JP2001321006A - 漁礁ブロック - Google Patents

漁礁ブロック

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JP2001321006A JP2000143259A JP2000143259A JP2001321006A JP 2001321006 A JP2001321006 A JP 2001321006A JP 2000143259 A JP2000143259 A JP 2000143259A JP 2000143259 A JP2000143259 A JP 2000143259A JP 2001321006 A JP2001321006 A JP 2001321006A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、コンクリート製品に代え、製鋼スラ
グを原料とした硬化体を利用しても、水生植物を着生さ
せ、繁茂させて魚介類の生育に好適な環境とすることの
可能な漁礁ブロックを提供することを目的としている。 【解決手段】海水中に沈設される魚礁ブロックであっ
て、P25を2〜10mass%及び金属鉄を1〜5m
ass%含有する粉粒状の溶銑予備処理スラグと高炉ス
ラグ微粉末との混合物を水で混練して硬化させてなるこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、漁礁ブロックに係
わり、詳しくは、水生植物を着生させ、繁茂させて魚介
類の生育に好適な環境にする漁礁ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】製鋼工程で発生するスラグは、塩基度
(CaO/SiO2)が高く、且つ遊離CaOを多量に
含有するため、水分を吸って膨脹し易く、高炉スラグの
ような土木・建設資材としての用途には向かず、従来よ
りその処理に難儀している。そこで、かかる状況を打破
するため、近年、製鋼スラグを積極的に活用する技術の
開発が試みられるようになった。
【0003】例えば、特開平10−152364号公報
は、製鋼スラグを含有する骨材と潜在水硬性を有するシ
リカ含有物質とポゾラン反応性を有するシリカ含有物質
のうち1種または2種を50%以上含有し、水和反応に
よって硬化する結合材とを混合して製造した水和硬化体
を開示している。また、特開平2−233539号公報
は、結合材、細骨材、粗骨材の全てを粉砕および破砕し
た鉄鋼スラグとすると共に、前記結合材に高炉スラグと
製鋼スラグとを混合した鉄鋼スラグを用いて製造したス
ラグ・ブロックを開示している。
【0004】一方、天然の岩場に代わる水棲生物の活動
場所を提供するブロックとしては、従来より、コンクリ
ートからなるテトラ・ポット、プレート、漁礁ブロック
等が使用されてきた。このうち、太陽光線の届き難い比
較的深場で使用される漁礁ブロックは、無筋或いは鉄筋
入りのコンクリート、または鋼鉄だけで作製されてい
る。特に、海で使用されるものは、平成8年制定の日本
土木学会標準示方書[施工編](平成8年3月発行)の
第22章に「海洋コンクリート」ととして例示され、
「その施工にあたっては、海洋汚染、生態系への影響等
が生じないよう、環境保全に十分注意しなければならな
い」と記載されている。具体的には、海洋における場所
打ちコンクリートの施工にあっては、海水の汚濁を引き
起こさないような対策を取るよう解説している。また、
予め硬化させたコンクリート・ブロックを水中に沈設し
て使用する場合には、沈設時のショックによる崩壊、水
中での使用期間に水流や波による力で崩壊しないよう、
十分な強度と耐久性を備えたり、容易に動いてしまわぬ
よう比重が大きいことが望まれる。さらに、環境保全に
も十分注意しなければならないことは言うまでもない。
鋼鉄製の場合も、沈設時のショックに耐える強度はもち
ろん、長期に渡る使用に耐えうるよう耐食性も考慮する
必要がある。
【0005】しかしながら、現在の魚礁ブロックは、コ
ンクリート製及び鋼鉄製のいずれであっても、水棲生物
の活動の場としては不十分であり、何よりも水棲生物の
生息に良い環境を与えることが最重要課題にされて然る
べきものと考える。
【0006】そこで、本出願人は、水棲生物の活動の場
にふさわしい漁礁ブロックの開発を試みることにした
が、コンクリートを用いた漁礁ブロックが、前記スラグ
硬化体と同様な手法で製造されていることに着眼した。
なぜならば、コンクリート製漁礁に代え、製鋼スラグを
主原料とした硬化体が利用できれば、製鋼スラグに新し
い用途が開け、その大量利用になると考えたからであ
る。
【0007】早速、本出願人が、製鋼スラグを原料とす
るスラグの硬化体を上記した従来技術を用いて試作した
