JP6931842B2 - セメント混和材、セメント混和材の製造方法、セメント組成物およびセメント組成物の製造方法 - Google Patents

セメント混和材、セメント混和材の製造方法、セメント組成物およびセメント組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セメント混和材、セメント混和材の製造方法、セメント組成物およびセメント組成物の製造方法に関する。
モルタルやコンクリートのようなセメント硬化物には、乾燥収縮や自己収縮のような体積変化、温度応力の作用や外力の作用などによって、ひび割れが生じることがある。ひび割れは、セメント硬化物の美観を損なうだけでなく、ひび割れからの水や酸素の侵入によりセメント硬化物の耐久性や耐力の低下(鉄筋腐食や漏水など)を招く原因となる。
近年、セメント硬化物にひび割れが生じた場合にセメント硬化物自らがひび割れを閉塞するひび割れ自己治癒性能を有するセメント硬化物が検討されている。セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を付与するためには、セメント硬化物となるセメント組成物にセメント混和材としてひび割れ自己治癒材料を含有させる。このようなひび割れ自己治癒材料としては、水酸化カルシウム、アルミノシリケート、マグネシウムシリケート、炭酸塩、炭酸ジアミドなどが知られており、その化学的作用などを利用して、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を付与している。
しかし、ひび割れ自己治癒材料は、一般に、吸水性、膨潤性あるいは水との反応活性が高いものである。したがって、このような材料をそのままセメント組成物に混和した場合、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性を低下させることになる。このため、特許文献1および2には、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を付与するセメント混和材として、炭酸ジアミド、水酸化カルシウムおよび硫酸カルシウムのいずれか一種に、繊維材料からなる担体とセメントと水とを加えて、転動造粒した造粒物からなるセメント混和材を用いて、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性の低下を抑制することが提案されている。
特開2013−103847号公報 特開2013−103849号公報
しかし、特許文献1および特許文献2に記載のセメント混和材は、その製造時において、造粒のために水を加える必要があり、このような水分によって、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用が徐々に失われ、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができないおそれがある。
したがって、本発明は、水の混合を必須としなくても製造することができ、セメント組成物に混和した場合にもフレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響が少なく、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができるセメント混和材およびそれを含むセメント組成物の提供を目的とする。
(1)本発明の実施形態に係るセメント混和材は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料と、を含有する。
(2)本発明の実施形態に係るセメント混和材は、上記(1)記載のセメント混和材であって、上記第2の材料の表面の少なくとも一部が、上記第1の材料により被覆された粉粒状物であってもよい。
(3)本発明の実施形態に係るセメント混和材は、上記(1)または(2)記載のセメント混和材であって、上記第2の材料に上記第1の材料の少なくとも一部が含浸された粉粒状物であってもよい。
(4)本発明の実施形態に係るセメント混和材は、上記(1)から(3)のいずれか一つに記載のセメント混和材であって、上記第1の材料を5質量%以上25質量%以下含有し、上記第2の材料を75質量%以上95質量%以下含有するものであってもよい。
(5)本発明の実施形態に係るセメント組成物は、水と、セメントと、上記(1)から(4)のいずれか一つに記載のセメント混和材とを含有する。
(6)本発明の実施形態に係るセメント組成物は、上記セメント混和材を20kg/m以上200kg/m以下含有してもよい。
(7)本発明の実施形態に係るセメント混和材の製造方法は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料と、を混合する混合工程を備える。
(8)本発明の実施形態に係るセメント組成物の製造方法は、水と、セメントと、上記(1)から(4)のいずれかに記載のセメント混和材とを混合する混合工程を備える。
本発明のセメント混和材は、水の混合を必須としなくても製造することができ、セメント組成物に混和した場合にもフレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響が少なく、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができる。
(セメント混和材)
本発明の実施形態に係るセメント混和材は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料とを含有する。
これにより、ひび割れ自己治癒作用を有するセメント混和材を水の混合を必須としなくても製造することができ、保管時には第1の材料によって第2の材料の少なくとも一部を保護することができるから、製造時および保管時の水分によるひび割れ自己治癒作用の低下が抑制され、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができる。
なお、本明細書における非イオン界面活性剤および多価アルコールは水溶性材料である。本明細書におけるひび割れ自己治癒材料は、本実施形態のセメント混和材を含有するセメント組成物を硬化させたセメント硬化物に、水の存在下でひび割れ自己治癒性能を付与するものであり、吸水性、膨潤性あるいは水との反応活性があるものである。「水との反応活性」があるとは、常温で水と反応する、または、常温で水と反応した反応物と反応する等の直接的または間接的に水と反応する性状を有することを意味する。ここで、常温とは、JIS Z 8703に規定される常温を示す。
