JP2001253165A

JP2001253165A - インクジェット被記録材

Info

Publication number: JP2001253165A
Application number: JP2000069506A
Authority: JP
Inventors: Tomohisa Nishimoto; 智久西本; Kenji Kono; 研二河野; Noriaki Otani; 紀昭大谷
Original assignee: Hitachi Maxell Ltd
Current assignee: Maxell Ltd
Priority date: 2000-03-13
Filing date: 2000-03-13
Publication date: 2001-09-18

Abstract

(57)【要約】【課題】記録画像の耐水性や耐光性といった保存特性
に優れたインクジェット被記録材を提供する。【解決手段】基材の少なくとも一方の面側にインク受
容層を設ける。インク受容層は、非晶質シリカとバイン
ダー樹脂とカチオン性物質とを含有した構成とする。そ
して、このインク受容層を構成するカチオン性物質とし
て、重量平均分子量２万〜２２万のジメチルジアリルア
ンモニウムクロライド重合物を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットプ
リンターにより画像等を印刷・記録する場合に使用され
るインクジェット被記録材に関し、特にこの種の被記録
材において、印刷・記録された画像の耐水性および耐光
性を向上させる技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】ファクシミリやワードプロセッサー、パ
ーソナルコンピューター等の出力装置として用いられる
プリンターの一つに、インクジェット記録方式を採用し
たインクジェットプリンターがある。インクジェットプ
リンターは、液体のインクを特殊構造のノズルからジェ
ット状に噴射し、その飛跡を制御することにより紙やフ
ィルムなどの被記録材に付着させて印字するもので、こ
こ数年、デジタル写真等のプリント手段として急速に普
及してきた。背景には、プリンター本体とインクの両面
から改良が進み、解像度の高い鮮やかなカラー画像の印
字が可能になったことがある。

【０００３】このようなインクジェットプリンターにお
いては、ノズルの目詰まり防止や色調の鮮やかさ、環境
に対する安全性などの利点から、一般に、水および水溶
性有機溶剤に直接染料や酸性染料などの水溶性染料を溶
解させた水性インクが用いられる。

【０００４】一方、インクジェットプリンター用の被記
録材には、インクの吸収性をはじめ各種の特性が必要と
される。特に、画像等を記録する場合に用いられる被記
録材においては、記録画像の高画質化に対応できるよ
う、速やかなインクの吸収性、鮮明な発色性、高い印字
濃度、ドット形状が真円でシャープであるなどの特性が
要求される。このような特性を得るために、例えば特開
昭５５−５１５８３号公報では、紙などの基材上に、非
晶質シリカとバインダー樹脂とからなる塗工液を塗布し
てインク受容層を形成することが提案されている。そこ
では、非晶質シリカはクレーやタルク、酸化チタンなど
他の白色顔料と比べてインクの吸収速度が速く、粒子表
面に吸着した染料の発色を妨げないことから、インク受
容層に適した顔料であると考えられている。

【０００５】ところが、インクジェットプリンターの使
用分野が多様化するにつれて、記録画像の耐水性や耐光
性といった保存特性も求められてきており、この点で先
のインクジェット被記録材は充分でないという問題が生
じた。具体的には例えば、写真やイラストなどのグラフ
ィックデータを印字した被記録材を、葉書として使用し
た場合や、机、壁もしくは屋外などに飾るためのディス
プレイとして使用した場合において、雨水にさらされた
り高湿度の環境に放置されたりすると記録画像が滲んで
しまい、また蛍光灯の光や太陽光により記録画像が色あ
せてしまうという問題が生じる。

【０００６】先に述べたインク受容層の構成材料として
用いられる非晶質シリカやバインダー樹脂は、直接染料
や酸性染料などの水溶性染料を捕捉する機能をほとんど
持たない。そのため、水が付着すると、記録画像を形成
している染料は容易に流れてしまう。また、記録画像の
耐光性は、基本的には染料の耐光堅牢度に依存するが、
インクジェット被記録材の構成材料による影響も大き
く、この種の構成材料によっては染料の光分解による変
退色を促進させるものがある。特に、先に述べたような
インク受容層の構成材料として用いられている非晶質シ
リカは、構成粒子の比表面積が大きく、表面にシラノー
ル基などの多数の活性点が存在しているため、吸着した
染料との相互作用が起こりやすく、光の照射による影響
を受けやすい。

