JP4497638B2 - アンモニアの反応分離を利用したグリシンの微生物学的製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリシンの微生物学的製造方法に関する。さらに詳しくは、pHを調整しない反応条件下で、ホルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアの反応で得られるグリシノニトリルを微生物の作用による加水分解反応に付し、生成するアンモニアを反応と同時に系外に分離することにより選択的にグリシンを回収することを特徴とするグリシンの微生物学的製造方法に関する。得られるグリシンは、食品添加物、洗浄剤、医農薬合成原料として有用である。本発明の製造法は、有用なグリシンを効率よく工業的に製造するため利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
グリシンは、従来、ホルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアからシュトレッカー法にて一旦グリシノニトリルを合成し、これを苛性ソーダ等のアルカリで加水分解し、グリシンソーダとアンモニアに変換した後、硫酸等の酸で中和して製造されている。この時、アンモニアはアルカリで加水分解される際、蒸発して回収され、グリシンは酸で中和後、晶析法で回収される(特開昭43−29929号、特開昭51−19719号、特開昭49−14420号、特開昭49−35329号)。このように従来法は、アルカリや酸を多量に用いる欠点に加え、中和工程で塩類が多量に副成されるため、廃棄物が多く環境負荷が大きい欠点があった。さらに、中和副成する塩類はグリシンに溶解度が酷似しているため、グリシンを精製回収するためには、晶析操作を複数回繰り返したり、母液を循環する等の煩雑な操作が必要であった(特開昭51−34113号)。
【0003】
一方、グリシノニトリルを酵素的に加水分解してグリシンを得る方法も知られている。特公昭58−15120号においては、ブレビバクテリウムR312株を苛性カリ等でpH8に調整した反応液に懸濁して加水分解反応に用いる方法が、また、特開平3−62391号においては、コリネバクテリウム N−774株をリン酸緩衝液でpH7.7に調整した反応液に懸濁し反応に用いる方法が開示されている。しかし、これらの方法は、実施例によると、グリシンを得るためにはグリシン重量の1倍から10倍に相当する多量の菌体を用いる必要があり、さらに、反応液のpHを調整するため、緩衝液が用いられる問題があった。すなわち、多量の菌体を用いるため、培地や菌体を多量に浪費する欠点があり、また、pH調整剤として緩衝液を用いるため、緩衝液消費や廃棄が避けられない欠点があった。さらに、緩衝液はアンモニアを中和して塩を形成し、アンモニアの回収を妨げる問題もある。ロドコッカス属、アルスロバクター属、カセオバクター属、シュードモナス属、エンテロバクター属、アシネトバクター属、アルカリゲネス属、コリネバクテイリア属、またはストレプトマイセス属の微生物を用いる特開平3−280889号においては、菌体使用量は生成グリシン重量の約20分の1に改良されているが、反応時間が約40時間と長い欠点がある、さらに、緩衝液を反応に用いる問題は解決されていない。
【0004】
このように、従来の微生物を用いたグリシノニトリルからグリシンを生産する方法は、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たりの活性が低いため、菌体や培地を多量に消費し廃棄する欠点があった。さらに、反応液のpHを調整するために緩衝液や酸またはアルカリを消費し、シュトレッカー法と同様に、それらの廃棄が避けられない欠点を持っていた。また、従来の微生物を用いた方法ではアンモニアを回収する工夫は開示されていないが、緩衝液や酸を用いると、緩衝液や酸がアンモニアを中和して塩を形成し、アンモニアの回収を妨げる問題に加え、酸またはアルカリを使用すると、シュトレッカー法と同様に、グリシンの回収をを妨げることが予想される。