JP2001295090A - 電解銅箔の製造方法、電解銅箔、銅張り積層板およびプリント配線板 - Google Patents

電解銅箔の製造方法、電解銅箔、銅張り積層板およびプリント配線板

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JP2001295090A
JP2001295090A JP2000113655A JP2000113655A JP2001295090A JP 2001295090 A JP2001295090 A JP 2001295090A JP 2000113655 A JP2000113655 A JP 2000113655A JP 2000113655 A JP2000113655 A JP 2000113655A JP 2001295090 A JP2001295090 A JP 2001295090A
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沢 裕 平
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 円筒ドラムを陰極として用いて硫酸銅を溶解
している電解液から電解銅箔を析出させる際に、Pb微
粉の共析を有効に防止することができる方法を提供す
る。また、Pb微紛(鉛酸化物を含む)を実質的に含有し
ていない電解銅箔およびこのような電解銅箔を用いて所
望の配線パターンを形成したプリント配線板を提供す
る。 【解決手段】 炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの周
期律表第IIA族金属の塩を、鉛イオン1モルに対して1
0〜150モルの範囲内の量で添加して、Pbイオンを沈
殿物として除去した電解液を用いて電解銅箔を形成す
る。また、銅張り積層板は、この電解銅箔を絶縁基材の
少なくとも一方の面に積層してなり、さらに、プリント
配線板は、この銅張り積層板の電解銅箔によって所望の
配線パターンが形成されてなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、電解銅箔の製造方法、こ
の方法により得られた電解銅箔、この電解銅箔を用いた
銅張り積層板、および、プリント配線板に関する。さら
に詳しくは本発明は、電解銅箔製造するに際して、電解
液中に不純物として含まれるPbイオンを除去してPbおよ
び/またはPb化合物(主として鉛酸化物)の微紛が電解
析出するのを防止した電解銅箔の製造方法、この方法で
製造され得るPbおよび/またはPb化合物の微紛を実質的
に含有しない電解銅箔、この電解銅箔を用いて製造され
得る電解銅箔を基板の少なくとも一方の面に貼着した銅
張り積層板およびこの電解銅箔を用いて製造され得るプ
リント配線板に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】従来、電解銅箔は、円筒型ドラム
を陰極とし、この円筒型ドラムに不溶性の陽極を対峙さ
せて、硫酸銅などの銅成分を溶解させた電解液を用いて
電解を行い、円筒型ドラム表面に銅を電着させることに
より連続的に製造されている。
【0003】近年、電子機器は、小型化、高密度化され
ており、こうした電子機器に使用されるプリント配線板
の回路幅、回路間隔も日々細線化されており、こうした
細線化に伴って使用される電解銅箔としては、厚さが薄
く、表面粗度の低い電解銅箔が切望されている。
【0004】銅箔が薄くなると電解銅箔の表面粗さは小
さくなる傾向にはあるがさらに粗さを低くするためには
種々の方法がある。例えば電解液中の塩素イオン濃度を
調整することにより電解銅箔の表面粗度を制御すること
ができる。特に、電解液中における塩素イオン濃度をあ
る一定の範囲に調整することにより、ファインピッチの
配線パターンを形成可能な表面粗度の低い電解銅箔の製
造が可能になる。
【0005】しかしながら、こうした塩素イオン濃度の
低い電解液を使用して電解銅箔を製造する際に、この電
解液中に不純物としてPbイオンが極微量でも含有されて
いると、銅の電解析出の際にデンドライド状Pb微粉が銅
と共に電解共析することがある。こうして共析したPb微
粉の径は、通常は1〜50μm、多くの場合5〜30μ
mの範囲内にある。また、Pb微粉は析出した電解銅箔の
表面近傍に共析することが多い。また、Pb微粉以外に、
鉛酸化物などのPb化合物が微粉として共析することもあ
る。
【0006】これらのようなPb微粉などは、従来のよう
に回路の幅が広い場合には問題になることは少なかった
が、上述のように回路幅が狭くなるにつれて使用される
銅箔の厚さも薄くなるため、こうした共析Pb微粉によっ
て銅箔回路が不連続になり、回路が切断することがあ
る。また、Pb微粉は一般的なエッチングでは除去でき
ないため回路短絡の原因となるという問題を生ずる。
【0007】一般的には、こうして析出された電解銅箔
の表面には、得られる配線パターンあるいはプリント配
線板に必要な特性を付与するために種々の表面処理が施
される。例えば、限界電解密度以上で電解銅箔の表面に
粗化処理を施した後、亜鉛メッキ、スズメッキ、ニッケ
ルメッキなどの各種メッキ処理を行い、さらにこうして
形成されたメッキ層の表面にクロメート処理およびシラ
ンカップリング処理が行われる。
【0008】ところが、このようにして銅箔表面に各種
表面処理を施すと、銅箔中に共析したPb微粉を検出する
のが極めて困難になり、製造された電解銅箔から、Pb微
粉が共析した部分を特定してこの部分を実質的に使用し
ないように製造工程を組むことは工業的に行われる配線
板の製造工程ではほとんど不可能である。
【0009】ところで、従来、上記のような円筒型ドラ
ムを使用して電解銅箔を製造する際には、電極(陽極)
として鉛合金が使用されていた。このような鉛合金を電
極として使用した場合には、電解液に鉛が溶出すること
がある。このような鉛が溶出して、電解液中におけるPb
イオンの濃度が所定濃度以上になると、この鉛イオン
が、銅箔中に共析することも既に知られている(例え
ば、特開平6-146051号公報、特開平6-146052号公報など
参照)。
【0010】そして、これらの公報には、不純物として
鉛イオンを含有する電解液から鉛イオンを除去するに
は、炭酸ストロンチウムの添加が有効であることが記載
されている。即ち、例えば鉛含有電極を陽極に使用した
