JP2008108760A - 圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁束密度を向上するとともに、保磁力を低減することができる圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法を提供する。
【解決手段】圧粉磁心は、金属磁性粒子10と、金属磁性粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30を備えている。金属磁性粒子10は、Fe−Coリッチ相とFe−Coリッチ相を取り囲むCrリッチ相とを有している。Fe−Coリッチ相は、円相当径が50nm以下で、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなる。Crリッチ相は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法に関し、たとえば、高密度成形性と低保磁力を両立することのできる圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法に関する。
電磁弁、モータ、または電気回路などを有する電気機器には、軟磁性材料が使用されている。この軟磁性材料は複数の複合磁性粒子により構成されており、複数の複合磁性粒子の各々は、たとえば純鉄からなる金属磁性粒子と、その表面を被覆する絶縁被膜とを有している。軟磁性材料には、小さな磁場の印加で大きな磁束密度を得ることができる磁気特性と、外部からの磁界に対して敏感に反応できる磁気特性とが求められる。
この軟磁性材料を用いて作製した圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギ損失が生じる。この鉄損は、ヒステリシス損失と渦電流損失との和で表される。ヒステリシス損失は、軟磁性材料の磁束密度を変化させるために必要なエネルギによって生じるエネルギ損失であり、渦電流損失は、主として軟磁性材料を構成する金属磁性粒子間を流れる渦電流によって生じるエネルギ損失である。ヒステリシス損失は動作周波数に比例し、渦電流損失は動作周波数の2乗に比例する。そのため、ヒステリシス損失は主に低周波領域において支配的になり、渦電流損失は主に高周波領域において支配的になる。圧粉磁心にはこの鉄損の発生を小さくする磁気的特性、すなわち高い交流磁気特性が求められる。
圧粉磁心にはこの鉄損の発生を小さくする磁気的特性、すなわち高い交流磁気特性が求められる。純鉄は磁気異方性を有しているため、純鉄を用いてなる圧粉磁心の保磁力Hcは、電磁鋼板を用いてなる圧粉磁心の保磁力Hcの10倍程度高くなり、圧粉磁心としての交流磁気特性を向上するには限界があった。
圧粉磁心の交流磁気特性を向上する方法として、純鉄と比較して保磁力Hcが低いセンダスト(Fe−Si−Al高合金)、パーマロイ(Fe−Ni高合金)、またはFe−Si−B等のアモルファスを用いて軟磁性材料を製造する方法が考えられる。しかし、純鉄の硬度と比較してセンダスト、パーマロイ、およびアモルファスの硬度は非常に大きいので、これらの材料を含む軟磁性材料用いて製造した圧粉磁心は成形性が悪く、その結果、得られる成形体の密度が低いという問題があった。
そこで、センダストを用いた軟磁性材料の成形性を向上することのできる製造方法として、65質量%〜98質量%の割合のセンダストと、2質量%〜35質量%の割合の高圧縮性軟磁性金属粉との混合物をバインダーによって結合させる製造方法が、たとえば特開平6−236808号公報(特許文献1)に開示されている。
特開平6−236808号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、硬度が大きいセンダストを主成分としているため、高密度の成形体を得ることができない。そのため、十分な磁束密度を得られないという問題がある。
また、純鉄を主成分する軟磁性材料を用いてなる圧粉磁心は、上述したように、保磁力が大きいという問題がある。
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決することであり、磁束密度を向上するとともに、保磁力を低減することができる圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法を提供することである。
本発明の圧粉磁心は、金属磁性粒子と、金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を備えた圧粉磁心である。金属磁性粒子は、Fe−Coリッチ相とFe−Coリッチ相を取り囲むCrリッチ相とを有している。Fe−Coリッチ相は、円相当径が50nm以下で、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなる。Crリッチ相は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなる。
本願発明者は、上記組成のFe−Cr−Co系合金を金属磁性粒子として用いることにより、圧粉磁心の高密度成形性を向上できるとともに、保磁力を低減できることを見出した。すなわち、上記組成のFe−Cr−Co系合金は、センダスタント、パーマロイ、およびアモルファスなどに比べて高い塑性変形性を有するので、高密度成形体とできる。そのため、圧粉磁心の磁束密度を向上できる。また、Fe−Coリッチ相は強磁性相に、Crリッチ相は非磁性相になるので、超常磁性効果またはナノクリスタル効果により低保磁力を得ることができる。よって、磁束密度を向上するとともに、保磁力を低減することができる。
なお、本明細書中における「非磁性相」とは、完全な非磁性体だけでなく、0.5T以下の飽和磁化を示すFeおよびCoの少なくとも一方を含有するCrリッチ相も含む。