このように従来の微生物を用いる方法も、工業的に実施できるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微生物を用いホルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得られるグリシノニトリルからグリシンを生産するに当たり、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たり高活性であって、菌体や培地の多量廃棄を伴わず、反応液のpHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加や廃棄を伴わず、グリシンとアンモニアが定量的に生成し、これらの分解および消費を伴わなず、グリシンとアンモニアを別々に回収するグリシンの製造法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような工業的諸問題を解決するため、菌体当たり、かつ単位時間当たり高い活性を持ち、反応系で生成したグリシンやアンモニアを分解または消費せず、グリシンとアンモニアを別々に、定量的に、かつ容易に回収できる反応系を構築すべく、適した微生物の探索と反応方法の検討を鋭意行った。その結果、驚くべきことに、pHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件下で反応が進行し、単位時間当たり高い活性を持つ微生物を見い出すことができた。さらに、こうした高活性菌体の中に、減圧反応蒸留や不活性ガスを流通しながら生成するアンモニアを、反応と同時に分離する条件下で好ましく働く微生物を見い出すことができ、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、pHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液を添加せず、減圧反応蒸留や不活性ガスを流通しながら生成するアンモニアを、反応と同時に系外に分離する反応条件下で、ホルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得られるグリシノニトリルの水溶液に微生物を作用させることにより、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たり高活性であって、菌体や培地の多量廃棄を伴わず、反応液のpHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加や廃棄を伴わず、グリシンとアンモニアが定量的に生成し、これらの分解および消費を伴わなず、グリシンとアンモニアを別々に回収するグリシンの製造法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に使用する微生物としては、例えば、アシネトバクター(Accinetobacter)属やロドコッカス(Rhodococcus )属に属する微生物が適していることが新たに発見されたが、これに限定されるものではない。
本発明に適した微生物として選択されたアシネトバクターsp.AK226株(A.sp.AK226)(以下、AK226と略称する)や、アシネトバクターsp.AK227株(A.sp.AK227)(以下、AK227と略称する)は、1985年5月28日に工業技術院微生物工業技術研究所に寄託され、それぞれ微工研菌寄第8271号と微工研菌寄第8272号の受託番号を付与されており、微生物学的性質は表1〜3に示すとおりである。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2】
【0011】
【表3】
【0012】
菌株の同定に際しては、バージェイズ・マニュアル・オブ・システマティク・バイオテリオロジー(Bergy's Manual of Determinative Bacteriolog )第8版(1974)に従って分類した。
また、本発明に適した微生物として選択されたロドコッカス・マリスBP−479−9株は、1993年11月2日に工業技術院微生物工業技術研究所に原寄託され、1995年9月1日に国際寄託に移管されてFERM BP−5219の受託番号を付与されており、微生物学的性質は表4〜6に示すとおりである。
【0013】
【表4】
【0014】
【表5】
【0015】
【表6】
【0016】
菌株の同定に際しては、バージェイズ・マニュアル・オブ・システマティク・バイオテリオロジー(Bergy's Manual of Determinative Bacteriolog )第2巻(1986)およびザ・プロカリオート(The Prokaryotes )第2版(1992)に従って分類した。
次に、本発明の一般的実施態様について説明する。
