JP2001302591A5 - - Google Patents
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- HCEIDBMPBKTYFA-UHFFFAOYSA-N Cc(c(CF)c(CF)c(COC)c1F)c1F Chemical compound Cc(c(CF)c(CF)c(COC)c1F)c1F HCEIDBMPBKTYFA-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 ベンジルアルコールエステル誘導体、その製造法、及びこれを含有する殺虫、防虫剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次式I
【化1】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体。
【請求項2】 次式II
【化2】
で表わされるカルボン酸、又はその反応性誘導体と、次式III
【化3】
で表わされるアルコール、又はその反応性誘導体とを反応させることを特徴とする次式I
【化4】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体の製造法。
【請求項3】 次式I
【化5】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する殺虫、防虫剤。
【請求項4】 次式I
【化6】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する蚊取線香。
【請求項5】 次式I
【化7】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する常温蒸散剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、有用な新規ベンジルアルコールエステル誘導体、その製造法、及びこれを有効成分として含有する殺虫、防虫剤に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
ベンジルアルコールエステル系の殺虫剤としては今まで各種のものが知られており、3−フェノキシベンジルアルコールの菊酸エステルであるフェノトリン等はその代表的なものである。これらのベンジルアルコールエステル系ピレスロイドは、殺虫活性が高く化学的にも安定で、合成が比較的簡便であり、温血動物に低毒性であるなどの特徴を有しているが、揮散性に乏しく、高揮散性を要求される分野への適用は困難であった。そこで、ベンジル基にフッ素原子を導入したベンジルアルコールエステル系ピレスロイドも開発されているが、必ずしも十分満足のいくものではなく、より一層有用な化合物の開発が切望されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来殺虫、防虫成分が有している問題点を解消し、速効性と致死効果を兼備すると共に、安全性が高く、また揮散性にも優れ、あらゆる点で有用な化合物、その製造法、ならびにこれを有効成分として含有する殺虫、防虫剤を開発する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を続けた結果、次式I
【化8】
で表わされる新規ベンジルアルコールエステル誘導体を基本構成として見出し、実用に供し得ることを確認して本発明を完成したものである。
すなわち、請求項1の発明は、式Iで表される新規ベンジルアルコールエステル誘導体に係る。
【0005】
式Iで表される新規ベンジルアルコールエステル誘導体は、
4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート
である。
【0006】
4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールと化学構造が類似する化合物は、特許文献1に示すように、既に公知である。しかるに、本発明者らは、式Iを構成する2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸に着目し、これと前記アルコール成分との組合せを試験したところ、式Iの化合物が実用化されているピレスロイドに比べてより一層有用であることを知見したものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の新規ベンジルアルコールエステル誘導体を製造するにあたり、次式II
【化9】
で表わされるカルボン酸、又はその反応性誘導体と、次式III
【化10】
で表わされるアルコール、又はその反応性誘導体とを反応させることによって調製しえる。
【0008】
カルボン酸の反応性誘導体としては、例えば酸ハライド、酸無水物、カルボン酸低級アルキルエステル、アルカリ金属塩、あるいは有機第3級塩基との塩があげられる。一方、アルコールの反応性誘導体としては、例えばクロライド、ブロマイド、p−トルエンスルホン酸エステル等があげられる。反応は適当な溶媒中で必要により脱酸剤又は触媒としての有機又は無機塩基又は酸の存在下に必要により加熱下に行われる。