上記圧粉磁心において好ましくは、金属磁性粒子の平均粒径は、10μm以上500μm以下である。
金属磁性粒子の平均粒径を10μm以上とすることによって、保磁力をより低減することができる。平均粒径を500μm以下とすることにより、渦電流損を低減することができる。
上記圧粉磁心において好ましくは、絶縁被膜は、ガラス系被膜、セラミックス被膜、および樹脂被膜のうちのいずれかを用いてなる一層または多層からなる。
これらの物質は絶縁性に優れているため、金属磁性粒子間に流れる渦電流をより効果的に抑制することができる。
本発明の圧粉磁心の製造方法によれば、上記圧粉磁心を製造する方法であって、以下の工程を備えている。5質量%以上のCoと、5質量%以上のCrと、75質量%以上のFeとからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子を準備する工程を実施する。そして、金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜を形成して、軟磁性材料を準備する工程を実施する。そして、軟磁性材料を加圧成形して、成形体を得る工程を実施する。そして、スピノーダル分解温度を超えて、金属磁性粒子が溶解する温度と金属磁性粒子が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲の温度で成形体を加熱する工程を実施する。そして、成形体をスピノーダル分解温度よりも低い温度まで冷却する工程を実施する。
本発明の圧粉磁心の製造方法によれば、塑性変形可能な金属磁性粒子を備える軟磁性材料を加圧成形した後に、スピノーダル分解温度を超えた温度で加熱している。スピノーダル分解温度を超えた温度で加熱することにより、成形体の内部を均質化できる。その後、スピノーダル分解温度よりも低い温度まで冷却することにより、スピノーダル分解が生じるので、Fe−Coリッチ相である微細な強磁性相とCrリッチ相である非磁性相とを備える金属磁性粒子を析出できる。Fe−Coリッチ相とCrリッチ相とを発現することによって、超常磁性効果またはナノクリスタル効果により低保磁力を得られる。また、スピノーダル分解を起こす前の金属磁性粒子は高い塑性変形性を有する組成であるので、高密度成形体を得ることができ、磁束密度を向上できる。よって、磁束密度を向上するとともに、保磁力を低減することのできる圧粉磁心を製造できる。
なお、スピノーダル分解とは、2種類以上の金属元素を含む合金において、固溶状態の高温相から冷却していったときに2相分離を生じる系のうち、2相分離が核生成を経ずに溶質原子の濃度の連続的な変化で進行する場合をいう。この際に、各溶質原子が濃度低い部分から高い部分へ拡散する挙動を示すのが特徴である。また、スピノーダル分解温度とは、高温相からの冷却時にスピノーダル分解が開始する温度であり、熱質量分析プロファイルにおけるスピノーダル分解を示すピークのオンセット温度で決定される。
上記圧粉磁心の製造方法において好ましくは、冷却する工程の後に、100℃以上400℃以下の温度で時効処理を行なう工程をさらに備えている。これにより、Fe−Coリッチ相とCrリッチ相との組成差を拡大でき、保磁力をより低減できる。
本発明の圧粉磁心および圧粉磁心の製造方法によれば、磁束密度を向上するとともに、保磁力を低減することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態における圧粉磁心を模式的に示す図である。図2は、図1における1の複合磁性粒子を拡大して模式的に示す図である。図1および図2を参照して、実施の形態における圧粉磁心を説明する。圧粉磁心は、金属磁性粒子10と、金属磁性粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30を備えている。金属磁性粒子10は、Fe−Coリッチ相11とFe−Coリッチ相11を取り囲むCrリッチ相12とを有している。Fe−Coリッチ相11は、円相当径が50nm以下で、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなる。Crリッチ相12は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなる。なお、実施の形態における圧粉磁心において、複数の複合磁性粒子30の各々は、複合磁性粒子30が有する凹凸の噛み合わせおよびバインダの結着力などによって接合されている。
実施の形態の圧粉磁心において、金属磁性粒子10のFe−Coリッチ相11の円相当径は50nm以下であり、好ましくは10nm以上30nm以下である。50nmを超えると、ナノクリスタル効果が発現されず、軟磁性化できない。30nm以下とすることによって、圧粉磁心の保磁力をより低減できる。
なお、上記「円相当径」とは、TEM像等の粉末断面像において観察される相組織の投影周長円相当径を意味し、具体的にはFe−Coリッチ相11の1粒子の投影図形の周長に等しい円周をもつ円の直径である。
Fe−Coリッチ相11は、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなっている。Fe−Coリッチ相11におけるFeとCoとの合計の含有量は、96質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましい。80質量%よりも低いと、Fe−Coリッチ相11の磁性が弱いため超常磁性効果およびナノクリスタル効果が発現しなくなる。96質量%以上とすることによって、磁性をより強め、97質量%以上とすることによって、磁性をより一層強めることができる。
