JP2001264493A - 放射性廃棄体の放射能測定装置 - Google Patents

放射性廃棄体の放射能測定装置

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JP2001264493A
JP2001264493A JP2000079253A JP2000079253A JP2001264493A JP 2001264493 A JP2001264493 A JP 2001264493A JP 2000079253 A JP2000079253 A JP 2000079253A JP 2000079253 A JP2000079253 A JP 2000079253A JP 2001264493 A JP2001264493 A JP 2001264493A
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radioactive waste
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正弘 近藤
Satoshi Kawasaki
智 川▲崎▼
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Abstract

(57)【要約】 【課題】廃棄体内容物が金属層とスラグ層の二層構造と
なる溶融固化体の放射能濃度を精度良く測定する。 【解決手段】放射線検出器の前面にコリメータを設置
し、金属層とスラグ層の二層構造の溶融固化体なる放射
性廃棄体を回転昇降させて廃棄体から放出される放射線
をエネルギースペクトルとして高さ方向に複数の領域で
測定する。各領域毎のエネルギースペクトルから得られ
る散乱線強度と直接線強度比率の変化に基づき溶融固化
体の各層の境界レベルを評価し、更に各領域の該強度比
率に基づいて金属層とスラグ層の放射線減衰量を評価す
る。得られた放射線減衰量と直接線強度、及び境界レベ
ルから金属層とスラグ層に存在する放射能量を定量す
る。溶融固化体なる放射性廃棄体の金属層とスラグ層の
境界レベル及び密度値が未知であっても、測定精度の高
い放射性廃棄体の放射能測定装置を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性廃棄体の放
射能測定装置に係り、特に、原子力発電所等の原子力施
設で発生した放射性廃棄物を溶融処理したものを200
リットルドラム缶等に収納し、セメント等で固定化した
放射性廃棄体を施設外に埋設処分するために必要な各種
確認検査を実施するための放射性廃棄体検査設備に適用
するのに好適で、埋設処分される放射性廃棄体の埋設後
の安全性の観点から要求される放射性廃棄体の含有放射
能濃度を非破壊測定するのに好適な放射性廃棄体の放射
能測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所等の施設において発生した
放射性廃棄物は、その性状及び放射能量等の差異により
様々な形態に分離され、放射性廃棄体が製作される。こ
の放射性廃棄体として、(1)濃縮廃液や使用済イオン
交換樹脂等をセメントやアスファルト及びプラスチック
等の固形化材料で混練し200リットルのドラム缶内に
固定化してなる放射性廃棄体(以下、均質・均一固化体
と記す)、(2)金属片やコンクリート片等の雑固体と
称される廃棄物を高温溶融処理を施し、溶融処理を施し
た廃棄物を専用キャニスタ容器に入れ、更にキャニスタ
容器をドラム缶に入れセメント等の固形化材料で固定化
してなる放射性廃棄体(以下、溶融固化体と記す)等が
ある。これら放射性廃棄体の施設外に搬出し集中的に管
理埋設貯蔵処分する事業に関して、均質・均一固化体は
埋設貯蔵処分が開始され、溶融固化体に関しては、技術
要件の整備が進められている。このように放射性廃棄体
を施設外に搬出し集中的に埋設管理貯蔵処分の実施に当
たっては、放射性廃棄体が各施設から集中埋設貯蔵処分
施設への輸送及び集中埋設貯蔵処分施設での埋設貯蔵処
分に対して、所定の要件を満足していることを確認する
ことが必要とされている。
【0003】前記の均質・均一固化体の施設外への搬出
及び集中埋設貯蔵処分に関する要求要件として、総理府
令「核燃料物質等の廃棄物埋設の事業に関する規則」及
