JP2001261704A - ポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多糖ならびにその製造方法 - Google Patents

ポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多糖ならびにその製造方法

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JP2001261704A JP2001037005A JP2001037005A JP2001261704A JP 2001261704 A JP2001261704 A JP 2001261704A JP 2001037005 A JP2001037005 A JP 2001037005A JP 2001037005 A JP2001037005 A JP 2001037005A JP 2001261704 A JP2001261704 A JP 2001261704A
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Katsushige Igai
勝重 猪飼
Ikunoshin Kato
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 医薬、化粧料、試薬として有用な硫酸化多糖
及びそれを有効成分として含有する医薬の提供。 【解決手段】 一般式(1)に示される硫酸化多糖を必
須成分とし、ポリ陽イオン物質、例えばタンパク質で架
橋された硫酸化多糖誘導体。(式中、RはOH又はOS
H、nは1〜5の整数である)本発明硫酸化多糖
は、口内用剤として医薬品に、又化粧料、潤滑剤として
使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は医薬品、糖鎖工学研
究用試薬、又は化粧品等として有用な海藻由来の硫酸化
糖及び硫酸化多糖に関する。
【0002】
【従来の技術】褐藻類に属する海藻には硫酸化多糖が含
まれていることが知られており、フコース硫酸を構成糖
の主成分とするフコイダンの構造は褐藻類の種類によっ
てかなり異なることが報告されている。また硫酸化多糖
由来の硫酸化糖に関しても褐藻類の種類によってかなり
異なることが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、試
薬、医薬等として有用な新規な構造を有する硫酸化糖及
び硫酸化多糖を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために褐藻類由来の硫酸化多糖について鋭意
検討した結果、ポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多
糖及び該硫酸化多糖の製造方法を確立し、本発明を完成
させた。
【0005】本発明を概説すれば、本発明は、ポリ陽イ
オン物質で架橋された硫酸化多糖に関する。
【0006】本発明の第2の発明は、ポリ陽イオン物質
で架橋された硫酸化多糖を有効成分として含有すること
を特徴とする医薬に関する。
【0007】本発明の第3の発明は、ポリ陽イオン物質
で架橋された硫酸化多糖を有効成分として含有すること
を特徴とする潤滑剤に関する。
【0008】本発明の第4の発明は、ポリ陽イオン物質
で架橋された硫酸化多糖を有効成分として含有すること
を特徴とする化粧料に関する。
【0009】本発明の第5の発明は、藻類からポリ陽イ
オン物質と硫酸化多糖の架橋の非破壊条件下で抽出する
工程を包含することを特徴とするポリ陽イオン物質で架
橋された硫酸化多糖の製造方法に関する。
【0010】本発明の第6の発明は、硫酸化多糖溶液
に、溶液のpHよりも等電点が高いポリ陽イオン物質を
添加することを特徴とするポリ陽イオン物質で架橋され
た硫酸化多糖の製造方法に関する。
【0011】本発明の第7の発明は、硫酸化多糖にポリ
陽イオン物質を添加することを特徴とする硫酸化多糖の
粘弾性の増強方法に関する。
【0012】本発明の第8の発明は、少なくとも低粘弾
性硫酸化多糖とポリ陽イオン物質を含有する組成物に関
する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明に関して具体的に説
明する。本発明に使用される褐藻類の種類は本発明の硫
酸化多糖を含有すれば良く特に限定はないが、例えばガ
ゴメ昆布、マ昆布、ワカメ、クロメ、アラメ、カジメ、
ジャイアントケルプ、レッソニア ニグレセンス等の昆
布目海藻は特に本発明の硫酸化多糖を多く含んでおり、
原料として好適である。
【0014】本発明の硫酸化多糖の製造には、まず褐藻
類から水系溶媒により本発明の硫酸化多糖の抽出液を得
る。抽出に供する海藻は生海藻でも良いが、抽出液を得
る前に褐藻類を乾燥したり、乾燥粉末にしたりしてもよ
い。
【0015】また、その乾燥物を60〜100%のアル
コールやアセトン等で洗浄したりすれば、本発明の硫酸
化多糖への着色性物質の混入が大幅に減少するため、後
の本発明の硫酸化糖の製造に有利である。
【0016】本発明の硫酸化多糖の褐藻類からの水系溶
媒による抽出は、好ましくはエチルアルコール存在下で
行うのが良く、好ましくはエチルアルコール5〜40
%、更に好適にはエチルアルコール8〜15%の存在下
での水系溶媒により、本発明の硫酸化多糖が選択的に抽
出される。
【0017】また、褐藻類から本発明の硫酸化多糖を抽
出する際に、塩化カルシウムや酢酸カルシウム等、アル
ギン酸と沈殿を形成する無機塩を使用するとアルギン酸
の混入が大幅に減少するため、後の精製に有利である。
【0018】本発明の硫酸化多糖の抽出温度は50°C
以下が好ましく、好適には15〜30℃である。
【0019】また、抽出のpHは、温度との兼ね合いも
あるが、本発明の硫酸化多糖は、酸やアルカリに対して
不安定なので、pH6〜8程度の中性域での抽出が好ま
しい。
【0020】また抽出はかくはん下で行えば良いが、非
せん断の条件下で行うのが最適であり、これらの条件下
により、本発明の硫酸化多糖を効率よく得ることができ
る。
【0021】なお上記褐藻類の抽出液には中性糖、タン
パク質等の不純物が混入していることが多い。中性糖の
除去は通常、排除分子量10万以下程度の限外ろ過によ
り容易に達成できる。タンパク質の除去には、プロテア
ーゼ処理等が有効である。
【0022】本発明の硫酸化多糖から低分子物質である
本発明の硫酸化糖を製造する際には、上記硫酸化多糖
に、該多糖に選択的に作用し本発明の硫酸化糖を遊離さ
せる作用を有するエンド型硫酸化多糖分解酵素を作用さ
せれば良い。該エンド型硫酸化多糖分解酵素としては特
に限定はないが、その一例としては後述の実施例1−
(1)に記載のアルテロモナス(Alteromona
s) sp.SN−1009(FERM BP−574
7)の生産するエンド型硫酸化多糖分解酵素を使用すれ
ばよい。
【0023】本発明の硫酸化多糖に上記エンド型硫酸化
多糖分解酵素を作用させた後、得られる反応生成物はそ
のまま使用することも可能であるが、薬品や試薬として
使用する場合、反応液中から本発明の硫酸化糖を精製す
ることが望ましい。精製に際しては、限外ろ過法、陰イ
オン交換樹脂や、疎水性クロマト用樹脂、ゲルろ過用樹
脂等を用いれば良い。
【0024】本発明の硫酸化糖は生褐藻類に上記エンド
型硫酸化多糖分解酵素を直接作用させて得られる分解物
中より精製しても良く、乾燥海藻、アルコール洗浄海
藻、本発明の硫酸化多糖含有物等に上記エンド型硫酸化
多糖分解酵素を作用させ、得られる分解物中より精製し
ても良い。なお上記酵素反応時においては反応溶液中か
ら本発明の硫酸化糖を分離する工程を組合せることによ