Fe−Coリッチ相11は、FeおよびCoの質量比(質量%)の比(Fe/Co)が3以上18以下であり、8.5以上18以下であることがより好ましい。FeとCoとの質量%の比が3よりも少ないと、スピノーダル分解前の金属粉末の塑性変形性が悪く高密度の成形体が得られないため、磁束密度を向上できない。FeとCoとの質量%の比を3以上とすることによって、高密度成形性をより向上でき、FeとCoとの質量%の比を8.5以上とすることによって、高密度成形性をより一層向上できる。一方、FeとCoとの質量%の比率が18を超えると、Coの含有量が少なくなりすぎてスピノーダル分解が起こらなくなる。
金属磁性粒子10のCrリッチ相12は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Coおよび不可避的不純物からなる。Crの含有量は78質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましい。75質量%よりも低いと、超常磁性粒子化が生じず、圧粉磁心の保磁力を低減できない。また、Fe−Coリッチ相の形状異方性による高い保磁力が発生してしまう。Crの含有量を78質量%以上とすることによって、圧粉磁心の保磁力をより低減できる。80質量%以上とすることによって、圧粉磁心の保磁力をより一層低減できる。
なお、金属磁性粒子10に含まれるCoやCrなどの量は、たとえば誘導結合プラズマ原子分光分析(ICP-AES)によって測定することができる。この際、適当な粉砕処理および化学処理により、圧粉磁心から絶縁被膜および樹脂を除去して測定を行なう。また、粉末内に生じる各相の組成の分析はTEM−EDX法により測定することができる。
金属磁性粒子10の平均粒径は、10μm以上500μm以下であることが好ましく、30μm以上300μm以下であることがより好ましい。金属磁性粒子10の平均粒径を10μm以上とすることによって、粉末流動性が悪化し、成形不良が発生することを回避できる。平均粒径を30μm以上とすることによって、粉末流動性が悪化し、成形不良が発生することをより回避できる。一方、平均粒径を500μm以下とすることによって、渦電流損をより低減することができる。平均粒径を300μm以下とすることによって、渦電流損をより一層低減することができる。
なお、金属磁性粒子10の平均粒径とは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さいほうからの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径をいう。
Fe−Co−Cr系合金におけるスピノーダル分解温度は、当該粉末を900℃以上の温度まで加熱し、降温時の示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analysis)プロファイルを用いて決定することができる。この際の測定は降温速度20℃/min以下で、Arガス等の不活性ガスを含有する雰囲気中で行なう。
絶縁被膜20は、金属磁性粒子10間の絶縁層として機能する。金属磁性粒子10を絶縁被膜20で覆うことによって、この軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の電気抵抗率ρを大きくすることができる。これにより、金属磁性粒子10間に渦電流が流れるのを抑制して、圧粉磁心の渦電流損を低減させることができる。
絶縁被膜20は、ガラス系被膜、セラミックス被膜、および樹脂被膜のうちのいずれかを用いてなる一層または複数層の構造であることが好ましい。ガラス系被膜としては、リン酸化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、またはホウ素化合物などよりなっていることが好ましい。具体的には、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、硅リン酸、酸化シリコン、酸化チタン、または酸化ジルコニウムなどよりなっていることが好ましい。セラミックス被膜としては、シリカ、アルミナ、またはマグネシア等を含んでいることが好ましい。樹脂としては、シリコーン樹脂、イミド系樹脂、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、または高級脂肪酸が用いられることが好ましい。具体的には、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルエーテルケトン、高分子量ポリエチレン、全芳香族ポリエステルなどの熱可塑性樹脂や、全芳香族ポリイミド、非熱可塑性ポリアミドイミドなどの非熱可塑性樹脂や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸リチウムまたはオレイン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩が用いられることが好ましい。また、これらの有機物を互いに混合して用いることもできる。なお、高分子量ポリエチレンとは、分子量が10万以上のポリエチレンをいう。
また、絶縁被膜20は、金属としてFe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,または希土類元素を用いた金属酸化物、金属窒化物、金属酸化物、リン酸金属塩化合物、ホウ酸金属塩化合物、またはケイ酸金属塩化合物などよりなっていてもよい。
また、絶縁被膜20はAl,Si,Mg,Y,Ca,Zr,およびFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質のリン酸塩の非晶質化合物、前記物質のホウ酸塩の非晶質化合物よりなっていてもよい。
さらに、絶縁被膜20はAl,Si,Mg,Y,Ca,およびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質の酸化物の非晶質化合物よりなっていてもよい。
