JP2001334090A - ミシンの回転釜装置 - Google Patents

ミシンの回転釜装置

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JP2001334090A
JP2001334090A JP2000158490A JP2000158490A JP2001334090A JP 2001334090 A JP2001334090 A JP 2001334090A JP 2000158490 A JP2000158490 A JP 2000158490A JP 2000158490 A JP2000158490 A JP 2000158490A JP 2001334090 A JP2001334090 A JP 2001334090A
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hook
hook device
rotary hook
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Seiho O
性宝 応
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Juki Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摩擦接触部分の無給油化を図ることができ、
同時に、耐久性及び耐摩耗性に優れたミシンの回転釜装
置を提供すること。また、外釜または内釜が回転して上
糸ループと下糸とをスムーズに絡めて縫い目を形成でき
るミシンの回転釜装置を提供すること。 【解決手段】 外釜2と内釜3とが互いに回転自在に嵌
合され、これら外釜2及び内釜3は、該外釜2の回転に
伴い、互いに摩擦しながら接触する摺動面を備えるミシ
ンの回転釜装置において、外釜2の摺動面にWPC処理
を施し、該摺動面に微小凹凸部250,251を複数形
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに回転自在に
嵌合した外釜と内釜とを備えたミシンの回転釜装置に関
し、特に、高速回転する工業用ミシンに好適なミシンの
回転釜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高速、高荷重で、スライド移動や
回転移動等をする部品どうしが摩擦しながら接触する部
分(以下、摩擦接触部分)を多く持つ工業用ミシンの駆
動部として、例えば回転釜装置がある。釜装置は一般的
に回転自在に嵌合された外釜と内釜とを備えており、例
えば、上糸ループをすくい取る剣先を有する外釜が回転
して上糸ループ内に内釜をくぐらせることにより、内釜
内のボビンから導出される下糸と絡ませて縫い目を形成
する構成となっている。上記外釜と内釜は金属材料同士
の組み合わせが一般的であり、これらを構成する接触金
属材料同士の焼き付きや異常摩耗(例えば、フレッチン
グ摩耗)が発生しないように潤滑油を供給する構成とす
る場合が多い。
【0003】工業用ミシンの摩擦接触部分へ潤滑油を供
給するときには、潤滑油は摩擦接触部分での摩擦に伴う
発熱によっても劣化するので、給油手段を設けて潤滑油
を強制的に供給する必要がある。強制給油手段として
は、例えば、摩擦接触部分へと潤滑油を供給するための
配油経路と、潤滑油を貯めておくためのオイルパンと、
潤滑油を汲み上げるためのポンプなどを備える。このよ
うな構成によれば、ポンプによりオイルパンから潤滑油
を汲み上げるとともに配油経路を経由して、各摩擦接触
部分に潤滑油を循環させて供給することができる。
【0004】ところで、摩擦接触部分(釜装置では、外
釜と内釜とが互いに接触する部分)に潤滑油が供給され
る構成のミシンの回転釜装置においては、例えば、潤滑
油の供給量が多くなってしまった場合には、内釜に接触
しながら高速で動作する外釜の回転運動の際に、潤滑油
が周辺に飛び散ったりして、内釜内のボビンから繰り出
される下糸や外釜の回転により下糸と絡める上糸を汚す
可能性が皆無であるとはいえなかった。また逆に、潤滑
油の供給量が少なくなってしまった場合には、摩擦接触
部分の異常摩耗や焼き付きが生じる可能性が皆無である
とはいえなかった。さらに、上述のように、摩擦接触部
分に潤滑油を供給するための給油手段を備えるものとす
ると、ミシンの回転釜装置が装着されたミシンの部品点
数が増加することになり、製造負荷の増加やコストアッ
プにつながるばかりでなく、ミシンの重量の増加にもつ
ながることになり、ミシンの回転釜装置における摩擦接
触部分、外釜と内釜とが接触する部分の無給油化が要請
されていた。そこで、無給油化を図るために、摩擦接触
部分の摩擦面となる金属材料表面にコーティング処理
(例えば、TiN、DLC等のセラミックス皮膜と、潤
滑用のMoS2やテフロン(登録商標)コーティング)
を施す構成とする試みや、含油焼結合金材や耐摩耗性樹
脂材料を用いた構成とする試みがなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記材
料による金属材料表面への前記コーティングは、長期間
の使用により、コーティングが摩耗したり剥がれたりし
て効果を失ってしまう恐れがあった。また、従来の耐摩
耗性樹脂材料は一般に熱膨張係数が大きいために、スラ
イド移動や回転移動等に伴って発生する熱による変形が
大きくなってしまう場合があるとともに、従来の耐摩耗
性樹脂材料は、一般に、十分な寸法精度を得るために加
工上の工夫を要することが多いとともに、摩耗し易いも
のであった。従って、以上のように、工業用ミシンの摩
擦摺動部分の無給油化を、十分に図ることはできていな
かった。さらにまた、上記のような回転釜装置におい
て、外釜が高速回転した際に、スムーズに上糸ループと
下糸とが絡み合うようなミシンの回転釜装置であればよ
り好適である。
【0006】本発明は、前記事情に鑑みてなされたもの