場合のように鉛イオン濃度が比較的高い場合には、電解
液中の鉛イオンは炭酸ストロンチウムを添加することに
よって共沈させることが可能であり、こうして生成した
鉛-ストロンチウム複合物は電解液を濾過することによ
り比較的効率よく除去することができると記載されてい
る。
【0011】しかしながら、こうした鉛-ストロンチウ
ム複合物の共沈を形成させるためには、電解液中におけ
る鉛イオン濃度がある程度高いことが必要とされてい
る。従って、鉛含有電極を使用していない工程におい
て、電解液を調製する際に極微量混入する鉛イオンを上
記のような炭酸ストロンチウムの添加によって共沈さ
せ、濾過により除去することは極めて困難となる。
【0012】このように本発明で使用されているような
極微量の鉛イオンを含有する電解液を使用して円筒型ド
ラムに銅を析出させる電解銅箔の製造方法においては、
濾過などの比較的簡単な操作で、析出した銅箔にPb微
粉が微量に含まれることを有効に防止する確実な技術は
確立されていない。
【0013】
【発明の目的】本発明は、円筒ドラムを陰極として用い
て硫酸銅を溶解している電解液から電解銅箔を析出させ
る際に、Pb微粉の共析を有効に防止することができる
方法を提供することを目的としている。
【0014】また、本発明は、円筒ドラムを陰極として
用いて硫酸銅が溶解されている電解液から電解析出され
たPbおよび/またはPb化合物の微紛を実質的に含有して
いない電解銅箔を提供することを目的としている。
【0015】さらに、本発明は、上記のようにPbおよび
/またはPb化合物(主として鉛酸化物)の微紛を実質的
に含有していない電解銅箔を絶縁基材の表面に積層した
銅張り積層板およびこうしたPbおよび/またはPb化合物
(主として鉛酸化物)の微紛を実質的に含有していない
電解銅箔を用いて所望の配線パターンを形成したプリン
ト配線板を提供することを目的としている。
【0016】
【発明の概要】本発明の電解銅箔の製造方法は、硫酸銅
が溶解されている電解液から銅箔を電解析出させる方法
であって、該電解液が微量の鉛イオンを含有していると
共に、該電解液中に含有される鉛イオン1モルに対し
て、ストロンチウムを除く周期律表第IIA族金属の塩を
10〜150モルの範囲内の量で添加して、該電解液中
に含有されるPbイオンを該周期律表第IIA族金属との不
溶性複合物として沈殿させて電解液から除去し、該Pbイ
オンが除去された電解液を用いて電解銅箔を形成するこ
とを特徴としている。
【0017】また、上記の方法で製造された本発明の電
解銅箔は、上記のようにして得られた電解銅箔であり、
この電解銅箔はPbおよび/またはPb化合物(主として鉛
酸化物)の微粉を実質的に含有していない。
【0018】即ち、本発明の電解銅箔は、硫酸銅が溶解
されている電解液から銅箔を電解析出させる方法により
得られ得る電解銅箔であって、該電解液が微量の鉛イオ
ンを含有していると共に、該電解液中に含有される鉛イ
オン1モルに対して、ストロンチウムを除く周期律表第
IIA族金属の塩を10〜150モルの範囲内の量で添加
して、該電解液中に含有されるPbイオンを周期律表第II
A族金属との不溶性複合物として沈殿させて電解液から
除去し、該Pbイオンが除去された電解液から電解析出さ
れたことを特徴としている。
【0019】さらに本発明の銅張り積層板は、上記のよ
うなPbおよび/またはPb化合物(主として鉛酸化物)微
粉を実質的に含有していない電解銅箔を、絶縁基材の少
なくとも一方の面に積層してなる。
【0020】即ち、本発明の銅張り積層板は、硫酸銅が
溶解されている電解液から銅箔を電解析出させる方法に
より得られ得る電解銅箔を絶縁基材に積層した銅張り積
層板であって、該電解液が微量の鉛イオンを含有してい
ると共に、該電解液中に含有される鉛イオン1モルに対
して、周期律表第IIA族金属の塩を10〜150モルの
範囲内の量で添加して、該電解液中に含有されるPbイオ
ンを該周期律表第IIA族金属との不溶性複合物として沈
殿させて電解液から除去し、該Pbイオンが除去された電
解液から電解析出された電解銅箔が、絶縁基材の少なく
とも一方の面に積層されていることを特徴としている。
【0021】またさらに、本発明のプリント配線板は、
上記のようなPbおよび/またはPb化合物(主として鉛酸
化物)微粉を実質的に含有していない電解銅箔を基板の
一方の面に積層され銅張り積層板の電解銅箔に所定の配
線パターンを形成することにより製造されたものであ
る。
【0022】即ち、本発明のプリント配線板は、硫酸銅
が溶解されている電解液から銅箔を電解析出させる方法
により得られ得る電解銅箔を絶縁基材に積層した銅張り
積層板の電解銅箔をエッチングすることにより形成され
るプリント配線板であって、該電解液が微量の鉛イオン
を含有していると共に、該電解液中に含有される鉛イオ
ン1モルに対して、周期律表第IIA族金属の塩を10〜
150モルの範囲内の量で添加して、該電解液中に含有
されるPbイオンを周期律表第IIA族金属との不溶性複合
物として沈殿させて電解液から除去し、該Pbイオンが除
去された電解液を用いて形成された電解銅箔をエッチン
グすることにより所望の配線パターンが形成されている
ことを特徴としている。
【0023】本発明の電解銅箔の製造方法で用いられる
電解液では、電解液中に少量のPbイオンが混入されてい
る場合に、この電解液に含まれるPbイオンの量に対して
ストロンチウムを除く周期律表第IIA族金属の塩を所定
量添加することにより、電解液中に含有される微量のPb
イオンが、添加した周期律表第IIA族金属と共に沈殿
し、この沈殿は濾過等の通常の分離操作によって除去す
ることが可能であるとの知見を得て本発明を完成したも
のである。
【0024】また、電解液中の塩素イオン濃度は0.1
〜5.0mg/リットルの範囲内に調整されていること
が、望ましい。このような範囲に塩素イオン濃度が調製
されていると、得られる電解銅箔の表面粗度を均質で細
かな面に仕上げることができる。
【0025】
【発明の具体的な説明】[電解銅箔の製造方法および電
解銅箔]本発明の電解銅箔の製造方法では、図1に示す
ように、硫酸銅が溶解された電解液が充填された電解槽
1に通常Tiを表面に有する陰極ドラム1aが回転自在に浸
漬されて配置された装置を使用する。本発明の電解銅箔
の製造方法で用いられる装置には、図1に示すように、
通常は、電解槽1、尾液槽2、溶解循環槽3、補給液貯
