JP2001313997A - カットされた単結晶からなる超音波変換器 - Google Patents

カットされた単結晶からなる超音波変換器

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気機械特性を向上させるために、厚み及び
幅を所定の方向に沿って配向させた単結晶を提供する。 【解決手段】 本発明の単結晶は、鉛ベースであり、こ
の単結晶は対角の配向をなし、有効結合定数が少なくと
も0.70である。一実施態様では、鉛ベースの結晶の化学
式が、Pb(B’B”)O3−PbTiO3であり、ここでB’
が、Mg2+、Zn2+、Ni2+又はSc3+であり、B”が、Nb5+
Ta5+又はW6+である。好ましくは、鉛ベースの結晶の化
学式が、Pb(B’B”)O3−PbTiO3であり、ここでB’
が、Mg2+、Zn2+又はSc3+であり、B”がNb5+である。よ
り好ましくは、鉛ベースの結晶は、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3
−PbTiO3(「PMN-PT」)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3
(「PZN-PT」)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(「PSN-
PT」)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Pb(Mg1/3Nb2/3
O3−PbTiO3(「PMN-PT」)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTi
O3(「PZN-PT」)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(「PS
N-PT」)タイプのリラクサ(relaxor)単結晶組成物を
含む、鉛ベース組成の単結晶に関するカット方向及び寸
法の改良に関するものである。より詳細には、本発明
は、結晶の厚み及び幅を所定の方向に沿うように配向さ
せることにより、単結晶の電気機械特性を向上すること
に関する。さらに、特定の寸法の単結晶を用意すること
によって、単結晶の電気機械特性を向上することにも関
する。カット方向及び寸法のこのような組み合わせによ
って、結晶の加工しやすさが向上し、優れた電気機械特
性が得られる。
【0002】
【従来の技術】変換器は、ある形態のエネルギを別の形
態のエネルギに変換する装置である。例えば、超音波振
動子は、電気エネルギを機械エネルギに変換し、機械エ
ネルギを電気エネルギに変換する。超音波振動子には、
一般に、電極に接続された圧電素子から構成される超音
波送信/受信素子が含まれている。電極に供給される電
気エネルギによって、超音波プローブ素子が電気的に励
起され、所定の周波数で振動することになる。次に、こ
の振動によって、音波(この場合には超音波)が生じ、
この音波は、2つの媒質の接合部に相当する界面にぶつ
かると、反射するか、又は透過する。反射波は、同じ圧
電プローブによって検出可能である。2つの媒質の界面
における音波のこの反射及び透過は、超音波イメージン
グの基礎である。この超音波プローブを組み込んだ超音
波イメージング装置は、人体内部の検査、又は金属溶接
部分の傷の検出に利用されている。
【0003】Bモードイメージング、カラーフローマッ
ピング(CFM)及びドップラは、人体に利用される一般
的な超音波診断イメージング法である。CFMは、血流に
よって生じる超音波のドップラシフトを利用することに
よって、並びに人体の断層撮影像(エコー信号がディス
プレイに輝度変調線として表示される、いわゆるBモー
ドイメージ)を表示することによって、心臓、肝臓、腎
臓、脾臓又は頚動脈のような器官における血流速度を2
次元カラー表示することが可能である。診断能力は、こ
れらの医療診断方法によって劇的に向上した。
【0004】一般に利用される超音波プローブ構成は、
それぞれ圧電材料のストリップから造られた数十〜約30
0の超音波送信/受信素子のアレイを含んでいる。この
構成の場合、超音波送信/受信素子の数が増すにつれ
て、各圧電素子のインピーダンスが増大するので、送信
/受信回路の整合を得るのが難しくなる。また所定の用
途に関して、例えば肋骨の隙間から心臓のイメージング
を行うために用いられる、又は生体内部において用いら
れるプローブの場合、フェイズドアレイプローブの表面
は、できるだけ小さく保たなければならない。
【0005】イメージング法としての超音波にはトレー
ドオフがある。高い周波数を利用する場合、解像度は向
上するが、透過力が低下する。したがって多くの場合、
必要とされる透過深度と解像度のために、診断を実施す
るには、2つ以上の変換器が必要になる。優れた透過度
と解像度を同時に得ることはできない。人体組織は強い
非線形特性を備えている。超音波信号によるイメージン
グを施されると、人体組織は、第一高調波信号、第二高
調波信号及び第三高調波信号のような、高調波信号を発
生する。最近では、組織高調波イメージングの出現によ
り、低い基本周波数(f0)で送信することによって透
過度を高め、同時に被験体の非線形応答から生じる第二
高調波信号(2f0)を検出することによって解像度を
高めることが可能となった。
【0006】高調波を利用したもう1つの超音波適用例
は、コントラスト高調波イメージングである。このタイ
プのイメージングにおいて、用いられるコントラスト作
用物質(contrast agent)は、一般に所定の超音波周波
数で共振するガスを充填した微小球(気泡)である。こ
のコントラスト作用物質が、ある周波数の高周波の音波
を当てられると、コントラスト作用物質の非線形応答の
ため、大きな高調波信号を発生する。コントラスト作用
物質を使用することによって、動脈系における血液で満
たされた構造及び血流速度の検出が大幅に向上する。
【0007】高調波イメージングの場合、広帯域変換器
を使用して、基本周波数及び高調波周波数を包含するの
に十分な広さの帯域幅で送信と受信の両方を行うことが
必要である。現行のPZTタイプ変換器では、この帯域幅
要件を満たすことができないので、高調波イメージング
におけるその性能は、必要な帯域幅に適合する変換器よ
りも低くなる。
【0008】それにもかかわらず、PZTベースセラミッ
クのような圧電材料が、医療用超音波変換器に広く使用
されている。超音波変換器用途のために圧電材料を選択
する際の重要な判定基準のうちの2つは、高い値の長さ
方向結合定数(k33)と誘電率(K)である。高い結合
定数は、電気エネルギから機械エネルギへの変換効率及
び機械エネルギから電気エネルギへの変換効率が良いこ
とを表しているので望ましい。高い誘電率によって、と
りわけ小さい素子によるフェイズドアレイ変換器の場
合、システム電子装置との電気的インピーダンスの良好
な整合が導かれる。PZTセラミックは、典型的なk33
値が0.70であるが、送信及び受信の効率が向上するだけ
ではなく、変換器の帯域幅も拡大されるので、さらに高
い結合定数を有することが望ましい。最近、鉛ベースの
単結晶材料における高い結合、すなわち鉛ベースの単結
晶材料で高い結合定数が得られることが発見されたこと
によって、これに関する多大の関心が生じることになっ
た。
【0009】一般的な化学式がPb(B’B”)O3(ここ
で、B’=Mg2+、Zn2+、Sc3+...及びB”=Nb5+、Ta
5+...)の鉛ベースの強誘電性単結晶、及びこれらの
化合物とPbTiO3の固溶体が、菱面体晶相(<111>に沿
った自発分極)と正方晶相(<001>に沿った分極)を
分割する境界である、類形相境界(morphotropic phase
boundary:MPB)近傍で優れた電気機械特性を示すこと
が知られている。重要な化合物のいくつかとして、Pb
(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(「PMN-PT」)、Pb(Zn 1/3N
b2/3)O3−PbTiO3(「PZN-PT」)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3
−PbTiO3(「PSN-PT」)を挙げることができる。図1に
は、PZN-PTとPMN-PTの相図が示されている。
【0010】PZN−PT9%(PZN対PTの比が約10対1)単
結晶の電気機械特性が、1969年に、初めてヨネザワらに
よって報告され(J.Jpn.Soc.Powder Metallurgy,16,253
-258(1969))、次に1982年に、クワタらによって報告
されている(Ferroelectrics,37,579-582(1981);Jpn.