であり、摩擦接触部分の無給油化を図ることができ、同
時に、耐久性及び耐摩耗性に優れたミシンの回転釜装置
を提供することである。また、外釜または内釜が回転し
て上糸ループと下糸とをスムーズに絡めて縫い目を形成
できるミシンの回転釜装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
め、請求項1記載の発明は、外釜と内釜とが互いに回転
自在に嵌合され、これら外釜及び内釜は、該外釜及び内
釜の少なくとも一方の回転に伴い、互いに摩擦しながら
接触する摺動面を備えるミシンの回転釜装置において、
例えば、図6に示すように、前記内釜3の摺動面と外釜
2の摺動面のうち少なくとも一方の摺動面(例えば表面
25A)にWPC処理が施され微小凹凸部(250,2
51)が複数形成されていることを特徴とする。
【0008】ここで、互いに回転自在に嵌合された外釜
と内釜とは、固定的である一方に対して、他方が回転自
在となるように構成されているものである。例えば、周
方向に回転可能な外釜の内側に、ミシン本体に固定的に
取り付けられる内釜を収納し、この内釜の外周面に内周
面が沿って外釜が回転する構成などが挙げられる。ま
た、WPC処理される摺動面を備えた前記外釜及び内釜
のうちの少なくとも一方の材料として、例えば、銅材、
鋼材等を用いることができ、鋼材としては、ニッケル、
クロム、モリブデン鋼やクロムモリブデン鋼、さらに、
これら鋼材に浸炭窒化したもの等を使用することができ
る。
【0009】また、WPC(Wide Peaning Cleaning)
処理とは、金属の表面に大きさ数十から数百μmの特殊
なショット用ボールを高速(噴射速度数十から数百m/
sec)で噴射させ、A3変態点以上の温度域への急
熱、急冷を瞬時に繰り返して熱処理効果、鍛錬効果の加
工強化を行い、金属表面層の残留オーステナイトのマル
テンサイト化や、再結晶、組織の微細化を行うものであ
る。これにより金属表面には高硬度で靱性に富んだ微細
な組織が形成されるとともに金属表面部分の内部圧縮残
留応力が高められる。このWPC処理は、ショットピー
ニングで使用されているショットよりも微細なショット
を高速で打ちつけることにより、組織の変化、つまり熱
処理効果を出せるものである。目的によりショット用ボ
ールの材質はセラミックスと金属を使用する。また噴射
時間も目的により数sec〜数百secの範囲に選択で
きる。このようなWPC処理された表面、つまり摺動面
には、バリなどが除去されてなめらかに複数の微小凹凸
部が形成された状態となり、摺動面は耐荷重性に優れた
ものとなる。なお、以下の請求項に記載されるWPC処
理も同様のものである。
【0010】請求項1記載の発明によれば、互いに回転
自在に嵌合された外釜と内釜のうち少なくとも一方の摺
動面にWPC処理が施されて微小凹凸部が形成されてい
るので、WPC処理された摺動面の摩擦係数が小さくな
るとともに該摺動面の強度が上がり耐荷重性が向上し、
前記摺動面と他方の摺動面とが接触する部分において摩
擦による温度上昇がしにくくなり変形しにくい。また、
前記摺動面のWPC処理加工時に寸法の変化がほとんど
なくなる。また、WPC処理された摺動面の摩擦係数が
小さいために、外釜と内釜の回転運動において摩擦接触
しながら行うときの摩耗量を低減できるとともに、発熱
も少なく抑えることができる。従って、強制給油を必要
としないとともに、かつ摺動面が接触する部分の耐摩耗
性や耐焼き付き性、耐久性を向上することができ、ミシ
ンの回転釜装置の無給油化を図ることができる。さら
に、前記摺動面が接触する部分には潤滑油などにの強制
給油が不要であるので、ミシンに潤滑油を供給するため
の強制給油手段(例えば、配油経路、オイルパン、ポン
プなど)を設ける必要がなく、ミシンの回転釜装置が備
えるミシン自体の軽量化をも図ることができる。
【0011】また、さらに摺動面が接触する部分に潤滑
油などを強制的に給油する必要がないので、従来と異な
りDLCコーティング部品を用いた際のDLCコーティ
ング部品の摩耗分や、CFRP部品を用いた場合のCF
RP部品の摩耗分が、強制給油された油と混ざって黒汁
となることがない。つまり、本回転釜装置によって縒ら
れる上糸や下糸に油がついても、黒いシミとなって残る
ことがなく、汚れが目立たない。また、汚れた際にも油
汚れだけ取ればよく汚れ取りの作業が容易となる。な
お、本発明では、WPC処理により前記摺動面に凹部の
微細油溜まりが形成されることになり、これにより一層
の無給油化が図られている。つまり、摺動面に多数の微
小凹部が形成されているので、糸からの油等が凹部に含
浸して保持されることになり、さらに耐摩耗性や耐焼き
付き性を向上することができる。また、潤滑油を強制供
給するための強制給油手段が不要であるので、ミシンの
回転釜装置が装着されるミシン自体の部品点数を削減で
き、ミシンの製造負荷を低減することができるととも
に、製造コスト削減に寄与することができる。
【0012】また、上記発明において、摩擦しながら互
いに接触する外釜と内釜の両摺動面にWPC処理を施
し、これら両摺動面にそれぞれ微小凹凸部が複数形成さ
れた構成とすれば、接触する摺動面どうしの接触面積が
さらに小さくなり、接触する両摺動面のうち一方の摺動
面をWPC処理した構成よりもさらに摩擦係数が小さく
なる。これにより、接触部分の摩擦係数が小さくなった
強制給油が必要ない接触構造を備えたミシンの回転釜装
置となる。
【0013】請求項2記載の発明は、請求項1記載のミ
シンの回転釜装置において、例えば、図6に示すよう
に、前記他方の摺動面32Aはポリイミド樹脂36で被
覆されていることを特徴とする。
【0014】前記ポリイミド樹脂は、耐熱性、耐摩耗性
に優れたものである。また、このポリイミド樹脂により
被覆される前記他方の摺動面に複数の微小凹凸部が形成
されていてもよい、このように、複数の微小凹凸部が形
成された他方の摺動面が前記ポリイミド樹脂に被覆され
る構成とすれば、一方の摺動面との接触面積が小さくな
