JP3682868B2 - 含フッ素共重合体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素共重合体の製造法に関する。更に詳しくは、光透過性および耐熱黄変性にすぐれた含フッ素共重合体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
含フッ素共重合体は、含フッ素単量体であるフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)などの少くとも2種類を共重合反応することにより得られ、エラストマー領域から樹脂領域まで様々な特性を有しているが、特に含フッ素共重合体であることにより、高温での熱安定性や極く低温での靱性および柔軟性を有し、さらには耐薬品性にすぐれ、化学的に非常に安定で、非粘着性、低摩擦特性、電気的な諸特性にもすぐれるなど非常にすぐれた特性を備えている。
【0003】
含フッ素共重合体は組成比により、含フッ素エラストマーや含フッ素樹脂となるが、含フッ素エラストマー領域、特にフッ化ビニリデンと他のエチレン性不飽和ハロゲン化モノマー、例えばヘキサフルオロプロピレンとの共重合体は、シール、ガスケット、ライニングのような高温用途に多く用いられ、非常に有用性の高いものである。
【0004】
また、含フッ素樹脂領域、特にポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどは、電気、機械および化学的用途、例えばワイヤー、電機部品、シール、チューブ、ライニングされたパイプ、集電検知器などの用途に用いられている。このようにこれらの含フッ素単独重合体または共重合体は、半導体、自動車、建築、電気・電子、食品分野など様々な分野に用いられている。
【0005】
これらの含フッ素単独重合体または共重合体を得るための重合反応を、重合反応が進行する媒体の種類によって分類すると、乳化重合法、けん濁重合法および溶液重合法が用いられている。これらの各種重合法の中でも、乳化重合法およびけん濁重合法は水性媒体が用いられていることから、コスト的にメリットがあり、さらに乳化重合法ではバッチ効率が高く、一般に反応時間も短いという利点をも有している。
【0006】
含フッ素単量体の乳化重合反応には、重合開始剤として水溶性の過硫酸塩類が一般に用いられているが、このような開始剤はイオン性ラジカル、例えば硫酸ラジカルイオンなどが開始点となるために、含フッ素共重合体末端にイオン性や極性の末端基を含んでしまうことになる。その場合に生じるイオン性または極性末端基は、含フッ素共重合体の熱安定性を低下させてしまい、透明性の低下、耐熱黄変性の悪化、耐熱使用温度の低下、成形加工中の発泡、溶融粘度の変動などの悪影響を及ぼし、医療関係や半導体装置関係においては、製品の歩留まり低下の一因になり、また射出成形や押出成形などを行う場合には、溶融成形性が悪化してしまう。
【0007】
米国特許第4,743,658号明細書には、特定の末端基、例えば-COF,-CONH2,-CF2CH2OHなどを有する含フッ素樹脂は熱的に不安定であることが述べられている。このような末端基は、酸化、加水分解、熱分解などによりHFを発生し、分解点となる。含フッ素共重合体におけるこのような末端基の熱的不安定性は、成形加工時や加硫成形時に熱に曝される時に好ましからざる着色を生ずる原因の一つともなっている。そして、このような着色は、透明性を有する成形品や加硫成形品において商品価値を低下させてしまう。
【0008】
一方、末端基の熱的安定性向上のためには非イオン性末端基を導入すればよいこととなり、非イオン性末端基を有する共重合体は、非イオン性のラジカル開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリルまたはベンゾイルペルオキシドの使用により得ることができる。しかし、ほとんどの非イオン性のラジカル開始剤は水に不溶性で、重合反応の場におけるラジカルの濃度を高くすることが困難となるため、重合反応が進行しにくく、その結果重合時間が長く、効率的な反応が行えなくなってしまう。そのため、この非イオン性開始剤は、水性媒体を用いる乳化重合やけん濁重合などの重合方法には適さない。
【0009】
こうした成形品の着色の問題に対処する方法として、共重合体末端を安定化させるために、フッ素ガス等で含フッ素共重合体を処理する方法が特許第2921026号公報、特開昭62-104822号公報などに報告されている。しかし、このような方法は、フッ化ビニリデン系共重合体、フッ化ビニル系共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などの主鎖に水素原子が結合した共重合体や、主鎖にフッ素原子以外のハロゲン原子が結合したポリクロロトリフルオロエタンやBrやIなどの架橋点を含有する共重合体に対しては、主鎖部分や架橋点をもフッ素化してしまうため、この方法を適用することは困難である。
【0010】
また、米国特許第3,085,083号明細書には、含フッ素共重合体を水分を含む空気中などに保持することにより、カルボキシル基を安定なCF2H基に処理する方法が、特公昭46-3179号公報には、含フッ素共重合体をメタノール中で加熱処理することによりメチルエステル化する方法が、また特開2000-1518号公報には、成形材料を硝酸と加熱して金属を溶出する方法により着色を低減する方法がそれぞれ提案されているが、後処理工程が一工程増えることはコスト的に見て好ましくない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光透過性および高温での長時間使用時の着色変化の程度を示す耐熱黄変性にすぐれた含フッ素共重合体の製造法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、少くとも2種類の含フッ素単量体をラジカル共重合反応させるに際し、一般式 X 1 C n F 2n X 2 ( ここで、 X 1 は F,Cl,Br または I であり、 X 2 は Cl,Br または I であり、ただし X 1 ,X 2 は共に I ではなく、 n は 1 〜 12 の整数である ) で表わされるハロゲン化フルオロアルキル化合物およびこれにラジカルを移動させることのできる重合開始剤を水性媒体中で40〜100℃に加熱した後、含フッ素単量体を反応系内に仕込み、共重合反応させて含フッ素共重合体を製造することによって達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
