JP2001286293A - プラバスタチンの製造方法 - Google Patents

プラバスタチンの製造方法

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JP2001286293A JP2000104278A JP2000104278A JP2001286293A JP 2001286293 A JP2001286293 A JP 2001286293A JP 2000104278 A JP2000104278 A JP 2000104278A JP 2000104278 A JP2000104278 A JP 2000104278A JP 2001286293 A JP2001286293 A JP 2001286293A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗高脂血症剤としてプラバスタチン、その塩
またはそのラクトン閉環体の生物学的変換による新規な
製造方法の提供。 【解決手段】 出発原料であるメバスタチン、そのラク
トン開環体またはその塩を、プラバスタチン、その塩ま
たはそのラクトン閉環体に変換する能力を有するミクロ
テトラスポーラ(Microtetraspora)属
に属する菌株またはその培養菌体調製物および酸素の存
在下、出発原料をインキュベーション処理し、その処理
液から目的物であるプラバスタチン、その塩またはその
ラクトン閉環体を採取する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗高脂血症剤とし
て有用なプラバスタチン、その塩またはそのラクトン閉
環体の生物学的変換による製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラバスタチンの製造方法、特に生物学
的変換方法によるものとしては、イヌおよびウサギ肝臓
ホモジネートを用いて、メバスタチンから変換する方法
が、特開昭57−2240号に開示されている。微生物
を用いてメバスタチンから変換する方法として、アブシ
ディア(Absidia)属、カニンガメラ(cunn
inghamella)属、シンセファロスポラム(S
yncephalosporum)属およびストレプト
マイセス(Streptomyces)属を用いる製法
が、特開昭57−50894号および特開昭57−67
575号に開示されている。また、特開昭57−155
995号および特開昭58−10572号には、ムコー
ル(Mucor)、リゾープス(Rhisopus)、
チゴリンクス(Zygorynchus)、シルシネラ
(Cireinella)、アクチノムコール(Act
inomucor)、ゴングロネラ(Gongrone
lla)、フィコマイセス(Phycomyces)、
モルチエレラ(Mortierella)、ピタノポラ
ス(Pythanoporus)およびリゾクトニア
(Rhizoctonia)の各属に属する微生物を用
いる方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、メバスタチ
ンを出発原料とした、生物学的変換方法によるプラバス
タチンの新規な製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために広範な微生物群からメバスタチンの6β
位水素原子を水酸基に変換しうる微生物のスクリーニン
グを試みたところ、希少放線菌に分類されるミクロテト
ラスポーラ(Microtetraspora)属に属
する菌株が前記変換能を有することを見出した。
【0005】従って、本発明は、 式(I)、
【化3】 で示されるメバスタチン、そのラクトン開環体またはそ
の塩(以下、これらを総称してメバスタチン類というこ
とがある)の、式(II)、
【化4】 で示されるプラバスタチン、その塩またはそのラクトン
閉環体(以下、これらを総称してプラバスタチン類とい
うことがある)への生物学的変換方法による、式(I
I)で示されるプラバスタチン、その塩またはそのラク
トン閉環体の製造方法であって、(A)前記生物学的変
換方法を行いうるものであって、かつ、ミクロテトラス
ポーラ(Microtetraspora)属に属する
菌株またはその培養菌体の調製物の存在下で、式(I)
で示されるメバスタチン、そのラクトン開環体またはそ
の塩をインキュベーション処理する工程、(B)インキ
ュベーション処理液から式(II)で示されるプラバス
タチン、その塩またはそのラクトン閉環体の少なくとも
1種を採取する工程、を含んでなる方法を、提供するこ
とにより達成できる。
【0006】本発明の生物学的変換方法では、ミクロテ
トラスポーラ(Microtetraspora)属に
属する微生物であって、前記式(I)で示されるメバス
タチン類から前記式(II)で示されるプラバスタチン
類へ変換する能力を有する微生物、並びにそれらの培養
菌体調製物であれば、種および株の種類を問うことなく