J.Appl.Phys.21,1298-1302(1982))。これらの単結晶
の高い結合定数は、変換器及びアクチュエータ用途にと
ってそれらの単結晶を魅力あるものにしている。MPBの
菱面体晶側の組成をなし、[001]方向に沿って厚みを
持ってカットされたこれらの結晶は、極めて高い結合定
数(k33>0.92)と圧電定数(d33>1500 pC/N)を示
した。米国特許第5,295,487号、第5,402,791号及び第5,
998,910号には、超音波変換器用途のためのさまざまな
組成のPZN-PT及びPMN-PT系が記載されており、その内容
について、参考までに本明細書においてすべて援用す
る。これらの系に関して、細長い小片、スライバー(sl
iver)の結合定数(k33´>0.82)及び棒材、バー(ba
r)の結合定数(k33=0.92)が報告されている。
【0011】従来の研究は、主に<001>長さ配向、す
なわち長手軸の向く方向が<001>である場合に集中し
て行われ、MPB組成が、菱面体晶相から正方晶相へ相転
移するので、その特性、とりわけ誘電特性が、MPB組成
近傍で不安定になることが分かった。<111>配向の調
査が、バー形状の構成要素に関して行われたが、この方
向に沿った電気機械特性は、<001>方向に沿った電気
機械特性に比べて劣ることが明らかになった。例えば、
米国特許第5,998,910号及びクワタらによるJpn.J.Appl.
Phys.21,1298-1302(1982)には、たった約0.35-0.68し
かない、<111>方向に沿った低いk33値が報告されて
いる。したがってそれらの材料においては、電気機械特
性は、結晶の配向及び化学組成に極めて敏感であること
が明らかである。
【0012】さらに、従来の研究では、本質的にバー形
状の単結晶材料が開示された。スライバーのような準1
次元構造を含む幅配向(図2を参照されたい)の効果を
理解するのに、ごくわずかな研究しかなされなかった。
その結果は、<001>方向に沿った厚みと幅を持ってカ
ットされたスライバーについて得られたものである(例
えば米国特許第5,402,791号を参照されたい)。しか
し、<001>配向をなすようにカットされたスライバー
は、問題となる周波数範囲でスプリアス共振(spurious
resonance)の存在を示した(Lopath et al., Proceed
ing of the tenth IEEE International Symposium on A
pplications of Ferroelectrics, East Brunswick, Aug
ust 18-21,1996,pp.543-546を参照されたい)。1次元
(1D)及び1.5D(準1次元)変換器用途の場合、1D(1
次元)又はスライバーのような準1次元(1.5D)構造の
電気機械特性を最適化するには、厚み配向カット及び幅
配向カットの最良の組み合わせ、すなわち厚み及び幅を
それぞれどの方向に設定してカットするかを見出すこと
が不可欠である。
【0013】医療用超音波イメージングの応用例では、
イメージングを施される器官に応じて、1.5〜40 MHzに
わたる広い周波数範囲を扱う。周波数は、圧電材料及び
整合層材料の厚み及び音速によって決まる(f=v/2
t、ここでfは変換器周波数であり、vは圧電材料の超
音波の速度であり、tは材料の厚みである)。したがっ
て8〜15 MHzの高周波線形アレイ用途では、PZTセラミ
ック材料にわずか約130〜200 μmの厚みであることが必
要とされる。<001>配向のPMN-PT又はPZN-PT単結晶
は、PZTタイプのセラミックより低速であり、したがっ
てPMN-PT又はPZN-PTウェーハは、さらに薄くなければな
らない(約100 μm)。線形アレイの典型的なウェーハ
寸法は、40 mm×4 mm×0.2 mmであるため、結晶の薄さ
によって機械的に脆くなるので、こうした極めて薄い結
晶の製造は非常に困難である。目、心臓内及び脈管内の
イメージングを伴う高周波イメージング用途の場合に
は、ウェーハ厚は20〜30 μmまで薄くなる。この厚み範
囲において、<001>配向の単結晶の機械的加工は、い
っそう困難である。
【0014】最近になって、他の研究者が、超音波変換
器として使用される、PMN-PT及びPZN-PTの配向多結晶材
料を開示した。2000年1月18〜20にヴァージニア州アー
リントンのPiezocrystals Workshopで発表された、Gent
ilmanらによる論文「Processing and Application of S
olid State Converted High Strain Undersea Transmit
ter Materials」を参照されたい。彼らは<001>配向を
報告するのみである。<011>又は<111>配向の多結晶
材料は開示されていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】電気機械特性を向上さ
せるために、厚み及び幅を所定の方向に沿うように配向
させた単結晶が望まれている。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明には、結晶の長さ
又は厚み方向が対角の配向をなす、対角線方向に向き、
すなわち結晶の長さ又は厚み方向が、結晶を構成する単
結晶の単位格子の対角線方向に向き、有効結合定数が少
なくとも0.70である、鉛ベースの単結晶を含む変換器が
含まれる。一実施態様では、結晶は、面が対角の配向を
なす、すなわち面が、結晶を構成する単結晶の単位格子
の対角線方向に向く、配向する結晶である。代替的には
結晶は、本体が対角の配向をなす、すなわち本体が、結
晶を構成する単結晶の単位格子の対角線方向に向く、配
向する結晶である。カットの長さ方向又は厚み方向は、
対角の配向、すなわち対角線の方向から約0〜20度とす
ることができる。
【0017】鉛ベースの結晶の化学式は、Pb(B’
B”)O3−PbTiO3であることが望ましく、ここでB’
は、Mg2+、Ni2+、Sc3+、Yb3+、Fe3+、Mn3+、In3+、I
r3+、Co3+又はZn2+の少なくとも1つとすることがで
き、B”は、Nb5+、Ta5+、Te6+又はW6+の少なくとも1
つとすることができる。鉛ベースの結晶には、さらに1
