JP2001340097A - グリシンを微生物学的に製造する方法 - Google Patents

グリシンを微生物学的に製造する方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微生物を用いグリシノニトリルからグリシン
を生産するにあたり、菌体当たり、かつ単位時間当たり
活性が高く、培地や菌体を多量に廃棄せず、反応液のpH
を調整するための緩衝液を用いず、グリシンとアンモニ
アが定量的に、かつ容易に回収する方法を提供する。 【解決手段】 pHを調整しない閉鎖的反応条件下で、
グリシノニトリルの水溶液にコリネバクテリウム(Cory
nebacterium )属またはアルカリゲネス(Alcaligenes
)属に属する微生物を作用させるグリシンの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,グリシンの微生物
学的製造方法に関する。さらに詳しくは、ホルムアルデ
ヒド、青酸、およびアンモニアの反応で得られるグリシ
ノニトリルをコリネバクテリウム属またはアルカリゲネ
ス属に属する微生物の作用による加水分解反応に付し、
pHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加
をしない反応条件で、または該反応条件と閉鎖系の反応
条件下もしくは生成するアンモニアを反応と同時に系外
に分離する反応条件下で選択的にグリシンを回収するこ
とを特徴とするグリシンの微生物学的製造方法に関す
る。得られるグリシンは食品添加物、洗浄剤、医農薬合
成原料として有用である。本発明の製造法は、有用なグ
リシンを効率よく工業的に製造するため利用することが
できる。
【0002】
【従来の技術】グリシンは、従来、ホルムアルデヒド、
青酸、およびアンモニアからシュトレッカー法にて一旦
グリシノニトリルを合成し、これを苛性ソーダ等のアル
カリで加水分解しグリシンソーダとアンモニアに変換し
た後、硫酸等の酸で中和し製造されている。この時、ア
ンモニアはアルカリで加水分解される際、蒸発して回収
され、グリシンは酸で中和後、晶析法で回収される(特
開昭43−29929号、特開昭51−19719号、
特開昭49−14420号、特開昭49−35329
号)。このように従来法は、アルカリや酸を多量に用い
る欠点に加え、中和工程で塩類が多量に副成されるため
廃棄物が多く、環境負荷が大きい欠点があった。さら
に、中和副成する塩類はグリシンに溶解度が酷似してい
るため、グリシンを精製回収する為には、晶析操作を複
数回繰り返したり母液を循環する等の煩雑な操作が必要
であった(特開昭51−34113号)。
【0003】一方、グリシノニトリルを酵素的に加水分
解しグリシンを得る方法も知られている。特公昭58−
15120号明細書には、ブレビバクテリウムR312
株を苛性カリ等でpH8に調整した反応液に懸濁し加水
分解反応に用いる方法が、また、特開平3−62391
号明細書には、コリネバクテリウムN−774株をリン
酸緩衝液でpH7.7に調整した反応液に懸濁し反応に
用いる方法が開示されている。しかし、これらの方法
は、実施例によるとグリシンを得るためには、グリシン
重量の1倍から10倍に相当する多量の菌体を用いる必
要があり、さらに、反応液のpHを調整するため緩衝液
が用いられる問題があった。すなわち、多量の菌体を用
いるため培地や菌体を多量に浪費する欠点があり、ま
た、pH調整剤として緩衝液を用いるため緩衝液消費や
廃棄が避けられない欠点があった。さらに、緩衝液はア
ンモニアを中和して塩を形成し、アンモニアの回収を妨
げる問題もある。
【0004】ロドコッカス属、アルスロバクター属、カ
セオバクター属、シュードモナス属、エンテロバクター
属、アシネトバクター属、アルカリゲネス属、コリネバ
クテリウム属、またはストレプトマイセス属の微生物を
用いる特開平3−280889号明細書においては、菌
体使用量は生成グリシン重量の約20分の1に改良され
ているが、反応時間が約40時間と長い欠点がある、さ
らに、緩衝液を反応に用いる問題は解決されていない。
【0005】このように、従来の微生物を用いたグリシ
ノニトリルからグリシンを生産する方法は、乾燥菌体当
たり、かつ単位時間当たりの活性が低いため、菌体や培
地を多量に消費し廃棄する欠点があった。さらに、反応
液のpHを調整するために緩衝液や酸またはアルカリを
消費し、シュトレッカー法と同様に、それらの廃棄が避
けられない欠点を持っていた。また、従来の微生物を用
いた方法では、アンモニアを回収する工夫は開示されて
いないが、緩衝液や酸を用いると、緩衝液や酸がアンモ
ニアを中和して塩を形成し、アンモニアの回収を妨げる
問題に加え、酸またはアルカリを使用すると、シュトレ
ッカー法と同様に、グリシンの回収を妨げることが予想
される。このように、従来の微生物を用いる方法も、工