槽4、添加剤槽5、濾過装置6、巻取りロール7、溶解
塔8、溶解循環ポンプP1および補給液ポンプP2が備えら
れている。
【0026】電解槽1に供給される電解液は、銅原料を
溶解塔8に供給して、この溶解塔8で銅原料を、尾液槽
2から戻された尾液に溶解することにより調製される。
ここで使用される尾液は、電解槽1からオーバーフロー
した電解尾液を尾液槽2に回収し、この尾液を尾液槽2
から溶解循環槽3に移して使用する。本発明で使用され
る銅原料としては、銅線、銅くず原料、硫酸銅などを挙
げることができる、こうした銅原料中には微量ながら鉛
が含有されている。このよう電解銅箔の原料として供給
される銅は尾液によって溶解され、この溶解循環槽3に
おいて、濃度調整されて、電解液となる。
【0027】このような銅原料を用いて電解液である硫
酸銅溶液を形成すると、銅原料中に含有される微量の鉛
も硫酸鉛として電解液中に溶解される。即ち、溶解循環
槽3では、溶解塔8から供給された銅原料には極微量の
鉛が含有されているので、これらの銅原料を硫酸尾液で
溶解して硫酸銅からなる電解液を調製すると極微量含有
される鉛も溶解されて電解液中に混入され、従って、こ
の溶解循環槽3で調製される電解液は、銅イオンのほか
に、微量ながら鉛イオンを含有することになる。
【0028】陽極として鉛合金電極が使用されなくなっ
た昨今の電解銅箔製造装置においては、電解液中に陽極
から鉛イオンが溶出することはないが、従来から広く使
用されていた鉛電極を有する装置を用いても電解銅箔を
製造する際にはこうした陽極から溶出する鉛量はそれほ
ど多くはなく、また、製造される銅箔の厚さも厚かった
ことから、銅と共に陰極ドラムの表面に共析したPb微
粉が問題になることは極めて希であった。さらに、陽極
として鉛合金が使用されていた当時は、炭酸ストロンチ
ウムを添加してこの電解液中の鉛は除去されていたが、
こうした鉛含有陽極を用いた場合には、炭酸ストロンチ
ウムの添加によって除去される鉛量はある程度多かった
ので、炭酸ストロンチウムを添加した後、濾過、遠心分
離、デカンテーションなどの物理的方法により鉛イオン
を比較的効率よく除去することができた。しかしなが
ら、陽極として鉛合金が殆ど使用されなくなってきてい
る昨今の装置では、溶解している鉛イオンの量が従来の
電解液に比べて非常に微量になってきており、こうした
微量の鉛イオンを含有する電解液に炭酸ストロンチウム
を添加して鉛-ストロンチウム複合物を生成させても、
生成する複合物の粒径が大きくならず、従来と同様の方
法では、効率的に鉛イオンを除去することが著しく困難
になってきている。また電解液中に溶存する微量の鉛が
陽極表面に酸化物として析出して陽極の寿命を短くした
り、時にはこの鉛酸化物が剥離して銅箔中に異物として
混入することがあった。
【0029】電解液中に微量であっても鉛イオンが存在
すると、この鉛イオンは銅と共に陰極ドラム表面に共析
する。このようにして製造された薄膜の電解銅箔を用い
てピッチ幅が10〜50μm程度の非常に細いリードが
形成されるのであるが、こうした電解液中に微量の鉛イ
オンが溶存していると銅と共析したPb微粉の平均粒子
径は20〜50μmにも及ぶことがあり、このようにし
て製造された電解銅箔を用いてピッチ幅が30〜100
μm程度の非常に細かい回路を形成する際に、電解銅箔
で形成されているはずの配線パターンの一部がPb微粉
に置き換わってしまうことがある。こうした配線パター
ンでは、形成された配線パターンが所望の特性を示さな
いという問題を生ずる。
【0030】このような電解液中に含有される非常に微
量な鉛イオンを除去するために、最近では、電解液に微
小電流を流して鉛イオンを選択的に除去するなど、電解
液中に溶存する微量の鉛イオンを、電気化学的な方法で
除去するという方法が採用されている。
【0031】本発明者は、こうした電気化学的な微量鉛
イオンの除去方法とは全く異なり、微量の鉛イオンを含
有する電解液からの鉛イオンの除去には、ストロンチウ
ムを除く周期律表第IIA族金属の塩の添加が有効である
ことを見出した。
【0032】すなわち、本発明の方法における電解液中
に微量に含有される鉛イオンに対して添加する周期律表
第IIA族金属の塩の量を制御すると、周期律表第IIA族金
属と鉛とが反応して電解液中に複合物を形成するととも
に、形成された周期律表第IIA族金属と鉛との複合物
が、濾過、遠心分離などの物理的操作で除去が可能とな
ることを見出した。
【0033】従って、電解液が電解槽1に至る前にこの
鉛- IIA族金属複合物を除去してしまえば、電解槽1に
供給される電解液には、鉛イオンを殆ど含有していない
ので、陰極ドラムの表面にPb微粉が共析するのを有効
に防止することができる。
【0034】図1に基いて本発明の電解銅箔の製造方法
について、さらに具体的に説明する。
【0035】図1に示す製造装置では、電解液が供給さ
れる電解槽1で、円筒状の陰極ドラム(図1中、1a)
と、該陰極ドラムに沿ってほぼ一定の距離に保たれて配
置される電解用陽極(図1中、1b)との間に、硫酸銅を
含む電解液を流し、銅が電析するような量の電圧を印加
し、回転する陰極ドラム周囲に銅を電着させるようにな
っている。所定の厚さになった銅箔は、連続的に剥離さ
れ、巻き取りロール7によって巻き取られる。両電極間
に供給され、銅イオンを失った電解液(本発明では尾液
ということもある)は、オーバーフローして連続的に尾
液槽2に戻される。尾液は、尾液槽2から溶解循環槽3
に送液され、該溶解循環槽3内の液は銅原料が投入され
ている溶解塔8に送られ、銅原料と接触して銅を溶解
し、循環槽に戻る。このように溶解循環槽3と溶解塔8
の間を尾液が循環することによって銅イオンの補充が行
われる。銅溶解が終わった電解液は補給液溶解塔8に送
液される。補給液溶解塔8には添加剤槽5からの導管が
導入されている。この添加剤槽5は周期律表第IIA族金
属の塩および塩素イオン含有化合物、さらに必要により
後述する他の添加剤を、補給液貯蔵槽4に、同時にある
いは個別に添加が可能となっている。
【0036】周期律表第IIA族金属の塩が添加剤槽5よ
り添加されたのち、濾過機6によって生成した液中の固
形物(沈殿物)を除去し、電解補給液として、ふたたび
電解槽1に供給される。
【0037】本発明に係る製造方法で得られる電解銅箔
は、通常、陰極ドラム面側がシャイニー面(光沢面)と
なり、電着面側がマット面(粗面)となる。