使用できる。好ましい微生物として、ミクロテトラスポ
ーラ・レクチカテナ(Microtetraspora
recticatena)IFO14525株を挙げ
ることができる。本菌株は、IFO((財)発酵研究
所;INSTITUTE FOR FERMENTAT
ION,OSAKA)から容易に入手できる。
【0007】なお、本菌株の菌学的性状は次のとおりで
ある。 1.形態 基生菌糸より直鎖状(Rectiflexibile
s)の気中菌糸を伸長する。成熟した気中菌糸の先に4
個の円筒形の胞子からなる胞子鎖を形成する。胞子のう
は認められない。胞子の大きさは1.0×2.0μmく
らいで、胞子の表面は瘤状(knobby)又は粗面状
(rugose)を示し、鞭毛は認められない。
【0008】2.各種培地における生育状態 培養は全て28℃で行い、各種培地での生育結果を以下
に示す。 (1)イースト・麦芽寒天培地 生育は良好で、その表面に気中菌糸を着生し、白色の胞
子が見られる。培養裏面は薄い茶色である。溶解性色素
は産生しない。 (2)オートミール寒天培地 生育は中程度で、その表面に気中菌糸を僅かに着生し、
白色の胞子が見られる。培養裏面は薄い茶色である。茶
色の溶解性色素を僅かに産生する。 (3)スターチ・無機塩寒天培地 生育は中程度で表面に気中菌糸を着生しない。培養裏面
は無色である。溶解性色素は産生しない。 (4)グリセリン・アスパラギン寒天培地 生育は中程度で、その表面に気中菌糸を僅かに着生し、
白色の胞子が見られる。培養裏面は無色である。溶解性
色素は産生しない。 (5)チロシン寒天培地 生育は中程度で、その表面に気中菌糸を僅かに着生し、
白色の胞子が見られる。培養裏面は無色である。培地中
にメラニン色素を産生しない。
【0009】3.各種炭素源の同化性 プリードハム・ゴトリーブ寒天培地に各種の炭素源を加
え生育を見た。 (1)L−アラビノース + (2)D−キシロース + (3)D−グルコース + (4)D−フルクトース − (5)シュークロース ± (6)イノシトール ± (7)L−ラムノース + (8)D−マンニトール − (9)D−ラフィノース − +は同化する、±は多少同化する、−は殆ど同化しな
い。
【0010】4.化学分類学的性質 本菌の細胞壁成分であるジアミノピメリン酸(diam
ino pimericacid)の異性体型はmes
o型であった。全菌体の糖組成としてガラクトース、グ
ルコース、マンノース、リボース、及びマジュロースら
しき糖が検出された。
【0011】本発明によれば、これらの菌株またはその
培養菌体調製物、さらに酸素の存在下で、出発原料(基
質)であるメバスタチン類がインキュベーション処理さ
れる。この処理は前記菌株を好気的条件下で培養する際
に、その培養液中に基質を添加して行うか、あるいは場
合により前記菌株の培養菌体を、例えばそのまま、もし
くはホモジナイズした調製物の懸濁液中に基質を添加
し、酸素を含む気体、例えば空気を通気しながらインキ
ュベーションして行うこともできる。
【0012】培養液への基質の添加は、培養前または培
養開始後一定期間経過したときのいずれの時期に行って
もよい。上記菌体は上記いずれかの菌株を栄養源含有培
地に接種し、好気的に培養することにより製造できる。
かかる培養菌体の調製物を用意するための菌株の培養ま
たは基質が添加された状態で行われる菌株の培養は、原
則的には一般微生物の培養方法に準じて行うことができ
るが、通常は液体培養による振とう培養、通気攪拌培養
などの好気的条件下で実施するのが好ましい。
【0013】培養に用いられる培地としては、ミクロテ
トラスポーラ(Microtetraspora)属に
属する微生物が利用できる栄養源を含有する培地であれ
ばよく、各種の合成培地、半合成培地、天然培地などい
ずれも利用可能である。培地組成としては炭素源として
のグルコース、マルトース、キシロース、フルクトー
ス、シュークロース等を単独または組合せて用いること
ができる。これらの炭素源は、培養途中で随時添加して
もよく、例えばグルコースを3〜7g/lの濃度範囲と
なるようにフィードするとメバスタチン類からプラバス
タチン類への変換速度を相対的に増大させることができ
る。
【0014】窒素源としては、ペプトン、肉エキス、大
豆粉、カゼイン、アミノ酸、麦芽エキス、酵母エキス、
尿素等の有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウ
ム等の無機窒素源を、単独または組合せて用いることが
できる。その他、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリ
ウム、リン酸カリウム、塩化コバルト等の塩類、重金属
類塩、ビタミン類も必要に応じ添加使用することができ
る。なお、培養中発泡が著しい場合には、公知の各種消
泡剤を適宜培地中に添加することもできる。
【0015】培養条件は、該菌株が良好に生育し得る範
囲内で適宜選択することができる。通常、pH6〜9.