また、本明細書おけるひび割れ自己治癒作用とは、セメント混和材がセメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を付与する作用のことをいう。本明細書において、セメント組成物とは、上記セメント混和材と、水と、セメントとを少なくとも含有するモルタル組成物、コンクリート組成物またはセメントペースト組成物をいう。本明細書において、セメント硬化物とは、上記セメント組成物の少なくとも一部が水和反応により硬化したものをいう。
上記セメント混和材は、上記第2の材料の表面の少なくとも一部が、上記第1の材料により被覆された粉粒状物であってもよい。
上記第1の材料による第2の材料の被覆により、上記セメント混和材をセメント組成物に混和した場合にも、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響を低減させることができる。また、上記被覆により、ひび割れ自己治癒材料における吸水、膨潤あるいは水が関係する反応などの水作用の進行を抑え、ひび割れ自己治癒材料の作用の低下を抑制させることができる。さらにまた、上記被覆により、水または水と反応した反応物が、ひび割れ自己治癒材料に接触するのを抑制することができるから、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の発現を遅延させることもできる。なお、本発明において、粉粒状物とは粉状物および粒状物の少なくとも一方を含むものをいう。
そして、セメント硬化物において、セメント混和材の第1の材料が水によって溶解され、ひび割れ自己治癒材料の少なくとも一部が露出され、露出部に水が作用することによって、上記ひび割れ自己治癒材料の作用が発現される。
セメント混和材には、第1の材料がバインダとして機能して第2の材料の少なくとも一部を凝集させた凝集物が含有されていてもよい。
上記凝集によって、ひび割れ自己治癒材料の吸水、膨潤あるいは水が関係する反応などの水作用の進行をさらに抑え、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の低下を抑制させることができる。このため、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の発現をさらに遅延させ、ひび割れ自己治癒材料を徐放化させることができる。上記凝集物は、平均粒径が0.1mm以上15mm以下程度であってもよく、より好ましくは0.5mm以上5mm以下程度であってもよい。
セメント混和材は、ひび割れ自己治癒作用を十分に得るために、上記ひび割れ自己治癒材料を主成分として含有するものであってもよい。特に、上記セメント混和材は、セメント混和材100質量%に対して、上記第1の材料を5質量%以上25質量%以下含有し、上記第2の材料を75質量%以上95質量%以下含有することが好ましい。この場合には、上記第1の材料が非イオン界面活性剤および前記多価アルコールの少なくとも一方のみからなり、前記第2の材料がひび割れ自己治癒材料のみからなることが好ましい。
これにより、セメント混和材は、ひび割れ自己治癒作用を十分に得ることができ、かつ、上記第1の材料によってひび割れ自己治癒材料を十分に保護することができる。したがって、セメント混和材は、より効果的に、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響を低減し、ひび割れ自己治癒材料の作用の低下を抑制させることができる。
なお、上記セメント混和材は、セメント混和材100質量%に対して、上記非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を5質量%以上20質量%以下含有し、上記ひび割れ自己治癒材料を80質量%以上95質量%以下含有することがより好ましい。
上記セメント混和材は、第2の材料の表面の一部または全部が、上記第1の材料によって被覆されたものであってもよい。第2の材料の表面の全部が上記第1の材料によって被覆されたものである場合、上記被覆により、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響を低減させ、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の低下を抑制させ、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の発現を遅延させる効果を一層高めることができる。
また、上記セメント混和材は粉粒状物であってもよいし、スラリーなどの液状物であってもよい。上記セメント混和材が粉粒状物である場合には、各材料間の分離が生じにくく、取扱いを容易とすることができる。
上記セメント混和材が粉粒状物である場合は、粉粒状物は、前記第2の材料に前記第1の材料の少なくとも一部が含浸されたものであってもよい。これにより、ひび割れ自己治癒材料の徐放性を高めることができる。
上記粉粒状物は、上記第2の材料の吸液率が低い場合には被覆する形態を成し、上記第2の材料の吸液率が高い場合には被覆および含浸の両方の形態を成す。第2の材料の少なくとも一部が上記第1の材料によって被覆および含浸されたものである場合、上記被覆および含浸により、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響を低減させ、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の低下を抑制させ、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の発現を遅延させる効果を一層高めることができる。
上記第2の材料は、上記ひび割れ自己治癒材料を主成分として含むものであってもよい。また、第1の材料と第2の材料とは、第1の材料が非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方のみからなるものであってもよく、第2の材料がひび割れ自己治癒材料のみからなるものであってもよい。
