JP2001254744A - 高面圧疲労強度を有するトロイダル式無断変速機用転動部材 - Google Patents

高面圧疲労強度を有するトロイダル式無断変速機用転動部材

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JP2001254744A
JP2001254744A JP2000066730A JP2000066730A JP2001254744A JP 2001254744 A JP2001254744 A JP 2001254744A JP 2000066730 A JP2000066730 A JP 2000066730A JP 2000066730 A JP2000066730 A JP 2000066730A JP 2001254744 A JP2001254744 A JP 2001254744A
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Kazuyoshi Ogawa
一義 小川
Shoji Hotta
昇次 堀田
Izuru Yamamoto
出 山本
Hideo Aihara
秀雄 相原
Masazumi Onishi
昌澄 大西
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、トロイダル式無断変速機の入力デ
ィスク、出力ディスク及びローラ等、高い接触圧力の下
で動力を伝達しながら転動するトロイダル式無断変速機
用転動部材であって、従来よりも更に高い面圧疲労強度
を有する転動部材を提供することを課題とする。 【解決手段】 本発明は、転動部材同士の転動時に、転
動部材の内部に発生するせん断応力に対する抵抗力を大
きくして、転動部材の内部亀裂の発生を抑制する。その
ために、本発明にかかる転動部材24,30,32、少
なくとも0.15から0.4重量%のCを含む構造用鋼か
ら成り、浸炭焼入れにより形成された硬化層内の最大せ
ん断応力振幅発生部におけるビッカース硬さが780以
上で、残留オーステナイトの量が12体積%以下となる
ようにしたのである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高面圧疲労強度を
有する転動部材に関し、特に高い接触圧力(面圧)によ
り転動部材の内部に発生する亀裂の発生が低減されたト
ロイダル式無断変速機用転動部材に関する。ここで、
「トロイダル式無断変速機用転動部材」とは、トラクシ
ョンドライブ式無断変速機の一種であるトロイダル式無
断変速機びの主要な構成要素である入力ディスク、出力
ディスク及びローラのように高い接触圧力の下で動力を
伝達しながら転動する部材を言う。
【0002】
【従来の技術】図6に示すようなトロイダル式無断変速
機において、入力軸から加えられた動力は入力ディスク
からローラへ接線方向の力(「トラクション」と呼ばれ
る)によって伝達され、更にローラから出力ディスクへ
と同じく接線方向の力によって伝達される。この場合、
力の伝達はディスクとローラとの間の接触部に介在する
トラクションオイルを通じて行われ、伝達できる力の大
きさFはディスクとローラとを押付ける荷重をNとし、
トラクションオイルによって発生するトラクション係数
をμtとすれば、 F=μt×N (1) で表される。トラクション係数μtはオイルによって殆
ど決まるため、伝達できる力を大きくするためには、押
付け荷重Nをできるだけ大きくする必要がある。従っ
て、入出力ディスク及びローラは非常に高い面圧に耐え
る必要がある。
【0003】同様に高い面圧にさらされる転動部材とし
ては、玉軸受やころ軸受がある。しかし、これらはトロ
イダル式無断変速機用転動部材に比べて、動力を伝達す
