JP2001253074A - サーマル式インクジェットプリンタヘッド - Google Patents

サーマル式インクジェットプリンタヘッド

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JP2001253074A
JP2001253074A JP2000066178A JP2000066178A JP2001253074A JP 2001253074 A JP2001253074 A JP 2001253074A JP 2000066178 A JP2000066178 A JP 2000066178A JP 2000066178 A JP2000066178 A JP 2000066178A JP 2001253074 A JP2001253074 A JP 2001253074A
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Japan
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film
insulating film
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ink jet
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JP2000066178A
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English (en)
Inventor
Hideki Kamata
英樹 鎌田
Osamu Nakamura
修 中村
Satoshi Sakuraoka
聡 櫻岡
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Casio Computer Co Ltd
Original Assignee
Casio Computer Co Ltd
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】絶縁性の良い保護膜を均等に薄く被着した発熱
効率の良いサーマル式インクジェットプリンタヘッドを
提供する。 【解決手段】印字ヘッド30は共通電極39、発熱部3
6、個別配線電極41及びパッシベーション膜34の上
に、珪素化合物単独又はこの珪素化合物にガラス質形成
剤を添加した皮膜形成用塗布液を用いて、回転式塗布装
置により皮膜を形成し、ホットプレートで乾燥し、更に
焼成炉で焼成して、段差平滑用回転塗布膜48を形成す
る。これにより共通電極39の側壁39aと個別配線電
極41の側壁41aに形成されるハングオーバー部分の
段差の表面勾配を緩和した後、この段差平滑用回転塗布
膜48の上に、物理的な気相成長法であるスパッタ或は
真空蒸着等により、又は化学的気相成長法によりSiO
2 等の均等な厚さの絶縁膜49を成膜して、二層構造の
保護膜50を形成する。均等な厚さの絶縁膜49により
いずれの部分も漏れ無く良好な絶縁性が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膜厚が薄くても耐
腐食性及び絶縁性に優れる保護膜を備えた発熱素子を備
えてエネルギー効率が良く信頼性の高いサーマル式イン
クジェットプリンタヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、印字ヘッドからインクを用紙
面に吐出して印字を行うインクジェットプリンタがあ
る。このインクジェットプリンタによる印字方法は、印
字ヘッドのインク吐出面に多数配列されている微細な孔
(吐出ノズル)からインクの液滴を吐出させ、このイン
ク滴(印字ドット)を紙、布などの被記録材に着弾させ
て吸収させ、これにより文字や画像等の印字を行なうも
のであり、騒音の発生が少なく、特別な定着処理を要す
ることもなく且つフルカラー記録も比較的容易な記録方
法である。
【0003】インクの液滴を吐出させる方法としては、
微細なインク加圧室に発熱部を配して、この発熱部に電
気パルスを与え高速でインクと発熱部の界面に気泡を発
生させ、その気泡の成長力を利用して吐出ノズルから液
滴を吐出させるサーマル式のインクジェットプリンタヘ
ッドがある。
【0004】上記のサーマル式のインクジェットプリン