び科学技術庁告示「核燃料物質等の埋設に関する措置等
に係る告示」等において埋設貯蔵処分に係わる要求条件
が示されている。また、原子炉規制法、同施行令等の法
令・規則により施設外での輸送に係わる要求条件が定め
られている。以上、示した法例・規則等に対し放射性廃
棄体が要求条件を満足していることを確認するためにい
くつかの検査を実施する必要がある。埋設貯蔵処分が実
施されている均質・均一固化体に対する検査項目は、
外見健全性、表面及び1m線量当量率、表面汚染密
度、放射能濃度、重量、及び一軸圧縮強度、であ
る。
【0004】一方、埋設貯蔵処分に係わる技術要件が整
備中である溶融固化体に関して、当該放射性廃棄体が埋
設貯蔵処分の要求条件を満足していることを確認するた
めの検査項目が前記〜項と仮定すると、項の検査
に対して問題が発生すると考えられる。なお、項の一
軸圧縮強度検査に関しては、雑固体からなる放射性廃棄
体が埋設貯蔵処分の要求条件を満足していることを確認
するための検査項目から除外することが検討されてい
る。
【0005】項の放射能濃度検査は非破壊測定で実施
されることが主であり、放射性廃棄体の周囲に設置され
た放射線検出器により放射性廃棄体から放出されるγ線
を測定して放射性廃棄体内に存在するγ線放出核種の放
射能濃度を評価する。また、非破壊測定できないα線,
β線放出核種の放射能濃度はγ線放出核種との相関関係
で評価するとされている。このγ線放出核種の非破壊測
定において、放射性廃棄体の密度分布と放射能分布に起
因するγ線減衰補正と幾何学的効率補正を正確に行わな
いと非破壊測定の放射能濃度定量誤差が大きくなる。こ
のため、本来、埋設集中貯蔵処分施設の受入れ基準値を
満足している放射性廃棄体が非破壊測定の放射能濃度定
量誤差が大きい故に満足しないケースが発生する可能性
があり、測定精度の高い非破壊放射能測定装置を装備し
た放射性廃棄体検査設備が必要である。
【0006】溶融固化体は下部に金属層が形成し、その
上部にスラグ層が形成する特徴がある。更に、金属層と
スラグ層の密度分布と放射能分布が均一分布であると共
に、金属層にCo−60が、スラグ層にCs−137が
主に分布すると云う特徴も有している。この溶融固化体
の非破壊放射能測定装置として、特開平6−258496 号公
報に示されたものが知られている。特開平6−258496号
公報に示された方法は、溶融固化体を高さ方向にスキャ
ン測定を行い、スキャン測定で得たCo−60又はCs
−137のピーク計数値の差異から溶融固化体の金属層
とスラグ層の境界レベルを判定し、この結果から金属層
とスラグ層の容積を求める。また、金属層とスラグ層の
密度分布と放射能分布が均一分布であると云う特徴か
ら、金属層とスラグ層の平均密度を指定し、スキャン測
定値であるCo−60とCs−137のピーク計数値に基
づいてγ線減衰と幾何学的補正を行い、上記求めた容積
から金属層とスラグ層の放射能量を定量する方法であ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開平6−258496号公
報に開示されている放射能測定装置は、溶融固化体の核
種混在率が考慮されていない問題点がある。溶融固化体
の場合、金属層にCo−60が、スラグ層にCs−13
7が主に存在するものの、廃棄物の溶融処理条件により
Co−60がスラグ層に若干移行すると云う現象を示
す。このCo−60がスラグ層に移行する割合を核種混
在率として定義されている。この核種混在率が存在する
溶融固化体の場合、スラグ層のCs−137のピークγ
線(0.66MeV)は、スラグ層にCo−60が移行
していることからCo−60のピークγ線(1.17M
eVと1.33MeV)のスラグ層内のコンプトン散乱
現象により見えなくなる可能性が極めて高くなる。更
に、溶融固化体の溶融条件により金属層の密度は5〜8
g/cm3、スラグ層の密度が2〜3g/cm3の範囲で変動
するため金属層とスラグ層のγ線減衰と幾何学的効率が
変化し、Co−60がスラグ層に移行している事からC
o−60のピークγ線計数値が金属層とスラグ層で同じ
になる場合が生ずる。即ち、前者の場合はCs−137
のピークγ線が見えず(検知できず)、後者の場合はC
o−60のピークγ線が変化しないため、金属層とスラ
グ層の境界を判断できなくなる。このため、放射線の減