り、一方の摺動面と他方の摺動面とが摩擦接触した際の
摩擦係数を一層小さくすることができる。
【0015】請求項2記載の発明によれば、請求項1記
載と同様の効果を得ることができるとともに、内釜の摺
動面と外釜の摺動面のうち少なくとも一方の摺動面にW
PC処理により微小凹凸部が複数形成され、この一方の
摺動面と摺動する他方の摺動面がポリイミド樹脂で被覆
されているので、WPC処理が施された一方の摺動面と
接触する他方の摺動面は、TiN、DLC等のセラミッ
クス皮膜や、潤滑用のMoS2やテフロンコーティング
等を施した構成よりも耐熱性、耐摩耗性に優れたものな
り、前記外釜と内釜のいずれか一方が他方に対して回転
した際に、長時間耐えうることができる。
【0016】請求項3記載の発明は、請求項1記載のミ
シンの回転釜装置において、前記一方の摺動面は内釜の
摺動面であり、前記他方の摺動面は外釜の摺動面であ
り、前記外釜全体はポリイミド樹脂により成形されてい
ることを特徴とする。
【0017】請求項3記載の発明によれば、請求項1記
載の発明と同様の効果を得ることができるとともに、前
記外釜全体がポリイミド樹脂により成形されているの
で、外釜を全体を鋼材により成形した場合と比べて、外
釜の軽量化を図ることができる。したがって、互いの摺
動面どうしが摩擦接触する部分において、外釜全体を鋼
材によりなる構成としたものに比べて、外釜の摺動面に
かかる応力が低減され、摺動面どうしの摩擦係数の減少
化が図られ、摩擦接触部分の温度を低減させることがで
きるとともに、耐摩耗性の低減も図ることができる。し
たがって、ミシンの回転釜装置自体の軽量化及び耐久性
の向上を図ることができる。
【0018】請求項4記載の発明は、請求項2または3
記載のミシンの回転釜装置において、例えば図6に示す
ように、ポリイミド樹脂36は5〜40%の固形潤滑剤
(油とともに符号28で示す)を含有することを特徴と
する。
【0019】固形潤滑剤として、例えば、炭素性繊維、
グラファイド、二硫化モリブデン(MoS2)、テフロ
ンなどが挙げられる。ポリイミド樹脂に前記固定潤滑剤
を含有させることにより摩擦接触部分における摩擦力を
低減することができるが、その含有率が5%よりも少な
い場合は潤滑性は変わらず摩擦力を低減することはでき
ず、また、その含有率が40%よりも多い場合、ポリイ
ミド樹脂の成形性が悪くなり、ポリイミド樹脂と固定潤
滑剤とを一体的に成形性することができなくなる。
【0020】よって、請求項4記載の発明によれば、請
求項2または3と同様の効果を得ることができるととも
に、ポリイミド樹脂は5〜40%の固形潤滑剤を含有す
るので、前記ポリイミド樹脂の成形性を低下させること
なく、該ポリイミド樹脂と固定潤滑剤とを一体的に成形
でき、摺動面どうしの接触により生じる摩擦係数の低減
を図ることができる。
【0021】請求項5記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの回転釜装置において、例えば図
6に示すように、ポリイミド樹脂36は1〜3wt%の
油(例えば、固定潤滑剤とともに符号28で示す)を含
有することを特徴とする。
【0022】請求項5記載の発明によれば、請求項2〜
4のいずれかと同様の効果を得ることができるととも
に、ポリイミド樹脂は1〜3wt%の油を含有している
ので、WPC処理が施され、複数の微小凹凸部が形成さ
れた前記一方の摺動面と摩擦接触する他方の摺動面のポ
リイミド樹脂部分との接触部分において、前記一方の摺
動面の前記微小凹凸部を構成する凹部に、ポリイミド樹
脂の含有する油が溜まり、この油が潤滑剤となって摺動
面どうしの接触部分の摩擦係数の低減化を図ることがで
きる。
【0023】請求項6記載の発明は、請求項1〜5のい
ずれかに記載のミシンの回転釜装置において、例えば図
6に示すように、前記WPC処理により摺動面に形成さ
れた複数の微小凹凸部250,251を構成する凹部2
50の深さが0.1μm〜2.0μmであることを特徴
とする。
【0024】前記凹部の深さの下限0.1μmは、凹部
内に糸からの油や、請求項5では、ポリイミド樹脂に含
有される油などを好適に保持できる値である。また、上
限2.0μmは、WPC処理される側の強度や処理にか
かるコスト、さらにWPC処理された摺動面と接触する
摺動面側の強度(WPC処理された摺動面と接触する摺
動面と、WPC処理された摺動面との接触面積が小さく
なることで、WPCされた摺動面と接触する摺動面を備
えた対向材を削る可能性)を鑑みた値である。
【0025】請求項6記載の発明によれば、請求項1〜
5のいずれかと同様の効果を得ることができるととも
に、前記WPC処理により摺動面に形成された複数の微
小凹凸部を構成する凹部の深さが0.1μm〜2.0μ
mであるので、WPC処理費用や形成された接触部分の
費用とを鑑みて好適な構成の接触部分を有するミシンの
回転釜装置の構成とすることができる。
【0026】請求項7記載の発明は、互いに回転自在に
嵌合された内釜と外釜と、前記外釜に支持されて前記内
釜を保持する内釜押さえとを備えるミシンの回転釜装置
において、前記内釜と摩擦接触する前記押さえ部の摺動
面に、WPC処理により微小凹凸部が複数形成されてい
ることを特徴とする。
【0027】請求項7記載の発明によれば、前記内釜と
摺接する内釜押さえ部の摺動面にWPC処理により微小
凹凸部が複数形成されているので、前記内釜押さえ部の
摺動面において請求項1記載の発明と同様の効果を得る
ことができる。つまり、WPC処理された内釜押さえの
摺動面の摩擦係数が小さくなるとともに該摺動面の強度
が上がり耐荷重性が向上し、前記摺動面と内釜の摺動面
とが接触する部分において摩擦による温度上昇がしにく
くなり変形しにくくなるとともに、前記摺動面のWPC
処理加工時に寸法の変化がほとんどなくなる。また、W
PC処理された摺動面の摩擦係数が小さいために、内釜
押さえと内釜の摺動面の摩耗量を低減できるとともに、