る必要がないので接触面に作用する接線方向の力が小さ
く、転動部材である鋼球やころの直径がトロイダル式無
断変速機のローラに比べて小さいので、高い応力の作用
する範囲が狭い。
【0004】一方、トロイダル式無断変速機用転動部材
においては、動力を接触面における接線方向の力で伝達
するため、接触面にはそれに応じた大きなせん断力が作
用すると同時に、押付け荷重Nによる非常に大きな接触
面圧が作用する。接触面圧の作用する面積は押付け荷重
が大きいことと、ローラの直径が軸受の鋼球等に比べて
大きいため、非常に大きくなっている。従って、この接
触面圧によってトロイダル式無断変速機用転動部材の内
部に発生する応力は、軸受等に比べて、より深くかつ幅
広い範囲で大きな値を持つ。更に、トロイダル式無断変
速機用転動部材では、その原理上、接触面において接触
楕円の中心周りの回転滑り(以下「スピン滑り」と呼
ぶ)が軸受に比べて大きく、接触面積が大きいことと相
俟って、接触面で大きな発熱がある。以上のことから、
トロイダル式無断変速機用転動部材においては、軸受と
は異なる要件を満足する材料開発が必要である。
【0005】この点、特開平9−79336号公報に開
示されたクロムを含む構造用鋼から成るトロイダル式無
段変速機用転動部材においては、転動部材の面圧疲労強
度を決定する際に、転動部材の転動面における圧縮応力
のほかに、転動部材の内部に発生するせん断応力を考慮
している。即ち、この転動部材では、浸炭窒化処理によ
って転動部材の転動面における窒素の量を規定するとと
もに、転動部材同士の接触により転動部材の内部に発生
するせん断応力が最大となる深さZst近傍における炭素
と窒素の合計量を規定している。これにより、深さd≦
0.2Zstでは残留オーステナイトの量を20から45
体積%で、ビッカース硬さをHv500以上に、0.5
Zst≦d≦1.4Zstではビッカース硬さをHv700
以上にしている。
【0006】
【発明が解決すべき課題】本発明者等は、更に高い面圧
疲労強度を有するトロイダル式無断変速機用転動部材を
提供することを目的として成されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記特開
平9−79336号公報に開示された無段変速機用転動
部材の残留オーステナイトの量及びビッカース硬さにつ
いて研究を重ねた。残留オーステナイトは転動部材の表
面でのなじみ性を向上させ、表面を起点とする疲労破壊
を抑制して、転動疲労強度を向上させる上では有効であ
る。
【0008】しかし、本発明者は、更に高い転動部材の
転動疲労寿命を得るためには、硬さの低い残留オーステ
ナイトが多く含まれていることは望ましくないと考え
た。即ち、上述したように、無段変速機の入出力ディス
クとローラとの転動接触時には入出力ディスク及びロー
ラの表面に高い接触圧力とせん断力とが作用し、それに
基づき入出力ディスク及びローラの内部にせん断応力が
発生する。しかるに、残留オーステナイトはマルテンサ
イトに比べて硬度が低く、塑性変形に対する抵抗が小さ
い。
【0009】従って、入出力ディスク及びローラの硬化
層における残留オーステナイトの量が多い(硬さが低
い)場合、このせん断応力によって硬さの低い残留オー
ステナイトには局所的に大きな塑性ひずみが生ずる。そ
して、この塑性ひずみが亀裂に発展して、入出力ディス
ク及びローラの破損につながることがあると考えたので
ある。
【0010】そして、本発明者等は、転動部材の残留オ
ーステナイトの量を更に少なくすることにより、転動部
材間に作用する接触圧力とせん断力とにより転動部材の
内部に発生するせん断応力に対する抵抗が大きくなり、
せん断応力により転動部材の内部に発生する亀裂を低減
することを見い出した。また、この場合、残留オーステ