共重合反応に用いられる含フッ素単量体としては、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル等の少くとも2種類が用いられ、好ましくはフッ化ビニリデンと少くとも1種類の他の含フッ素単量体とが用いられる。
【0014】
また、架橋性含フッ素共重合体を得るために、共重合反応に用いられる含フッ素単量体としてBrやIのような架橋点を有する架橋点含有単量体を共重合させることができる。このような架橋点含有単量体としては、2-ブロモ-1,1-ジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、4-ブロモ-1,1,2,3,3,4,4-へプタフルオロ-1-ブテン、2-ブロモ-1,1-ジフルオロエチレン、2-ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン等が含フッ素単量体に対して約0.01〜5モル%程度用いられる。
【0015】
共重合反応が乳化重合法によって行われる場合には、パーフルオロヘプタン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等の乳化剤を少くとも1種類を用いることができる。また、けん濁重合法によって行われる場合には、メチルセルロースや水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の分散剤を少くとも1種類用いることができる。重合系内のpH値を調節するために、Na2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4等の緩衝能を有する電解質物質あるいは水酸化ナトリウムを添加して用いても良い。
【0016】
これらの乳化剤や分散剤を溶解させた水性媒体中には、ハロゲン化フルオロアルキル化合物およびこれにラジカルを移動させることのできる重合開始剤が仕込まれ、40〜100℃に加熱した後、含フッ素単量体が仕込まれ、共重合反応される。
【0017】
ハロゲン化フルオロアルキル化合物としては、一般式 X1CnH2nX2(X1:F,Cl,Br,I、X2:Cl,Br,I、n:1〜12、好ましくは1〜6)で表わされる化合物( ただし、 X 1 ,X 2 は共に I ではない )が用いられる。具体的には、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、モノブロモモノヨードパーフルオロペンタン、モノブロモモノヨードパーフルオロヘキサン、1-ヨードパーフルオロエタン、1-ヨードパーフルオロプロパン、1-ヨードパーフルオロブタン、1-ヨードパーフルオロペンタン、1-ヨードパーフルオロヘキサン、1,2-ジブロモテトラフルオロエタン、1,3-ジブロモパーフルオロプロパン、1,4-ジブロモパーフルオロブタン等が好んで用いられ、特に好ましくは1-ヨードパーフルオロブタン、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン、1,2-ジブロモテトラフルオロエタン等が用いられる。
【0018】
また、架橋成形体とする場合には、X1およびX2をBrまたはIとすることにより、含フッ素共重合体の末端に架橋点を導入することができる。この場合には、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、1-ブロモ-5-ヨードパーフルオロペンタン、1-ブロモ-6-ヨードパーフルオロヘキサン、1,2-ジブロモパーフルオロエタン、1,3-ジブロモパーフルオロプロパン、1,4-ジブロモパーフルオロブタン、1,5-ジブロモパーフルオロペンタン、1,6-ジブロモパーフルオロヘキサン、1,2-ジヨードパーフルオロエタン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨードパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン等が用いられ、特にこの目的のために好ましいのは、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン、1,2-ジブロモテトラフルオロエタン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン等である。
【0019】
ハロゲン化物にラジカルを移動することができる重合開始剤としては有機過酸化物、無機過酸化物などを用いることができるが、水溶性過硫酸塩を用いることが好ましい。特に好ましくは、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等である。
【0020】
ハロゲン化フルオロアルキル化合物の重合開始剤に対しての比率は、0.5〜100倍モル量、好ましくは1〜10倍モル量となるような割合で用いられる。この範囲以下であると熱的安定末端の量が減少して耐熱性が低下し、耐熱黄色変化割合が増大してしまう。また、この範囲以上であると反応速度が著しく遅くなって効率的な重合が達成できなくなるばかりではなく、高分子量体として得ることが困難となってしまう。
【0021】
含フッ素単量体仕込み前の加熱は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、水溶性過硫酸塩を用いた場合には、約40〜100℃、好ましくは約50〜80℃である。加熱温度保持時間としては、水性媒体液を所定の加熱温度迄昇温させるだけの時間であってもよいが、熱的安定化末端基をより多く生成させるためには、所定の加熱温度に到達した後約1〜120分間、好ましくは約10〜60分間その温度に保持した後、含フッ素単量体を添加することが好ましい。また、50℃以下の温度に加熱保持する場合や効率的に重合開始剤のラジカル解離反応を促進させるためには、重合開始剤とレドックス系を形成させる還元剤を適宜添加し、加熱温度での保持を行なうこともできる。