衰が大きい金属層と減衰が小さいスラグ層の容積が求め
る事ができなくなり、放射能濃度の定量誤差が大きくな
ると云う問題点がある。さらに、特開平6−258496 号公
報に開示されている放射能測定方法は、金属層とスラグ
層に平均的な密度値を設定して、各層の放射線(γ線)の
減衰量を計算し各層の放射能濃度を求めている。しか
し、上述したように、溶融固化体は溶融条件により、金
属層の密度は5〜8g/cm3、スラグ層の密度が2〜3
g/cm3の範囲で変動するため、設定した平均値との差
異が放射能濃度の評価誤差になると云う問題点がある。
【0008】本発明の目的は、上述した問題点を解決す
るものであって、非破壊的に溶融固化体の放射能量を好
適に測定できる放射性廃棄体の放射能測定装置を提供す
ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明の放射性廃棄体の放射能測定装置の特徴
は、溶融固化体の高さ方向に所定の高さ範囲で複数の領
域に分割し、溶融固化体を相対的に回転・昇降してコリ
メータを装備した放射線検出器でコリメータを通して入
射される溶融固化体からの放射線のエネルギースペクト
ルを求め、前記エネルギースペクトルの波高分布から求
まる散乱線強度と直接線強度に基づいてスペクトル指標
を求め、溶融固化体の高さ方向の複数のスペクトル指標
から溶融固化体の金属層とスラグ層の境界レベルを求
め、前記金属層とスラグ層の境界レベルと前記直接線強
度と溶融固化体の製作時に得る情報(キャニスタ寸法,
溶融体高さ等)から溶融固化体の放射量を定量する事に
ある。
【0010】本発明の放射性廃棄体の放射能測定装置
は、溶融固化体の高さ方向に一定間隔の領域に分割し、
溶融固化体を回転させながら放射線検出器の前面に設置
されたコメリメータを通して放射線検出器で溶融固化体
が放出する放射線をエネルギースペクトルとして測定
し、測定されたエネルギースペクトルの着目する核種の
散乱線強度と直接線(ピークエネルギー)と算出し、散
乱線強度と直接線強度比率であるスペクトル指標を求め
る。ここで溶融固化体の放射能レベルが高く、前記散乱
線強度と直接線強度に対応する各計数値の統計的誤差が
無視できる場合、溶融固化体の高さ方向に対応する仮想
スライスのスペクトル指標のプロファイルを評価し、ス
ペクトル指標が変化する仮想スライスの溶融固化体の高
さ方向の位置を金属層とスラグ層の境界レベルとして判
断する。溶融固化体の製作時に金属層とスラグ層を合わ
せた高さが求められている事から前記境界レベルより金
属層とスラグ層の容積を計算する事ができる。更に、前
記境界レベルを基に、明らかに金属層である、もしくは
スラグ層である仮想スライスのスペクトル指標を用い、
予め校正試験で得たスペクトル指標と溶融固化体の密度
の関係式から、金属層とスラグ層の密度値を求め、前記
密度値から前記直接線強度の減衰補正を行い、前記金属
層とスラグ層の容積を考慮し溶融固化体内に存在する放
射能量を正確に求める事を可能とするものである。一
方、溶融固化体の放射能レベルが低く散乱線強度と直接
線強度に対応する計数値の統計的誤差が無視できない場
合、先ず、溶融固化体の高さ方向に対応する仮想スライ
スの着目する核種の直接線の強度のプロファイルを評価
し、直接線の強度が変化する仮想スライスの溶融固化体
の高さ方向の位置を金属層とスラグ層の境界レベルとし
て判断する。しかし、直接線強度のプロファイルに変化
がない場合は、溶融固化体の高さ方向に対応する仮想ス
ライスのスペクトル指標のプロファイルを評価し、スペ
クトル指標が変化する仮想スライスの溶融固化体の高さ
方向の位置を金属層とスラグ層の境界レベルとして判断
する。溶融固化体の製作時に金属層とスラグ層を合わせ
た高さが求められている事から前記境界レベルより金属
層とスラグ層の容積を計算する事ができる。更に、前記
境界レベルを基に、明らかに金属層である、もしくはス
ラグ層である仮想スライスのスペクトル指標を用い、予
め校正試験で得たスペクトル指標と溶融固化体の密度値
の関係式から金属層が取得る密度値、及びスラグ層が取
得る密度値を評価する。この密度値から金属層とスラグ
層の放射線減衰量を求め、前記直接線強度の減衰補正を
行い金属層とスラグ層のスライスの放射能量を求める。
ここで、金属層とスラグ層が占めるスライス量を計算