ところ、下記のような問題点が明らかとなった。
【0008】まず、特開平10−152364号公報記
載の方法によれば、製鋼スラグとして転炉スラグを用い
ると、20℃の水中で養生した際に硬化体が崩壊し、満
足できるものにならない場合があった。そこで、この原
因を詳細に調査した結果、近年は、転炉の内張り耐火物
を保護するためにスラグ中に添加されるドロマイトやマ
グネシアクリンカ等に起因して転炉スラグ中のMgO濃
度が高くなっているが、このようなMgO濃度が高い転
炉スラグを用いると、硬化体にする際に該転炉スラグに
含まれるfree−MgOが水中養生で水和膨張し、製
造されるべき硬化体が崩壊することが判明した。
【0009】また、前記特開平2−233593号公報
記載の方法で転炉スラグを原料としたスラグの硬化体を
製造するには、該転炉スラグを微粉砕する必要がある。
しかしながら、転炉スラグ中には、上記したようにfr
ee−MgO相が含まれているため、スラグ自体が固く
て微粉になり難く、反応性の高い微粉にまで粉砕するに
は、粉砕コストが莫大になるという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑み、コンクリート製品に代え、製鋼スラグを原料と
した硬化体を利用しても、水生植物を着生させ、繁茂さ
せて魚介類の生育に好適な環境とすることの可能な漁礁
ブロックを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者は、転炉スラグを
原料にした硬化体の製造についての前記問題点を検討
し、該転炉スラグに所謂「溶銑予備処理スラグ」を採用
すること、及びそれと他の物質との配合量を適正にする
ことで解決した。そして、発明者は、該硬化体に水棲生
物の活動に良い環境を与えるべく改良を加え、その成果
を本発明に具現化したのである。なお、溶銑予備処理と
は、溶銑の転炉製鋼において、転炉における通常の脱炭
精錬を行なう前の溶銑に、予め各種の精錬剤を添加して
脱珪、脱燐、脱硫処理をすることを言い、その際生じた
スラグを溶銑予備処理スラグと称している。
【0012】すなわち、上記目的を達成する本発明は、
海水中に沈設される魚礁ブロックであって、P25を2
〜10mass%及び金属鉄を1〜5mass%含有す
る粉粒状の溶銑予備処理スラグとSiO2含有物質の微
粉末との混合物を水で混練して硬化させてなることを特
徴とする漁礁ブロックである。
【0013】また、本発明は、前記混合物が、粒径1.
18mm以下の溶銑予備処理スラグを15〜55mas
s%、SiO2含有物質の微粉末として高炉スラグ微粉
末を5〜40mass%含有したり、あるいは粒径1.
18mm以下の溶銑予備処理スラグを15〜55mas
s%、SiO2含有物質の高炉スラグ微粉末を3〜36
mass%及びフライアッシュを1.5〜30mass
%含有し、且つ高炉スラグ微粉末及びフライアッシュの
合計含有量に対するフライアッシュ含有量の比が質量比
で0.1〜0.75としてなることを特徴とする漁礁ブ
ロックである。
【0014】また、本発明は、前記高炉スラグ微粉末、
フライアッシュ及び粒径1.18mm以下の溶銑予備処
理スラグの合計含有量に対する粒径1.018mm以下
の溶銑予備処理スラグの含有量の比が質量比で0.2超
としてなることを特徴とする漁礁ブロックである。
【0015】さらに、本発明では、前記混合物に、アル
カリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化
物、硫酸塩、塩化物から選ばれた1種又は2種以上を、
高炉スラグ微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対
して0.2〜20mass%添加したり、あるいはナフ
タレンスルホン酸及び/又はポリカルボン酸を、高炉ス
ラグ微粉末、フライアッシュ及び粒径が0.1mm以下
の溶銑予備処理スラグの合計含有量に対して0.1〜
2.0mass%添加するのが好ましい。
【0016】加えて、前記硬化体が、フライアッシュ配
合量を増加した表面層を備えたり、あるいは硫酸鉄から
なる表面層を備えていると一層良い。
【0017】本発明によれば、海中に沈設する硬化体
に、藻の成長に役立つ成分を含有させるようにしたの
で、水生植物の着生が良好になり、繁茂するようにな
る。その結果、魚介類の生育に好ましい環境が形成され
るばかりでなく、従来廃棄されていた溶銑予備処理スラ
グの新しい用途開発にも貢献することになる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、発明をなすに至った経緯
を交え、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】まず、本発明では、製鋼スラグとして特に