この場合には、一層確実に、ひび割れ自己治癒材料の少なくとも一部が第1の材料により被覆された状態にすることができ、第1の材料によるひび割れ自己治癒作用の保護効果を高めることができる。したがって、上記セメント混和材の混和により、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響を一層少なくできると共に、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができ、セメント混和材の製造時および保管時の水分に起因するセメント硬化物のひび割れ自己治癒性能の低下を抑制することができる。
上記第2の材料としては、0.01mm以上1.5mm以下の平均粒径または平均長手方向長さを有するひび割れ自己治癒材料を使用してもよい。これにより、第2の材料と液状の第1の材料または液状化された第1の材料とを混合しやすくなるから、第1の材料による第2の材料の被覆が良好なセメント混和材とすることができる。
上記セメント混和材は、水を含有するものであっても、含有しないものであってもよい。セメント混和材に水を含有しない場合(但し、セメント混和材の吸湿による若干の水分を含有する場合を除く)には、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用が徐々に失われるおそれを一層低減することができる。
上記セメント混和材は、上記第1の材料および上記第2の材料の含有比率が異なる複数のセメント混和材料の混合物であってもよい。これにより、ひび割れ自己治癒作用の発現時期を分散させることができるから、セメント硬化物のひび割れ自己治癒性能をより長時間に亘って持続させることができる。
また、本実施形態に係るセメント混和材は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料、および、ひび割れ自己治癒材料からなる第2の材料に加えて、第1の材料および第2の材料とは異なる他の材料をさらに含有するものであってもよい。上記他の材料としては、減水剤等の添加物等を例示することができる。
本実施形態における上述の効果を得るために、上記第1の材料の非イオン界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジプロパノールアミド、パーム油脂肪酸モノエタノールアミド、パーム油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム油脂肪酸モノプロパノールアミド、パーム油脂肪酸ジプロパノールアミド、牛油脂肪酸モノエタノールアミド、牛油脂肪酸ジエタノールアミド、牛油脂肪酸モノプロパノールアミド、牛油脂肪酸ジプロパノールアミド、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールジパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、グリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEグリセリル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル等)、ソルビタン脂肪酸エステル類(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(モノヤシ脂肪酸POEソルビタン、トリステアリン酸POEソルビタン等)、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル類(モノラウリン酸ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル等)、アルキル多価アルコールエーテル類(グリセリンモノドデシルエーテル、ペンタエリスリトールモノドデシルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類(POE・POPデシルエーテル、POE・POPラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン類(POEステアリルアミン、POEオレイルアミン等)、脂肪酸アルカノールアミド類(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等)、アシルメチルグルカミド類(ラウリン酸メチルグルカミド、ヤシ脂肪酸メチルグルカミド等)、POEアセチレングリコール、POEラノリン、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、アルキルポリグルコシドを用いることができる。
また、上述の効果を得るために、上記第1の材料の多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪酸ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール、及び脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルキレングリコール)、炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール等のアルカントリオール)、炭素数5〜20の4〜8価のアルコール(脂肪族ポリオール、例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、及びジペンタエリストール並びにこれらの分子内又は分子間脱水物、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド等の糖類及びその誘導体)などの2価以上のアルコールを用いることができる。特に、数平均分子量が400以上の高分子量ポリオールを好適に使用することができる。数平均分子量が400以上の高分子量ポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコールを例示することができる。上記多価アルコールとしてポリオキシプロピレングリコールを用いた場合、セメント硬化物の圧縮強度を高くできると共に、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性への影響が少なく、ひび割れ自己治癒作用の低下を抑制することができる。
