JP2001302347A - 圧電体磁器組成物およびその製造方法、圧電体素子およびその製造方法、ならびに、それを用いたインクジェット式プリンタヘッドおよび超音波モータ - Google Patents

圧電体磁器組成物およびその製造方法、圧電体素子およびその製造方法、ならびに、それを用いたインクジェット式プリンタヘッドおよび超音波モータ

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俊巳 福井
Junko Katayama
淳子 片山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた圧電特性を保持しつつ比較的低温での
焼結が可能であるような圧電体磁器組成物を提供する。 【手段】 化学式(1−y)Pb(Zr1−xTi
−yPb(Mg1/ Nb2/3)O(0.2≦
x≦1、0.05≦y≦0.6)で表されるPZT−P
MNを主成分とし、Vを0.01重量%〜10重
量%およびBiを0.01重量%〜10重量%含
むようにして、圧電体磁器組成物を構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、インクジェット
式プリンタヘッド、マイクロポンプ、超音波モータ、超
音波振動子、圧電トランス、周波数フィルタ、圧電セン
サ、圧電スピーカ、圧電リレー、マイクロマシン、マイ
クロミラーデバイスなどに使用される圧電体磁器組成物
およびその製造方法、圧電体磁器組成物で形成された圧
電体部材を備えた圧電体素子およびその製造方法、なら
びに、圧電体素子を用いて構成されるインクジェット式
プリンタヘッドおよび超音波モータに関する。
【0002】
【従来の技術】3成分系のペロブスカイト型複合酸化物
であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1−x
)O;以下、「PZT」という)とマグネシウム
・ニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O;以
下、「PMN」という)の固溶体(以下、「PZT−P
MN」)を主成分とする圧電体磁器組成物(以下、「PZ
T−PMN系磁器組成物」)は、優れた圧電特性を有し
ていることから、種々の技術分野における多様な圧電体
素子に用いられている。例えばインクジェット式プリン
タヘッドでは、インク室に満たされたインクをインクノ
ズルから噴射させるためにインク室の容積を変化させる
アクチュエータとして、PZT−PMN系磁器組成物か
らなる圧電体膜を有する圧電体素子が用いられている。
【0003】インクジェット式プリンタヘッドには、図
1に示したような構成のプリンタヘッドのほか、種々の
方式および構成のプリンタヘッドがある(特公昭53−
12138号公報、特開平4−1052号公報、特公平
4−52213号公報、特公平7−33089号公報、
USP4584590号明細書、特公平6−6375号
公報、特公平6−61936号公報、特開平10−86
369号公報等参照)。図1は、それら各種方式のイン
クジェット式プリンタヘッドのうちの1つであるプリン
タヘッドの構成を、一部を拡大して模式的に示してお
り、このインクジェット式プリンタヘッドは、ヘッド基
台1と振動板3およびアクチュエータ4とから構成され
ている。ヘッド基台1には、インクを噴射する多数のイ
ンクノズル、それぞれのインクノズルに個別に連通する
多数のインク経路、および、それぞれのインク経路に個
別に連通する多数のインク室2が形成されている(図1
では、1つのインク室2のみを示し、インク経路やイン
クノズルの図示を省略している)。このヘッド基台1の
上面全体を覆うように振動板3が取り付けられ、この振
動板3によってヘッド基台1の全てのインク室2の上面
開口が閉塞されている。振動板3上には、それぞれのイ
ンク室2と個別に対応した位置に、振動板3に振動駆動
力を与えるための圧電体素子5が被着形成されている。
そして、多数の圧電体素子5を備えたアクチュエータ4
の電源9を制御して、所望の選択された圧電体素子5に
電圧を印加することにより、圧電体素子5を振動板3に
対して平行な方向に伸縮変位させる。ところが、圧電体
素子5は、下部電極6側の面で振動板3により拘束され
ているので、結果的に、振動板3および圧電体素子5
は、振動板3面に垂直な方向に撓み変位することにな
る。この振動板3の撓み変位によりインク室2の容積が
変化して、インク経路を介して連通する噴射ノズルから
インクが噴射される。
【0004】圧電体素子5は、下部電極6上に圧電体膜
7を形成し、その圧電体膜7上に上部電極8を形成し
て、下部電極6と上部電極8とで圧電体膜7を挟んで構
成されている。圧電体膜7は、一般的に、PZTを含有
するペロブスカイト型複合酸化物を主成分とする磁器組
成物で形成されている。この圧電体膜7は、スクリーン
印刷法やゾル−ゲル法などを利用して成膜した後加熱焼
成して形成される。
【0005】2成分系であるPZTや、Pb(Mg
1/3Nb2/3)O、Pb(Ni /3
2/3)O、Pb(Mn1/3Nb2/3)O
の第3成分をPZTに加えた3成分系ペロブスカイト型
複合酸化物を含有する圧電体磁器組成物は、優れた圧電
特性を有し、上記したインクジェット式プリンタヘッド
のアクチュエータのほか、マイクロポンプ、超音波モー
タ、超音波振動子、圧電トランス、周波数フィルタ、圧
電センサ、圧電スピーカ、圧電リレー、マイクロマシ
ン、マイクロミラーデバイスなどの構成材料として、多
方面で利用されているが、上記したPZTを含有するペ
ロブスカイト型複合酸化物を主成分とする圧電体磁器組
成物に微量成分を添加することによりさらに物性値の向
上を図るための多くの試みが行われている。例えば、特
許第2841911号公報には、PZT材料にビスマス
ナトリウムタイタネートを添加することにより、圧電特
性を損なうことなくPZT系磁器組成物の機械的強度を
向上させる発明が開示されている。特公平5−2583
1号公報には、PZT系材料にMnOを添加すること
により、機械的品質特性、圧電定数および温度特性のす
べてが一定水準以上であるPZT系磁器組成物を得る技
術が開示されている。特開平5−116947号公報に
は、PZT系材料にMnO、NiO、およびLa
を添加することにより、電気機械結合係数Kが大きく
比誘電率εの温度変化率も小さく結晶粒径も小さく均
一であるPZT系磁器組成物を得る技術が開示されてい
る。PZT系材料にパラジウム金属粉末を添加して、誘
電率や圧電歪定数が大きく機械的強度が大きいPZT系
磁器組成物を得る技術が開示されている。また、特開平
8−319159号公報には、PZT系材料にSbおよ
びMnを固溶させて、高い圧電歪定数および低い誘電損
失を併せ持つPZT系磁器組成物、また高い圧電歪定数
および大きな機械的品質係数を併せ持つPZT系磁器組
成物を得る技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば、上
述したインクジェット式プリンタヘッドの圧電体素子
を、上記したPZTを含有するペロブスカイト型複合酸
化物を主成分とする圧電体磁器組成物またはその前駆体
組成物を含むペーストや塗布液などを用いて下部電極上
に成膜した後に焼成して圧電体膜を形成する、といった
方法により作成する場合には、圧電体膜材料を焼成する
過程で、下部電極や基板(振動板)も同時に高温で加熱
されることになる。しかしながら、上記したPZTを含
有するペロブスカイト型複合酸化物の焼成温度は非常に
高く、例えばPZT−PMNでは1,150℃程度の焼
成温度が必要である。Ptなどで形成された下部電極
や、ジルコニア、アルミナなどのセラミックで形成され
た基板は、耐熱性に優れた材料として選択されたもので
あるが、それであっても焼成過程でダメージを受け、特
性の劣化が避けられなかった。したがって、焼成過程で
の電極や基板のダメージを低減させるためには、また、
電極や基板などの材料選択の幅を広げるためには、焼成
温度を下げる必要がある。このことは、インクジェット
式プリンタヘッドに限らず、あらゆる圧電体素子に対し
共通して求められていることである。
【0007】上記したように、PZTを含有するペロブ
スカイト型複合酸化物に微量成分を添加することにより
圧電体磁器組成物の物性値の向上を図る技術が数多く提
案されているが、比較的低温での焼結が可能であるPZ
Tを含有する圧電体磁器組成物についての提案は、ほと
んどなされていない。これは、従来の圧電体素子の作成
が、圧電体磁器組成物を作製した後、それを切出し加工
し、その加工物に電極付けする、といった工程で行われ
ていたため、低温で焼成する必要姓がそれほど高くなか
ったことにもよる。唯一、ジャーナル・オブ・ジ・ユー
ロピアン・セラミック・ソサイアティ、19、999−
1002(1999)に、Pb−Ge系組成物を用いて
PZT微粒子の焼成温度を低下させる方法についての報
告がある。この方法は、750℃〜800℃で焼成を行
い、通常のPZT系磁器組成物と同程度の圧電特性を提
供するものであるが、この方法で用いられるPb−Ge
系組成物を被覆したPZT微粒子は、特殊なものであ
り、その製造に複雑な工程を必要とし、一般的な用途に
は適さないものであった。また、この特殊な原料微粒子
を安定して製造することは、非常に困難である。さら
に、この方法においては、950℃以上の温度での焼成
を行うと、その圧電特性の低下を招くという欠点を有し
ている。なお、SiOやBなどのガラス成分を
上記したPZTを含有するペロブスカイト型複合酸化物
に添加すると、焼結温度の低温化が可能であることは分
かっているが、この場合には、圧電特性が大幅に低下す
ることになるため、圧電体としての利用を考えたときに
は好ましくない。
【0008】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、本発明の目的は、通常のPZTある