溶銑予備処理スラグを使用することにした。その理由
は、溶銑予備処理スラグが以下に述べる特性を備えてい
るからである。 (1)溶銑予備処理では精錬剤にMgOを添加しないの
で、発生したスラグは、元来MgO濃度が低く、且つC
aO/SiO2が低い。また、若干含まれるMgOもほ
とんどCa2MgSi27として存在し、free−M
gO相がほとんど存在しない。従って、従来転炉スラグ
を原料として使用した場合に生じていたfree−Mg
Oの水和膨張による硬化体の割れ、粉化、変形、強度低
下等の問題を一掃できる可能性がある。 (2)溶銑予備処理スラグは、上記のようにCaO/S
iO2が低く、且つP2 5濃度が高いので、free−
CaO濃度が低い。そのため、free−CaOによる
水和膨張性も低く、該free−CaOの水和膨張に起
因する硬化体の割れ、粉化、変形、強度低下等の問題も
一掃できる可能性がある。 (3)また、微粉が多く、反応性が高いので、それ自体
が他の配合物質である高炉スラグ微粉末やフライアッシ
ュの代替になり得る。 (4)上記したように、free−MgO相がほとんど
存在しないので、スラグ自体が柔らかく、転炉スラグに
比較してはるかに粉砕し易い。 (5)微粉の溶銑予備処理スラグの働きで、溶銑予備処
理スラグと前記した高炉スラグ微粉末やフライアッシュ
とが反応し易くなり、硬化体のより高強度化が図れる。
【0020】しかしながら、この溶銑予備処理スラグで
硬化体を試作したところ、それだけでは硬化体の強度向
上やひび割れを抑制する効果が不十分であった。そこ
で、発明者は、溶銑予備処理スラグを使用するにあたっ
て、そのうちの粒径1.18mm以下の部分が15〜5
5mass%となるように配合するようにした。つま
り、発明者は、溶銑予備処理スラグのうちで硬化反応に
寄与の大きな部分がどのようなものであるかを詳細に調
査し、その結果、粒径1.18mm以下のものが特に反
応性が良好で、得られる硬化体の強度が高くなり、しか
もひび割れの発生が著しく小さくなることを見い出し
た。そこで、本発明では、溶銑予備処理スラグに含まれ
る粒径1.18mm以下のものの含有量を、水を除く全
配合物(混合物ともいう)のうちで特に限定するように
したのである。なお、このことは、配合する溶銑予備処
理スラグの中に、これよりも粒度の大きい溶銑予備処理
スラグが含まれていることを妨げるものではない。粒度
の大きい溶銑予備処理スラグは、粉砕の過程で粉砕され
にくかったことを意味し、それ自体がある程度の強度を
有しているので、増量剤として、また粗粒ながらも活性
が高く結合材としての寄与があり得るからである。
【0021】また、本発明では、このような粒径1.1
8mm以下の溶銑予備処理スラグの量を限定する一方
で、これと反応するSiO2含有物質をも適正量で配合
するようにした。そのようなSiO2含有物質は、潜在
水硬性あるいはポゾラン反応性を有するものが好まし
く、具体的には高炉スラグ微粉末を単味で、あるいは高
炉スラグ微粉末とフライアッシュとの混合物が好まし
い。このフライアッシュは、高炉微粉末と同様に潜在水
硬性あるいはポゾラン反応性を有する物質であり、石炭
の燃焼によって生成する。また、フライアッシュは、そ
れ自体が極めて微粉であり、これを高炉スラグ微粉末の
代替として使用すると、溶銑予備処理スラグとの反応性
が一層向上し、硬化体のひび割れ発生の抑制と長時間養
生後の強度の向上が可能となる。なお、高炉スラグ微粉
末を単味で使用する場合、その適正含有量は、5〜40
mass%とする。なお、本発明において溶銑予備処理
スラグ及び高炉微粉末の含有量を上記のように限定した
理由は、下記の通りである。
【0022】粒径1.18mm以下の溶銑予備処理スラ
グの含有率が15mass%未満であったり、あるいは
高炉スラグ微粉末の含有量が40mass%超えでは、
相対的にSiO2を硬化させるアルカリ金属(またはア
ルカリ土類金属)イオンの供給が不足気味となり、得ら
れる硬化体の強度が低下するからである。また、粒径
1.18mm以下の溶銑予備処理スラグの含有率が55
mass%超え、あるいは高炉スラグ微粉末の含有量が
5mass%未満では、溶銑予備処理スラグ中の水和膨
張性を有するCaO等の成分を固定するSiO2が不足
気味となるため、得られる硬化体を水中養生する過程で
硬化体の膨張や粉化が発生し、著しく硬化体の強度が低
下するからである。
【0023】さらに、本発明では、SiO2含有物質の
微粉末として、高炉スラグ微粉末とフライアッシュとの
混合物を使用する場合には、それら混合物の適正含有量
は、粒径1.18mm以下の溶銑予備処理スラグの含有
率を15〜55mass%、高炉スラグ微粉末の含有率
を3〜36mass%、フライアッシュの含有率を1.