し、当該スライス放射能量から金属層とスラグ層の放射
能量を各スライス容積換算で求め、溶融固化体内に存在
する放射能量を正確に求める事を可能とするものであ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を
用いて説明する。
【0012】図2は放射性廃棄体(以下、廃棄体と記
す)を原子力施設から埋設貯蔵処分施設へ搬出する際に
実施することが必要と考えられる廃棄体の検査手順を示
したものである。検査項目として、廃棄体の表面汚染密
度,外観検査,重量,表面線量当量率,1m線量当量
率,放射能濃度等が挙げられる。検査項目及び順序は、
本実施例で示されるもので限定する必要がなく、また、
検査装置の簡素化の観点から2つ以上の検査項目を同一
装置(位置)で行うことも可能である。一連の検査項目
を実施し、健全性が確認された廃棄体について、廃棄体
を管理する管理番号のマーキング、及び表面線量当量率
区分に応じた色帯のラベリングを実施して廃棄体の搬出
検査が完了する。
【0013】図3は廃棄体をハンドリングする移送装置
及び一連の検査装置で構成された放射性廃棄体検査設備
(以下、検査設備と記す)の具体例を示したものであ
る。以下、図3を用い検査設備の動作を説明する。原子
力発電所等の原子力施設で発生する放射性廃棄物は、2
00リットルのドラム缶で充填・固定化され廃棄体1と
なる。この廃棄体1は4本を一括したパレット16に乗
せられている。廃棄体1を乗せたパレット16はフォー
クリフト等のハンドリング装置15により検査設備のパ
レット台車17に設置される。パレット16が設置した
後、パレット台車17は走行し、第一の検査装置19付
近まで移動する。パレット台車17は90度単位で回転
し、廃棄体1を1体、搬送モノレール18aが吊り上げ
移動する。搬送モノレール18aは走行し、廃棄体1を
第一の検査装置19の廃棄体の設置位置上部に来ると走
行を停止し、吊り下げ移動を行い、廃棄体1を第一の検
査装置19に設置する。設置後、モノレール18aは廃
棄体1を手放し、上昇しパレット台車17付近まで走行
し、2体目の廃棄体1を吊り上げる。第一の検査装置1
9で廃棄体1を回転・昇降させながら、テレビカメラを
用いて廃棄体1の外観検査を検査員がテレビモニタを監
視して行う。これと同時に、廃棄体1の上面,下面及び
側面に濾紙等のふき取り紙(布)を廃棄体1に擦り付
け、廃棄体1の全面をふき取る。このふき取った濾紙を
GM計数管等の放射線検出器で測定し、濾紙に付着した
放射能を評価し、間接的に廃棄体1の表面汚染密度を定
量する。第一の検査装置19で実施すべき検査が終了し
た廃棄体1は、モノレール18bにより、第二の検査装
置20に設置される。第二の検査装置20では、廃棄体
1の重量をロードセルで測定した後、廃棄体1の上面と
下面の線量当量率をSi半導体検出器等で測定し、その
線量当量率の測定結果を基に放射能測定用のGe半導体
検出器の位置とGe半導体検出器の前面に取り付けられ
たコリメータの開口度を決定する。この状態で廃棄体1
を回転・昇降させながら廃棄体1の側面の線量当量率を
Si半導体検出器で、放射能(γ線)をGe半導体検出
器等で測定する。上面,下面及び側面の線量当量率の測
定結果を演算し、廃棄体1の表面線量当量率と1m線量
当量率を演算する。さらに、γ線測定値を解析し廃棄体
1に存在する放射能濃度を演算する。演算したそれぞれ
の値は、上位の操作盤等のデータ管理装置に引き渡され
る。なお、放射能測定と評価に関しては後述する。第二
の検査装置20で実施すべき検査が終了した廃棄体1
は、モノレール18cにより第三の検査装置21に設置
される。第一の検査装置19と第二の検査装置20での
検査が全て、基準値を満足している廃棄体1は、第三の
検査装置21で廃棄体1を管理する管理番号のマーキン
グと廃棄体1の表面線量当量率の区分に応じた色帯のラ
ベリングを実施する。このマーキングとラベリングが正
しく行えたか否かをテレビカメラでモニタを行う。全て
の検査項目に足して基準を満足した廃棄体は、第三の検
査装置21からモノレール18dとパッケージング装置
22を用い廃棄体1の輸送容器であるコンテナ23に、
廃棄体1が設置される。パッケージング装置22は、昇
降及びX−Y走行の機能を有しており、廃棄体1をコン