5、28〜30℃で2〜8日程度培養する。上述した各
種の培養条件は、使用微生物の種類や特性、外部条件等
に応じて適宜変更でき、最適条件を選択できる。
【0016】また、培養菌体調製物は、培養終了後、遠
心分離または濾過により分離した菌体またはホモジナイ
ズした菌体を適当な溶液に懸濁して調製する。菌体の懸
濁に使用できる溶液は、前記した培地であるか、あるい
はトリス−酢酸、トリス−塩酸、コハク酸ナトリウム、
クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウ
ムなどの緩衝液を単独または混合したものである。緩衝
液のpHは、好ましくは6.0〜9.0、さらに好まし
くは7.0〜8.5である。
【0017】基質となるメバスタチン類は、粉末のまま
か、あるいは水溶性有機溶媒、例えばエタノールなどに
溶解して培養液または菌体の懸濁液に添加することがで
き、その添加量は、例えば、培養液の場合、培養液1l
当り200〜800mgが好ましい。添加量を1000
mg/lより多くすると、変換速度が著しく遅くなり好
ましくない。基質添加後は、27〜31℃で3〜10日
間、好ましくは約6〜8日間、振とうあるいは通気攪拌
などの操作を行い、好気的条件下で反応を進行させるこ
とにより基質であるメバスタチン類を目的のプラバスタ
チン類に変換することができる。
【0018】こうして生成した目的のプラバスタチン類
を反応混合から単離するには、種々の既知精製手段を選
択、組合せて行うことができる。例えば、疎水性吸着樹
脂への吸着・溶出、酢酸エチル、n−ブタノール等を用
いた溶媒抽出、シリカゲル等によるカラム法あるいは薄
層クロマトグラフィー、逆相カラムを用いた分取用高速
液体クロマトグラフィー等を、単独あるいは適宜組合
せ、場合により反復使用することにより、分離精製する
ことができる。
【0019】
【実施例】以下、本発明について具体例を挙げてより詳
細に説明するが、本発明をこれらの例に限定することを
意図するものではない。なお、下記の例中のパーセント
(%)は、特に断りのない限り、容量パーセントを示
す。
【0020】例1〜6 表1に示した各種成分を含む各培地5mlを試験管に入
れ、121℃、20分間加熱滅菌した。これにミクロテ
トラスポーラ・レクチカテナ(Microtetras
pora recticatena)IFO14525
株を接種し、表1に示した時期にメバスタチンを最終濃
度で500mg/lとなるように添加し、28℃にて1
0日間培養した。
【0021】このようにして得られた培養液を2ml分
取し、同量のメタノールを加えて振とうし、3000r
pmにて10分間遠心分離した。この上清をさらに12
000rpmにて10分間遠心し、得られた上清を下記
の条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分
析し、プラバスタチン濃度を測定した。なお、この条件
では、プラバスタチンの保持時間は17.6分である。
結果を表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
【0023】(HPLC分析条件) カラム:STR ODS−II(4.6φ×150m
m) 移動相:メタノール/水/酢酸/トリエチルアミン(5
00:500:1:1)混液 流速:1.0ml/分 検出:238nm
【0024】例7 グルコース1.0%、マルトエキス0.2%、酵母エキ
ス0.5%を含む培地50mlを500ml容三角フラ
スコに入れ、121℃、20分間加熱滅菌した。これに
ミクロテトラスポーラ・レクチカテナ(Microte
trasporarecticatena)IFO14
525株を接種し、28℃で4日間、ロータリーシェー
カー(220rpm)上で培養した。これにメバスタチ
ンを最終濃度で500mg/lとなるように添加し、さ
らに8日間、同条件で培養した。得られた培養液を前述
の条件でHPLC分析したところ、プラバスタチンの濃
度は91.0mg/lであり、メバスタチンからプラバ
スタチンへの変換率は、15.6%であった。
【0025】例8〜16 表2に示した濃度のグルコースを含み、さらにマルトエ
キス0.2%、酵母エキス0.5%、炭酸カルシウム
0.2%を含む各種培地50mlを500ml容三角フ
ラスコに入れ、121℃、20分間加熱滅菌した。これ
にミクロテトラスポーラ・レクチカテナ(Microt
etraspora recticatena)IFO
14525株を接種し、28℃で4日間、ロータリーシ
ェーカー(220rpm)上で培養した。これにメバス