いはPZT−PMNと同等以上の優れた圧電特性を有す
る新規な圧電体磁器組成物を提供することにある。併せ
て、この優れた圧電特性の低下を招くことなく、また、
特殊な原料を用いたり、複雑な製造工程を要することな
く、その焼成を低温で行うことが可能である圧電体磁器
組成物を提供すること、および、そのような圧電体磁器
組成物を好適に製造することができる方法を提供するこ
と、前記の圧電体磁器組成物によって圧電体膜が形成さ
れた圧電体素子を提供すること、基板上に形成された下
部電極上に圧電体膜を形成する方法で圧電体素子を好適
に製造することができる方法を提供すること、ならび
に、前記の圧電体素子がアクチュエータに用いられたイ
ンクジェット式プリンタヘッド、および、前記の圧電体
素子が駆動部に用いられた超音波モータを提供すること
を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに検討を行った結果、従来のPZTあるいはPZT−
PMN磁器組成物と同等以上の圧電特性を有し、これま
でに開示されたことのない全く新規な圧電体磁器組成物
を見出すに至り、本発明を完成させた。また、併せて、
得られた磁器組成物が、その優れた圧電特性の低下を招
くことなしに通常のPZTあるいはPZT−PMN磁器
組成物と比べて数百度低い温度での焼成が可能であるこ
とも見出した。請求項1に係る発明は、化学式(1−
y)Pb(Zr1−xTi)O−yPb(Mg
1/3Nb2/3)O(0.2≦x≦1、0.05≦
y≦0.6)で表される複合酸化物(チタン酸ジルコン
酸鉛−マグネシウム・ニオブ酸鉛;PZT−PMN)を
主成分とする圧電体磁器組成物(PZT−PMN系磁器
組成物)において、Vを0.01重量%〜10重
量%およびBiを0.01重量%〜10重量%含
むことを特徴とする。また、請求項2に係る発明は、請
求項1記載のPZT−PMN系磁器組成物において、V
の含有量を0.01重量%〜5重量%としBi
の含有量を0.01重量%〜5重量%としたことを
特徴とする。
【0010】本発明のPZT−PMN系磁器組成物は、
およびBiを同時に含有することによ
り、PZT−PMN系磁器組成物の優れた圧電特性を失
うことなく、製造に際して、低温での焼成を可能とする
ものである。本発明がその効果を発現する機構は明らか
でないが、焼成時に、鉛成分、VおよびBi
が反応して何らかの低融点物質が生成して低温での焼
結に寄与しているものと思われる。また、本発明のPZ
T−PMN系磁器組成物の優れた圧電特性は、磁器組成
物中の構成元素が特定の組成バランスにあることにより
生じるものと思われる。
【0011】ここで、VあるいはBiの含
有量が少なすぎると、低温焼成時に焼結が十分に進ま
ず、緻密なPZT−PMN系磁器組成物が得られない。
一方、VあるいはBiの含有量が多すぎる
と、PZT−PMN系磁器組成物の組成バランスが崩れ
て、その圧電特性が低下する。低い温度領域で焼成を行
っても、十分に緻密な構造と優れた圧電特性を同時に付
与することの可能な本発明のPZT−PMN系磁器組成
物は、VおよびBiを、好ましくはそれぞ
れ0.01重量%〜10重量%含有し、より好ましくは
0.01重量%〜5重量%含有する。
【0012】請求項3に係る発明は、請求項1または請
求項2記載のPZT−PMN系磁器組成物において、B
/Vの重量比を0.05〜2.5とした
ことを特徴とする。請求項4に係る発明は、請求項3記
載のPZT−PMN系磁器組成物において、Bi
/Vの重量比を0.5〜1.5としたことを特徴
とする。
【0013】請求項3に係る発明のPZT−PMN系磁
器組成物は、Bi/Vの重量比が0.05
〜2.5の範囲にあることで、より緻密なPZT−PM
N系磁器組成物となり、また圧電特性がより向上するこ
とになる。請求項4に係る発明のPZT−PMN系磁器
組成物は、さらに緻密な構造を有し、さらに優れた圧電
特性を保有する。
【0014】なお、特性を低下させない限り、このPZ
T−PMN系磁器組成物に他の金属成分が含まれていて
も差し支えない。
【0015】請求項5に係る発明は、請求項1ないし請
求項4のいずれかに記載のPZT−PMN系磁器組成物
を製造する方法において、原料として、化学式(1−
y)Pb(Zr1−xTi)O−yPb(Mg
1/3Nb2/3)O(0.2≦x≦1、0.05≦
y≦0.6)で表される組成の複合酸化物からなり平均
粒径が0.05μm〜0.5μmである粒子を用いるこ
とを特徴とする。
【0016】請求項6に係る発明は、請求項5記載の製
造方法において、前記粒子が、化学式(Zr1−xTi
(0.2≦x≦1)で表される組成の酸化物
とMgNbで表される組成の酸化物とPbOとを
出発原料として得られたペロブスカイト型構造を有する
複合酸化物からなることを特徴とする。
【0017】請求項5に係る発明の製造方法では、平均
粒径が0.5μm以下(なお、より好ましくは0.3μ
m以下)である粒子を原料として用いることにより、P
ZT−PMN系磁器組成物の焼成が容易になる。また特
に、原料粒子を用いてペーストを調製し成膜する場合に
は、パッキング密度が向上することになる。なお、平均
粒径が0.05μm未満といったように余り小さすぎる
粒子を原料とすることは、その原料の合成や取扱いが難
しくなるので、好ましくない。
【0018】請求項6に係る発明の製造方法では、上記
した複合酸化物からなる粒子を原料とすることにより、
その原料粒子を固相反応により比較的低温で合成するこ
とが可能であり、また、粒径の小さい原料粒子を得るこ
とが可能で、所望の粒径の原料粒子を得るための粉砕工
程も容易であり、その粉砕時におけるコンタミネーショ
ン(汚染)も低減させることが可能である。
【0019】請求項7に係る発明は、請求項5または請
求項6記載の製造方法において、V成分およびBi成分
を、それぞれアルコキシドもしくは金属塩またはそれら
の溶液として前記粒子に添加したスラリーまたはペース
トを調製する工程を経ることを特徴とする。
【0020】この発明の製造方法では、V成分およびB
i成分が、原料となる粒子とは別に添加されるので、液
相が良好に生成され、このため、V成分およびBi成分
を、それが効率良く有効に機能するようにPZT−PM
N系磁器組成物中に存在させることが可能になる。この
ように、液相を良好に生成させるためには、V成分およ
びBi成分をペロブスカイト結晶中に予め存在させない
ようにする方が好ましい。
【0021】請求項8に係る発明は、少なくとも圧電体
部材と複数の電極とで構成された圧電体素子において、
前記圧電体部材を、請求項1ないし請求項4のいずれか
に記載のPZT−PMN系磁器組成物で形成したことを
特徴とする。
【0022】この発明の圧電体素子は、上記したように
優れた圧電特性を保持しつつ低温での焼成が可能である
ようなPZT−PMN系磁器組成物によって圧電体が形
成されている。その優れた圧電特性は、様々な圧電体素
子において有益であるが、特に、圧電体部材を成膜ある
いは成形した後に他の構成部材と共に焼成することによ
り圧電体素子を製造する場合においては、焼成温度を低
温化することが可能であるため、より好適である。
【0023】請求項9に係る発明は、請求項8記載の圧
電体素子において、圧電体部材が圧電体膜であり、その
圧電体膜を挟むように上部電極および下部電極が配設さ
れたことを特徴とする。
【0024】この発明の圧電体素子では、下部電極上に
成膜した後に焼成して圧電体膜を形成する、といった方
法により圧電体素子を作成する場合に、焼成温度を低温
化することができるため、焼成過程で受ける下部電極や
基板(振動板)のダメージを低減させることが可能であ
り、また、電極や基板などの材料選択の幅を広げること
が可能になる。
【0025】請求項10に係る発明は、請求項9記載の
圧電体素子において、前記圧電体膜の厚みを1μm〜2
5μmとしたことを特徴とする。
【0026】圧電体膜の厚みが1μm未満である場合、
圧電体素子を変位させるのに十分な程度の力を得ること
ができない。また、膜厚が25μmを超える場合には、
圧電体素子の駆動に高電圧を必要とするため好ましくな
い。さらに、撓み変位させる場合には、膜厚が25μm
を超えると、圧電体膜自体の強度が上がるため、素子の
変位量が減少し好ましくない。
【0027】請求項11に係る発明は、請求項8記載の
圧電体素子において、圧電体部材が、分極処理された圧
電体薄板であり、その圧電体薄板の両面にそれぞれ所定
のパターンで電極が配設されたことを特徴とする。
【0028】この発明の圧電体素子では、超音波モータ
の駆動部に用いられる圧電体素子を製造する場合に、成
形後に焼成する過程での焼成温度を低温化することが可
能になる。
【0029】請求項12に係る発明は、基板の表面に下
部電極を形成する工程と、前記下部電極上に、請求項1
ないし請求項4のいずれかに記載の圧電体磁器組成物か
らなる圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜上に上
部電極を形成する工程と、を含む圧電体素子の製造方法
であって、化学式(1−y)Pb(Zr1−xTi
−yPb(Mg1/3Nb2/3)O(0.2≦
x≦1、0.05≦y≦0.6)で表される組成の複合
酸化物を含む組成物を使用して前記下部電極上に成膜し
た後、その組成膜を加熱処理して、前記圧電体膜を形成
することを特徴とする。
【0030】請求項13に係る発明は、請求項12記載
の製造方法において、前記複合酸化物からなる粒子、な
らびに、VおよびBiの各アルコキシドもしくは金属塩
またはそれらの溶液を用いて、前記組成物を調製するこ
とを特徴とする。
【0031】請求項14に係る発明は、請求項12また
は請求項13記載の製造方法において、前記組成物とし
て、さらに少なくとも感光性有機ポリマーを含む感光性
組成物を使用し、成膜後に、感光性組成膜に所定のパタ
