JP2001316406A - 含フッ素共重合体の製造法 - Google Patents

含フッ素共重合体の製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオ
ロエチレン、ポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)等
の含フッ素単量体の樹脂状共重合体であって、それを成
形したとき成形品の機械的強度を低下させることなく、
透明性を改善し得る含フッ素共重合体の製造法を提供す
る。 【解決手段】 少くとも一種類の含フッ素単量体を含む
単量体混合物に対して1/10倍モル量以下の亜リン酸ジエ
ステルの存在下で、単量体混合物をラジカル共重合反応
させ、含フッ素共重合体を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、含フッ素共重合体
の製造法に関する。更に詳しくは、透明性などにすぐれ
た含フッ素共重合体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】含フッ素共重合体は、耐薬品性、耐油
性、耐候性、耐熱性などにすぐれているため、その成形
品は産業用から家庭用に至る迄幅広く用いられている。
中でも、ヘキサフルオロプロペン[HFP]、クロロトリフ
ルオロエチレン[CTFE]またはポリフルオロ(アルキルビ
ニルエーテル)[FVE]の共重合体、例えばフッ化ビニリデ
ン[VdF]-HFP共重合体、VdF-テトラフルオロエチレン[TF
E]-HFP3元共重合体、VdF-CTFE共重合体、VdF-TFE-CTFE3
元共重合体、VdF-FVE共重合体、VdF-TFE-FVE3元共重合
体、TFE-FVE共重合体等は、VdFまたはTFEの各単独重合
体の結晶性を崩す作用を示すため、含フッ素エラストマ
ーとして公知、公用である。
【0003】一方、これらの共重合体中のHFP、CTFEま
たはFVEの共重合率が含フッ素エラストマーと比較して
低い領域(約20モル%以下、一般には約0.5〜16モル%)で
は、共重合体が室温条件下で融点を有する樹脂としての
特性を示すことが知られている。そして、これらの樹脂
状共重合体は、HFPまたはTFEの単独重合体等とは異な
り、柔軟性と透明性とを併せ持つ成形品、例えばチュー
ブ、ホース類、フィルム・シート類などの成形材料とし
て注目されている。
【0004】一般に、これらの樹脂状共重合体に、より
高度の柔軟性および透明性を与えるには、HFP、CTFEま
たはFVEの共重合率を高めることが有効であるが、共重
合率を高めると成形品の機械的強度が大幅に低下するた
め、自ずから限界がみられる。
【0005】一方、近年種々の結晶核剤と呼ばれる化合
物が市販されており、これを樹脂に配合して成形する
と、成形品の結晶サイズが小さくなり、透明性が改善さ
れる。しかしながら、現在入手可能な有機リン化合物系
結晶核剤を前記の如き樹脂状含フッ素共重合体に配合し
て成形すると、成形品の透明性が殆んど改善されないば
かりではなく、逆に離型性の悪化や成形品の着色などの
好ましからざる副作用がみられるようになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ヘキ
サフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、ポ
リフルオロ(アルキルビニルエーテル)等の含フッ素単量
体の樹脂状共重合体であって、それを成形したとき成形
品の機械的強度を低下させることなく、透明性を改善し
得る含フッ素共重合体の製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
少くとも一種類の含フッ素単量体を含む単量体混合物に
対して1/10倍モル量以下の亜リン酸ジエステルの存在下
で、単量体混合物をラジカル共重合反応させ、含フッ素
共重合体を製造する方法によって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】共重合反応に用いられる含フッ素
単量体としては、例えばVdF、TFE、HFP、CTFE、FVE、フ
ッ化ビニル、トリフルオロエチレン等が用いられ、FVE
としてはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフ
ルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピ
