JP2001326114A - 半硬質磁性材料の製造方法 - Google Patents

半硬質磁性材料の製造方法

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JP2001326114A
JP2001326114A JP2000141662A JP2000141662A JP2001326114A JP 2001326114 A JP2001326114 A JP 2001326114A JP 2000141662 A JP2000141662 A JP 2000141662A JP 2000141662 A JP2000141662 A JP 2000141662A JP 2001326114 A JP2001326114 A JP 2001326114A
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Noriyuki Nakaoka
範行 中岡
Kazu Sasaki
計 佐々木
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラッチングリレーや電子監視システムの磁気
マーカに用いられる半硬質磁性材料として優れた磁気特
性を有し、且つ製造しやすい半硬質磁性材料の製造方法
を提供する。 【解決手段】 磁性を有するFeを主成分とするA層と、C
u族非磁性金属を主成分とするB層を、実質的に交互に重
ね合わせた多層体素材を、前記A層若しくはB層の何れか
若しくは両方を分断化し、B層を構成するCu族非磁性金
属を固溶する熱処理を施した後、冷間での塑性加工を行
い、前記冷間での塑性加工の間、若しくは冷間加工後の
何れか、若しくは両方で、Cu族非磁性金属の析出物を析
出させる熱処理を施すことを特徴とする半硬質磁性材料
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラッチングリレー
や電子監視システムの磁気マーカに用いられる半硬質磁
性材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁化状態を保持でき、消磁も可能な半硬
質磁性材料は、古くはリレー用の材料として使用されて
きた。この半硬質磁性材料のうち、Fe-Cu系合金は、非
磁性のCu相を分散させて保磁力を高めることのできる半
硬質磁性を持つ材料として知られている。ラッチングリ
レーや電子監視システムの磁気マーカに用いられる半硬
質磁性材料としては、それぞれの用途や装置に応じた保
磁力を持つこととともに、飽和磁束密度が高く、かつ磁
化状態と消磁状態のオン・オフが明確であることが求め
られる。
【0003】用途や装置に応じた保磁力を有する必要が
あるのは、保磁力が小さ過ぎて意図しない外部磁場によ
って材料の磁化状態が変化して誤動作を起こしたり、保
磁力が部材の消磁あるいは弱磁化が不十分で誤動作を起
こしたりすることを防ぐためである。またB-H曲線にお
ける角形比が悪いと、磁化状態と消磁状態の境界が明瞭
でなくなるため、これも誤動作の原因になる。また残留
磁束密度は、高ければ高いほど、同じ大きさの磁界を発
現させようとする際に部材の断面積が小さくて済み、部
材の小型化に都合が良い。しかし、実際にFe-Cu系の半
硬質磁性材料を製造しようとすると、Cu相の分離によ
り、特に熱間における加工性が極めて悪く、溶解した合
金インゴットを塑性加工して仕上げる方法では、製造中
に割れが生じ易く、とても量産化できるものではなかっ
た。
【0004】ところで、異種金属の複合体を製造する方
法として、熱処理38巻2号平成10年4月発行P75〜79に記
載されるように異種金属を積層し、多段の圧延を繰り返
すことによって、多層金属体を製造する方法が知られて
おり、この方法をFe-Cu系の半硬質磁性材料の製造方法
に適用すると、合金インゴットを塑性加工する場合のよ
うな加工性が悪いという問題は解消される。このような
多層金属体では、磁性を有するFeを主成分とする層と、
非磁性のCu系の層が極めて狭い間隔で積層された組織状