【0022】
また、重合反応は、一般に常圧または約10MPa以下で行われ、好ましくは約1〜5MPaの加圧条件下にて行われる。含フッ素共重合体の分子量は、含フッ素共重合体の成形加工性や機械的諸特性を考慮して決定されるが、分子量の指標としての370℃での溶融粘度(MFR)が0.1〜100g/10分、好ましくは約1〜50g/10分を有することが望ましい。このような範囲の溶融粘度に相当する分子量の含フッ素共重合体を得るためには、必要に応じて重合反応時にマロン酸エチル、アセトン、イソプロパノールなどの連鎖移動剤を用いても良いが、前述のハロゲン化フルオロアルキル化合物自体が連鎖移動作用を有するので、特別な場合を除き、連鎖移動剤の添加は不要である。
【0023】
乳化重合法の場合には、得られた含フッ素共重合体の乳濁液に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、カリミョウバン等の塩類水溶液を加え凝析させることにより生成共重合体を得た後、またけん濁重合法の場合には生成した共重合体をロ過することにより共重合体を得た後、イオン交換水、有機溶媒またはこれらの混合液などで洗浄し、乾燥することにより精製される。
【0024】
得られた含フッ素共重合体は、射出成形、圧縮成形、押出成形などの任意の成形法によって、フィルム、シート、チューブ、ホース、Oリング、シール材などに成形される。また、架橋剤、架橋助剤を加え、ロール混練、ニーダー混練などを行った後、加硫することによりガスケット、Oリング、オイルシール、ホースなどの加硫成形にされる。
【0025】
【発明の効果】
本発明方法で得られた含フッ素共重合体は、末端基として熱的に安定な XCF2-基を有しており、またイオン性ラジカル重合開始剤を用いたときに生成する熱的に不安定で着色源となる-COOH基を有しないため、それを圧縮成形、射出成形などの加熱成形法により成形したとき、高温での熱的不安定末端基の分解に基因する経時的着色変化を生じ難い、つまり耐熱黄変性にすぐれているため着色が極めて小さく、さらに光透過性にもすぐれているため、半導体分野、電気電子分野などの各種部材の成形材料として好適に使用される。
【0026】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0027】
実施例1
内容量10LのSUS316製オートクレーブ内に、
パーフルオロオクタン酸アンモニウム 72g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 14.3g
重亜硫酸ナトリウム 0.1g
過硫酸アンモニウム 1.1g(5ミリモル)
イオン交換水 6,000g
を仕込み、十分に脱気を行った後、
1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン 3.1g(10ミリモル)
を仕込み、80℃迄昇温し、80℃に達してから30分間その温度を保持した。30分間保持した後に、
フッ化ビニリデン[VdF] 280g
テトラフルオロエチレン[TFE] 110g
を仕込み、オートクレーブの内圧を2.5MPa・Gとし重合反応を開始させた。
【0028】
重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が2.4MPa・G迄低下したら内圧が2.5MPa・G迄回復する操作を、VdF/TFE=80/20モル%の組成比で均一分添した。全分添モノマー量が1,610gになったところで分添を終了し、0.5MPa・G迄エージングを行い、重合反応を完結させた。オートクレーブから取り出した乳濁液を5重量%塩化カルシウム水溶液中に攪拌しながら滴下し、凝析した生成物をロ別し、イオン交換水で十分に攪拌洗浄し、ロ過、乾燥させて白色粉末状の含フッ素共重合体を1,900g(重合率95%)得た。
【0029】
19F-NMR分析により共重合組成比はVdF/TFE=80/20モル%、-43ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-60ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、一方IR分析では-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数は確認されなかった。蛍光X線による臭素含有量は3.8×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は3.8×10-3ミリモル/gであった。またMFR(370℃)は0.1g/10分、融点は124℃であった。
【0030】
実施例2
実施例1において、50℃に達してから90分間その温度を保持した後の仕込みを、
フッ化ビニリデン[VdF] 150g
テトラフルオロエチレン[TFE] 150g
へキサフルオロプロピレン[HFP] 100g
に変更し、均一分添組成比をVdF/TFE/HFP=52/33/15モル%でオートクレーブの内圧が1.8MPa・G〜1.9MPa・G迄回復する操作を、全分添モノマー量が1,285gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色粉末状の含フッ素共重合体を1,533g(重合率91%)得た。
【0031】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/HFP=52/33/15モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-60ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、一方IR分析では-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数は確認されなかった。蛍光X線による臭素含有量は4.7×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は4.8×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は50g/10分、融点は121℃であった。
