、当該溶媒可溶性含フッ素重合体を溶質濃
度として1質量%以上溶解させることの可能な溶媒を示
す。このような溶媒は特に限定されないが、含フッ素溶
媒が好ましく使用される。このような含フッ素溶媒は、
85℃以下の低沸点を有するものが多い。そのため、触
媒層形成後の溶媒除去が当該触媒層を室温にて放置する
だけで速やかに行なうことができる。そのため、触媒層
の撥水化を従来よりも容易に行なうことができる。含フ
ッ素溶媒としては、例えば、パーフルオロベンゼン、ジ
クロロペンタフルオロプロパン、アフルード(商品名、
旭硝子社製の含フッ素溶剤)、パーフルオロ(2−ブチ
ルテトラヒドロフラン)等が挙げられる。例えば、化学
式(K)の重合体は、パーフルオロ(2−ブチルテトラ
ヒドロフラン)とパーフルオロ(トリブチルアミン)の
質量比1:1の混合溶媒を用い、溶質濃度10質量%の
溶液を調製することができる。
【0048】更に、触媒層3に含有されているイオン交
換樹脂のARは、同じであっても異なっていてもよいが
いずれも0.70〜1.80meq./g)であること
が好ましい。一般に、イオン交換樹脂はARが大きいほ
ど高い含水率を有する。そして、これに伴ってイオン交
換樹脂のイオン伝導性が大きくなる。イオン交換樹脂の
Rが0.70meq./g未満となると樹脂の含水率
が低くなり、十分なプロトン伝導経路を確保することが
困難となるのでカソードの反応サイトが少なくなる。そ
の結果、電池出力が低下する。更に、この場合には、触
媒層を調製する際にイオン交換樹脂が溶液に溶解しにく
くなり触媒層3を形成するための塗工液(触媒層形成イ
ンク)を作製しにくくなる。
【0049】一方、イオン交換樹脂のARが1.80m
eq./gを超えると、イオン交換樹脂中のイオン交換
基の密度が増大し、当該触媒層3における排水性が低下
してフラッディングが発生し易くなる。更に、この場合
には結晶性が著しく低下し、燃料電池FCの作動中に当
該イオン交換樹脂が固体状態を維持できず触媒層1から
溶出したり、触媒層1の構造自体を維持することが困難
となる不具合が生じる。また、触媒層3に含有されてい
るイオン交換樹脂のARは、上記と同様の観点から、
0.85〜1.4meq./gであることがより好まし
い。
【0050】また、触媒層1及び触媒層2に含有される
イオン交換樹脂の含有量については、触媒層1及び触媒
層2のいずれにおいても、触媒とイオン交換樹脂との比
率(質量比)の範囲が、触媒の質量:イオン交換樹脂の
質量=0.40:0.60〜0.95:0.05である
ことが好ましく、触媒の質量:イオン交換樹脂の質量=
0.60:0.40〜0.80:0.20であることが
より好ましい。
【0051】ここで、イオン交換樹脂に対する触媒の含
有率が、触媒の質量:イオン交換樹脂の質量=0.4
0:0.60の比率より低いと、触媒量が不足するので
電子伝導性の低下や反応サイトが少なくなる傾向があ
る。また、触媒を被覆するイオン交換樹脂の被覆層の厚
みが大きくなり樹脂中における反応ガスの拡散速度が小
さくなる傾向がある。更に、反応ガスの拡散に必要な細
孔が樹脂により塞がれてしまいフラッディングが生じ易
くなるおそれがある。一方、イオン交換樹脂に対する触
媒の含有率が、触媒の質量:イオン交換樹脂の質量=
0.95:0.05の比率を超えると、触媒に対して当
該触媒を被覆するイオン交換樹脂の量が不足して反応サ
イトが少なくなり電池出力が低下する傾向がある。ま
た、イオン交換樹脂は、カソード5のバインダ及びカソ
ード5と高分子電解質膜PEMとの接着剤としても機能
するが、その機能が不十分となり触媒層構造を安定に維
持できなくなる傾向が大きくなる。なお、ここでいう触
媒は、触媒担持カーボンなどの担体に担持された担持触
媒の場合にはその担体の質量も含むものとする。
【0052】更に、触媒層3に含有されるイオン交換樹
脂は、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体である
ことが好ましい。スルホン酸型パーフルオロカーボン重
合体は、触媒層1及び触媒層2内において長期間化学的
に安定であり速やかなプロトン伝導を可能にする。
【0053】このようなスルホン酸型パーフルオロカー
ボン重合体は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単
位とCF2=CF−(OCF2CFZ)m−Oh−(C
2n−SO3Hで表されるフルオロビニル化合物に基