本発明に使用される微生物の培養には、通常用いられる炭素源、例えば、グルコース、グリセリン、有機酸、デキストリン、マルトース等が用いられ、窒素源としてはアンモニアとその塩類、尿素、硝酸塩および有機窒素源、例えば、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、肉エキス等が用いられる。また、培地にはリン酸塩、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、コバルト、マンガン、亜鉛等の無機栄養源が適宜添加される。培養はpH5から9、好ましくはpH6から8、温度20から37℃、好ましくは27から32℃で好気的に行われる。本発明の微生物の培養において、上記の培地に酵素誘導剤を加えてもよい、例えば、ラクタム化合物(γ−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム等)、ニトリル化合物、アミド化合物等を用いてもよい。
【0017】
本発明の微生物は、そのまま工業使用できるが、適当な変異剤で突然変異を誘発する方法もしくは遺伝子工学的手法により改良された変異株、例えば、酵素を構成的に生産する変異株を育成して用いることもできる。本発明の菌体とは、培養液から採取した菌体または菌体処理物(菌体の破砕物、菌体破砕物より分離した酵素、および菌体または菌体から分離抽出された酵素を固定化した処理物)である。培養液からの菌体の採取は公知の方法で行うことができる。
本発明において用いるグリシノニトリルは、公知の方法で合成することができる。例えば、ホルムアルデヒドと青酸およびアンモニアから得る方法、あるいはホルムアルデヒドと青酸を反応させ一旦グリコロニトリルを合成し、継いでアンモニアを作用させて得る方法で合成される。どちらも、シュトレッカー法として総称されている。
【0018】
本発明においては、上述の方法で分離した菌体および菌体処理物は、pHを調整しない反応条件下でグリシノニトリル水溶液に懸濁することにより、速やかに加水分解反応が進行し、生成するアンモニアを反応と同時に分離することにより、グリシンを製造することができる。すなわち、通常、前記微生物菌体または菌体処理物を、例えば、0.01から5重量%およびグリシノニトリルを1から30重量%含むpHを調整しない水性懸濁液を、生成するアンモニアを反応分離する装置が付属した反応容器に仕込み、温度として、例えば、0から60℃の条件、好ましくは10から50℃の条件を用いて、反応時間を、例えば、1時間ないし24時間、好ましくは3時間から8時間反応させればよい。この場合、グリシノニトリルを薄い濃度で仕込み経時的に追加添加したり、反応温度を経時的に変化させてもよい。
【0019】
本発明において、生成するアンモニアの反応分離方法は、反応蒸留法や不活性ガスの流通法で実施することができる。反応蒸留を行う場合、加水分解反応容器に、アンモニアと同伴する水を冷却回収する冷却器の付いた単管搭、棚段搭または充填塔を備え、反応水溶液の沸騰圧以上、例えば、60℃で20.0kPa以上から0℃で0.6kPa以上の圧力条件下で、連続的にまたは間欠的に減圧反応蒸留することが好ましい。さらに好ましくは、12.6kPaから1.3kPaの圧力条件下で減圧反応蒸留することができる。不活性ガスを流通する場合、不活性ガスの吹き込みノズルと、アンモニアや同伴する水を不活性ガスから回収する冷却トラップとを備え、微加圧から減圧条件下で連続的にまたは間欠的にアンモニアを不活性ガスに同伴し、反応液から分離することができる。さらに、アンモニア分離を促進するため、減圧反応蒸留を不活性ガス流通条件下で行うこともできる。
【0020】
かくして、グリシノニトリルは、ほぼ100%のモル収率で加水分解し、生成するアンモニアの全部または殆どは、反応蒸留法や不活性ガスの流通法で反応液から分離し、冷却回収される。一方、反応液にはグリシンと場合によってはグリシンのアンモニウム塩を含むグリシンの高濃度水溶液として、生成蓄積させることができる。もし、グリシンアミドが残存する場合は、グリシンアミドの加水分解活性をもつ菌体もしくは酵素を追添加することにより、完全にグリシンおよびアンモニアに転換することも可能である。グリシンのアンモニウム塩を含むグリシンの高濃度水溶液からのグリシンの回収は、例えば、反応液から菌体を遠心濾過、膜分離等によって除いた後、グリシンは晶析法、イオン交換法または貧性溶媒による分別沈澱法にて回収することができ、また、アンモニアは一部の水と一緒に蒸発後、蒸留や抽出によって回収することができる。
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0021】
【実施例1】
(1)グリシノニトリルの合成
ホルマリンに等量の青酸をを作用させて、一旦生成したグリコロニトリル水溶液に、過剰量のアンモニア水溶液を添加して30重量%グリシノニトリル水溶液を得た。
(2)菌体の培養
アシネトバクターAK226を、下記の条件で培養した。
(1) 培地