り、本発明の硫酸化糖の生成効率が上昇する。
【0025】本発明の硫酸化糖としては一般式〔I〕に
おいてn=1〜5の各硫酸化糖等が例示されるが、本発
明の硫酸化多糖に上記エンド型硫酸化多糖分解酵素を作
用させる場合の酵素作用条件により種々の分子量の硫酸
化糖を調製することができ、得られた各硫酸化糖を例え
ばゲルろ過法や限外ろ過法を用いて分子量分画し、分画
物中より各硫酸化糖を上記精製手段で単離することがで
きる。ゲルろ過法の例としては、セルロファインGCL
−300を使用し、例えば分子量25000超、分子量
25000〜10000超、分子量10000〜500
0超等の任意の分子量画分を調製でき、セルロファイン
GCL−90を用い、例えば分子量20000以下の画
分を分子量20000〜15000超、分子量1500
0〜10000超、分子量10000〜5000超等の
任意の分子量画分を調製できる。
【0026】限外ろ過法としては、例えば限外ろ過膜や
限外ろ過用ホロファイバーを用いることにより、分子量
分画を行うことができ、例えばダイセル社製FE10−
FUS0382を用いることにより分子量30000以
下の画分を、同FE−FUS−653を用いることによ
り分子量6000以下の画分を調製することができ、こ
れらのゲルろ過法、限外ろ過法を組合せることにより、
任意の分子量分画物を調製することができ、調製物より
目的の硫酸化糖を単離することができる。したがって本
発明の硫酸化糖は一般式〔I〕においてn=5超の硫酸
化糖を包含するものである。
【0027】本発明の硫酸化多糖及び本発明の硫酸化糖
の塩としては、医薬的に許容される塩があり、公知の方
法にて変換することができる。
【0028】本発明により得られた硫酸化糖若しくは硫
酸化多糖又はそれらの塩はフコース残基の含有率、その
硫酸化度が極めて高く、フコース硫酸含有多糖の構造研
究用試薬として、またフコース硫酸含有多糖の生理機能
研究用試薬として有用である。
【0029】なお、本発明の硫酸化糖及び本発明の硫酸
化多糖の硫酸基について述べれば、硫酸基の数は硫酸化
多糖の抽出条件、硫酸化糖の製造条件によって変動し得
るものである。例えば硫酸基のエステル結合は一般に酸
に弱く、またフコースの2位、3位に結合している硫酸
エステルはアルカリに弱い。すなわち本発明の硫酸化糖
及び本発明の硫酸化多糖の硫酸基の数は特に限定される
ものではなく、条件を設定することにより任意の硫酸基
含量とすることができる。
【0030】本発明の硫酸化糖若しくは硫酸化多糖又は
それらの塩はフコース残基のメチル基による疎水性を併
せ持つため、様々な塩基性有機物やタンパク質に高い親
和性を有する。したがって本発明の硫酸化糖若しくは硫
酸化多糖又はそれらの塩は保水性が優れているだけでな
く、その疎水性や荷電等のため例えば肌の角質層への親
和性が高く、本発明の硫酸化糖若しくは硫酸化多糖又は
それらの塩は化粧料の素材として極めて有用である。
【0031】本発明の硫酸化糖若しくは硫酸化多糖又は
それらの塩は化粧料として使用可能な任意の物質と混合
して使用可能である。一般的には、水、アルコール類、
油脂類、脂肪酸類、グリセロール、無機塩類、防腐剤、
界面活性剤、ビタミン類、アミノ酸類、糖類等と混合
し、ローション、乳液、クリーム等として使用できる。
【0032】本発明の硫酸化多糖含有物は、例えばガゴ
メ昆布、マ昆布、ワカメ、クロメ、ジャイアントケル
プ、レッソニア ニグレセンス等の褐藻類の生海藻や乾
燥海藻或いはそれらをエタノール等の有機溶媒を60%
以上含む溶液で洗浄したもの(以下、これらを海藻原料
と称す)から、抽出する。抽出液は例えば、水、塩化カ
リウムや塩化ナトリウム等の塩類及び/又は40%以下
のエタノール等の有機溶媒を含む水溶液等を用いること
ができる。例えば、上記の海藻原料を上記の抽出液中に
浸漬し、50℃以下で放置、あるいはかくはんすること
により、本発明の硫酸化多糖含有物を製造することがで
きる。本発明の硫酸化多糖含有物とは、本発明の硫酸化
糖を構成糖の必須成分とする硫酸化多糖を含有すれば限
定はなく、得られた硫酸化多糖含有物中には、本発明の
硫酸化多糖以外にも、多糖類、アルギン酸、アミノ酸
類、糖アルコール類、油脂類、無機塩類、タンパク類等
を含有しても良い。本発明の硫酸化多糖含有物は本発明
の硫酸化多糖の生理活性により、ウイルス阻害作用、受
精阻害作用、抗炎症作用、血管内皮肥厚抑制作用、血栓
形成抑制作用、脂血清澄作用、血清コレステロール低下
作用、抗アレルギー作用等を示し、医薬品の原料として
有用である。本発明の硫酸化多糖含有物は本発明の硫酸
化多糖の生理活性により、保湿作用、メラニン色素合成
阻害作用等を示し、化粧料の原料として有用である。本
発明の硫酸化多糖含有物中に含有される本発明の硫酸化
多糖の一例としては、フコースを構成糖とし、フコース
1分子当たりおよそ2分子の硫酸基を含む硫酸化多糖が
ある。当該硫酸化多糖の硫酸基には、海水中あるいは抽
出液中に存在する陽イオン、例えばナトリウム、カリウ
ム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、鉄等
が対イオンとして結合しうる。通常、海藻から抽出した
当該硫酸化多糖は、海藻由来のタンパク質によって架橋
されており、強い粘弾性を示すのでゲルろ過法による分
子量測定は不適当であるが、例えば、1M以上の塩化ナ
トリウム等の高塩濃度下で、1時間以上かくはんすれ
ば、その架橋を解離させることができ、ゲルろ過法で当
該硫酸化多糖の分子量を測定することができ、プルラン
を標準物質とした場合、分子量は約一千万の測定値とな
る。
【0033】また本発明の硫酸化多糖含有物としては、
藻類からポリ陽イオン物質と硫酸化多糖の架橋の非破壊
条件下で抽出する工程を包含する製造方法で製造される
ポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多糖又は硫酸化多
糖の溶液に、溶液のpHよりも等電点が高いポリ陽イオ
ン物質を添加することによって製造されるポリ陽イオン
物質で架橋された硫酸化多糖等も包含される。
【0034】硫酸化多糖はその性質として吸水性、保水
性、粘性、曳糸性、粘弾性等が挙げられるが、これらの
性質は例えば原料からの抽出条件の僅かな差により大き
く変動する。これらの性質は化粧品や潤滑剤、保湿剤と
して使用する際に非常に有用な性質であるが、これま
で、再現性良く硫酸化多糖を製造したり、これらの性質
をコントロールすることは困難であった。
【0035】すなわち、硫酸化多糖を化粧品や潤滑剤、
保湿剤又はある種の医薬品等として利用する場合はその
吸水性、保水性、粘弾性等の再現性が良くないと、使用
感や、性能の再現性も無くなり商品化時に大きな問題と
なっていたが、本発明により、吸水性、保水性、粘弾性
等の安定した本発明の硫酸化多糖含有物、その製造方法
及びその用途が提供される。
【0036】すなわち、本発明者らは本発明の硫酸化多
糖とタンパク質等のポリ陽イオンとの相互作用について
鋭意検討し、硫酸化多糖がある条件下でポリ陽イオン物
質と共存すると著しく粘弾性が高まることを見出した。
また、本発明者らは褐藻類に含まれる硫酸化多糖は、天
然の形では褐藻類が持つタンパク質と架橋をしており、
ある条件下ではその架橋を維持したまま粘弾性の高い硫
酸化多糖含有物として得られることを見出した。
【0037】本発明において、硫酸化多糖とは特に限定
されるものではなく、フコース硫酸含有多糖、デキスト
ラン硫酸、カラギーナン、ヘパリン、ラムナン硫酸、コ
ンドロイチン硫酸等の硫酸化多糖が例示される。
【0038】また本発明においてポリ陽イオン物質とは
特に限定されるものではなく、タンパク質やポリペプチ