つ以上の付加金属又は金属酸化物を含むことができ、こ
こでこの金属は、Ba、Bi、Ca、Sr、La又はPtである。一
実施態様では、鉛ベースの結晶の化学式は、Pb(B’
B”)O3−PbTiO3であり、ここでB’は、Mg2+、Zn2+
びSc3+であり、B”はNb5+である。すなわちこの鉛ベー
スの結晶の化学式は、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、Pb
(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3−PbTi
O3である。Pb(Mg1/3Nb2 /3)O3のPbTiO3に対する分子比
は、約10:1〜約1:1、又は約6:1〜約3:2、又
は約3:1〜約5:3とすることができる。化学式がPb
(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3の鉛ベースの結晶の場合、Pb
(Zn1/3Nb2/3)O3のPbTiO3に対する分子比は、約50:1
〜約2:1、又は約25:1〜約6:1、又は約15:1〜
約8:1とすることができる。
【0018】結晶は、有効結合定数が少なくとも0.80で
あることが望ましく、少なくとも0.85であることがより
望ましい。
【0019】また本発明には、結晶の長さ方向又は厚み
方向が、対角の配向をなし、有効結合定数が少なくとも
0.70であり、結晶の長さ対厚み対幅の比が、おおよそ
(300〜15):(5〜1):(5〜1)である、鉛ベー
スの単結晶も含まれる。結晶の長さ対厚み対幅の比が、
おおよそ(150〜10):(3〜1):(3〜1)である
ことが望ましい。さらに望ましくは、結晶の長さ対厚み
対幅の比が、おおよそ(100〜10):(3〜2):(2
〜1)である。
【0020】面が対角の配向をなす結晶では、結晶の幅
の方向、すなわち幅の方向の向きは、<011>幅配向、
幅方向の方位から約35〜90度ずれているが、望ましくは
約45〜80度のずれであり、約50〜70度ずれていることが
さらに望ましい。本体が対角の配向をなす結晶の場合、
結晶の幅の方向は、<011>幅方向から約±10度であ
る。
【0021】代替実施態様の場合、変換器は、<001>
配向からわずかにずれた配向をなす鉛ベースの単結晶と
することができ、ここでサンプルの長さ方向又は厚み方
向は、<001>方向から2〜約20度ずらしてカットされ
ており、結合定数は0.75を超える。あるいはまたサンプ
ルは、<001>方向から2〜約15度(あるいはまた、2
〜10度又は2〜5度)ずらしてカットされ、結合定数
は、0.80を超える。
【0022】他の実施態様では、鉛ベースの単一結晶
は、ほぼ<001>t/<010>w配向をなす、すなわち長さ
方向が<001>に、幅方向が<010>に向くが、ここでサ
ンプルの幅の方向は、<010>軸から2〜約15度(ある
いはまた、2〜10又は2〜5度)ずらしてカットされ、
結晶の長さ対厚み対幅の比は、おおよそ(300〜15):
(5〜1):(5〜1)である。またサンプルは、<01
0>幅方向から15〜約25度ずらしてカットすることもで
き、結晶の長さ対厚み対幅の比は、(300〜15):(5
〜3):(2〜1)である。
【0023】本発明には、複数の鉛ベースの単結晶変換
素子からなる変換器も含まれている。さらに鉛ベースの
単結晶材料をポリマーに埋め込んで、単結晶/ポリマー
複合材を形成することもできる。それは、送信素子及び
/又は受信素子として機能する1つ以上の圧電コンポー
ネントと、この素子の対向表面に配置された電極からな
り、このとき各鉛ベースの圧電コンポーネントが、対角
の配向をなし、有効結合定数が少なくとも0.70である、
超音波変換器とすることも可能である。さらにスライバ
ー素子の場合、結晶の長さ対厚み対幅の比は、おおよそ
(300〜15):(5〜1):(5〜1)である。バー素
子の場合、結晶の長さ対幅の比は、(100〜5):(5
〜1)である。
【0024】他の代替的な実施態様の場合、本発明に
は、鉛ベースの対角の配向をなす多結晶材料を含む変換
器が含まれる。この多結晶材料における有効結合定数
は、0.70を超え、好ましくは0.80を超え、より好ましく
は0.85を超える。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明には、結晶の長さ方向又は
厚み方向が、対角の配向をなしており、すなわち対角線
の方向を向き、有効結合定数が少なくとも0.70である、
鉛ベースの単結晶からなる変換器が含まれる。一実施態
様では、結晶は、面が対角の配向をなす結晶である。代
替的には、結晶は、本体が対角の配向をなす結晶とする
こともできる。結晶の長さ又は厚み配向は、対角配向
(<011>又は<111>軸)から約0〜約20度とすること
ができる。あるいはまた、カットの長さ又は厚み配向
は、<011>又は<111>配向軸から約0〜約15度、好ま
しくは約0度〜約10度、より好ましくは約0度〜約5度
とすることができる。あるいはまた、幅配向軸に対する
これらの範囲を利用して、対角の配向をなす材料をカッ
トすることもできる。
【0026】鉛ベースの結晶の化学式は、Pb(B’
B”)O3−PbTiO3であることが望ましく、ここでB’
は、Mg2+、Ni2+、Sc3+、Yb3+、Fe3+、Mn3+、In3+、I
r3+、Co3+又はZn2+の少なくとも1つとすることが可能
であり、B”は、Nb5+、Ta5+、Te6+、W 6+の少なくとも
1つとすることが可能である。さらに鉛ベースの結晶に
は、1つ以上の付加金属又は金属酸化物を含むことが可
能であり、ここでこの金属は、Ba、Bi、Sr、Ca、La、Pt
である。一実施態様では、鉛ベースの結晶の化学式は、
Pb(B’B”)O3−PbTiO3であり、ここでB’は、M
g2+、Zn2+、Sc3+であり、B”はNb5+である。すなわ
ち、この鉛ベースの結晶の化学式は、Pb(Mg1/3Nb2/3
O3−PbTiO3、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、Pb(Sc1/3N
b2/3)O3−PbTiO3である。Pb(Mg1/3Nb2/3)O3のPbTiO3
に対する分子比は、約10:1〜約1:1、あるいは好ま
しくは約6:1〜約3:2、あるいはより好ましくは約
3:1〜約5:3とすることができる。化学式がPb(Zn