5〜30mass%とする。そして、特に、高炉スラグ
微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対するフライ
アッシュ含有量の比が質量比で0.1〜0.75とする
ことが必要である。このように限定する理由は、以下の
通りである。
【0024】まず、粒径1.18mm以下の溶銑予備処
理スラグの含有率の限定理由は、既に述べた理由と同じ
なので省略する。高炉スラグ微粉末を3〜36mass
%としたのは、3mass%未満では、高強度の硬化体
が得られず、36mass%超えでは、強度のそれ以上
の増加が望めず、不経済だからである。フライアッシュ
は、その含有量が1.5mass%以上で、且つ高炉ス
ラグ微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対するフ
ライアッシュ含有量の比が質量比で0.1以上の場合
に、その効果が顕著である。ただし、フライアッシュ
は、常温での硬化性が高炉スラグ微粉末よりも劣る傾向
があり、フライアッシュの含有率が30mass%超え
たり、あるいは高炉スラグ微粉末及びフライアッシュの
合計含有量に対するフライアッシュ含有量の比が質量比
で0.75を超えると、硬化体全体としての硬化を遅ら
せることとなり、好ましくない。したがって、フライア
ッシュの含有率は、1.5〜30mass%で、且つ高
炉スラグ微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対す
るフライアッシュ含有量の比が質量比で0.1〜0.7
5とする。
【0025】加えて、本発明では、高炉スラグ微粉末、
フライアッシュ、粒径1.18mm以下の溶銑予備処理
スラグの合計含有量に対する粒径1.18mm以下の溶
銑予備処理スラグの含有量の比が質量比で0.2超とす
るのが一層好ましい。このようなにすると、溶銑予備処
理スラグから供給されるアルカリ金属(あるいはアルカ
リ土類金属)イオンの量と、SiO2含有物質中の反応
性SiO2の量的バランスが一層適正となり、硬化体の
ひび割れ防止効果が高まるからである。
【0026】本発明では、上記したような配合によっ
て、製造した硬化体の強度の向上とひび割れ発生を著し
く低減するが、さらに加えて、混合物にアルカリ金属及
び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、硫酸
塩、塩化物から選ばれた1種または2種以上を、高炉ス
ラグ微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対して
0.2〜20mass%添加したり、あるいは、ナフタ
レンスルホン酸及び/又はポリカルボン酸を、高炉スラ
グ微粉末、フライアッシュ、粒径が0.1mm以下の溶
銑予備処理スラグの合計含有量に対して0.1〜2.0
mass%添加しても良い。
【0027】アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属
の酸化物、水酸化物、硫酸塩、塩化物から選ばれた1種
または2種以上を0.2mass%以上添加することに
よって、硬化体の硬化を促進することが可能となり、養
生に要する時間を短縮できるからである。しかし、20
mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するた
め、上限は20mass%とする。
【0028】また、ナフタレンスルホン酸及び/又はポ
リカルボン酸を添加すると、混合物を水と共に混練する
際の混錬性が向上する。そのため、混練に必要な水の量
を低減することができ、その結果、より高強度の硬化体
が得られるようになる。その際に、その添加量を高炉ス
ラグ微粉末及びフライアッシュの合計含有量に対して
0.1mass%未満では効果に乏しく、2.0mas
s%を超えて添加しても、効果が飽和するので、0.1
〜2.0mass%に限定する。
【0029】以上のようにして製造した硬化体は、魚礁
ブロックとしてコンクリートに替ても十分な強度と耐久
性を持つ。しかし、本発明は、さらに、使用する溶銑予
備処理スラグの組成に制限を加えて、深場でも水生植物
の養成ができるようにしたことが重要なポイントであ
る。つまり、溶銑予備処理スラグのP25及び金属鉄の
含有率がそれぞれ2〜10mass%及び1〜5mas
s%の範囲にあることを必須とする。このようにする
と、P25及び金属鉄が水生植物の肥料になるのか、理
由は定かでないが、太陽光線が弱いところでも水生植物
の生育が促進される。また、この場合、P25と金属鉄
が共存していることが必要で、いずれか一方が欠けても
所望の効果が発揮できない。なお、それぞれの下限を、