タヘッドには、インク滴の吐出方向により、二通りの構
成があり、一つは発熱部の発熱面に平行な方向へインク
を吐出する構成のものであり、他の一つは発熱部の発熱
面に垂直な方向にインクを吐出する構成のものである。
中でも発熱部の発熱面に垂直な方向にインク滴を吐出す
る構成のものは、ルーフシュータ型インクジェットプリ
ンタヘッドと呼称されており、発熱部の発熱面に平行な
方向へインクを吐出する構成のものに比較して、消費電
力が極めて小さくて済むことが知られている。
【0005】このルーフシュータ型のインクジェットプ
リンタヘッドの製法としては、例えば6×2.54mm
以上の直径の一枚のシリコンウエハ上に例えば90個以
上に区画された10mm×15mm程度の大きさの多数
のチップ基板の上に、LSI形成技術と薄膜形成技術を
利用して、多数の発熱部と、これらを個々に駆動する駆
動回路とインク流路と吐出ノズルとを一括してモノリシ
ックに形成する方法がある。
【0006】図4(a),(b),(c) は、そのような従来のイ
ンクジェットプリンタヘッド(以下、単に印字ヘッドと
いう)の製造方法を工程順に示す図であり、それぞれ一
連の工程においてチップ基板上に形成されていく状態の
概略の平面図と断面図を模式的に示している。尚、これ
らの図には、説明の便宜上、1列のみの吐出ノズルを備
えたモノクロ用印字ヘッドを示しているが、実際にはこ
のような印字ヘッドが複数個(通常は4個)連なった形
状で1個のチップ基板に形成されたものがフルカラー用
印字ヘッドとして一般的に実用化されている。
【0007】また、同図(c) には23個の吐出ノズルを
示しているが、実際には、設計上の方針によっても異な
るが64個、128個、256個等、多数の吐出ノズル
が形成されるものである。
【0008】図5(a),(b),(c) は、上段に図4(a),(b),
(c) の平面図をそれぞれ一部を拡大して詳細に示してお
り、図5(a),(b),(c) の中段には上段のA−A′断面矢
視図(同図(a) 参照)を示し、下段には上段のB−B′
断面矢視図(同図(a) 参照)示している。また、同図
(a),(b),(c) の中段に示す断面図は、それぞれ図4(a),
(b),(c) の下に示す断面図と同一のものである。尚、図
5(a),(b),(c) には、図示する上での便宜上、本来は上
記のように64個、128個又は256個というように
多数形成されるインク吐出ノズルを、5個のインク吐出
ノズルで代表させて示している。
【0009】この印字ヘッドの製造方法は、先ず、工程
1として、4×25.4mm以上のシリコン基板上に多
数細分化されたチップ基板の区画にそれぞれLSI形成
処理により駆動回路とその端子を形成すると共に、厚さ
1〜2μmの酸化膜(Si O 2 )を形成し、次に、工程
2として、薄膜形成技術を用いて、タンタル(Ta)−
シリコン(Si)−酸素(O)又はTa−Si−O−N
(窒素)からなる発熱抵抗体膜と、Ti−W等の密着層
を介在させてAuなどによる電極膜を順次積層形成す
る。そして、電極膜と発熱抵抗体膜をフォトリソグラフ
ィー技術によって夫々パターニングし、条形の発熱抵抗
体膜の発熱部とする領域を露出させその両側の発熱抵抗
体膜に重ねて配線電極を形成して、発熱部と両側の配線
電極とからなる発熱素子を形成する。この工程で発熱部
の位置が決められる。
【0010】図4(a) 及び図5(a) は、上記の工程1及
び工程2が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、チップ基板1の短手方向の一方の(図では右方の)
側端部近傍に沿って駆動回路2が形成され、チップ基板
1の長手方向の一方の(図では上方の)端部に駆動回路
端子2−1が形成されている(図4(a) 参照)。
【0011】そして、その上からチップ基板1の全面に
形成されたパッシベーション膜3の上に、発熱部4が形
成されている。発熱部4の一方の端部に共通電極5が接
続され、他方の端部と駆動回路2との間に個別配線電極
6が接続されている。上記の発熱部4、共通電極5、及
び個別配線電極6は1組となって条形状にパターン化さ
れて、各条が発熱素子を形成し、所定の間隔で平行に並
設されている。
【0012】これらの並設により、チップ基板1上に
は、発熱部列4′及び個別配線電極列2′が形成されて
いる。そして、共通電極5には、共通給電端子5−1が