1/3Nb2/3)O3−PbTiO3の鉛ベースの結晶の場合、Pb(Zn
1/3Nb2/3)O3のPbTiO3に対する分子比は、約50:1〜約
2:1、あるいは好ましくは約25:1〜約6:1、ある
いはより好ましくは約15:1〜約8:1とすることがで
きる。
【0027】結晶は、有効結合定数が少なくとも0.80で
あることが望ましく、少なくとも0.85であることがより
望ましい。
【0028】本発明には、結晶の長さ方向又は厚み方向
が対角の配向をなし、有効結合定数が少なくとも0.70で
あり、このとき結晶の長さ対厚み対幅の比が、おおよそ
(300〜15):(5〜1):(5〜1)である、鉛ベー
スの単結晶も含まれる。結晶の長さ対厚み対幅の比は、
おおよそ(150〜10):(3〜1):(3〜1)である
ことが望ましい。さらに望ましい結晶の長さ対厚み対幅
の比は、おおよそ(100〜10):(3〜2):(2〜
1)である。
【0029】面が対角の配向をなす結晶の場合、結晶の
幅配向、幅の方向が向く向きは、<011>方向から約35
〜90度ずれているが、望ましくは約45〜80度のずれであ
り、より望ましくは約50〜70度ずれている。本体が対角
の配向をなす結晶の場合、結晶の幅配向は、<011>幅
配向から約±20度、好ましくは±10度である。
【0030】代替実施態様の場合、変換器は、<001>
方向からわずかにずれた配向をなす鉛ベースの単結晶と
することが可能であり、ここでサンプルの長さ方向又は
厚み方向は、<001>方向から2〜約20度ずらしてカッ
トされており、結合定数は0.75を超える。代替的には、
サンプルの長さ又は厚み配向は、<001>方向から2〜
約15度ずらしてカットされ、結合定数は0.80を超える。
この場合、カットは、<001>軸から約2〜約10度、好
ましくは約2〜約5度ずらすこともできる。
【0031】他の実施態様では、鉛ベースの単一結晶
は、ほぼ<001>t/<010>w配向をなすが、ここでサン
プルは、幅配向から2〜約15度(代替的には2〜10度又
は2〜5度)ずらしてカットされ、結晶の長さ対厚み対
幅の比は、おおよそ(300〜15):(5〜3):(5〜
1)である。またサンプルは、<010>幅配向から15〜
約25度ずらしてカットすることもでき、結晶の長さ対厚
み対幅の比は、(300〜15):(5〜3):(2〜1)
である。
【0032】本発明には、複数の鉛ベースの単結晶変換
素子からなる変換器も含まれる。さらに鉛ベースの単結
晶変換素子をポリマーに埋め込んで、単結晶/ポリマー
複合材を形成することもできる。それは、送信素子及び
/又は受信素子として機能する1つ以上の圧電コンポー
ネントと、素子の対向表面に配置された電極が含まれ、
各鉛ベースの圧電コンポーネントが、対角の配向をな
し、有効結合定数が少なくとも0.70である、超音波変換
器とすることもできる。さらにスライバー素子の場合、
結晶の長さ対厚み対幅の比は、おおよそ(300〜15):
(5〜1):(5〜1)である。バー素子の場合、結晶
の長さ対幅の比は、(100〜5):(5〜1)である。
【0033】他の代替実施態様の場合、本発明には、鉛
ベースの対角の配向をなす多結晶材料からなる変換器が
含まれる。この多結晶材料において、有効結合定数は0.
70を超え、0.80を超えるのが望ましく、0.85を超えれば
さらに望ましい。
【0034】本明細書で用いられる限りにおいて、対角
の配向をなすという用語は、圧電素子又は単結晶素子
が、<001>方向に対してある角度をなす、<011>又は
<111>のような方向、対角方向に沿った長さ方向又は
厚み方向を有するということを表す。対角の配向をなす
という用語には、例えば<011>方向又は12の面対角配
向の全てのように、面が対角の配向をなすことが含まれ
る。一実施態様では、サンプルを、<011>方向から約
±20度をなすようにカットすることができる。代替的に
は、サンプルを、<011>方向から約±15度をなすよう
にカットすることもできる。あるいはまた、サンプル
を、<011>方向から約±10度又は±5度をなすように
カットすることも可能である。対角の配向をなすという
用語には、例えば<111>方向のサンプル又は8つの本
体対角配向の全てのように、本体が対角の配向をなすサ
ンプルも含まれている。一実施態様では、サンプルを、
<111>方向から約±20度又は±15度をなすようにカッ
トすることができる。代替的には、サンプルを、<111
>方向から約±10度又は±5度をなすようにカットする
こともできる。
【0035】本明細書で用いられる限りにおいて、有効
結合定数(k33´)という用語は、配向圧電素子のk33
モードに対応する結合定数を表している。
【0036】1次元変換器用途の場合、単結晶素子は、
通常、長さ>厚み>幅であるスライバー形状をなすよう
にダイシングが施される。この特定の単結晶素子形状の
場合、厚みと幅の両方の配向が、スライバーの電気機械
特性に相当の影響を及ぼす。この場合、有効結合定数
(スライバー又は、長さ方向の長さと幅の比が小さいバ
ーに関するk33´)が、スライバーの長さに沿ったクラ
ンプ効果のために、長さ方向の結合定数(バーに関して
はk33)を置き換える。図2は、スライバー形状をなす
単結晶素子の厚み([001])及び幅([010]、[11
0])配向を示す概略図である。比較のため、[001]の
長さ方向の配向が施されたバーも示されている。
【0037】結合定数とは別に、超音波変換器の設計に
おいては、長さ方向速度及びクランプされた誘電率も重
要である。速度と誘電率はどちらも、結晶の配向に強く
関係する関数である。さまざまな配向における材料の特
性の相違を利用することによって、より優れた超音波変
換器の設計が可能になる。例えば、高周波装置(7〜40
MHzの中心周波数)は、その機械的脆さのために、相当
の製造欠陥を生じる、極めて薄い結晶を必要とする。長
さ方向の速度が速い配向にカットすることによって、同
じ中心周波数に対して比較的厚い結晶の利用が可能にな
り、その結果製造及び加工段階における機械的欠陥を最
小限に抑えることができる。
【0038】本発明には、結合を改善し、速度を速め、
誘電率を高めるための、PMN-PT及びPZN-PTの工学的技術
が含まれる。これらの改良は、<011>及び<111>方向
を含む、ある範囲の新規の厚み及び幅のカットによって