次に、上記第2の材料のひび割れ自己治癒材料について具体的に説明する。ひび割れ自己治癒材料は、例えば(1)未水和反応状態のセメントの水和、(2)炭酸カルシウム等の化合物の析出、(3)吸水による膨潤、(4)微粒子の目詰まりなどを、セメント硬化物のひび割れ部分またはひび割れ部分の近傍で起こすことにより、セメント硬化物のひび割れを自己修復させる材料である。
好適には、ひび割れ自己治癒材料は、セメント、ポゾラン反応性を有する材料、潜在水硬性を有する材料、尿素、膨張材又は水膨張性粘土鉱物、骨材、繊維、層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)、結晶性及び非晶質のケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート)、リン酸カルシウム、炭酸基を有する化合物及び鉱物、リチウムを含有する化合物及び鉱物、マグネシウムを含有する化合物及び鉱物、フッ素を含有する化合物、酸化カルシウムを含有する材料からなる群から選択される1種または2種以上からなるものである。ひび割れ自己治癒材料がこれらの2種以上が混合された混合物である場合には、その混合割合は任意とすることができる。
特に、ひび割れ自己治癒材料は、繊維および骨材の少なくとも一方からなる一のひび割れ自己治癒材料と、セメント、ポゾラン反応性を有する材料、潜在水硬性を有する材料、尿素、膨張材又は水膨張性粘土鉱物、層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)、結晶性及び非晶質のケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート)、リン酸カルシウム、炭酸基を有する化合物及び鉱物、リチウムを含有する化合物及び鉱物、マグネシウムを含有する化合物及び鉱物、フッ素を含有する化合物、酸化カルシウムを含有する材料からなる群から選択される一種または複数種からなる他のひび割れ自己治癒材料とを混合した混合物であってもよい。
上記セメントとしては、一般的に用いられるセメントであれば、特に限定せずに使用可能である。上記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、ジェットセメント等からなる群から選択される少なくとも1種からなるセメントが挙げられる。
上記ポゾラン反応性を有する材料としては、フライアッシュ、シリカフューム、シリカ質微粉末、ケイ酸ソーダ水溶液のpHを調整して合成する沈降性シリカ又はシリカゲル、もみ殻又は稲わらの燃焼灰、カオリン鉱物(カオリナイト、ディカイト、ハロイサイト等)を500〜900℃程度で焼成したメタカオリン等に代表される焼成粘土、廃瓦、廃煉瓦、廃陶器、廃陶磁器等の窯業から発生する廃材、製鋼時に発生する高炉フューム等のシリカ含有量の高い人工ポゾラン、シラス、珪酸質白土、凝灰岩、珪藻土、酸性火山岩、火山灰等のシリカ含有量の高い天然ポゾラン等からなる群から選択される少なくとも1種からなる材料が挙げられる。
上記ポゾラン反応性を有する材料のなかでも、フライアッシュ、シリカフュームおよびシリカ質微粉末は、安価であるため好適に用いることができる。ここで、フライアッシュとしては、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるものであれば、特に限定せずに使用可能である。このうち、汎用的に入手できる観点からは、フライアッシュI種、フライアッシュII種を使用することができる。シリカフュームとしては、JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」に規定されるものであれば、特に限定せずに使用可能である。シリカ質微粉末としては、電融ジルコニア製造時に回収されるシリカ質微粉末、光ファイバー等のシリカガラス製造時に回収されるシリカ質微粉末、金属シリコンを酸化させて製造する合成シリカ質微粉末、ケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によって合成するシリカ質微粉末が例示される。
上記潜在水硬性を有する材料としては、高炉スラグ微粉末が挙げられる。高炉スラグ微粉末としては、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定されるものであれば、特に限定せずに使用可能である。上記高炉スラグ微粉末としては、高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000、高炉スラグ微粉末8000等を例示することができる。
上記尿素は、化学式(NHCOの窒素化合物であり、公知のものを使用することができる。例えば、尿素として、常温の気中で無色無臭の顆粒状の物質であって水に容易に溶解するものを使用することができる。
上記膨張材としては、JIS A 6202「コンクリート用膨張材」に規定されているものであれば、特に限定せずに使用可能である。例えば、市販されている膨張材としては、石灰系膨張材、エトリンガイト系膨張材、エトリンガイト−石灰複合系膨張材等を例示することができる。上記水膨張性粘土鉱物としては、Na−ベントナイト、Ca−ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト等からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。
上記骨材としては、山砂、海砂、川砂、砕砂、珪砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケル細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材、フェロクロム細骨材、天然軽量骨材、人工軽量細骨材、再生細骨材、クリンカー骨材、シラス骨材等からなる群から選択される少なくとも1種からなる骨材が挙げられる。上記骨材のうち、第1の材料で被覆および含浸させるという観点では、吸液率が高く、反応性を有するシラス骨材や、非鉄スラグ骨材を用いることが望ましい。