2mass%及び1mass%としたのは、それ未満で
は、少な過ぎて上記効果が発揮できないからであり、上
限を10mass%及び5mass%としたのは、それ
を超えても効果が飽和するし、そのような溶銑予備処理
スラグは現実に存在しないからである。
【0030】次に、本発明では、硬化体の表面層を改質
して、効果のさらなる増大を図った。それは、硬化体の
表面層を内部よりフライアッシュの配合量を多くした多
層構造にしたり、あるいは表面に硫酸鉄を存在させるよ
うにしたものである。その表面層であるが、それは硬化
体の表面から5mm程度の厚みとする。5mm超えで
は、前記物質が海水と接触する機会がほとんどなく、該
表面層の形成効果が期待できないからである。また、こ
の表面層を形成させる方法については、本発明では、特
に限定しない。種々の方法が利用できるからである。た
だし、具体的には、以下のような2通りの方法が採用で
きる。その1つは、製造された硬化体の表面に前記物質
を吹き付けたり、塗布したり、あるいは液状にして含浸
させる方法である。他の1つは、硬化体の製造時に、予
め予備処理スラグ、高炉スラグ微粉末、及び/又はフラ
イアッシュ等の混合物に前記物質を適当量添加した表面
層用の混合物(前記フライアッシュに富んだ)を準備し
ておき、それを硬化体製造用の枠に予め所定厚みになる
ように流し込んでから、本来の硬化体製造用混合物を流
し込み、本体と同時に硬化させるものである。また、そ
のような特殊な混合物を準備せずに、型枠にこれらの物
質を単に敷いてから、硬化体原料の混合物を流しこんで
も良い。
【0031】以上のように製造した硬化体は、漁礁ブロ
ックとして、さらにコンクリート製のものに比較する
と、高比重で、アルカリ溶出による周囲の水のpH上昇
も低く生態系への影響が非常に少ないという利点もあ
る。
【0032】
【実施例】(発明例)配合原料として、P252mas
s%以上、金属鉄を1%以上含有する粉状の溶銑予備処
理スラグ(脱珪、脱燐、脱硫別で示した表1参照)、粒
径0.1mm以下に微粉砕した高炉スラグ微粉末、さら
に一部については、これにフライアッシュ(粒径0.1
mm以下)、Ca(OH)2、NaOH、CaSO4・2
2O、CaCl2、NaCl、Na2SO4、ナフタレン
スルホン酸、ポリカルボン酸等を必要に応じて加え、水
で混練して混合物とした。そして、該混合物を型枠に流
し込み、大気中で養生をして硬化体を製造した。これら
混合物中の各原料の含有量、比率、混練水の添加量を表
2に一括して示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】また、これらと同一の混合物を型枠に流し
込み、20℃の水中養生して得られた硬化体の28日養
生後の強度、表面乾燥比重、91日養生後の強度を表3
に一括して示す。さらに、大気中で28日養生をした硬
化体の表面ひび割れ本数、大気中で28日養生をした硬
化体を海水を入れた深さ3mの水槽に沈設し、硬化体表
面から1cm離れた位置のpH及び同様に純水に沈設し
た時のpHを測定し、それらの値も表3に併せて示す。
なお、海水のpHは,該硬化体の沈設前で8.2であ
り、純水のpHは,6.8であった。
【0036】
【表3】
【0037】(比較例)通常の砕石、砂を骨材に用い、
ポルトランドセメント、AE減水剤を加え、水で混練し
て混合物とした(表4参照)。該混合物を型枠に流し込
み、発明例1と同様に養生しコンクリートの硬化体を得
た。そして、これについても上記と同様の評価を行な
い、その結果を表5に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】表3及び表5を比較すると、本発明に係る
魚礁ブロックは、コンクリート製のものに遜色しない強
度やひび割れ特性を有していることが明らかである。
【0041】次に、表2及び表4の混合物で製造した硬
化体を、太陽光線の入射を弱めた暗室に設けた深さ3m
の海水槽に沈設し、水生植物の代表としての藻の成長を
確認した。なお、その場合の硬化体は、下記の5種類で
ある。また、海水のpHは、8.2とした。 ・表2のNo.1による硬化体(記号イ), ・表2のNo.1の硬化体の表面に、No.4のフライ
アッシュ含有量の多い混合物を塗布したもの(記号
ロ)、 ・表2のNo.1による硬化体の表面に硫酸鉄を含浸さ
せたもの(記号ハ)、 ・表4のコンクリートによる硬化体(記号ニ)、 ・表2のNo.1と配合は同じであるが、溶銑予備処理
スラグのP25を1.6mass%、金属鉄を0.8m
ass%としたもの(記号ホ) 沈設後の藻の成長状況を図1に示すが、本発明に係る漁
礁ブロックは、太陽光線の弱いところでも、藻の成長が
確認でき、魚貝類の生育に好ましい環境を与える効果が