ド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリグルコサミ
ン、ポリガラクトサミン等のポリ陽イオン物質が包含さ
れる。
【0039】硫酸化多糖とポリ陽イオン物質を架橋させ
る際、使用する硫酸化多糖の等電点よりも高いpHで、
使用するポリ陽イオン物質の等電点よりも低いpHで、
共存する電解質の濃度は使用する硫酸化多糖とポリ陽イ
オン物質の架橋を妨げない程度に低く、添加するポリ陽
イオン物質量は硫酸化多糖の総荷電を中和するよりも少
ないという条件下でポリ陽イオン物質で架橋した硫酸化
多糖は、その粘弾性が著しく高まる。
【0040】ポリ陽イオン物質として、ゼラチンやコラ
ーゲンの様に等電点の比較的高いタンパク質を使用する
場合は、正の荷電が多く硫酸化多糖を架橋しやすいの
で、粘弾性を付与し易い。しかし、等電点が比較的低い
タンパク質でも、硫酸化多糖溶液のpHを使用するタン
パク質の等電点よりも下げれば、ゼラチンやコラーゲン
のように硫酸化多糖に強い粘弾性を付与することができ
る。
【0041】本発明のポリ陽イオン物質で架橋した硫酸
化多糖は、藻類より調製することができる。例えば褐藻
類に含まれているフコース硫酸含有硫酸化多糖は抽出す
る方法により抽出効率や性質がかなり異なる。
【0042】単に短時間で大量のフコース硫酸含有硫酸
化多糖を得る目的の場合は、海藻を粉砕し、水あるいは
酸、塩、アルカリ等の水溶液により加熱かくはん抽出す
れば容易にフコース硫酸含有硫酸化多糖を抽出すること
ができる。
【0043】しかしながらこうして得られたフコース硫
酸含有硫酸化多糖は、藻類内に存在していた形態と比較
すると分子量が小さく粘弾性もほとんどない。したがっ
て化粧品として使用した場合硫酸化糖の効能はあるが使
用感にぬめりや潤滑性等の特徴はなく、潤滑剤としての
使用もほとんど不可能である。
【0044】ところが、藻類を50℃以下、好ましくは
30℃以下程度で、水あるいは中性付近の水溶液に浸
し、かくはん速度も、せん断力がほとんど生じない様な
速度で、例えば抽出された粘弾性の強い物質が藻類から
引きはがされない程度に設定すると、フコース硫酸含有
硫酸化多糖は藻類中のタンパク質で架橋した形態で抽出
される。
【0045】このタンパク質で架橋されたフコース硫酸
含有硫酸化多糖は新鮮鶏卵白様の性質すなわち粘弾性を
呈する。
【0046】タンパク質とフコース硫酸含有硫酸化多糖
の架橋は比較的容易に解離する。タンパク質で架橋され
たフコース硫酸含有硫酸化多糖は、かくはんするとかく
はん軸を伝って液が巻き上がってくるが(ワイセンベル
ク効果)、長時間せん断力が強くかかるかくはんを継続
すると粘弾性が低下し、液面はかくはん軸に接する部分
でむしろ窪む様になる。また加熱や高濃度の塩類の添
加、プロテアーゼ処理等によっても、タンパク質とフコ
ース硫酸含有硫酸化多糖の架橋は解離し、その粘弾性は
消失する。
【0047】すなわち、上記のように抽出されたタンパ
ク質で架橋されたフコース硫酸含有硫酸化多糖の強い粘
弾性はフコース硫酸含有硫酸化多糖そのものが持ってい
るのではなく、フコース硫酸含有硫酸化多糖とタンパク
質が架橋しているときに存在する性質である。
【0048】したがって、一度、粘弾性を喪失したフコ
ース硫酸含有硫酸化多糖について、粘弾性を回復させる
ことも可能であり、該フコース硫酸含有硫酸化多糖にタ
ンパク質等のポリ陽イオン物質を添加すると容易に粘弾
性を回復することができる。タンパク質等のポリ陽イオ
ン物質の添加量により粘弾性の強度も自在に調整でき
る。すなわち本発明により、硫酸化多糖にポリ陽イオン
物質を添加することを特徴とする硫酸化多糖の粘弾性を
増強する方法が提供される。
【0049】例えば、タンパク質等のポリ陽イオン物質
の等電点よりやや低いpHの環境で硫酸化多糖、例えば
フコース硫酸含有硫酸化多糖の荷電が中和されない程度
の量混合すれば、タンパク質等のポリ陽イオン物質の混
合量とフコース硫酸含有硫酸化多糖溶液の粘弾性には正
の相関がある。
【0050】当然のことながら、硫酸化多糖、例えばフ
コース硫酸含有硫酸化多糖溶液のpHが、加えるポリ陽
イオン物質の等電点よりもはるかに低かったり、加える
ポリ陽イオン物質の量がフコース硫酸含有硫酸化多糖の
荷電を中和させてしまう量の場合は、沈殿が形成され粘
弾性は低下する。
【0051】タンパク質で架橋したフコース硫酸含有硫
酸化多糖を得るために使用される海藻は特に限定される
ものではなく、ガゴメ昆布、とろろ昆布、ま昆布、カジ
メ、アラメ、ワカメ、モズク、オキナワモズク等フコー
ス硫酸含有硫酸化多糖を含む褐藻類ならどんな種類でも
使用することができる。
【0052】褐藻類も生海藻、乾燥海藻、塩漬海藻等ど
んな形態でも使用できる。
【0053】本発明の、タンパク質で架橋したフコース
硫酸含有硫酸化多糖を抽出する前に、60〜100%程
度のアルコール等で海藻を洗浄すると、海藻に付着した
塩類、着色性物質等を除去できる。本発明の、タンパク
質で架橋したフコース硫酸含有硫酸化多糖を抽出する際
には、水、塩類を含む水、アルコール類を含む水など様
々な溶媒が使用できるが、塩類はフコース硫酸含有硫酸
化多糖とタンパク質の架橋を解離させその粘弾性を下げ
る働きがあるので、塩類は100mM以下が好ましい。
またアルコール類は30%以下が好ましい。
【0054】抽出温度は50℃以下が好ましく、好適に
は5〜30℃が好ましい。抽出時のかくはんはなくても
よいが、抽出液が静止していると、抽出時間が長時間必
要となる。かくはんする際には、上述したようにタンパ
ク質で架橋したフコース硫酸含有硫酸化多糖の粘弾性が
必要以上低下しないようなかくはん速度を選べば良い。
ただし、かくはん速度よりもせん断力の強さの方が粘弾
性に与える影響がはるかに大きいので、低かくはん速度
で非せん断の条件下で抽出するのが好ましい。
【0055】なおかくはんにより低下した粘弾性を回復
させるにはポリ陽イオン物質、例えばゼラチン、コラー
ゲン等を添加すれば良い。
【0056】すなわち低粘弾性硫酸化多糖にポリ陽イオ
ンを添加することにより硫酸化多糖の粘弾性が増強し、
構成成分として、低粘弾性硫酸化多糖とポリ陽イオン物
質を少なくとも含有する組成物が提供され、該組成物は
粘弾性の強い組成物として、化粧料、潤滑剤等の種々の
用途に有用である。
【0057】本発明のポリ陽イオン物質で架橋した硫酸
化多糖は、抽出液をそのまま使用しても良いが、更に精
製して使用しても良い。
【0058】本発明のポリ陽イオン物質で架橋した硫酸
化多糖を有効成分として含有する医薬、例えば本発明の
ポリ陽イオン物質で架橋した硫酸化多糖を有効成分と
し、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば口内
用剤を製造することができる。
【0059】本発明の口内用剤は、例えば、だ液の分泌
が不十分で口腔が乾燥して口の開閉等が不自由なとき口
に含むと症状が極めて改善される。
【0060】また、本発明のポリ陽イオンで架橋した硫
酸化多糖は潤滑剤としても使用することができる。本発
明の潤滑剤は非常に滑らかで極めて良好な潤滑作用を有
し、様々な医療器具あるいは医薬品等を肛門あるいは膣
に挿入する際など極めて良好な潤滑作用を示す。また、
性交時やマッサージの際の潤滑剤としても使用すること
ができる。
【0061】本発明のポリ陽イオン物質で架橋した硫酸
化多糖は化粧料として使用可能な任意の物質と混合して
使用可能である。一般的には、水、アルコール類、油脂
類、脂肪酸類、グリセロール、無機塩類、防腐剤、界面
活性剤、ビタミン類、アミノ酸類、糖類等と混合し、ロ
ーション、乳液、クリーム等として使用できる。
【0062】本発明のポリ陽イオンで架橋した硫酸化多