フマル酸 1.0重量%
肉エキス 1.0
ペプトン 1.0
食塩 0.1
ε−カプロラクタム 0.3
リン酸第一カリウム 0.2
硫酸マグネシウム・7水塩 0.02
塩化アンモニウム 0.1
硫酸第二鉄・7水塩 0.003
塩化マンガン・4水塩 0.002
塩化コバルト・6水塩 0.002
pH 7.5
(2) 培養条件
30℃/1日
【0022】
(3)グリシノニトリルの加水分解
菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸留水等で洗浄したものを反応に用いた。撹拌器の付いた1000mlの恒温ジャケット槽型3つ口セパラブルフラスコに、底部まで届く窒素ガスの吹き込みノズル、ドライアイストラップに接続したミストセパレーター、温度計およびサンプリング管を備えた。このセパラブルフラスコに乾燥菌体量として695mgを仕込み、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlと蒸留水170mlを調合した。ガス流量計を用いて少量の窒素ガスを1時間当たり3リットルフィードしながら、30℃にて反応を開始した。反応開始1時間後、この反応液を液体クロマトグラフィー法で分析し、グリシノニトリルはなくなり、グリシンが定量的に生成していた。そこで、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlを追加添加した。この操作をさらに3回繰り返し、合計5時間反応を行った。
【0023】
ドライアイストラップには固体が15g回収された。固体を50mlの水にとかしネスラー法により定量したところ、アンモニアが14g回収されていた。反応液は300g回収された。この反応液のうち2gを用い、生成したアンモニアをネスラー法により定量し、原料のグリシノニトリルと生成したグリシンは、液体クロマトグラフィー法で分析した。グリシノニトリルはなくなり、グリシンが定量的に生成しトレース量のアンモニアが残存していた。乾燥菌体当たりのグリシンの生成量は87g/g乾燥菌体であり、グリシンの生成活性は17g/g・Hrであった。残りの298gは遠心濾過し菌体を取り除いた後、沸騰下で1/10に濃縮して放冷し、56gのグリシンを晶析回収した。
【0024】
【実施例2】
実施例1で合成した30重量%グリシノニトリル水溶液を用い、菌体と反応方式を代えて実施した。
(1)菌体の培養
ロドコッカス マリスBP−479−9を、下記の条件で培養した。
(1) 培地
フマル酸 1.0重量%
肉エキス 1.0
ペプトン 1.0
食塩 0.1
ε−カプロラクタム 0.3
リン酸第一カリウム 0.2
硫酸マグネシウム・7水塩 0.02
塩化アンモニウム 0.1
硫酸第二鉄・7水塩 0.003
塩化マンガン・4水塩 0.002
塩化コバルト・6水塩 0.002
pH 7.5
(2) 培養条件
30℃/1日
【0025】
(2)グリシノニトリルの加水分解
菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸留水等で洗浄したものを反応に用いた。撹拌器の付いた1000mlの恒温ジャケット槽型3つ口セパラブルフラスコに、ドライアイストラップを経て減圧ポンプに接続した単管型の蒸留塔、圧力センサー、温度計および液送ポンプに接続したサンプリング管を備えた。このセパラブルフラスコに乾燥菌体量として855mgを仕込み、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlと蒸留水170mlを調合した。減圧ポンプでフラスコ内の圧力を10kPaに調整し、30℃にて反応を開始した。反応開始1時間後、この反応液を液体クロマトグラフィー法で分析したところ、グリシノニトリルが消失し、グリシンが定量的に生成していた。そこで、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlを追加添加した。1時間毎にこの操作をさらに3回繰り返し、合計5時間反応を行った。
【0026】
ドライアイストラップには固体が20g回収された。固体を50mlの水にとかしネスラー法により定量したところ、アンモニアが14g回収されていた。反応液は300g回収された。この反応液のうち2gを用い、生成したアンモニアをネスラー法により定量し、原料のグリシノニトリルと生成したグリシンは液体クロマトグラフィー法で分析した。グリシノニトリルはなくなり、グリシンが定量的に生成し、トレース量のアンモニアが残存していた。乾燥菌体当たりのグリシンの生成量は70g/g乾燥菌体であり、グリシンの生成活性は14g/g・Hrであった。残りの298gは遠心濾過し菌体を取り除いた後、沸騰下で1/10に濃縮して放冷し、57gのグリシンを晶析回収した。
