JP2001259032A - 注射器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】外筒の内壁に対して優れた密着性が得られるガ
スケットを備え、全長が短縮された注射器を提供する。 【解決手段】ガスケット６はプランジャー５の先端部に
備えられた台座１０に接合され、台座１０の外周側でプ
ランジャー５の軸方向に屈曲する屈曲部１４を備える。
ガスケット６は注射針１方向に摺動するときに屈曲部１
４がプランジャー５の先端部側に屈曲可能な間隔を存し
て台座１０に接合されている。ガスケット６は、ショア
（Ａ）硬度２０〜７０の合成樹脂からなり、台座１０の
外周側に凹溝１３を備え、その外周側を屈曲部１４とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂製の注射
器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば使い捨て可能（ディスポー
ザブル）な注射器として、図６示のような合成樹脂製の
注射器３１が知られている。前記注射器３１は、注射針
２が装着されるルアーテーパー部３を備える合成樹脂製
外筒４と、該外筒４の内壁４ａに密着して摺動するガス
ケット３２を先端部に備える合成樹脂製プランジャー５
とからなる。プランジャー５は、ポリプロピレン、ポリ
スチレン、ポリカーボネート等からなり、外周側に張り
出す張出部３３を備える王冠状の突起部３４が先端部に
形成されている。

【０００３】前記ガスケット３２は突起部３４と相似す
る形状に形成されており、突起部３４に嵌着され、張出
部３３に対応する部分を摺動部３５として、外筒４の内
壁４ａに密着するように、弾性を備える樹脂により形成
されている。前記注射器では、薬液を吸入するときには
注射器内部が陰圧となりガスケット３２がプランジャー
５から脱落することが懸念されるが、ガスケット３２は
張出部３３に係合することにより、前記陰圧に抗して脱
落を防止できる。

【０００４】しかしながら、図６示の従来の注射器３１
では、突起部３４にガスケット３２の脱落を防止する構
成を設けるために、注射器３１の全長が長くなるとの不
都合がある。また、前記従来の注射器３１は、前述のよ
うにプランジャー５の突起部３４に異なる材料からなる
ガスケット３２が嵌着される構成であるため、ガスケッ
ト３２とプランジャー５とをそれぞれ別に形成し、後工
程で組合さなければならないとの不都合がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる不都
合を解消して、外筒の内壁に対して優れた密着性が得ら
れるガスケットを備えると共に、全長が短縮された注射
器を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明の注射器は、注射針が装着される外筒と、
該外筒の内壁に密着して摺動するガスケットを先端部に
備えるプランジャーとからなる注射器において、該ガス
ケットは該プランジャーの先端部に備えられた該先端部
より小径の台座に接合され、該外筒の内壁に密着して摺
動するときに該台座の外周側で該プランジャーの軸方向
に屈曲する屈曲部を備えると共に、該注射針方向に摺動
するときに該屈曲部が該プランジャーの先端部側に屈曲
可能な間隔を存して該台座に接合されていることを特徴
とする。

【０００７】本発明の注射器によれば、前記ガスケット
は前記プランジャーの先端部に設けられた前記台座に接
合されていればよく、前記プランジャーの先端部に係合
する構成とする必要が無いので、全長を短縮することが
できる。

【０００８】本発明の注射器によれば、前記ガスケット
は前記屈曲部で前記外筒の内壁に密着しており、前記プ
ランジャーを前記外筒の内壁に沿って移動させると、該
屈曲部が該プランジャーの軸方向に屈曲する。即ち、薬
液を吸入するときには、注射器内部が陰圧となるため
に、前記屈曲部は前記プランジャーと反対側に屈曲す
る。また、薬液を注入するときには、押圧により前記屈
曲部はプランジャー側に屈曲する。

【０００９】このとき、前記ガスケットは前記プランジ
ャーの先端部に設けられている該先端部より小径の台座
に、前記屈曲部が該プランジャーの先端部側に屈曲可能
な間隔を存して接合されている。そこで、前記屈曲部は
該台座の外周側で、プランジャーの先端部側に入り込む
形で屈曲することができる。

【００１０】この結果、前記ガスケットは、通常とは異
なる部分で前記外筒の内壁に密着するようになり、クリ
ープ変形の影響を受けることなく、優れた密着性を得る
ことができる。