【０００７】このようなインクジェット記録における記
録画像の耐水性や耐光性といった保存特性に関する問題
を解決するため、従来からいくつかの提案がなされてき
た。その一つは、記録画像に耐水性を付与するためにカ
チオン性物質を使用するというものである。カチオン性
物質は、直接染料や酸性染料の有しているスルホン酸基
やカルボン酸基などのアニオン性基とイオン結合して、
水に不溶の高分子錯体を形成する。このようなカチオン
性物質を用いた技術としては、ポリカチオン高分子電解
質を表面に含有するインクジェット被記録材に、水性イ
ンクを印写することとしたもの（特開昭５６−８４９９
２号公報）、インクジェット被記録材を構成する支持体
にジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物を塗
工しまたは含浸させることとしたもの（特開昭５９−２
０６９６号公報）、合成非晶質シリカとポリジメチルジ
アリルアンモニウムクロライドと他のカチオン性ポリマ
ーとを含有してなる塗工層を基紙上に設けたもの（特開
平１０−１１４１４４号公報）などがある。

【０００８】これらのカチオン性物質を使用したインク
ジェット被記録材においては、記録画像の耐水性は改善
される。しかし、その反面、カチオン性物質が染料の光
分解を促進させ、耐光性を低下させるという欠点があ
る。そこで、このような欠点を解消し、耐水性と耐光性
とを両立させる技術が提案されている。この種の技術と
しては、紙の表面にポリアルキレンポリアミンジシアン
ジアミドアンモニウム塩縮合物を含有させたもの（特開
昭６０−４９９９０号公報）、紙の表面にジメチルジア
リルアンモニウムクロライド重合物とポリエチレンイミ
ンとを塗工したもの（特開昭６０−１０９８９４号公
報）、紙の表面にジアリルアミン酸塩とモノアリルアミ
ン酸塩の共重合体を存在させたもの（特開昭６２−２３
８７８３号公報）などがある。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のインクジェット被記録材においても、いまだ耐光性が
実用上満足できるレベルには至っていない。特に、写真
やイラスト画像等のグラフィックデータを印字した場
合、染料分子の集まりが少ない淡色部において光による
変退色が起こりやすく、記録画像の劣化が顕著に確認さ
れる。

【００１０】インクジェット記録における記録画像の耐
光性を向上させる別の手段として、耐光堅牢度に優れた
染料をインクジェットプリンター用のインクとして用い
ることも考えられる。しかし、ノズルの目詰まりや色調
の鮮やかさを考慮すると、現状では耐光堅牢度の優れた
染料を選択することは困難である。

【００１１】本発明は、インクジェット記録における上
述したような問題に対処するもので、インクに含まれる
染料の耐光堅牢度の如何にかかわらず、耐水性と耐光性
の両特性に優れた記録画像を形成できるインクジェット
被記録材を提供することを目的とする。また、本発明
は、速やかなインク吸収性と高い印字濃度といった印字
特性に優れ、同時に記録画像の耐水性や耐光性といった
保存特性にも優れたインクジェット被記録材を提供する
ことを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】先に述べたように、イン
ク受容層の構成材料として考えた場合、非晶質シリカは
インクの吸収速度が速く、染料の発色を妨げないが、そ
の反面、耐水性に劣る。一方、従来のカチオン性物質
は、記録画像の耐水性を高めるが、耐光性を低下させ
る。ところが、本発明者らは、インク受容層を構成する
顔料として非晶質シリカを選択した場合において、カチ
オン性物質として特定分子量のジメチルジアリルアンモ
ニウムクロライド重合物を用いると、記録画像の耐水性
と耐光性の両特性を向上させうることを見出した。

【００１３】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたもので、基材の少なくとも一方の面側に、非晶質シ
リカとバインダー樹脂とカチオン性物質とを含有してな
るインク受容層を設けたインクジェット被記録材におい
て、前記カチオン性物質として、重量平均分子量２万〜
２２万のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合
物を用いたことを特徴とする。