づく重合単位(式中、mは0〜3の整数、nは1〜12
の整数、hは0又は1であり、ZはF又はCF3であ
る)とからなる共重合体が好ましい。
【0054】上記フルオロビニル化合物の好ましい例と
しては、以下(i)〜(iv)の化合物が挙げられる。た
だし、下記式中、iは1〜8の整数、jは1〜8の整
数、kは1〜8の整数、lは1〜3の整数を示す。 CF2=CFO(CF2iSO3H (i) CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2jSO3H (ii) CF2=CF(CF2kSO3H (iii) CF2=CF(OCF2CF(CF3))lO(CF22SO3H (iv) なお、上記共重合体には、ヘキサフルオロプロピレン等
の含フッ素オレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニ
ルエーテル)に基づく重合単位が、テトラフルオロエチ
レンに基づく重合単位の25質量%以下であればテトラ
フルオロエチレンに基づく重合単位と置き換わって含ま
れているものを用いていてもよい。
【0055】更に、本発明の触媒層1における全細孔容
積に対する細孔径0.1μm以下の細孔容積の割合は、
10〜90vol.%であることが好ましい。なお、以
下の説明においては、全細孔容積に対する細孔径0.1
μm以下の細孔容積の割合を「微細孔割合」といい、細
孔径が0.1μmを超える細孔から構成されたガス拡散
性と排水性に優れた空隙部を「ガス拡散有効空隙部」と
いう。触媒層1における微細孔割合を上記の範囲とする
ことで、触媒層1における反応ガスの反応界面面積を十
分に確保することができる。
【0056】ここで、触媒層1における微細孔割合が、
10vol.%未満であると、触媒層1における細孔内
の表面積が著しく減少し、反応ガスの接触し得る面積が
小さくなり電池出力が低下する傾向がある。一方、触媒
層1における微細孔割合が、90vol.%を超える
と、触媒層1内のガス拡散経路の割合が少なくなり、高
電流密度領域のように多量の水が生成する条件の下で燃
料電池FCを作動させる場合に、フラッディングが発生
する傾向が大きくなる。また、この触媒層1における微
細孔割合は、上記と同様の観点から、15〜70vo
l.%であることがより好ましい。
【0057】そして、触媒層2における微細孔割合は、
10〜70vol.%であることが好ましい。触媒層2
における微細孔割合を上記の範囲とすることで、触媒層
2における反応ガスの反応界面面積を十分に確保するこ
とができる。ここで、触媒層2内の微細孔割合が、10
vol.%未満であると、触媒層2における反応ガスの
細孔内の表面積が著しく減少し反応界面面積が減少する
傾向が大きくなる。一方、触媒層2内の微細孔割合が、
70vol.%を超えると、触媒層2において累積生成
水や凝縮水を外部に十分に排水させるためのガス拡散経
路を確保しにくくなる傾向が大きくなる。また、この触
媒層2における微細孔割合は、上記と同様の観点から、
13〜60vol.であることがより好ましい。
【0058】また、触媒層1の微細孔割合と触媒層2の
微細孔割合とがそれぞれ上記の数値範囲で示される条件
を満たすと同時に、触媒層2の微細孔割合は触媒層1の
微細孔割合より小さいことが好ましく、触媒層2の微細
孔割合と触媒層1の微細孔割合との差が、5〜45vo
l.%であることがより好ましい。
【0059】このように、触媒層1及び触媒層2のそれ
ぞれに撥水化剤として含有させる溶媒可溶性含フッ素重
合体の含有率に着目することに加え、触媒層1及び触媒
層2のそれぞれに形成されている細孔の細孔径を制御す
ることにより、触媒層1においては反応サイトの密度を
高くし、触媒層2においては排水性を高くすることがで
きるので各触媒層中の反応サイトへのスムーズな反応ガ
スの供給を、長期間にわたり保持することのできる良好
な排水構造を有する触媒層をより確実に構築することが
可能となる。
【0060】特に、上記のように、触媒層1内の微細孔
割合と触媒層2内の微細孔割合との差を5vol.%以
上とすることで、触媒層1と触媒層2とがそれぞれ有す
る機能をより明確に差別化することができる。触媒層1
内の微細孔割合と触媒層2内の微細孔割合との差が、5
vol.%未満となると、先に述べた触媒層1と触媒層
2とがそれぞれ有する機能を明確に差別化することが徐
々に困難となる傾向がある。一方、触媒層1内の微細孔
割合と触媒層2内の微細孔割合との差が、45vol.