あると期待できる。
【0042】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、比較
的深い海中でも、水生植物を着生、繁茂させて魚介類の
生育に好適な環境とすることに優れた漁礁ブロックが、
製鋼スラグを主原料にして提供できる。従って、本発明
は、資源の再利用、環境の向上等に寄与することも期待
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る漁礁ブロックを用いた藻の成長実
験結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C04B 28/08 (C04B 28/08 18:08 18:08 Z 18:14 18:14 F 24:22 24:22 Z 24:26 24:26 E 22:12 22:12 22:14 22:14 A 22:06) 22:06) Z 111:24 111:24 (72)発明者 松永 久宏 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 中川 真紀子 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 熊谷 正人 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 2B003 AA01 BB03 DD02 DD04 EE04 4G012 PA03 PA27 PA29 PB03 PB09 PB10 PB11 PB24 PB31 PC03 PC04 PC13 PD03 4G028 DA01 DB01 DC07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海水中に沈設される魚礁ブロックであっ
    て、 P25を2〜10mass%及び金属鉄を1〜5mas
    s%含有する粉粒状の溶銑予備処理スラグとSiO2
    有物質の微粉末との混合物を水で混練して硬化させてな
    ることを特徴とする漁礁ブロック。
  2. 【請求項2】 前記混合物が、粒径1.18mm以下の
    溶銑予備処理スラグを15〜55mass%、高炉スラ
    グ微粉末を5〜40mass%含有してなることを特徴
    とする請求項1記載の漁礁ブロック。
  3. 【請求項3】 前記混合物が、粒径1.18mm以下の
    溶銑予備処理スラグを15〜55mass%、高炉スラ
    グ微粉末を3〜36mass%及びフライアッシュを
    1.5〜30mass%含有し、且つ高炉スラグ微粉末
    及びフライアッシュの合計含有量に対するフライアッシ
    ュ含有量の比が質量比で0.1〜0.75としてなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の漁礁ブロック。
  4. 【請求項4】 前記高炉スラグ微粉末、フライアッシュ
    及び粒径1.18mm以下の溶銑予備処理スラグの合計
    含有量に対する粒径1.18mm以下の溶銑予備処理ス
    ラグの含有量の比が質量比で0.2超としてなることを
    特徴とする請求項3記載の漁礁ブロック。
  5. 【請求項5】 さらに、アルカリ金属及び/又はアルカ
    リ土類金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、塩化物から選
    ばれた1種又は2種以上を、高炉スラグ微粉末及びフラ
    イアッシュの合計含有量に対して0.2〜20mass
    %添加してなることを特徴とする請求項3又は4記載の
    漁礁ブロック。
  6. 【請求項6】 さらに、ナフタレンスルホン酸及び/又
    はポリカルボン酸を、高炉スラグ微粉末、フライアッシ
    ュ及び粒径が0.1mm以下の溶銑予備処理スラグの合
    計含有量に対して0.1〜2.0mass%添加してな
    ることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の漁
    礁ブロック。
  7. 【請求項7】 前記硬化体に、さらにフライアッシュ配
    合量を増加した表面層を備えたことを特徴とする請求項
    1〜6のいずれかに記載の漁礁ブロック。
  8. 【請求項8】 前記硬化体に、さらに硫酸鉄からなる表
    面層を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか
    に記載の漁礁ブロック。
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