達成される。
【0039】とりわけ、本発明には、(1)電気機械特
性に優れた、<011>方向又はそれに近い方向の長さ又
は厚み配向をなす、新規の配向カット;(2)<110>
方向から35〜90度ずれた結晶幅配向に関して極めて高い
33´値を示す、<011>厚み配向をなすスライバーカ
ット;(3)<001>方向からわずかに約2〜約20度ほ
どずれた長さ又は厚み配向をなす、<001>方向カッ
ト;(4)<010>方向から約2〜約25度、より望まし
くは約2〜約15度だけずれた幅配向をなす、高結合定数
をもたらす、<001>t/<010>wスライバーカット;及
び、(5)高速度で、高誘電率である、<111>方向又
はそれに近い方向の厚み配向を有するカットを見出した
ことが含まれている。これらの<111>配向をなす材料
によって、機械的耐久性及び加工特性が向上したより厚
い結晶を利用する変換素子の製作が可能となる。
【0040】本発明によれば、スライバー又はバー形状
の変換素子に関して、極めて高く、安定した電気機械特
性を示す、MPBに近い組成に関する特定の厚み及び幅配
向の組み合わせが開示される。以下に述べる実験例で
は、強い結合、向上したスライバー速度、高い誘電率を
得るために、リラクサ単結晶の領域、ドメイン(domai
n)に関する工学的技術が強調される。その結果は、改
良された単結晶厚み及び幅カットの選択によって達成さ
れた。
【0041】本発明には、スプリアス共振が生じないよ
うにする改良スライバー寸法も含まれる。これらのスプ
リアス共振の大きさは、スライバーのアスペクト比及び
スライバーの幅の配向角に大きく依存する。またこれら
のスプリアス共振は、単結晶における速度が極めて指向
性の高い性質を示すことに関連している。本発明では、
高結合定数及びクリーン共振モードをもたらす、臨界ア
スペクト比(幅/高さ)及び幅配向の存在について明ら
かにする。
【0042】PMN-PT及びPZN-PTの単結晶を成長させる方
法が数多く存在する。その利用が成功した技法のいくつ
かには、フラックス成長(Kobayashi et al.Jpn.J.App
l.Phys,36,6035(1997);Mulvihill et.al.Jpn.J.Appl.
Phys,35,51(1996);Park etal.Jpn.J.Appl.Phys,36,11
54(1997))、及び垂直Bridgeman法(Kobayashi etal.
Jpn.J.Appl.Phys,37,3382(1998);Harada et al.Key E
ng.Matls.,157-158,95(1999))が含まれ、その内容に
ついては、参考までに本明細書において全て援用する。
フラックス法を利用して、リラクサ単結晶を成長させる
問題の1つは、超音波変換器に適した大きな寸法の結晶
を得ることができないということである。またこの方法
によって製造される結晶は、成長プロセス中に生じる、
包接(inclusion)のような欠陥を被りがちである。Bri
dgeman技法を利用して、専門業者が、プレート内で均一
な特性の大形結晶(直径<25 mm)を成長させ得ること
を証明した。いくつかの鉛ベースの単結晶が、これまで
に研究されている。超音波変換器用途用の、さまざまな
組成のPZN-PT及びPMN-PT系について記載する、米国特許
第5,295,487号、第5,402,791号、第5,998,910号を参照
されたい。これらの内容は、参考までに本明細書におい
て全て援用する。
【0043】最近、研究者達によって、40チャネル単結
晶フェイズドアレイ変換器(Saitohet al.IEEE Trans.o
n UFFC,46,152(1999))及び5 MHz PMN-PTフェイズド
アレイ単結晶変換器(Panda et al.Proceeding of the
9th US-Japan Seminar onDielectric and Piezoelectri
c Ceramics,Okinawa,Nov.2-5,P143-146,1999)の製作に
関する詳細が報告されており、これらの内容について
は、参考までに本明細書において全て援用する。PZTセ
ラミックの代わりに、PZN−8%PT及びPMN−PT単結晶を
使用することによって、大幅な改善が観測された。した
がって、本発明の鉛ベースの単結晶変換器は、フェイズ
ドアレイ又は複合変換器に組み込むことが可能である。
また米国特許第5,998,910号も参照されたい。この内容
は参考までに本明細書において全て援用する。多素子又
はフェイズドアレイ変換器用の対角配向をなす単結晶に
関して可能性のある2つの設計が、図3及び4に示され
ている。図3には、複数のスライバータイプの結晶によ
る変換器が示されている。図4には、複数の準1次元
(1.5D)又は2D(2次元)単結晶による変換器が示され
ている。これらの設計では、鉛ベースの単結晶材料をポ
リマーに埋め込んで、単結晶/ポリマー複合材を形成す
ることも可能である。
【0044】本発明は配向多結晶材料をも含む。単結晶
に関して上記に開示した組成とさまざまな配向及び寸法
とは、どちらも、配向を施された多結晶材料、すなわち
配向多結晶材料にも同様に適用することができる。これ
らの材料は、多結晶又は配向圧電材料としても知られて
いる。
【0045】例A:結晶育成 試薬レベル、化学グレード(chemical grade)のPbO、M
gO、Nb2O5、ZnO、TiO2を使用して、PMN-PT及びPZN-PT組
成を形成した。PMN-PTには、26%〜40%のPT(40 mm
(長さ)×25 mm(直径))が含まれ、PZN-PTの組成に
は、4.5%及び8%(20 mm(長さ)×15 mm(厚み)×1
5 mm(幅))のPTが含まれていた。Bridgman及びフラッ
クス成長技法を利用して、PMT-PT及びPZN-PT単結晶の成
長を行った。単結晶に対して、Laueの後方反射法を用い
て、(001)、(011)、(111)面に対して平行なIDソ
ーを使用し、約1 mmの厚みにスライスして、配向を施
した。ウェーハにラッピング及び研磨加工をした後、対
向表面に金のコーティングを施して、電極を形成した。
次に、<001>、<011>、<111>厚み配向をなす単結
晶ウェーハが、ダイシングソーを使用して、さまざまな
幅配向カットを施された、10〜15 mm×0.3〜0.5 mm×0.