%を超えると、触媒層の構造を維持することが徐々に困
難となる傾向が大きくなる。また、触媒層1においてフ
ラッディングが発生し易くなる傾向も大きくなる。
【0061】このように、各触媒層内に形成される空隙
部の細孔構造を制御する方法としては、例えば、触媒層
形成インクの溶媒の種類を変化させればよい。例えば、
水よりもエタノール、トルエン、ジクロロペンタフルオ
ロプロパン等の有機溶媒を用いる方がより多孔質の触媒
層構造を得ることが可能である。
【0062】また、その他の方法として、造孔剤や発泡
剤を用いてもよい。造孔剤としては、例えば、樟脳(昇
華性を有する)や酸に可溶な炭酸カルシウムなどが適用
できる。発泡剤としては少量で効率よく発泡されるもの
が好ましく、例えばアゾ化合物、ニトロソ化合物、スル
ホニルヒドラジド化合物に代表される有機系物質、また
金属炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、水素化物に代表され
る無機系物質などがある。発泡剤は、加熱処理により分
解させ、ガスを発生させるために200〜280℃の温
度で10秒〜30分保持する加熱処理を施す必要があ
る。なお、この加熱処理において、触媒被覆用樹脂が分
解してしまう場合があるため、処理時間は短い方が好ま
しい。
【0063】また、触媒層3の層厚は、1.0〜150
μmであることが好ましく、5.0〜100μmである
ことがより好ましい。触媒層3の層厚が、1.0μm未
満であると、薄すぎて実質的に形成が困難であると共に
十分な反応サイトを有する触媒層を形成しにくくなる傾
向にある。一方、触媒層3の層厚が、150μmを超え
ると、ガス拡散性が著しく低下すると共に、オーム抵抗
(電圧損失)が増大してしまう傾向にある。
【0064】更に、触媒層1の層厚は、高分子電解質膜
PEMの近傍に反応サイトの密度の高い領域を局在化さ
せる観点と、その反応サイトの密度の高い領域に十分に
反応ガスを供給し得る反応ガス経路を確保する観点と、
この領域から水を効率よく排水してフラッディングを確
実に防止する観点とから、ガス拡散層4側に接する触媒
層2の層厚よりも薄いほうが好ましい。具体的には、触
媒層1の層厚は、0.5〜70μmであることが好まし
く、2.0〜50μmであることがより好ましい。触媒
層1の層厚が、0.5μm未満であると、薄すぎて実質
的に形成が困難となる傾向にある。一方、触媒層1の層
厚が、70μmを超えると、触媒層1内のガス拡散性が
低下し、十分に反応ガスを供給し得る反応ガス経路を確
保しにくくなると共に触媒層1から水を効率よく排水し
にくくなる傾向にある。
【0065】また、触媒層2は、触媒層1に十分な反応
ガスを供給し得るガス拡散経路を有すると共に触媒層3
全体の厚み方向に累積された生成水等の水を外部に効率
よく排水するという観点から、その層厚は触媒層1同様
に薄いほうが好ましい。ただし、触媒層2の層厚は、触
媒層2の抵抗が大きくならない範囲で上記の良好なガス
拡散性が確保できれば、触媒層1の場合よりも厚くても
よく調製の際のハンドリング性の観点から決定してもよ
い。具体的には、触媒層2の層厚は、0.5〜80μm
であることが好ましく、3.0〜60μmであることが
より好ましい。触媒層2の層厚が0.5μm未満である
と、薄すぎて実質的に形成が困難となる傾向にある。一
方、触媒層2の層厚が80μmを超えると、ガス拡散性
が低下すると共に、触媒層の抵抗が大きくなる傾向があ
る。
【0066】更に、触媒層3の各層の空隙率は、20〜
95%であることが好ましく、40〜80%であること
がより好ましい。触媒層3の各層の空隙率が、20%未
満では触媒層3内の構成材料間に形成される細孔の細孔
容積が著しく低下すると共に、空隙を構成する細孔の細
孔径も著しく小さくなるので、細孔内の表面積が著しく
低下し反応ガスと接する面積が小さくなる上にガス拡散
性および排水性が著しく低下してしまう。また、触媒層
3の各層の空隙率が、95%を超えると触媒層3自体の
構造維持が困難となる。
【0067】一方、燃料電池FCのアノード8の触媒層
6も、イオン交換樹脂を被覆した表面積の大きな触媒担
持カーボンブラック微粒子により構成されている。アノ
ード8の触媒層6は、上記(4)式に示す電極反応を進
行させる役割を担う。