態となり、保磁力がやや向上する。しかし、Cu系の非磁
性相は、実質的に箔の状態で完全な層状に存在している
ため、半硬質磁性材料としては十分でない。勿論Cuの存
在比を高くすれば、保磁力は大きくなるが、飽和磁束密
度が低下してしまうという問題がある。
【0005】飽和磁束密度を低下させずに保磁力を高め
るためには、できるだけCuを微細分散させることが好ま
しく、素材となる多層体のFeを主成分とするA層、Cu族
非磁性金属を主成分とするB層ともにできるだけ薄いこ
とが望まれる。これを実現可能するに好適な方法とし
て、最近、特開2000-71081号において、金属又は合金A
の薄板と、別の金属または合金Bの薄板を合計で10層以
上交互に重ね、周辺を溶接して一体化、或いは鋼製又は
ステンレス鋼製の箱に入れて一体化した後、これを熱間
圧延圧着して各層を金属的に接合し多層構造とし、更に
この多層構造の金属板を冷間圧延後、低融点の金属・合
金層の融点付近で熱処理することにより低融点の金属・
合金の連続した層を切断し、粒子が分散した状態の組織
とし、この粒子が分散した組織を有する金属・合金板を
更に熱間または冷間圧延する金属板の製造方法が提案さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上述のよ
うな多層構造を得られる製造方法と、それによって得ら
れる金属組織、更にはその金属組織が磁気特性に及ぼす
影響について、鋭意検討した結果、積層した材料を、熱
間圧延と冷間圧延を繰返した後、熱処理を利用してCu族
非磁性金属を分断・分散させただけでは、ある程度の保
磁力の向上は達成できるが、磁化状態と消磁状態のオン
・オフが明確になるレベルまでのB-H曲線の角形性を得る
には不十分である。
【0007】また、その後、熱間圧延や冷間圧延にて分
断・分散しているCu族非磁性金属を展伸させただけで
は、マトリックス(基地)となっているFeを主成分とする
A層に加工歪が残留した状態となっており、本来、Feを
主成分とするA層が有する優れた磁気特性を十分に発揮
できず、保磁力も10(Oe)(800A/m)程度までしか向上が望
めず、また、やはり、磁化状態と消磁状態のオン・オフ
が明確になるレベルまでのB-H曲線が矩形に近い角形性
(以下、磁化急峻性と記す)は得られていない。本発明の
目的は、上述した問題点に鑑み、ラッチングリレーや電
子監視システムの磁気マーカに用いられる半硬質磁性材
料として優れた磁気特性を有し、且つ製造しやすい半硬
質磁性材料の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、先ず、軟磁
性のFeと非磁性のCuを多層化した材料を半硬質磁性材料
として適用すべく金属組織の改良を鋭意検討した。その
結果、FeとCuを多層化した金属体をCuの融点に近い温度
まで加熱していくと、Cu層が凝集、球状化することによ
り、Cuの層が分断して細分化し、更に分断化熱処理の温
度を高めると、Cuの一部がFeのマトリックス(基地)に固
溶されることを知見した。そして、この分断した組織を
更に冷間で塑性加工することで、Cuを薄い層状として、
分散させた金属組織に調整でき、更に組織に異方性を付
与することができ、Cuが完全な層状に存在している場合
に比べて、著しく保磁力を高めることができることを見
いだした。
【0009】更に、異方性を付与されCuが薄い層状に分
散した金属組織に、特定の温度域での熱処理により、分
断化し固溶する熱処理時にFeのマトリックスに固溶した
Cuが微細に析出することにより、塑性加工ままに比して
更に保磁力を高めることができ、Feを主成分とするマト
リックスに加えられた歪が除去されることにより、材料
の磁化急峻性が大幅に向上することを見いだし、本発明
に到達した。
【0010】すなわち、本発明は、磁性を有するFeを主
成分とするA層と、Cu族非磁性金属を主成分とするB層
を、実質的に交互に重ね合わせた多層体素材を、前記A
層若しくはB層の何れか若しくは両方を分断化し、B層を
構成するCu族非磁性金属を固溶する熱処理を施した後、
冷間での塑性加工を行い、前記冷間での塑性加工の間、