ーンを焼き付け、現像して、所定のパターンを有する感
光性組成膜を形成した後、加熱処理を行うことを特徴と
する。
【0032】請求項15に係る発明は、請求項12ない
し請求項14のいずれかに記載の製造方法において、前
記組成膜の加熱処理を600℃〜950℃の温度で行う
ことを特徴とする。
【0033】請求項12ないし請求項15に係る各発明
の製造方法によると、請求項9に係る発明の圧電体素子
が従来と比較してより簡易な製造工程で得られる。そし
て、請求項10に係る発明の圧電体素子のように、厚み
が1μm〜25μmと薄い圧電体膜を有利に形成するこ
とができる。
【0034】請求項16に係る発明は、請求項1ないし
請求項4のいずれかに記載の圧電体磁器組成物からなる
圧電体薄板を形成する工程と、前記圧電体薄板の両面に
それぞれ所定のパターンの電極を形成する工程と、前記
圧電体薄板に分極処理を施す工程と、を含む圧電体素子
の製造方法であって、化学式(1−y)Pb(Zr
−xTi)O−yPb(Mg1/3Nb2/3)O
(0.2≦x≦1、0.05≦y≦0.6)で表され
る組成の複合酸化物を含む組成物を使用して薄板材を形
成した後、その薄板材を加熱処理して、前記圧電体薄板
を形成することを特徴とする。
【0035】請求項16に係る発明の製造方法による
と、請求項11に係る発明の圧電体素子が、従来と比較
してより簡易な製造工程で得られる。
【0036】請求項17に係る発明は、1個もしくは2
個以上のインクノズルを有し、そのインクノズルに連通
したインク室の容積をアクチュエータによって変化さ
せ、前記インクノズルからインクを噴射させるようにし
たインクジェット式プリンタヘッドにおいて、前記アク
チュエータに、請求項8ないし請求項10のいずれかに
記載の圧電体素子を用いたことを特徴とする。
【0037】この発明のインクジェット式プリンタヘッ
ドは、アクチュエータとして請求項8ないし請求項10
のいずれかに係る各発明の、上記特性を有する圧電体素
子を具備している。
【0038】請求項18に係る発明は、駆動部によって
進行性振動波を発生させるステータと、前記進行性振動
波によって移動させられる移動体とを備えた超音波モー
タにおいて、前記駆動部に、請求項8または請求項11
記載の圧電体素子を用いたことを特徴とする。
【0039】この発明の超音波モータは、ステータの駆
動部として請求項8または請求項11に係る各発明の、
上記特性を有する圧電体素子を具備している。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態
について説明する。
【0041】この発明に係るPZT−PMN系磁器組成
物は、Vを0.01重量%〜10重量%、好まし
くは0.01重量%〜5重量%、および、Bi
0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量
%〜5重量%含んで構成されている。PZT−PMN系
磁器組成物中のVとBiとの含有比Bi
/Vは、重量比で0.05〜2.5、好まし
くは0.5〜1.5である。
【0042】このPZT−PMN系磁器組成物は、V
およびBiが含まれていることにより、通常
のPZT磁器組成物と比べて同等以上の圧電特性を保有
している。また、それを製造する場合において焼成温度
を、例えば600℃〜950℃の領域まで低温化するこ
とができる。一方、このPZT−PMN系磁器組成物
は、VおよびBiの共存によって圧電特性
が低下する、といったことがない。そして、V
よびBiの含有量が、それぞれ0.01重量%〜
10重量%、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範
囲であるため、このPZT−PMN系磁器組成物は、緻
密な構造を有し優れた圧電特性を保持する。また、Bi
/Vの重量比は、0.05〜2.5、好ま
しくは0.5〜1.5であることにより、このPZT−
PMN系磁器組成物は、緻密な構造を有し優れた圧電特
性を保持する。
【0043】なお、特性の低下を招くことがない限り、
このPZT−PMN系磁器組成物に他の金属成分が含ま
れていても差し支えない。
【0044】上記したような組成のPZT−PMN系磁
器組成物は、例えば、上述したようなインクジェット式
プリンタヘッド(図1参照)の構成要素の1つである圧
電体素子を構成する圧電体膜の形成材料として使用され
る。上述したように、インクジェット式プリンタヘッド
には、図1に示したような構成のプリンタヘッドのほ
か、種々の方式および構成のプリンタヘッドがあり、こ
の発明に係るPZT−PMN系磁器組成物は、それら各
種方式および構成のプリンタヘッドに用いられる圧電体
素子について使用し得るものである。
【0045】例えば図1に示したような構成のインクジ
ェット式プリンタヘッドに用いられる圧電体素子は、上
述したように、下部電極と上部電極とで圧電体膜を挟ん
だ構造を有する。下部電極の材料は、特に限定されず、
圧電体素子において通常用いられているものであればよ
く、例えば白金(Pt)や金(Au)などが使用され
る。また、上部電極の材料も、特に限定されず、圧電体
素子において通常用いられているものであればよく、例
えばAu、Ptなどが使用される。これらの電極の厚み
も、特に限定されないが、例えば0.05μm〜15μ
m程度とされる。また、下部電極と圧電体膜との間およ
び/または圧電体膜と上部電極との間に、例えばチタ
ン、クロム、酸化チタンなどから形成される密着層を設
けるようにしてもよい。PZT−PMN系磁器組成物に
よって形成される圧電体膜の厚みは、例えば1μm〜2
5μm程度とされる。圧電体膜の厚みをこの程度とする
のは、圧電体膜の駆動力の大きさは圧電体膜のバルク量
によって左右され、圧電体膜が薄すぎると、駆動力不足
となって圧電体素子としての有効な振動が得られず、反
対に圧電体膜が厚すぎると、圧電体素子を変位させるの
に大きな電圧が必要になるためである。
【0046】また、上記組成のPZT−PMN系磁器組
成物は、超音波モータにおいてロータを周回移動させた
り摺動体を往復移動させたりする進行性振動波を発生さ
せるための駆動部に用いられる圧電体素子の形成材料と
して使用される。超音波モータには、各種の駆動方式お
よび構成のものがあり、この発明に係るPZT−PMN
系磁器組成物は、それら各種方式および構成の超音波モ
ータに用いられる圧電体素子について使用し得るもので
ある。
【0047】図2は、それら各種方式の超音波モータの
うちの1方式の超音波モータ(表面波モータ)の構成の
1例を示す概略縦断面図である。この超音波モータは、
圧電体素子11および弾性リング12からなるステータ
10と、このステータ10の、弾性リング12側に配設
されたスライダ13と、このスライダ13上に配設され
たロータ14とから構成されている。
【0048】圧電体素子11は、それを裏面側から見た
平面図を図3に示すように、環状に形成された圧電体薄
板15の表・裏両面にそれぞれ電極を形成して構成され
ており、圧電体薄板15がPZT−PMN系磁器組成物
で形成されている。圧電体薄板15の表面側(弾性リン
グ12との接合面側)の電極は、円周方向において(1
/2)λ(λ:振動波の波長)ごとにそれぞれ独立して
一列に並ぶように形成された複数の分割電極16となっ
ている。また、圧電体薄膜15の裏面側の電極は、円周
方向に(3/4)λおよび(1/4)λだけそれぞれ互
いに距離を設けて裏面全体を2つに分割するように、か
つ、表面側の分割電極16の形成領域に対応するように
形成された一対の一部分割電極17となっている。な
お、図示しないが、棒状超音波モータの圧電体素子で
は、圧電体薄膜の表面側に、その表面全体を円周方向に
2つに分割するように分割電極が形成され、裏面側に全
面電極が形成される。圧電体薄膜15には、各分割分極
16ごとにそれぞれ対応し、厚み方向における分極方向
が交互に変わるように(隣り合った分割電極16の極性
(+)、(−)が異なるように)、分極処理が施されて
いる。
【0049】PZT−PMN系磁器組成物で形成される
圧電体薄膜15の厚みは、厚み方向における分極が可能
であれば特に限定されないが、例えば0.5mm前後と
される。また、電極16、17の形成材料および方法も
特に限定されず、例えば、銀等の金属のペーストの塗布
・焼付け、ニッケル等の金属の蒸着やメッキなどにより
電極形成される。
【0050】このような構成の超音波モータは、互いに
90°だけ位相が異なる2種類の交流駆動電圧Vsi
nωtおよびVcosωtをそれぞれの一部分割電極
17に印加することにより、圧電体素子11が屈曲振動
して、弾性リング12に、円周方向に進行する振動波を
発生し、その進行性振動波により、スライダ13を介し
て弾性リング12に圧接されたロータ14が周回移動
し、ロータ14の回転運動を生じる。
【0051】さらに、上記組成のPZT−PMN系磁器
組成物は、上記したインクジェット式プリンタヘッドの
アクチュエータや超音波モータの駆動部のほかにも、マ
イクロポンプ、超音波振動子、圧電トランス、周波数フ
ィルタ、圧電センサ、圧電スピーカ、圧電リレー、マイ
クロマシン、マイクロミラーデバイスなどの構成材料と
して、広く使用し得るものである。
【0052】次に、上記したPZT−PMN系磁器組成
物の製造方法について説明する。PZT−PMN系磁器
組成物は、例えば、PZT−PMN粒子、V、Biなど
の微量成分の原料、および、有機バインダを溶剤中に添
加して、スラリーまたはペーストを調製し、それらを混
合し成形した後、得られた成形体を焼成することにより
製造される。PZT−PMN粒子は、原料粒子の固相反
応、金属アルコキシドや金属塩を出発原料とするゾル−
ゲル法、共沈法、水熱法、噴霧分解法などの公知の方法
により製造される。このベース材料となるPZT−PM
N粒子としては、易焼結性のものを使用することが望ま
しく、平均粒径が0.5μm以下、より好ましくは0.