【0009】
本発明製造法の好ましい実施方法によれば、カルボン酸とアルコールが、ジシクロヘキシルカルボジアミド及び4−ジメチルアミノピリジンの存在下にエステル化される。
【0010】
請求項3の発明は、次式I
【化11】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する殺虫、防虫剤に係るものであり、請求項4及び請求項5の発明は、それぞれ前記ベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する蚊取線香、常温蒸散剤に係るものである。
【発明の実施の形態】
【0011】
式Iで表される化合物は新規化合物であり、常温で液体であって、有機溶剤に一般に易溶である。
本発明の化合物を実際に施用する場合には、他の成分を加えずに単味の形でも使用できるが、殺虫、防虫剤として使いやすくするため担体を配合して適用するのが一般的である。
散布用殺虫、防虫剤としては乳剤、油剤、粉剤、水和剤、エアゾール剤等があげられ、前記化合物に乳化剤、分散剤、溶剤、安定剤等の補助剤、固型状担体、液体状担体、噴射剤等を適宜配合して当業技術の熟知する方法によって調製することができる。
【0012】
また、木粉その他適当な基材と混合して蚊取線香の如き燻蒸用殺虫、防虫剤として使用することができ、更に、前記化合物を適当な有機溶剤に溶解して台紙に浸ませ、又は適当な溶剤に溶かし適当な吸液芯を介して適当な加熱体によって加熱蒸散させるいわゆる電気蚊取として使用する場合も蚊取線香と同様すぐれた効果を示す。なお、本発明の化合物は従来のピレスロイドに比べて揮散性が高いため、電気蚊取の加熱体温度を従来品より低い120℃以下に設定することが可能でありメリットが大きい。
【0013】
粉剤等の形態に調製するあたり用いられる担体としては、代表的には例えばケイ酸、カオリン、タルク等の各種鉱物質粉末や、木粉、小麦粉などの各種植物質粉末などを例示できる。また、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や塩素酸カリウム等の燃焼発熱剤等を配合して燻煙剤とする場合もすぐれた効果を示す。
【0014】
更に本発明の化合物は、通常、マット、シート状の基材に含浸、塗布等により本発明化合物を担持させ、好ましくはファン等を利用して常温で成分を揮散させることができ、殺虫、防虫剤としての用途が広い。マット、シート状の基材としては、パルプ製マット、紙、織布、不織布あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エチレン酢酸ビニール等のプラスチック成形品、多孔性ガラス材料等をあげることができる。
また、例えばアダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピル−トリオキサン等の昇華性担体を用いて本発明化合物の揮散性調節を図ることもできるし、あるいはポリビニルアルコール、アルギン酸、カラギーナン等のゲル化剤を用いてゲルの形態に調製してもよい。
【0015】
また、本発明の殺虫、防虫剤に、N−オクチルビシクロヘプテンカルボキシイミド(商品名MGK−264)、N−オクチルビシクロヘプテンジカルボキシイミドとアリールスルホン酸塩との混合物(商品名MGK−5026)、サイネピリン500、オクタクロロジプロピルエーテル、ピペロニルブトキサイドなどの共力剤を加えてもよい。
【0016】
更に、他の殺虫、防虫成分、例えばフェニトロチオン、DDVP、ダイアジノン等の有機リン剤、NAC、MTMC、メトキサジアゾン、プロポクスル等のカーバメート剤、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、フタールスリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン等の従来のピレスロイド系殺虫剤、シラフルオフェン等の有機ケイ素系化合物、殺菌剤、抗菌剤、忌避剤、あるいは芳香剤、消臭剤等を混合することによって効力のすぐれた多目的組成物が得られ、労力の省力化、薬剤間の相乗効果も十分期待しえるものである。
【0017】
本発明の殺虫、防虫剤の用途として、ハエ、蚊、ゴキブリ、屋内塵性ダニ類等の衛生害虫、イガ、コイガ、カツオブシムシ等の衣料害虫、コクゾウ等の貯穀害虫をはじめ、アブラムシ、ウンカ、カメムシ、ムカデ、ユスリカ等の種々の害虫に高い殺虫、防虫効果を示す。
【0018】
次に、本発明で用いられる化合物の合成例を示す。
〔合成例〕