ナイトの量を少なくすると同時に、硬化層のビッカース
硬さを高く保つ必要があることを見出して、本発明を完
成したものである。
【0011】即ち、本発明の高面圧疲労強度を有する転
動部材は、少なくとも0.15から0.4重量%のCを含
む構造用鋼から成り、浸炭焼き入れにより形成された硬
化層内の最大せん断応力振幅発生部におけるビッカース
硬さが780以上で、残留オーステナイトの量が12体
積%以下としたものである。
【0012】このような最大せん断応力振幅発生部にお
けるビッカース硬さ及び残留オーステナイト量は、例え
ば構造用鋼を浸炭・拡散し、焼き入れし、ザブゼロ処理
した後、焼き戻しすることにより得られる。
【0013】
【発明の実施の態様】トロイダル式無断変速機用転動部
材とは、上述したように、無断変速機における入力ディ
スク、出力ディスク及びローラ等、高い接触面圧の下
で、動力を伝達しながら転動する部材を言う。
【0014】転動部材を構成する構造用鋼は、構造用炭
素鋼及び構造用合金鋼を含み、何れの場合でも少なくと
も0.15から0.4重量%のCを含む。Cの量が0.1
5重量%よりも少ないと転動部材の内部の強度が不足す
る。一方、構造用鋼の表層部は浸炭焼入れするので、構
造用鋼自体が0.4重量%以上のCを含むことは望まし
くない。何故ならば、0.4重量%以上のCを含む構造
用鋼に浸炭焼入した場合には、浸炭焼入れにより硬化層
に発生する圧縮残留応力の大きさが非常に小さくなり、
それによって転動疲労強度の向上が達成されなくなる。
【0015】浸炭焼入れの方法は、固体浸炭法、液体浸
炭法、ガス浸炭法、真空浸炭法又はプラズマ浸炭法の何
れでも良い。浸炭焼入れにより形成された硬化層内の最
大せん断応力振幅発生部付近におけるビッカース硬さが
780よりも小さい場合、及び硬化層内の最大せん断応
力発生地点における残留オーステナイトの量が12体積
%より多い場合は、何れも顕著な効果(破損寿命の延
長)は得られない。
【0016】浸炭焼き入れした硬化層の表面粗さは、転
動部材間のすべり率と相まって、転動部材の破損寿命に
影響する。すべり率が比較的小さい(−0.5%)場合
は、転動部材の表面粗さが0.1μmRaでも所望の寿命
が得られる。しかし、転動部材間のすべり率が比較的大
きく(−5.0%)なると、転動部材の表面粗さが0.
06μmRa以下でなければ、所望の寿命は得られない。
ここで、「すべり率」とは、一方(通常駆動側)の転動
部材の転動距離に対する他方(通常被駆動側)の転動部
材の転動距離の割合をいい、駆動側の転動部材の転動距
離をL1とし、被駆動側の転動部材の転動距離をL2と
するとき、 すべり率=(L1−L2)/L1 (2) で表わされる。
【0017】また、転動部材の浸炭焼き入れした硬化層
は0.6から0.9重量%のCを含むことができる。Cの
量が0.6重量%以下では、十分な硬さの硬化層が得ら
れず、硬化層の強度が不足する。一方、Cの量が0.9
重量%を越えると、硬化層には初析炭化物が生成し、硬
化層は見かけの硬さは高いものの、炭化物を除いた基地
の鋼の部分の硬さはむしろ低下するため、十分な転動疲
労強度の向上が達成されなくなる。硬化層の深さは、転
動部材の大きさ、寸法に応じて1.0から5.0mmと
することができる。
【0018】さらに、構造用鋼は、0.4から5.0重量
%のNi、0.4から3.0重量%のCr、又は0.1か
ら1.0重量%のMoのうち、1種又は2種以上を含む
ことができる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面、表をもと
に詳述する。
【0020】表1に本発明の実施例1から5を示す。
【0021】
【表1】
【0022】上記実施例1から5は、以下のようにして
製造された。