業的に実施できるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ホルムアル
デヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得られるグ
リシノニトリルから、微生物を用いてグリシンを生産す
るにあたり、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たり高活
性であって菌体や培地の多量廃棄を伴わず、反応液のp
Hを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加や
廃棄を伴わず、グリシンとアンモニアが定量的に生成
し、これらの分解および消費を伴わず、グリシンとアン
モニアを別々に回収するグリシンの製造法を提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このような
工業的諸問題を解決するため、菌体当たり、かつ単位時
間当たり高い活性を持ち、反応系で生成したグリシンや
アンモニアを分解または消費せず、グリシンとアンモニ
アを別々に、定量的に、かつ容易に回収できる反応系を
構築すべく、適した微生物の探索と反応方法の検討を鋭
意行った。驚くべきことに、pHを調整するための酸、
アルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件下で反応
が進行し、単位時間当たり高い活性を持つ微生物を見い
だすことがでた。さらに、こうした高活性菌体の中に、
閉鎖系の反応条件下、あるいは減圧反応蒸留や不活性ガ
スを流通しながら生成するアンモニアを反応と同時に分
離する条件下で好ましく働く微生物を見いだすことがで
き、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明によれば、pHを調整す
るための酸、アルカリまたは緩衝液の添加をしない反応
条件下、または該反応条件と閉鎖的反応条件下もしくは
減圧反応蒸留や不活性ガスを流通しながら生成するアン
モニアを反応と同時に系外に分離する反応条件下で、ホ
ルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得
られるグリシノニトリルの水溶液にコリネバクテリウム
属またはアルカリゲネス属に属する微生物を作用させる
ことで、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たり高活性で
あって菌体や培地の多量廃棄を伴わず、反応液のpHを
調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加や廃棄
を伴わず、グリシンとアンモニアが定量的に生成し、こ
れらの分解および消費を伴わず、グリシンとアンモニア
を別々に回収するグリシンの製造法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明について、以下具体的に説
明する。本発明に使用できる微生物として、コリネバク
テリウム(Corynebacterium )属とアルカリゲネ(Alca
ligenes )属に属する微生物が適していることが新たに
発見された。本発明に適した微生物として具体的には、
コリネバクテリウムsp.C5株、コリネバクテリウム
・ニトリロフィラスATCC21419株、アルカリゲ
ネス・フェカリスATCC8750株の微生物が使用で
きる。コリネバクテリウムsp.C5株(以下、C5と
略称する)は工業技術院微生物工業技術研究所に寄託さ
れ微工研菌寄第8931号の受託番号を付与されてお
り、微生物学的性質は、特開昭63−129988号公
報に示すとおりである。
【0010】本発明に使用される微生物の培養には、通
常用いられる炭素源、例えば、グルコース、グリセリ
ン、有機酸、デキストリン、マルトース等が用いられ、
窒素源としてはアンモニアとその塩類、尿素、硝酸塩お
よび有機窒素源、例えば、酵母エキス、麦芽エキス、ペ
プトン、肉エキス等が用いられる。また、培地にはリン
酸塩、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、コバ
ルト、マンガン、亜鉛等の無機栄養源が適宜添加され
る。培養はpH5〜9、好ましくはpH6〜8、温度2
0〜37℃、好ましくは27〜32℃で好気的に行われ
る。本発明の微生物の培養において、上記の培地に酵素
誘導剤を加えてもよい、例えば、ラクタム化合物(γ−
ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム等)、ニ
トリル化合物、アミド化合物等を用いてもよい。
【0011】本発明の微生物は、そのまま工業使用でき
るが、適当な変異剤で突然変異を誘発する方法もしくは
遺伝子工学的手法により改良された変異株、例えば、酵
素を構成的に生産する変異株を育成し用いることもでき