【００１４】

【作用】一般に、インクジェット被記録材を作成するに
は、各種の原材料を水中に分散および／または溶解して
調整した塗工液が必要である。非晶質シリカを水中に分
散することを試みた場合、他の白色顔料と比較して粒子
の比表面積が大きく吸水性が強いため、固形分濃度を上
げることができず、塗工液の調整が困難である。

【００１５】ところが、本発明で用いる重量平均分子量
２万〜２２万のジメチルジアリルアンモニウムクロライ
ド重合物は、塗工液を作成する段階において非晶質シリ
カに吸着して水中で均一に分散させる作用が他のカチオ
ン性物質よりも大きい。このジメチルジアリルアンモニ
ウムクロライド重合物の分子鎖は、非晶質シリカへの吸
着に寄与する部分と、水中に広がり分散性の向上に寄与
する部分とに別れた吸着形態をとる。重量平均分子量が
２万〜２２万の場合には、前記分子鎖の吸着形態が好適
で、かつ均一に分布している。重量平均分子量が２万〜
２２万の範囲を外れると、吸着形態に偏りが生じ分布状
態も悪くなるため分散性は低下する。

【００１６】非晶質シリカに対するジメチルジアリルア
ンモニウムクロライド重合物の吸着形態および分布状態
は、インクジェット被記録材における記録画像の耐水性
および耐光性に影響する。この吸着形態が好適で分布状
態が均一であれば、インク中の染料がジメチルジアリル
アンモニウムクロライド重合物のカチオン性基と強固に
イオン結合するため、記録画像の耐水性が高まる。ま
た、非晶質シリカに対するジメチルジアリルアンモニウ
ムクロライド重合物の均一な吸着により、非晶質シリカ
表面の活性点の数が減り、しかもカチオン性物質特有の
染料の光分解を促進させる作用が低下することから、耐
光性も高まる。本発明では、平均分子量２万〜２２万の
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物を用い
たことによより、分子鎖の吸着形態が好適で、かつ均一
に分布することなるので、記録画像の耐水性および耐光
性の両方を高めることができる。なお、吸着形態に偏り
が生じ分布状態も悪い場合には、前記作用が得られず、
耐水性および耐光性は低下すると推察される。

【００１７】

【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を具体
的に説明する。＜インク受容層を構成する顔料（非晶質シリカ）につい
て＞本発明における非晶質シリカは、インクジェット被
記録材のインク受容層を構成する顔料として使用するも
ので、白色顔料の中でもインクの吸収速度が速く鮮明な
発色性が得られる多孔質の顔料である。本発明では、乾
式製造法にて得られる無水珪酸や、湿式製造法にて得ら
れる含水珪酸、さらに含水珪酸における沈降性タイプや
ゲルタイプなど、各種の非晶質シリカを使用することが
できる。特に、真円でシャープなドット形状と適切なド
ット径が得られる点で、凝集粒子の平均粒子径が２μｍ
〜２０μｍの範囲にある非晶質シリカを用いることが好
ましい。

【００１８】インク受容層を構成する顔料として、非晶
質シリカ以外の白色顔料、例えばクレーやタルク、炭酸
カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アル
ミニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、白色樹脂粒
子などを併用することができる。ただし、非晶質シリカ
以外の顔料を併用する場合であっても、重量比で顔料全
体の５０％以上は非晶質シリカとするのが好ましい。

【００１９】＜バインダー樹脂について＞本発明では、
基材に非晶質シリカを結着させるためバインダー樹脂を
使用する。バインダー樹脂としては、種々の樹脂を使用
することができる。例えば、ポリビニルアルコールやポ
リビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、カルボ
キシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、
カゼイン、ゼラチン、デンプン、アルギン酸ナトリウム
等の水溶性樹脂、また、酢酸ビニル重合体、エチレン−
酢酸ビニル共重合体、アクリル−酢酸ビニル共重合体、
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエ
ン共重合体、ウレタン重合体、アクリル酸エステルおよ
びメタクリル酸エステルの重合体または共重合体、スチ
レン−アクリル共重合体、シリコン−アクリル共重合
体、マレイン酸重合体などの合成樹脂の水分散体を使用
することができ、これらは単独あるいは複数混合して使
用できる。