【0038】本発明で使用される周期律表第IIA族金属
の例としては、Be、Mg、Ca、Ba、Raなどの金属を挙げる
ことができる。本発明では周期律表第IIA族金属は単独
であるいは組み合わせて使用することができる。このよ
うな周期律表第IIA族金属の中でも特に本発明ではCa、B
aが好ましく使用される。本発明において、これらの周
期律表第IIA族金属は、通常は炭酸塩として使用され
る。従って、本発明で使用される周期律表第IIA族金属
の塩の好適な例としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、
炭酸バリウム(BaCO3)を挙げることができる。これら
の周期律表第IIA族金属の炭酸塩は、単独であるいは組
み合わせて使用することができる。炭酸ベリリウムおよ
び炭酸マグネシウムも、Pbイオンと複合化合物を生成し
得るが、炭酸ベリリウムおよび炭酸マグネシウムは、炭
酸カルシウムおよび炭酸バリウムよりも電解液に対する
溶解性が高いことから、これらを用いた場合に、ベリリ
ウムイオン、マグネシウムイオンが電解液中に相当の濃
度で含有され、これらのイオンの存在は、銅の電析にと
って好ましいとはいえない。また、ラジウムは高価であ
り、工業的なPbイオン除去においては有用性が低い。
【0039】このような周期律表IIA族金属の塩は、電
解液中に含有される鉛イオン1モルに対して、周期律表
第IIA族金属の塩を10〜150モルの範囲内のモル量
になるように添加する。特に本発明では、電解液中に含
有される鉛イオン1モルに対して、周期律表第IIA族金
属の塩を20〜120モルの範囲内のモル量になるよう
に添加することが好ましい。電解液中に含有される鉛イ
オンに対してこのような量で周期律表第IIA族金属の塩
を使用することにより、電解液中に溶存しているPbイオ
ンは周期律表第IIA族金属と不溶性複合物を形成して沈
殿する。そして、この際に電解液中における塩素イオン
濃度を上記特定の範囲とすることにより、生成した不溶
性複合物が濾過など物理的分離操作が有効な程度にまで
成長する。
【0040】ここで添加される周期律表第IIA族金属の
塩として、炭酸カルシウム(CaCO3)を例にして具体的
に説明する。本発明の方法で周期律表第IIA族金属の塩
として使用される炭酸カルシウム(CaCO3)は、供給液
貯蔵槽4の電解液に溶存している鉛イオンの金属換算重
量に対して通常は3〜30g/Pb-g、好ましくは5〜25
g/Pb-gの割合で添加される。このような範囲内の量で炭
酸カルシウムを添加することにより、電解液中に含有さ
れているPbイオンを効率よく除去することができる。即
ち、炭酸カルシウムの量がPbイオンに対して3g/Pb-gに
満たないとPbイオンを有効に除去することができず、ま
た、30g/Pb-gを超えて炭酸カルシウムを添加しても、
Pbイオン除去効果はそれ以上向上しない。同様に炭酸バ
リウム(BaCO3)を使用する場合には通常は30〜15
0g/Pb-g、好ましくは35〜120g/Pb-gである。
【0041】この供給液貯蔵槽4に貯蔵され電解槽1に
供給される電解液中の銅濃度(銅イオン濃度)を、通常は
30〜100g/リットルの範囲内、好ましくは50〜
90g/リットルの範囲内に調整し、また、この電解液
の硫酸(H2SO4)濃度を、通常は50〜300g/リッ
トルの範囲内、好ましくは100〜250g/リットル
の範囲内に調整する。
【0042】このような量で硫酸銅を含有する電解液に
は、通常1〜50mg/リットル、多くの場合、5〜30mg
/リットルの鉛成分(主に鉛イオン)が不純物として溶
解されている。本発明の方法は、上記のような組成を有
する電解液中に不純物として微量に含有される鉛イオン
を不溶性化合物として分離するのに特に有効である。な
お、不純物として含有される鉛成分は、銅くず原料等の
銅原料に不純物として含有されていることが多いが、銅
原料として硫酸銅を使用する場合にも鉛成分が不純物と
して含有されていることがある。また、昨今の装置では
少なくなったが、貯槽の内張り、配管などに鉛で形成さ
れた部分が残存している場合こうした部分からも鉛成分
の溶出が考えられる。
【0043】このような微量な鉛イオンを電解液から除
去するために、溶存している微量の鉛イオンを周期律表
第IIA族金属と鉛との複合物として沈殿させ、例えば図
1において付番6で示すような濾過装置などの物理的分
離手段を使用して分離した後、電解槽1に供給する。な
お、濾過装置6などの物理的分離手段としては、上記の
ような濾過装置のほかに遠心分離装置を挙げることがで
きる。特に好適に使用される濾過装置6の例としてはメ
ンブランフィルター、カートリッジフィルターおよびプ
レコートフィルターなどを挙げることができる。
【0044】このようにして周期律表第IIA族金属の塩
を添加することにより、電解液中に溶存するPbイオンの
量を、通常は1.0mg/リットル以下、好ましくは0.5
mg/リットル以下に低減することが可能となる。
【0045】本発明の方法に従って周期律表第IIA族金
属の塩を添加して、電解液に溶存しているPbイオンを鉛
-IIA族金属複合物として沈殿させ、濾過装置6でこの鉛
-IIA族金属の塩複合物の沈殿を除去した電解液は、溶存
する鉛イオンの殆どが除去されているので、この電解液
を用いて銅を析出させることにより製造された電解銅箔
には、実質的にPb微紛は含有されていない。
【0046】ところで、昨今の電解銅箔では非常にファ
インピッチの配線パターンを生成する必要があり、こう
したファインピッチの配線パターンを形成するために
は、粗面が均質でかつ適度なプロファイルを有してお
り、引張強度が大きく、所定の伸び率を有していること
が必要になっている。
【0047】このような電解銅箔を製造するためには、
電解液中の塩素イオン濃度は0.1〜5.0mg/リット
ル、好ましくは0.5〜3.5mg/リットルの範囲内に
調整されていることが望ましい。このような範囲に塩素
イオン濃度が調整されていると、得られる電解銅箔の表
面をプロファイルの低い粗面に仕上げることができる
上、抗張力が高く、良好な伸び率を有する電解銅箔を製
造することができる。
【0048】また、このような濃度で塩素イオンが電解
液中に含まれていると、上記のような組成を有する電解
液中に不純物として微量に含有される鉛イオンを不溶性
化合物として分離するのに特に有効である。
【0049】このように塩素イオン濃度が0.1〜5.