【0023】肌焼き鋼SCr420(約0.2重量%のC、約
1.2重量%のCr、及び約0.9重量%のMnを含
む)を転動試験片の形状に荒加工した一対の円板状の試
験片素材(直径60.5mm、厚さ16.5mm)を用
意し、図1に示す条件で熱処理した。即ち、はじめにa
で示すように930°Cで1080分間浸炭、拡散し、次にbで
示すように850°Cで20分間保持後焼き入れした。浸炭
後の硬化層の炭素濃度は約0.8重量%であり、硬化層
の深さは約2mmである。
【0024】その後、肌焼き鋼中の残留オーステナイト
を低減させるために、cで示すように−70°Cで30
分間サブゼロ処理し、最後にdで示すように150°Cで1
20分間焼き戻しした。次に、この試験片素材の転動面
である外周面を研削及びラッピングし、仕上げ加工して
図2に示す一対の転動試験片10及び14とした。
【0025】何れの実施例1から5でも、図2に示す一
方の転動試験片10は円板状で、直径60mm、幅16
mmで、転動面12は半径50mmの円弧面とされてい
る。他方の転動試験片14は円板状で直径60mm、幅
16mmで、転動面16は平坦面とされている。このよ
うに一方の転動試験片10の転動面12を円弧面とし、
他方の転動試験片14の転動面16を平坦面としたの
は、軸受の転動体及び無段変速機のローラの転動面は曲
率の大きい(曲率半径の小さい)球面の一部からなり、
軸受の内外輪及び無段変速機の入出力ディスクの転動面
は曲率の小さく(曲率半径の大きく)より平面に近い球
面の一部から成ることを考慮したものである。
【0026】表1に示すように、転動試験片10、14
の転動面12、16の表面粗さは、実施例1から4では
0.1μmRa、実施例5では0.05μmRaとした。ここ
で、Raは中心線平均粗さを示す。
【0027】また、各実施例1から5において最大せん
断応力振幅が発生する深さdsmaxでのビッカース硬さ
は810から825である。このうち、実施例1の転動
試験片10、14におけるビッカース硬さ分布が図3に
示されている。それによると、ビッカース硬さは、転動
試験片10、14の転動面(表面)12、16から1m
m以内では800以上、1.2mmの点では約750、
そして1.5mmの点では約700である。
【0028】なお、転動試験片10、14内の最大せん
断応力振幅が発生する深さdsmaxは、「H.A. Rothbart
著,"Mechanical Design and System Handbook" McGrow
Hill(1964年発行)」に記載された理論計算により求め
た。この理論計算によれば、二つの転動部材が小さな楕
円領域で点接触する場合に発生する二種類のせん断応力
のうち、転動面と平行な方向に発生するせん断応力は両
振になり、このせん断応力振幅は接触楕円の長軸/短軸
比によって、転動方向の径の約四分の一から六分の一の
深さの点で最大となることが知られている。
【0029】各実施例1から5の転動試験片におけるd
maxでの残留オーステナイトの量は7から10体積%
である。このうち、実施例1の転動試験片10,14に
おける残留オーステナイト量が図4に示されている。そ
れによれば、残留オーステナイトの量は、転動試験片1
0,14の転動面12,16から0.5mmの点では7
から8体積%であり、1.0mmの点では約6体積%と
なっている。
【0030】尚、dsmaxでのビッカース硬さの測定は
マイクロビッカース硬さ計を用いて測定荷重300gf
で行った。また残留オーステナイト量の測定はX線法に
よった。
【0031】上記表1には比較例1から7も示されてい
る。このうち、比較例1から5の試験片素材は肌焼き鋼
SCr420を用い、比較例6及び7の試験片素材は高炭素ク
ロム軸受鋼SUJ2(0.95から1.10重量%のC、1.