【００２０】これらのバインダー樹脂の使用量は、非晶
質シリカ１００重量部に対して５重量部〜１００重量部
の範囲にあることが好ましい。すなわち、好適な結着力
を確保するために５重量部以上が好ましく、速やかなイ
ンク吸収性を得るために１００重量部以下が好ましい。

【００２１】バインダー樹脂については、特に記録画像
の耐水性および耐光性に与える影響を考慮した上で、特
定のものを選択するのが望ましく、具体的には、合成樹
脂の水分散体とポリビニルアルコールとを併用すること
が好ましい。ポリビニルアルコールは、種々のバインダ
ー樹脂の中でも、光の照射に対して染料の変退色を抑制
する効果が高いが、一方では、水溶性樹脂であるがゆえ
に、記録画像を形成している染料とともにインク受容層
自体が水に溶出する事態を招きかねない。そこで、これ
を回避するためにポリビニルアルコールに加えて合成樹
脂の水分散体を併用する。このようにすれば、インク受
容層自体の耐水性を高めることができるので、上記した
水への溶出を防止できる。これらの使用量については、
合成樹脂の水分散体とポリビニルアルコールとの重量比
（合成樹脂の水分散体／ポリビニルアルコール）が１０
／１〜１０／５０の範囲となるように設定するのが好ま
しい。前記の重量比が１０／１よりも大きいと、光の照
射に対して染料の変退色を抑制する効果（すなわち耐光
性）が低下し、１０／５０よりも小さいと、水への溶出
を防止する効果（すなわち耐水性）が低下する。

【００２２】＜カチオン性物質について＞本発明では、
インク受容層に含有させるカチオン物質として、平均分
子量２万〜２２万のジメチルジアリルアンモニウムクロ
ライド重合物を使用する。このカチオン物質は、他のカ
チオン性物質と比較して記録画像の耐水性および耐光性
を付与する効果が優れている。ジメチルジアリルアンモ
ニウムクロライド重合物は、重量平均分子量が２万〜２
２万の範囲にあることが必要であり、２万〜９万の範囲
にあることがより好ましい。ここでいう重量平均分子量
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて分子
量分布を求め算出した値である。先に述べたように、ジ
メチルジアリルアンモニウムクロライド重合物の重量平
均分子量が２万〜２２万の範囲から外れると、非晶質シ
リカへの吸着形態に偏りが生じ、分布状態も不均一にな
るため、耐水性および耐光性が低下する。

【００２３】ジメチルジアリルアンモニウムクロライド
重合物の使用量は、非晶質シリカ１００重量部に対して
0.５重量部〜３０重量部の範囲にあることが好ましい。
好適な耐水性を確保するために0.５重量部以上が好まし
く、耐光性への悪影響を防ぐために３０重量部以下が好
ましい。

【００２４】＜インク受容層について＞本発明のインク
ジェット被記録材におけるインク受容層には、非晶質シ
リカとバインダー樹脂とカチオン性物質の各成分の他
に、必要に応じて種々の添加剤を適宜選択して使用する
ことができる。例えば、表面調整剤や消泡剤、分散剤、
ｐＨ調整剤、粘性調整剤、架橋剤、着色染料、着色顔
料、蛍光増白剤、防黴剤、防腐剤、帯電防止剤、潤滑剤
などを使用することができる。

【００２５】インク受容層の厚さは一般に１μｍ〜１０
０μｍであることが好ましい。すなわち、充分なインク
吸収性を得るとともに裏面へのインク裏抜けを防止する
ために１μｍ以上が好ましく、白抜けによる印字濃度の
低下を抑えるために１００μｍ以下が好ましい。

【００２６】インク受容層は、インクジェット被記録材
の用途に合わせて単層あるいは２層以上の積層構造にし
てもよく、上層のみならず、下層あるいは中間層として
用いてもよい。例えば、本発明に係るインク受容層を下
層とし、これの上に、光沢性など表面に特定の風合いを
付与する層や、本発明に係るインク受容層よりも高画質
の印字が得られる層、保護層、ＵＶ吸収層などを上層と
して設けることができる。

【００２７】本発明のインクジェット被記録材におい
て、インク受容層は、基材の一方の面側にのみ設けても
よいし、両面側に設けてもよい。また、基材の一方の面
（例えば表面）側にインク受容層を設け、他方の面（例
えば裏面）側に異なる種類のインク受容層や帯電防止
層、着色層、蒸着層、カール防止層、滑りを調整する
層、インクジェットプリンターによる記録以外の印刷に
適した層、装飾層、接着層などを必要に応じて設けても
よい。