2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸1.5gと、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール2.2gとをジクロロメタン30mLに溶解し、これに氷冷下でジシクロヘキシルカルボイミド2.1gと4−ジメチルアミノピリジン0.2gを20mLのジクロロメタンに溶解してなる溶液を添加した。室温で12時間攪拌後、2時間還流して反応を完結させ、冷却後析出したジシクロヘキシル尿素をろ別した。ろ液を濃縮して得られた油状物質を100gのシリカゲルカラムを流下させて、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート 3.3gを得た。
IR 1100cm−1(−CH2―O―CH3) ,1730cm−1(−COO−)
【0019】
次に本発明の新規ベンジルアルコールエステル誘導体を含有する殺虫、防虫剤がすぐれたものであることより明らかにするため実施例及び効果の試験成績を示す。
【実施例1】
【0020】
本発明の化合物200mgを3x60cmの濾紙に含浸させ、8ケの山折り部と谷折り部からなる襞状シートとした後、輪状となして薬剤含浸ファンを作製した。これを薬剤揮散装置に装填しモーターで該ファンを回転させて薬剤を気中に放出させる常温揮散剤として供した。
【実施例2】
【0021】
縦22mmx横35mmx厚さ2.8mmで、重量が約840mgの繊維質製マット(パルプファイバー50%、コツトンファイバー50%)に、マット1枚当たり、殺虫成分として本発明の化合物を20mg、共力剤としてピペロニルブトキサイドを50mg、安定剤を15mg、色素を0.5mg、IPソルベント2028(出光石油化学株式会
社製、主成分はイソパラフィン)150mgを含浸させ、1日用の蚊取マットを作製した。
【実施例3】
【0022】
本発明の化合物0.3部とクレー99.7部をよく粉砕混合して0.3%粉剤を得た。
【0023】
〔効果試験例1〕 油剤による殺虫試験
本発明の化合物の0.2%白灯油溶液(A)、0.2%とサイネピリン500 0.8%白灯油溶液(B)、及びフタールスリンとフェノトリンの各々の0.2%白灯油溶液につき、イエバエの落下仰転率を求め、供試薬剤の相対有効濃度を算出し、更に24時間後の致死率を求めたところ表1の如くであった。( )は24時間後の致死率を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
試験の結果、本発明の化合物はノックダウン剤として知られるフタールスリンに勝るノックダウン効果と、キル剤として知られるフェノトリンより優れた致死効果を示すことが認められた。また、従来ピレスロイドの共力剤であるサイネピリン500を配合することによって、その殺虫、防虫効果が増強されることも明らかとなった。
【0026】
〔効果試験例2〕 蚊取線香による殺虫試験
本発明の化合物0.4部、MGK−5026 1.0部を除虫菊抽出粕粉、木粉、デン粉等の蚊取線香用基材98.6部に均一に混合し公知の方法によって蚊取線香を得た。
70cm立方のガラスチャンバー内にアカイエカ成虫約50匹を放ち、電池式小型扇風機(羽根の径13cm)を箱内に設置し回転させた。そこへ前記公知の方法によって得られた本発明化合物による蚊取線香0.1gの両端に点火したものを入れると、30分以内に80%以上のアカイエカを落下仰転させることができ、翌日にはその80%以上を致死させることができた。
【0027】
〔効果試験例3〕 常温蒸散剤による殺虫試験
本発明化合物及び対照化合物〔4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート〕のそれぞれ200mgを、平均外径が6mmの粒状発泡セルロースビーズ〔商品名:ビスコパール(レンゴー株式会社製)〕3gに含浸させて得られた薬剤含浸体を、外径5cm、高さ3cmの円筒状カートリッジに収納した。なお、カートリッジは、その側面に高さ方向ほぼ全長に幅3mmの開口スリットを3mmおきに備えたものである。このカートリッジをファン付き薬剤揮散装置に装填し、6畳の部屋の中央に置いてファンを1500rpmで回転させた。使用開始1日後、15日後及び30日後に部屋の四隅に供試蚊を入れた籠を吊り下げ、蚊に対する殺虫効力を調べたところ、本発明化合物は30日間にわたり優れた防除効果を示した。これに対し、対照化合物の場合、本発明化合物に比べて揮散性が低いため、殺虫効力の点でも本発明化合物に劣った。
【0028】
〔効果試験例4〕 電気蚊取による殺虫試験
縦22mmx横35mmx厚さ2.8mmで、重量が約840mgの繊維質製マット(パルプファイバー50%、コツトンファイバー50%)に、マット1枚当たり、殺虫成分として本発明の化合物を200mg、揮散調整剤としてサイネピリン500を600mg、安定剤を15mg、色素を0.5mg、n−パラフィン系灯油約50mgを含浸させ、長期間用マットを作製した。マット底面積の0.5倍の面積を有する帯状の放熱板(加熱温度:100℃)を中央に配設した加熱蒸散装置を用い、この放熱板上に該マットを載置した。6畳(約25m3)の空間にて、12時間通電と12時間休止のサイクルを30日間繰り返したところ、いずれも通電時間内において十分な蚊防除効果を示した。
【発明の効果】
【0029】