15〜0.3 mmのスライバーをなすようにダイシングされ
た。<001>又は<011>又はそれに近い配向をなす、長
さ配向のバーもカットされた。これらのバーの長さ対幅
のアスペクト比は、3:1〜約7:1の範囲である。ス
ライバー及びバーは、空気又はオイル内において室温で
ポーリング(pole)を施され、電気機械特性及び誘電特
性が、HP 4194Aインピーダンス利得位相アナライザによ
り測定された。
【0046】例B:<001>t/<010>wカット 図5は、<001>t/<010>wカットのステレオ投影図を
示すが、ここでスライバーの厚み配向、すなわち厚みの
向く方向は、<001>に沿っており、幅配向、すなわち
幅の向く方向は、<010>に沿っている。菱面体晶相の
場合、(001)面に沿って4つの<111>分極方向が存在
する。分極方向は、それぞれ、<001>のポーリング方
向(poling direction)から54.7度ずれている。<001
>に沿った厚み配向と、<010>に沿った幅配向をなすP
MN-PT及びPZN-PTスライバーは、菱面体晶相と正方晶相
を包含するPT組成の関数として特徴づけられる。
【0047】表1には、これらのスライバーの圧電特性
及び誘電特性が記載されている。表1に示すように、極
めて高い有効結合定数(0.90に近いk33´)が、MPBに
近い菱面体晶相組成で、<001>t/<010>wスライバー
について、得ることができる。特性、とりわけ誘電率
は、PT組成の強い関数である。PMN-PT組成が、菱面体晶
相(PMN-PT系におけるPTが33%未満)から正方晶相(PM
N-PT系におけるPTが35%を超える)に遷移すると、誘電
率は、40%を超える低下を示す。したがって、<001>t
/<010>wカットの特性は、MPB組成において、組成に
おける小さな変化といったわずかな摂動にさえ敏感であ
るように思われる。
【0048】以下の表1は、<001>t/<010>w配向の
カットが施されたPMN-PT及びPZN-PTスライバーのクラン
プ誘電率及び電気機械特性を示す。
【表1】
【0049】例C: <001>t/<011>wカット、及び
<001>t/<010>wと<001>t/<011>wの間のカット <001>に沿った厚み配向及び<011>に沿った幅配向を
備えるスライバーが、菱面体晶相組成で測定された。<
001>t/<010>wカットと比較すると、<001>t/<01
1>wカットの速度は、かなり速いが、その結合定数は、
比較的低い(v<001>/<011>=3.8 mm/μsec及びk33´
<001>/<011>=0.78に対して、v<001> /<010>=3.2 mm/
μsec及びk33´<001>/<010>=0.87)。<001>t/<01
0>wカットと比較すると、<001>t/<011>wカット
は、幅配向に対して極めて敏感である。例えば、あるカ
ットが、<011>幅配向からほんの数度ずれると、付加
共振ピークが生じることになる。
【0050】図6は、<010>幅配向に対するカット角
の関数として結合定数を示している。菱面体晶相におけ
る<111>分極方向は、<001>t/<010>wカットの長
さ方向に沿ってクランプされないので(図5を参照され
たい)、この配向における結合定数は、図6に示すよう
に幅配向に対してあまり敏感ではない。幅配向のカット
角が、<010>方向から15度を超えてずれる場合、付加
共振モードが生じ、有効結合定数(k33´)は、幅配向
角が増すにつれて、低下し始める。
【0051】幅配向が、<011>方向に沿っている(<0
01>t/<010>wカットから45度ずれた<001>t/<011
wカット)場合、元の主共振ピークが消え、付加共振
ピークが主ピークになる。4つの<111>分極方向のう
ちの2つが、図7に示すようにスライバーの長さ方向に
沿ってクランプされるので、このカットは幅配向に敏感
である。
【0052】以上の結果が示すように、電気機械特性に
変化を生じることなく、30度を超える幅配向範囲内にお
ける処理が可能になるので、<001>t/<010>
w±15degreeカットによって、変換器の設計に融通性が
与えられる。
【0053】例D:クリーンな共振モードのアスペクト
比 この研究、明細書に記載の全ての試験片は、285 μmの
厚みとこの厚みの10倍を超える長さを備え、<001>方
向に沿って厚み配向をなしている。
【0054】0.67〜0.32のアスペクト比(幅/高さ)を
備えるスライバーが、<010>方向から23゜ずれた幅配
向をなすようにカットされた。スライバーは、問題とな
る周波数範囲内において、2つの主共振ピークを示し
た。これらのスライバーのアスペクト比(幅/高さ)を
低下させると、興味深い現象が見出された。スプリアス
モード(spurious mode)の強度が、アスペクト比の低
下につれて弱くなった。図8に示すように、このモード
は、アスペクト比が0.43未満になると、最終的に完全に
消失した。したがって、厚みに沿って<001>配向をな
す低アスペクト比のスライバーを製作すると、<010>
幅配向から25度まで、結合の強い、単一のクリーンな共
振ピークが得られる。
【0055】例E:<001>及び<011>長さ配向バーサ
ンプル バー形状サンプルについても特性が明らかにされた。PM
N−PT31%組成で、長さ対幅のアスペクト比が7:1及
び3:1のバーは、<001>及び<011>方向に沿って長
さ方向に配向が施された。<001>及び<011>の両方の
配向において0.90を超えるk’33の結合定数が得られた
(表2A及び2Bを参照されたい)。これらのデータか
ら明らかなように、<001>方向でのカットによって優
れた結合定数がもたらされるだけではなく、<011>方
向でのカットによってももたらされる。これら2つの配
向において観測された相違は極めてわずかであった。表
2Bに示すように、15度までなら、配向カットが<001
>及び<011>方向からわずかにシフトしても、結合定
数は、極めて高い値を保ち、相対的に不変である。
【0056】表2Aは、<001>、<011>、<111>方
向でカットされたPMN-PT31%の有効結合定数を示す。サ
ンプルの幾何学的寸法は6.0 mm×0.9 mm×0.9 mmであ
る。
【表2A】
【0057】表2Bは、<001>、<011>方向又はそれ
に近い方向でカットされたPMN-PT31%の有効結合定数を
示す。サンプルの幾何学的寸法は2.4 mm×0.8 mm×0.8
mmである。
【表2B】
【0058】例F:<011>t/<010>w、<011>t/<
110>wカット <011>に沿った厚み配向をなすPMN-PT単結晶を、好ま
しい電気機械特性を備えた配向カットの存在について調
べた。図9は、<011>t/<110>wカットと<011>t
<010>wカットの両方のステレオ投影図を示す。この図
の<011>ステレオ投影で示されるように、(011)面に
沿って2つの<111>分極方向と<001>分極方向が存在
する。それらの分極方向は、それぞれ、<001>ポーリ