糖は化粧品として使用するとその粘弾性のため滑らかな
使い心地で使用感が良く、しかも肌に塗布したときはそ
のぬめりは瞬時にして肌に吸着されるという性質をも
つ。使用後のべたつきもなく化粧品として非常に好まし
い性質である。この性質は硫酸化多糖としてフコース硫
酸含有硫酸化多糖を用いた場合、特に上記の好ましい性
質が顕著である。
【0063】本発明の硫酸化糖、本発明の硫酸化多糖は
抗原として使用することができる。抗体の作製は常法に
よりおこなわれるが、例えば本発明の硫酸化糖又は本発
明の硫酸化多糖をアジュバンドとともにウサギ等の動物
に免疫することによって、ポリクローナル抗体を調製す
ることができる。またモノクローナル抗体は抗原を免疫
して得られた抗体産生B細胞とメラノーマ細胞を融合
し、目的の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、こ
の細胞を培養することによって調製することができる。
これらの抗体は本発明の硫酸化糖、本発明の硫酸化多糖
の精製に使用することができる。また海藻中の本発明の
硫酸化多糖の同定に使用することができる。例えば、本
発明の抗体を使用し、海藻抽出液中の本発明の硫酸化多
糖含量を容易に測定でき、高含有抽出液を効率よく調製
することが可能になる。例えばガゴメ昆布、レッソニア
ニグレセンス、マ昆布等の抽出液中には本発明の硫酸
化多糖が高含有されていることが判明し、本発明の硫酸
化多糖の工業的製造を効率よく行うことができる。ま
た、本発明の硫酸化糖、本発明の硫酸化多糖を認識する
抗体は、本発明の硫酸化糖、本発明の硫酸化多糖の生理
機能の解明に有用であり、例えば本発明の硫酸化糖、本
発明の硫酸化多糖の受精阻害作用機作、ウイルス感染阻
害機作、生体内での代謝等の解析に有用である。
【0064】本発明の硫酸化糖は糖鎖工学用物質として
有用であり、特公平5−65108号公報記載の方法に
より2−アミノピリジル化(PA化)を行い、PA化物
を調製すれば、糖鎖工学用物質として極めて有用な物質
を提供することができる。
【0065】更に、本発明の硫酸化糖及び/又は本発明
の硫酸化多糖を有効成分とし、抗ガン剤、がん転移抑制
剤、抗ウイルス剤、受精阻害剤、抗炎症剤、血管内皮肥
厚抑制剤、血栓形成抑制剤、脂血清澄剤、血清コレステ
ロール低下剤等の医薬品を製造することができ、これら
の医薬品の投与を必要とする疾病の治療又は予防に使用
することができる。また本発明の硫酸化多糖含有物も、
これらの医薬品原料として使用できる。なお本発明の硫
酸化糖、本発明の硫酸化多糖、本発明の硫酸化多糖含有
物から選択されるものを含有、希釈及び/又は添加して
なる、上記生理活性を有する食品又は飲料を提供するこ
とができる。また本発明の硫酸化糖、本発明の硫酸化多
糖、本発明の硫酸化多糖含有物から選択されるものを有
効成分とする化粧品を提供することができる。
【0066】
【実施例】以下に本発明を実施例によって更に具体的に
示すが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定される
ものではない。
【0067】実施例1 (1)アルテロモナス sp. SN−1009 (F
ERM BP−5747)を、グルコース 0.25
%、ペプトン 1.0%、酵母エキス 0.05%を含
む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH8.2
からなる培地600mlを分注して殺菌した(120
℃、20分間)2リットルの三角フラスコに接種し、2
5℃で26時間培養して種培養液とした。ペプトン
1.0%、酵母エキス 0.02%、下記実施例2に記
載の硫酸化多糖 0.2%、及び消泡剤(信越化学工業
社製KM70)0.01%を含む人工海水pH8.0か
らなる培地20リットルを30リットル容のジャーファ
メンターに入れて120℃、20分間殺菌した。冷却
後、上記の種培養液600mlを接種し、24℃で24
時間、毎分10リットルの通気量と毎分250回転のか
くはん速度の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠
心分離して菌体及び培養上清を得た。得られた培養上清
を、排除分子量1万のホロファイバーを装着させた限外
ろ過機により濃縮後85%飽和硫安塩析し、生じた沈殿
を遠心分離により集め、10分の1濃度の人工海水を含
む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)に対し
て充分透析し、600mlの本発明の硫酸化多糖に選択
的に作用するエンド型硫酸化多糖分解酵素液を調製し
た。
【0068】(2)乾燥したガゴメ昆布2Kgを直径1
mmのスクリーンを装着させたカッターミル(増幸産業
社製)により粉砕し、得られた昆布のチップを20リッ
トルの80%エタノール中に懸濁し、25℃で3時間か
くはんし、ろ紙でろ過後、残渣を充分洗浄した。得られ
た残渣を、30mlの上記実施例1−(1)で調製した
エンド型硫酸化多糖分解酵素、10%のエタノール、1
00mMの塩化ナトリウム、50mMの塩化カルシウ
ム、及び50mMのイミダゾールを含む20リットルの
緩衝液(pH8.2)に懸濁し、25℃で48時間かく
はんした。この懸濁液を網目の直径32μmのステンレ
ス金網でろ過し、残渣を50mMの塩化カルシウムを含
む10%のエタノールで洗浄した。更にその残渣を10
リットルの50mM塩化カルシウムを含む10%のエタ
ノール中に懸濁し、3時間かくはん後、ステンレス金網
でろ過、洗浄した。更にその残渣を同条件で懸濁後、1
6時間かくはんし、直径32μmのステンレス金網でろ
過、洗浄した。
【0069】こうして得られたろ液及び洗浄液を集め、
排除分子量3000のホロファイバーを装着させた限外
ろ過機により限外ろ過し、ろ過液と非ろ過液に分離し
た。
【0070】このろ過液をロータリーエバポレーターで
約3リットルに濃縮後、遠心分離して上清を得た。得ら
れた上清を排除分子量300の膜を装着させた電気透析
器により脱塩し、この溶液に0.1Mとなるように酢酸
カルシウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離により除去
した。この上清をあらかじめ50mMの酢酸カルシウム
により平衡化させたDEAE−セルロファイン(樹脂量
4リットル)にかけ、50mMの酢酸カルシウム及び5
0mMの塩化ナトリウムで充分洗浄後、50mM〜80
0mMの塩化ナトリウムのグラジエントにより溶出させ
た。この時の分取量は1本当り500mlで行った。分
取した画分をセルロースアセテート膜電気泳動法[アナ
リティカル バイオケミストリー(Analytica
l Biochemistry)、第37巻、第197
〜202頁(1970)]により分析したところ塩化ナ
トリウム濃度が約0.4Mで溶出される硫酸化糖(フラ
クションナンバー63付近)が均一であることが判明し
た。また、約0.6Mの濃度で溶出される硫酸化糖(フ
ラクションナンバー67付近)も電気泳動的にほぼ均一
であった。
【0071】そこで、まずフラクションナンバー63の
液を150mlに濃縮後、濃度が4Mとなるように塩化
ナトリウムを添加し、あらかじめ4Mの塩化ナトリウム
により平衡化したPhenyl−セルロファイン(樹脂
量200ml)にかけ、4Mの塩化ナトリウムにより充
分洗浄した。非吸着性の硫酸化糖画分を集め、排除分子
量300の膜を装着させた電気透析器により脱塩し、脱
塩液505mlを得た。
【0072】得られた脱塩液のうち40mlを10%の
エタノールを含む0.2Mの塩化ナトリウムによって平
衡化させたセルロファインGCL−90のカラム(4.