【0068】アノード8の触媒層6に含まれるイオン交
換樹脂は、カソード5と同様にスルホン酸型パーフルオ
ロカーボン重合体であることが好ましい。また、アノー
ド8では反応生成水が生じないため、カソード5ほどの
排水性は必要ない。従って、十分な反応サイトを確保す
るためにアノード8中のイオン交換樹脂は含水率が高い
ものが好ましい。
【0069】以上のような観点から、触媒層6に含有さ
れるイオン交換樹脂のARは、0.85〜1.40me
q./gであることが好ましい。触媒層6に含有される
イオン交換樹脂のARが、0.85meq./g未満で
あると、触媒層6内に十分なプロトン伝導経路を構築す
ることが困難となり十分な反応サイトが確保できない。
一方、触媒層6に含有されるイオン交換樹脂のARが、
1.40meq./gを超えると、触媒層6内の排水性
が低下し、加湿水の凝縮による触媒層6内にフラッディ
ングが発生する傾向が大きくなる。また、図1では触媒
層6は、単層からなるが複数の層から構成されていても
よい。
【0070】このようなガス拡散層と触媒層とからなる
カソード5とアノード8の形成方法は特に限定されるも
のではなく、例えば、以下のような形成方法に従って製
造される。
【0071】先ず、触媒層形成インクを調製する。次
に、この触媒層形成インクを、高分子電解質膜PEM、
或いは撥水化剤とカーボンとからなる層が表面に形成さ
れたカーボンクロス等のガス拡散層となる材料表面に、
噴霧、塗布、濾過転写するなどして、高分子電解質膜P
EM、或いはガス拡散層となる材料表面上に所定の構造
を有する触媒層を厚さが均一になるように形成する。こ
のとき使用する触媒層形成インクは、少なくとも触媒担
持カーボン微粒子と触媒被覆用イオン交換樹脂を含む溶
液又は分散液であり、溶媒可溶性含フッ素重合体は必要
に応じて予め含有されていてもよく含有されていなくと
もよい。溶媒可溶性含フッ素重合体が触媒層形成インク
に予め含有されていない場合には、触媒層を形成後、溶
媒可溶性含フッ素重合体溶液を噴霧又は含侵させて所定
量の溶媒可溶性含フッ素重合体を触媒層に含有させる。
【0072】次に、形成した触媒層を室温で放置して溶
媒を除去する。なお、このとき溶媒可溶性含フッ素重合
体と触媒層構成材料との物理的付着力を高めるために、
必要に応じて焼成してもよい。この焼成温度は、100
〜250℃であることが好ましく、130〜180℃で
あることがより好ましい。このときの焼成雰囲気は特に
限定されないが、真空中又は不活性ガス雰囲気中である
方がより好ましい。含フッ素重合体溶液には除去すべき
界面活性剤等が含まれていないので、高分子電解質膜P
EMや触媒層に含まれるイオン交換樹脂の分解温度より
低い温度で触媒層構成材への付着力を高められる。従っ
て、高分子電解質膜PEMを触媒層と一体化させた後に
焼成してもよい。
【0073】次に、触媒層を形成した高分子電解質膜P
EMとガス拡散層となる材料との接合、或いは、高分子
電解質膜PEMと触媒層を形成したガス拡散層となる材
料との接合を行う。上記の両者の接合は、例えば、ホッ
トプレスやロールプレスにより行ってもよい。このと
き、特開平7−220741号公報等に開示されている
ように、特殊な接着剤を用いて非加熱により両者を接合
させてもよい。また、予め用意したPTFEやポリエチ
レンテレフタレートなどの基材平板上に触媒層を塗布等
により形成した後、これを高分子電解質膜PEMにホッ
トプレスにより転写する、いわゆる転写法を用いてもよ
い。このようにして、カソード5、アノード8、及び単
位セルUCが完成する。
【0074】ここで、二層構造の触媒層3の形成を行う
場合には、例えば高分子電解質膜PEM上にカソード形
成用の触媒層形成インクを直接二回塗布することによっ
て行ってもよい。この場合には、一回目の塗布は、触媒
層1を形成する工程となり、二回目の塗布は、触媒層2
を形成する工程となる。
【0075】更に、上記の触媒層形成インクの粘度は、
電極の形成方法により好ましい範囲が異なり、数十cP
程度の分散液状のものから2万cP程度のペースト状の
ものまで、広い粘度範囲のものが使用できる。粘度を調
節するために、触媒層形成インクには増粘剤や希釈溶媒
が含まれていてもよい。
【0076】セパレータSP1及びSP2は、図1に示