若しくは冷間加工後の何れか、若しくは両方で、Cu族非
磁性金属の析出物を析出させる熱処理を施す半硬質磁性
材料の製造方法である。
【0011】好ましくは、上述の分断化し、B層を構成
するCu族非磁性金属を固溶する熱処理は、Cu族非磁性金
属の融点を超えて加熱する半硬質磁性材料の製造方法で
あり、更に好ましくは、分断化し、B層を構成するCu族
非磁性金属を固溶する熱処理は、FeとCu族非磁性金属と
の合金の液相出現温度以上に加熱する半硬質磁性材料の
製造方法である。また、特に好ましくは、Cu族非磁性金
属の析出物を析出させる熱処理は、400〜900℃に加熱す
る半硬質磁性材料の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】上述したように、本発明の基本的
な特徴は、磁性を有するFeを主成分とする層と非磁性の
Cu族非磁性金属を主成分とする層とが積層された多層体
に、複数回の熱処理を施すことにより、積層構造を分断
し、更にCu族非磁性金属を微細に析出させる熱処理を組
合せることによって、飽和磁束密度を低下させずに高い
保磁力を有する半硬質磁性材料を得ることにある。
【0013】以下に、具体的に本発明を説明する。本発
明の素材となる多層体において、磁性を有するFeを主成
分とするA層は、基本的な磁気特性を確保するために必
要である。本発明で用いるFeを主成分とするA層として
は、純鉄である必要はなく、脱酸元素のAl、Si、Mnや、
その他の不可避的不純物が残留していても良いし、必要
に応じて、耐食性元素のCr、或いは強度に寄与するCな
どの元素を含有していても良い。
【0014】また、Cu族非磁性金属を主成分とするB層
としては純Cuだけでなく、Cu族非磁性金属すなわち、C
u、Ag、Auを単体または合金として利用することができ
る。これらの元素はFeに固溶し難く、Feを主成分とする
マトリックス中に磁壁移動や磁区回転を妨げる第2相と
して存在させることができ、保磁力を高める作用を有す
るからである。勿論、Cu族非磁性金属中に不可避的不純
物や微量成分及び固溶する添加元素を含有してもよい。
このCu族非磁性金属としては、何れの金属を選んでも良
いが、Cuは最も安価に入手することが可能であるので、
Cuを利用するのが良く、また、Cu族非磁性金属は材料中
に分散させて非磁性領域を形成させるものであるため、
質量ではなく体積が重要となる。従って同等の効果を得
るには、AuやAgを用いる場合に比べてCuは少なくて済む
ことからも、Cuの利用が特に有効である。
【0015】また、積層するCu族非磁性金属の量は必要
な保磁力に応じて、様々に変えることが必要であるが、
例えば数百〜数千A/mの保磁力を得るためには、質量比
率で5〜30%となるように積層すると良い。これは、保
磁力が小さすぎると、材料の磁化状態が不安定となり、
意図しない外部磁場によって材料の磁化状態が変化して
誤動作を起こす可能性があるため、Cu族非磁性金属量
は、質量比率で5%以上が好ましい。より望ましくは10
%以上である。一方、保磁力が大きすぎると、部材の消
磁あるいは弱磁化が不十分で誤動作を起こす可能性があ
る。また、Cu族非磁性金属量を多くすることにより、残
留磁束密度が低下しすぎて部材としての性能が低下する
場合があるため、上限としては、質量比率で30%以下が
好ましい。より望ましくは20%以下である。
【0016】本発明で用いる素材となる多層体は、例え
ばA層となる磁性を有するFeを主成分とする金属板と、B
層となるCu族非磁性金属を主成分とする板を交互に積層
したものを、熱間静水圧プレスあるいは熱間圧延、また
その組み合わせ等により接合したもの、あるいは更に冷
間圧延したものを用いることができる。この時、素材と
なる多層体の積層構造としては、A層、B層を一枚ずつ交
互に重ね合せてもよいが、例えばA層とB層の何れか若し
くは両方が一部連続して積層してあっていても良く、こ
れらの構造を本発明では実質的に交互に重ね合せた多層
体という。このように、A層となる磁性を有するFeを主
成分とする金属板と、B層となるCu族非磁性金属を主成