0mg/リットルと低い条件下において、硫酸銅を含有す
る電解液に周期律表第IIA族金属の塩を添加することに
よって、電解液中に不純物として含有されるPbイオン
は、硫酸酸性の電解液中で周期律表第IIA族金属と優先
的に反応して、鉛- IIA族金属複合物を生成して沈殿
し、この沈殿物が上記のような量で塩素イオンを含有す
る硫酸酸性雰囲気下で濾過可能な粒子にまで成長するた
めであろうと考えられる。こうして塩素イオン濃度が調
整された電解液に周期律表第IIA族金属の塩を電解液のP
bイオンに対して上記特定量で添加すれば、電解液中に
溶存している微量のPbイオンは、鉛-IIA族金属複合物と
なって濾過可能な程度の沈殿物となり、この沈殿物を除
去することにより、非常に高い効率で電解液中のPbイオ
ンを除去できる。
【0050】この電解液を濾過装置6を介して電解槽1
に送るためには供給液貯蔵からポンプPを用いて電解液
を濾過し、濾過装置6によって鉛-IIA族金属複合物の沈
殿物が濾別された電解液をポンプPからの圧力で電解槽
1に導入する。電解液は、電解槽1に設けられた陰極ド
ラム1aと陽極電極1bとの間隙に電解槽1の下端部か
ら進入するように電解槽1に導入することが好ましい。
【0051】こうして電解槽1に導入された電解液を、
陰極であるドラム電極1aと、このドラム電極1aにほぼ
沿った形態にされた電解用陽極1bとの間隙に浸入さ
せ、この電解液の液温を30〜80℃の範囲内に調整
し、このドラム電極1aと電解用電極1bとの間で電流
密度8〜100A/dm2の条件で電解液から銅をドラム
電極1a表面に連続的に電解析出させることにより、実
質的にPb微粉を含有しない電解銅箔を製造することが
できる。
【0052】本発明の方法で使用される電解液は、上記
のように硫酸銅が溶解された溶液であり、必要に応じて
塩素イオン濃度が0.1〜5.0mg/リットルの範囲内
に制御されていると共に、不純物としてPbイオンを含
有するものであるが、さらにこの電解液には、必要に応
じて公知の添加剤が配合されていてもよい。このような
添加剤の例としては、ニカワ、ゼラチン、ブドウ糖、チ
オ尿素、グリシン、ポリエチレングリコール、トリエタ
ノールアミンおよびヒドラジンを挙げることができる。
これらの添加剤は、単独であるいは組み合わせて使用す
ることができる。例えば、ニカワ、ゼラチンなどを主添
加剤とし、他の添加剤(例;ブドウ糖、チオ尿素、グリ
シン、ポリエチレングリコール、トリエタノールアミ
ン、ヒドラジンなど)と組み合わせて使用することがで
きる。
【0053】なお、電解液に、炭酸カルシウム、炭酸ス
トロンチウム、炭酸バリウムのような周期律表第IIA族
金属の炭酸塩を添加すると、これらの金属の一部は硫酸
塩を形成することから、電解液中のフリー硫酸濃度が低
下することがあるが、こうした場合には、硫酸、硫酸銅
などを別途添加して、電解液組成を調整することができ
る。
【0054】上記のような成分を有し、Pbイオンが除
去された電解液に陰極であるドラム電極1aを浸漬した
状態で通電しながら回転させることにより電解銅箔を連
続的に製造することができる。
【0055】ドラム電極1a面に形成された電解銅箔
は、図1に示すように巻き取りロール7に巻き取られ
る。このようにして製造された電解銅箔の平均厚さは通
常は8〜150μmの範囲内にある。そして、この電解
銅箔は、銅の析出前に電解液中に不純物として含有され
るPbイオンが除去されているので、得られる電解銅箔
には、Pb微粉は実質的に共析していない。
【0056】このように本発明の方法で得られた電解銅
箔には、実質的にPb微粉が析出していないので、非常
に良好にプリント配線板を形成する際の銅箔として好適
に使用することができる。
【0057】即ち、上記のようにして製造された電解銅
箔を、絶縁性基材の少なくとも一方の面に積層すること
により銅張り積層板を製造することができる。また、こ
のようにして積層された銅張り積層板に、所望のパター
ンを、フォトレジストを露光現像することにより製造
し、このフォトレジストをマスキング剤として積層され
た電解銅箔をエッチングすることによりプリント配線板
を製造することができる。また、こうして形成されたプ
リント配線板を上記と同様にして配線パターンを形成し
ながら積層を繰り返すことにより多層積層プリント配線
板とすることもできる。
【0058】このように製造された電解銅箔を使用する
に際しては、必要に応じて電解銅箔のマット面(粗面、
銅が析出し終わった面)側の表面に粒状の銅電着物層を
形成して使用することが好ましい。この粒状の銅電着物
層を形成する処理を「コブ付け処理」あるいは「粗面化
処理」という。
【0059】このコブ付け処理は、マット面(粗面)側
がコブ付け用電極に対峙するように電解銅箔を配置さ
せ、銅イオンを含む電解液を用いてこのマット面に銅を
析出させる処理である。このコブ付け処理は、通常、ヤ
ケメッキ処理、カブセメッキ処理およびヒゲメッキ処理
からなる。
【0060】ヤケメッキ処理は、例えば、上述のように
して製造した電解銅箔のマット面(粗面)側をヤケメッ
キ用の電極と対峙させて配置し、以下の条件でマット面
に銅を析出させるメッキ処理である。
【0061】・電解液の銅濃度:5〜30g/リットル ・電解液の硫酸濃度:50〜150g/リットル ・電解液の温度:20〜30℃ ・電流密度:20〜40A/dm2 ・メッキ時間:5〜15秒 このようなメッキ条件で電解銅箔のマット面にメッキ処
理することにより、マット面(粗面)にヤケメッキと呼
ばれる樹枝状の銅電着物が形成される。
【0062】こうしてヤケメッキ処理した後、このマッ
ト面にカブセメッキ処理をする。このカブセメッキ処理
は、例えば、上記のヤケメッキ工程を経た電解銅箔のマ
ット面に、さらに以下の条件で銅を析出させるメッキ処
理である。