本発明の式Iで表わされる新規ベンジルアルコールエステル誘導体は有用な化合物であり、これを有効成分として含有する殺虫、防虫剤は、速効性と致死効果を兼備すると共に、安全性が高く、また揮散性にも優れ、従来のピレスロイド化合物を含有する殺虫、防虫剤に比べて一層有用である。
【発明の名称】 ベンジルアルコールエステル誘導体、その製造法、及びこれを含有する殺虫、防虫剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次式I
【化1】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体。
【請求項2】 次式II
【化2】
で表わされるカルボン酸、又はその反応性誘導体と、次式III
【化3】
で表わされるアルコール、又はその反応性誘導体とを反応させることを特徴とする次式I
【化4】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体の製造法。
【請求項3】 次式I
【化5】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する殺虫、防虫剤。
【請求項4】 次式I
【化6】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する蚊取線香。
【請求項5】 次式I
【化7】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する常温蒸散剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、有用な新規ベンジルアルコールエステル誘導体、その製造法、及びこれを有効成分として含有する殺虫、防虫剤に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
ベンジルアルコールエステル系の殺虫剤としては今まで各種のものが知られており、3−フェノキシベンジルアルコールの菊酸エステルであるフェノトリン等はその代表的なものである。これらのベンジルアルコールエステル系ピレスロイドは、殺虫活性が高く化学的にも安定で、合成が比較的簡便であり、温血動物に低毒性であるなどの特徴を有しているが、揮散性に乏しく、高揮散性を要求される分野への適用は困難であった。そこで、ベンジル基にフッ素原子を導入したベンジルアルコールエステル系ピレスロイドも開発されているが、必ずしも十分満足のいくものではなく、より一層有用な化合物の開発が切望されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来殺虫、防虫成分が有している問題点を解消し、速効性と致死効果を兼備すると共に、安全性が高く、また揮散性にも優れ、あらゆる点で有用な化合物、その製造法、ならびにこれを有効成分として含有する殺虫、防虫剤を開発する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を続けた結果、次式I
【化8】
で表わされる新規ベンジルアルコールエステル誘導体を基本構成として見出し、実用に供し得ることを確認して本発明を完成したものである。
すなわち、請求項1の発明は、式Iで表される新規ベンジルアルコールエステル誘導体に係る。
【0005】
式Iで表される新規ベンジルアルコールエステル誘導体は、
4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート
である。
【0006】
4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールと化学構造が類似する化合物は、特許文献1に示すように、既に公知である。しかるに、本発明者らは、式Iを構成する2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸に着目し、これと前記アルコール成分との組合せを試験したところ、式Iの化合物が実用化されているピレスロイドに比べてより一層有用であることを知見したものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の新規ベンジルアルコールエステル誘導体を製造するにあたり、次式II
【化9】
で表わされるカルボン酸、又はその反応性誘導体と、次式III
【化10】
で表わされるアルコール、又はその反応性誘導体とを反応させることによって調製しえる。
【0008】
カルボン酸の反応性誘導体としては、例えば酸ハライド、酸無水物、カルボン酸低級アルキルエステル、アルカリ金属塩、あるいは有機第3級塩基との塩があげられる。一方、アルコールの反応性誘導体としては、例えばクロライド、ブロマイド、p−トルエンスルホン酸エステル等があげられる。反応は適当な溶媒中で必要により脱酸剤又は触媒としての有機又は無機塩基又は酸の存在下に必要により加熱下に行われる。
【0009】
本発明製造法の好ましい実施方法によれば、カルボン酸とアルコールが、ジシクロヘキシルカルボジアミド及び4−ジメチルアミノピリジンの存在下にエステル化される。