30から1.60重量%のCr、及び0.50重量%以下
のMnを含む)を用いた。そして、比較例1から5は、
上記図1に示した熱処理の各工程のうち、サブゼロ処理
以外の各工程、即ち浸炭、拡散工程、焼入れ工程及び焼
戻し工程を経て製造された。これに対して、比較例6及
び7は、850℃で45分間保持後焼入れし、その後1
70℃で90分間焼戻しした。
【0032】比較例1から7の寸法は実施例1から5の
寸法と同じである。
【0033】表1から明らかなように、表面粗さは、比
較例1から4、6及び7では0.1μmRaとし、比較例5
では0.05μmRaとした。また、各比較例1から5のd
m axにおけるビッカース硬さは740から750であ
り、dsmaxにおける残留オーステナイトの量は19か
ら21体積%である。尚、比較例6及び7では、ds
maxにおけるビッカース硬さは800で、残留オーステ
ナイト量は12体積%である。
【0034】上記実施例1から5及び比較例1から7の
転動試験片を用いて、表2に示す条件で転動疲労試験を
行った。
【0035】その際、各実施例1から5及び各比較例1
から7において、すべり率−5.0%を得るには、一方
の転動試験片10の回転数を2000rpmとし、他方の転
動試験片14の回転数を2100rpmとした。尚、外径は
両方の転動試験片10,14とも60mmとした。ま
た、すべり率−0.5%を得るには、両方の転動試験片
10,14の回転数を2000rpmとし、一方の転動試験
片10の外径を59.7mmとし、他方の転動試験片1
4の外径を60mmとした。その結果、滑り率は、実施
例1及び2では−0.5%、実施例3、4及び5では−
5.0%であり、比較例1、2、6及び7では−0.5%
で、比較例3、4及び5では−5.0%であった。
【0036】負荷ヘルツ応力は、実施例1及び3では
4.2GPa、実施例2、4及び5では3.9GPaと
し、比較例1、3及び6では4.2GPa、比較例2、
4、5及び7では3.9GPaとした。ここで、「負荷
ヘルツ応力」とは、軸受の内外輪と転動体との接触等の
ように、接触面積が接触部材に対して十分に小さい場合
に接触部材間の接触圧力により生ずる最大圧縮応力を言
う。負荷ヘルツ応力は、各転動試験片10、14の材質
・形状、両転動試験片10、14に加える負荷荷重F
(図2参照)を用いて計算される。負荷荷重Fは実施例
1及び3では19.1kN、実施例2、4及び5では1
5.3kNとし、比較例1、3及び6では19.1kN、
比較例2、4、5及び7では15.3kとした。
【0037】ヘルツ応力を3.9GPaとした上で、転
動試験片10,14を回転させた場合に転動試験片1
0,14内に生ずるせん断応力分布が図5に示されてい
る。それによれば、転動試験片10,14に生ずるせん
断応力は転動面から約0.41mmで最大(約930MPa)
となっている。この試験では、ヘルツ応力が4.2GP
aのときdsmaxは0.44mmとなり、ヘルツ応力が3.
9GPaのときdsmaxは0.41mmとなっている。
【0038】以上の条件で実施例1から5及び比較例1
から7の転動疲労試験をしたとき、各転動試験片が破損
するまでの回転回数は表2に示す通りである。
【0039】
【表2】
【0040】表2において、表面粗さが0.1μmRa
で、すべり率が−0.5%である実施例1、2及び比較
例1、2についてみると、実施例1及び2の破損寿命
は、それぞれ比較例1及び2の破損寿命の7倍である。
これは、実施例1及び2では、ds maxにおけるビッカ
ース硬さがそれぞれ820、810で、残留オーステナ
イトの量がそれぞれ7体積%、8体積%であるのに対し
て、比較例1及び2では、dsmaxにおけるビッカース
硬さがそれぞれ750、740で、残留オーステナイト
の量がそれぞれ19体積%、21体積%であることに関
連している考えられる。
【0041】一方、すべり率が−5.0%である実施例
3から5及び比較例3から5についてみると、破損寿命
は、dsmaxにおけるビッカース硬さ及び残留オーステ
ナイト量のみならず、転動試験片の表面粗さの大小に影
響されることが分かる。即ち、実施例3から5では、d
maxにおけるビッカース硬さは820で、残留オース
テナイト量は7から10体積%であり、比較例3から5
ではdsmaxにおけるビッカース硬さは740から75