【0063】・電解液の銅濃度:40〜80g/リット
ル ・電解液の硫酸濃度:50〜150g/リットル ・電解液の温度:45〜55℃ ・電流密度:20〜40A/dm2 ・メッキ時間:5〜15秒 このようなメッキ条件でカブセメッキ処理されたマット
面の表面にさらにヒゲメッキ処理する。このヒゲメッキ
処理は、例えば、上記のようにしてカブセメッキ処理さ
れたマット面に、さらに以下の条件で銅を析出させるメ
ッキ処理である。
【0064】・電解液の銅濃度:5〜30g/リットル ・電解液の硫酸濃度:30〜60g/リットル ・電解液の温度:20〜30℃ ・電流密度:10〜40A/dm2 ・メッキ時間:5〜15秒 カブセメッキ処理されたマット面に上記のようなメッキ
条件でヒゲメッキ処理することにより、カブセメッキ層
(銅の被覆層)の上にヒゲ状に銅が析出する。
【0065】このようにして粗化処理(あるいはコブ付
け処理)された電解銅箔は、次いで防錆処理されること
が好ましい。
【0066】本発明において採用される防錆処理に特に
限定はないが、例えば、亜鉛メッキ処理、スズメッキ処
理等の防錆メッキ処理を挙げることができる。さらにこ
のようにして防錆メッキ処理において、例えば亜鉛メッ
キ処理では、硫酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛等が溶解性され
た電解液が使用される。
【0067】こうして防錆メッキ処理を行った後、この
防錆メッキ処理面をクロメート処理することが好まし
い。このクロメート処理では、通常、無水クロム酸を
0.2〜5g/リットルの濃度で含有し、pH値が9〜1
3の範囲に調整された電解液に防錆メッキ処理された電
解銅箔を浸漬し、電流密度0.1〜3A/dm2の条件で電
解処理を行う。この処理時間は、通常は1〜8秒程度で
ある。
【0068】こうしてクロメート処理した後、電解銅箔
の粗化処理面をシランカップリング剤で処理することが
好ましい。
【0069】一般に、このシランカップリング処理に
は、例えば、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコ
キシシラン、メタクロロキシアルコキシシランおよびメ
ルカプトアルコキシシラン等のシランカップリング剤が
使用される。これらのシランカップリング剤は単独であ
るいは組み合わせて使用することができる。このような
シランカップリング剤は、ケイ素原子換算で、通常は
0.15〜30mg/m2、好ましくは0.3〜25mg/m2
なるように電解銅箔表面に塗布される。
【0070】上記のように粗化処理、クロメート処理お
よびシランカップリング処理された電解銅箔は、電気回
路形成用の銅箔として特に適している。
【0071】[銅張り積層板およびプリント配線板]上記
の方法で得られた電解銅箔を絶縁基材の少なくとも一方
の面に、絶縁性の接着剤を用いて、あるいは、接着剤を
用いることなく、加熱圧着することにより銅張り積層板
を得ることができる。
【0072】ここで使用される絶縁基材としては、電子
機器用途に一般も使用されている樹脂基板を使用するが
できる。具体的には、紙-フェノール基材、紙-エポキシ
基材、ガラスエポキシ基材およびポリイミド基材を挙げ
ることができる。
【0073】こうして得られた銅張り積層板の銅箔表面
にフォトレジストなどを塗布してこのフォトレジストを
露光現像して所望のパターンを形成し、この形成された
パターンをマスキング材として電解銅箔をエッチングす
ることにより、絶縁基材表面にエッチングされた銅箔か
ら形成された配線パターンを形成したプリント配線板を
製造することができる。
【0074】このようにしてエッチングされた銅箔から
なる配線パターンが絶縁基材の表面に形成されたプリン
ト配線板に絶縁層を介してさらに電解銅箔を積層し、こ
の電解銅箔を上記と同様にしてエッチングして配線パタ
ーンを形成する。さらに必要により上記絶縁層を介して
電解銅箔を積層し、配線パターンを形成する操作を繰り
返すことにより多層プリント配線板を製造することがで
きる。
【0075】
【発明の効果】本発明の電解銅箔の製造方法では、不純
物として微量のPbイオンが含有されている硫酸銅電解液
を使用する。本発明によれば、このような電解液に特定
量の周期律表第IIA族金属の塩(例えば、炭酸カルシウ
ム、炭酸バリウム等)を添加することによって不純物と
して含有されているPbイオンを鉛-IIA族金属複合物とし
て濾別可能な粒子状に成長させ析出させることができ
る。従って、Pbイオンの除去を、従来から使用されてい
る製造設備を使用して、しかも電析条件などを変更する
ことなく行うことができ、このような本発明の方法によ
って、Pb微紛(鉛酸化物を含む)を実質的に含有しない
電解銅箔を製造することができる。とくに、電解液中に
含まれる塩素イオン濃度が0.1〜5.0mg/リットル
の範囲内に調整されていると、得られる電解銅箔の表面
粗度を均質な粗化面に仕上げることができる上、抗張力
が高く、良好な伸び率を有する電解銅箔を製造すること
ができる。
【0076】本発明では電解液中に含まれる微量の鉛が
除去されているので、鉛が陽極表面に酸化物として析出
して付着することがなく、このため、鉛酸化物が剥離し
て銅箔中に取り込まれるのも抑制され、さらに陽極の寿
命をより長くすることができる。なお、本発明のように
バリウム、カルシウムなどの塩の他に、ストロンチウム
塩を使用しても同様の効果がある。
【0077】また、このような濃度で塩素イオンが電解
液中に含まれていると、上記のような組成を有する電解
液中に不純物として微量に含有される鉛イオンを不溶性
化合物として分離するのに特に有効である。
【0078】そして、こうして得られた電解銅箔は、実
質的にPb微紛が電析していないので、電気的に安定で、
ファインピッチの回路を形成するための銅箔として好適