1cm×87cm)にかけて、ゲルろ過を行った。分取
は1フラクション当り9.2mlで行った。
【0073】全フラクションに対して総糖量の分析をフ
ェノール硫酸法〔アナリティカルケミストリー(Analyt
ical Chemistry)、第28巻、第350頁(195
6)〕により行った。
【0074】この結果、硫酸化糖は1つのピークを形成
したので、そのピークの中央部分、フラクションナンバ
ー63〜70を集め、排除分子量300の膜を装着させ
た電気透析器により脱塩後、凍結乾燥し、112mgの
本発明の硫酸化糖の乾燥品を得た。
【0075】乾燥品の一部を取り糖組成分析及び質量分
析を行った。また、乾燥品のうちの10mgを常法によ
り重水置換し、NMR分析に供した。
【0076】糖組成分析の結果、本硫酸化糖はフコース
のみからなる硫酸化糖であることが判明した。
【0077】API−III 質量分析機(パーキンエルマ
ー・サイエクス社)を用いた、硫酸化糖の質量分析の結
果を図1に示し、以下に解析結果を示す。すなわち図1
は硫酸化糖の質量分析の結果を示す図であり、縦軸は相
対強度(%)を、横軸はm/z値を示す。
【0078】分子量は、全硫酸基がナトリウム塩になっ
ている状態で2264±1という結果が得られた。つま
り、構成糖がフコースだけの硫酸化糖であることから、
フコースが7分子、硫酸基が12分子結合したもので、
その硫酸基がすべてナトリウム塩になっているもので、
理論的分子量は2265であることが判明した。
【0079】つまり、本物質をMとすると、図1中の主
なシグナルは下記のように帰属することができる。 m/z 1109.05--- 〔M−2Na2−
(理論値 1109.5) 731.45--- 〔M−3Na3− (理論値
732) 542.75--- 〔M−4Na4− (理論値
543.25) 430.05--- 〔M−5Na5− (理論値
430) この結果、本物質はフコース7分子、硫酸基12分子の
オリゴ糖である。
【0080】次に、フコースの結合様式、及び硫酸基の
結合位置を決定するために、JNM−α500 型核磁気共
鳴装置(日本電子社製)を用い、NMR分析を行った。
構成糖の結合様式はH−検出異種核検出法であるH
MBC法を用いて行った。 H−NMRの帰属にはDQ
F−COSY法及びHOHAHA法を、13C−NMR
の帰属にはHSQC法を用いた。
【0081】NMRの帰属の結果を以下に示し、本発明
の硫酸化糖のH−NMRスペクトルを図2に、13
C−NMRスペクトルを図3にそれぞれ示した。但し、
H−NMRでの化学シフト値はジオキサンの化学シ
フト値を3.53ppmに、 13C−NMRではジオキ
サンの化学シフト値を66.5ppmとして表した。測
定は両方共に60℃で行った。すなわち図2は本発明の
硫酸化糖のH−NMRスペクトルを示す図であり、
図3は本発明の硫酸化糖の13C−NMRスペクトルを
示す図である。図2、図3において縦軸はシグナルの強
度を、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。 H−NMR(D O) δ5.30(1H,d,J=3.1Hz,A−1−
H)、5.23(1H,d,J=3.4Hz,B−1−
H)、5.20(1H,d,J=3.4Hz,E−1−
H)、5.19(1H,d,J=3.7Hz,F−1−
H)、5.18(1H,d,J=2.8Hz,C−1−
H)、5.16(1H,br−s,D−1−H)、5.
09(1H,d,J=4.3Hz,G−1−H)、4.
72(1H,d,J=2.4Hz,B−4−H)、4.
67(1H,t,J=2.3Hz,A−4−H)、4.
65(1H,m,E−4−H)、4.64(1H,m,
D−4−H)、4.62(1H,m,C−4−H)、
4.49(1H,d,J=3.1Hz,F−4−H)、
4.37(1H,m,E−2−H)、4.36(1H,
m,G−3−H)、4.35(1H,m,C−2−
H)、4.33(1H,m,B−2−H)、4.32
(1H,m,C−3−H)、4.30(1H,m,A−
2−H)、4.27(1H,m,F−2−H)、4.2
7(1H,m,F−5−H)、4.25(1H,m,D
−5−H)、4.24(1H,m,C−5−H)、4.
21(1H,m,E−5−H)、4.18(1H,m,
B−3−H)、4.18(1H,m,F−3−H)、
4.17(1H,m,A−3−H)、4.17(1H,
m,E−3−H)、4.16(1H,m,D−3−
H)、4.14(1H,m,A−5−H)、4.10
(1H,m,B−5−H)、3.98(1H,m,D−
2−H)、3.97(1H,m,G−4−H)、3.9
6(1H,m,G−5−H)、3.78(1H,d−
d,J=4.3,10.4Hz,G−2−H)、1.3
4(3H,d,J=7.0Hz,D−5−CH のH
)、1.15(3H,d,J=6.7Hz,E−5
−CH のH )、1.12(3H,d,J=6.7
Hz,A−5−CH のH )、1.11(3H,
d,J=6.7Hz,C−5−CH のH )、1.
08(3H,d,J=6.7Hz,B−5−CH
)、1.06(3H,d,J=6.4Hz,F−
5−CH のH )、1.04(3H,d,J=6.