上記繊維としては、高分子繊維、無機繊維、金属繊維等のいずれの材質のものでも、特に限定せずに使用可能であるが、アスベストのような人体に有害な繊維を除くことが好ましい。上記繊維としては、ビニロン系高分子繊維、ポリプロピレン系高分子繊維、ポリビニルアルコール系高分子繊維、ポリアクリル系高分子繊維、ポリアクリルニトリル系高分子繊維、ポリアミド系高分子繊維、ポリウレタン系高分子繊維、セルロース系高分子繊維、レーヨン系高分子繊維、アセテート系高分子繊維、無機繊維としては、耐アルカリ性ガラス繊維、ロックウール、スラグウール、ワラストナイト繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アタパルジャイト、セピオライト、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、鋼繊維、高張力鋼繊維、ステンレス繊維等からなる群から選択される一種または複数種の混合物が挙げられる。このうち、有機繊維としては安価なビニロン系高分子繊維、ポリプロピレン系高分子繊維の使用が好ましい。無機繊維としては、自己治癒材料及びセメントとの親和性の高いロックウール、スラグウール、ワラストナイト繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アタパルジャイト、セピオライトの使用が好ましく、ひび割れ自己治癒材料(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)の組成を有する塩基性硫酸マグネシウム繊維、アタパルジャイト、セピオライトの使用が特に好ましい。
上記層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)としては、粘土鉱物のカオリン族に属するカオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、オーディライト、粘土鉱物のタルク−パイロフィライト族に属するタルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、粘土鉱物のスメクタイト族に属するサポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、粘土鉱物のバーミキュライト族に属する3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト、粘土鉱物の雲母族に属するマスコバイト、フロゴパイト、アンナイト、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、ポリリシオナイト、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミノセラドン石、アルミノセラドン石、砥部雲母、ソーダ雲母、セリサイト、粘土鉱物の層間欠損型雲母族に属するイライト、海緑石、ブラマーライト、ウォンネサイト、粘土鉱物の脆雲母族に属するクリントナイト、キノシタ、ヒデ雲母、真珠雲母、粘土鉱物の緑泥石族に属するクリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイト等からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。
上記結晶性のケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート)としては、ゼオライトに属するクリノプチロライト、モルデナイト、ローモンタイト、菱沸石、ソーダ沸石等の天然産ゼオライト、合成ゼオライト、フライアッシュに水酸化ナトリウム等の強アルカリ性水溶液を加えて加熱処理することで得られる人工ゼオライト等からなる群からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。上記非晶質のケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート)としては、アロフェン、イモゴライト、ヒシンゲライト等からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。
上記リン酸カルシウムとしては、Ca(HPO、CaHPO、Ca(PO、骨灰等からなる群から選択される少なくとも1種からなる化合物が挙げられる。また、炭酸基を有する化合物又は鉱物としては、金属の炭酸塩が好適であり、例えば、LiCO、NaCO、KCO、MgCO、LiHCO、NaHCO、KHCO、Mg(HCO等からなる群から選択される少なくとも1種からなる化合物が挙げられる。
上記リチウムを含有する化合物としては、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、硫酸リチウム一水和物、アルミン酸リチウム、硫酸水素リチウム、亜硫酸リチウム水和物、亜硝酸リチウム、硝酸リチウム、リン酸リチウム、メタリン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン化三リチウム、メタケイ酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、ケイ酸四リチウム、ギ酸リチウム一水和物、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム四水和物、酒石酸リチウム一水和物、酢酸リチウム、コハク酸リチウム、乳酸リチウム、安息香酸リチウム、オレイン酸リチウム、ステアリン酸リチウム等の工業用リチウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種からなる化合物が挙げられる。上記リチウムを含有する鉱物としては、ペタライト、スポジュメン、レピドライト、アンブリゴナイト、モンテブラサイト、ビキアタイト等のリチウム含有鉱物からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。
上記マグネシウムを含有する化合物としては、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の工業用マグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種からなる化合物が挙げられる。上記マグネシウムを含有する鉱物としては、マグネシウムを多量に含有するドロマイト、マグネサイト、かんらん石、蛇紋岩、角閃石、輝石、頑火輝石、透輝石、コーリンガイト、スジクレナイト、パイロオーライト、ブルグナテライテ、ネスケホニト等のマグネシウム含有鉱物からなる群から選択される少なくとも1種からなる鉱物が挙げられる。