分とする板の板厚の組み合わせによって、材料に要求さ
れる保磁力の調整が容易であることも本発明の特徴の一
つである。
【0017】本発明では、上述の多層体に対し、A層若
しくはB層の何れか若しくは両方を分断し、B層を構成す
るCu族非磁性金属を固溶する熱処理を施す。この分断化
し、Cu族非磁性金属を固溶する熱処理の温度は、例えば
Cu族非磁性金属としてCuを採用する場合では、下限はCu
の融点以上の温度で処理することが良く、すなわち、10
85℃以上とすると良い。この温度に加熱することで、Cu
族非磁性金属を主成分とする層を微細に分断化すると共
に、Cu族非磁性金属の一部をFeを主成分とするマトリッ
クス(基地)に固溶することができる。それ未満の温度、
すなわちCuの融点未満では、B層の分断化と言う点にお
いては、大小の差はあるものの分断化は可能であるが、
Cu族非磁性金属の一部をFeを主成分とするマトリックス
(基地)に固溶する効果が少なく、その後の熱処理によっ
て、保磁力を高めるに必要なCuの析出が十分ではない。
従って、本発明では保磁力向効果に必要なCuを析出させ
るには、Cu族非磁性金属の融点以上の温度に加熱するこ
とが望ましい。
【0018】また、好ましくは液相出現温度以上に加熱
すると良い。Cuの融点以上で、更に合金の包晶温度以上
の温度域で加熱してもCu族非磁性金属を主成分とする層
を微細に分断化でき、時間の経過に伴い包晶反応が進行
する。十分に反応が進行した際には、球状となったFeを
主成分とする相の結晶粒をCuが囲むような組織が得られ
る。この場合には、A層である磁性を有するFeを主成分
とする層が分断された組織となり、Cu族非磁性金属のFe
のマトリックスへの固溶も多くなる。この時の加熱温度
の上限はCuの融点+100℃、すなわち、1185℃程度が好
ましい。
【0019】前述の包晶反応を利用すれば、単なるB層
の分断化以上にB相の微細分散させる効果が期待でき
る。これは、B層をなしていたCuが、Feを主成分とする
結晶粒を囲む組織が得られることで、B層をなすCu族非
磁性金属原子の板厚方向への分散が大幅に促進されるた
めである。勿論、この温度であれば、Feのマトリックス
にCu族非磁性金属を固溶する効果も大きくなるので、特
に有効である。
【0020】なお、分断化処理の上限温度としては、Cu
の融点+100℃を越え、+300℃の温度範囲においても、
大小の差はあるものの同様の効果が期待できるが、B層
をなすCu族非磁性金属の融点以上に過度に加熱しすぎれ
ば、微量な揮発分が炉壁に付着するなどの問題が生じる
恐れがあるため、Cuの融点+100℃程度までの温度範囲
に抑えるのが望ましく、また、あまりに長時間の分断化
熱処理は、生産性の観点からは好ましくない。従って24
時間以内の保持が好ましく、5時間以内の保持がより望
ましい。
【0021】本発明においては、この分断化熱処理は、
上述の通り、単にA層若しくはB層を分断させることのみ
を目的とするものではなく、B層をなすCu族非磁性金属
の原子が、Feを主成分とするA層中に拡散することが非
常に重要である。熱処理中に拡散していったB層を形成
していた原子が、分断化熱処理の冷却中、あるいは、そ
の後に施す析出物を析出させる熱処理時に、A層中若し
くはA層を形成していたFeを主成分とする相中に析出す
れば、その析出相は、冷間での塑性加工により展伸され
ることで、あたかも、その位置にも積層時にB層が存在
し熱処理によって分断化されたものであるかのような金
属組織である、塑性加工の長手方向と直角方向に幅を持
った長手方向に伸びた非磁性領域が分散した組織とな
り、磁壁移動や磁区回転を妨げ、保磁力や角形性を高め
るのである。
【0022】また本発明において、冷間塑性加工の間に
熱処理を施すことにより、磁気特性を更に改善すること
ができる。これを本発明では軟化焼鈍と呼ぶ。材料に冷
間での塑性加工を繰り返し施していくと、歪が多く導入
され、材料が硬くなって、塑性変形を起こしにくくなっ
てしまう。そこで軟化焼鈍を施すことによって、塑性変
形を起こしやすい軟らかい組織にすることができるとと
もに、この軟化焼鈍によっても磁性を有するFeを主成分