る。本発明の菌体とは、培養液から採取した菌体または
菌体処理物(菌体の破砕物、菌体破砕物より分離した酵
素、および菌体または菌体から分離抽出された酵素を固
定化した処理物)である。培養液からの菌体の採取は、
公知の方法で行うことができる。本発明において用いる
グリシノニトリルは、公知の方法で合成することができ
る。例えば、ホルムアルデヒドと青酸およびアンモニア
から得る方法、あるいはホルムアルデヒドと青酸を反応
させ一旦グリコロニトリルを合成し、継いでアンモニア
を作用させて得る方法で合成される。どちらも、シュト
レッカー法として総称されている。
【0012】本発明においては、上述の方法で分離した
菌体および菌体処理物はpHを調整しない反応条件下で
グリシノニトリル水溶液に懸濁しすることで、速やかに
加水分解反応が進行し、生成するアンモニアを反応と同
時に分離することによりグリシンを製造することができ
る。すなわち、通常、前記微生物菌体または菌体処理物
を、例えば0.01〜5重量%、およびグリシノニトリ
ルを1〜30重量%含むpHを調整しない水性懸濁液を
オートクレーブ等の閉鎖的反応容器、または生成するア
ンモニアを反応分離する装置が付属した反応容器に仕込
み、温度として例えば0〜60℃の条件、好ましくは1
0〜50℃の条件を用いて、反応時間を例えば1〜24
時間、好ましくは3〜8時間反応させればよい。この場
合、グリシノニトリルを薄い濃度で仕込み経時的に追加
添加したり、反応温度を経時的に変化させてもよい。
【0013】本発明においては、反応生成するアンモニ
アは密閉型反応容器中に一旦蓄積するか反応と同時に反
応分離することができる。反応分離方法は、反応蒸留法
や不活性ガスの流通法で実施することができる。反応蒸
留を行う場合、加水分解反応容器に、アンモニアと同伴
する水を冷却回収する冷却器の付いた単管搭、棚段搭、
または充填塔を備え、反応水溶液の沸騰圧以下、例え
ば、60℃で20.0kPa以下から0℃で0.6kP
a以下の減圧条件下で、連続的にまたは間欠的に減圧反
応蒸留することが好ましい。さらに好ましくは12.6
kPaから1.3kPaの圧力条件下で、減圧反応蒸留
することができる。不活性ガスを流通する場合、不活性
ガスの吹き込みノズルと、アンモニアや同伴する水を不
活性ガスから回収する冷却トラップとを備え、微加圧か
ら減圧条件下で連続的にまたは間欠的に、アンモニアを
不活性ガスに同伴し反応液から分離することができる。
さらに、アンモニア分離を促進するため減圧反応蒸留を
不活性ガス流通条件下で行うこともできる。
【0014】かくして、グリシノニトリルは、ほぼ10
0%のモル収率で加水分解し、生成するアンモニアの全
部は密閉型反応容器中に、一旦グリシンのアンモニウム
塩を含むグリシンの高濃度水溶液として生成蓄積させる
ことができる。また、生成するアンモニアの全部または
殆どは、反応と同時に反応蒸留法や不活性ガスの流通法
で反応液から分離し冷却回収される。もし、グリシンア
ミドが残存する場合は、グリシンアミドの加水分解活性
をもつ菌体もしくは酵素を追添加することにより、完全
にグリシンおよびアンモニアに転換することも可能であ
る。グリシンのアンモニウム塩を含むグリシンの高濃度
水溶液からのグリシンの回収は、例えば、反応液から菌
体を遠心濾過、膜分離等によって除いた後、グリシンは
晶析法、イオン交換法または貧性溶媒による分別沈澱法
にて回収できる、また、アンモニアは一部の水と一緒に
蒸発後、蒸留や抽出によって回収することができる。本
発明を実施例に基づいて説明する。
【0015】
【実施例1】(1)グリシノニトリルの合成 ホルマリンに等量の青酸をを作用させて、一旦生成した
グリコロニトリル水溶液に、過剰量のアンモニア水溶液
を添加し30重量%グリシノニトリル水溶液を得た。 (2)菌体の培養 コリネバクテリウム・ニトリロフィラスATCC214
19を、下記の条件で培養した。 (1) 培地 フマル酸 1.0重量% 肉エキス 1.0 ペプトン 1.0 食塩 0.1 ε−カプロラクタム 0.3 リン酸第一カリウム 0.2 硫酸マグネシウム・7水塩 0.02 塩化アンモニウム 0.1 硫酸第二鉄・7水塩 0.003 塩化マンガン・4水塩 0.002 塩化コバルト・6水塩 0.002 pH 7.5 (2) 培養条件 30℃/1日
【0016】(3)グリシノニトリルの加水分解 菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸
留水等で洗浄したものを反応に用いた。密閉した100
mlの硝子オートクレーブに、乾燥菌体量として85m
gと基質の30重量%グリシノニトリル水溶液3mlを
17mlの蒸留水で調合し、20℃にて反応を開始し
た。反応開始2時間後、pHは10になっていた。この
反応液を液体クロマトグラフィー法で分析し、グリシノ
ニトリルはなくなり、グリシンが定量的に生成してい
た。
【0017】そこで、2時間毎に反応温度を5℃昇温