に使用することができる。即ち、本発明の方法で得られ
た電解銅箔を絶縁基材の少なくとも一方の面に積層する
ことにより、例えばファインピッチの回路が形成された
プリント配線板を製造可能な銅張り積層板を得ることが
できる。
【0079】このような電解銅箔をプリント配線板用銅
箔として用いて形成したプリント配線板では、例えばピ
ッチ100μm以下、線幅50μm以下といったファイン
ピッチの回路を容易に形成することができる。しかも、
本発明の電解銅箔は、Pb微粉を実質的に含有していない
ため、例えばPb微粉が最も細線部である回路部分の銅に
置き換わって特性を変えることもなく、また、このPb
微粉によって細線が破断したり、この部分で短絡が発生
することがなくなり、従来から使用されていた電解銅箔
よりもよりいっそう信頼性の高い配線パターンを有する
プリント配線板を製造することができる。
【0080】
【実施例】以下、本発明について実施例を示して具体的
に説明するが、本発明はこれらによって限定されるもの
ではない。
【0081】
【実施例1】電解銅箔の製造 銅イオンを80g/リットル、硫酸を250g/リット
ルの割合で含む電解液を調製した。この電解液の塩素イ
オン濃度は3.0mg/リットルに制御した。この電解液
を正確に分析したところ、銅くず原料等に含有されてい
たと思われるPbイオンが7.4mg/リットルの量で含有
されていることがわかった。
【0082】そこで、この電解液に、不純物として混在
しているPbイオン量に対応させて、炭酸バリウムを10
00mg/リットルの量(電解液中のPbイオンに対して、
炭酸バリウムが135g/Pb-gとなる量(即ち、溶存Pbイ
オン1モルに対してバリウム142モルとなる量))で添
加した。次いで、この電解液をゆっくり攪拌して鉛-バ
リウム複合物を形成させ、この複合物を沈殿させた。こ
の沈殿を濾過して分離することにより、電解液中のPb濃
度は0.2mg/リットル以下になった。
【0083】こうしてPbイオンが除去された電解液を、
図1に示す電解槽1に連続的に供給して、50A/dm2
の電流密度で陰極ドラム1a表面に銅を連続的に析出さ
せて、平均厚さ35μmの電解銅箔を連続的に製造し
た。
【0084】Pb微粉の検出個数 上記のようにして得られた電解銅箔から10×10cmの
大きさのサンプルをランダムに切り出し、過硫酸アンモ
ニウムを100g/リットルの濃度で含有する化学研磨
液に浸漬し、銅箔を溶解させた。銅箔が完全に溶解した
化学研磨液を目開き0.2μmのメンブランフィルター
で濾過し、濾紙に残存するPb微粉の個数を光学顕微鏡
で測定した。
【0085】上記の操作を5回行い、5回分のPb残渣
個数の合計を500cm2当たりのPb微粉個数とした。
【0086】また、得られた電解銅箔の物性(粗面粗
さ、引張強度、伸び率)を測定した。
【0087】結果を表1に示す。
【0088】
【実施例2】実施例1において、炭酸バリウムの代わり
に、炭酸カルシウムを75mg/リットル(電解液中のP
bイオンに対して10g/Pb-g、(即ち、溶存Pbイオン1
モルに対してカルシウム21モルとなる量))となるよ
うに添加した以外は同様にして電解銅箔を製造した。
【0089】得られた電解銅箔について、実施例1と同
様にしてPb微粉検出個数および銅箔の物性を測定した。
【0090】結果を表1に併せて記載する。
【0091】
【比較例1】実施例1において、炭酸バリウムを添加し
なかった以外は同様にして電解銅箔を製造した。
【0092】得られた電解銅箔について、実施例1と同
様にしてPb微粉検出個数および銅箔の物性を測定した。
【0093】結果を表1に併せて記載する。
【0094】
【表1】
【0095】上記表1から明らかなように、塩素イオン
濃度が所定の範囲内に調整され、不純物としてPbイオン
の含有する電解液に、炭酸カルシウムまたは炭酸バリウ
ムを所定量添加して濾過することにより、電解液中のPb
イオンを効率的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の電解銅箔の製造方法で使用
される製造装置の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】 1……電解槽 2……尾液槽 3……溶解循環槽 4……補給液貯槽 5……添加剤槽 6……濾過装置 7……巻取りロール 8……溶解塔
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年4月25日(2000.4.2
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正内容】
【0035】図1に示す製造装置では、電解液が供給さ
れる電解槽1で、円筒状の陰極ドラム(図1中、1a)
と、該陰極ドラムに沿ってほぼ一定の距離に保たれて配
置される電解用陽極(図1中、1b)との間に、硫酸銅を
含む電解液を流し、銅が電析するような量の電圧を印加
し、回転する陰極ドラム周囲に銅を電着させるようにな
っている。所定の厚さになった銅箔は、連続的に剥離さ
れ、巻き取りロール7によって巻き取られる。両電極間
に供給され、銅イオンを失った電解液(本発明では尾液
ということもある)は、オーバーフローして連続的に尾
液槽2に戻される。尾液は、尾液槽2から溶解循環槽3
に送液され、該溶解循環槽3内の液は銅原料が投入され
ている溶解塔8に送られ、銅原料と接触して銅を溶解
し、循環槽に戻る。このように溶解循環槽3と溶解塔8
の間を尾液が循環することによって銅イオンの補充が行
われる。銅溶解が終わった電解液は補給液貯蔵槽4に送
液される。補給液貯蔵槽4には添加剤槽5からの導管が
導入されている。この添加剤槽5は周期律表第IIA族金
属の塩および塩素イオン含有化合物、さらに必要により