とする層間に、Feのマトリックスに固溶していたCuが微
細に析出する。もともと素材として積層されたCu族非磁
性金属を主成分とする板間の距離は、塑性加工を施すこ
とによって短くなっていくわけであるが、この微細に析
出したCuは、この後に再度施される冷間での塑性加工に
よって、もともと積層した層間において長手方向に展伸
されることになり、あたかもそこにも層があったかのよ
うな保磁力の増大効果を奏する。
【0023】なお、この冷間での塑性加工の間にCu族非
磁性金属の析出物を析出させる処理を行う場合、Cu族非
磁性金属の析出と、材料自体の軟化の目的を同時に達成
するには、処理温度は、650〜900℃が好ましく、処理温
度が650℃より低いと、マトリックスの歪を十分に除去
することができない。より好ましい処理温度は700℃以
上である。また処理温度が900℃より高いと、Feを主体
としたマトリックスのα→γ変態が起こり、その後の冷
却速度によっては、材料の硬さが上がってしまうことが
ある。より好ましい処理温度は850℃以下である。な
お、この時の保持時間は、2〜120分であれば良く、好ま
しい焼鈍時間は30分以下である。
【0024】また本発明においては、冷間塑性加工の後
に熱処理を施すことにより、磁気特性を更に改善するこ
とができる。この熱処理を本発明では時効処理と呼び、
この時効処理を施すことで、Cu族非磁性金属の析出物を
析出させることができる。これは、この時効処理に先だ
って行った分断化熱処理や、上述の軟化焼鈍の際にマト
リックスに溶け込んだ一部のCuが析出するものであり、
おおよそ0.2μm以下のε-Cuと呼ばれるものである。こ
のCu族非磁性金属を析出させる時効処理は、上述した軟
化焼鈍と呼ばれるCu族非磁性金属を析出させる熱処理と
組合せることで、より、磁気特性を向上させることがで
きる。
【0025】また、塑性加工による歪が多く残留してい
ると、本来優れた軟磁性を有するべきFeを主成分とする
マトリックスの磁壁移動や磁区回転が妨げられてしま
い、B-H曲線がなだらかで角形比が小さい、すなわち磁
化急峻性の悪い半硬質磁性材料となってしまい、オン・
オフが不明瞭になってしまうが、この時効処理を施すこ
とによって、マトリックスの歪取りもなされるため、マ
トリックスの磁壁移動や磁区回転が容易となる。従っ
て、磁壁移動や磁区回転を妨げる主要素を分散したCu族
非磁性金属の相とすることができ、従って、角形比が高
く、B-H曲線が矩形に近い、すなわち磁化急峻性に優れ
た半硬質磁性材料を得ることができるのである。
【0026】なお、この時の時効処理の処理温度は、40
0〜700℃が好ましく、この温度域であれば、析出するCu
族非磁性金属の量も十分であるが、処理温度が400℃よ
り低いと、マトリックスの歪を十分に除去することが困
難であるので、より好ましい処理温度は450℃以上であ
る。また処理温度が700℃より高いと、分断されたCu族
非磁性金属を主成分とする相が互いに凝集して粗大化し
てしまい、マトリックスの磁壁移動や磁区回転を妨げる
効果が十分に得られなくなる恐れがあるため、より好ま
しい処理温度は650℃以下である。
【0027】また、時効処理の保持時間は2〜120分で良
い。保持時間が2分より短いと、マトリックスの歪を十
分に除去することが難しくなり、Cu族非磁性金属の析出
が不十分となる。より好ましい保持時間は5分以上であ
る。また保持時間が120分より長いと、分断されたCu族
非磁性金属を主成分とする相が互いに凝集して粗大化し
てしまい、マトリックスの磁壁移動や磁区回転を妨げる
効果が十分に得られなくなる恐れがある。また、生産性
の点からも、保持時間はできるかぎり短くすることが好
ましい。より好ましい保持時間は60分以下である。
【0028】
【実施例】以下に、実施例として本発明を更に詳しく説
明する。磁性を有するFeを主成分とするA層に電磁軟鉄
の薄板を、Cu族非磁性金属を主成分とするB層に無酸素
銅(融点:1085℃)の薄板とを質量比率で14%Cuとなるよ
うに調整し、これらを交互に重ね合せた多層体を熱間圧
延し、得られた圧延積層材を更に積層して熱間圧延する