テナ23の所定の位置に設置可能である。また、このコ
ンテナ23の輸送容器は、8体の廃棄体1を設置するこ
とが可能であり、コンテナ23に8体の廃棄体1が設置
されたならば、フォークリフト等のハンドリング装置1
5により、コンテナ23を所定の位置まで移動される。
また、基準を満足しなかった廃棄体1は、モノレール1
8dにより不合格廃棄体エリアへ移動される。このよう
にして、一連の搬出検査が完了となる。
【0014】図4は溶融固化体なる廃棄体の放射能測定
方法の一例を示すものである。測定対象である廃棄体1
は図示されていない第二の検査装置20に設置されると
第二の検査装置20内に装備された回転装置により回転
可能であり、また、図示されていない第二の検査装置2
0内に装備された昇降装置により廃棄体の軸方向(高さ
方向)に移動可能である。廃棄体1の内部から放出され
るγ線は放射線検出器2で測定される。この放射線検出
器2としてGe半導体検出器を用いることができる。放
射線検出器2の前面には、放射線検出器2が廃棄体高さ
方向の一断面3内の放射能から放出されるγ線のみを測
定できるように垂直コリメータ5が設置されている。さ
らに、放射線検出器2の前面には、断面3内の放射性核
種の存在位置に対する検出効率を補正するための水平コ
リメータ4が設けられている。放射線検出器2の出力は
波高分析装置8に入力され、波高分析装置8では廃棄体
1の内部で放出され断面3を透過してきた直接線6と廃
棄体1の内部で一旦散乱を起こした後に透過してきた散
乱線を7からなるエネルギースペクトルを得る。波高分
析装置8の出力であるエネルギースペクトルは、光電ピ
ーク演算装置9に入力され、光電ピーク演算装置9で
は、直接線6と散乱線7に起因した各計数率を求める。
なお、この計数率は直接線6及び散乱線7の強度に対応
する。光電ピーク演算装置9の出力は、スペクトル指標
演算装置10に入力され、スペクトル指標演算装置10
ではスペクトル指標である散乱線7と直接線6の強度比
率(散乱線7/直接線6)を求める。スペクトル指標演
算装置10の出力は、密度演算装置11と境界レベル演
算装置13に入力され、境界レベル演算装置13では、
スペクトル指標に基づき境界レベルを算出し、密度演算
装置11に入力される。密度演算装置11では、境界レ
ベルに基づき廃棄体の金属層とスラグ層の密度値を演算
する。密度演算装置11と光電ピーク演算装置9の出力
は、放射能演算装置12に入力され、放射能演算装置1
2では、直接線6の計数率と密度値に基づき放射線減衰
量を求め、当該放射線減衰量と直接線6の計数率と境界
レベルに基づき断面3内の放射能を演算する。上記処理
を廃棄体1を昇降・回転させながら廃棄体1の全ての断
面に対して行い全断面の放射能を合算する事で廃棄体1
内に存在する放射能量を求める。その放射能量はディス
プレイ及びプリンタ又はフロッピー(登録商標)ディス
ク等の記憶媒体からなる出力装置14から出力される。
なお、光電ピーク演算装置9,スペクトル指標演算装置
10,密度演算装置11,放射能演算装置12及び境界
レベル演算装置13はパーソナルコンピュータ等で構成
する事ができる。
【0015】次に、水平コリメータ4と垂直コリメータ
5の必要性について説明する。本発明に係る溶融固化体
は図5に示す構造を持つ廃棄体である。図5に示すよう
に、溶融固化体なる廃棄体は金属廃棄物等を高温の溶融
処理を施すことにより製作される廃棄体であり、専用の
定型のキャニスタIの中の下側に金属層Hが、その上に
スラグ層Gが形成される。金属層Hとスラグ層Gの密度
分布と放射能分布は均一状態である。なお、溶融処理条
件により金属層Hの密度は5〜8g/cm3、スラグ層G
の密度は2〜3g/cm3の範囲で変動する。また、放射
能は、金属層HにCo−60が、スラグ層GにCs−1
37が主存在するものの、溶融処理条件によりCo−6
0がスラグ層Gに移行する場合がある。この金属層Hと
スラグ層Gを有するキャニスタIは、200リットルの
ドラム缶内に挿加され、そこにセメントD等の固形化材
料が充填され固定化されたものが溶融固化体である。こ
のような特徴を持つ溶融固化体なる廃棄体1の放射能を
非破壊的に求めるために、廃棄体1の周囲に放射線検出
器2を配置し、この廃棄体1の周囲で測定した放射線強
度から廃棄体1内の放射能量を求めるためには、廃棄体