7Hz,G−5−CH のH13 C−NMR(D O) δ99.2(G−1−C)、98.9(C−1−C)、
98.3(B−1−C)、97.1(E−1−C)、9
4.6(F−1−C)、89.3(A−1−C)、8
9.3(D−1−C)、81.3(F−4−C)、8
0.6(B−4−C)、78.6(A−4−C)、7
7.9(G−3−C)、77.5(C−4−C)、7
7.4(E−4−C)、75.9(B−3−C)、7
5.4(A−2−C)、74.8(F−2−C)、7
4.5(B−2−C)、74.2(D−3−C)、7
3.9(A−3−C)、73.9(D−2−C)、7
3.6(C−2−C)、73.0(D−4−C)、7
3.0(E−2−C)、70.9(C−3−C)、7
0.6(D−5−C)、70.1(G−4−C)、6
9.9(E−3−C)、68.0(B−5−C)、6
7.5(A−5−C)、67.5(E−5−C)、6
6.9(C−5−C)、66.7(G−5−C)、6
6.5(F−3−C)、66.3(F−5−C)、6
5.6(G−2−C)、16.0(C−5−CH
C)、15.9(B−5−CH のC)、15.8
(E−5−CHのC)、15.8(F−5−CH
のC)、15.4(G−5−CH のC)、15.3
(A−5−CH のC)、13.1(D−5−CH
のC)
【0082】なお、NMRのピークの帰属の番号は下記
式〔II〕の通りである。
【化2】
【0083】以上の結果より、本物質は下記式 〔III〕
で表される硫酸化糖であることが判明した。
【化3】
【0084】(3)実施例1−(2)に記載した、DE
AE−セルロファインのフラクションナンバー67に関
しても63と全く同様に精製して凍結乾燥品を得た。
【0085】この標品は、HPLCによる分析の結果6
3よりも分子量の大きな硫酸化糖であることが判明した
が、NMRの分析結果によると63とほぼ同じスペクト
ルが得られた。
【0086】図4にフラクションナンバー67の
−NMRスペクトルを示した。但し、溶媒は重水を用
い、H−NMRでの化学シフト値はジオキサンの化
学シフト値を3.53ppmとして表した。測定は60
℃で行った。すなわち図4はフラクションナンバー67
H−NMRスペクトルを示す図であり、縦軸はシ
グナルの強度を、横軸は化学シフト値(ppm)を示
す。
【0087】この結果、フラクションナンバー67は6
3が数分子結合した構造を持つことが強く示唆された。
そこで、フラクションナンバー67を実施例1−(1)
記載のエンド型硫酸化多糖分解酵素により分解して分解
物をHPLCにより分析したところ、反応生成物の多く
が実施例1−(2)に記載したDEAE−セルロファイ
ンのフラクションナンバー63から得た硫酸化糖と同じ
位置に溶出されてきた。
【0088】なお、HPLCの分析条件は下記の通りで
ある。 カラム Shodex SB802.5 カラム温度 25℃ 溶液 5mMのアジ化ナトリウムを含む50mMの塩
化ナトリウム 検出 示差屈折率検出器 Shodex RI−71
【0089】上記フラクションナンバー67、63につ
きプルラン(昭和電工社製)を標準物質としたゲルろ過
法により分子量を測定したところ、63はプルラン換算
で分子量約8500、フラクションナンバー67は分子
量約26000であり、フラクションナンバー67はフ
ラクションナンバー63の硫酸化糖の3量体であること
が判明した。
【0090】また7糖残基の繰り返しの結合位置はフラ
クションナンバー67のH−NMRスペクトルを詳
細に検討することにより、式〔II〕中のFのフコースの
3位にα−(1→3)結合でつながっていることが明ら
かとなった。
【0091】また上記の方法に準じ、本発明の硫酸化多
糖の分解物中より、 〔III〕で表される硫酸化糖の5量
体、すなわち一般式〔I〕においてn=5で表される硫
酸化糖を得た。
【0092】実施例2 (1)乾燥したガゴメ昆布2Kgを直径1mmのスクリ
ーンを装着させたカッターミル(増幸産業社製)により
粉砕し、得られた昆布のチップを20リットルの80%
エタノール中に懸濁し、25℃で3時間かくはんし、ろ
紙でろ過後、残渣を充分洗浄した。得られた残渣を、9
5℃に加温した40リットルの50mMの塩化ナトリウ
ムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5に
懸濁し、時々かくはんしながら95℃で2時間処理し、
硫酸化多糖を抽出した。
【0093】抽出液中の懸濁物を、ろ過し、ろ液を調製
した後、ろ過残渣を3.5リットルの100mM塩化ナ
トリウムにより洗浄し、更にろ液を得た。
【0094】両ろ液を合わせた後、30℃まで温度を下
げ、3000Uのアルギン酸リアーゼ(ナガセ生化学工
業社製)を添加後、エタノールを4リットル加え25℃
で24時間かくはんした。次に遠心分離を行い、得られ
た上清を排除分子量10万のホロファイバーを備えた限
外ろ過器により4リットルに濃縮し、更に、10%のエ
タノールを含む100mMの塩化ナトリウムにより、着
色性物質がろ過されなくなるまで限外ろ過を続けた。
【0095】非ろ過液中に生じた沈殿は遠心分離により
除去し、この上清を5℃まで温度を下げ、0.5N塩酸
によりpHを2.0とした後、生じたタンパク質等の沈
殿を遠心分離により除去し、得られた上清を速やかに1
N水酸化ナトリウムによりpHを8.0とした。
【0096】次に、排除分子量10万のホロファイバー
を装着させた限外ろ過器により限外ろ過を行い、20m
M塩化ナトリウムpH8.0により完全に溶媒置換後、
再度pHを8.0として遠心分離後、凍結乾燥を行い、
約95gの硫酸化多糖を調製した。
【0097】(2)実施例2−(1)記載の硫酸化多糖
の乾燥標品10gをとり、100mMの塩化ナトリウ
ム、50mMの塩化カルシウム、50mMのイミダゾー
ルを含む緩衝液pH8.0に溶解し、20mlの実施例
1−(1)に記載のエンド型硫酸化多糖分解酵素を添加
して25℃で24時間反応後、反応液を排除分子量35
00の透析チューブで充分透析し、透析液(低分子物)
を濃縮後、排除分子量300の膜を装着した電気透析器
により脱塩し、このうちの一部をセルロファインGCL
−90(4.1×87cm)によりゲルろ過した。分取
量は1本当り10mlで行った。
【0098】このフラクションナンバー63番付近をセ
ルロースアセテート膜電気泳動及びHPLCにより分析
した結果、実施例1−(2)に記載の式 〔III〕で表さ
れる構造を持った硫酸化糖と同じ挙動を示すことが判明
し、硫酸化多糖から式〔III〕で表される硫酸化糖を調
製した。また同様にして、 〔III〕で表される硫酸化糖
の3量体、5量体、すなわち一般式〔I〕においてn=
3、5でそれぞれ表される硫酸化糖を得た。
【0099】実施例3 実施例2−(1)記載の硫酸化多糖を1リットル当り5
グラムとなるように、100mMの塩化ナトリウム、5
0mMの塩化カルシウム、及び50mMのイミダゾール
を含む緩衝液pH8.0に溶解した液を10リットル調
製した。この硫酸化多糖溶液2リットルに30mlの実
施例1−(1)記載のエンド型硫酸化多糖分解酵素を添
加して、排除分子量3000の限外ろ過用ホロファイバ
ーを装着させた限外ろ過機にかけ、25℃でろ過速度を
1時間当り200mlとして運転した。運転中酵素反応
溶液には、ろ過された液量と同量の上記硫酸化多糖溶液
を添加した。硫酸化多糖溶液が添加された後には、上記
の緩衝液のみを同様に添加した。
【0100】以下実施例1−(2)と同様に、ろ過液を
濃縮後遠心分離して上清を得、次いでこの上清を脱塩
後、酢酸カルシウムにより沈殿を形成させ、遠心分離に
より上清を得た。得られた上清について実施例1−
(2)と同様にDEAE−セルロファインにより精製
し、式 〔III〕で表される硫酸化糖を調製した。
【0101】実施例4 ガゴメ昆布500gを細断し、10リットルの80%エ
タノールで洗浄後、50リットルの1mM塩化カリウム
を含有する10%エタノール中にて、25℃で3日間攪