発熱も少なく抑えることができる。
【0028】請求項8記載の発明は、互いに回転自在に
嵌合された外釜及び内釜と、内釜の内部に装着され、下
糸が巻き付けられるボビンを内部に収容するボビンケー
スとを備え、前記外釜と内釜のうち一方が回転すること
により、上糸ループ内に内釜をくぐらせて上糸ループと
前記内釜内のボビンから導出された下糸とを絡めて縫い
目を形成するミシンの回転釜装置において、前記上糸ル
ープと下糸のうち少なくとも一方が摺動する糸摺動面を
有し、この糸摺動面にWPC処理により微小凹凸部が複
数形成されていることを特徴とする。
【0029】請求項8記載の発明によれば、上糸ループ
に下糸を絡めて縫い目を形成する際に、前記上糸ループ
と下糸ループのうち少なくとも一方が摺動する糸摺動面
にWPC処理がされているので、前記糸摺動面の摩擦係
数が小さくなり、該糸摺動面を前記上糸ループと下糸ル
ープのうち少なくとも一方が摺動しても円滑に摺動する
ことができる。
【0030】請求項9記載の発明は、請求項8記載のミ
シンの回転釜装置において、例えば、前記糸摺動面は、
前記上糸ループ内に内釜をくぐらせる際に上糸ループが
渡るボビンケースの外側面であることを特徴とする。請
求項9記載の発明によれば、前記外側面の糸の滑りが良
くなり、抵抗も少なくなる。よって、前記上糸ループ内
に内釜をくぐらせる際にボビンケースの外側面を上糸ル
ープが円滑に渡り、これにより下糸と絡んで綺麗な縫い
目を形成することができる。
【0031】請求項10記載の発明は、請求項8記載の
ミシンの回転釜装置において、例えば、昇降駆動される
針に保持された上糸を引っ掛ける剣先を備え、前記糸摺
動面は、前記剣先の表面であることを特徴とする。請求
項10記載の発明によれば、前記剣先での糸の滑りが良
くなり、前記剣先で上糸を引っ掛ける際や、剣先から上
糸が外れる際等、剣先に上糸が円滑に摺動することにな
り、これにより回転釜装置の回転により上糸ループに下
糸をスムーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げることが
できる。
【0032】請求項11記載の発明は、請求項8記載の
ミシンの回転釜装置において、前記外釜に支持されて内
釜を保持する内釜押さえを備え、前記糸摺動面は、前記
内釜押さえの糸逃げ部の表面であることを特徴とする。
請求項11記載の発明によれば、内釜押さえの糸逃げ部
の表面を上糸が摺動した際に円滑に摺動することにな
り、回転釜装置が回転した際、上糸ループに下糸をスム
ーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げることができる。
【0033】請求項12記載の発明は、請求項8に記載
のミシンの回転釜装置において、前記外釜が内釜に対し
て回転するように構成され、前記内釜には、前記外釜が
回転した際、前記内釜を潜る上糸ループを、表面上を摺
動させることで下糸が絡まる位置に案内する内釜つばが
設けられ、前記糸摺動面は、前記内釜つばの表面である
ことを特徴とする。請求項12記載の発明によれば、内
釜つばの表面の摩擦係数が減少し、該表面を糸が円滑に
摺動することになり、回転釜装置が回転した際、上糸ル
ープに下糸をスムーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げ
ることができる。
【0034】請求項13記載の発明は、請求項1〜12
のいずれかに記載のミシンの回転釜装置において、WP
C処理後の前記摺動面の表面硬度はHV700〜HV1
100の範囲であることを特徴とする。
【0035】請求項13記載の発明によれば、請求項1
〜12のいずれかに記載と同様の効果を得ることができ
るとともに、WPC処理後の前記摺動面の表面硬度はH
V700〜HV1100の範囲であるので、好適な接触
構造となる。つまり、表面硬度が低いことで相手方と接
触した際に損傷することがなく、また表面硬度が高すぎ
ることで接触する相手方の摺動面を損傷させることがな
く、さらに、WPC処理後の表面硬度を必要以上に高く
し過ぎることによって処理自体のコストがかさむことが
ない。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図8を参照して本発
明を適用したミシンの回転釜装置の実施の形態を詳細に
説明する。 〔第1の実施の形態〕まず、構成を説明する。図1〜図
4に示すように、回転釜装置1は、ミシンフレームのベ
ッド部の下部に回転自在に取り付けられる外釜2と、外
釜2に収納され、該外釜2に対し相対回転可能な内釜3
と、ボビンケース4等とから構成されている。内釜3は
ベッド部に対して固定的であり、外釜2が内釜3の周囲
を回転するようになっている。また、図示しない下糸が
巻回されているボビンが回転自在にボビンケース4に装
着されている。ボビンを装着したボビンケース4は内釜
3に固定的に収納されている。
【0037】外釜2は、図1、図2(a)及び図4に示
すように、ミシンのベッド部内において、図示しない釜
軸の先端部に固定されている。この外釜2は、前記釜軸
の先端部の外周に嵌合される円柱状の基部21と、この
基部の先端側に連設されたほぼ円筒形の外釜本体22と
を有しており、前記基部21は、前記釜軸の先端部が比
較的密に挿入されうる図示しない中心孔を有している。
この基部21は釜軸と同一軸心となるように結合されて
おり、釜軸の回転により外釜2が釜軸と一体的に回転す
る。前記外釜本体22は、前記基部21の先端に同心的
に突設され基部21より大径の基板221と、この基板
221の先端側に連設されたほぼ円筒形の外周壁222
と、外周壁222に設けられ回転した際に上糸を引っ掛
ける剣先223とを有している。また、この外釜本体2
2の外周壁222の上面(基部の軸方向側の端面)の一
部(図2の222a部分)には、内釜おさえ23がネジ
24により固定されている。図4参照)。外周壁222
の内周面222aには、該外釜2に固定された内釜おさ