1の内容物に起因する密度分布と放射能分布に依存する
放射能測定系の検出効率である放射線減衰量と幾何学的
効率を正しく補正しなければならない。廃棄体1断面内
の密度分布と放射能分布の補正については、以下の方法
で行う。先ず、放射能分布に関しては、放射性核種の位
置によらず放射線検出器2で測定する直接線6に対する
検出効率が、ほぼ一様になるように図6に示す水平コリ
メータ4の開口度L1を設定して対処する。この水平コ
リメータ4の最適開口度L1は、既知の基準密度を入れ
た廃棄体を用いた校正試験で行い、廃棄体1を1回転さ
せたときの検出効率がほぼ一様になるようになるL1と
する。この基準密度として、空気,水,セメント等を用
いる事ができる。また、廃棄体1の高さ方向の密度分布
と放射能分布の補正は、図7に示す垂直コリメータ5の
開口幅L2を放射線検出器2が断面3のみを見込むよう
に設定し、廃棄体を高さ方向に順次昇降させながら廃棄
体の全断面を測定する事で行う。
【0016】次に、スペクトル指標の演算方法について
説明する。垂直コリメータ5の開口幅L2,水平コリメ
ータ4の開口幅L1を設定した放射能測定装置におい
て、廃棄体1の断面3のスペクトル指標の演算方法は以
下のようにして求める。第二の検査装置20に廃棄体1
を設置し、第二の検査装置20内に装備された昇降装置
で所定の位置(例えば、断面3)に廃棄体を移動させた
後、第二の検査装置20内に装備された回転装置で廃棄
体1を1回転又は複数回転させ、放射線検出器2でγ線
を測定し、波高分析装置8でこのγ線のエネルギースペ
クトルを求める。このエネルギースペクトルは、断面3
の密度分布と放射能分布に依存して変化する。廃棄体1
内に単一エネルギーE0のみのγ線を放出する放射性核
種だけが存在する場合、図8に示すγ線のエネルギース
ペクトルを得ることができる。通常、廃棄体1の内容物
の密度が高くなるとγ線は透過しにくくなる。つまり、
γ線の減衰量が大きくなり直接線6の強度Pは小さくな
る。一方、散乱線7の強度Cは、直接線6の強度Pに比
べ相対的に大きくなる。直接線6に起因したエネルギー
スペクトルは、エネルギーE0 を近傍の光電ピーク領域
であり、エネルギーE0 含むエネルギー範囲ΔE1 の範
囲の計数率の和Pは、直接線6の強度に対応する。従っ
て、図4に示す光電ピーク演算装置9では、光電ピーク
領域の範囲ΔE1 を与え、範囲の計数率の和Pを求め
る。また、図8に示す光電ピーク領域の低エネルギー側
に直接線6が廃棄体1内に散乱した成分と放射線検出器
2内で散乱した成分に起因する。後者は成分は固有であ
り、その成分の直接線強度に対する比率は、廃棄体の内
容物が変化しても変わらない。従って、光電ピーク領域
以下の範囲ΔE2 を設定し、その範囲ΔE2 の計数率の
合計値Cは、散乱線7の強度を示す。光電ピーク演算装
置9では、散乱線領域の範囲ΔE2 を与え範囲の計数率
の和Cを求める。この直接線6の強度Pと散乱線7の強
度Cについて、C/Pの比率を取りスペクトル指標と定
義する。
【0017】上述したように動作する放射能測定装置に
ついて、図1を用い本発明の動作を以下に説明する。溶
融固化体なる廃棄体1は、既に説明したように、専用の
定型のキャスク内で金属層Hとスラグ層Gから構成され
ている。この廃棄体1の高さ方向に測定断面毎のスペク
トル指標をプロットすると、図1のようになる。これ
は、金属層Hの密度がスラグ層Gの密度より大きいた
め、金属層Hの散乱の割合が多くなり、この結果、スペ
クトル指標が大きくなるためである。金属層Hとスラグ
層Gの境界レベル演算装置13では、図1に示すスペク
トル指標のプロファイルを作成し、このプロファイルを
微分処理を施す等により境界レベルを算出する。この境
界レベルの算出において、直接線強度Pと散乱線強度C
の統計的計数誤差が無視できる場合は、上述のスペクト
ル指標から境界レベルを求めても誤認識しないものの、
計数誤差が無視できない場合、誤認識する可能性があ
る。そこで、境界レベル演算装置13は、先ず、廃棄体
1の高さ方向の直接線強度Pのプロファイルを作成し
(図1の横軸が直接線強度Pとなる)微分処理等を施し
境界レベルを検知する。ここで、境界レベルが検知され
ない場合に、スペクトル指標のプロファイルで再度、上
述の方法で境界レベルの検知する。検知された金属層H