ルビニルエーテル)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピ
ルトリフルオロビニルエーテル等が用いられる。
【0009】本発明においては、これらの含フッ素単量
体が少くとも一種類用いられて共重合反応されるが、共
重合体成形品への透明性付与という観点からは、HFP、C
TFE、FVEあるいはエチレン[E]、プロピレン[P]、アルキ
ルビニルエーテル[AVE]等から選ばれる少くとも一種類
の単量体を、約20モル%以下、好ましくは約0.5〜16モル
%共重合させることが好ましい。
【0010】具体的には、VdF-HFP、VdF-TFE-HFP、VdF-
CTFE、VdF-TFE-CTFE、VdF-FVE、VdF-TFE-FVE、VdF-P、V
dF-TFE-P、TFE-HFP、TFE-FVE、TFE-P、TFE-AVE等の組合
せが好適である。
【0011】共重合反応は、乳化重合法、けん濁重合
法、溶液重合法、塊状重合法等の任意の重合方法で行な
うことができるが、重合度を高めかつ経済性の点からは
水性媒体中での重合反応、特に乳化重合法で行われるこ
とが好ましい。
【0012】重合開始剤としては、有機過酸化物、無機
過酸化物、アゾ化合物等任意のものを用いることができ
るが、本発明における好ましい重合形態である乳化重合
法を行うためには、水溶性過酸化物、特にパーオキシ二
硫酸アンモニウム、パーオキシ二硫酸カリウム等が好ん
で用いられる。
【0013】本発明方法においては、少くとも一種類の
含フッ素単量体を含む単量体混合物のラジカル共重合反
応が、単量体混合物に対して1/10倍モル量以下、好まし
くは1/100〜1/100,000倍モル量の亜リン酸ジエステルの
存在下で行われる。
【0014】亜リン酸ジエステルは、過酸化物から生じ
たラジカルにより水素原子が引き抜かれ、これが含フッ
素オレフィンであるTFE、CTFE、VdF、HFP等に付加反応
することが知られている(J. of Fluorine Chemistry 第
8巻第115〜124頁、1976)。
【0015】この反応においては、これらの含フッ素オ
レフィンに対して過剰モル量の亜リン酸ジアルキルが用
いられているため、含フッ素オレフィンに付加して生じ
たラジカルは過剰に存在する亜リン酸ジアルキルから水
素原子を引き抜き、低分子量のホスホン酸エステルの段
階で反応が停止してしまい、重合体を形成させない。
【0016】しかるに、本発明においては、単量体混合
物に対して1/10倍モル量以下の亜リン酸ジエステルを用
いることにより、単量体混合物の共重合反応を可能とす
るという、全く新しい知見が得られている。亜リン酸ジ
エステルを1/10倍モル量以上の割合で用いると、重合体
が得られなくなるようになるばかりではなく、たとえ重
合体が得られたとしてもその重合度を実用上十分な程度
に迄高めることが困難となる。かかる使用割合の亜リン
酸ジエステルは、その全使用量を予め反応器内に仕込ん
でおくこともでき、あるいは反応中に少量ずつ分割して
仕込むこともできる。なお、亜リン酸ジエステルは、そ
れに対し重合開始剤が約1/100〜100倍モル量、好ましく
は約1/10〜10倍モル量となるような割合で用いられる。
【0017】亜リン酸ジエステルとしては、例えば亜リ
ン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロ
ピル、亜リン酸ジブチル等の亜リン酸ジアルキルエステ
ル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸ジアリールエステ
ル、亜リン酸ジベンジル等の亜リン酸ジアラルキルエス
テルなどが用いられ、好ましくは亜リン酸ジアルキルエ
ステル、中でも亜リン酸ジイソプロピルが重合反応速
度、生成共重合体重合度などの観点から用いられること
が特に望ましい。
【0018】共重合反応に際しては、生成共重合体の分
子量を調節するためのメタノール、エタノール、イソプ
ロパノール、酢酸エチル、マロン酸エチル等の連鎖移動
剤、反応系内のpHを調節するためのNa2HPO4、NaH2PO4
K2HPO4、KH2PO4等の緩衝能を有する電解性化合物緩衝
剤、あるいは亜リン酸ジエステルの作用を阻害しない範
囲内で用いられ、重合開始剤とレドックス系を形成させ
る還元剤等が適宜添加して用いられ、また反応が乳化重
合法によって行われる場合には、パーフルオロオクタン
酸アンモニウム、パーフルオロヘプタン酸アンモニウ