形成されている(図4(a) 参照)。
【0013】続いて、工程3として、個々の発熱部4に
対応するインク加圧室及びこれらのインク加圧室にイン
クを供給するインク流路を形成すべく感光性ポリイミド
などの有機材料からなる隔壁部材をコーティングにより
高さ20μm程度に形成し、これをフォトリソ技術によ
りパターン化した後に、300℃〜400℃の熱を30
分〜60分加えるキュア(乾燥硬化、焼成)を行い、高
さ10μm程度の上記感光性ポリイミドによる隔壁をチ
ップ基板上に形成・固着させる。更に、工程4として、
ウェットエッチングまたはサンドブラスト法などにより
上記チップ基板の面に細長のインク供給溝を形成し、更
にこのインク供給溝に連通し基板下面に開口するインク
給送孔を形成する。
【0014】この工程4では、発熱部、配線電極、隔壁
などが形成されている表面側のインク供給溝と、裏面側
のインク給送孔では、形状が異なるため、表裏から別々
に加工を行う。例えば表面側にインク供給溝をチップ基
板の厚さ半分程度まで穿設し、裏面側からインク給送孔
を穿設して表裏に貫通させる。
【0015】図4(b) 及び図5(b) は、上述の工程3及
び工程4が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、細長いインク供給溝7及び丸又は角形のインク給送
孔8が形成され、インク供給溝7の左側に位置する共通
電極5部分と、右方の個別配線電極6が配設されている
部分、及び各発熱部4と発熱部4の間に、隔壁9(シー
ル隔壁9−1、9−2、区画隔壁9−3)が形成されて
いる。
【0016】上記の隔壁9は、個別配線電極6上のシー
ル隔壁9−2を櫛の胴とすれば、各発熱部4と発熱部4
との間に伸び出す区画隔壁9−3は櫛の歯に相当する形
状をなしている。これにより、この櫛の歯状の区画隔壁
9−3を仕切り壁として、その歯と歯の間の付け根部分
に発熱部4が位置する微細な区画部が、発熱部4の数だ
け形成される。
【0017】この後、工程5として、ポリイミドからな
る厚さ10〜30μmのフィルムのオリフィス板で、そ
の両面又は片面に接着剤としての熱可塑性ポリイミドを
極薄に例えば厚さ2〜5μmにコーテングした状態のも
のを、上記積層構造の最上層つまり隔壁の上に載置し、
真空中で200〜50℃で加熱しながら、9.8×10
-4Paの数倍の圧力で加圧し、これを数10分続けて、
そのオリフィス板を固着させる。続いて真空装置又はス
パッタ装置でTi、Ni、Cu又はAlなどの厚さ0.
5〜1μm程度の金属膜をオリフィス板表面に蒸着す
る。
【0018】更に、工程6として、オリフィス板表面の
上記金属膜をパターン化して、ポリイミドを選択的にエ
ッチングするマスクを形成し、続いて、例えばヘリコン
波によるドライエッチング等により上記の金属膜マスク
に従って吐出ノズルとして20μmφ〜40μmφの多
数の孔をオリフィス板に一括形成する。
【0019】図4(c) 及び図5(c) は、上述した工程5
と工程6が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、オリフィス板11が共通電極給電端子5−1及び駆
動回路端子2−1の部分を除く全領域を覆っており、シ
ール隔壁9−2及び区画隔壁9−3によって形成されて
いる区画部も上を覆われて隔壁9の厚さ10μmに対応
する高さの微細なインク加圧室12を形成して、その開
口をインク供給溝7方向に向けている。そして、これら
インク加圧室12の開口とインク供給溝7とを連通させ
る高さ10μmのインク流路13が形成されている。
【0020】そして、オリフィス板11には、インク加
圧室12の発熱部4に対向する位置に吐出ノズル14が
ドライエッチングによって形成されている。これによ
り、64個、18個又は56個の吐出ノズル14を1列
に備えた多数のモノカラー用印字ヘッド15がシリコン
ウェハ上に完成する。
【0021】ここまでが、シリコンウェハの状態で処理
される。そして、最後に、工程7として、ダイシングソ
ーなどを用いてシリコンウェハをスクライブラインに沿
ってカッテングして、チップ基板単位毎に個別に分割
し、実装基板にダイボンデングし、端子接続して、実用
単位のモノカラー用印字ヘッドが完成する。
【0022】上記のように1列の吐出ノズル14を備え
たモノカラー用印字ヘッド15はモノクロ用インクジェ