し、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液3mlを
追加添加して反応液を液体クロマトグラフィー法で分析
した。この操作を4回切り返し、合計10時間反応を行
った。得られた32gの反応液のうち2gを用い、生成
したアンモニアはネスラー法により定量し、原料のグリ
シノニトリルと生成したグリシンは液体クロマトグラフ
ィー法で分析し、グリシノニトリルはなくなり、グリシ
ンとアンモニアが定量的に生成していた。乾燥菌体当た
りのグリシンの生成量は71g/g乾燥菌体であり、グ
リシンの生成活性は7.1g/g・Hrであった。残り
の30gは遠心濾過し菌体を取り除いた後、沸騰下で1
/10に濃縮し、4.9gのグリシンを晶析回収した。
一方、冷却回収した蒸発水溶液中のアンモニアは1.2
5gであった。
【0018】
【実施例2】実施例1で合成した30重量%グリシノニ
トリル水溶液を用い、菌体と反応方式を代えて実施し
た。 (1)菌体の培養 コリネバクテリウムsp.C5を、下記の条件で培養し
た。 (1) 培地 フマル酸 1.0重量% 肉エキス 1.0 ペプトン 1.0 食塩 0.1 ε−カプロラクタム 0.3 リン酸第一カリウム 0.2 硫酸マグネシウム・7水塩 0.02 塩化アンモニウム 0.1 硫酸第二鉄・7水塩 0.003 塩化マンガン・4水塩 0.002 塩化コバルト・6水塩 0.002 pH 7.5 (2) 培養条件 30℃/1日
【0019】(2)グリシノニトリルの加水分解 菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸
留水等で洗浄したものを反応に用いた。撹拌器の付いた
1000mlの恒温ジャケット槽型3つ口セパラブルフ
ラスコに、底部まで届く窒素ガスの吹き込みノズル、ド
ライアイストラップに接続したミストセパレーター、温
度計、およびサンプリング管を備えた。このセパラブル
フラスコに乾燥菌体量として1.16gを仕込み、基質
の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlと蒸留水
170mlを調合した。ガス流量計を用いて少量の窒素
ガスを1時間当たり3リットルフィードしながら、30
℃にて反応を開始した。反応開始1時間後、この反応液
を液体クロマトグラフィー法で分析し、グリシノニトリ
ルはなくなり、グリシンが定量的に生成していた。
【0020】そこで、基質の30重量%グリシノニトリ
ル水溶液30mlを追加添加した。この操作をさらに3
回繰り返し、合計5時間反応を行った。ドライアイスト
ラップには固体が15g回収された。固体を50mlの
水に溶かしネスラー法により定量したところ、アンモニ
アが14g回収されていた。反応液は300g回収され
た。この反応液のうち2gを用い、生成したアンモニア
をネスラー法により定量し、原料のグリシノニトリルと
生成したグリシンは、液体クロマトグラフィー法で分析
した。グリシノニトリルはなくなり、グリシンが定量的
に生成し、トレース量のアンモニアが残存していた。乾
燥菌体当たりのグリシンの生成量は52g/g乾燥菌体
であり、グリシンの生成活性は10g/g・Hrであっ
た。残りの303gは遠心濾過し菌体を取り除いた後、
沸騰下で1/10に濃縮し放冷して56gのグリシンを
晶析回収した。
【0021】
【実施例3】実施例1で合成した30重量%グリシノニ
トリル水溶液を用い、菌体と反応方式を代えて実施し
た。 (1)菌体の培養 アルカリゲネス・フェカリスATCC8750を、下記
の条件で培養した。 (1) 培地 フマル酸 1.0重量% 肉エキス 1.0 ペプトン 1.0 食塩 0.1 ε−カプロラクタム 0.3 リン酸第一カリウム 0.2 硫酸マグネシウム・7水塩 0.02 塩化アンモニウム 0.1 硫酸第二鉄・7水塩 0.003 塩化マンガン・4水塩 0.002 塩化コバルト・6水塩 0.002 pH 7.5 (2) 培養条件 30℃/1日
【0022】(2)グリシノニトリルの加水分解 菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸
留水等で洗浄したものを反応に用いた。撹拌器の付いた
1000mlの恒温ジャケット槽型3つ口セパラブルフ
ラスコに、底部まで届く窒素ガスの吹き込みノズル、ド
ライアイストラップを経て減圧ポンプに接続した単管型
の蒸留塔、圧力センサー、温度計、および液送ポンプに
接続したサンプリング管を備えた。このセパラブルフラ
スコに乾燥菌体量として1.4gを仕込み、基質の30
重量%グリシノニトリル水溶液30mlと蒸留水170
mlを調合した。ガス流量計を用いて少量の窒素ガスを
1時間当たり3リットルフィードしながら、減圧ポンプ
でフラスコ内の圧力を10kPaに調整し、30℃にて
反応を開始した。反応開始1時間後、この反応液を液体
クロマトグラフィー法で分析したところ、グリシノニト