【００１１】前記ガスケットは、前記屈曲部による前記
外筒の内壁に対する密着性を確保し、前記屈曲部が薬液
吸引時の前記陰圧または薬液注入時の押圧に敏感に対応
するために、ショア（Ａ）硬度２０〜７０の合成樹脂か
らなることが好ましい。ショア（Ａ）硬度が２０未満で
は、クリープ変形を受けやすく、前記外筒の内壁に対し
て十分な密着性が得られないことがある。また、ショア
（Ａ）硬度が７０を超えると、前記屈曲部の柔軟性が低
減し、薬液吸引時の前記陰圧または薬液注入時の押圧に
対応して屈曲することが難しくなる。

【００１２】また、本発明の注射器では、前記ガスケッ
トは、前記台座の外周側に環状の凹溝を設け、該凹溝の
外周側を前記屈曲部とすることにより、該屈曲部の屈曲
を容易にすることができる。

【００１３】

【発明の実施の形態】次に、添付の図面を参照しながら
本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図
１は本実施形態の注射器の構成例を示す説明的断面図で
あり、図２は図１示のガスケットを拡大して示す断面
図、図３は図１示の注射器の作動説明図であり、図４は
本実施形態の注射器の他の構成例を示す説明的断面図で
ある。また、図５は本実施形態の注射器の製造方法の一
例を示す説明的断面図である。

【００１４】図１を参照して、本実施形態の注射器１
は、注射針２を装着するルアーテーパー部３を備える合
成樹脂製外筒４と、合成樹脂製プランジャー５とからな
り、プランジャー５の先端部５ａには、外筒４の内壁４
ａに密着して摺動するガスケット６が備えられている。

【００１５】プランジャー５は、例えば、ポリスチレ
ン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ
塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブ
タジエン−スチレン共重合体等の合成樹脂から形成され
ている。プランジャー５は、板状部材７ａ，７ｂが十文
字に組み合わされた形状となっており、後端部に指かけ
となる円板８、先端部に円板状フランジ９（図３参照）
を備え、フランジ９にはガスケット６が接合される台座
１０を備えられている。

【００１６】ガスケット６は、図２に拡大して示すよう
に、側方に外方に突出して外筒４の内壁４ａに密着する
曲面１１を備える略円盤状体であり、プランジャー５側
に台座１０に嵌合される穴部１２を備え、プランジャー
５と反対側に、台座１０より大径の環状溝部１３を備
え、環状溝部１３の外周側が屈曲部１４となっている。

【００１７】屈曲部１４は、ガスケット６が外筒４の内
壁４ａに沿って摺動するときに、環状溝部１３の底部１
３ａを支点としてプランジャー５の軸方向に屈曲自在と
なっており、環状溝部１３の底部１３ａと曲面１１のピ
ークＰとの距離Ｒ₁ が曲面１１の曲率半径Ｒ₂ よりも小
さくなるように形成されている。

【００１８】次に、図３を参照して、ガスケット６の作
動について説明する。

【００１９】まず、プランジャー５を矢示方向に引張し
て注射器１により薬液を外筒４内に吸引するときには外
筒４内が陰圧となるので、ガスケット６は図３（ａ）示
のように屈曲部１４が環状溝１３側に屈曲する。この結
果、ガスケット６は曲面１１のピークＰよりプランジャ
ー５側で外筒４の内壁４ａに密着する。

【００２０】次に、プランジャー５を矢示方向に押圧し
て、注射器１により外筒４内の薬液を注入するときに
は、ガスケット６に陽圧がかかるので、図３（ｂ）示の
ように屈曲部１４がプランジャー５側に屈曲する。この
とき、台座１０はフランジ９よりも小径であり、ガスケ
ット６はフランジ９との間に間隔を存して台座１０に接
合されているので、屈曲部１４は台座１０の外周側に入
り込むように屈曲することができる。この結果、ガスケ
ット６は曲面１１のピークＰよりプランジャー５の反対
側で外筒４の内壁４ａに密着する。

【００２１】ガスケット６は、通常の状態では曲面１１
のピークＰで外筒４の内壁４ａに密着しているが、外筒
４の内壁４ａに沿って摺動するときには上述のように、
ピークＰと異なる位置で外筒４の内壁４ａに密着する。
従って、ガスケット６がクリープ変形を生じていたとし
ても、該クリープ変形に関わり無く、外筒４の内壁４ａ
に対して優れた密着性を得ることができる。