ング方向(厚み配向でもある)から35.3゜又は45゜ずれ
ている。<001>厚み配向とは異なり、菱面体晶相及び
正方晶相の分極方向は、<011>厚み配向(又はポーリ
ング方向)に対して平行ではない。このカットの誘電特
性及び電気機械特性は、<001>方向カットと比較する
と、菱面体晶相−正方晶相遷移に敏感ではないことが予
測される。
【0059】クランプ効果のため、菱面体晶<011>t
<010>wカットに関するk33´は、極めて低いが、速度
は極めて速い。一方、<011>t/<010>wカットに関す
るクランプ効果は、菱面体晶相の場合、極めてわずかで
あるため、<011>t/<010>wによって、比較的高いk
33´と適度な速度が得られる。表3には、<011>t/<
110>w配向カットと<011>t/<010>w配向カットの有
効結合定数及び長さ方向速度が記載されている。
【0060】表3は、<011>t/<110>w及び<011>t
/<010>wの電気機械特性を示す。
【表3】
【0061】例G:<011>t/<211>w、<011>t/<
522>w、<011>t/<311>wカット、及び<110>方向
から<010>方向までの可変角カット 表4は、<011>に沿った厚み配向、及び<110>方向と
<010>方向の間の幅配向を備えたPMN-PTスライバーの
有効結合定数を示す。<111>及び<001>分極方向がど
ちらも、幅方向に沿ってクランプされない場合、これら
のスライバーから極めて高い結合定数を得ることができ
る。表4に示すように、幅配向が<110>から50〜70度
ずれたスライバーの場合、0.90もの高いk33´を得るこ
とが可能である。これらの<011>t/<110>
w50-70degreeカットには、<011>t/<211>w(55.4
゜)、<011>t/<522>w(60.4゜)、<011>t/<31
1>w(65.4゜)カットが含まれる。<011>t/<110>
w50-70degreeカットは、極めて高いk3 3値を示すだけで
はなく、その特性は、広い角度範囲にわたって、幅配向
に対してほとんど感応しないので、変換器の製造を容易
にすることが可能になる。これらの結果によって明らか
なように、<011>方向によって、変換器用途に対して
優れた結合特性を示す、ある範囲の実用的な厚みカット
がもたらされる。
【0062】表4は、<011>t/<110>w0-90degree
向カットを施されたPMN-PTスライバーの有効結合定数及
び長さ方向速度を示す。
【表4】
【0063】例H:<111>t/<011>wカット 図10は、<111>t/<011>wカットのステレオ投影図を
示す。表5は、<111>に沿った厚み配向と、<011>方
向又はそれに近い幅配向を備えた、PMN-PTスライバーの
電気機械特性を示す。それらの結合定数は、<001>t
<010>w±15 degreeカット及び<011>t/<110>
w50-70degreeカットの結合定数よりわずかに低いが、<
111>t/<011>wカットの誘電率及び速度は、<001>t
/<010>wカットの誘電率より2〜3倍高く、速度は50
%速い。また、この配向カットの音響特性は、表5に示
すように、幅配向に対して感応性がより低くなる。
【0064】<111>t/<011>wカットによって、PZT
タイプセラミックの配向カット又はPMN-PT及びPZN-PT単
結晶の他の配向カットに比べて優れた誘電特性ととも
に、はるかに速い速度が得られる。高速度(<111>方
向では<001>方向よりも50%速い)であることによっ
て、より厚い結晶の利用が可能になり、これによって、
さらに高周波用途に関する変換器の製造しやすさが向上
する。一方高誘電率であることによって、低電気インピ
ーダンスの設計が可能になり、このため変換器と電子回
路との間の電気インピーダンス整合が向上する。
【0065】表5は、<111>t/<011>wカットの電気
機械特性を示す。
【表5】
【0066】例I:対角配向をなす鉛ベースの多結晶材
料 Gentilmanによって、<001>方向の単結晶種から配向多
結晶PMN-PT及びPZN-PT材料を製造するための射出成形法
が開示されている(Piezocrystals Workshop,Arlingto
n, Virginia, January 18-20,2000で発表されたGentilm
anの論文「Processing and Application of Solid Stat
e Converted High Strain Undersea Transmitter Mater
ials」を参照されたい)。単結晶材料の場合と同様、多
結晶ベースの材料も、その厚み配向又は幅配向によって
決まる好ましい特性を示す。同様の方法を用いて、多結
晶PMN-PT又はPZN-PTは、<011>及び<111>方向に沿っ
て部分的に位置合わせ、すなわち整列される。<011>
及び<111>方向に沿った配向も施される、本出願で記
載される単結晶は、広い角度範囲にわたって(15度ま
で)向上した電気機械特性を備えているので、整列し
た、すなわちアライメントのとれた多結晶セラミック
も、同様に、同様の配向をなす単結晶に匹敵する特性の
向上を達成することができる。多結晶セラミックの処理
は、単結晶の成長より低コストであるため、単結晶のPM
N-PT及びPZN-PTの代わりに、配向多結晶PMN-PT及びPZN-
PTを使用することによって、著しく低コストでの変換器
の製作が可能になる。このため、多結晶材料は変換器用
途にとって魅力のあるものになる。
【0067】配向多結晶セラミックは、対角配向をなす
単結晶種の長いロッド(化学グレードのPbO、MgO、Nb2O
5、ZnO、TiO2を使用して、上述のように調製された)と
セラミックの粉末を混合し、剪断圧力を加えて、種のア
ライメントをとることによって製造される。次の製作方
法を利用して、単結晶種を整列させることができる:押
し出し、射出成形、テープキャスティング(tape casti
ng)等。焼結プロセスによって、単結晶種を成長させ
て、種の整列のために及び種の整列にしたがって、部分
的に配向されたセラミックマトリックスとすることがで
きる(図11を参照されたい)。焼結多結晶材料は、<01
1>又は<111>配向にカットされ、単結晶と同様の特性
を備えるものと予測される。組織化多結晶材料、とりわ
けSr2Nb2O7の調製に関する参考のために、Braharmarout
uらによるProceedings of the Tenth IEEE Internation
al Symposium on Applications of Ferroelectrics, Ea
st Brunswick, NJ, August 18-21,1996,page 882-886を
参照されたい。この内容は全て本願書において援用す
る。
【0068】以下においては、本発明の種々の構成要件
の組み合わせからなる例示的な実施態様を示す。 1.1つ以上の鉛ベースの単結晶からなる変換器であっ