え23の内側面に形成された切り欠き部232ととも
に、ほぼ円環状のガイド溝たる軌溝25を形成する切り
欠き部251が形成されている。軌溝25は、後述する
内釜3の外周縁部に設けられた軌条32を摺動自在に挟
んだ状態となるように溝状に形成されている。詳細に
は、外釜2の切り欠き部251が軌溝25の一方の側壁
と軌溝25の底部の半分を構成し、内釜押さえ23の切
り欠き部232が軌溝25の他方の側壁と、一端が切り
欠き部251の端部に接続される軌溝25の底部の半分
を構成している。この軌条32が軌溝25のガイドとな
って外釜2が内釜3に対して回転する。
【0038】内釜おさえ23には、回転方向に沿って設
けられた剣先223に向かい合うように離間して設けら
れた糸逃げ部231が設けられている。この糸逃げ部2
31は、剣先223から外れた上糸を保持し、糸締めさ
れる位置まで案内するものである。つまり、糸逃げ部2
31は、外釜2の回転により剣先223から外れた上糸
を、図示しない天秤による上糸引き上げに伴って係合
し、天秤の引き上げにより上糸を係合した状態で縮小さ
せながら、所定の縫い位置近くまで移動させて外すこと
で糸締めされて縫い目を形成させる。つまり、糸逃げ部
231表面を上糸が摺動する。
【0039】内釜3は、全体的にほぼ円筒形に形成され
ており、外釜2の内側底面上に設置される底板部31
と、底板部31の外周縁31aから下糸が抜ける部位を
除いて周方向に突出して設けられ、前記軌溝25内に嵌
合し、かつ相対的に円周方向に摺動しうるほぼ円環状の
ガイド突起たる軌条32と、底板部31の周縁部から上
方(外釜と反対側)に立設された周壁33の一部の先端
部から外側に折り曲げられるように設けられたつば部3
4等を備える。軌条32は外周縁31aにおいて回転軸
方向のほぼ中央付近に設けられている。これら軌溝25
及び軌条32とが嵌合して、外釜2に内釜3が遊嵌保持
された状態となっている。また、前記底板部31の中央
部には、内釜3の軸方向に延在する支持ピン35が同軸
的に突設されている。この支持ピン35には、下糸を巻
回した図示しないボビンが装着されるようになってい
る。
【0040】また、つば部34は、ミシンの回転釜装置
1が駆動した際に、上糸が表面を摺動し、上糸が所定の
位置で下糸と絡み合うように案内するものである。つば
部34では、外釜2の回転方向の前側端部が糸逃げ部3
41となっており、外釜2の回転方向の後ろ側端部34
2は、内釜3の周壁33の外面に接続されている。つま
り、つば部34は平面視して後ろ側端部342から先端
側の糸逃げ部341側に向かって徐々に内釜3の外方に
張り出す構成となっている。これにより、外釜2が回
転、つまり剣先233が回転すると、剣先233により
引っ掛けられた上糸ループの先端側が、内釜の下端部を
潜る過程で、つば部34の縁部に沿って、後ろ側端部3
42側から糸逃げ部341側に案内されることになり、
つば部34先端の糸逃げ部341において外れて縫い目
が形成されるものである。
【0041】ボビンケース4は、内釜3内のボビンに被
せるように、内釜3に取り付けられ、周壁には、内部の
ボビンから下糸を外方に導出する糸導出口41が設けら
れている。ボビンケース4の外面42は、中央部から周
縁部に向かって下るようにアールが付けられており、ミ
シンの回転釜装置1が駆動した際に、上糸が摺動する。
【0042】このようなミシンの回転釜装置1では、図
示しない針の昇降動に連動して、外釜2が回転すること
で剣先223が内釜3の周囲を回転する。これにより、
針が保持する上糸ループは剣先223に引っ掛けられ、
剣先223が内釜3周囲に沿って回転することで上糸ル
ープ内に内釜3が通され、剣先223から内釜押さえ2
3の糸逃げ部231に移動して該糸逃げ部231により
所定の位置に案内されて内釜3内の下糸に絡み綺麗な縫
い目が形成される。その際、上糸ループは内釜3のつば
部34表面及びボビンケース4の外面42を摺動するこ
とで所定の位置に案内される。
【0043】次に、ミシンの回転釜装置1において、外
釜2、内釜3及び内釜押さえ23のそれぞれの摺動面の
構成を図5及び図6を参照して説明する。これらミシン
の回転釜装置1において、外釜が回転することにより互
いに摩擦しながら接触する摺動面は、図5に示すよう
に、特に、軌溝25及び軌条32を構成する部分により
構成される。外釜2及び内釜おさえ23から成る軌溝2
5の表面25AはWPC処理が施されている(図5参
照)。このWPC処理によって軌溝25の表面25Aに
は複数の微小凹凸部250,251が形成されている
(図6参照)。これら微小凹凸部250,251は表面
のバリ等が除去されたなめらかな波状形状であり、凹部
250の深さは、本実施の形態では0.1μm〜2.0
μmとなっている。なお、外釜2、内釜押さえ32、内
釜3においてポリイミド樹脂36で被覆される部分は、
ニッケル、クロム、モリブデン鋼に浸炭窒化した鋼材に
より成形されている。
【0044】さらに、このようにWPC処理された軌溝
25の表面である摺動面の表面硬度(ビッカース硬さ:
HV)は、約700〜1100の範囲内としている。こ
のWPC処理では、通常のショットピーニングで使用さ
れているショットよりも微細なショット用ボール(ショ
ット用ボールの大きさ:例えば、40μm〜200μ
m)を高速(例えば、噴射速度100m/sec以上)
でWPC処理される面(ここでは摺動面)に打ちつける
ので、内部圧縮応力を高めるだけでなく、針棒表面の組
織変化、つまり、熱処理効果を出すことができる。よっ
て、通常のショットピーニングよりもショットが打ち付
けられた表面硬度は高くなっている。
【0045】また、外釜2及び内釜おさえ23と摩擦し
ながら摺動する摺動面を構成する内釜3の軌条32は、
ポリイミド樹脂36により被覆され(図5参照)、ポリ
イミド樹脂層36の表面部分(軌溝25が接触する面:
実際の摺動面となる)には複数の微小凹凸部360,3
61が形成されている(図6参照)。このポリイミド樹