すように、1体の単セルUCに対して、アノード8側
と、カソード5側とにそれぞれ1体ずつ装着される。セ
パレータSP1及びSP2は、例えば、カーボンを圧縮
してガス不透過とした緻密質カーボンといったようなガ
ス不透過の電子伝導性部材により形成され、図1に示す
ように、薄板状を呈する。
【0077】また、セパレータSP1のカソード接触面
に形成された各溝9は、各単セルUCのカソード5の表
面とにより、カソード反応ガス流路9を画成する(図1
参照)。更に、セパレータSP2のアノード8との接触
面に形成された各溝10は、各単セルUCのアノード8
の表面とにより、アノード反応ガス流路10を画成す
る。これにより、カソード反応ガスはカソード反応ガス
流路9に流れ込み、アノード反応ガスはアノード反応ガ
ス流路10に流れ込む。
【0078】以上、本発明の好適な実施形態について詳
細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるも
のではない。
【0079】例えば、上記の実施形態においては、二層
の触媒層構造を有するカソードを備えた固体高分子型燃
料電池について説明したが、本発明の固体高分子型燃料
電池はこれに限定されるものではなく、三層以上の触媒
層構造を有するカソードを備えるものであってもよい。
【0080】この場合には、複数の触媒層にそれぞれ含
有されている溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率が、最
外部の触媒層から最内部の触媒層にかけて減少していく
ようになっていることが好ましい。このように、最外部
の触媒層から最内部の触媒層にかけてそれぞれの触媒層
中の溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率に負の傾斜を設
けることにより、最内部の触媒層と最外部の触媒層と
が、それぞれに意図された効率の良い電極反応の役割と
効率の良い排水の役割を効果的に発揮することができ
る。
【0081】また、複数の触媒層それぞれにおける微細
孔割合が、最内部の触媒層から最外部の触媒層にかけて
減少していくようになっていることが好ましい。このよ
うに微細孔割合を、最内部の触媒層から最外部の触媒層
にかけて減少させることは、ガス拡散有効空隙部を最内
部の触媒層から最外部の触媒層にかけて増加させること
にもなる。従って、このようにすることにより、各触媒
層中の反応サイトへのバランスのとれた反応ガス及びプ
ロトンの供給を、長期間にわたり保持することのできる
良好な排水構造を有する触媒層を更に確実に構築するこ
とが可能となる。
【0082】また、上記の実施形態においては、単位セ
ルのみの構成を有する固体高分子型燃料電池について説
明したが、本発明の固体高分子型燃料電池はこれに限定
されるものではなく、単位セルを複数積層したいわゆる
スタック構造を有するものであってもよい。
【0083】更に、上記の実施形態においては、単位セ
ルとしていわゆる電極・膜接合体について説明したが、
本発明の固体高分子型燃料電池はこれに限定されるもの
ではない。例えば、熱処理によりアノードとカソードと
をそれぞれ高分子電解質膜に接合させず、高分子電解質
膜に対してアノードとカソードとを当該高分子電解質膜
に接触させ、高分子電解質膜に対するアノードとカソー
ドとのそれぞれの接触抵抗が最小値となるようにして、
高分子電解質膜をアノードとカソードとで外側から力学
的に加圧した状態で挟持させてもよい。
【0084】更に、上記の実施形態においては、アノー
ド反応ガスとして水素を主成分とするガスを用いる場合
の固体高分子型燃料電池について説明したが、本発明の
固体高分子型燃料電池はこれに限定されるものではな
く、例えば、アノード反応ガスとしてメタノールガスを
アノードに直接導入する構成のものであってもよい。
【0085】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の固
体高分子型燃料電池の内容を更に詳しく説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。な
お、以下に示す実施例及び比較例の固体高分子型燃料電
池について、各々のカソードの触媒層の構造の特徴を示
す溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率、層厚、及び微細
孔割合を表1に示す。 (実施例1)実施例1の単位セルは、以下に説明する手
順により作製した。
【0086】触媒層内に含有させるイオン交換樹脂の前
駆体を先ず以下の手順で調製した。すなわち、ステンレ
ス鋼製オートクレーブに、重合開始剤としてジイソプロ
ピルパーオキシカーボネートと、CF2=CF−OCF2
CF(CF3)−OCF2CF 2SO3Fとを仕込んだ。次
に、このオートクレーブ内の気体を液体窒素で十分にパ
ージした後、テトラフルオロエチレンを仕込み、オート
クレーブ内の温度を40℃に保持して、バルク重合を開
始した。なお、重合反応中のオートクレーブ内の圧力
は、系外からテトラフルオロエチレンを追加導入するこ
とにより一定に保持した。次に、重合開始から10時間
後に未反応のテトラフルオロエチレンをパージして重合
を終了させ、得られたポリマー溶液をメタノールで凝集
し、洗浄、乾燥させてイオン交換樹脂の前駆体となるC
2=CF2/CF2=CF−OCF2CF(CF3)−O
CF2CF2SO2F共重合体を得た。
【0087】次に、上記のイオン交換樹脂の前駆体を、
ジメチルスルホキシド30質量%及びKOHを15質量
%含む混合水溶液中に混入させて加水分解させ、水洗
後、1mol/Lの塩酸中に浸漬することでスルホン酸
型パーフルオロカーボン重合体を得た。ここで、重合開
始剤の量と重合時の圧力を調整することにより、AR
1.10meq./gのイオン交換樹脂を合成した。
【0088】次に、イオン交換基を実質的に有しない溶
媒可溶性含フッ素重合体溶液を調製した。溶媒可溶性含
フッ素重合体としては、化学式(J)で表される重合単
位からなる分子量約10万の重合体(以下、重合体Pと
いう)を用いた。これをパーフルオロ(2−ブチルテト
ラヒドロフラン)とパーフルオロ(トリブチルアミン)
の質量比1:1の混合溶媒に溶質濃度が1質量%となる
ように溶解した。
【0089】触媒層形成インクは次のようにして調製し
た。すなわち、触媒層形成インクAとして、60質量%
白金担持カーボン微粒子と、ARが1.10meq./
gのイオン交換樹脂とを質量比で2:1となるようにし
て、エタノール/水の混合溶媒(質量比で1:1)に分
散させた液を調製した。また、触媒層形成インクBとし
て、エタノール/水の混合溶媒の質量比を4:1とした
以外の調製条件は触媒層形成インクAと同様とした液を
調製した。
【0090】また、二層構造を有するカソード触媒層は
以下の手順により形成した。ガス拡散層側の触媒層つい
ては、先ず、触媒層形成インクBをジャパン・ゴアテッ
クス社製のジョイント・シーラントであるPTFE多孔
体シート上に白金担持量が0.3mg/cm2となるよ
うに1回塗布して乾燥させた。次に、このPTFE多孔
体シートを重合体Pの溶液に浸漬し、重合体Pの触媒層
への付着量が0.06mg/cm2(触媒層の全質量に
対する重合体Pの質量の割合:11.8質量%)となる
よう調整した。次に、このPTFE多孔体シートを室温
で乾燥させ、大気雰囲気中にて150℃、1時間焼成し
た。一方、高分子電解質膜側の触媒層については、先
ず、別のPTFE多孔体シートを用意し、触媒層形成イ
ンクAを白金担持量が0.3mg/cm2となるように
1回塗布して乾燥させた。次に、重合体Pの触媒層への
付着量が0.03mg/cm2(6.3質量%)となる
よう調整した以外は上記と同様の処理を行なった。
【0091】また、アノードの触媒層は、PTFE多孔
体シート上に触媒形成用の触媒層形成インクA(樹脂の
R=1.10meq./g)を1回あたり白金の担持
量が0.3mg/cm2となるように塗布、乾燥させ、
同工程を2回繰り返すことで形成した。ここで、作製し
たアノード用触媒層中の白金の担持量は0.60mg/
cm2であった。また、高分子電解質膜としては、スル
ホン酸型パーフルオロカーボン重合体(商品名:フレミ
オンHR、旭硝子社製、AR=1.10meq./g、
乾燥膜厚50μm)を使用した。
【0092】上記のようにして作製したアノード用PT
FE多孔体シートと、カソード用の2つのPTFE多孔
体シートとを、高分子電解質膜に以下のようにして接合