【0010】
請求項3の発明は、次式I
【化11】
で表わされるベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する殺虫、防虫剤に係るものであり、請求項4及び請求項5の発明は、それぞれ前記ベンジルアルコールエステル誘導体を有効成分として含有する蚊取線香、常温蒸散剤に係るものである。
【発明の実施の形態】
【0011】
式Iで表される化合物は新規化合物であり、常温で液体であって、有機溶剤に一般に易溶である。
本発明の化合物を実際に施用する場合には、他の成分を加えずに単味の形でも使用できるが、殺虫、防虫剤として使いやすくするため担体を配合して適用するのが一般的である。
散布用殺虫、防虫剤としては乳剤、油剤、粉剤、水和剤、エアゾール剤等があげられ、前記化合物に乳化剤、分散剤、溶剤、安定剤等の補助剤、固型状担体、液体状担体、噴射剤等を適宜配合して当業技術の熟知する方法によって調製することができる。
【0012】
また、木粉その他適当な基材と混合して蚊取線香の如き燻蒸用殺虫、防虫剤として使用することができ、更に、前記化合物を適当な有機溶剤に溶解して台紙に浸ませ、又は適当な溶剤に溶かし適当な吸液芯を介して適当な加熱体によって加熱蒸散させるいわゆる電気蚊取として使用する場合も蚊取線香と同様すぐれた効果を示す。なお、本発明の化合物は従来のピレスロイドに比べて揮散性が高いため、電気蚊取の加熱体温度を従来品より低い120℃以下に設定することが可能でありメリットが大きい。
【0013】
粉剤等の形態に調製するあたり用いられる担体としては、代表的には例えばケイ酸、カオリン、タルク等の各種鉱物質粉末や、木粉、小麦粉などの各種植物質粉末などを例示できる。また、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や塩素酸カリウム等の燃焼発熱剤等を配合して燻煙剤とする場合もすぐれた効果を示す。
【0014】
更に本発明の化合物は、通常、マット、シート状の基材に含浸、塗布等により本発明化合物を担持させ、好ましくはファン等を利用して常温で成分を揮散させることができ、殺虫、防虫剤としての用途が広い。マット、シート状の基材としては、パルプ製マット、紙、織布、不織布あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エチレン酢酸ビニール等のプラスチック成形品、多孔性ガラス材料等をあげることができる。
また、例えばアダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピル−トリオキサン等の昇華性担体を用いて本発明化合物の揮散性調節を図ることもできるし、あるいはポリビニルアルコール、アルギン酸、カラギーナン等のゲル化剤を用いてゲルの形態に調製してもよい。
【0015】
また、本発明の殺虫、防虫剤に、N−オクチルビシクロヘプテンカルボキシイミド(商品名MGK−264)、N−オクチルビシクロヘプテンジカルボキシイミドとアリールスルホン酸塩との混合物(商品名MGK−5026)、サイネピリン500、オクタクロロジプロピルエーテル、ピペロニルブトキサイドなどの共力剤を加えてもよい。
【0016】
更に、他の殺虫、防虫成分、例えばフェニトロチオン、DDVP、ダイアジノン等の有機リン剤、NAC、MTMC、メトキサジアゾン、プロポクスル等のカーバメート剤、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、フタールスリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン等の従来のピレスロイド系殺虫剤、シラフルオフェン等の有機ケイ素系化合物、殺菌剤、抗菌剤、忌避剤、あるいは芳香剤、消臭剤等を混合することによって効力のすぐれた多目的組成物が得られ、労力の省力化、薬剤間の相乗効果も十分期待しえるものである。
【0017】
本発明の殺虫、防虫剤の用途として、ハエ、蚊、ゴキブリ、屋内塵性ダニ類等の衛生害虫、イガ、コイガ、カツオブシムシ等の衣料害虫、コクゾウ等の貯穀害虫をはじめ、アブラムシ、ウンカ、カメムシ、ムカデ、ユスリカ等の種々の害虫に高い殺虫、防虫効果を示す。
【0018】
次に、本発明で用いられる化合物の合成例を示す。
〔合成例〕
2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸1.5gと、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール2.2gとをジクロロメタン30mLに溶解し、これに氷冷下でジシクロヘキシルカルボイミド2.1gと4−ジメチルアミノピリジン0.2gを20mLのジクロロメタンに溶解してなる溶液を添加した。室温で12時間攪拌後、2時間還流して反応を完結させ、冷却後析出したジシクロヘキシル尿素をろ別した。ろ液を濃縮して得られた油状物質を100gのシリカゲルカラムを流下させて、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート 3.3gを得た。