ム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等の乳化剤が少
くとも一種類用いられ、好ましくはパーフルオロオクタ
ン酸アンモニウムが用いられる。
【0019】重合反応は、一般に常圧または約10MPa以
下、好ましくは約1〜5MPaの加圧条件下に、約0〜100
℃、好ましくは約20〜80℃の温度条件下で行われる。乳
化重合法の場合には、得られた含フッ素共重合体の水性
分散液に塩化カルシウム、塩化ナトリウム、カリミョウ
バン等の塩類水溶液を加え、凝析した生成共重合体を
水、有機溶媒またはこれらの混合液等で洗浄し、乾燥す
ることにより精製される。
【0020】得られた含フッ素共重合体は、射出成形
法、圧縮成形法、押出成形法などの任意の成形法によっ
て、フィルム、シート、チューブ、ホース等に成形され
る。
【0021】
【発明の効果】本発明方法で得られた樹脂状含フッ素共
重合体は、それを成形したとき機械的強度を低下させる
ことなく、透明性を改善させる。
【0022】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0023】実施例1 内容積10Lのオートクレーブ内に、 パーフルオロオクタン酸アンモニウム 10g リン酸水素二ナトリウム 10g 亜リン酸ジイソプロピル 0.27g(1.62ミリモル;含フッ素単量 体混合物に対して6.5ミリモル%) を仕込み、内部空間を窒素ガスで十分に置換した後、イ
ソプロパノール1gを圧入した。その後、フッ化ビニリデ
ン[VdF]27.6モル%、テトラフルオロエチレン52.4モル%
およびヘキサフルオロプロペン20.0モル%よりなる混合
ガスを、内圧が1.0MPa・Gになる迄圧入し、内温を80℃
に昇温させた。
【0024】その後、パーオキシ二硫酸アンモニウム0.
37g(1.62ミリモル)を水150ml中に溶解させた重合開始剤
水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合反応を開始さ
せた。このとき、内圧は1.65MPa・Gであった。内圧が1.
3MPa・G迄低下した時点で、VdF/TFE/HFP(モル比30:57:1
3)混合ガスを分添ガスとして、内圧が1.4MPa・Gになる
迄圧入する操作を、生成分散液中の固形分濃度が25重量
%になる迄くり返し行った。分添所要時間は、120分間で
あった。所定の固形分濃度になった時点で、直ちにオー
トクレーブ内の未反応ガスをパージして反応を停止させ
た。
【0025】得られた水性分散液に5重量%カリミョウバ
ン水を添加して含フッ素共重合体を凝析し、水洗、乾燥
した。1700g(重合率75%)の3元共重合体が得られ、その
共重合組成(元素分析、FT-IR、19F-NMRによる)はVdF29
モル%、TFE57モル%、HFP14モル%で、融点(DSC法による)
は160℃、融解熱量(H、DSC法による)は9.0 J/g、また
メルトフローレート(265℃、荷重5Kg)は8.0g/10分であ
った。
【0026】この含フッ素共重合体を、小型射出成形機
(カスタム サイエンティフィックインスツルメント社製
モデルCS-183MNX)を用いて、可塑化条件240℃、時間5分
間、金型温度140℃の条件下で射出成形し、厚さ2mmの試
験片を作製した。
【0027】作製された試験片の透明性を、波長700n
m、550nmまたは450nmの可視光吸収スペクトルの透過率
として測定すると共に、常態物性[硬さ(ショアーA):AST
M D-2240-81準拠、引張強さ:ASTM D-412-83準拠、伸び:
ASTM D-412-83準拠]の測定を行った。
【0028】実施例2 実施例1において、亜リン酸ジイソプロピルの代りに同
モル量の亜リン酸ジエチル0.224gを用い、またモノマー
混合ガス分添所要時間を150分として共重合反応を行な
い、同じ共重合組成を有する3元共重合体を得た。この
共重合体の融点は162℃、融解熱量は8.0 J/g、メルトフ
ローレートは14g/10分であった。
【0029】比較例1 実施例1において、亜リン酸ジイソプロピルを用いず
に、またイソプロパノール量を1.5gに変更し、モノマー
混合ガス分添所要時間を180分として共重合反応を行な
い、同じ共重合組成を有する3元共重合体を得た。この
共重合体の融点は161℃、融解熱量は8.5J/g、メルトフ
ローレートは10g/10分であった。
【0030】比較例2 実施例1において、亜リン酸ジイソプロピルを用いず