し、いわゆる電極・膜接合体を作製した。先ず、このよ
うに作製した各ガス拡散電極を有効電極面積が25cm
2となるようにそれぞれ切り出した。次に、カソードの
高分子電解質膜側の触媒層を形成したPTFE多孔体シ
ート及びアノード用PTFE多孔体シートを触媒層形成
インクが塗布された面を内側に向けて対向させ、その間
に高分子電解質膜を挟み込んだ状態でホットプレスを行
い接合させた。次に、アノード用PTFE多孔体シート
は剥がさずに高分子電解質膜側の触媒層側のPTFE多
孔体シートのみを剥がし、カソードのガス拡散層側の触
媒層の形成されたPTFE多孔体シートを、高分子電解
質膜側の触媒層上にガス拡散層側の触媒層が接触するよ
うにして上記と同様にホットプレスを行い接合させた。
次に、アノード側及びカソード側のPTFE多孔体シー
トを剥がし高分子電解質膜と触媒層を一体化したものを
作製した。次に、ガス拡散層として、撥水性カーボンク
ロス(繊維織布)を撥水性カーボン粉末層(カーボンブ
ラックとPTFEの混合物)で目詰めした厚さ350μ
mのものを2枚用意し、この2枚のガス拡散層を用いて
高分子電解質膜と触媒層を一体化したものをの両側から
挟持させて電極・膜接合体とした。
【0093】このときそれぞれのガス拡散層の撥水性カ
ーボン粉末層側の面が触媒層に接するようにした。ここ
で、作製したカソード用ガス拡散電極に担持された白金
の量は0.6mg/cm2であり、各触媒層の厚み及び
微細孔割合は表1に示す値となった。 (実施例2)触媒層形成インクCとして、60質量%白
金担持カーボン触媒と、ARが1.10meq./gの
イオン交換樹脂と、造孔剤としての炭酸カルシウムとを
質量比で2:1:0.05となるようにして、エタノー
ル/水の混合溶媒(質量比で1:1)に分散させた溶液
を調製した。この触媒層形成インクCをPTFE多孔体
シートに白金担持量が0.3mg/cm2となるように
塗布後、このPTFE多孔体シートに酸による洗浄処理
を施して造孔剤を除去させることによってガス拡散層側
の触媒層を作製した以外は、実施例1と同様にして電極
・膜接合体を得た。 (実施例3、実施例4及び比較例1〜比較例4)カソー
ド触媒層の二層構成を表1に示す撥水化剤としての重合
体Pの含有率、層厚、及び微細孔割合となるようにした
以外は、実施例1と同様にして電極・膜接合体を作製し
た。 [電池特性試験]上記の実施例1〜実施例4及び比較例1
〜比較例4の各単位セル(電極・膜接合体)にセパレー
タを装着して測定セルとし、電子負荷と直流電源(高砂
製作所社製,FK400L及びEX750L)を用いて
電流電圧特性の測定試験を行った。測定条件は、水素出
口圧力;0.1MPa、空気出口圧力;0.1MPa、
測定セルの作動温度;80℃とし、電流密度;1.0A
/cm2における測定セルの分極特性の1000時間に
わたる経時変化を測定した。これらの各測定セルの試験
結果を表1に示す。
【0094】なお、表1においてY−Xの値は、二層構
造を有するカソードの触媒層における、ガス拡散層側の
触媒層に含有されているイオン交換基を実質的に有しな
い溶媒可溶性含フッ素重合体の含有量Yと、高分子電解
質膜側の触媒層に含有されているイオン交換基を実質的
に有しない溶媒可溶性含フッ素重合体の含有量Xとの差
を示す。また、ΔVの値は、起動初期(測定開始から約
240分後)の測定セルの電池電圧(端子間電圧)と、
1000時間経過後の各測定セルの電池電圧との差を示
す。
【0095】
【表1】
【0096】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の固体高分
子型燃料電池によれば、十分に多く確保された反応サイ
トへの反応ガスの供給を、長期間にわたり保持すること
のできる良好な排水性を有するカソード触媒層を得るこ
とが可能となる。従って、起動初期の電池出力を高くし
大電流を流す場合であってもフラッディングの発生が十
分に防止され、高い電池出力を起動初期から長期間にわ
たり安定して得ることのできる固体高分子型燃料電池を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による固体高分子型燃料電池の好適な