なお、図1には、圧粉磁心を構成する複合磁性粒子30が1層の絶縁被膜により構成されている場合について示しているが、圧粉磁心を構成する複合磁性粒子30が以下に述べるように複数層の絶縁被膜により構成されていてもよい。
具体的には、たとえば圧粉磁心において、絶縁被膜20は一の絶縁被膜と、他の絶縁被膜とを有していてもよい。そして、一の絶縁被膜は金属磁性粒子10の表面を取り囲んでおり、他の絶縁被膜は一の絶縁被膜の表面を取り囲んでいる。この場合には、一の絶縁被膜として、ガラス系被膜、セラミックス被膜を用い、他の絶縁被膜として、樹脂被膜を用いることが好ましい。
絶縁被膜20の平均膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。絶縁被膜20の平均膜厚を10nm以上とすることによって、トンネル電流を抑制するとともに、渦電流損を効果的に抑制することができる。絶縁被膜20の平均膜厚を1μm以下とすることによって、加圧成形時に絶縁被膜20がせん断破壊することを防止できる。また、軟磁性材料に占める絶縁被膜20の割合が大きくなりすぎないので、軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の磁束密度が著しく低下することを防止できる。
次に、図1〜図8を参照して、本発明の圧粉磁心の製造方法について説明する、なお、図3は、本発明の実施の形態における製造方法を工程順に示す図である。図4は、本発明の実施の形態において準備する軟磁性材料の模式図である。図5は、本発明の実施の形態における加圧成形後の複合磁性粒子を示す模式図である。図6は、本発明の実施の形態における加圧成形する工程、加熱する工程、冷却する工程、および時効処理を行なう工程を説明するための図である。図7は、本発明の実施の形態における加熱する工程後の1の複合磁性粒子を示す模式図である。図8は、本発明の実施の形態における冷却する工程に用いる装置の概略図である。
図3に示すように、まず、5質量%以上のCoと、5質量%以上のCrと、75質量%以上のFeとからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子10を準備する工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、塑性変形可能な合金粉末である金属磁性粒子10を準備している。Fe−Cr−Co系合金としては、5質量%以上20質量%以下のCoと、5質量%以上20質量%以下のCrと、75質量%以上90質量%以下のFeとからなり、CoとCrとFeとの合計は100質量%となる。好ましくは、Coが5〜10質量%、Crが5〜15質量%、Feが80〜90質量%のFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子10を準備する。5質量%以上のCoと、5質量%以上のCrと、75質量%以上のFeとを含有するFe−Cr−Co系合金と、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子10を準備することによって、後述する冷却する工程(S60)でスピノーダル分解により、50nm以下の大きさのFe−Coリッチ相11とCrリッチ相12とを備える金属磁性粒子10となる。
また、工程(S10)では、平均粒径が10μm以上500μm以下である金属磁性粒子10を準備することが好ましい。
また、工程(S10)では、たとえば、金属磁性粒子10は、所定の成分を含有するFe−Cr−Co系合金をガスアトマイズ法または水アトマイズ法などにより粉末化して準備される。この時、Fe−Cr−Co合金が単相になっている必要があるため、溶解状態から急速冷却により粉末を得る方法が採用される。
次に、金属磁性粒子10をたとえば300℃以上スピノーダル分解温度未満の温度で熱処理する工程(S20)を実施する。熱処理前の金属磁性粒子10の内部には、アトマイズ処理時の熱応力などに起因する歪みや結晶粒界などの多数の欠陥が存在している。そこで、金属磁性粒子10に熱処理を実施することによって、これらの欠陥を低減させることができる。これにより、成形時の変形性を改善できる。なお、この熱処理する工程(S20)は省略されてもよい。
次に、金属磁性粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20を形成して、軟磁性材料を準備する工程(S30)を実施する。具体的には、絶縁被膜20はたとえば金属磁性粒子10をリン酸塩化成処理することによって形成することができる。また、リン酸塩絶縁被膜の形成方法としては、リン酸塩化成処理の他に溶剤吹きつけや前駆体を用いたゾルゲル処理を利用することもできる。また、シリコン系有機化合物よりなる絶縁被膜20を形成してもよい。この絶縁被膜の形成には、有機溶剤を用いた湿式被覆処理や、ミキサーによる直接被覆処理などを利用することができる。
2層の絶縁被膜20を形成する場合には、一の絶縁被膜の形成された金属磁性粒子10の各々と、樹脂とを混合し、他の絶縁被膜を形成する。混合方法については特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。また必要に応じて潤滑剤がさらに混合されてもよい。
他の絶縁被膜の形成方法としては、上記方法の他、有機溶媒に溶かしたシリコーン樹脂を混合あるいは噴霧し、その後シリコーン樹脂を乾燥させて有機溶媒を除去するといった方法を用いてもよい。
以上の工程(S10〜S30)により、図4に示す軟磁性材料が得られる。実施の形態における圧粉磁心を製造するためには、さらに以下の工程が行なわれる。