拌し、網目の直径32μmのステンレス金網でろ過し
て、本発明の硫酸化多糖の抽出物を得た。
【0102】該抽出物を100mlとり、排除分子量1
2000の透析用チューブに入れて5リットルの水に対
して2回透析を行った。非透析画分を凍結乾燥し、本発
明の硫酸化多糖を得、該硫酸化多糖のH−NMRス
ペクトル(図5)、赤外吸収(IR)スペクトル(図
6)を測定した。すなわち図5は本発明の硫酸化多糖の
H−NMRスペクトルを示す図であり、縦軸はシグナ
ルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。但
し、溶媒は重水を用い、H−NMRでの化学シフト
値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表し
た。また図6は本発明の硫酸化多糖のKBr法によるI
Rスペクトルを示す図であり、縦軸は透過率(%)、横
軸は波数(cm−1)を示す。なおIRスペクトルはF
TIR−8000PC赤外分光光度計(島津製作所製)
を用い測定した。
【0103】図5に示されるように本発明の硫酸化多糖
H−NMRスペクトルは、図4で示される硫酸化
糖のH−NMRスペクトルとほぼ同一であり、本発
明の硫酸化多糖は一般式〔I〕で表される硫酸化糖を構
成糖の必須成分とする硫酸化多糖である。
【0104】本発明の硫酸化多糖の抽出物に、4Mの塩
化ナトリウムを添加し強かくはん下混合し、終濃度を1
M塩化ナトリウム溶液とし、これをHPLCにより分析
し、本発明の硫酸化多糖の分子量を測定した。本発明の
硫酸化多糖はプルラン標準物質の分子量換算で平均分子
量約1300万であった。HPLCの条件は下記の通り
である。 装 置:L−6200型HPLC(日立製作所製) カラム:Shodex SB−806HQ(8×300
mm)(昭和電工社製) 溶離液:50mM塩化ナトリウム 検 出:示差屈折率検出器Shodex RI−71
(昭和電工社製) カラム温度:25℃
【0105】また本発明の硫酸化多糖溶液に実施例1―
(1)記載のエンド型硫酸化多糖分解酵素を作用させた
ところ一般式〔I〕で表される硫酸化糖が検出された。
【0106】実施例5 ガゴメ昆布500gを細断し、10リットルの80%エ
タノールで洗浄後、50リットルの1mM塩化カリウム
を含有する10%エタノール中にて内径40cmの容器
で25℃で2日間、1分当り200回転の速度でかくは
んし、本発明の海藻のタンパク質で架橋したフコース硫
酸含有硫酸化多糖を抽出した。抽出物は強い粘弾性を呈
し、かくはん軸を伝って抽出液が巻き上げられるワイセ
ンベルク効果を呈した。
【0107】通常ガゴメ昆布のフコース硫酸含有硫酸化
多糖含量は最大でも乾燥海藻の5%程度であるから、本
抽出液のフコース硫酸含有硫酸化多糖濃度は、最大でも
0.05%である。
【0108】しかし、市販のフコース硫酸含有硫酸化多
糖(フコイダン:シグマ社製)の水溶液は、0.05%
はもとより、2%にまで濃度を上げても全く粘弾性を呈
さず、本発明の海藻のタンパク質で架橋したフコース硫
酸含有硫酸化多糖とは異なる性質であった。
【0109】本抽出液中のタンパク質量を、プロテイン
アッセイ(バイオラッド社製)により測定したところ
7.5μg/mlであった。
【0110】本抽出液にアクチナーゼE(タンパク質分
解酵素、科研製薬社製)を0.1mg/mlの濃度で作
用させるとその粘弾性が極度に低下した。
【0111】また、本抽出液5mlに実施例1−(1)
に示したアルテロモナス sp.SN−1009 (F
ERM BP―5747)の生産するエンド型フコース
硫酸含有多糖分解酵素含有液を10μl添加し作用させ
ると、その粘弾性が完全に消失した。
【0112】以上の結果から、褐藻類の抽出物の粘弾性
を担っているのはタンパク質で架橋されたフコース硫酸
含有硫酸化多糖であること及び褐藻類のフコース硫酸含
有硫酸化多糖を特殊な条件で抽出すると、本発明のタン
パク質で架橋したフコース硫酸含有硫酸化多糖が効率良
く抽出できることが判明した。
【0113】得られた抽出液を皮膚に塗布すると、最初
強いぬめりがあるが、軽く擦り込めばぬめりが肌に吸着
され、べたつきもなく、肌はしっとりとし、肌を整える
化粧品として極めて有効なものであることも判明した。
【0114】実施例6 (1)ガゴメ昆布50gを細断し、2リットルの80%
エタノールで洗浄後、5リットルの1mM塩化カリウム
及び0.075%のエチルパラベンを含む水溶液中にて
内径20cmの容器で25℃で2日間、1分当り200
回転の速度でかくはんし、本発明のタンパク質で架橋し
たフコース硫酸含有硫酸化多糖を抽出した。
【0115】抽出物は強い粘弾性を呈し、かくはん軸を
伝って抽出液が巻き上げられるワイセンベルク効果を呈
した。この抽出液の性質は実施例5の抽出液と同等であ
った。本抽出液はエタノールに過敏な肌を持つ人の化粧
品として有効である。
【0116】(2)乾燥したガゴメ昆布2Kgを直径1
mmのスクリーンを装着させたカッターミル(増幸産業
製)により粉砕し、得られた昆布のチップを20リット
ルの80%エタノール中に懸濁し、25℃で3時間かく
はんし、ろ紙でろ過後、残渣を充分洗浄した。得られた
残渣を、95℃に加温した40リットルの50mMの塩
化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液p
H6.5に懸濁し、時々かくはんしながら95℃で2時
間処理し、フコース硫酸含有硫酸化多糖を抽出した。
【0117】抽出液中の懸濁物を、ろ過し、ろ液を調製
した後、ろ過残渣を3.5リットルの100mM塩化ナ
トリウムにより洗浄し、更にろ液を得た。こうして得ら
れた抽出液を25℃まで冷却した。本抽出液は実施例5
及び実施例6−(1)にそれぞれ記載の抽出液より多く
のフコース硫酸含有硫酸化多糖を含んでいるが粘弾性を
呈さなかった。また、本抽出液は排除分子量10万のホ
ロファイバーを装着させた限外ろ過機により充分脱塩後
にも強い粘弾性を呈することはなかった。しかしながら
硫酸化多糖特有の粘性は呈した。すなわち、抽出温度が
高すぎると本発明のタンパク質で架橋したフコース硫酸
含有硫酸化多糖は調製できないことが判明した。
【0118】(3)ガゴメ昆布500gを細断し、10
リットルの80%エタノールで洗浄後、50リットルの
1mM塩化カリウムを含有する10%エタノール中にて
内径40cmの容器で25℃で2日間、1分間当り80
0回転の速度でかくはんし、フコース硫酸含有硫酸化多
糖を抽出した。抽出物の粘弾性は弱く、かくはん時もワ
イセンベルク効果を呈さなかった。この抽出液は、肌に
塗布時、フコース硫酸含有硫酸化多糖特有のしっとりと
させる効果はあるものの、本発明のタンパク質で架橋し
たフコース硫酸含有硫酸化多糖のもつ特有のぬめりがほ
とんどなく、使用感は全く別物であった。しかしなが
ら、含有タンパク質濃度は7.5μg/mlであり、実
施例5の抽出液と同じであった。この結果、かくはん速
度が速すぎると、すなわち、かくはん時にせん断力が強
く加わるとタンパク質とフコース硫酸含有硫酸化多糖の
架橋が破壊されることが判明した。
【0119】(4)実施例6−(1)で得られた抽出液
を内径20cmの容器で1分間当り600回転のかくは
ん速度で室温で18時間かくはんを行ったところ、相対
粘弾性値が2.0から1.2に低下した。粘弾性が低く
なったフコース硫酸含有硫酸化多糖溶液に様々な量の1
%のゼラチン水溶液を添加したところ、粘弾性が回復し
た。粘弾性とゼラチンの終濃度の関係を下記表1に示
す。
【0120】下記表1において粘弾性は相対値で示して
おり、被検液を内径2mmのシリコンチューブから重力
により垂直に流し、出口の下方1〜5cm程度のところ
でガラス棒により流れ落ちる被検液を水平方向に押した
とき、流れが切断されることなく押されうる最大距離
(cm)をもって相対粘弾性値とした。なお、被検液の