【００２８】＜基材について＞インク受容層を設ける基
材は、紙や樹脂フィルム、布、金属箔などインクジェッ
トプリンターで印字可能な形状のものであればいずれも
用いることができる。これらの基材とインク受容層との
間には必要に応じて種々の層を設けることができる。例
えば、基材とインク受容層との間に、平滑性を有する層
を設けた場合には、インク受容層を形成した後に光沢性
が向上し、接着性を向上させる層を設けた場合には、イ
ンク受容層など上層の剥離や粉落ちを抑制できる。基材
とインク受容層との間に設けることのできる層として
は、上記のほか、帯電防止層、着色層、蒸着層などが挙
げられる。

【００２９】＜インクジェット被記録材の製造方法につ
いて＞本発明のインクジェット被記録材は、いかなる製
造方法を用いて製造してもよく、目的に応じて好適な方
法を適宜選択して製造することができる。一例を挙げる
と、ブレードコーター、エアーナイフコーター、リバー
スコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコ
ーターまたはキャストコーターなど、一般公知の塗工機
を用いて、基材上に上記インク受容層の構成材料からな
る塗工液を塗布し、ドライヤーを用いて乾燥することに
より製造することができる。

【００３０】また、必要に応じて、塗工表面をスーパー
カレンダーやグロスカレンダー、サーモプラニッシャー
等の平滑化処理機によって処理して平滑性を高めてもよ
い。ただし、平滑化処理が強すぎるとインク受容層中に
形成されていた空隙が潰されてしまい、インクの吸収性
が低下するため、処理の程度を最適化することが必要で
ある。

【００３１】＜印刷時に用いるインク等について＞本発
明のインクジェット被記録材を用いて記録画像を形成す
る際、言い換えればインクジェットプリンターにより本
発明のインクジェット被記録材上に画像を印刷する際に
は、ノズルの目詰まり防止や、色調の鮮やかさ、環境に
対する安全性などの利点から、水溶性染料を含有する水
性インクを用いることが好ましい。水性インクの着色剤
としては、直接染料や酸性染料、塩基性染料、反応性染
料などの水溶性染料や分散染料、水分散性の各種染料を
使用することができる。中でも直接染料や酸性染料を選
択して水性インクとした場合、本発明のインクジェット
被記録材に形成した記録画像は耐水性の向上が著しい。

【００３２】上記の着色剤を溶解または分散させるため
の溶剤としては、水および／または水溶性有機溶剤が使
用できる。後者の水溶性有機溶剤としては、例えば、エ
タノール、メタノール、１−プロパノール、２−プロパ
ノール等のアルコール系溶剤や、エチレングリコール、
ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエ
チレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセ
リン等の多価アルコール系溶剤、エチレングリコール低
級アルキルエーテル、プロピレングリコール低級アルキ
ルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチ
ル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、ポリアルキレンオ
キシド系溶剤、ピロリドン系溶剤、ホルムアミド等が挙
げられる。

【００３３】インクには各種の添加剤を含有させること
ができる。例えば、インクジェットプリンターにおける
ノズル目詰まりを防止するための尿素及びその誘導体等
からなる各種保湿剤、インクの浸透性やドット径を調整
するための各種界面活性剤、水溶性高分子などの粘度調
整剤、消泡剤、ｐＨ調整剤、防黴剤、防腐剤、帯電防止
剤、導電性付与剤、防錆剤などの添加剤を、適宜選択し
て使用することができる。

【００３４】

【実施例】以下、本発明の実施例をその比較例とあわせ
て説明するが、下記の各実施例は本発明の内容を具体的
に例示するためのものであり、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。

【００３５】＜実施例１＞まず、下記の成分に水を加え
て混合攪拌し、固形分濃度２０重量％のインク受容層形
成用の塗料を調製した。

【００３６】カープレックスＢＳ−３０４Ｎ（塩野義製薬（株）製、非晶質シリカ）１００重量部ヨドゾールＣＥ８４（日本エヌエスシー（株）製、酢酸ビニル系樹脂の水分散体、固形分５０％）４０重量部ポバールＰＶＡ２０３（（株）クラレ製、ポリビニルアルコール）１５重量部ユニセンスＣＰ−１０１（センカ（株）製、重量平均分子量３万のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、固形分３１％）３０重量部