次に、得られた軟磁性材料を加圧成形して、成形体を得る工程(S40)を実施する。この工程(S40)では、具体的には、得られた軟磁性材料の粉末を金型に入れ、たとえば390(MPa)から1500(MPa)までの範囲の圧力で加圧成形する。これにより、軟磁性材料が圧粉成形された成形体が得られる。なお、加圧成形する雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とすることが好ましい。この場合、大気中の湿気によって混合粉末の流動性が悪化するのを抑制することができる。この工程(S40)を実施すると、図5に示すように、金属磁性粒子10と、絶縁被膜20とを備える複数の軟磁性材料がプレス成形された状態となる。
次に、図6に示すように、加圧成形する工程(S40)によって得られた成形体を、スピノーダル分解温度を超えて、金属磁性粒子10が溶解する温度と金属磁性粒子10が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲の温度T1で加熱する工程(S50)を実施する。この工程(S50)では、加圧成形を経た成形体の内部には欠陥が多数発生しているので、加熱によりこれらの欠陥を取り除くことができ、成形体の内部を均質化できる。具体的には、図6に示すように、温度T1で時間(t2−t1)の間、成形体を加熱する。工程(S50)後の成形体の内部は、図7に示すような複合磁性粒子が均質となる。
工程(S50)では、温度T1は、スピノーダル分解温度を超える温度であり、かつ金属磁性粒子10が溶解する温度と金属磁性粒子10が相変態する温度のうち低い方の温度未満である。温度T1をスピノーダル分解温度以下の温度とすると、金属磁性粒子10をスピノーダル分解できないからである。温度T1を金属磁性粒子10が溶解する温度以上とすると、金属磁性粒子10が溶解してしまい、成形体が変形するためである。また、温度T1を金属磁性粒子10が相変態する温度以上として加熱すると、金属磁性粒子10が結晶系を変えてしまい、高温相が残存してしまい、分解前の合金組成が変化し理想的なスピノーダル分解ができないからである。
また、温度T1は、絶縁被膜20の熱分解温度未満であることが好ましい。Feが50〜90質量%含有されているFe−Al−Ni系合金のスピノーダル分解温度は700℃〜1000℃であり、Feが20〜85質量%含有されているFe−Al−Co系合金のスピノーダル分解温度は700℃近傍である。そのため、このようなFe−Al−Ni系合金やFe−Al−Co系合金を後述する冷却工程(S60)でスピノーダル分解するためには、加熱する工程(S50)で800℃以上の温度で加熱する必要がある。一方、実施の形態におけるFe−Cr−Co系合金は、Fe−Al−Ni系合金やFe−Al−Co系合金などと比べてスピノーダル分解温度が400〜600℃と低いため、温度T1で加熱を行なっても、絶縁被膜20の耐熱温度以下となり、絶縁被膜20が熱分解しない。
次に、成形体をスピノーダル分解温度よりも低い温度T2まで冷却する工程(S60)を実施する。この工程(S60)により、金属磁性粒子10中のFeおよびCoはFe−Coリッチ相へ、CrはCrリッチ相へ移動する。すなわち、図7に示すような複合磁性粒子は、スピノーダル分解が生じて、図2に示すようなFe−Coリッチ相11とCrリッチ相12との2層に分離したスピノーダル分解相となり、図1に示す圧粉磁心となる。具体的には、図6に示すように、温度T1から温度T2まで、時間(t3−t4)の間、成形体を冷却する。
工程(S60)で、温度T2をスピノーダル分解温度以上の温度とすると、スピノーダル分解が生じず、Fe−Coリッチ相11とCrリッチ相12とに分離させることができない。
工程(S50)での温度T1、工程(S60)での冷却する温度T2および冷却する時間(t3−t2)は、スピノーダル分解相として微細な(50nm以下の)結晶からなるFe−Coリッチ相11が得られる条件であれば特に制限されるものではない。なお、冷却速度(T2−T1)/(t3−t2)を小さくすると、スピノーダル分解がゆっくり起こるので、Fe−Coリッチ相11は粗大化する。逆に冷却速度を大きくすると、スピノーダル分解が急速に起こるので、Fe−Coリッチ相11は微細になる。アトマイズ法での冷却にみられるように、冷却速度が大きすぎる場合にはスピノーダル分解が起こらなくなる。
工程(S40,50)では、たとえば図8に示すような装置50を用いて、成形体を加熱・冷却できる。加熱する工程(S50)では、ヒータ52A,52BをONにする。そして、電気炉51の内部に成形体40を移動する。これにより、成形体40の温度を上昇させ、温度T1で加熱する。そして、冷却する工程(S60)では、水を冷媒として、水冷帯を設けて、水冷帯に成形体40を移動し保持する。これにより、成形体40を温度T2まで冷却する。
次に、100℃以上400℃以下の温度T3で時効処理を行なう工程(S70)を実施する。この工程(S70)では、スピノーダル分解温度より十分低い温度である温度T3で時効処理を行なうことによって、分解相の組成差を拡大でき、超常磁性効果またはナノクリスタル効果を促進し、低保磁力化効果が大きく得られる。また、この温度範囲とすることによって、保磁力をより低減できる。温度T3は、100℃以上では効果が大きく、400℃以下ではFe−Coリッチ相が成長しないので好ましい。
以上の工程(S10〜S70)により、本発明の実施の形態における圧粉磁心が完成する。