0で、残留オーステナイト量は19から21体積%であ
り、実施例3から5と比較例3から5とではdsmax
おけるビッカース硬さ及び残留オーステナイト量に差が
ある。しかも、図3及び図4から明らかなように、実施
例1の転動試験片10、14では、転動試験片の表面に
おけるビッカース硬さは約840で、残留オーステナイ
トの量は9から11体積%である。
【0042】しかし、表面粗さが0.1μmRaである実施
例3、4の破損寿命は、同じく表面粗さが0.1μmRaで
ある比較例3、4の破損寿命の約1.5倍である。これ
に対して、表面粗さが0.05μmRaである実施例5の破
損寿命は、同じく表面粗さが0.05μmRaである比較例
5の破損寿命の約5倍である。
【0043】これは、転動試験片10、14間のすべり
率が大きい場合は、転動試験片の表面粗さが大きく(粗
く)て転動試験片の表面の凹凸の差が油膜厚さよりも大
きくなると、表面の凹凸同士の衝突の頻度が増し、転動
試験片10,14に表面に亀裂が発生して寿命を低下さ
せる。これに対して、転動試験片の表面粗さが小さく
(滑らかで)転動試験片の表面の凹凸の差が油膜厚さよ
りも小さいと、表面の凹凸同士の衝突に起因する表面亀
裂が減少するからと考えられる。
【0044】尚、比較例6及び7では、dsmaxにおけ
るビッカース硬さが共に800で、残留オーステナイト
の量がともに12体積%であり、この点では実施例1及
び2と大差はない。しかし、比較例6及び7では破損寿
命は実施例1及び2の破損寿命の数分の一であり、比較
例1及び2の破損寿命と同程度である。これは、比較例
6及び7の転動試験片はC(炭素)を1%含む高炭素ク
ロム軸受鋼で形成されているので、金属組織中には多数
のコンマ数μmサイズの初析炭化物が均一に分散生成し
てこれが硬さを上昇させているが、基地の部分の硬さは
低いためであると考えられる。
【0045】次に、本発明の転動部材をフルトロイダル
型無段変速機に適用して行った転動疲労試験について説
明する。
【0046】無断変速機は、図6に示すように、回転す
る入力軸20と、入力軸20上に嵌合され、ディスク押
圧部材22により軸方向に押圧されて入力軸20と一体
化される入力ディスク24と、軸受26を介して入力軸
20上に取付けられた出力軸28と、出力軸28と一体
化された出力ディスク30と、入力ディスク24と出力
ディスク30との間に配置された一対のローラ32と、
からなる。
【0047】このフルトロイダル型無段変速機におい
て、入力ディスク24、出力ディスク30及びローラ3
2を本発明の転動部材(実施例6)及び比較例8で構成
した。実施例6及び比較例8の表面粗さ、dsmaxにお
けるビッカース硬さ、残留オーステナイトの量は表3に
示す通りである。
【0048】
【表3】
【0049】実施例6では、入力ディスク24、出力デ
ィスク30及びローラ32は、何れもクロムモリブデン
(CrMo)鋼SCM420から成り、有効硬化層深さ3.5mm
の浸炭焼入れ及びサブゼロ処理を施した。ローラ32は
直径100mm、厚さ13mmで、転動面32aの曲率
は半径20mmである。入力ディスク24及び出力ディ
スク30の転動面24a及び30aの曲率は半径50m
mである。
【0050】これに対して、比較例8では、入力ディス
ク24、出力ディスク30及びローラ32は何れも高炭
素クロム軸受鋼SUJ2から成り、焼入れ及び焼戻し処
理を施した。比較例8の諸寸法は実施例6の諸寸法と同
じである。
【0051】試験条件としては、実施例6及び比較例8
とも、ディスク押圧部材22による入力ディスク24及
び出力ディスク30のローラ32へのディスク押付け荷
重は102kNとし、負荷ヘルツ応力は4.2GPaと
した。また、実施例6及び比較例8とも、入力軸10の
回転速度は1000rpmとし、変速比は1対1とし、潤滑油
はトラクションオイルを用いた。
【0052】上記実施例6及び比較例8により上記条件
で行った転動疲労試験の結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】表4から明らかなように、実施例6の破損
寿命は比較例8の破損寿命の約8倍となっている。これ
は、比較例6のところで述べたのと同様に、比較例8で
は金属組織中に多数のコンマ数μmサイズの初析炭化物
が均一に分散生成してこれが硬さを上昇させているが、