液面から被検液の出口までの距離は20〜21cmであ
り、水の相対粘弾性値は0であった。
【0121】
【表1】
【0122】上記の結果から、本発明の海藻のタンパク
質で架橋したフコース硫酸含有硫酸化多糖はせん断力の
強いかくはんによりその粘弾性が低下するが、適当なp
Hや塩濃度の条件下で適当量のゼラチンを添加すること
によってその粘弾性を回復することができることが判明
し、粘弾物を得ることができた。なお、粘弾物は透明な
ゼリー様の外観を有するゾル状の性状のものである。
【0123】また、ゼラチンの添加量が多すぎると粘弾
性は消失するので、フコース硫酸含有硫酸化多糖の量に
応じて増減する必要があることも判明した。
【0124】実施例7 だ液の分泌が不十分なため口腔の乾燥が甚だしく、口の
開閉にも不自由する80歳の女性において、これまで何
を使用しても症状の改善が見られなかったが、実施例5
の抽出液を口腔に使用したところ、口腔の乾燥、口唇の
ひび割れ等が改善され、口の開閉の不自由さが著しく改
善された。また、3カ月以上の連続使用を行ってもその
効果は続いた。
【0125】実施例8 (1)ガゴメ昆布500gを細断し、10リットルの8
0%エタノールで洗浄後、50リットルの1mM塩化カ
リウムを含有する10%エタノール中にて内径40cm
の容器で25℃で2日間、1分当り120回転の速度で
かくはんし、本発明の海藻のタンパク質で架橋したフコ
ース硫酸含有硫酸化多糖を抽出した。抽出物は強い粘弾
性を呈し、かくはん軸を伝って抽出液が巻き上げられる
ワイセンベルク効果を呈した。抽出物を網目32μmの
ステンレス金網でろ過し、高粘弾性フコース硫酸含有硫
酸化多糖溶液を調製した。
【0126】該フコース硫酸含有硫酸化多糖溶液46リ
ットルに、1gのパームオイル(花王社製:化粧品用)
を1リットルのエタノールに溶解したパームオイル溶液
1リットルをかくはんしながら添加し、更に1リットル
のグリセロールを添加し、化粧水を調製した。本化粧水
は高粘弾性フコース硫酸含有硫酸化多糖の保湿効果とパ
ームオイルの乾燥防止効果を合わせ持ち、界面活性剤を
添加することなくパームオイルが均一に効率よく分散さ
れ、油分のべたつきがなく、のびの良い使用感の良い化
粧水となった。またパームオイルの代わりにヤシ油(花
王社製:化粧品用)を使用し、同様に化粧水を製造し
た。この化粧水も使用感の良い、化粧水であった。
【0127】(2)実施例6−(3)で調製した抽出液
に、終濃度が0.02%となるようにゼラチン及び香料
を添加しゼラチン使用の化粧水を得た。また同様にコラ
ーゲンを添加しコラーゲン使用の化粧水を得た。それぞ
れの化粧料は高粘弾性のフコース硫酸含有硫酸化多糖を
含有し、添加タンパク質との相乗作用により、保湿性に
優れたのびの良い化粧水となった。
【0128】以上、上記の化粧水を使用するとその粘弾
性のため滑らかな使い心地で使用感が良く、しかも肌に
適量を塗布したときはそのぬめりは瞬時にして肌に吸着
されるという性質を有した。また使用後のべたつきもな
く化粧品として非常に好ましい性質であった。
【0129】実施例9 実施例4で調製した本発明の硫酸化多糖の抽出物を、化
粧水として使用した。この化粧水は滑らかな使い心地で
使用感が良く、しかも肌に塗布したとき、そのぬめりは
瞬時にして肌に吸着されるという性質を有した。また使
用後のべたつきもなく化粧品として非常に好ましい性質
であった。また、本化粧水を使用した場合、手の甲や顔
面のしみが薄くなるという効果を示した。
【0130】
【発明の効果】本発明により医薬品、あるいは糖鎖工学
研究用試薬として有用な硫酸化糖若しくは硫酸化多糖又
はそれらの塩が提供された。この硫酸化糖若しくは硫酸
化多糖又はそれらの塩はその保水性等により化粧料の素
材として極めて有用である。
【0131】また本発明により、高い粘弾性を有する硫
酸化多糖及びその製造方法が提供される。また該高粘弾
性硫酸化多糖を有効成分として含有する医薬、化粧料も
提供される。本発明の医薬は例えば口内用剤として有用
である。また本発明の高粘弾性硫酸化多糖は保水性及び
潤滑性が優れているだけでなく、その疎水性のため肌の
角質層への親和性が高く肌へのなじみも極めてよく、本
発明の硫酸化多糖、特に高粘弾性のフコース硫酸含有多
糖は化粧料の素材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】硫酸化糖の質量分析の結果を示す図である。
【図2】硫酸化糖のH−NMRスペクトルを示す図
である。
【図3】硫酸化糖の13C−NMRスペクトルを示す図
である。
【図4】フラクションナンバー67のH−NMRス
ペクトルを示す図である。
【図5】本発明の硫酸化多糖のH−NMRスペクト
ルを示す図である。
【図6】本発明の硫酸化多糖のIRスペクトルを示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 15/00 A61P 15/00 (72)発明者 片山 薫 青森県弘前市大字在府町82番地4 寳酒造 株式会社バイオ弘前研究所内 (72)発明者 嶋中 一夫 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 猪飼 勝重 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多
    糖。
  2. 【請求項2】 ポリ陽イオン物質がタンパク質である請
    求項1記載の硫酸化多糖。
  3. 【請求項3】 タンパク質が藻類由来タンパク質及び/
    又は藻類由来タンパク質以外のタンパク質である請求項
    2記載の硫酸化多糖。
  4. 【請求項4】 タンパク質がコラーゲン及び/又はゼラ
    チンである請求項3記載の硫酸化多糖。
  5. 【請求項5】 硫酸化多糖が下記一般式〔I〕で表され
    る硫酸化糖を構成糖の必須成分とすることを特徴とする
    請求項1〜4いずれか記載の硫酸化多糖。 【化1】 (式中、RはOH又はOSOH、nは1〜5の整数で
    ある)
  6. 【請求項6】 硫酸化多糖が低粘弾性硫酸化多糖である
    ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の硫酸化多
    糖。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6記載の硫酸化多糖を有効成
    分として含有することを特徴とする医薬。
  8. 【請求項8】 医薬が口内用剤である請求項7記載の医
    薬。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6記載の硫酸化多糖を有効成
    分として含有することを特徴とする潤滑剤。
  10. 【請求項10】 請求項1〜6記載の硫酸化多糖を有効
    成分として含有することを特徴とする化粧料。
  11. 【請求項11】 藻類からポリ陽イオン物質と硫酸化多
    糖の架橋の非破壊条件下で抽出する工程を包含すること
    を特徴とするポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多糖
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 硫酸化多糖溶液に、溶液のpHよりも
    等電点の高いポリ陽イオン物質を添加することを特徴と
    するポリ陽イオン物質で架橋された硫酸化多糖の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 硫酸化多糖にポリ陽イオン物質を添加
    することを特徴とする硫酸化多糖の粘弾性の増強方法。
  14. 【請求項14】 少なくとも低粘弾性硫酸化多糖とポリ
    陽イオン物質を含有する組成物。
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