【0032】
実施例3
実施例1において、過硫酸アンモニウムの代りに過硫酸カリウム1.2g(5ミリモル)を用い、70℃に達してから20分間その温度を保持した後の仕込みを、
テトラフルオロエチレン[TFE] 60g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 130g
に変更し、均一分添組成比をTFE/FMVE=92/8モル%でオートクレーブの内圧が0.8MPa・G〜0.9MPa・G迄回復する操作を、全分添モノマー量が1,064gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色粉末状の含フッ素共重合体を1,129g(重合率90%)得た。
【0033】
IRによる共重合組成比はTFE/FMVE=92/8モル%、一方IR分析では-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数は確認されなかった。蛍光X線による臭素含有量は6.8×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は6.7×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は4g/10分、融点は268℃であった。
【0034】
実施例4
実施例1において、80℃に達してから15分間その温度を保持した後の仕込みを、
2-ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン[FBrVE] 10g
フッ化ビニリデン[VdF] 250g
テトラフルオロエチレン[TFE] 160g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 400g
に変更し、均一分添組成比をVdF/TFE/FMVE/FBrVE=49/20/30/1モル%でオートクレーブの内圧が2.4MPa・G〜2.5MPa・G迄回復する操作を、全分添モノマー量が1,645gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色ゴム状の含フッ素共重合体を2,268g(重合率92%)得た。
【0035】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/FMVE=49/20/30/1モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-59ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、一方IR分析では-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数は確認されなかった。蛍光X線による臭素含有量は17.5×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は3.0×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は20g/10分、ガラス転移点は-24℃であった。
【0036】
実施例5
実施例1において、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタンの代りに1,2-ジブロテトラフルオロエタン2.6g(10ミリモル)を用い、80℃に達してから45分間その温度を保持した後の仕込みを、
2-ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン[FBrVE] 5.0g
フッ化ビニリデン[VdF] 70g
テトラフルオロエチレン[TFE] 140g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 180g
に変更し、均一分添組成比をVdF/TFE/FMVE/FBrVE=30/39/30/1モル%でオートクレーブの内圧が1.4MPa・G〜1.5MPa・G迄回復する操作を、全分添モノマー量が1,585gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色ゴム状の含フッ素共重合体を1,861g(重合率94%)得た。
【0037】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/FMVE/FBrVE=30/39/30/1モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが観測され、一方IR分析では-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数は確認されなかった。蛍光X線による臭素含有量は18.0×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は35g/10分、ガラス転移点は-16℃であった。
【0038】
比較例1
内容量10LのSUS316製オートクレーブ内に、
パーフルオロオクタン酸アンモニウム 72g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 14.3g
重亜硫酸ナトリウム 0.1g
イオン交換水 5,900g
を仕込み、十分に脱気を行った後、初期仕込みとして
1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン 3.1g(10ミリモル)
フッ化ビニリデン[VdF] 280g
テトラフルオロエチレン[TFE] 110g
を仕込み、その後、80℃迄昇温し、オートクレーブの内圧を2.5MPa・Gとした。その後、過硫酸アンモニウム1.1g(5ミリモル)をイオン交換水100gに溶かした水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合反応を開始させた。
【0039】