基地の部分の硬さは低いためであると考えられる。これ
に対して、実施例6では、初析炭化物は全く認められな
いにも関わらず基地のそのもののビッカース硬さが87
0と高くなっており、これが長寿命の原因と考えられ
る。
【0055】
【発明の効果】以上述べてきたように、本発明において
は、軸受の内外輪及び転動体や、無断変速機の入出力デ
ィスク及びローラのような転動部材において、浸炭焼入
れにより形成される硬化層内の最大せん断応力振幅発生
部におけるビッカース硬さを750以上とし、残留オー
ステナイト量を15体積%以下にした。これは、構造用
鋼の焼入れ後焼戻し前にサブゼロ処理を施して、残留オ
ーステナイトの量を減少させて硬度を上げることにより
達成した。
【0056】その結果、転動部材同士の接触転動時に接
触面に作用する圧縮応力に基づき転動部材の内部に発生
するせん断応力により転動部材の内部に生ずるせん断応
力に基づく内部亀裂の発生が低減、抑制でき、破損まで
の寿命(回転数)が延長できる効果が奏される。
【0057】また、本発明によれば、転動部材の硬化層
のCを0.6から0.9重量%とすることにより、上記最
大せん断応力振幅発生部におけるビッカース硬さが78
0以上、残留オーステナイト量が12体積%以下の特性
をより確実に得られる。更に、転動部材の硬化層の表面
粗さを所定値(例えば0.06μmRa)よりも小さくすれ
ば、たとえ転動部材のすべりが大きく(例えば−5.0
%程度)ても、所望の破損寿命が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる転動試験片の熱処理工程を示す
説明図である。
【図2】本発明に係る転動試験片を示す正面図である。
【図3】実施例1における転動試験片の表面からの距離
とビッカース硬さとの関係を示す説明図である。
【図4】実施例1における転動試験片の表面からの距離
と残留オーステナイト量との関係を示す説明図である。
【図5】ヘルツ応力が3.9GPaの場合の転動試験片
の表面からの距離とせん断応力との関係を示す説明図で
ある。
【図6】本発明に係る転動部材が無断変速機に適用され
た場合の断面説明図である。
【符号の説明】
10,14:転動試験片 12,16:転動
面 20:入力軸 24:入力ディス
ク 28:出力軸 30:出力ディス
ク 32:ローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀田 昇次 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山本 出 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 相原 秀雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 大西 昌澄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA12 BA10 DA02 DA05 EA03 FA15 FA31 FA41 GA11

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも0.15から0.4重量%のC
    を含む構造用鋼から成り、浸炭焼入れにより形成された
    硬化層内の最大せん断応力振幅発生部におけるビッカー
    ス硬さが780以上で、残留オーステナイトの量が12
    体積%以下であることを特徴とするトロイダル式無断変
    速機用転動部材。
  2. 【請求項2】 前記浸炭焼入れした硬化層の表面粗さ
    は、0.06μmRa以下である請求項1に記載の高面圧疲
    労強度を有する転動部材。
  3. 【請求項3】 前記浸炭焼入れした硬化層は、0.6か
    ら0.9重量%のCを含む請求項1に記載の高面圧疲労
    強度を有する転動部材。
  4. 【請求項4】 前記構造用鋼は、さらに0.4から5.0
    重量%のNiと、0.4から3.0重量%のCrと、0.
    1から1.0重量%のMoのうち、1種又は2種以上を
    含む請求項2又は3に記載の高面圧疲労強度を有する転
    動部材。
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