上記フッ素を含有する化合物としては、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム等からなる群から選択される少なくとも1種からなる化合物が挙げられる。フッ素を含有する化合物は、セメント組成物を含むモルタル及びコンクリートにおいて、セメント鉱物の水和物として生成する水酸化カルシウムや他のカルシウムを含有する自己治癒材料と反応して、フルオロアパタイト、フッ化カルシウム、ケイフッ化カルシウム等の不溶性塩を生成してひび割れを治癒する。
上記酸化カルシウム(生石灰、CaO)を含有する材料としては、市販の製銑焼結用生石灰、製鋼転炉用生石灰、硬焼生石灰、土質改良用生石灰、製鋼時の副産物で酸化カルシウムを多量に含む転炉スラグ及び電気炉還元スラグ等からなる群から選択される少なくとも1種からなる材料が挙げられる。酸化カルシウムを含有する材料は、水との反応により水酸化カルシウムを生じるが、この反応は体積膨張であり、膨張材としても機能する。また、ひび割れ自己治癒材料として、上記炭酸基を有する化合物と酸化カルシウムとを含有する材料を用いることで、モルタルやコンクリートにひび割れが生じた場合、これらの両成分の反応による炭酸カルシウム等の安定性の高い反応物を形成でき、一層優れたひび割れ自己治癒性能が得られるようになる。
次に、上記セメント混和材の製造方法を説明する。本実施形態に係るセメント混和材の製造方法は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方からなる材料を主成分として含む上記第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む上記第2の材料とを混合する混合工程を備える。
上記混合工程は、例えば、撹拌混合装置や転動式混合装置などの汎用の混合装置を用いて行うことができる。撹拌混合装置としては、一軸式ミキサ、二軸式ミキサ、ホバートミキサを例示することができ、転動式混合装置としては、パンペレタイザ、傾胴式ミキサを例示することができる。混合工程において、上記第1の材料と上記第2の材料とを上記混合装置に投入して、混合することで上記セメント混和材を製造する。上記第1の材料と上記第2の材料とは、上記混合装置に同時に投入してもよいし、第2の材料を投入した後に、第1の材料を第2の材料に対して噴霧等することにより、第1の材料を後から投入してもよい。
なお、上記混合工程において、上記第1の材料は液状物であることが好ましい。この場合、混合工程において、粉粒状物である第2の材料に第1の材料を被覆しやすくすることができ、セメント混和材の製造時および保管時の水分に起因するひび割れ自己治癒機能の低下を抑制しやすいからである。
上記第1の材料の原材料としては、常温で液状物であるもの、および、常温で固状物であるものの少なくとも一方を含む材料を用いることができる。第1の材料の原材料が常温で固状物である場合には、上記混合工程の前に、第1の材料の原材料を液状化して、第1の材料とする液状化工程を更に備えてもよい。例えば、液状化工程は、第1の材料の原材料を加熱溶融することで、上記原材料を液状化させて第1の材料とすることで実施することができる。加熱溶融は、乾燥炉や電気炉等の公知の加熱装置を用いて実施する。
また、上記混合工程においては、水を混合しなくてもよいし、水を混合してもよい。上記混合工程において水を混合しない場合には、上記水がひび割れ自己治癒材料に作用することがないから、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の低下を一層抑制することができる。また、混合工程においては、必要に応じて、添加物を混合してもよい。
(セメント組成物)
本発明の実施形態に係るセメント組成物は、上記セメント混和材と、水と、セメントと、骨材とを含有するモルタル組成物またはコンクリート組成物、または、上記セメント混和材と、水と、セメントとを含有するセメントペースト組成物である。上記セメント組成物は、セメント組成物の流動性を高く維持できると共に、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができ、セメント混和材の製造時および保管時の水分に起因する上記ひび割れ自己治癒性能の低下を抑制できる。
なお、上記セメントとしては、セメント組成物に一般的に用いられるセメントであれば、特に限定せずに使用可能である。上記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、ジェットセメント等を例示することができる。上記セメントは、一種類でもよく、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
上記水としては、特に限定されず、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用できるが、セメントの水和反応やセメント組成物に悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が含まれない、又はそれらの含有量が微量であることが好ましい。上記水としては、品質の安定した水道水又は工業用水が特に好ましい。
上記骨材には、細骨材及び粗骨材の少なくとも一方を含む。上記細骨材としては、山砂、海砂、川砂、砕砂、珪砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケル細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材、フェロクロム細骨材、人工軽量細骨材、再生細骨材等からなる群から選択される一種または複数種の混合物が挙げられる。上記粗骨材としては、山砂利、海砂利、川砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材、人工軽量粗骨材、再生粗骨材等からなる群から選択される一種または複数種の混合物が挙げられる。
本実施形態に用いられるセメント組成物には、必要に応じて、上記セメント混和材以外の添加物が含まれてもよい。添加物としては、膨張材、収縮低減剤、減水剤、消泡剤、流動化剤、凝結促進剤、凝結遅延剤等の化学混和剤、合成樹脂粉末、合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、石灰石粉末等を例示することができる。なお、上記添加物は一種類でもよく、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