【００２２】ガスケット６は、前記作動において屈曲部
１４の屈曲を容易にすると共に、外筒４の内壁４ａに対
する密着性を確保するために、ＪＩＳ Ｋ６３０１に規
定されている硬度計Ａ形によるスプリング式硬さ（ショ
ア（Ａ）硬度）が２０〜７０の範囲にある樹脂により形
成される。前記ショア（Ａ）硬度は、注射器１の容量に
より前記範囲で適宜選択することができるが、呼びサイ
ズ１〜３ミリリットルの細径の場合には柔らかい方がよ
く、呼びサイズ３０〜１００ミリリットルの太径の場合
には硬い方がよい。

【００２３】前記ショア（Ａ）硬度を備える樹脂とし
て、例えば、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフ
ィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポ
リアミド系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマ
ー等の熱可塑性エラストマー、ポリスチレンを添加した
スチレン−ブタジエンゴム（ＳＢＲ）等を用いることが
できる。

【００２４】前記ポリスチレン系エラストマーとして
は、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック
コポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック
コポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン
ブロックコポリマー、スチレン−エチレン・プロピレン
−スチレンブロックコポリマー等を挙げることができ
る。

【００２５】また、前記ポリオレフィン系エラストマー
としては、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（Ｐ
Ｅ）、ポリスチレン（ＰＳ）、アクリロニトリル−ブタ
ジエン−スチレン共重合体（ＡＢＳ）、アクリロニトリ
ル−スチレン共重合体（ＡＳ）、ポリメチルメタアクリ
レート（ＰＭＭＡ）、ポリテトラメチレンテレフタレー
ト（ＰＴＭＴ）、ポリアミド（ＰＡ）、ポリカーボネー
ト（ＰＣ）等のハードセグメントと、イソブチレン−イ
ソプレンゴム（ＩＩＲ）、エチレン−プロピレン−ジエ
ン三元共重合体（ＥＰＤＭ）、ポリトランスペンテナマ
ー（ＰＴＰＲ）、天然ゴム（ＮＲ）、ブタジエンゴム
（ＢＲ）、クロロプレンゴム（ＣＲ）、スチレン−ブタ
ジエンゴム（ＳＢＲ）、エチレン−酢酸ビニル共重合体
（ＥＶＡ）、アクリル酸アルキルエステル−２−クロロ
エチルビニルエーテル共重合体（ＡＣＭ）、塩素化ポリ
エチレン（ＣＰＥ）、ニトリル−ブタジエンゴム（ＮＢ
Ｒ）等のソフトセグメントとの組み合わせからなるもの
を挙げることができる。

【００２６】また、ポリエステル系エラストマーとして
は、ポリエステル−ポリエーテル型マルチブロックコポ
リマー、ポリエステル−ポリエステル型マルチブロック
コポリマー等を挙げることができ、ポリアミド系エラス
トマーとしては、ポリアミド−ポリエーテル型マルチブ
ロックコポリマー、ポリアミド−ポリエステル型マルチ
ブロックコポリマー等を挙げることができる。

【００２７】また、ポリ塩化ビニル系エラストマーとし
ては、高分子量ポリ塩化ビニル−可塑化ポリ塩化ビニル
ブレンド型、部分架橋ポリ塩化ビニル−可塑化ポリ塩化
ビニルブレンド型、ポリ塩化ビニル−エラストマーアロ
イ型等を挙げることができる。ポリ塩化ビニル−エラス
トマーアロイ型は、ソフトセグメントとして、部分架橋
ニトリル−ブタジエンゴム、ポリウレタン系エラストマ
ー、ポリエステル系エラストマー等を含む。

【００２８】前記実施形態では環状溝１３の外周側が屈
曲部１４となるガスケット６について説明しているが、
ガスケット６は台座１０の外周側に環状の凹溝を備え、
該凹溝の外周側に、プランジャー５の引張、押圧に応じ
て図３（ａ）、図３（ｂ）のように作動する屈曲部１４
を備えるものであれば、どのような形状であってもよ
い。ガスケット６の形状の例を図４に示す。

【００２９】図４（ａ）は、プランジャー５と反対側に
凹部１５を備えるガスケット６の例であり、該ガスケッ
ト６では凹部１５の外周側に屈曲部１４が形成されてい
る。また、図４（ｂ）は、プランジャー５側に凹部１６
を備えるガスケット６の例であり、凹部１６に台座１０
が接合されている。該ガスケット６では凹部１６の外周
側に屈曲部１４が形成されている。