3μm以下であるものが用いられる。また特に、PZT
−PMN粒子、V、Bi等の微量成分の原料および有機
バインダを溶剤中に添加し混合してペーストを調製し、
そのペーストを用いて成膜する場合には、パッキング密
度を向上させるためにも、粒径の小さい粒子を用いるこ
とが望ましい。但し、粒径が余り小さすぎると、原料合
成や取扱いが難しくなるので、一般的には、平均粒径が
0.05μm以上である粒子が用いられる。固相反応に
よってPZT−PMN粒子を製造する場合における原料
粒子としては、化学式(Zr1−xTi
(0.2≦<x≦1)で表される組成の酸化物の微粒
子と化学式MgNb で表される組成の酸化物の微
粒子とPbOとが使用される。このような固相反応によ
ってPZT−PMN粒子を製造する方法によると、低温
でペロブスカイト型構造を有するPZT−PMN粒子を
得ることができ、また、粒径の小さい粒子が得られ、所
望の粒径の粒子を得るための粉砕作業も簡易であり、粉
砕時における汚染物質の侵入も低減されることになる。
【0053】V、Bi等の微量成分の原料としては、そ
れぞれのアルコキシドもしくは金属塩またはそれらの溶
液が使用される。特にV成分およびBi成分について
は、PZT−PMN系磁器組成物中で効率よく有効に機
能するように存在させるために、PZT−PMN粒子と
は別原料として添加し、液相を良好に生成させるように
することが望ましい。有機バインダとしては、例えばヒ
ドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロ
ース、ポリビニルアルコール、ナイロン、(メタ)アク
リル酸の単独重合体や共重合体などが使用される。溶剤
としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコー
ルが使用される。成形体の焼成温度は、例えば600℃
〜950℃程度とされる。
【0054】次に、圧電体素子を製造する方法について
説明する。なお、以下の説明は、圧電体素子の製造方法
の1例をそれぞれ示したものであり、インクジェット式
プリンタヘッドのアクチュエータとして用いられる圧電
体素子や超音波モータの駆動部に用いられる圧電体素子
は、下記の製造方法以外でも、種々の方法によって製造
し得るものである。
【0055】本発明の圧電体素子は、図1に示されたよ
うなインクジェット式プリンタヘッドのアクチュエータ
として使用される場合、例えば、下部電極上に圧電体膜
を形成し、その圧電体膜上に上部電極を形成して製造さ
れる。下部電極は、例えば振動板などの基板上にスクリ
ーン印刷法、スパッタ法、蒸着法などの常法により形成
されることが好ましい。また、下部電極が振動板などの
基板の機能を兼ねてもよい。さらには、圧電体素子を形
成してから、その圧電体素子を振動板などの基板上に固
定してもよい。下部電極の材料は、特に限定されず、例
えば白金、金、パラジウムなどが使用される。また、振
動板の材料は、特に限定されないが、例えばセラミッ
ク、ガラス、金属などから選ばれる。具体的には、振動
板の材料として、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、
窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ケイ
素、ケイ素などが挙げられる。圧電体膜は、上記したよ
うにして調製されたPZT−PMN粒子またはPZT−
PMN系粒子(以下、「PZT−PMN粒子」で代表し
て説明する)を含む組成物を用いて、下部電極上に成膜
することにより形成される。組成物を調製する際の溶剤
は、組成物の塗布性などの作業性を良好にするために用
いられるものであり、各種溶剤の中から適宜選択して使
用すればよいが、例えばエチルセロソルブなどが溶剤と
して使用される。なお、PZT−PMN粒子は、組成物
中に高濃度に配合されても、分散性は良好である。
【0056】PZT−PMN粒子を含む組成物が得られ
ると、その組成物を、前記振動板上に形成された前記下
部電極上に塗布し、必要により塗布の都度乾燥させて溶
剤を除去し、所望の膜厚となるまで塗り重ねる。組成物
の塗布方法は、特に限定されず、慣用のコーティング方
法、例えばスクリーン印刷法、スピンコーティング法、
ディッピング法、キャスト法、ドクターブレード法など
が用いられる。塗布工程が終了すると、組成膜を焼成す
る。焼成は、適当な温度で行えばよく、本発明では60
0℃〜950℃といった低温での焼成が可能である。ま
た、焼成は、不活性ガス雰囲気、酸素含有雰囲気(空気
中等)、PbO雰囲気など、任意の雰囲気下で行えばよ
く、常圧下または減圧下で行うことができる。通常は、
空気中で、室温から600℃〜950℃程度まで昇温さ
せて、数分間〜24時間をかけて焼成を行う。また、焼
成の際に、段階的な昇温を行うようにしてもよい。この
ような焼成により、有機成分がほぼ消失し、さらに焼結
が進行して、緻密な構造の圧電体膜が得られる。下部電
極上に圧電体膜が形成されると、圧電体膜上に、常法に
より、例えばスクリーン印刷法、スパッタ法、蒸着法な
どにより上部電極を形成して、圧電体素子とされる。上
部電極の材料は、特に限定されず、例えば白金、金、パ
ラジウムなどが使用される。
【0057】また、超音波モータの駆動部に用いられる
圧電体素子は、圧電体薄膜を形成し、その圧電体薄膜の
両面にそれぞれ電極を形成し、圧電体薄膜を分極処理し
て製造される。圧電体薄膜は、上記したPZT−PMN
粒子を含む組成物を用いて成形し、得られた成形体を、
上記と同様の焼成条件で焼成した後、焼成体を環状薄板
に加工することにより作成される。圧電体薄膜が得られ
ると、常法により、例えば銀ペースト等の導電材料を塗
布・焼付けするなどして、圧電体薄膜の両面に、図3に
示したような所定のパターンでそれぞれ電極を形成す
る。また、公知の方法により、圧電体薄膜の両面の電極
間に直流電圧を印加して電界を付与し、圧電体薄膜に所
定のパターンで分極処理を施して、圧電体素子とされ
る。
【0058】次に、PZT−PMN粒子を含む組成物に
感光性を付与してパターニングされた圧電体膜を製造す
る方法について説明する。この製造方法においては、P
ZT−PMN粒子の表面の少なくとも一部に光反応性
基、例えばネガ作用型の光反応性基を導入し、その光反
応性基を有するPZT−PMN粒子、ならびに、Vおよ
びBiの各成分原料のほか、ネガ型感光性有機ポリマー
と、必要に応じて感光剤および/または光重合性モノマ
ーとを含む感光性組成物が用いられる。なお、PZT−
PMN粒子自体およびV、Bi等の微量成分については
上述したので、以下では、それらの説明を省略する。
【0059】まず、表面の少なくとも一部に光反応性基
を有するPZT−PMN粒子について説明する。PZT
−PMN粒子は上述したような方法によって製造される
が、このPZT−PMN粒子の表面には、水酸基などの
官能性基が存在するので、その官能性基と光反応性基を
有する化合物とを反応させることにより、PZT−PM
N粒子の表面に光反応性基を導入する。PZT−PMN
粒子が適切な感光性を有するためには、粒子の全面に均
一に光反応性基が導入されることが望ましい。導入され
る光反応性基の種類は、特に限定されないが、例えば
(メタ)アクリロイル基やビニル基から選ばれる。
【0060】PZT−PMN粒子と反応させるべき光反
応性基を有する化合物としては、例えば、光反応性基を
有するシランカップリング剤やチタンカップリング剤が
挙げられる。このようなシランカップリング剤として
は、例えばジビニルジメトキシシラン、ジビニルジ−β
−メトキシエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリ−β−メトキシエトキシシラン、γ−
(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシ
ラン等が挙げられる。これらのうち、γ−(メタ)アク
リロキシプロピルトリメトキシシランやγ−(メタ)ア
クリロキシプロピルトリエトキシシランなどが入手容易
である。また、チタンカップリング剤としては、例え
ば、味の素(株)から市販されているプレンアクトKR
−55(商品名)なとが使用される。
【0061】光反応性基を有するシランカップリング剤
またはチタンカップリング剤とPZT−PMN粒子との
反応は、通常、それらをメタノール等のアルコール中で
混合させ室温で撹拌することにより行われる。この反応
により、シランカップリング剤またはチタンカップリン
グ剤のアルコキシ基が加水分解し、PZT−PMN粒子
表面の水酸残基とSiまたはTiとの結合が形成され
る。
【0062】また、上記した以外に、PZT−PMN粒
子と反応させるべき光反応性基を有する化合物として
は、例えば、二重結合を有する化合物、例えば(メタ)
アクリル酸やそのエステル化合物が使用される。より具
体的には、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)
アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレートなどが使用される。このような
(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートとPZT−
PMN粒子との反応は、通常、それらをメタノール等の
アルコール中で混合させ室温で撹拌することにより行わ
れる。この反応により、PZT−PMN粒子表面の水酸
残基に(メタ)アクリロイル基が導入される。
【0063】PZT−PMN粒子に光反応性基を導入す
る反応においては、PZT−PMN粒子の種類や平均粒
径(単位重量当りの表面積)、光反応性基含有化合物の
種類などによっても異なるが、光反応性基含有化合物を
PZT−PMN粒子に対して、通常1重量%〜10重量
%、好ましくは2重量%〜7重量%程度の割合で混合す
る。光反応性基含有化合物の混合割合が1重量%未満で
あると、光反応性基の導入効果が少ない傾向にあり、一
方、光反応性基含有化合物を10重量%も用いれば、十
分な量の光反応性基が導入される。例えば、BET法に
よる平均粒径0.5μmのPZT−PMN粒子には、3
−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラ
ンカップリング剤、(メタ)アクリル酸、(メタ)アク
リレートなどの化合物を、2重量%〜7重量%程度の割
合で混合して反応させるとよい。
【0064】また、表面グラフト重合を用いる方法やC
VDによる方法によっても、PZT−PMN粒子の表面
に光反応性基を導入することができる。
【0065】このように表面に光反応性基を有するPZ
T−PMN粒子は、感光性組成物中に高濃度で分散可能
であり、粒子自らも感光性を有することから、粒子フィ
ラーを用いたことによる感度低下や解像度低下という問
題は無い。
【0066】次に、ネガ型感光性有機ポリマーについて
説明する。ネガ型感光性有機ポリマーでは、露光部が難
溶化または疎水化する。
【0067】感光性有機ポリマーは、有機ポリマー自体
が十分な感光性を有するものであってもよいし、また感
光剤との組合せによって十分な感光性を有する有機ポリ
マーであってもよい。通常は、後者の感光剤との組合せ
によって十分な感光性を有する有機ポリマーが用いられ
る。なお、本明細書において、「有機ポリマー」の語
は、有機ポリマーおよび有機オリゴマーの双方を含む意
味で用いる。
【0068】有機ポリマー自体が十分な感光性を有する