後述する他の添加剤を、補給液貯蔵槽4に、同時にある
いは個別に添加が可能となっている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H05K 3/18 H05K 3/18 F Fターム(参考) 4E351 BB01 BB24 BB33 CC06 DD04 GG11 4K023 AA19 BA06 CA09 5E343 AA02 AA12 BB15 BB24 BB67 BB71 CC78 DD43 DD80 GG01 GG13

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫酸銅が溶解されている電解液から銅箔を
    電解析出させる方法であって、該電解液が微量の鉛イオ
    ンを含有している電解液に、該電解液中に含有される鉛
    イオン1モルに対して、ストロンチウムを除く周期律表
    第IIA族金属の塩を10〜150モルの範囲内の量で添
    加して、該電解液中に含有されるPbイオンを該周期律表
    第IIA族金属との不溶性複合物として沈殿させて電解液
    から除去し、該Pbイオンが除去された電解液を用いて電
    解銅箔を形成することを特徴とする電解銅箔の製造方
    法。
  2. 【請求項2】電解液中に、Clイオンが、0.1〜5.0
    mg/リットルの濃度で含まれていることを特徴とする請
    求項1に記載の電解銅箔の製造方法。
  3. 【請求項3】上記周期律表第IIA族金属の塩が、バリウ
    ムおよび/またはカルシウムの炭酸塩であることを特徴
    とする請求項1または2に記載の電解銅箔の製造方法。
  4. 【請求項4】上記周期律表第IIA族金属とPbイオンとの
    反応により得られる不溶性複合物を濾過して電解液から
    除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
    載の電解銅箔の製造方法。
  5. 【請求項5】上記電解液中に残存するPbイオンの量が
    1.0mg/リットル以下になるように周期律表第IIA族
    金属の塩を添加することを特徴とする請求項1に記載の
    電解銅箔の製造方法。
  6. 【請求項6】硫酸銅が溶解されている電解液から銅箔を
    電解析出させる方法により得られうる電解銅箔であっ
    て、該電解液が微量の鉛イオンを含有している電解液
    に、該電解液中に含有される鉛イオン1モルに対して、
    ストロンチウムを除く周期律表第IIA族金属の塩を10
    〜150モルの範囲内の量で添加して、該電解液中に含
    有されるPbイオンを周期律表第IIA族金属との不溶性複
    合物として沈殿させて電解液から除去し、該Pbイオンが
    除去された電解液から電解析出されたことを特徴とする
    電解銅箔。
  7. 【請求項7】電解液中に、Clイオンが、0.1〜5.0
    mg/リットルの濃度で含まれていることを特徴とする請
    求項6に記載の電解銅箔。
  8. 【請求項8】上記周期律表第IIA族金属の塩が、バリウ
    ムおよび/またはカルシウムの炭酸塩であることを特徴
    とする請求項6または7に記載の電解銅箔。
  9. 【請求項9】硫酸銅が溶解されている電解液から銅箔を
    電解析出させる方法により得られ得る電解銅箔を絶縁基
    材に積層した銅張り積層板であって、該電解液が微量の
    鉛イオンを含有していると共に、該電解液中に含有され
    る鉛イオン1モルに対して、ストロンチウムを除く周期
    律表第IIA族金属の塩を10〜150モルの範囲内の量
    で添加して、該電解液中に含有されるPbイオンを該周期
    律表第IIA族金属との不溶性複合物として沈殿させて電
    解液から除去し、該Pbイオンが除去された電解液から電
    解析出された電解銅箔が、絶縁基材の少なくとも一方の
    面に積層されていることを特徴とする銅張り積層板。
  10. 【請求項10】電解液中に、Clイオンが、0.1〜5.
    0mg/リットルの濃度で含まれていることを特徴とする
    請求項9に記載の銅張り積層板。
  11. 【請求項11】上記周期律表第IIA族金属の塩が、バリ
    ウムおよび/またはカルシウムの炭酸塩であることを特
    徴とする請求項9または10に記載の銅張り積層板。
  12. 【請求項12】硫酸銅が溶解されている電解液から銅箔
    を電解析出させる方法により得られ得る電解銅箔を絶縁
    基材に積層した銅張り積層板の電解銅箔をエッチングす
    ることにより形成されるプリント配線板であって、該電
    解液が微量の鉛イオンを含有していると共に、該電解液
    中に含有される鉛イオン1モルに対して、周期律表第II
    A族金属の塩を10〜150モルの範囲内の量で添加し
    て、該電解液中に含有されるPbイオンを周期律表第IIA
    族金属との不溶性複合物として沈殿させて電解液から除
    去し、該Pbイオンが除去された電解液を用いて形成され
    た電解銅箔をエッチングすることにより所望の配線パタ
    ーンが形成されていることを特徴とするプリント配線
    板。
  13. 【請求項13】電解液中に、Clイオンが、0.1〜5.
    0mg/リットルの濃度で含まれていることを特徴とする
    請求項12に記載のプリント配線板。
  14. 【請求項14】上記周期律表第IIA族金属の塩が、バリ
    ウムおよび/またはカルシウムの炭酸塩で類の金属の炭
    酸塩であることを特徴とする請求項12または13に記
    載のプリント配線板。
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