IR 1100cm−1(−CH2―O―CH3) ,1730cm−1(−COO−)
【0019】
次に本発明の新規ベンジルアルコールエステル誘導体を含有する殺虫、防虫剤がすぐれたものであることより明らかにするため実施例及び効果の試験成績を示す。
【実施例1】
【0020】
本発明の化合物200mgを3x60cmの濾紙に含浸させ、8ケの山折り部と谷折り部からなる襞状シートとした後、輪状となして薬剤含浸ファンを作製した。これを薬剤揮散装置に装填しモーターで該ファンを回転させて薬剤を気中に放出させる常温揮散剤として供した。
【実施例2】
【0021】
縦22mmx横35mmx厚さ2.8mmで、重量が約840mgの繊維質製マット(パルプファイバー50%、コツトンファイバー50%)に、マット1枚当たり、殺虫成分として本発明の化合物を20mg、共力剤としてピペロニルブトキサイドを50mg、安定剤を15mg、色素を0.5mg、IPソルベント2028(出光石油化学株式会
社製、主成分はイソパラフィン)150mgを含浸させ、1日用の蚊取マットを作製した。
【実施例3】
【0022】
本発明の化合物0.3部とクレー99.7部をよく粉砕混合して0.3%粉剤を得た。
【0023】
〔効果試験例1〕 油剤による殺虫試験
本発明の化合物の0.2%白灯油溶液(A)、0.2%とサイネピリン500 0.8%白灯油溶液(B)、及びフタールスリンとフェノトリンの各々の0.2%白灯油溶液につき、イエバエの落下仰転率を求め、供試薬剤の相対有効濃度を算出し、更に24時間後の致死率を求めたところ表1の如くであった。( )は24時間後の致死率を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
試験の結果、本発明の化合物はノックダウン剤として知られるフタールスリンに勝るノックダウン効果と、キル剤として知られるフェノトリンより優れた致死効果を示すことが認められた。また、従来ピレスロイドの共力剤であるサイネピリン500を配合することによって、その殺虫、防虫効果が増強されることも明らかとなった。
【0026】
〔効果試験例2〕 蚊取線香による殺虫試験
本発明の化合物0.4部、MGK−5026 1.0部を除虫菊抽出粕粉、木粉、デン粉等の蚊取線香用基材98.6部に均一に混合し公知の方法によって蚊取線香を得た。
70cm立方のガラスチャンバー内にアカイエカ成虫約50匹を放ち、電池式小型扇風機(羽根の径13cm)を箱内に設置し回転させた。そこへ前記公知の方法によって得られた本発明化合物による蚊取線香0.1gの両端に点火したものを入れると、30分以内に80%以上のアカイエカを落下仰転させることができ、翌日にはその80%以上を致死させることができた。
【0027】
〔効果試験例3〕 常温蒸散剤による殺虫試験
本発明化合物及び対照化合物〔4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート〕のそれぞれ200mgを、平均外径が6mmの粒状発泡セルロースビーズ〔商品名:ビスコパール(レンゴー株式会社製)〕3gに含浸させて得られた薬剤含浸体を、外径5cm、高さ3cmの円筒状カートリッジに収納した。なお、カートリッジは、その側面に高さ方向ほぼ全長に幅3mmの開口スリットを3mmおきに備えたものである。このカートリッジをファン付き薬剤揮散装置に装填し、6畳の部屋の中央に置いてファンを1500rpmで回転させた。使用開始1日後、15日後及び30日後に部屋の四隅に供試蚊を入れた籠を吊り下げ、蚊に対する殺虫効力を調べたところ、本発明化合物は30日間にわたり優れた防除効果を示した。これに対し、対照化合物の場合、本発明化合物に比べて揮散性が低いため、殺虫効力の点でも本発明化合物に劣った。
【0028】
〔効果試験例4〕 電気蚊取による殺虫試験
縦22mmx横35mmx厚さ2.8mmで、重量が約840mgの繊維質製マット(パルプファイバー50%、コツトンファイバー50%)に、マット1枚当たり、殺虫成分として本発明の化合物を200mg、揮散調整剤としてサイネピリン500を600mg、安定剤を15mg、色素を0.5mg、n−パラフィン系灯油約50mgを含浸させ、長期間用マットを作製した。マット底面積の0.5倍の面積を有する帯状の放熱板(加熱温度:100℃)を中央に配設した加熱蒸散装置を用い、この放熱板上に該マットを載置した。6畳(約25m3)の空間にて、12時間通電と12時間休止のサイクルを30日間繰り返したところ、いずれも通電時間内において十分な蚊防除効果を示した。
【発明の効果】
【0029】
本発明の式Iで表わされる新規ベンジルアルコールエステル誘導体は有用な化合物であり、これを有効成分として含有する殺虫、防虫剤は、速効性と致死効果を兼備すると共に、安全性が高く、また揮散性にも優れ、従来のピレスロイド化合物を含有する殺虫、防虫剤に比べて一層有用である。
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