ものとしては、アジド基含有重合体、ポリケイ皮酸ビニ
ルエステルなどのシンナモイル基やシンナミリデン基な
どの光二量化型官能基を有する重合体などが挙げられ
る。
【0069】感光剤との組合せによって十分な感光性を
有する有機ポリマーとしては、極性基または非極性基を
有する種々のポリマーが使用され得る。好ましい感光性
有機ポリマーは、極性基、例えばヒドロキシル基、アル
コキシ基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、
カーボネート基、アミド基もしくはN−置換アミド基
(−NHC(O)−、>NC(O)−など)、ニトリル
基、グリシジル基またはハロゲン原子を含有している。
感光性有機ポリマーは、(メタ)アクリロイル基、アリ
ル基、ビニル基などの重合性基を有する重合性オリゴマ
ーまたはポリマーであってもよい。
【0070】ヒドロキシル基含有ポリマーおよびその誘
導体としては、例えばポリビニルアルコール系重合体、
ポリビニルアセタール、ヒドロキシエチルセルロース、
ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン−ビニルアル
コール共重合体、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メ
チロールメラミンおよびそれらの誘導体(例えばアセタ
ール化物やヘキサメトキシメチルメラミン)が挙げられ
る。カルボキシル基含有ポリマーおよびその誘導体とし
ては、例えば(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イ
タコン酸などの重合性不飽和カルボン酸を含む単独重合
体または共重合体およびこれらのエステル、カルボキシ
ル基含有セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロー
スまたはその塩)などが挙げられる。エステル基含有ポ
リマーとしては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステ
ル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステ
ルなどのモノマーを含む単独または共重合体(例えばポ
リ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メ
タ)アクリル系樹脂など)、飽和ポリエステル、不飽和
ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレー
ト樹脂、セルロースエステルなどが挙げられる。エーテ
ル基を有するポリマーには、例えばポリアルキレンオキ
シド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエ
ーテル、ケイ素樹脂などが含まれ、カーボネート基含有
ポリマーとしては、ビスフェノールA型ポリカーボネー
トなどが挙げられる。
【0071】また、アミド基または置換アミド基を有す
るポリマーとしては、ポリオキサゾリン、ポリアルキレ
ンイミンのN−アシル化物(前記ポリオキサゾリンに対
応するポリマー、例えばN−アセチルアミノ基、N−ポ
リプロピオニルアミノ基などのN−アシルアミノ基を有
するポリマー)、ポリビニルピロリドンおよびその誘導
体、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素、ナイロンまたは
ポリアミド系重合体、ビュレット結合を有するポリマ
ー、アロハネート結合を有するポリマー、ゼラチン等の
蛋白類などが挙げられる。
【0072】前記ポリオキサゾリンの単量体としては、
2−オキサゾリン、オキサゾリン環の2−位に置換基を
有する2−置換−2−オキサゾリン(例えばアルキル
基、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオ
ロエチル基などのハロアルキル基、フェニル基、4−メ
チルフェニル、4−クロロフェニルなどの置換基を有す
るフェニル基、または、アルコキシカルボニル基などの
置換基を有するオキサゾリン類)などを挙げることがで
きる。ポリオキサゾリンは、単独重合体であっても共重
合体であってもよく、ポリオキサゾリンは、1種または
2種以上を混合して使用することができる。さらに、ポ
リオキサゾリンは、他のポリマーにオキサゾリンがグラ
フト重合した共重合体であってもよい。
【0073】前記ポリウレタン系重合体には、例えばポ
リイソシアネート(例えばトリレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジシソシ
アネートなど)と、ポリオール(例えばエチレングリコ
ール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコー
ル、グリセリンなどの多価アルコール、ジエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール、ジプロピレグリコー
ル、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリ
オール、ポリエステルポリオールなど)との反応により
生成するポリウレタンが含まれる。また、前記ポリ尿素
には、ポリイソシアネートとポリアミン(例えばエチレ
ンジアミン、ジエチレントリアミンなど)との反応によ
り生成するポリマーなどが含まれる。
【0074】前記ナイロンまたはポリアミド系重合体に
は、ラクタム成分、ジカルボン酸成分やジアミン成分を
用いたポリアミド(ナイロン66、ナイロン6、ナイロ
ン610、ナイロン611、ナイロン612やこれらの
変性ナイロンなど)、ポリ(メタ)アクリルアミド系重
合体、ポリアミノ酸などが含まれる。
【0075】前記ビュレット結合を有するポリマーに
は、前記ポリイソシアネートとウレタン結合を有する化
合物との反応により生成するポリマー、アロハネート結
合を有するポリマーには、前記ポリイソシアネートと尿
素結合を有する化合物との反応により生成するポリマー
が含まれる。
【0076】ニトリル基を有するポリマーには、アクリ
ロニトリル系重合体が含まれ、グリシジル基を有するポ
リマーとしては、例えばエキポシ樹脂、グリシジル(メ
タ)アクリレートの単独重合体または共重合体などが挙
げられる。ハロゲン含有ポリマーには、例えばポリ塩化
ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリ
デン系ポリマー、塩素化ポリプロピレンなどが含まれ
る。
【0077】他の有機ポリマーとしては、例えばポリエ
チレン、ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリオレフ
ィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチ
レン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−
ブダジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン
系樹脂などを挙げることができる。これらは単独でまた
は2種以上を併用してもよい。
【0078】重合性基を有する重合性オリゴマーには、
ポリビニルフェノール誘導体、エポキシ(メタ)アクリ
レート(例えばエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との
反応などにより生成する樹脂)、ポリエステル(メタ)
アクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン
(メタ)アクリレート〔例えば、ジオール成分(ポリア
ルキレングリコールやポリエステルジオールなど)とジ
イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートな
ど)とヒドキロシル基含有重合性単量体(2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミ
ドなど)との反応生成物、ヒドキロシル基および重合性
不飽和基を有する化合物(ヒドロキシエチルフタリル
(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリ
ルエーテルなど)とジイソシアネート(キシリレンイソ
シアネート、2,4−トリレンジイソシアネートなど)
とのウレタン反応生成物など〕、重合性ポリビニルアル
コール系ポリマー(例えば、ポリビニルアルコールとN
−メチロールアクリルアミドとの反応生成物など)、ポ
リアミド系ポリマー〔例えば、多価カルボン酸またはそ
の酸無水物(ピロメリット酸二無水物など)およびヒド
ロキシル基含有重合性単量体(アリルアルコールなど)
の反応により生成するカルボキシル基含有エステルと、
必要によりカルボキシル基を酸ハライド基に変換するた
めのハロゲン化剤(塩化チオニルなど)と、ジアミン
(p,p’−ジアミノジフェニルエーテルなど)との反
応により生成するプレポリマー、カルボキシル基含有重
合体(ポリ(メタ)アクリル酸またはマレイン酸の共重
合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体など)とアミ
ノ基含有重合性単量体(アリルアミンなど)との反応生
成物など〕、シリコーン樹脂型ポリマーなどが例示され
る。
【0079】以上のような感光性有機ポリマーあるいは
オリゴマーは、1種または2種以上を用いることができ
るが、好ましくは、ポリビニルアルコール、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナ
イロン、(メタ)アクリル酸の単独重合体や共重合体な
どが使用される。
【0080】また、この感光性組成物において、感光性
有機ポリマーに、必要により光重合性モノマーまたはオ
リゴマーを併用するようにしてもよい。光重合性モノマ
ーまたはオリゴマーには、単官能性または多官能性の光
重合性化合物が含まれる。光重合性基としては、例えば
(メタ)アクリロイル基、アクリルアミド基、アリル
基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニル
アミノ基、グリジシル基、アセチレン性不飽和基などが
例示される。
【0081】単官能性光重合性化合物としては、例えば
(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ブ
チル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートな
どのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル
(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレー
ト、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、カル
ビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アク
リルアミド、N−ジアセトン(メタ)アクリルアミド、
N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、スチ