ットヘッドの構成であるが、通常フルカラー印字におい
ては、減法混色の三原色であるイエロー(Y)、マゼン
タ(M)、シアン(C)の3色に、文字や画像の黒部分
に専用されるブラック(Bk)を加えて合計4色のイン
クを必要とする。したがって最低でも4列のノズル列が
必要である。そして上述した製造方法によればモノカラ
ー用印字ヘッド15の構成をモノリシックに4列構成と
することは可能であり、各モノカラー用印字ヘッド15
のノズル列の位置関係も今日の半導体の製造技術により
正確に配置することが可能である。
【0023】図6(a) は、上述の図4及び図5に示した
チップ基板1、駆動回路2、駆動回路端子2−1、発熱
部4、共通電極5、共通電極給電端子5−1、個別配線
電極6、インク供給溝7、インク供給孔8、隔壁9、オ
リフィス板11、インク加圧室12、インク流路13、
吐出ノズル14の各部を1組としてなるモノカラー用印
字ヘッド15をヘッド素子として、このヘッド素子をや
や大きく区画したチップ基板16上に4列並べ、これに
より、1個のチップ基板16に4列のノズル列17(1
7a、17b、17c、17d)を形成してフルカラー
用印字ヘッド18を構成した例を示す図である。また、
図6(b) は、製造工程の途上にあるシリコウエハ19上
における上記のフルカラー用印字ヘッド18を示してい
る。
【0024】続いて、上述した工程2における発熱抵抗
体膜からなる発熱部4とその両側の導電層からなる共通
電極5及び個別配線電極6の形成について更に詳しく説
明する。
【0025】図7は、図4及び図5に示したチップ基板
1上における発熱部4と共通電極5及び個別配線電極6
を中心とする構成部分を更に詳しく示す模式的拡大断面
図である。尚、この図7は、図5(c) の中段に示す断面
図の詳細な拡大図であり、新たに図示する構成部分以外
の図5(a),(b),(c) に示した構成と同一構成部分には図
5(a),(b),(c) と同一の番号を付与して示している。
【0026】図7に示すように、チップ基板1の裏面に
は絶縁層21が形成され、表面には駆動回路2の上を含
む全面にパッシベーション膜3が形成されている。この
パッシベーション膜3の上一面に、Ta−Si−O系の
厚さ1000Å〜5000Åの発熱抵抗体膜22を形成
し、更にその上に、W−Ti系の厚さ1000Å〜30
00Åの下地配線膜23と、Au等の厚さ3000Å〜
10000Åの上部配線膜24を、スパッタ、真空蒸着
等の薄膜形成処理技術を用いて順次積層する。
【0027】次に、フォトリソグラフィー技術を用いて
上部電極膜24上にレジストパターンを形成した後、ヨ
ウ素系のエッチャントで上部配線膜24をエッチング
し、次に過酸化水素系のエッチャントで下地配線膜23
をエッチングし、フォトレジストを剥離・除去して、下
地電極膜23と上部電極膜24から成る二層構造の共通
電極5及び個別配線電極6を形成する。
【0028】このように電極を二層構造にするのは、発
熱抵抗体膜22と良導体の上部電極膜24とでは良い接
着性が得られないため、発熱抵抗体膜22と上部電極膜
24との両方に良い接着性を有する下地電極膜23を介
在させる必要があるからである。
【0029】続いて、再びフォトリソグラフィー技術を
用いて、全面にレジストパターンを形成した後、露出し
ている発熱抵抗体膜22をふっ酸系のエッチャントでエ
ッチングし、フォトレジストを剥・離除去して発熱部4
の発熱抵抗体膜パターンを形成する。この後、前述した
ように、隔壁9を形成し、オリフィス板11を積層し、
インク加圧室12を形成し、吐出ノズル14を穿設す
る。
【0030】ところで、上述のようなインクジェットプ
リンタヘッドを駆動して印字を行っていると、発熱部4
で膜気泡が発生するばかりでなく、共通電極5、個別配
線電極6、インク供給溝7の内壁、及びインク供給孔8
の内壁にも、微細な気泡が発生する。
【0031】このようにインク流路内に気泡が発生する
と、インクの流動だけでなく、インク滴を吐出する際の
圧力の伝わり方にもその悪影響が及ぶようになり、全体
としてインクの良好な吐出性能を阻害し、印字品質を顕
著に低下させるという問題が発生する。
【0032】上記の微細気泡発生の要因を調べてみる
と、次のようなことがわかった。通常のインクジェット
プリンタ用のインクは一般に弱電解質溶液である。そし
て、駆動回路2の論理回路には駆動回路端子2−1(図