工程により、図1に示すような積層された断面組織を有
する板厚3mmの本発明の素材となる多層体素材を得た。
図1から、黒っぽく見えるA層(電磁軟鉄層)と、白く見
えるB層(Cu層)とが交互に積層された組織となっている
ことが分かる。この時の多層体素材は、約1500層であっ
た。
【0029】この多層体素材に対し、800〜1200℃で60
分の分断化と、固溶化の熱処理を施し、B層(Cu層)を分
断し、FeのマトリックスにCuを固溶させ、800℃処理材
をNo.1、No.2とし、1075℃処理材をNo.3、No,4とし、12
00℃処理材をNo.5、No.6とした。図2はNo.2、図3はN
o.4、図4はNo.6の分断化と固溶化の熱処理後の断面金
属組織写真である。
【0030】図2〜4から、800℃及び1075℃で分断
化、固溶化の熱処理を行った場合、縦断面、横断面と
も、白く見えるB層(Cu層)がところどころ切れているの
が確認できる。また、液相発現温度以上である1200℃で
分断化、固溶化の熱処理を行った場合には、包晶反応が
進行し、白く見えるB層(Cu層)が電磁軟鉄のFe粒界を取
り囲んだような組織となっていることが分かる。なお、
この時、分断化、固溶化の熱処理の前に、冷間での塑性
加工として冷間圧延を施しても良く、工程上は、冷間圧
延と分断化、固溶化の熱処理を繰り返し施しても良い。
【0031】分断化、固溶化の熱処理後、冷間での塑性
加工として第一回目の冷間圧延を施し、冷間圧延の後
に、800℃で60分の材料の軟化も目的とするCuを析出さ
せる熱処理(以下、軟化焼鈍と記す)を施した。図5はN
o.2、図6はNo.4、図7はNo.6の軟化焼鈍後の断面金属
組織写真である。この軟化焼鈍によってもCu層の分断化
が起こっていることが確認できる。また、800℃で分断
化、固溶化の熱処理を行ったNo.2では、Cu層間には粒状
の析出Cuが見られないのに対し、1075℃、1200℃で分断
化熱処理を行ったNo.4、No.6では、Cu層間には微細な粒
状の析出Cuが多数観察された。なお、工程上は、冷間圧
延と軟化焼鈍を繰り返し施しても良い。
【0032】軟化焼鈍の後、冷間での塑性加工として第
二回目の冷間圧延を施し、板厚を0.05mmとした。図8
にNo.2、図9にNo.4、図10にNo.6の冷間圧延後の断面金
属組織写真を示す。図8〜図10から、冷間圧延の長手
方向にCuが展伸されている様子がよく分かる。更に、N
o.2、No.4、No.6にCuを析出させると共に、角形性や磁
化急峻性を高めるため熱処理(以下、時効処理と記す)を
施した。図11はNo.2、図12はNo.4、図13はNo.6の
時効処理後の断面金属組織写真である。
【0033】図11〜図13から、は時効処理によっ
て、Feを主成分とするマトリックス中に粒径0.5μm以下
の微細なCuが析出している様子が良く分かる。こうして
得られたNo.1〜6の半硬質磁性材料から磁気特性測定用
の試料を切り出し、採取ままの磁気特性を測定した。各
試料に施した処理を表1に、磁気特性の測定結果を表2
に示し、測定結果の一例としてNo.5のB-H曲線を図14
に示す。また、素材となる多層体を比較材No.7とし、こ
の多層体の磁気特性を測定し、測定結果を表2に合わせ
て示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】表2に示すように本発明の半硬質磁性材料
No.1〜No.6は、比較材No.7に比して高い角形比を得るこ
とができているのが分かる。Br/B8kの値も概ね80%以
上、なかには85%を越えるものもあり、電子監視システ
ムの磁気マーカ用途として好適な半硬質磁性を有してい
ることがわかる。また、図15に示すように本発明の半硬
質磁性材料No.5のB-H曲線は矩形に近く、優れた磁化急
峻性を有している。
【0037】
【発明の効果】本発明の製造法により、従来の溶製法で
の造塊時に合金インゴットの中心部にCuが凝集する問題
や、Cu相の分離により特に熱間における加工性が極めて
悪く割れが生じる問題を解決でき、角形性、磁化急峻性