レン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、N−ビ
ニルピロリドンなどが挙げられる。
【0082】多官能性光重合性化合物としては、例えば
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレー
トなどが挙げられる。さらに、テトラメチロールメタン
テトラ(メタ)アクリレート、2,2,5,5−テトラ
ヒドロキシメチルシクロペンタノンの(メタ)アクリル
酸エステル、ジグリシジルフタレートの(メタ)アクリ
ル酸エステル、N,N,N’,N’−テトラキス(β−
ヒドロキシエチル)エチレンジアミンの(メタ)アクリ
ル酸エステル、トリグリセリンとメチルアクリレートと
のエステル交換反応生成物、ウレタン型(メタ)アクリ
レート、多価カルボン酸の不飽和エステル、不飽和酸ア
ミド、無機酸とのエステルおよび金属塩、アセチレン性
不飽和基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノ
マーなどを使用することもできる。
【0083】ウレタン型アクリレートとしては、例え
ば、ポリイソシアネート(2,4−トリレンジイソシア
ネートなど)とヒドロキシル基含有単量体(2−ヒドロ
キシエチルメタクリレートなど)との反応生成物、ポリ
イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートな
ど)の一部のイソシアネート基とヒドロキシル基含有単
量体(2−ヒドロキシエチルメタクリレートなど)とを
反応させた後、さらに残余のイソシアネート基をアルカ
ノールアミン(トリエタノールアミンなど)と反応させ
た反応生成物、ベンゾインにポリイソシアネート(2,
4−トリレンジイソシアネートなど)とヒドロキシル基
含有単量体(2−ヒドロキシエチルメタクリレートな
ど)とを反応させた反応生成物などが挙げられる。
【0084】多価カルボン酸の不飽和エステルとして
は、例えば、多価カルボン酸(フタル酸、トリメット
酸、ピロメリット酸など)をヒドロキシル基含有単量体
(アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ートなど)でエステル化した多官能性単量体、例えばジ
アリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリル
マレエート、ジアリルクロレンダート、ジアリルアジベ
ート、ジアリルジグリコレート、トリアリルシアヌレー
ト、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、2
−ヒドロキシエチルメタクリレートのフタル酸エステ
ル、アリルアルコールのトリメリット酸エステル、p−
ヒドロキシ安息香酸を(メタ)アクリロイルクロライド
でエステル化し、さらにエポキシ含有単量体(グリシジ
ルメタクリレート)を付加させた化合物などが挙げられ
る。
【0085】不飽和酸アミドとしては、例えば、N,
N’−メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンビ
スアクリルアミドなどのアルキレンビスアクリルアミド
のほか、ポリアミンと不飽和酸との縮合物、水酸基を有
する不飽和酸アミド(例えばN−メチロールアクリルア
ミド)と多価カルボン酸、多価エポキシなどとの反応生
成物などが例示される。さらに、N−メチロールアクリ
ルアミドの酸性化合物の存在下での反応生成物、1,
3,3−トリメチル−1−アクリロイルアミノメチル−
5−アクリロイルアミノシクロヘキサン、ヘキサヒドロ
−1,3,5−トリアクリル−5−トリアジン、N−ア
クリロイルヒドロキシエチルマレイミド、ε−カプロラ
クタムとテトラメチレンジアミンとの反応で得られたオ
リゴマーにアクリル酸クロライドを反応させたビスアク
リルアミド、N,N’−ビス(ε−アクリロイルヒドロ
キシエチル)アニリン、N−メチロールアクリルアミド
とジエチレングリコールジグリシジルエーテルとの反応
生成物なども含まれる。
【0086】無機酸とのエステルや金属塩としては、例
えば、アクリル酸亜鉛とアルコール溶性ポリアミド樹
脂、リン酸のビス(2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト)エステルなどが例示される。
【0087】アセチレン性不飽和基を有するモノマーと
しては、アントラキノンと1−メトキシブテン−3−イ
ンから合成される9−(ω−メトキシブテニル)アント
ラキノール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
とヘキシルイソシアネートとの反応で得られるウレタン
などが挙げられる。また、グリシジル基を有するモノマ
ーとしては、例えばビスフェノール−A−ジグリシジル
エーテルが挙げられる。
【0088】光重合性モノマーまたはオリゴマーの使用
量は、例えば、前記感光性有機ポリマー100重量部に
対して5重量部〜500重量部、好ましくは、10重量
部〜300重量部程度の範囲から選択される。
【0089】この感光性組成物において、感光性有機ポ
リマーの種類に応じて、さらに感光剤として、種々の光
増感剤や光重合開始剤などを用いることができる。感光
剤は、感光性有機ポリマーの種類に応じて、慣用の感光
剤や増感剤、例えばアジド化合物、ピリリウム塩、チア
ピリリウム塩、光二量化増感剤、光重合開始剤〔例えば
ケトン類(アセトフェノン、プロピオフェノン、アント
ラキノン、チオキサントン、ベンゾフェノンまたはそれ
らの誘導体)、ベンゾインエーテルまたはその誘導体
(例えばベンゾインメチルエーテル)、アシルホスフィ
ンオキシドなど〕などから選択される。
【0090】感光剤の使用量は、例えば、感光性有機ポ
リマー100重量部に対して0.1重量部〜20重量
部、好ましくは1重量部〜10重量部程度の範囲から選
択される。
【0091】この感光性組成物において、感光性有機ポ
リマー(A1)と、必要に応じて用いられる感光剤(A
2)および/または光重合性モノマー(A3)と、PZ
T−PMN粒子(B)との配合割合は、感光性組成物の
用途や要求される性能などからみて決定すればよいが、
焼成後のパターン形状や下部電極との密着性を良好にす
る観点から、固形分重量比で、0.5<〔B/(A1+
A2+A3+B)〕<0.99であることが好ましく、
0.8<〔B/(A1+A2+A3+B)〕<0.95
であることがより好ましい。この配合比が0.5以下に
なると、焼結性や下部電極との密着性が低下する傾向が
あり、一方、配合比が0.99以上になると、感光特性
が低下し解像度が悪くなる傾向がある。感光性組成物中
にPZT−PMN粒子をこのような高濃度で配合して
も、分散性は良好である。
【0092】この感光性組成物には、必要によりさら
に、重合促進剤、溶解促進剤、酸化防止剤、染料、顔料
などの公知の各種添加剤を適宜配合することもできる。
また、感光性組成物には、塗布性などの作業性を良好に
するために、通常、溶剤が含まれている。溶剤は、公知
の各種溶剤の中から適宜選択される。
【0093】感光性組成物は、慣用の方法、例えば、組
成物を構成する各成分を、通常は適当な溶剤(アルコー
ル類などの親水性溶剤など)と共に混合させることによ
り調製することができる。感光性有機ポリマーと、必要
に応じて用いられる感光剤および/または光重合性モノ
マーならびに/または各種添加剤と、PZT−PMN粒
子とを同時に混合させてもよく、また適当な順序で混合
させるようにしてもよい。
【0094】このようにして得られた感光性組成物を下
部電極上に塗布し、感光性組成膜を形成する。下部電極
は、振動板上にスクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法な
どの常法により形成されており、下部電極および振動板
の材料は、前述したように特に限定されない。振動板
は、予め適当な表面処理が施されていてもよく、例え
ば、シランカップリング剤などにより表面処理が施され
ていてもよい。
【0095】塗布方法は、特に限定されないが、慣用の
コーティング方法、例えばスピンコーティング法、ディ
ッピング法、キャスト法、スクリーン印刷法、ドクター
ブレード法などにより行われる。塗布処理後に、必要に
より、乾燥処理して溶剤を除去することにより、感光性
組成膜を形成するようにしてもよい。
【0096】形成された感光性組成膜に所定のマスクを
介して光線を照射または露光して、パターン露光を行
う。光線としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、UV
ランプ、エキシマレーザー、電子線、X線等の放射光な
どを利用するが、波長が100〜500nm程度である
光線、特には紫外線が有効である。露光時間は任意であ
るが、感光性組成物の感光特性や光線の種類にもより、
通常、0.1秒〜20分程度の範囲から選択するとよ
い。露光後、必要により、例えば80℃〜120℃程度
の温度で加熱処理するようにしてもよい。このような露
光により、露光部では光硬化が起こり、感光性組成膜が
難溶化(耐水化)される。
【0097】パターン露光の後、公知の方法で感光性組
成膜を現像することにより、高解像度ネガ型パターンが
形成される。現像には、感光性組成物の種類に応じて、
水、アルカリ水溶液、有機溶剤、あるいはこれらの混合
液等の種々の現像液を使用することができる。また、現
像法も特に制限されず、例えばパドル(メニスカス)
法、ディップ法、スプレー法などを採用すればよい。
【0098】現像により形成されたパターンを加熱・焼
成する。焼成は、PZT−PMN粒子の種類や配合量、
圧電体膜の用途などにもよるが、適当な温度で行えばよ
く、本発明では600℃〜950℃といった低温での焼
成が可能である。また、焼成は、不活性ガス雰囲気、酸
素含有雰囲気(空気中等)、PbO雰囲気など、任意の
雰囲気下で行えばよく、常圧または減圧下で行うことが
できる。通常は、空気中で、室温から600℃〜950
℃程度まで、2時間〜24時間かけて昇温させることに
より焼成するとよい。また、段階的な昇温を行ってもよ
い。このような焼成により、有機成分がほぼ消失して、
緻密な圧電体膜が得られる。
【0099】この圧電体膜上に、常法により、例えばス
クリーン印刷法、スパッタ法、蒸着法などにより上部電
極を形成して、圧電体素子とする。上部電極の材料は、
前述したように特に限定されない。
【0100】
【実施例】〈PZT−PMN粒子の合成〉MgO(宇部
興産製)とNb(多木化学製)とをそれぞれ所定
量ずつ秤取し、それらを10時間ボールミル混合した
後、乾燥させて、混合粉末を得た。得られた混合粉末を
1000℃の温度で2時間仮焼し、得られた仮焼粉末を
ボールミルで16時間粉砕することにより、MgNb
粉末を得た。得られたMgNb粉末と(Zr
1−xTi)O微粒子とPbO(高純度化学製)と
をそれぞれ所定量ずつ秤取し、それらを10時間ボール
ミル混合した後、乾燥させて、混合粉末を得た。得られ
た混合粉末を850℃の温度で5時間仮焼し、得られた
仮焼粉末をボールミル粉砕することにより、PZT−P
MN粒子(PZT−PMN−1〜PZT−PMN−1
1)を得た。
【0101】ここで、化学式(1−y)Pb(Zr
1−xTi)O−yPb(Mg1/ Nb2/3
で表される複合酸化物において、PZT−PMN−
1は、x=0.60、y=0.40の組成であり、平均
粒径が0.21μm、PZT−PMN−2は、x=0.