【００３０】さらに、図４（ｃ）は、プランジャー５と
反対側に凹部１５、プランジャー５側に凹部１６を備え
るガスケット６の例であり、凹部１６に台座１０が接合
されている。該ガスケット６では凹部１５，１６の外周
側に屈曲部１４が形成されている。

【００３１】ガスケット６をプランジャー５の台座１０
に接合する方法としては、例えば、加熱状態で圧着する
熱融着法を挙げることができる。前記熱融着法による場
合、ガスケット６を形成する樹脂は、前記樹脂のうちか
ら、プランジャー５の材料に対して熱融着性のある樹脂
が選択される。

【００３２】次に、図５を参照して、プランジャー５と
ガスケット６とを加熱状態で圧着する熱融着法の一例に
ついて説明する。

【００３３】前記熱融着法では、まず、公知の射出成形
法により、例えばポリプロピレン製のプランジャー５を
製造する。そして、図５（ａ）示のように、前記プラン
ジャー５を、金型２１ａ，２１ｂに装着する。金型２１
ａ、２１ｂはプランジャー５及びガスケット６の外形形
状に沿う形状のキャビティー２２を備えると共に、形成
されるガスケット６の表面中央部に位置するピンポイン
トゲート２３を備えている。また、金型２１ｂは、ピン
ポイントゲート２３と射出成形機２４とを接続する湯道
部２５を備えている。

【００３４】次に、図５（ｂ）示のように、プランジャ
ー５が装着された金型２１ａ，２１ｂを閉じる。そし
て、図５（ｃ）示のように、金型２１ｂの湯道部２５に
射出成形機２４を接続し、例えば、スチレン系エラスト
マー２６を溶融状態でキャビティー２２に射出する。こ
の結果、プランジャー５にガスケット６が射出時の熱と
圧力とにより熱融着され、プランジャー５及びガスケッ
ト６を一体的に成形することができる。

【００３５】前記熱融着法では、予め成形されたプラン
ジャー５を金型２１ａ，２１ｂに装着しているが、予め
ガスケット６を成形し、ガスケット６を金型２１ａ，２
１ｂに装着しておくようにしてもよい。

【００３６】また、ガスケット６をプランジャー５の台
座１０に接合する方法として、ガスケット６と台座１０
とを両者の共通溶剤に部分的に溶解して接合する溶着
法、接着剤を介して接合する接着法等を用いてもよい。
前記溶着法または接着法による場合、ガスケット６を形
成する樹脂は、接着剤、有機溶剤等によりプランジャー
５の材料に対して接着性が得られる樹脂であればどのよ
うなものであってもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の注射器の一構成例を示す説明的断面
図。

【図２】図１示のガスケットを拡大して示す断面図。

【図３】図１示の注射器の作動説明図。

【図４】本発明の注射器の他の構成例を示す説明的断面
図。

【図５】本発明の注射器の製造方法の一例を示す説明的
断面図。

【図６】従来の注射器の構成例を示す説明的断面図。

【符号の説明】

１…注射器、 ２…注射針、 ４…外筒、 ４ａ…内
壁、 ５…プランジャー、 ６…ガスケット、 １０…
台座、 １４…屈曲部、 ２１ａ，２１ｂ…金型。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】注射針が装着される外筒と、該外筒の内壁
   に密着して摺動するガスケットを先端部に備えるプラン
   ジャーとからなる注射器において、 該ガスケットは該プランジャーの先端部に備えられた該
   先端部より小径の台座に接合され、該外筒の内壁に密着
   して摺動するときに該台座の外周側で該プランジャーの
   軸方向に屈曲する屈曲部を備えると共に、該注射針方向
   に摺動するときに該屈曲部が該プランジャーの先端部側
   に屈曲可能な間隔を存して該台座に接合されていること
   を特徴とする注射器。
2. 【請求項２】前記ガスケットは、ショア（Ａ）硬度２０
   〜７０の合成樹脂からなることを特徴とする請求項１記
   載の注射器。
3. 【請求項３】前記ガスケットは、前記台座の外周側に環
   状の凹溝を設け、該凹溝の外周側を前記屈曲部としたこ
   とを特徴とする請求項１または請求項２記載の注射器。