脂36は、耐熱性、耐摩耗性に優れたものであり、5〜
40%の固形潤滑剤を含有するとともに1〜3wt%の
油を含有していることが望ましい。固形潤滑剤として、
例えば、炭素性繊維、グラファイド、二硫化モリブデン
(MoS2)、テフロンなどが挙げられる。また、ポリ
イミド樹脂36に前記固定潤滑剤を含有させることによ
り摩擦接触部分における摩擦力を低減することができる
が、その含有率が5%よりも少ない場合は潤滑性は変わ
らず摩擦力を低減することはできず、また、その含有率
が40%よりも多い場合、ポリイミド樹脂の成形性が悪
くなり、ポリイミド樹脂と固定潤滑剤とを一体的に成形
性することができなくなる。この点に留意して本実施の
形態では、固形潤滑剤として容積全体の20%のグラフ
ァイト、1wt%の油を含有している。
【0046】また、凹部250,360に糸からの油が
含浸し、この凹部250,360に油が長期的に保持さ
れ耐摩耗性や耐焼き付き性が向上され強制給油を必要と
しない接触部分の構成となっている。また、外釜2と摩
擦接触する内釜3の摺動面を上記固形潤滑剤及び油を含
有するポリイミド樹脂36で被覆しているので、図6に
示すように、外釜2の凹部250やポリイミド樹脂36
の凹部360には、樹脂36に含まれる油及び固形潤滑
剤が保持された状態(図中28で示す)となり、耐摩耗
性や耐熱性の向上が図られたものとなっている。よっ
て、凹部250,360から、外釜2及び内釜押さえ3
2の摺動面(詳細には軌溝25の表面)と内釜3の摺動
面(ポリイミド樹脂36により被覆された軌条32の表
面)に、糸からの油に加えて、ポリイミド樹脂36層か
らの油及び固形潤滑剤28が供給されることになり、摺
動部分における耐摩耗性や耐焼き付き性がさらに向上さ
れる。
【0047】このような構成のミシンの回転釜装置、つ
まり内釜と摩擦接触する外釜の摺動面をWPC処理した
場合のミシンの回転釜装置の耐久性について、図7の耐
久試験結果を示すグラフを参照して説明する。図7は、
ミシンの回転数を4000rpm(釜の回転数8000
rpm)としてミシンの回転釜装置1を駆動させた場合
の外釜の耐久試験の試験結果を示すグラフであり、
(a)は嵌合する内釜に対する外釜の釜方向のガタ推移
を示すグラフ、(b)は、外釜の回転により温度上昇す
る外釜の摺動面の温度推移の結果を示すグラフである。
なお、図7(a)において、グラフAは、摺動面にWP
C処理が施された外釜と、摺動面がポリイミド樹脂によ
り被覆されてなる本実施の形態のミシンの回転釜装置の
外釜の径方向のガタ推移を示し、グラフBは摺動面がW
PC処理されていない外釜と、摺動面がポリイミド樹脂
により被覆されてなるミシンの回転釜装置の外釜の径方
向のガタ推移を示している。また、図7(b)における
グラフCは、摺動面にWPC処理が施された外釜と、摺
動面がポリイミド樹脂により被覆されてなる本実施の形
態のミシンの回転釜装置の外釜の摺動面の温度状態を示
し、グラフDはWPC処理されていない外釜と、摺動面
がポリイミド樹脂により被覆されてなるミシンの回転釜
装置の外釜の摺動面の温度状態を示すものである。ま
た、図7(a)のEはガタの許容値を示すものであり、
図7(b)のFは試験を行う室温を示している。
【0048】これら、図7(a)及び図7(b)に示す
両ミシンの回転釜装置の構造は、外釜と内釜の摺動部分
の構造、特に外釜の摺動面の構造を除き、その他の構成
は同様のものを用いている。
【0049】図7(a)のグラフAで示すように、WP
C処理された摺動面を有する外釜の場合、ミシンを駆動
させ続けてミシンの回転釜装置を120時間回転させ続
けても、内釜の摺動面に対する外釜の径方向のガタ量は
従来のミシンの回転釜装置(摺動面がWPCされていな
い外釜を有するミシンの回転釜装置:グラフB)と比べ
て、小さいものとなっている。例えば、グラフBで示す
ミシンの回転釜装置では90時間連続で回転駆動させた
際に、許容値に達し、さらに駆動させると、駆動時間に
比例して許容値0.24mmを超えガタ量が大きくな
る。これに対し、グラフAで示す本実施の形態のミシン
の回転釜装置では、90時間連続で回転駆動させてもガ
タ量は約2.22mmであり、許容値0.24mm以下
(許容値を超えない)となっている。さらに、90時間
以上駆動させても、許容値0.24mmを超えにくい。
例えば、120時間連続で回転駆動させた場合、従来の
外釜(WPC処理されていない外釜)の径方向のガタ量
が0.3mmであるのに対し、グラフAのWPC処理さ
れた摺動面を有する外釜の径方向のガタ量は約0.23
mmである。つまり、本実施の形態のミシンの回転釜装
置1では、80時間以降はガタ量の上昇率が減少し、良
好な状態(約0.22mm)がキープされている。この
範囲でのガタ量であれば、許容値を下まわり、十分利用
できるものとなる。
【0050】また、図7(b)に示すように、WPCさ
れた外釜(グラフCで示す)とWPCされていない外釜
(グラフDで示す)の摺動面の温度差は、両者とも約7
1時間(外釜摺動面温度:約40℃)まではあまり変化
がないが、約71時間を過ぎると、グラフDに示すよう
に従来の構成の外釜の摺動面の温度は上昇していく。こ
れに対し、グラフCに示す本願のミシンの回転釜装置の
構成では外釜の摺動面は約27.4℃まで下がりそこか
ら略横這い状態となって約71時間経過した際の温度上
昇はない。すなわち本ミシンの回転釜装置の外釜の温度
は、駆動時間が約84時間後に約27.4℃付近まで下
がり、その後、約29℃に保たれている。なお、本ミシ
ンの回転釜装置において、約71時間後から84時間ま
での外釜温度の急降下は、WPC処理により形成された
外釜摺動面の凹部や内釜の凹部に樹脂からの油、固形潤
滑剤(図6の符号28)などが溜まることにより生じる
ものであり、十分に溜まった約84時間後から略一定の
温度(約27.6℃)となり、図では120時間経過し
てもほぼ一定となる。これによりWPC処理された外釜