4(a) 参照)を介して5Vの信号用電源電圧が供給さ
れ、共通電極5には給電用端子5−1(図4(a) 参照)
を介して発熱駆動用電源から15〜20Vの駆動電圧が
供給されている。また、チップ基板1は、図7に示すよ
うに、接地されている。そして、発熱部4、これに接続
する共通電極5と個別配線電極6の一部、及びインク供
給溝7とインク供給孔8の内壁は、インクに直接曝され
ている。
【0033】他方、駆動回路2の不図示の駆動トランジ
スタからなるドライバがオフのときは、共通電極5、発
熱部4及び個別配線電極6は同電位になっており、チッ
プ基板1との間には、15〜20Vの電位差が生じてい
る。また、駆動回路2の不図示の論理回路により、いず
れかのドライバが選択されてオンとなり、給電用端子5
−1、共通電極5、発熱部4、個別配線電極6、接地配
線と順次電流が流れて、選択された発熱部4が発熱する
ときにおいても、個別配線電極6の電位は発熱部4での
電圧降下分共通電極5より低くなっているだけである。
【0034】したがって、ドライバのオン/オフに拘ら
ず、発熱駆動用電源がオンしている間は、共通電極5、
発熱部4及び個別配線電極6は、接地されたチップ基板
1との間に略15〜20Vの電位差が生じており、共通
電極5及び個別配線電極6と、インク供給溝7及びイン
ク供給孔8の内壁との間に、インクの固有抵抗を介した
電気回路が形成される。
【0035】そして、この電気回路に流れる電流による
電気化学反応によりインクが電気分解され、陽極側であ
る共通電極5、発熱部4、及び個別配線電極6では酸素
が発生し、陰極側であるインク供給溝7及びインク供給
孔8の内壁には水素が発生する。そして、これらが微細
な気泡となってインク吐出に悪影響を及ぼすということ
が判明した。
【0036】また、上記のように発熱部4を発熱駆動す
る個別配線電極6及び共通電極5は前述したように、下
地電極膜23と上部電極膜24から成る二層構造の電極
層を一括してエッチングすることによって形成されてお
り、共通電極5及び個別配線電極6は、単に表面部ばか
りでなく、それらの二層構造電極の側壁5a及び6aも
常時インクに接触している。
【0037】一般に、固体または液体の異種の導電体の
相が接触したとき、両相の外部電位(表面すぐ外側の真
空部分の電位)の間に生じる電位差をボルタ電位差また
は接触電位差というが、両相が電荷を持たない金属であ
る場合、その接触電位差によって、電子の仕事関数の小
さい金属から大きい金属に向かってトンネル効果と呼ば
れる電子の移動が発生する。
【0038】このような電子の移動は本来は両金属中の
電子の電気化学的ポテンシャルが等しくなるところで平
衝に達するが、上部電極膜24(例えばAu)と下地電
極膜23(例えばW−Ti)の場合は、その側壁5a及
び6aがインクという電解質の中に存在するため平衝反
応に到達することが無く、アノード溶解反応が連続的に
生じて接合部から腐蝕反応(電蝕作用)がどんどん進行
し、ついには印字ヘッド15の構造破壊を引き起こす。
【0039】図8は、上記の問題を解決すべく発熱部と
電極のインクとの接触面に絶縁保護膜を被着した従来の
構成を示す図である。尚、同図には、説明に必要な図7
に示した構成と同一構成部分には図7と同一の符号を付
与して示している。
【0040】図8に示すように、共通電極5及び個別配
線電極6は発熱部4と共に絶縁保護膜25によって全面
を覆われている。すなわち、共通電極5、発熱部4及び
個別配線電極6の表面ばかりでなく電極の二層構造を成
す下地電極膜23と上部電極膜24のインクに面する側
壁5′及び6′も絶縁保護層25に覆われている。
【0041】これにより、共通電極5、発熱部4及び個
別配線電極6が電解質(インク)から隔離された。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、インク
の電気分解による微細気泡の発生や二層構造の配線電極
の腐蝕を確実に防止するには、絶縁保護膜に必要且つ十
分な絶縁性が要求される。ところが、下地配線膜23と
上部配線膜24のように特に二層構造の配線電極の場合
は、真空蒸着等で連続成膜すると、二層構造の合計の膜
厚が5000Å〜18000Åになる電極膜において、
その側壁5a及び6aの部分で、下地配線膜23よりも
上部配線膜24がオーバーハングして形成される傾向が
ある。
【0043】このように、二層電極の側壁5a及び6a