重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が2.4MPa・G迄低下したら内圧が2.5MPa・G迄回復する操作を、VdF/TFE=80/20モル%の組成比で均一分添した。全分添モノマー量が1,610gになったところで分添を終了し、0.5MPa・G迄エージングを行い、重合反応を完結させた。オートクレーブから取り出した乳濁液を5重量%塩化カルシウム水溶液中に攪拌しながら滴下し、凝析した生成物をロ別し、イオン交換水で十分に攪拌洗浄し、ロ過、乾燥させて白色粉末状の含フッ素共重合体を1,940g(重合率97%)得た。
【0040】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE=80/20モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-60ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、さらにIR分析により-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数が確認された。蛍光X線による臭素含有量は2.5×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は3.0×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は0.1g/10分、融点は124℃であった。
【0041】
比較例2
比較例1において、初期仕込みを
フッ化ビニリデン[VdF] 150g
テトラフルオロエチレン[TFE] 150g
ヘキサフルオロプロピレン[HFP] 100g
に変更し、重合温度を50℃とし、オートクレーブの内圧を1.9MPa・Gとした後、過硫酸アンモニウム1.1g(5ミリモル)をイオン交換水100gに溶かした水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合反応を開始させ、重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が1.8MPa・G迄低下したら内圧が1.9MPa・G迄回復する操作を、VdF/TFE/HFP=52/33/15モル%の組成比で均一分添し、全分添モノマー量が1,285gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色粉末状の含フッ素共重合体粉末を1,533g(重合率91%)得た。
【0042】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/HFP=52/33/15モル%、-43ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-61ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、さらにIR分析により-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数が確認された。蛍光X線による臭素含有量は2.7×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は3.2×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は50g/10分、融点は121℃であった。
【0043】
比較例3
比較例1において、初期仕込みを
テトラフルオロエチレン[TFE] 60g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 130g
に変更し、重合温度を70℃とし、オートクレーブの内圧を0.9MPa・Gとした後、過硫酸カリウム1.2g(5ミリモル)をイオン交換水100gに溶かした水溶液をオートクレーブ内に圧入して重合反応を開始させ、重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が0.8MPa・G迄低下したら内圧が0.9MPa・G迄回復する操作を、TFE/FMVE=92/8モル%の組成比で均一分添し、全分添モノマー量が1,064gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色粉末状の含フッ素共重合体を1,129g(重合率90%)得た。
【0044】
IRによる共重合組成比はTFE/FMVE=92/8モル%、さらに-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数が確認された。蛍光X線による臭素含有量は3.7×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は5.2×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は4g/10分、融点は268℃であった。
【0045】
比較例4
比較例1において、初期仕込みを
2-ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン 10g
フッ化ビニリデン[VdF] 250g
テトラフルオロエチレン[TFE] 160g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 400g
に変更し、均一分添組成比をVdF/TFE/FMVE=49/20/30/1モル%で全分添モノマー量が1,645gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色ゴム状の含フッ素共重合体を2,310g(重合率94%)得た。
【0046】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/FMVE=49/20/30/1モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが、-59ppmに-CF 2Iと帰属されるシグナルが観測され、さらにIR分析により-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数が確認された。蛍光X線による臭素含有量は14.0×10-3ミリモル/g、ヨウ素含有量は2.2×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は20g/10分、ガラス転移点は-24℃であった。