とスラグ層Gの境界レベルは、密度演算装置11に出力
される。
【0018】溶融固化体なる廃棄体の製作に於いては、
金属層Hとスラグ層Gを合算した高さ(図9に示すh
2)を測定する事が考えられている。このため、密度演
算装置11では、境界レベル演算装置13から得た境界
レベルと与えられた金属層Hとスラグ層Gを合算した高
さh2から、図9に示す金属層Hの高さh3とスラグ層
Gの高さh4を求める事ができる。この金属層とスラグ
層の高さ情報(容積情報)も密度演算装置11から放射能
演算装置12に出力される。
【0019】一方、スペクトル指標C/Pは、既に説明
したように、廃棄体の内容物の状況に依存して変化す
る。図10は一定の放射能を持つγ線線源を溶融固化体
に配置し、溶融固化体の密度を変えて、その時のスペク
トル指標と関係から定まる。密度演算装置11には、図
10に示す密度ρとスペクトル指標C/Pの関係が、以
下のようになる校正式が記憶されている。
【0020】
【数1】 ρ=f(C/P) …(1) 即ち、密度演算装置11では、境界レベル演算装置13
から得た境界レベルに基づき、明らかに金属層H、及び
明らかにスラグ層Gの断面3のスペクトル指標より数2
を用い金属層Hとスラグ層Gの密度を算出する。しか
し、上述したスペクトル指標から金属層とスラグ層の密
度を求めた方法は、直接線強度Pと散乱線強度Cの値が
統計的誤差が無視できる場合であり、無視できない場合
は、下記の方法で金属層Hとスラグ層Gの密度を求め
る。(数2)で得られる金属層Hとスラグ層Gの密度を
初期値とし、制約条件として、金属層密度が5〜8g/
cm3、スラグ層密度が2〜3g/cm3の範囲で、(数1)
で与えられる方程式の最適解を線形計画法等の手法によ
り求める。このように、密度演算装置11で求められた
金属層Hとスラグ層Gの密度値と前述した金属層とスラ
グ層の高さ情報(容積情報)は、放射能演算装置14に
出力する。
【0021】放射能演算装置12においては、上述の密
度演算装置11と光電ピーク演算装置9の出力から溶融
固化体なる廃棄体1の放射能を次のようにして求める。
放射能をYとすると、放射能Yと直接線強度Pは、一般
的に(数2)の関係が成立する。
【0022】
【数2】 P=ηYexp(−μm ρt) …(2) ここでμm はエネルギーに依存したγ線の質量吸収係数
であり、約300keV以上のエネルギーのγ線に対し
ては物質にほとんど依存しない。tはγ線が廃棄体1内
を透過する平均距離である。対象廃棄体が各層で密度と
放射能分布が均一である溶融固化体であるため、tは、
廃棄体1の半径rの1/2としても良い。また、ηは検
出効率の一要素の検出感度である。検出感度ηは主に幾
何学的効率と直接線6のエネルギーに依存した放射線検
出器2の固有効率の積であり、後者は一定である。従っ
て、垂直コリメータ5の開口幅L2と水平コリメータ4
の開口幅L1が決まれば一定の値を持つ。そこで、設定
したコリメータの開口幅を持つ放射能測定装置で密度ρ
0 の基準物質に放射能量がY0 である既知の放射性物質
を入れて直接線強度P0を求めると、(数3)から変形し
て得られる(数4)により検出感度ηを決定することが
できる。
【0023】
【数3】
【0024】従って、核種に対応する直接線のエネルギ
ーEに対して、検出効率を求めれば、校正式η=g(E)
を予め求めて置くことができる。放射能演算装置12
は、検出感度ηの校正式、質量吸収係数μm 及び平均透
過距離を予め記憶しており、直接線強度Pと密度演算装
置11で(数1)より得た密度ρから、(数4)で放射
能量を求めることができる。
【0025】
【数4】
【0026】このようにして、金属層Hとスラグ層Gの
各々の層に該当する断面3の放射能を求めることができ
る。ここで、断面3の領域高さをφとすれば、溶融固化
体の放射能量は(数5)で求めることができる。
【0027】
【数5】
【0028】以上の計算から溶融固化体なる廃棄体1内
の放射能量を算出することができる。なお、溶融固化体
なる廃棄体1の放射能濃度は、(数5)で得た値を溶融
固化体の重量で除すれば良い。
【0029】以上の説明では、廃棄体1内に存在する放
射性核種が単一エネルギーを放出する場合であったが、
本発明は複数の核種が存在していても適用可能である。
この説明を以下に示す。図11は2核種の放射性物質が