がオーバーハング構造であると、スパッタ法又は真空蒸
着法により発熱部のエネルギー効率を低下させないよう
に3000Å以下の厚さで絶縁保護膜を薄く成膜しよう
とすると、オーバーハング構造部の角部の絶縁保護膜の
厚さが他の部分よりも薄くなるという問題が発生する。
【0044】一方、このような段差部分に対して被覆性
の良いプラズマCVD成膜法を用いた場合には、かなり
絶縁性が向上するが、これとても、下地配線膜23より
も上部配線膜24がオーバーハングしているような段差
が形成されている場合には、どうしても、側壁5a及び
6aにおける配線膜と抵抗膜との段差部分に電界が集中
するため、十分な絶縁性を確保することは非常に困難で
あった。
【0045】したがって、そのオーバーハング角部の耐
腐蝕性と確実な絶縁性を確保するために、つまりオーバ
ーハング角部の絶縁保護膜25に充分な厚みを持たせる
ためには、少なくとも5000Å以上、好ましくは10
000Å以上の厚さとなるように、絶縁保護膜25を全
体的に厚く形成せざるを得ない。
【0046】ところが、そうすると、発熱部4の上の絶
縁保護膜25も厚くなるため、インク吐出の為のエネル
ギー効率(発熱効率)が低下し、低消費電力化に逆行す
るという問題が発生する。
【0047】本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、
電極構造に拘わらず絶縁保護膜を均等な厚さで薄く被着
できて耐腐蝕性と絶縁性に優れる保護膜を備え、信頼性
が高く且つエネルギー効率の良いサーマル式インクジェ
ットプリンタヘッドを提供することである。
【0048】
【課題を解決するための手段】以下に、本発明に係わる
サーマル式インクジェットプリンタヘッドの構成を述べ
る。本発明のサーマル式インクジェットプリンタヘッド
は、インクを加熱して気泡を発生させ該気泡の圧力によ
りインクを所定方向に噴射させて記録を行うサーマル式
インクジェットプリンタヘッドであって、基板上に、発
熱抵抗体層からなる発熱部の両端に配線電極層が電気的
に接続されて成るインクを加熱する為の発熱素子を複数
個設置し、上記発熱抵抗体層及び上記配線電極層の少な
くともインクと接触する表面で段差を形成する部分に絶
縁性を備えた保護膜を被覆し、該保護膜は、上記段差を
形成する部分の表面勾配を緩和するための段差平滑用膜
と絶縁膜とからなる多層膜で構成される。
【0049】上記保護膜は、例えば請求項2記載のよう
に、上記発熱素子の表面に段差平滑用膜として回転塗布
膜を被着し、該段差平滑用回転塗布膜の上に絶縁膜を積
層してなることが好ましく、この場合、絶縁膜は、例え
ば請求項3記載のように、物理的気相成長法又は化学的
気相成長法により形成すると良い。
【0050】また、例えば請求項4記載のように、上記
段差平滑用回転塗布膜は珪素化合物からなり、上記絶縁
膜も珪素化合物からなるように構成しても良い。また、
上記保護膜は、例えば請求項5記載のように、発熱素子
表面に上記絶縁膜を被着し、該絶縁膜の上に段差平滑用
回転塗布膜を積層してなるように構成してもよい。そし
て、この場合は、上記発熱抵抗体層は、例えば請求項6
記載のように、Ta−Si−O−N系化合物からなり、
上記絶縁膜は、Ta−Si−O系化合物からなるように
構成するのが好ましい。
【0051】更に、上記保護膜は、例えば請求項7記載
のように、上記発熱素子の表面に第1絶縁膜を被着し、
該第1絶縁膜の上に段差平滑用回転塗布膜を積層し、更
に該段差平滑用回転塗布膜の上に第2絶縁膜を積層して
なるように構成しても良い。そして、この場合は、上記
発熱抵抗体層は、例えば請求項8記載のように、Ta−
Si−O−N系化合物からなり、上記第1絶縁膜は、T
a−Si−O系化合物からなるように構成することが好
ましい。また、上記第1絶縁膜は、例えば請求項9記載
のように、その膜厚が上記第2絶縁膜の膜厚よりも薄く
形成されていることが好ましい。
【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら説明する。図1は、第1の実施の形態に
おけるサーマル式のインクジェットプリンタヘッド(以
下、単に印字ヘッドという)の模式的側断面図である。
同図に示す印字ヘッド30において、チップ基板31、
裏面の絶縁層32、表面の駆動回路33、パッシベーシ
ョン膜34、抵抗膜35、発熱部36、下地配線膜3