に優れた半硬質磁性材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半硬質磁性材料の積層体素材断面の金属組織顕
微鏡写真である。
【図2】半硬質磁性材料の積層体素材を分断化、固溶化
する熱処理後の断面の金属組織顕微鏡写真である。
【図3】半硬質磁性材料の積層体素材を分断化、固溶化
する熱処理後の断面の金属組織顕微鏡写真である。
【図4】半硬質磁性材料の積層体素材を分断化、固溶化
する熱処理後の断面の金属組織顕微鏡写真である。
【図5】軟化焼鈍後の断面の金属組織顕微鏡写真であ
る。
【図6】軟化焼鈍後の断面の金属組織顕微鏡写真であ
る。
【図7】軟化焼鈍後の断面の金属組織顕微鏡写真であ
る。
【図8】冷間圧延後の断面の金属組織の顕微鏡写真であ
る。
【図9】冷間圧延後の断面の金属組織の顕微鏡写真であ
る。
【図10】冷間圧延後の断面の金属組織の顕微鏡写真で
ある。
【図11】本発明の半硬質磁性材料の金属組織の顕微鏡
写真である。
【図12】本発明の半硬質磁性材料の金属組織の顕微鏡
写真である。
【図13】本発明の半硬質磁性材料の金属組織の顕微鏡
写真である。
【図14】本発明の半硬質磁性材料の磁気特性測定結果
を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年12月13日(2000.12.
13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正内容】
【0003】用途や装置に応じた保磁力を有する必要が
あるのは、保磁力が小さ過ぎて意図しない外部磁場によ
って材料の磁化状態が変化して誤動作を起こしたり、
保磁力が大き過ぎて部材の消磁あるいは弱磁化が不十
分で誤動作を起こしたりすることを防ぐためである。ま
たB-H曲線における角形比が悪いと、磁化状態と消磁状
態の境界が明瞭でなくなるため、これも誤動作の原因に
なる。また残留磁束密度は、高ければ高いほど、同じ大
きさの磁界を発現させようとする際に部材の断面積が小
さくて済み、部材の小型化に都合が良い。しかし、実際
にFe-Cu系の半硬質磁性材料を製造しようとすると、Cu
相の分離により、特に熱間における加工性が極めて悪
く、溶解した合金インゴットを塑性加工して仕上げる方
法では、製造中に割れが生じ易く、とても量産化できる
ものではなかった。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性を有するFeを主成分とするA層と、C
    u族非磁性金属を主成分とするB層を、実質的に交互に重
    ね合わせた多層体素材を、前記A層若しくはB層の何れか
    若しくは両方を分断化し、B層を構成するCu族非磁性金
    属を固溶する熱処理を施した後、冷間での塑性加工を行
    い、前記冷間での塑性加工の間、若しくは冷間加工後の
    何れか、若しくは両方で、Cu族非磁性金属の析出物を析
    出させる熱処理を施すことを特徴とする半硬質磁性材料
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 分断化し、B層を構成するCu族非磁性金
    属を固溶する熱処理は、Cu族非磁性金属の融点を超えて
    加熱することを特徴とする請求項1に記載の半硬質磁性
    材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 分断化し、B層を構成するCu族非磁性金
    属を固溶する熱処理は、FeとCu族非磁性金属との合金の
    液相出現温度以上に加熱することを特徴とする請求項1
    または2に記載の半硬質磁性材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 Cu族非磁性金属の析出物を析出させる熱
    処理は、400〜900℃に加熱することを特徴とする請求項
    1乃至3の何れかに記載の半硬質磁性材料の製造方法。
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