タチンを表2に示す濃度となるように添加し、さらに6
日間、同条件で培養した。得られた培養液を前述の条件
でHPLC分析した結果を表2に示す。プラバスタチン
生産量は、メバスタチン添加量500mg/lまでは増
加したが、1000mg/lでは逆に減少した。
【0026】
【表2】
【0027】例17 グルコース0.5%、マルトエキス0.2%、酵母エキ
ス0.5%、炭酸カルシウム0.2%からなる前培養用
培地50mlを500ml容三角フラスコに入れ、12
1℃、20分間加熱滅菌した。これにミクロテトラスポ
ーラ・レクチカテナ(Microtetraspora
recticatena)IFO14525株を接種
し、28℃で2日間、ロータリーシェーカー(220r
pm)上で培養し、前培養液を調製した。次に3l容の
ジャーファーメンテーター(MDL300:丸菱株式会
社製)に前培養用培地と同組成の変換培養用培地1.5
lを準備し、121℃、20分間加熱滅菌した。これに
前培養液150mlを接種し、温度28℃、攪拌数30
0rpm、通気量1.0vvmの条件で培養した。1日
後、菌体が十分に増殖したことを確認してメバスタチン
を濃度500mg/lとなるように添加し、培養を継続
した。メバスタチンを添加して1日後、40mg/lの
プラバスタチンが生産され、6日後には、100mg/
lに達した。この時の変換率は20%であった。
【0028】例18 例17と同様に前培養液を調製し、3l容ジャーファー
メンターでの変換培養を行った。ただし、変換培養の培
地は、次の組成を有する。溶性でんぷん6.0%、大豆
粉2.0%、KR−酵母0.3%、ファーマメディア
0.7%、酵母エキス0.1%、硫酸マグネシウム・7
水和物0.05%、リン酸一カリウム0.05%、プル
ロニック(旭電化社製)0.05%。培養方法は、基本
的に例17と同様であるが、培養開始後、3日目にメバ
スタチンを濃度500mg/lとなるように添加した。
メバスタチンを添加して5日後、190mg/lのプラ
バスタチンが生産され、この時の変換率は38%であっ
た。
【0029】例19 例17と同様に前培養液を調製し、例18で用いた変換
培地を用いて、3l容ジャーファーメンターでのpH制
御による変換培養を行った。ただし、pHの制御は2M
水酸化ナトリウムを用い、pH8.0に維持した。培養
開始後、4日目にメバスタチンを濃度500mg/lと
なるように添加した。メバスタチンを添加して6日後、
プラバスタチンの濃度は285mg/lに達し、この時
の変換率は57%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:01) C12R 1:01)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I)、 【化1】 で示されるメバスタチン、そのラクトン開環体またはそ
    の塩の、式(II)、 【化2】 で示されるプラバスタチン、その塩またはそのラクトン
    閉環体への生物学的変換方法による、式(II)で示さ
    れるプラバスタチン、その塩またはそのラクトン閉環体
    の製造方法であって、(A)前記生物学的変換方法を行
    いうるものであって、かつ、ミクロテトラスポーラ(M
    icrotetraspora)属に属する菌株または
    その培養菌体の調製物の存在下で、式(I)で示される
    メバスタチン、そのラクトン開環体またはその塩をイン
    キュベーション処理する工程、(B)インキュベーショ
    ン処理液から式(II)で示されるプラバスタチン、そ
    の塩またはそのラクトン閉環体の少なくとも1種を採取
    する工程、を含んでなる方法。
  2. 【請求項2】 インキュベーション処理される物質が、
    メバスタチンである請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 インキュベーション処理液から採取され
    る物質がプラバスタチンまたはその塩である請求項1ま
    たは2記載の方法。
  4. 【請求項4】 ミクロテトラスポーラ(Microte
    traspora)属に属する菌株が、ミクロテトラス
    ポーラ・レクチカテナ(Microtetraspor
    a recticatena)IFO14525株であ
    る請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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