廃棄体内に存在する場合の放射線検出器2で測定したγ
線のエネルギースペクトルの例である。この場合、最も
直接線のエネルギーが高いE01に対して、前記した単一
核種と同等な処理を行い、直接線強度P01と散乱線強度
01を求める。更に、E02のγ線を放出する核種の直接
線強度P02を求める。次に、スペクトル指標演算装置1
0は、最も高い直接線強度P01と散乱線強度C01からス
ペクトル指標を求める。密度演算装置11は上記のスペ
クトル指標に基づき、密度に対応するE01とE02の放射
線減衰量を求め、放射能演算装置12では前者放射線減
衰量とP01とE01情報から用いE01のγ線を放出する核
種の放射能量を、後者放射線減衰量とP02とE02情報か
ら用いE02のγ線を放出する核種の放射能量を演算す
る。
【0030】なお、これまでの説明では、スペクトル指
標をC/Pとしていたが、P/Cの関係で同等な効果を
得ることができる事を付け加えて置く。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、溶融固化体なる廃棄体
の金属層とスラグ層の境界レベル及び密度値が未知であ
っても、測定精度の高い放射性廃棄体の放射能測定装置
を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例を示す溶融固化体なる
廃棄体のスペクトル指標から金属層とスラグ層の境界レ
ベルを求める方法を示した図。
【図2】放射性廃棄体の検査手順の一例を示した説明
図。
【図3】本発明の実施例を示した放射性廃棄体検査設備
の構成図。
【図4】本発明の実施例を示す放射能測定装置の概略構
成図。
【図5】溶融固化体なる廃棄体の構造図。
【図6】本発明の好適な一実施例を示す放射能測定装置
の断面図。
【図7】本発明の好適な一実施例を示す放射能測定装置
の立面図。
【図8】本発明の放射線検出器で測定されたエネルギー
スペクトルにおける直接線強度と散乱線強度の取り方を
示す図。
【図9】溶融固化体なる廃棄体の寸法を示した例。
【図10】本発明の放射性廃棄体の密度値とスペクトル
指標の関係を示す図。
【図11】本発明の他の実施例による放射線検出器で測
定されたエネルギースペクトルにおける直接線強度と散
乱線強度の取り方を示す図。
【符号の説明】
1…放射性廃棄体、2…放射線検出器、4…水平コリメ
ータ、5…垂直コリメータ、6…直接線、7…散乱線、
8…波高分析装置、9…光電ピーク演算装置、10…ス
ペクトル指標演算装置、11…密度演算装置、12…放
射能演算装置、13…境界レベル演算装置、14…出力
装置、G…スラグ層、H…金属層。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】放射線検出器の前面に設置したコリメータ
    から入射される放射性廃棄体の放射線をエネルギースペ
    クトルとして測定し、エネルギースペクトルから得られ
    る前記放射線の散乱線強度と直接線強度に基づくスペク
    トル指標を求め、金属層とスラグ層の2層構造の溶融固
    化体なる放射性廃棄体の金属層とスラグ層の境界レベル
    を前記スペクトル指標から求め、前記境界レベルと前記
    スペクトル指標から金属層とスラグ層の密度値を求め、
    前記密度値から金属層とスラグ層における放射線の減衰
    量を求め、この放射線減衰量と前記直接線強度から金属
    層とスラグ層に存在する放射能量を定量することを特徴
    とする放射性廃棄体の放射能測定装置。
  2. 【請求項2】放射性廃棄体を回転・昇降可能な装置に設
    置し、放射性廃棄体を回転・昇降させながら放射性廃棄
    体の高さ方向に複数の領域に分割しながら放射性廃棄体
    の周囲に設置した放射線検出器により、放射線廃棄体が
    放出する放射線を測定する請求項1の放射性廃棄体の放
    射能測定装置。
  3. 【請求項3】光電ピーク領域以下の所定のエネルギー範
    囲の計数率の和を散乱線強度とし、光電ピーク領域内の
    計数率の和を直接線強度とすることを特徴とする請求項
    1の放射性廃棄体の放射能測定装置。
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