【0027】
【実施例3】
実施例1で合成した30重量%グリシノニトリル水溶液を用い、菌体と反応方式を代えて実施した。
(1)菌体の培養
アシネトバクターAK227を、下記の条件で培養した。
(1) 培地
フマル酸 1.0重量%
肉エキス 1.0
ペプトン 1.0
食塩 0.1
イソブチロニトリル 0.3
リン酸第一カリウム 0.2
硫酸マグネシウム・7水塩 0.02
塩化アンモニウム 0.1
硫酸第二鉄・7水塩 0.003
塩化マンガン・4水塩 0.002
塩化コバルト・6水塩 0.002
pH 7.5
(2) 培養条件
30℃/1日
【0028】
(2)グリシノニトリルの加水分解
菌体は、得られた培養液から遠心分離により集菌し、蒸留水等で洗浄したものを反応に用いた。撹拌器の付いた1000mlの恒温ジャケット槽型3つ口セパラブルフラスコに、底部まで届く窒素ガスの吹き込みノズル、ドライアイストラップを経て減圧ポンプに接続した単管型の蒸留塔、圧力センサー、温度計および液送ポンプに接続したサンプリング管を備えた。このセパラブルフラスコに乾燥菌体量として672mgを仕込み、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlと蒸留水170mlを調合した。ガス流量計を用いて少量の窒素ガスを1時間当たり3リットルフィードしながら、減圧ポンプでフラスコ内の圧力を10kPaに調整し、30℃にて反応を開始した。反応開始1時間後、この反応液を液体クロマトグラフィー法で分析したところ、グリシノニトリルが消失し、グリシンが定量的に生成していた。そこで、基質の30重量%グリシノニトリル水溶液30mlを追加添加した。2時間毎にこの操作をさらに3回繰り返し、合計5時間反応を行った。
【0029】
ドライアイストラップには固体が25g回収された。固体を50mlの水にとかしネスラー法により定量したところ、アンモニアが14g回収されていた。反応液は295g回収された。この反応液のうち2gを用い、生成したアンモニアをネスラー法により定量し、原料のグリシノニトリルと生成したグリシンは、液体クロマトグラフィー法で分析した。グリシノニトリルはなくなり、グリシンが定量的に生成し、トレース量のアンモニアが残存していた。乾燥菌体当たりのグリシンの生成量は90g/乾燥菌体であり、グリシンの生成活性は18g/g・Hrであった。残りの293gは遠心濾過し菌体を取り除いた後、沸騰下で1/10に濃縮して放冷し、57gのグリシンを晶析回収した。
【0030】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、pHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液を添加せず、減圧反応蒸留や不活性ガスを流通しながら、生成するアンモニアを反応と同時に系外に分離する反応条件下で、ホルムアルデヒド、青酸、およびアンモニアとの反応で得られるグリシノニトリルの水溶液に微生物、好ましくはアシネトバクター(Accinetobacter)属や、ロドコッカス(Rhodococcus )属に属する微生物を作用させることにより、乾燥菌体当たり、かつ単位時間当たり高活性であって菌体や培地の多量廃棄を伴わず、反応液のpHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加や廃棄を伴わず、グリシンとアンモニアが定量的に生成し、これらの分解および消費を伴わなず、グリシンとアンモニアを別々に回収することができる効果を有する。
Claims (4)
- pHを調整するための酸、アルカリまたは緩衝液の添加をしない反応条件下で、グリシノニトリルの水溶液に微生物としてアシネトバクターsp.AK226株(微工研菌寄第8271号)、アシネトバクターsp.AK227株(微工研菌寄第8272号)又はロドコッカス・マリスBP−479−9(FERMBP−5219)を作用させながら、反応液中に生成するグリシンとアンモニアを反応液から別々に分離することを特徴とするグリシンの製造方法。
- アンモニアを反応液から分離する方法が反応蒸留であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 反応蒸留を減圧下で行うことを特徴とする請求項2記載の方法。
- 反応蒸留を不活性ガスの存在下で行うことを特徴とする請求項2または3記載の方法。
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