以上説明したように、本発明の実施の形態における圧粉磁心によれば、金属磁性粒子10と、金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30を備えた圧粉磁心であって、金属磁性粒子10は、Fe−Coリッチ相11とFe−Coリッチ相11を取り囲むCrリッチ相12とを有し、Fe−Coリッチ相11は、円相当径が50nm以下で、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなり、Crリッチ相12は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなる。この組成の金属磁性粒子10は、高い変形性、軟磁性化、高い電気抵抗を有することを本願発明者は見出した。そしてこの金属磁性粒子10を圧粉磁心に用いることにより、圧粉磁心の磁束密度の向上、保磁力の低減、および鉄損を低減できることを見出した。すなわち、上記組成のFe−Cr−Co系合金は、高い塑性変形性を有するので、高密度成形体とできる。そのため、圧粉磁心の磁束密度を向上できる。また、上記組成のFe−Cr−Co系合金はスピノーダル分解を起こし、50nm以下の投影面円相当径を有する強磁性Fe−Coリッチ相と、非磁性Crリッチ相とに分解するので、超常磁性効果またはナノクリスタル効果により低保磁力を得ることができる。また、絶縁被膜の分解温度以下でスピノーダル分解が起こるために、良好な渦電流抑制が維持された圧粉磁心を得ることができる。さらに、金属粉末自身も高電気抵抗であるので、上記組成のFe−Cr−Co系合金を金属磁性粒子10として用いることにより、金属磁性粒子10中を渦電流が流れにくくなるので、鉄損をさらに低減させることができる。
また、本発明の圧粉磁心の製造方法によれば、上記の圧粉磁心を製造する方法であって、5質量%以上のCoと、5質量%以上のCrと、75質量%以上のFeとからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子10を準備する工程(S10)と、金属磁性粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20を形成して、軟磁性材料を準備する工程(S30)と、軟磁性材料を加圧成形して、成形体を得る工程(S40)と、スピノーダル分解温度を超えて、金属磁性粒子10が溶解する温度と金属磁性粒子10が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲の温度T1で成形体を加熱する工程(S50)と、成形体をスピノーダル分解温度よりも低い温度T2まで冷却する工程(S60)とを備えている。工程(S10)で変形可能な金属磁性粒子10を準備し、工程(S40)で加圧成形し、工程(S50)でスピノーダル分解温度を超えた温度T1で加熱している。スピノーダル分解温度を超えた温度T1で加熱することにより、成形体の内部を均質化できる。また、工程(S60)で、スピノーダル分解温度よりも低い温度T2まで冷却することにより、スピノーダル分解が生じるので、金属磁性粒子10中に、Fe−Coリッチ相11である強磁性相とCrリッチ相12である非磁性相とを備える金属磁性粒子10の微細相であるスピノーダル分解相を析出できる。
また、スピノーダル分解前の金属磁性粒子10は高い塑性変形性を有する組成であるので、高密度成形体を得ることができ、磁束密度を向上できる。また、金属磁性粒子10は、高い変形性を有するので、軟磁性材料を加圧成形する際に絶縁被膜20に応力集中が起こりにくくなる。このため、絶縁被膜の破壊を抑止して金属磁性粒子同士の絶縁性を保つことができ、圧粉磁心の渦電流損を低減できる。さらに、高電気抵抗とすることができるので、鉄損を低減できる。
[実施例1]
実施例1では、本発明の圧粉磁心の効果を確認すべく、Fe−Cr−Co系合金の金属磁性粒子を用いて圧粉磁心を製造し、磁束密度、保磁力、および鉄損を測定した。
(本発明例1)
まず、82.5質量%のFeと、12.5質量%のCrと、5.0質量%のCoからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子を準備する工程(S10)を実施した。Fe−Cr−Co系合金として、所定の成分を含有するFe、Cr、およびCoを溶解しガスアトマイズ法により粉末化して得た。また、金属磁性粒子の平均粒径は100μmとした。
次に、絶縁被膜を形成して軟磁性材料を準備する工程(S30)を実施した。具体的には、ボンデ法により、平均膜厚が20nmの非晶質リン酸鉄を金属磁性粒子の表面を取り囲む一の絶縁被膜を形成した。そして、そして、絶縁被膜で被覆された金属磁性粒子と、0.5wt%のシリコーン樹脂(GE東芝シリコーン社製 「TSR116」)とを、キシレン溶媒中で混合し、乾燥揮発後、大気中にて150℃の温度で1時間熱処理してシリコーン樹脂を熱硬化した。これにより軟磁性材料を得た。
次に、加圧成形する工程(S40)を実施した。具体的には、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を壁面に塗布した金型を用いて、室温で1300MPaのプレス面圧で軟磁性材料を加圧成形し、外径34mm、内径20mm、厚み5mmのリング状の成形体を作製した。
次に、加熱する工程(S50)、および冷却する工程(S60)を実施した。具体的には、図8に示す装置で行なった。詳細には、成形体を窒素雰囲気中、700℃で1時間加熱し、銅製の水冷帯に移動させて冷却した。
次に、時効処理を行なう工程(S70)を実施した。具体的には、窒素雰囲気中、300℃で10時間、時効処理を行なった。これにより、本発明例1の圧粉磁心を得た。
(本発明例2)
本発明例2の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、本発明例2では加熱処理を行なう工程(S50)において750℃で加熱した点のみ異なる。なお、加熱温度が異なると、冷却工程(S60)における成形体の冷却速度が異なり、本発明例2の加熱温度は本発明例1の加熱温度よりも高いので、冷却速度が大きくなった。
(比較例1)
比較例1の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において400℃で加熱した点のみ異なる。なお、比較例1の加熱温度は本発明例1の加熱温度よりも低いので、冷却速度は小さかった。
(比較例2)