に、また分添モノマー混合ガスの組成をVdF/TFE/HFP(モ
ル比29:55:16)に、イソプロパノール量を0.5gにそれぞ
れ変更し、モノマー混合ガス分添所要時間を160分とし
て共重合反応を行った。得られた3元共重合体の共重合
組成はVdF29モル%、TFE55モル%、HFP16モル%で、融点は
152℃、融解熱量は5.9J/g、メルトフローレートは17g/1
0分であった。
【0031】以上の各実施例および比較例における測定
結果は、次の表に示される。 表 測定項目 実-1 実-2 比-1 比-2 [可視光透過率] 700nm (%T) 82 78 63 75 550nm (%T) 70 68 50 64 450nm (%T) 57 54 34 50 [常態物性] 硬さ (ショアーA) 95 95 95 94 引張強さ (MPa) 38.2 37.2 35.8 14.8 伸び (%) 370 360 380 400
【0032】以上の結果から、次のようなことがいえ
る。 (1)各実施例と比較例1との対比から、亜リン酸ジエステ
ルの存在下で製造された含フッ素共重合体は、同一組
成、同程度の結晶性(融点、融解熱量)、同程度の分子量
(メルトフローレート)の亜リン酸ジエステル非存在下で
製造されたものよりは、より良好な可視光透過性を示す
ことが分る。 (2)比較例2では、共重合組成をHFPリッチに変更し、結
晶性を低下させることにより可視光透過性の改善を図っ
たが、各実施例のものには及ばなかった。 (3)亜リン酸ジイソプロピルは、亜リン酸ジエチルより
も重合速度が早く、製造コストからみて有利である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年9月14日(2000.9.1
4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】 実施例1脱イオン水5Lを仕込んだ 内容積10Lのオートクレーブ内
に、 パーフルオロオクタン酸アンモニウム 10g リン酸水素二ナトリウム 10g 亜リン酸ジイソプロピル 0.27g(1.62ミリモル;含フッ素単量 体混合物に対して1/15385モル) を仕込み、内部空間を窒素ガスで十分に置換した後、イ
ソプロパノール1gを圧入した。その後、フッ化ビニリデ
ン[VdF]27.6モル%、テトラフルオロエチレン52.4モル%
およびヘキサフルオロプロペン20.0モル%よりなる混合
ガスを、内圧が1.0MPa・Gになる迄圧入し、内温を80℃
に昇温させた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 AA03 AA05 BB01 BB02 DA01 DA02 DA03 DA04 KB02 KB03 KB22 KB29 PA46 PB40 PC02 PC06 PC07 PC08 PC13 4J015 AA01 BA02 BA03 4J100 AC23P AC24P AC25P AC27P AC30P AG08P AG36P BB17P BB18P CA01 CA04 DA24 DA43 DA48 DA50 DA51 DA62 FA03 FA19 FA20 FA21 JA57

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少くとも一種類の含フッ素単量体を含む
    単量体混合物に対して1/10倍モル量以下の亜リン酸ジエ
    ステルの存在下で、単量体混合物をラジカル共重合反応
    させることを特徴とする含フッ素共重合体の製造法。
  2. 【請求項2】 ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフ
    ルオロエチレンまたはポリフルオロ(アルキルビニルエ
    ーテル)が含フッ素単量体として用いられる請求項1記
    載の含フッ素共重合体の製造法。
  3. 【請求項3】 亜リン酸ジエステルに対し約1/100〜100
    倍モル量の重合開始剤を用いてラジカル共重合反応が行
    われる請求項1記載の含フッ素共重合体の製造法。
  4. 【請求項4】 水性媒体中で共重合反応が行われる請求
    項1記載の含フッ素共重合体の製造法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の方法で製造された樹脂状
    含フッ素共重合体。
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