リルが消失し、グリシンが定量的に生成していた。
【0023】そこで、基質の30重量%グリシノニトリ
ル水溶液30mlを追加添加した。2時間毎にこの操作
をさらに3回繰り返し、合計5時間反応を行った。ドラ
イアイストラップには固体が25g回収された。固体を
50mlの水に溶かしネスラー法により定量したとこ
ろ、アンモニアが14g回収されていた。反応液は29
4g回収された。この反応液のうち2gを用い、生成し
たアンモニアをネスラー法により定量し、原料のグリシ
ノニトリルと生成したグリシンは液体クロマトグラフィ
ー法で分析した。グリシノニトリルはなくなり、グリシ
ンが定量的に生成し、トレース量のアンモニアが残存し
ていた。乾燥菌体当たりのグリシンの生成量は42g/
g乾燥菌体であり、グリシンの生成活性は8g/g・H
rであった。残りの292gは遠心濾過し菌体を取り除
いた後、沸騰下で1/10に濃縮し放冷して56gのグ
リシンを晶析回収した。
【0024】
【発明の効果】本発明の製造方法は、pHを調整するた
めの酸、アルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件
下、または該反応条件と閉鎖的反応条件下もしくは減圧
反応蒸留や不活性ガスを流通しながら生成するアンモニ
アを反応と同時に系外に分離する反応条件下で、ホルム
アルデヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得られ
るグリシノニトリルの水溶液に、コリネバクテリウム
(Corynebacterium )属またはアルカリゲネス(Alcali
genes )属に属する微生物を作用させることで、乾燥菌
体当たり、かつ単位時間当たり高活性であって菌体や培
地の多量廃棄を伴わず、反応液のpHを調整するための
酸、アルカリまたは緩衝液の添加や廃棄を伴わず、グリ
シンとアンモニアが定量的に生成し、これらの分解およ
び消費を伴わなず、グリシンとアンモニアを別々に回収
できる効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12P 13/04 (C12P 13/04 C12R 1:05) C12R 1:05) Fターム(参考) 4B064 AE03 CA02 CB01 CC12 CC22 CD01 CD12 CE01 DA10 4B065 AA12X AA24X BA22 BC05 BC16 BC18 BD24 BD32 CA17 CA41

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 pHを調整するための酸、アルカリまた
    は緩衝液の添加をしない反応条件下で、グリシノニトリ
    ルの水溶液にコリネバクテリウム属またはアルカリゲネ
    ス属に属する微生物を作用させることを特徴とするグリ
    シンの製造法。
  2. 【請求項2】 反応条件がpHを調整するための酸、ア
    ルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件で、かつ閉
    鎖的反応条件であることを特徴とする請求項1記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 反応条件がpHを調整するための酸、ア
    ルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件で、かつ反
    応液中に生成するアンモニアを反応液から分離する反応
    条件であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 アンモニアを反応液から分離する方法が
    反応蒸留であることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 反応蒸留を減圧下で行うことを特徴とす
    る請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 反応蒸留を不活性ガスの存在下で行うこ
    とを特徴とする請求項4または5記載の方法。
  7. 【請求項7】 コリネバクテリウム属に属する微生物が
    コリネバクテリウムsp.5株(微工研菌寄第1022
    4号)またはコリネバクテリウム・ニトリロフィラスA
    TCC21419であることを特徴とする請求項1ない
    し6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 アルカリゲネス属に属する微生物がアル
    カリゲネス・フェカリスATCC8750であることを
    特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
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