比較例2の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において500℃で加熱した点のみ異なる。
(比較例3)
比較例3の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において600℃で加熱した点のみ異なる。
(比較例4)
比較例4の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において800℃で加熱した点のみ異なる。
(比較例5)
比較例5の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において900℃で加熱した点のみ異なる。
(比較例6)
比較例6の圧粉磁心の製造方法は、基本的には本発明例1と同様の構成を備えているが、加熱処理を行なう工程(S50)において1000℃で加熱した点のみ異なる。
(評価方法)
また、得られた圧粉磁心の各々について、外径34mm、内径20mm、厚み5mmのリング状成形体(熱処理済)に関し、一次300巻、二次20巻の巻き線を施し、磁気特性測定用試料とした。これらの試料について、AC−BHカーブトレーサを用いて50Hz〜1000Hzの範囲で周波数を変化させて、励起磁束密度10kG(=1T(テスラ))における鉄損を測定した。そして鉄損からヒステリシス損および渦電流損を算出した。その結果を表1に示す。ヒステリシス損および渦電流損の算出は、鉄損の周波数曲線を次の3つの式で最小2乗法によりフィッティングすることで行なった。
(鉄損)=(ヒステリシス損係数)×(周波数)+(渦電流損係数)×(周波数)2
(ヒステリシス損)=(ヒステリシス損係数)×(周波数)
(渦電流損)=(渦電流損係数)×(周波数)2
また、磁束密度を測定した。具体的には、DC−BHカーブトレーサを用い、これらの試料について、8.0×103A/m(=100(Oe:エルステッド))の磁界を印加した場合の圧粉磁心の磁束密度B100を測定した。その結果を表1に示す。
また、保磁力Hcを測定した。具体的には、これらの試料について、1(T:テスラ)→−1T→1T→−1Tの磁場を順に印加するとともに、試料振動型磁力計(VSM)を用いてそのときのB(磁束密度)H(磁界)ループの形状を特定した。そして、このBHループの形状からペレットの保磁力を算出し、その値を圧粉磁心の保磁力とした。その結果を表1に示す。
また、成形体に含まれる粉末を取り出し、イオンミリング加工により薄片化することでTEM観察試料を作成した。この試料にてTEM−EDX法によりFe−Coリッチ相とCrリッチ相との組成分析を行なった。その結果を表2に示す。なお、表2から、本発明例1および2のFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)は、15.2および16.5であった。
Figure 2008108760
Figure 2008108760
表1および表2に示すように、円相当径が50nm以下で、かつFeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなるFe−Coリッチ相と、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなるCrリッチ相とを有する本発明例1および本発明例2は、高い磁束密度を維持するとともに、保磁力が低く、鉄損が低かった。一方、Fe−Coリッチ相とCrリッチ相との2相を有していない比較例1は、保磁力が高かった上に、鉄損が非常に高かった。Fe−Coリッチ相の大きさが大きい比較例2,3は、保磁力が高かった上に、鉄損が非常に高かった。Crの含有率の低いCrリッチ相を有する比較例4〜6は、磁束密度が非常に低く、保磁力が非常に高く、かつ鉄損が非常に高かった。
以上説明したように、本発明の実施例1によれば、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなり、かつ円相当径が50nm以下のFe−Coリッチ相と、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Coおよび不可避的不純物からなるCrリッチ相とを有する金属磁性粒子を備える圧粉磁心は、磁束密度を高く、保磁力を低く、かつ鉄損値を低くできることが確認できた。
[実施例2]
実施例2では、本発明の圧粉磁心の製造方法の効果を確認するべく、工程(S10)で準備した金属磁性粒子の相変態する温度とスピノーダル分解する温度をさらに調べた。
まず、実施例1で用いた金属磁性粒子の相変態する温度を調べるために、82.5質量%のFeと、12.5質量%のCrと、5.0質量%のCoからなるFe−Cr−Co系合金(Fe−12.5Cr−5.0Co)を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子(ガスアトマイズ法により作製)を室温から1000℃まで、10(℃/分)の速度で、窒素雰囲気中、加熱を行ない、TG−DTA(ブルカー・エイエックスエス社製の「TG−DTA−2200SA」)を用いて測定した。その結果を図9に示す。なお、図9は、Fe−12.5Cr−5.0Coを室温から1000℃まで加熱したときの状態を示す図である。
次に、実施例1で用いた金属磁性粒子のスピノーダル分解する温度を調べるために、82.5質量%のFeと、12.5質量%のCrと、5.0質量%のCoからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子(ガスアトマイズ法により作製)を1000℃から室温まで、10(℃/分)の速度で、窒素雰囲気中、冷却を行ない、TG−DTA(ブルカー・エイエックスエス社製の「TG−DTA−2200SA」)を用いて測定した。その結果を図10に示す。なお、図10は、Fe−12.5Cr−5.0Coを1000℃から室温まで冷却したときの状態を示す図である。