【００３７】次いで、基材として８５ｇ／ｍ² のコート
紙用の原紙を用い、その一方の面に、＃７０のバーコー
ターを使用して上記の塗料を塗工した。その後、これを
ドライヤーで乾燥することにより、基材上にインク受容
層を有するインクジェット被記録材を作製した。

【００３８】＜実施例２＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例１で使用した成分に代えて、下記
の成分を使用したこと以外は、実施例１と同様にしてイ
ンクジェット被記録材を作製した。

【００３９】ミズカシルＰ−７８Ｄ（水澤化学工業（株）製、非晶質シリカ）１００重量部ボンコートＳＦＣ−５４（大日本インキ化学工業（株）製、アクリル系樹脂の水分散体、固形分４０％）９５重量部ＰＡＳ−Ｈ−５Ｌ（日東紡績（株）製、重量平均分子量４万のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、固形分２８％）４０重量部

【００４０】＜実施例３＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例１で使用した成分に代えて、下記
の成分を使用したこと以外は、実施例１と同様にしてイ
ンクジェット被記録材を作製した。

【００４１】カープレックスＢＳ−３０４Ｆ（塩野義製薬（株）製、非晶質シリカ）１００重量部パテラコールＩＪ１００（大日本インキ化学工業（株）製、ウレタン系樹脂の水分散体、固形分２６％）８０重量部ポバールＰＶＡ２１７（（株）クラレ製、ポリビニルアルコール）１０重量部ユニセンスＣＰ−１０３（センカ（株）製、重量平均分子量１４万のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、固形分３９％）２０重量部

【００４２】＜比較例１＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例１で使用したユニセンスＣＰ−１
０１の代わりに、シャロールＤＣ−９０２Ｐ（第一工業
製薬（株）製、重量平均分子量９千のジメチルジアリル
アンモニウムクロライド重合物、固形分５１％）を使用
したこと以外は、実施例１と同様にしてインクジェット
被記録材を製作した。

【００４３】＜比較例２＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例２で使用したＰＡＳ−Ｈ−５Ｌの
代わりに、ユニセンスＣＰ−１０５（センカ（株）製、
重量平均分子量４０万のジメチルジアリルアンモニウム
クロライド重合物、固形分３４％）を用いたこと以外
は、実施例２と同様にしてインクジェット被記録材を製
作した。

【００４４】＜比較例３＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例３で使用した成分からユニセンス
ＣＰ−１０３を除いたものを使用したこと以外は、実施
例３と同様にしてインクジェット被記録材を得た。

【００４５】＜比較例４＞インク受容層形成用の塗料を
調製する際に、実施例３で使用したカープレックスＢＳ
−３０４Ｆの代わりに、チタニックスＪＲ−３００（テ
イカ（株）製、酸化チタン）を使用したこと以外は、実
施例１と同様にしてインクジェット被記録材を製作し
た。

【００４６】＜評価項目＞実施例１〜３および比較例１
〜４で得られた各インクジェット被記録材を試験試料と
してそれぞれ用い、各試験試料ごとに以下の項目に関す
る試験を行って、それぞれの特性を評価した。試験方法
および試験結果についての判定基準は、それぞれ各項目
の箇所に記載した通りである。

【００４７】１．インク吸収性セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターＰＭ
７７０Ｃを用いて、ブラック（Ｋ）、シアン（Ｃ）、マ
ゼンタ（Ｍ）、イエロー（Ｙ）のベタを印字し、インク
ジェット被記録材を排出してから１０秒後、印字面にテ
ィッシュを押し当ててティッシュへのインク移りの有無
を確認した。（判定基準） ○：インク移りなし。 △：ややインク移りあり。 ×：インク移りあり。

【００４８】２．印字濃度上記の評価項目「１．インク吸収性」で印字した試験試
料を用いて、マクベス社製の濃度計ＲＤ９１５にて各色
印字部の濃度を測定した。この測定により得られる数値
が大きいほど印字濃度が高いことを示す。