本実施形態に係るセメント組成物は、上記セメント組成物であって、上記セメント混和材を20kg/m以上200kg/m以下含有するものであってもよい。上記セメント混和材を20kg/m未満含有する場合には、セメント組成物に対するセメント混和材の含有量が少ないため、ひび割れ自己治癒効果を得るまでに時間を要することになり、セメント混和材を200kg/mを超えて含有する場合には、コストが高くなる。
次に、本実施形態に係るセメント組成物の製造方法を説明する。本実施形態に係るセメント組成物は、水、セメントおよび上記セメント混和材とを混合する組成物混合工程を備える製造方法によって製造される。混合工程においては、更に骨材を混合してもよい。
また、本実施形態の変形例に係るセメント組成物の製造方法は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む上記第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む上記第2の材料と、を混合してセメント混和材を作製する混和材作製工程と、水、セメント、および、上記セメント混和材とを混合する組成物混合工程とを備えてもよい。組成物混合工程においては、更に骨材および添加物の少なくとも一方を加えてもよい。
上記組成物混合工程は、例えば、撹拌混合装置などの汎用の混合装置を用いて行うことができる。撹拌混合装置としては、一軸式ミキサ、二軸式ミキサ、ホバートミキサを例示することができる。組成物混合工程において、水、セメントおよび上記セメント混和材とを混合装置に投入して、十分に混練することで上記セメント組成物を製造する。この後、セメント組成物を養生して硬化させることで、セメント硬化物を形成する。
上記組成物混合工程において、セメント組成物全量中、上記セメント混和材が20kg/m以上200kg/m以下となるように、上記セメント混和材をセメント組成物に混合してもよい。上記セメント混和材を20kg/m未満混合する場合には、セメント組成物に対するセメント混和材の含有量が少ないため、ひび割れ自己治癒効果を得るまでに時間を要することになり、セメント混和材を200kg/mを超えて混合する場合には、コストが高くなる。
なお、混和材作製工程においては、水を混合しなくてもよいし、水を混合してもよい。混和材作製工程において水を混合しない場合には、上記水がひび割れ自己治癒材料に作用することがないから、ひび割れ自己治癒作用の低下を一層抑制することができる。また、第1の材料の原材料が常温で固状物である場合には、混和材作製工程の前に、上記混合工程の前に、第1の材料の原材料を液状化して、第1の材料とする液状化工程を更に備えてもよい。
次に、上記実施形態に係るセメント混和材およびそれを含有するセメント組成物を、実施例を用いて詳細に説明する。
表1に示す質量比率(質量%)で各材料を混合したものを、実施例1〜10のセメント混和材とした。実施例1〜10のセメント混和材は、水を混合しなくても製造することができた。また、ひび割れ自己治癒材料としてのセメントのみからなるセメント混和材を比較例1とした。なお、表1中、各材料は下記の略号を用いて説明する。実施例1〜10のセメント混和材は、比較例1のセメント混和材と比較して、粉粒状物の色が黒に近く、少なくとも粉粒状物の粒径が大きくなったものがあることが目視された。これにより、上記セメント混和材は、第2の材料の表面の少なくとも一部が、第1の材料によって被覆されており、及び/又は、第1の材料がバインダとして機能して第2の材料の少なくとも一部を凝集させた凝集物が含有されていると考えられる。
(第1の材料)
=非イオン界面活性剤=
略号
A1:脂肪酸アルカノールアミド(商品名:アミゾールCME、川研ファインケミカル株式会社製)
A2:ポリエチレングリコールモノステアレート(商品名:エマノーン3199V、花王株式会社製)
A3:アセチレングリコール(商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル株式会社製)

=多価アルコール=
略号
B1:ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量400、三洋化成工業株式会社製)
B2:ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量1000、三洋化成工業株式会社製)
B3:ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量4000、三洋化成工業株式会社製)

(第2の材料)
略号
C:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
D:Na型ベントナイト(クニミネ工業社製)
Figure 0006931842
次に、表2に示す質量比率(質量%)で各材料を混合して、実施例11〜32のセメント組成物(モルタル)を作製した。実施例11〜32のセメント組成物(モルタル)は、実施例1〜10のセメント混和材を含有するものである。また、比較例11として、セメント混和材を含有しないもの、比較例12および比較例13として、比較例1のセメント混和材を含有するものを作製した。実施例11〜32および比較例11〜13は、水セメント比を0.50及び細骨材セメント比を2.5とすると共に、セメントを100質量部として0.6質量部のAE減水剤(添加物)を含有させたものである。各材料としては下記のものを用いた。
水:上水道水(千葉県船橋市)
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
細骨材:山砂(静岡県掛川市産)
AE減水剤:商品名マスターポリヒード15S(BASFジャパン株式会社製)
Figure 0006931842
<測定方法>
実施例11〜32及び比較例11〜13のセメント組成物について、以下の手法により、モルタルフロー、圧縮強度および通水量を測定した。表3に測定結果を示す。
(モルタルフロー)
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して、練り上がり直後の実施例11〜32及び比較例11〜13のセメント組成物を対象として15打モルタルフローを測定した。
(圧縮強度)