の摺動面の耐久性がアップしていることは明らかであ
る。
【0051】このように、WPC処理によりなる外釜摺
動面を備えたミシンの回転釜装置の構成によれば、摺動
部分の上昇温度が高くならず、つまりWPC処理されて
いない外釜を備えたミシンの回転釜装置の場合と異な
り、約28℃から上昇することがないため、変形などが
生じることがなく、WPCされていない外釜摺動面を有
するミシンの回転釜装置と比べて耐久性が高いことは明
らかとなっている。
【0052】なお、このようにWPC処理された摺動面
を有する外釜を備えたミシンの回転釜装置によれば、内
釜と摩擦接触する外釜の摺動面が、摩擦係数を小さくす
るためのWPC処理されているので、接触する表面の強
度が上がり耐荷重性が向上するとともに接触部分におい
て摩擦による温度上昇がしにくくなり変形しにくい。ま
た、摺動面の加工時に寸法の変化がほとんどなくなる。
また、WPC処理された摺動面の摩擦係数が小さいため
に、摩耗量を低減できるとともに、発熱も少なく抑える
ことができる。従って、摺動部分の耐摩耗性や耐焼き付
き性を向上することができ、ミシンの無給油化を図るこ
とができる。
【0053】また、外釜2及び内釜おさえ32と、内釜
3との摺動部分、すなわち軌条32とこれに対応して嵌
合する軌溝25との間に、潤滑油などにの強制給油が不
要であるので、ミシンに潤滑油を供給するための強制給
油手段(例えば、配油経路、オイルパン、ポンプなど)
を設ける必要がなく、ミシンの軽量化を図ることができ
る。さらに、外釜2と内釜3との摺動部分に潤滑油など
を強制的に給油する必要がないので、従来と異なりDL
Cコーティング部品を用いた際のDLCコーティング部
品の摩耗分や、CFRP部品を用いた場合のCFRP部
品の摩耗分が、強制強制給油された油と混ざって黒汁と
なることがない。つまり、釜の駆動によって縫製されて
いる布に油がついても、黒いシミとなって残ることがな
く、布汚れが目立たない。また、汚れた際にも油汚れだ
け取ればよく汚れ取りの作業が容易となる。さらに、上
記構成によれば、摺動面には多数の凹部250,360
が形成されているので、上糸からの油、ポリイミド樹脂
からの油や固定潤滑剤等を凹部250,360に含浸さ
せ該凹部250,360に、油、固定潤滑剤等を長期的
に保持させて、さらに耐摩耗性や耐焼き付き性が向上さ
れている。
【0054】上記実施の形態では、互いに回転自在に嵌
合する外釜と内釜を備えたミシンの回転釜装置におい
て、互いに摩擦接触する外釜の摺動面にWPC処理を施
し、内釜の摺動面をポリイミド樹脂で被覆した構成とし
たが、これに限らず、外釜全体をポリイミド樹脂で構成
し、内釜をニッケル、クロム、モリブデン鋼に浸炭窒化
した鋼材で成形し、この内釜の摺動面にWPC処理を施
した構成としてもよい。このように構成すれば、上述し
た第1実施の形態のWPC処理された摺動面を有する外
釜とポリイミド樹脂により被覆された摺動面を有する内
釜の構成による効果を得ることができるのは勿論のこ
と、外釜を鋼材により成形した場合と比べて、外釜の軽
量化を図ることができる。したがって、互いの摺動面ど
うしが摩擦接触する部分において、外釜の摺動面にかか
る応力が低減され、摺動面どうしの摩擦係数の減少化が
図られ、摩擦接触部分の温度を低減させることができる
とともに、耐摩耗性の低減も図ることができ、ミシンの
回転釜装置自体の耐久性の向上を図ることができる。ま
た、ミシンの回転釜装置において、摩擦接触しながら摺
動する外釜と内釜のそれぞれの摺動面にWPC処理を施
した構成としてもよい。これを第2の実施の形態で説明
する。
【0055】<第2の実施の形態>図8は、WPC処理
を施した互いに摩擦しながら接触している内釜と外釜の
それぞれの摺動面の拡大断面図である。なお、この図に
示す摺動面60,70どうしを備えたミシンの回転釜装
置は、互いに摩擦接触する部分を除いて、上述したもの
と同様の構造であるので説明は省略する。つまり、本実
施の形態のミシンの回転釜装置は、互いに回転自在に嵌
合された外釜6と内釜7とを備え、それぞれをニッケ
ル、クロム、モリブデン鋼に浸炭窒化した鋼材で成形さ
れている。そして互いに接触する摺動面61、71にそ
れぞれWPC処理を施すことで、複数の微小凹凸部6
2,63,72,73が形成されている。このように構
成されているので、ミシンの回転釜装置が駆動する際、
つまり、外釜が内釜に対して回転する際に、摩擦接触す
る摺動面どうしの耐久性がWPC処理により向上してい
ることに加えて、外釜6と内釜7との接触面積が小さく
なり、WPC処理されていない外釜と内釜の構造と比べ
て、摩擦係数が小さくなる。したがって、耐久性、耐摩
耗性が向上させることができる。また、互いの摺動面の
複数の微小凹凸部62,63,72,73を構成する凹
部62,72に糸中の油8を溜めることができ、一層、
摩擦係数の低減を図ることができ、ミシンの回転釜装置
の耐久性及び耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0056】また、上記構成のミシンの回転釜装置1に
おいて、内釜押さえ23の、内釜3と摺接する摺動面に
はWPC処理により0.1μm〜2.0μmの微小凹凸
部が複数形成されている。さらに、上記ミシンの回転釜
装置1において、ボビンケース4の外面(外側面)42
に、WPC処理により0.1μm〜2.0μmの微小凹
凸部を複数形成した構成としてもよい。このようにボビ
ンケース4の外面42にWPC処理を施せば、外釜2が
回転して前記内釜内のボビンから導出された下糸とを絡
めて縫い目を形成させるために、内釜3が上糸ループ内
を潜る際に、ボビンケース4の外面42を渡る(摺動す
る)上糸が前記外面42を円滑に摺動して渡り案内され
ることになる。よって、外釜の回転により下糸と絡める
上糸ループを下糸に円滑に絡ませて綺麗な縫い目を形成
することができる。また、上糸を引っ掛ける外釜2の剣
先223の表面に、WPC処理を施し、前記表面に0.