48、y=0.25の組成であり、平均粒径が0.20
μm、PZT−PMN−3は、x=0.48、y=0.
10の組成であり、平均粒径が0.22μm、PZT−
PMN−4は、x=0.48、y=0.05の組成であ
り、平均粒径が0.20μm、PZT−PMN−5は、
x=0.48、y=0.10の組成であり、平均粒径が
0.16μm、PZT−PMN−6は、x=1.00、
y=0.60の組成であり、平均粒径が0.23μm、
PZT−PMN−7は、x=0.80、y=0.50の
組成であり、平均粒径が0.21μm、PZT−PMN
−8は、x=0.48、y=0.10の組成であり、平
均粒径が0.78μm、PZT−PMN−9は、x=
0.48、y=0.10の組成であり、平均粒径が0.
60μm、PZT−PMN−10は、x=0.48、y
=0.10の組成であり、平均粒径が0.41μm、P
ZT−PMN−11は、x=0.48、y=0.05の
組成であり、平均粒径が0.10μmである。
【0102】〈PZT−PMN系磁器組成物の製造〉 〔実施例1〜17〕エタノールにPZT−PMN粒子、
それぞれ所定量のVO(OEt)(トリエトキシバナ
ジル)およびBi(OBu)(トリブトキシビスマ
ス)ならびに有機バインダー(ヒドロキシプロピルセル
ロース)を添加した後、それらを16時間ボールミル混
合した後、造粒した。続いて、直径15mmの金型を使
用して、造粒物を1次成形した後、1.4t/mm
のCIP(冷間等方プレス)処理を行い、厚み3mmの
成形体を作成した。得られた成形体を400℃の温度で
1時間脱バインダー処理した後、所定の温度で2時間焼
成した。
【0103】得られた焼成体を0.5mmの寸法に切り
出した後、表面に銀電極を焼き付けた。得られたサンプ
ルを3kV/mmの電圧、120℃の温度で15分間分
極処理した後、ネットワークアナライザーを用いて電気
機械結合係数(Kp)を室温で測定した。サンプルの作
成条件および評価結果を表1にまとめて示す。但し、V
量、Bi量(重量%)は、原料のVO(O
Et)、Bi(OBu)の量から換算して算出し
た。
【0104】
【表1】
【0105】〔比較例1〜3〕それぞれ、PZT−PM
N−3(比較例1)、PZT−PMN−5(比較例2)
およびPb(Zr0.52Ti0.48)O(平均粒
径0.20μm)(比較例3)の各粒子を用いて、上記
した実施例と同様の方法により、VおよびBiを含有し
ない成形体を作成し、得られた成形体を脱バインダー処
理した後、900℃の温度で2時間焼成した。しかしな
がら、得られた焼成体はいずれも、相対密度が85%以
下であり、十分に焼結が進まず、圧電体材料としては不
適当であった。
【0106】〔比較例4、5〕上記した実施例と同様の
方法により、PZT−PMN−2の粉末にVO(OE
t)(比較例4)またはBi(OBu)(比較例
5)の一方のみを(V 、Biに換算した量
で)1重量%加えて成形体を作成し、得られた成形体を
脱バインダー処理した後、900℃の温度で2時間焼成
した。しかしながら、得られた焼成体はいずれも、相対
密度が85%以下であり、十分に焼結が進まず、圧電体
材料としては不適当であった。
【0107】〔比較例6〕上記した実施例と同様の方法
により、PZT−PMN粉末に(Biに換算した
量で)15重量%のBi(OBu)および(V
に換算した量で)15重量%のVO(OEt)を加え
て成形体を作成した。得られたそれぞれの成形体を脱バ
インダー処理した後、900℃の温度で2時間焼成し、
上記実施例と同様にしてサンプルを作成した。
【0108】得られたサンプルについて、実施例と同様
の方法により電気機械結合係数(Kp)を測定した。こ
のときのサンプルの作成条件および評価結果を表1に示
す。比較例6の電気機械結合係数(Kp)は、42%で
あり、本発明の実施例に係るサンプルに比べて小さいも
のであった。
【0109】表1から分かるように、この発明の実施例
によると、950℃以下の焼成温度で、Kpが50%以
上である圧電体磁器組成物を作成することが可能であっ
た。特に、平均粒径が0.16μmであるPZT−PM
N(PZT−PMN−5)粉末を使用したものは、80
0℃〜850℃の焼成条件においても、優れたKpが得
られた。
【0110】また、Bi/V比率が0.5
〜1.5であるときに、合成条件および物性面で特にバ
ランスの良い材料となった。
【0111】今回は、粒径0.16μm〜0.23μm
のPZT−PMN粉末を用いた結果を例示したが、より
微細で焼結性に優れるPZT−PMN粉末を使用すれ
ば、より低温での圧電体の焼成が可能であることは言う
までもない。
【0112】〈感光性ペーストの調製〉 (1)有機成分の調製 ヒドロキシプロピルセルロース2g、ペンタエリスリト
ールトリアクリレート8g、光重合開始剤(チバガイキ
ー製、イルガキュア18000)0.5gおよびエチル
セルソルブ8gを混合し、混合溶液を均質で透明になる
まで撹拌した。
【0113】(2)PZT−PMN粒子への感光性の付
与 上記した各PZT−PMN粒子20gにヒドロキシエチ
ルメタクリレート0.6gおよびメタノール40gを加
え、混合溶液を室温で2時間撹拌した。その後、溶液を
40℃の温度で減圧乾燥させてメタノールを除去し、P
ZT−PMN粒子の表面に光反応性基を導入した。
【0114】(3)有機成分/PZT−PMN粒子混合
物(感光性ペースト)の調製 上記(1)で得られた有機成分の溶液1.5gに、上記
(2)で得られたPZT−PMN粒子9gおよび微量成
分(VO(OEt)、Bi(OBu))のそれぞれ
所定量を室温で混合し、感光性ペーストを調製した。
【0115】〈圧電体素子の作成〉 〔実施例18〜23〕図1に示したような構成のインク
ジェット式プリンタヘッド用の圧電体素子を作成するた
めに、振動板となる厚さ10μmのジルコニア基板上
に、下部電極として厚さ0.5μmのPt膜をスパッタ
法で形成し、その下部電極上に、上記した感光性ペース
トをスクリーン印刷法により塗布した。このとき、焼成
後の圧電体膜の厚さが5μmとなるようにペースト膜厚
を調整した。そして、ペースト膜を70℃の温度で30
分乾燥させた。このPZT−PMN粒子を含有した感光
性ペースト膜を、250Wの超高圧水銀灯を有するマス
クアライナー露光装置(ミカサ製、M−2L)を用いて
20秒間露光した。露光後のペースト膜を15秒間メタ
ノールでスプレー現像し、200μm×3mmのパター
ンを作成した。
【0116】得られたPZT−PMN粒子含有ペースト
膜を所定の焼成条件で加熱することにより、緻密な構造
の圧電体膜を得た。得られた圧電体膜上に、上部電極と
してメタルマスクを通しAuをスパッタ法により成膜
し、圧電体素子を作成した。
【0117】得られた圧電体素子の評価は、30Vの電
圧印加時における素子の振動幅を、Tencor段差計
を用いて測定することにより行った。圧電体素子作成に
使用したPZT−PMN粒子の種類、微量成分の種類お
よび量、焼成条件ならびに評価結果を表2にまとめて示
す。但し、V量、Bi量(重量%)は、原
料のVO(OEt)、Bi(OBu)の量から換算
して算出した。
【0118】
【表2】
【0119】〔比較例7、8〕PZT−PMN−3およ
びPZT−PMN−5の各微粒子を用いて、上記した実
施例と同様の方法により、VおよびBiを含有しない圧
電体膜を備えた圧電体素子の作成を試みた。しかしなが
ら、実施例と同様の950℃以下の温度での焼成では、
焼結が充分に進まずに、振動可能な圧電体素子を作成す
ることはできなかった。
【0120】表2から分かるように、この発明の実施例
によると、750℃、850℃といった低温での焼成に
おいても、十分大きな振動幅を有する圧電体素子を得る
ことが可能であった。
【0121】上記した実施例18と同じ条件で圧電体素
子をジルコニア基板(振動板)上に50個並列させて形
成したものを用いて、50個のノズルを有するインクジ
ェット式プリンタヘッドを作成した。そのプリンタヘッ
ドの概略構成を、図4に縦断面図で示す。図4におい
て、符号18は、ノズル19が形成されたノズル板を、
符号20は、ノズル19に連通するインク室21および
インク室21に連通するインク供給路22が形成された
流路板を、符号23は、ジルコニア基板を、符号24
は、下部電極25、圧電体膜26および上部電極27で
形成されてアクチュエータを構成する圧電体素子をそれ
ぞれ示す。ノズル板18の材料にはステンレス鋼を用
い、流路板20の材料にはシリコン基板を用いた。イン
ク室21には、インク供給路22を通してインクタンク
(図示せず)からインクの供給が行われるようになって
いる。このインクジェット式プリンタヘッドを用いてイ
ンクの吐出試験を行ったところ、30V、3kHzの駆
動条件において平均吐出速度8.5m/secのインク
吐出が確認された。これにより、本発明の圧電体素子が
インクジェット式プリンタヘッドとして有用であること
が分かった。
【0122】〈超音波モータ用圧電体素子の作成〉 〔実施例24〕上記した実施例6で得られた焼成体を、
外径80mm、内径60mm、厚み0.5mmのリング
板状に加工した後、図3に示したパターンで分極処理し
た。そして、素子の片面のみに、図3に示したようにA
電極およびB電極(E電極はアース電極)を形成した。
得られた圧電体素子のA電極にVsinωt、B電極
に位相が90°遅れたVcosωtの各交流電圧をそ
れぞれ印加した。この結果、素子に弾性波が発生するこ
とが確認された。これにより、本発明の圧電体素子が超
音波モータ用駆動部として有用であることが分かった。
【0123】
【発明の効果】請求項1に係る発明によると、低温での
焼成により得られかつ優れた圧電特性を保持するPZT
−PMN系磁器組成物を提供することができる。また、
請求項2に係る発明によると、より優れた圧電特性を有
するPZT−PMN系磁器組成物を提供することができ
る。
【0124】請求項3に係る発明のPZT−PMN系磁
器組成物は、より緻密な構造を有しより優れた圧電特性
を保持する。請求項4に係る発明のPZT−PMN系磁
器組成物は、さらに緻密な構造を有し、さらに優れた圧
電特性を保有する。
【0125】請求項5ないし請求項7に係る各発明の製
造方法によると、上記した特性を有するPZT−PMN
系磁器組成物を好適に製造することができる。そして、
請求項5に係る発明の製造方法によると、PZT−PM
N系磁器組成物の焼成が容易になり、また特に、ペース
トを調製し成膜する場合には、パッキング密度が向上す