直径50mm×高さ100mmの軽量鋼製型枠に、実施例11〜32及び比較例11〜13のセメント組成物を打込み、打込み翌日に脱型して供試体を形成した。上記供試体を20±2℃の水中環境下に材齢28日まで浸漬させた後、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して圧縮強度を測定した。
(通水比)
通水比は、ひび割れ自己治癒性能を示すものであり、以下の手法により計測した。まず、幅200mm×長さ200mm×厚さ30mmの平版にφ6mmの鋼材を2本設置した型枠に、実施例11〜32及び比較例11〜13のセメント組成物を打込み、型枠内で材齢14日まで封かん養生させた後に脱型したものを供試体とした。耐圧試験機を用いて3点曲げ載荷試験をすることで上記供試体の中央にひび割れを発生させた後、供試体端面に鋼板を添わせてボルトで締め付けることにより、表面ひび割れ幅が0.3mmになるように調整した。さらに、供試体上面に内径100mm×高さ100mmの塩化ビニル製パイプを設置し、供試体とパイプとの接合部からの漏水が生じないように、供試体とパイプとの接合部にシリコーンゴム材を塗布して止水処理を行った。この初期状態の供試体を用いて、初期通水量を測定した。この後に、該供試体を20℃±2℃の水中に7日間浸漬させ、材齢7日目の供試体を用いて材齢7日通水量を測定した。初期通水量および材齢7日通水量の測定は、上記塩化ビニル製パイプ内に500mLの水を投入し、投入後60分間までの通水量(mL)を計測することにより行った。計測された初期通水量と材齢7日通水量とから、初期通水量に対する材齢7日通水量の比(=材齢7日通水量(mL)/初期通水量(mL))を算出して、これを通水比とした。
Figure 0006931842
表3の結果により、実施例1〜10のセメント混和材を用いることで、実施例11〜32のセメント組成物は比較例11〜13と比較して、通水比を低減できることが確認された。一方、実施例1〜10のセメント混和材を用いることで、実施例11〜32のセメント組成物は比較例11と比較して、モルタルフロー及び圧縮強度が大きく低下することはなかった。特に、実施例18〜32は、第1の材料としてポリオキシプロピレングリコールを用いた例であるが、比較例1と比較して圧縮強度を高くできると共に、通水比を低減し、モルタルフローの低下を防ぐこともできた。
上記結果から、実施例1〜10のセメント混和材の混和は、フレッシュ状態のセメント組成物の流動性に与える影響が少なく、セメント硬化物の圧縮強度を高く維持できると共に、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与することができることが認められる。特に、第1の材料としてポリオキシプロピレングリコールを用いた場合、圧縮強度を高くすることもできる効果があることが認められた。
また、第1の材料による第2の材料の被覆及び第1の材料による第2の材料の凝集により、ひび割れ自己治癒材料の吸水、膨潤あるいは水が関係する反応の進行を抑え、セメント混和材のひび割れ自己治癒作用の低下を抑制することができたものと考えられる。そして、上記セメント混和材は、セメント混和材の製造時に水を必須材料としなくても製造することができ、セメント混和材の製造時および保管時のひび割れ自己治癒作用の低下を抑え、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与できるものと考えられる。
なお、本発明に係るセメント混和材およびセメント組成物は、上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。

Claims (7)

  1. 非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料とを含有しており、
    第2の材料の表面の少なくとも一部が、第1の材料により被覆された粉粒状物であり、
    非イオン界面活性剤は、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコールモノステアレート、および、アセチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種であり、
    多価アルコールは、ポリオキシプロピレングリコールであり、
    ひび割れ自己治癒材料は、セメント、または、セメントおよびベントナイトであるセメント混和材。
  2. 非イオン界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料とを含有しており、
    第2の材料に第1の材料の少なくとも一部が含浸された粉粒状物であり、
    非イオン界面活性剤は、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコールモノステアレート、および、アセチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種であり、
    多価アルコールは、ポリオキシプロピレングリコールであり、
    ひび割れ自己治癒材料は、セメント、または、セメントおよびベントナイトであるセメント混和材。
  3. 前記第1の材料を5質量%以上25質量%以下含有し、前記第2の材料を75質量%以上95質量%以下含有する請求項1または2のいずれか一項に記載のセメント混和材。
  4. 水と、セメントと、前記請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセメント混和材とを含有するセメント組成物。
  5. 前記セメント混和材を20kg/m以上200kg/m以下含有する請求項4記載のセメント組成物。
  6. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセメント混和材の製造方法であって、
    液体状の第1の材料と、粉粒状の第2の材料とを水なしで混合する混合工程を備えるセメント混和材の製造方法。
  7. 水と、セメントと、前記請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセメント混和材とを混合する混合工程を備えるセメント組成物の製造方法。
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