【００４９】３．耐水性試験上記の評価項目「１．インク吸収性」で印字した試験試
料中のマゼンタ色を印字した部分を用い、これを２０℃
の水に３０分間浸漬し、ＢＹＫ社製の色差計カラーガイ
ドにて浸漬前後の変退色度（ΔＥ）を測定した。この測
定により得られる数値が小さいほど記録画像の変退色が
小さいことを示す。

【００５０】４．耐光性試験上記の評価項目「１．インク吸収性」で印字した試験試
料中のマゼンタ色を印字した部分を用い、これにアトラ
ス社製キセノンウェザオメータ―Ｃｉ６５により光を２
４時間照射し、ＢＹＫ社製の色差計カラーガイドにて照
射前後の変退色度（ΔＥ）を測定した。この測定により
得られる数値が小さいほど記録画像の変退色が小さいこ
とを示す。

【００５１】＜試験結果＞以上の各項目についての試験
結果を表１に示す。

【００５２】

【表１】

【００５３】表１から明らかなように、本発明の各実施
例で得られたインクジェット被記録材は、比較例１ない
し４に係る各インクジェット被記録材と比べると、耐水
性および耐光性が優れていることがわかる。特に、カチ
オン性物質として重量平均分子量４万のジメチルジアリ
ルアンモニウムクロライド重合物を用いた実施例２によ
れば、きわめて耐水性に優れたインクジェット被記録材
が得られる。また、バインダー樹脂として酢酸ビニル系
樹脂の水分散体（商品名：ヨドゾールＣＥ８４）を用い
た実施例１に係るインクジェット被記録材は、他のいず
れのものよりも耐光性に優れ、しかも耐水性も充分に満
足できるものである。

【００５４】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、インクジ
ェットプリンターにより画像等を印刷・記録する場合に
使用される印刷・記録媒体として、速やかなインク吸収
性と高い印字濃度といった良好な印字特性を有するだけ
でなく、記録画像の耐水性や耐光性といった保存特性に
も優れたインクジェット被記録材が得られる。こうし
て、近年のインクジェットプリンターにおける記録画像
の高画質化に特に適したインクジェット被記録材を実現
できる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号ＦＩテーマコート゛(参考）Ｃ０８Ｌ 39/00 Ｃ０８Ｌ 101/00 101/00 Ｂ４１Ｊ 3/04 １０１Ｙ (72)発明者大谷紀昭大阪府茨木市丑寅１丁目１番88号日立マクセル株式会社内Ｆターム(参考） 2C056 EA13 FB03 FB04 FC01 FC06 2H086 BA15 BA33 BA34 BA35 BA37 BA53 BA56 BA57 4J002 AB03W AB04W AB05W AC08W AD01W AD02W BB06W BC06W BD08W BE02W BE02X BF03W BG01W BG04W BG05W BG06W BH00W BJ00W BJ00Y CH02W CK02W CP17W DJ016 GS00 4J100 AN14P CA01 DA01 JA00

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】基材の少なくとも一方の面側に、非晶質
シリカとバインダー樹脂とカチオン性物質とを含有して
なるインク受容層を設けたインクジェット被記録材であ
って、前記カチオン性物質が重量平均分子量２万〜２２
万のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物か
らなることを特徴とするインクジェット被記録材。
【請求項２】基材の少なくとも一方の面側に、非晶質
シリカとバインダー樹脂とカチオン性物質とを含有して
なるインク受容層を設けたインクジェット被記録材であ
って、前記カチオン性物質が重量平均分子量２万〜９万
のジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物から
なることを特徴とするインクジェット被記録材。
【請求項３】バインダー樹脂は合成樹脂の水分散体と
ポリビニルアルコールとを含有してなる請求項１または
２に記載のインクジェット被記録材。
【請求項４】合成樹脂の水分散体とポリビニルアルコ
ールとの重量比が１０／１〜１０／５０である、請求項
３に記載のインクジェット被記録材。
【請求項５】水溶性染料を含有する水性インクを用い
て記録画像が形成されるものである、請求項１ないし４
のいずれかに記載のインクジェット被記録材。
【請求項６】水溶性染料は直接染料または酸性染料で
ある、請求項５に記載のインクジェット被記録材。