1μm〜2.0μmの微小凹凸部を複数形成した構成と
してもよい。このように構成されていれば、ミシンの回
転釜装置の駆動において縫い目を形成する際に、上糸は
剣先233上を円滑に摺動することになり、前記剣先で
昇降駆動される針に保持された上糸を引っ掛ける際や、
剣先から上糸が外れる際等、剣先で上糸が引っかかるこ
とがなく、回転釜装置の回転により上糸ループに下糸を
スムーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げることができ
る。
【0057】また、外釜に支持されて内釜を保持する内
釜押さえ23の糸逃げ部231の表面に、0.1μm〜
2.0μmの微小凹凸部が複数形成されるようにWPC
処理を施した構成としてもよい。このように構成されて
いれば、回転釜装置が駆動する一連の動作において、内
釜押さえ23の糸逃げ部231の表面を上糸が糸が摺動
した際に円滑に摺動することになり、上糸ループに下糸
をスムーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げることがで
きる。
【0058】さらに、内釜つば34の糸逃げ部の表面に
WPC処理を施し、前記表面に0.1μm〜2.0μm
の微小凹凸部を複数形成した構成としてもよい。このよ
うに構成されていれば、内釜つば34の糸逃げ部表面の
摩擦係数が減少し、該表面を糸が円滑に摺動することに
なり、回転釜装置が回転した際、上糸ループに下糸をス
ムーズに絡ませて縫い目を綺麗に仕上げることができ
る。なお、WPC処理により、糸が摺動し、0.1μm
〜2.0μmの微小凹凸部が複数形成された表面の表面
硬度はHV700〜HV1100の範囲とする。これに
より、表面硬度が低いことで相手方と接触した際に損傷
することがなく、また表面硬度が高すぎることで接触す
る相手方の摺動面を損傷させることがなく、さらに、W
PC処理後の表面硬度を必要以上に高くし過ぎることに
よって処理自体のコストがかさむことがない。なお、本
発明を、ミシンにおいて、一般的に強制給油が行われる
部分を構成する部品に適用すれば、さらに摩擦抵抗が小
さく温度上昇の小さなミシンとすることができる。
【0059】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、外釜と内
釜との摩擦接触部分の無給油化、製造負荷の削減を図る
ことができるとともに耐久性、耐摩耗性に優れたミシン
の回転釜装置となる。また、外釜または内釜が回転して
上糸ループと下糸とを絡めて縫い目を形成する際に、上
糸がスムーズにミシンの回転釜装置を摺動させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施の形態のミシンの回転
釜装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のミシンの回転釜装置を構成する各パーツ
を示す図であり、(a)は外釜の平面図、(b)は内釜
の平面図である。
【図3】図1のミシンの回転釜装置を構成する各パーツ
を示す図であり、(a)は内釜押さえの平面図、(b)
はボビンケースの平面図である。
【図4】図1においてボビンケースを除いたミシンの回
転釜装置の分解図である。
【図5】図1のミシンの回転釜装置において外釜、内釜
押さえ及び内釜とで構成される軌条と軌溝を示す拡大断
面図である。
【図6】互いに接触しながら摺動する外釜と内釜の摺動
部分を示す拡大図である。
【図7】本実施の形態のミシンの回転釜装置と従来のミ
シンの回転釜装置とを比較した耐久試験の結果を示す図
である。
【図8】本発明に係るミシンの回転釜装置の第2の実施
の形態を示す外釜と内釜との摺動部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 ミシンの回転釜装置 2 外釜 3 内釜 4 ボビンケース 23 内釜押さえ 25 軌条 34 内釜つば部 36 ポリイミド樹脂 223 剣先 231 糸逃げ部 250,360 微小凹部 251,361 微小凸部

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外釜と内釜とが互いに回転自在に嵌合さ
    れ、これら外釜及び内釜は、該外釜及び内釜の少なくと
    も一方の回転に伴い、互いに摩擦しながら接触する摺動
    面を備えるミシンの回転釜装置において、 前記内釜の摺動面と外釜の摺動面のうち少なくとも一方
    の摺動面にWPC(Wide Peaning Cleaning)処理が施
    され微小凹凸部が複数形成されていることを特徴とする
    ミシンの回転釜装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のミシンの回転釜装置にお
    いて、 前記他方の摺動面はポリイミド樹脂で被覆されているこ
    とを特徴とするミシンの回転釜装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のミシンの回転釜装置にお
    いて、 前記一方の摺動面は内釜の摺動面であり、前記他方の摺
    動面は外釜の摺動面であり、 前記外釜全体はポリイミド樹脂により成形されているこ
    とを特徴とするミシンの回転釜装置。
  4. 【請求項4】 請求項2または3記載のミシンの回転釜
    装置において、 ポリイミド樹脂は5〜40%の固形潤滑剤を含有するこ
    とを特徴とするミシンの回転釜装置。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれかに記載のミシン
    の回転釜装置において、 ポリイミド樹脂は1〜3wt%の油を含有することを特
    徴とするミシンの回転釜装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のミシン
    の回転釜装置において、 前記WPC処理により摺動面に形成された複数の微小凹
    凸部を構成する凹部の深さが0.1μm〜2.0μmで
    あることを特徴とするミシンの回転釜装置。
  7. 【請求項7】 互いに回転自在に嵌合された内釜と外釜
    と、前記外釜に支持されて前記内釜を保持する内釜おさ
    えとを備えるミシンの回転釜装置において、 前記内釜と摩擦接触する前記押さえ部の摺動面に、WP
    C処理により微小凹凸部が複数形成されていることを特
    徴とするミシンの回転釜装置。
  8. 【請求項8】 互いに回転自在に嵌合された外釜及び内
    釜と、 内釜の内部に装着され、下糸が巻き付けられるボビンを
    内部に収容するボビンケースとを備え、 前記外釜と内釜のうち一方が回転することにより上糸ル
    ープ内に内釜をくぐらせて、上糸ループと前記内釜内の
    ボビンから導出された下糸とを絡めて縫い目を形成する
    ミシンの回転釜装置において、 前記上糸ループと下糸のうち少なくとも一方が摺動する
    糸摺動面を有し、 この糸摺動面にWPC処理により微小凹凸部が複数形成
    されていることを特徴とするミシンの回転釜装置。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のミシンの回転釜装置にお
    いて、 前記糸摺動面は、前記上糸ループ内に内釜をくぐらせる
    際に上糸ループが渡るボビンケースの外側面であること
    を特徴とするミシンの回転釜装置。
  10. 【請求項10】 請求項8記載のミシンの回転釜装置に
    おいて、 昇降駆動される針に保持された上糸を引っ掛ける剣先を
    備え、 前記糸摺動面は、前記剣先の表面であることを特徴とす
    るミシンの回転釜装置。
  11. 【請求項11】 請求項8記載のミシンの回転釜装置に
    おいて、 前記外釜に支持されて内釜を保持する内釜押さえを備
    え、 前記糸摺動面は、前記内釜押さえの糸逃げ部の表面であ
    ることを特徴とするミシンの回転釜装置。
  12. 【請求項12】 請求項8記載のミシンの回転釜装置に
    おいて、 前記外釜が内釜に対して回転するように構成され、 前記内釜には、前記外釜が回転した際、前記内釜を潜る
    上糸ループを、表面上を摺動させることで下糸が絡まる
    位置に案内する内釜つばが設けられ、 前記糸摺動面は、前記内釜つばの表面であることを特徴
    とするミシンの回転釜装置。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載のミ
    シンの回転釜装置において、 WPC処理後の前記摺動面の表面硬度はHV700〜H
    V1100の範囲であることを特徴とするミシンの回転
    釜装置。
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JP7405519B2 (ja) 2019-05-16 2023-12-26 Juki株式会社 ミシン

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