図9に示すように、実施例1で用いた金属磁性粒子の相変態する温度は806.1℃であることがわかった。また、図10に示すように、実施例1で用いた金属磁性粒子のスピノーダル分解する温度は463.4℃であることがわかった。なお、実施例1で用いた金属磁性粒子が溶解する温度は約1530℃である。すなわち、実施例1の工程(S50)は、スピノーダル分解温度を超えて、金属磁性粒子が溶解する温度と金属磁性粒子が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲とは、463.4℃を超えて806.1℃未満である。
このことから、本発明例1および2は、加熱する工程(S50)および冷却する工程(S60)によりスピノーダル分解を生じ、かつスピノーダル分解が適度な速度で起きたことがわかった。一方、比較例1は、Fe−Cr−Co系合金はα相のままであったが、加熱する工程(S50)で十分に加熱しなかったために、スピノーダル分解が起こらなかったことがわかった。比較例2および3は、Fe−Coリッチ相が粗大化して円相当径が大きくなったのは、スピノーダル分解は生じるものの、スピノーダル分解の速度が遅かったためであることがわかった。比較例4は、Fe−Coリッチ相とCrリッチ相との濃度差が小さかったのは、スピノーダル分解の速度が急激であったことがわかった。比較例5および6は、金属磁性粒子が相変態する温度以上の温度で加熱したので、γ相が析出して、スピノーダル分解が妨げられたことがわかった。
以上説明したように、本発明の実施例2によれば、スピノーダル分解温度を超えて、金属磁性粒子が溶解する温度と金属磁性粒子が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲の温度で成形体を加熱する工程と、成形体をスピノーダル分解温度よりも低い温度まで冷却する工程とを備え、スピノーダル分解の速度を調整することにより、実施例1の圧粉磁心を製造できることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の圧粉磁心は、たとえばチョークコイル、磁気ヘッド、各種モータ部品、自動車用ソレノイド、各種磁気センサおよび各種電磁弁などに利用することができる。
本発明の実施の形態における圧粉磁心を模式的に示す図である。 図1における1の複合磁性粒子を拡大して模式的に示す図である。 本発明の実施の形態における製造方法を工程順に示す図である。 本発明の実施の形態において準備する軟磁性材料の模式図である。 本発明の実施の形態における加圧成形後の複合磁性粒子を示す模式図である。 本発明の実施の形態における加圧成形する工程、加熱する工程、冷却する工程、および時効処理を行なう工程を説明するための図である。 本発明の実施の形態における加熱する工程後の1の複合磁性粒子を示す模式図である。 本発明の実施の形態における冷却する工程に用いる装置の概略図である。 Fe−12.5Cr−5.0Coを室温から1000℃まで加熱したときの状態を示す図である。 Fe−12.5Cr−5.0Coを1000℃から室温まで冷却したときの状態を示す図である。
符号の説明
10 金属磁性粒子、11 Fe−Coリッチ相、12 Crリッチ相、20 絶縁被膜、30 複合磁性粒子、40 成形体、50 装置、51 電気炉、52A,52B ヒータ、T1〜T3 温度、t1〜t5 時間。

Claims (5)

  1. 金属磁性粒子と、前記金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を備えた圧粉磁心であって、
    前記金属磁性粒子は、Fe−Coリッチ相と前記Fe−Coリッチ相を取り囲むCrリッチ相とを有し、
    Fe−Coリッチ相は、円相当径が50nm以下で、FeおよびCoの質量比の和が80質量%以上で、かつFeおよびCoの質量比の比(Fe/Co)が3以上18以下であるFeとCoとを含有し、残部がCrおよび不可避的不純物からなり、
    Crリッチ相は、75質量%以上のCrを含有し、残部がFe、Co、および不可避的不純物からなる、圧粉磁心。
  2. 前記金属磁性粒子の平均粒径は、10μm以上500μm以下である、請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記絶縁被膜は、ガラス系被膜、セラミックス被膜、および樹脂被膜のうちのいずれかを用いてなる一層または複数層の構造である、請求項1または2に記載の圧粉磁心。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心を製造する方法であって、
    5質量%以上のCoと、5質量%以上のCrと、75質量%以上のFeとからなるFe−Cr−Co系合金を含有し、残部が不可避的不純物からなる金属磁性粒子を準備する工程と、
    前記金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜を形成して、軟磁性材料を準備する工程と、
    前記軟磁性材料を加圧成形して、成形体を得る工程と、
    スピノーダル分解温度を超えて、前記金属磁性粒子が溶解する温度と前記金属磁性粒子が相変態する温度のうち低い方の温度未満の範囲の温度で前記成形体を加熱する工程と、
    前記成形体をスピノーダル分解温度よりも低い温度まで冷却する工程とを備える、圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記冷却する工程後に、100℃以上400℃以下の温度で時効処理を行なう工程をさらに備える、請求項4に記載の圧粉磁心の製造方法。
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