一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…高分子電解質膜側の触媒層、2…ガス拡散層側の触
媒層、3…カソード触媒層、4…ガス拡散層、5…カソ
ード、6…アノード触媒層、7…ガス拡散層、8…アノ
ード、9…カソード反応ガス流路、10…アノード反応
ガス流路、FC…燃料電池、PEM…高分子電解質膜、
SP1,SP2…セパレータ、UC…単位セル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 栄治 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 (72)発明者 石崎 豊暁 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 Fターム(参考) 5H018 AA06 AS03 CC06 DD06 DD08 DD10 EE03 EE05 EE18 EE19 HH05 5H026 AA06 CC03 CC10 CX03 CX04 CX05 EE02 EE05 EE19 HH05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アノードと、カソードと、前記アノード
    と前記カソードとの間に配置された高分子電解質膜とを
    備えた固体高分子型燃料電池であって、 前記カソードが、ガス拡散層と、当該ガス拡散層と前記
    高分子電解質膜との間に配置されるイオン交換基を実質
    的に有しない溶媒可溶性含フッ素重合体とイオン交換樹
    脂と触媒とを含有する複数の触媒層と、を備えており、 前記高分子電解質膜に接する最内部の触媒層に含有され
    ている前記溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率X[質量
    %]、及び前記ガス拡散層に接する最外部の触媒層に含
    有されている前記溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率Y
    [質量%]が、それぞれ下記式(1)〜(3)の条件を
    同時に満たしていること、を特徴とする固体高分子型燃
    料電池。 2≦X≦28 (1) 5≦Y≦30 (2) 2≦(Y−X)≦28 (3)
  2. 【請求項2】 前記溶媒可溶性含フッ素重合体が含フッ
    素脂肪族環構造を有する重合体であることを特徴とする
    請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
  3. 【請求項3】 前記溶媒可溶性含フッ素重合体が下記化
    学式(A)〜(D)のいずれかで表される重合単位を含
    むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子
    型燃料電池。 【化1】 [化学式(A)〜(D)中、R1、R2、及びR3はそれ
    ぞれフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、pは
    0〜5の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、rは0
    又は1を示し、p+q+rは1〜6の整数を示し、s、
    t、uはそれぞれ0〜5の整数を示し、s+t+uは1
    〜6の整数を示し、vは1又は2を示す]
  4. 【請求項4】 前記溶媒可溶性含フッ素重合体が下記化
    学式(E)〜(M)のいずれかで表される重合単位を含
    むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子
    型燃料電池。 【化2】
  5. 【請求項5】 前記イオン交換樹脂がスルホン酸基を有
    するパーフルオロカーボン重合体であることを特徴とす
    る請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電
    池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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