【0047】
比較例5
比較例1において、1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタンの代りに1,2-ジブロモテトラフルオロエタン2.6g(10ミリモル)を用い、また初期仕込みを
2-ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン[FBrVE] 5.0g
フッ化ビニリデン[VdF] 70g
テトラフルオロエチレン[TFE] 140g
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[FMVE] 180g
に変更し、均一分添組成比をVdF/TFE/FMVE/FBrVE=30/39/30/1モル%で、全分添モノマー量が1,585gになったところで分添を終了した以外は、同様の操作を行ない、白色粉末状の含フッ素共重合体粉末を1,881g(重合率95%)得た。
【0048】
19F-NMRによる共重合組成比はVdF/TFE/FMVE/FBrVE=30/39/30/1モル%、-44ppmに-CF 2Brと帰属されるシグナルが観測され、さらにIR分析により-COOHと帰属される3560cm-1の吸収周波数が確認された。蛍光X線による臭素含有量は11.0×10-3ミリモル/gであった。また、MFR(370℃)は35g/10分、ガラス転移点は-16℃であった。
【0049】
なお、上記各実施例および比較例で得られた共重合体の諸特性の測定は、次のようにして行われた。
組成比および末端基(-CF2X)の測定:CFCl3を標準として、19F-NMRによる
末端基(-COOH)の測定:厚さ0.03〜0.07mmの成形フィルムを用い、赤外吸収スペクトル分析による
臭素、ヨウ素含有量の測定:蛍光X線分析により、共重合体単位重量当りのミリモル数を求めた
溶融粘度(MFR)の測定:共重合体を内径9.5mmのシリンダーに入れ、370℃の測定温度に5分間保った後、5kgfのピストン加重下に、内径2.095mm、長さ8.00mmのオリフィスを通して押出し、このときの押出し速度(g/10分)を溶融粘度として求めた
融点の測定:セイコーインスツルメンタル社製DSC220型を用い、試料を30℃から10℃/分で350℃迄加熱後、10℃/分で30℃迄冷却し、再度350℃迄昇温する際の吸熱ピーク頂点の温度を融点として測定
ガラス転移点の測定:セイコーインスツルメンタル社製DSC220型を用い、試料を-50℃から10℃/分で100℃迄加熱後、10℃/分で-50℃迄冷却し、再度100℃迄昇温する際の吸熱ピーク変化の中心温度をガラス転移点として測定
【0050】
以上の実施例1〜5、比較例1〜5で得られた含フッ素共重合体の圧縮成形を200℃で行ない、厚さ0.1mmのフィルムについて可視光吸収スペクトルの光透過率を、また厚さ2mmのフィルムから直径1.4cmのディスクを打ち抜いたものについて黄色度指数(ASTM D-1925準拠)をそれぞれ測定した。なお、比較例3の含フッ素共重合体は、不透明のため透過しなかった。
【0051】
実施例6〜7、比較例6〜7
実施例4〜5および比較例4〜5でそれぞれ得られた含フッ素共重合体について、8インチロールミルにより、25〜50℃の温度で5分間素練りを行った後、共重合体100重量部にトリアリルイソシアヌレートM-60 6.7重量部および2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン-40 2.0重量部を加えて15〜60分間混練りし、180℃、6分間のプレス加硫(一次加硫)および200℃、15時間のオーブン加硫(二次加硫)を行った。
【0052】
これらの加硫物について、上記と同様に黄色度指数の測定が行われた。
【0053】
上記各実施例および比較例で得られた測定結果は、次の表に示される。なお、黄色度指数は、ディスクをそれと同じ大きさの金属容器に入れ、200℃のオーブン中に所定時間静置して保持し、経時的に生じた着色変化の着色の度合いを「黄色度指数」によって数値化してその測定が行われた。この黄色度指数が小さいもの程着色が生じておらず、また黄色度指数の値の経時的変化の少ないもの程経時的着色変化が生じ難く、劣化などを生じない耐熱黄変性にすぐれた含フッ素共重合体ということができる。
Claims (8)
- 少くとも2種類の含フッ素単量体をラジカル共重合反応させるに際し、一般式 X 1 C n F 2n X 2 ( ここで、 X 1 は F,Cl,Br または I であり、 X 2 は Cl,Br または I であり、ただし X 1 ,X 2 は共に I ではなく、 n は 1 〜 12 の整数である ) で表わされるハロゲン化フルオロアルキル化合物およびこれにラジカルを移動させることのできる重合開始剤を水性媒体中で40〜100℃に加熱した後、含フッ素単量体を反応系内に仕込み、共重合反応させることを特徴とする含フッ素共重合体の製造法。
- フルオロアルキル末端基 X1CF2-(ここで、X1はF,Cl,BrまたはIである)を有する共重合体を形成させる請求項1記載の含フッ素共重合体の製造法。
- 重合開始剤が水溶性過硫酸塩である請求項1記載の含フッ素共重合体の製造法。
- さらに架橋点含有単量体を共重合させる請求項1記載の含フッ素共重合体の製造法。
- 架橋点含有単量体が臭素および/またはヨウ素含有単量体である請求項4記載の含フッ素共重合体の製造法。
- 請求項1記載の方法で製造された含フッ素共重合体を溶融成形して得られた成形体。
- 請求項4または請求項5記載の方法で製造された含フッ素共重合体を加硫成形して得られた成形体。
- 200℃、72時間迄の黄色度指数(ASTM D-1925準拠)が35以下である請求項6または請求項7記載の成形体。
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