て、各結晶の長さ方向又は厚み方向が対角線方向に向
き、有効結合定数が少なくとも0.70であることを特徴と
する変換器。
【0069】2.超音波変換器であって、送信素子及び
/又は受信素子として機能する表面を備えた1つ以上の
圧電コンポーネントと、前記素子の対向表面に配置され
た電極とからなり、各鉛ベースの圧電コンポーネント
が、対角線方向に向き、有効結合定数が少なくとも0.70
であることを特徴とする超音波変換器。
【0070】3.超音波プローブであって、送信素子及
び/又は受信素子として機能する表面を備えた1つ以上
の圧電コンポーネントと、前記素子の対向表面に配置さ
れた電極とからなり、各鉛ベースの圧電コンポーネント
が、対角線方向に向き、有効結合定数が少なくとも0.70
であることを特徴とする超音波プローブ。
【0071】4.結晶又はコンポーネントが、<011>
方向に対して約35度〜約90度の幅配向をなす、1〜3項
の何れか1項に記載の変換器又はプローブ。
【0072】5.鉛ベースの単結晶又はコンポーネント
が、<011>方向からわずかにずれた配向をなし、サン
プルの長さ方向又は厚み方向が、<011>方向から2〜
約20度ずれてカットされている、1〜4項の何れか1項
に記載の変換器又はプローブ。
【0073】6.結晶又はコンポーネントの長さ対厚み
対幅の比が、おおよそ(300〜15):(5〜1):(5
〜1)である、1〜5項の何れか1項に記載の変換器又
はプローブ。
【0074】7.変換器が、1次元、準1次元、2次元
の結晶又はコンポーネント構成を備える、1〜6項の何
れか1項に記載の変換器又はプローブ。
【0075】8.対角の配向をなす鉛ベースの多結晶材
料からなる変換器。
【0076】9.鉛ベースの結晶又はコンポーネントの
化学式が、Pb(B’B”)O3−PbTiO3であり、ここで
B’が、Mg2+、Ni2+、Sc3+、Yb3+、Fe3+、Mn3+、In3+
Ir3+、Co3+、Zn2+の少なくとも1つとすることができ、
B”が、Nb5+、Ta5+、Te6+、W 6+の少なくとも1つとす
ることができる、1〜8項の何れか1項に記載の変換器
又はプローブ。
【0077】10.鉛ベースの結晶又はコンポーネント
の化学式が、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、Pb(Zn1/3N
b2/3)O3−PbTiO3、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3−PbTiO3であ
る、1〜9項の何れか1項に記載の変換器又はプロー
ブ。
【0078】
【発明の効果】本発明は、鉛ベースの単結晶からなる変
換器に関し、この単結晶は対角の配向をなし、有効結合
定数が少なくとも0.70である。一実施態様では、鉛ベー
スの結晶の化学式が、Pb(B’B”)O3−PbTiO3であ
り、ここでB’が、Mg2+、Zn2+、Ni2+又はSc3+であり、
B”が、Nb5+、Ta5+又はW6+である。好ましくは、鉛ベ
ースの結晶の化学式が、Pb(B’B”)O3−PbTiO3であ
り、ここでB’が、Mg2+、Zn2+又はSc3+であり、B”が
Nb5+である。より好ましくは、鉛ベースの結晶は、Pb
(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(「PMN-PT」)、Pb(Zn1/3N
b2/3)O3−PbTiO3(「PZN-PT」)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3
−PbTiO3(「PSN-PT」)である。
【0079】また本発明は、複数の鉛ベース単結晶変換
器からなる変換器を含む。一実施態様では、超音波プロ
ーブが、送信素子及び/又は受信素子として機能する表
面を備えた1つ以上の圧電コンポーネントと、素子の対
向表面に配置された電極とからなり、このとき各鉛ベー
スの圧電コンポーネントが、上記のように、すなわち対
角の配向をなし、有効結合定数が少なくとも0.70であ
る。加えて本発明は、材料を改良して、スプリアスモー
ドを減少させることを含む。さらに本発明は、対角配向
鉛ベース変換器を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)PZN-PT及び(b)PMN-PTに関する相図で
ある。
【図2】それぞれ、[001]に沿って配向する、すなわ
ち[001]の方向の厚みを備えるスライバーと、[010]
及び[110]方向に沿った幅を備えるスライバーを示す
概略図である。また[001]に沿って配向する、すなわ
ち[001]長さ配向のバーも示されている。
【図3】対角の配向をなす複数の1次元スライバー形状
素子からなる、典型的な変換器用の構成を示す図であ
る。
【図4】対角の配向をなす複数の準1次元(1.5D)/2
次元(2D)素子からなる、典型的な変換器用の構成を示
す図である。
【図5】<001>t/<010>wカットのステレオ投影図で
ある。矢印は、それぞれ分極方向(<111>方向)と、
ポーリング方向(<001>方向)を示している。
【図6】<010>幅配向からずれた幅配向の関数とし
て、<001>厚み配向をなすスライバーカットの有効結
合定数を示す図である。0゜=<010>w配向、45゜=<
011>w配向。
【図7】<001>t/<011>wカットのステレオ投影図で
ある。矢印は、それぞれ分極方向(<111>方向)と、
ポーリング方向(<001>方向)を示している。
【図8】幅の厚みに対するアスペクト比の関数として結
合定数をプロットした図である。
【図9】<011>t/<110>wカット及び<011>t/<10
0>wカットのステレオ投影図である。
【図10】<111>t/<011>wカットのステレオ投影図
である。
【図11】配向多結晶材料の概略を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 399117121 395 Page Mill Road P alo Alto,California U.S.A. (72)発明者 ラジェシュ・クマー・パンダ アメリカ合衆国ニューハンプシャー州 03060,ナシュア,ニューキャッスル・ド ライブ・4,アパートメント・2 (72)発明者 ツルベケレ・アール・グルラヤ 香港ディスカバリー・ベイ,パークベイ ル・ドライブ,ウッドバーリー・コート・ ナンバー10,フラット・エイ・4/エフ (72)発明者 ヒーザー・ベック アメリカ合衆国マサチューセッツ州01824, チェルムスフォード,ノース・ロード・ナ ンバー203・255

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1つ以上の鉛ベース単結晶からなる変換器
    であって、各単結晶の長さ方向又は厚み方向が対角線方
    向に向き、有効結合定数が少なくとも0.70であることを
    特徴とする変換器。
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