る。
【0126】請求項6に係る発明の製造方法によると、
PZT−PMN粒子またはPZT−PMN系粒子を固相
反応により低温で合成することができ、また、粒径の小
さい粒子を合成することができ、所望の粒径のPZT−
PMN粒子またはPZT−PMN系粒子を得るための粉
砕工程も容易になり、その粉砕時における汚染も低減す
る。
【0127】請求項7に係る発明の製造方法によると、
V成分およびBi成分を、それが効率良く有効に機能す
るようにPZT−PMN系磁器組成物中に存在させるこ
とができる。
【0128】請求項8に係る発明の圧電体素子は、成膜
あるいは成形した後に焼成して圧電体部材を形成する場
合に、焼成温度を低温化することができ、圧電体部材が
優れた圧電特性を保持する。
【0129】請求項9に係る発明の圧電体素子は、下部
電極上に成膜した後に焼成して圧電体膜を形成する、と
いった方法により作成した場合でも、下部電極や基板
(振動板)の、焼成過程で受けるダメージが小さく、ま
た、電極や基板などの材料選択の幅が広がり、圧電体膜
が優れた圧電特性を保持する。
【0130】請求項10に係る発明の圧電体素子では、
確実に有効な振動が得られ、駆動電圧もそれほど大きく
する必要が無い。
【0131】請求項11に係る発明の圧電体素子は、超
音波モータの駆動部として用いられ、成形後に焼成して
圧電体薄板を形成する過程での焼成温度を低温化するこ
とができ、圧電体薄板が優れた圧電特性を保持する。
【0132】請求項12ないし請求項15に係る各発明
の製造方法によると、請求項9に係る発明の、上記した
特性を有する圧電体素子を、従来と比較してより簡易な
製造工程により製造することができ、請求項10に係る
発明の圧電体素子のように、厚みが1μm〜25μmと
薄い圧電体膜を形成することができる。
【0133】請求項16に係る発明の製造方法による
と、請求項11に係る発明の、上記した特性を有する圧
電体素子を、従来と比較してより簡易な製造工程により
製造することができる。
【0134】請求項17に係る発明のインクジェット式
プリンタヘッドは、アクチュエータとして、上記特性を
有する圧電体素子を具備していることにより、高性能化
が図られる。
【0135】請求項18に係る発明の超音波モータは、
超音波振動を発生する駆動部として、上記特性を有する
圧電体素子を具備していることにより、高性能化が図ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電体素子がアクチュエータに用いられたイン
クジェット式プリンタヘッドの構成の1例を示し、一部
を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【図2】圧電体素子が駆動部に用いられた超音波モータ
の1構成例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2に示した超音波モータの圧電体素子を裏面
側から見た平面図である。
【図4】この発明の実施例で作成したインクジェット式
プリンタヘッドの概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ヘッド基台 2、21 インク室 3、23 振動板 4 アクチュエータ 5、24 圧電体素子 6、25 下部電極 7、26 圧電体膜 8、27 上部電極 9 電源 10 ステータ 11 圧電体素子 12 弾性リング 13 スライダ 14 ロータ 15 圧電体薄板 16 分割電極 17 一部分割電極 18 ノズル板 19 ノズル 20 流路板 22 インク供給路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 41/187 H01L 41/18 101F 41/24 41/22 A 41/22 Z

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式(1−y)Pb(Zr1−xTi
    )O−yPb(Mg1/3Nb2/3)O(0.
    2≦x≦1、0.05≦y≦0.6)で表される複合酸
    化物を主成分とする圧電体磁器組成物において、 Vを0.01重量%〜10重量%およびBi
    を0.01重量%〜10重量%含むことを特徴とする
    圧電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 Vが0.01重量%〜5重量%お
    よびBiが0.01重量%〜5重量%含まれた請
    求項1記載の圧電体磁器組成物。
  3. 【請求項3】 Bi/Vの重量比が0.0
    5〜2.5である請求項1または請求項2記載の圧電体
    磁器組成物。
  4. 【請求項4】 Bi/Vの重量比が0.5
    〜1.5である請求項4記載の圧電体磁器組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記
    載の圧電体磁器組成物を製造する方法において、 原料として、化学式(1−y)Pb(Zr1−x
    )O−yPb(Mg 1/3Nb2/3)O
    (0.2≦x≦1、0.05≦y≦0.6)で表され
    る組成の複合酸化物からなり平均粒径が0.05μm〜
    0.5μmである粒子を用いることを特徴とする、圧電
    体磁器組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記粒子が、化学式(Zr1−x
    (0.2≦x≦1)で表される組成の酸化
    物とMgNbで表される組成の酸化物とPbOと
    を出発原料として得られたペロブスカイト型構造を有す
    る複合酸化物からなる請求項5記載の、圧電体磁器組成
    物の製造方法。
  7. 【請求項7】 V成分およびBi成分を、それぞれアル
    コキシドもしくは金属塩またはそれらの溶液として前記
    粒子に添加したスラリーまたはペーストを調製する工程
    を経る請求項5または請求項6記載の、圧電体磁器組成
    物の製造方法。
  8. 【請求項8】 少なくとも圧電体部材と複数の電極とで
    構成された圧電体素子において、 前記圧電体部材を、請求項1ないし請求項4のいずれか
    に記載の圧電体磁器組成物で形成したことを特徴とする
    圧電体素子。
  9. 【請求項9】 前記圧電体部材が圧電体膜であり、その
    圧電体膜を挟むように上部電極および下部電極が配設さ
    れた請求項8記載の圧電体素子。
  10. 【請求項10】 前記圧電体膜の厚みが1μm〜25μ
    mである請求項9記載の圧電体素子。
  11. 【請求項11】 前記圧電体部材が、分極処理された圧
    電体薄板であり、その圧電体薄板の両面にそれぞれ所定
    のパターンで電極が配設された請求項8記載の圧電体素
    子。
  12. 【請求項12】 基板の表面に下部電極を形成する工程
    と、 前記下部電極上に、請求項1ないし請求項4のいずれか
    に記載の圧電体磁器組成物からなる圧電体膜を形成する
    工程と、 前記圧電体膜上に上部電極を形成する工程と、を含む圧
    電体素子の製造方法であって、 化学式(1−y)Pb(Zr1−xTi)O−yP
    b(Mg1/3Nb /3)O(0.2≦x≦1、
    0.05≦y≦0.6)で表される組成の複合酸化物を
    含む組成物を使用して前記下部電極上に成膜した後、そ
    の組成膜を加熱処理して、前記圧電体膜を形成すること
    を特徴とする、圧電体素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記複合酸化物からなる粒子、ならび
    に、VおよびBiの各アルコキシドもしくは金属塩また
    はそれらの溶液を用いて、前記組成物が調製される請求
    項12記載の、圧電体素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記組成物として、さらに少なくとも
    感光性有機ポリマーを含む感光性組成物が使用され、成
    膜後に、感光性組成膜に所定のパターンを焼き付け、現
    像して、所定のパターンを有する感光性組成膜を形成し
    た後、加熱処理が行われる請求項12または請求項13
    記載の、圧電体素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記組成膜の加熱処理が600℃〜9
    50℃の温度で行われる請求項12ないし請求項14の
    いずれかに記載の、圧電体素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項1ないし請求項4のいずれかに
    記載の圧電体磁器組成物からなる圧電体薄板を形成する
    工程と、 前記圧電体薄板の両面にそれぞれ所定のパターンで電極
    を形成する工程と、 前記圧電体薄板に分極処理を施す工程と、を含む圧電体
    素子の製造方法であって、 化学式(1−y)Pb(Zr1−xTi)O−yP
    b(Mg1/3Nb /3)O(0.2≦x≦1、
    0.05≦y≦0.6)で表される組成の複合酸化物を
    含む組成物を使用して薄板材を形成した後、その薄板材
    を加熱処理して、前記圧電体薄板を形成することを特徴
    とする、圧電体素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 1個もしくは2個以上のインクノズル
    を有し、そのインクノズルに連通したインク室の容積を
    アクチュエータによって変化させ、前記インクノズルか
    らインクを噴射させるようにしたインクジェット式プリ
    ンタヘッドにおいて、 前記アクチュエータに、請求項8ないし請求項10のい
    ずれかに記載の圧電体素子を用いたことを特徴とするイ
    ンクジェット式プリンタヘッド。
  18. 【請求項18】 駆動部によって進行性振動波を発生さ
    せるステータと、前記進行性振動波によって移動させら
    れる移動体とを備えた超音波モータにおいて、 前記駆動部に、請求項8または請求項11記載の圧電体
    素子を用いたことを特徴とする超音波モータ。
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