7、上部配線膜38、これらから成る二層構造の共通電
極39と個別配線電極41、インク供給溝42、インク
供給孔43、隔壁44、オリフィス板45、インク加圧
室46、及び吐出ノズル47の構成は、図7に示した印
字ヘッド15におけるチップ基板1、裏面の絶縁層2
1、表面の駆動回路2、パッシベーション膜3、抵抗膜
22、発熱部4、下地配線膜23、上部配線膜24、共
通電極5、個別配線電極6、インク供給溝7、インク供
給孔8、隔壁9、オリフィス板11、インク加圧室1
2、及び吐出ノズル14の構成と同一である。
【0053】そして、図1の印字ヘッド30において
は、上記の共通電極39、発熱部36、個別配線電極4
1及びパッシベーション膜34の上に被覆される絶縁保
護膜(以下、単に保護膜ともいう)50の構成が、図7
の印字ヘッド15の絶縁保護膜25の構成と異なる。す
なわち、本例において、保護膜50は、段差平滑用回転
塗布膜48と絶縁膜49とからなる二層構造の膜で形成
されている。
【0054】本実施形態では、段差平滑用回転塗布膜4
8として、例えばSiO2 等の珪素化合物単独又はこの
珪素化合物にP、Al、As、Ti等の化合物のガラス
質形成剤を添加したものを用いる。なお、SiO2 等の
珪素酸化物に金属酸化物を含有させたものも、段差平滑
用回転塗布膜48として好適に用いることができる。
【0055】SiO2 系の皮膜形成用塗布液を用いる場
合は、スピンナー等の回転式塗布装置により、濃度1.
5〜5.9(重量%)の塗布液を滴下し、チップ基板3
1つまりこれらのチップ基板31が多数形成されている
シリコンウエハを、回転数1000〜6000(回毎
分)で一定時間回転させて、所望の厚さ例えば200〜
2000Åの範囲の厚さの皮膜、すなわち段差部の表面
勾配を緩和する為の段差平滑用回転塗布膜48を塗布す
ることができる。
【0056】この段差平滑用回転塗布膜48の厚さを2
00〜2000Åの範囲のいずれに設定するかは、上記
の塗布液濃度1.5〜5.9(重量%)とスピンナーの
回転数1000〜6000(回毎分)の条件を適宜に組
み合わせることにより達成される。この回転式塗布装置
により成膜される段差平滑用回転塗布膜は、常温、常圧
で容易に所望の皮膜が得られ、量産化が可能である。ま
た、塗布液の濃度やスピンナーの回転速度などを変えて
膜厚を自由にコントロールすることが容易にできる。
【0057】この後、上記塗布後の溶剤を除去するため
に約150℃のホットプレートで数分間乾燥し、更に焼
成炉により400〜500℃で約30分間焼成する。こ
れにより、図1に示すように、保護膜50の下部層の皮
膜である段差平滑用回転塗布膜48が完成する。これに
より、共通電極39の側壁39a及び個別配線電極41
の側壁41aに形成されているオーバーハング部分の段
差の表面勾配が緩和される、つまり段差が平滑化され
る。
【0058】尚、この段差平滑用回転塗布膜48を形成
するための液体材料としては、最終膜の材質が絶縁性を
有していて回転塗布に適するものであれば、いずれの材
料を使用しても良い。また、2000〜10000Åの
皮膜を形成する場合は、珪素酸化物の含有量の多い皮膜
形成用塗布液を用いると良い。
【0059】次に、上記の段差平滑用回転塗布膜48の
上に、絶縁膜49を形成する。この絶縁膜49の成膜で
は、物理的な気相成長法(PVD:Physical Vapor Dep
osition )であるスパッタ、真空蒸着等により、 SiO
2 、TaSiO等の酸化物の薄膜を形成するか又は化学
的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)
によりSiO2 、SiN等の薄膜を成膜する。こによ
り、保護膜50の上部層の皮膜である絶縁膜49が完成
する。
【0060】上述したように段差平滑用回転塗布膜48
によって予め共通電極39の側壁39a及び個別配線電
極41の側壁41aに形成されているオーバーハング部
分の段差部の表面勾配が緩和されているので、上記の絶
縁膜49は、段差平滑用回転塗布膜48の上に均等な厚
さで且つ薄く形成することができる。
【0061】すなわち、発熱部36の発熱抵抗体膜厚5
000Å〜18000Åに対して、段差平滑用回転塗布
膜48を膜厚500Å〜2000Åで形成し、その上
に、絶縁膜49を膜厚500Å〜3000Åで形成する
ことができる。上記のように絶縁膜49は、共通電極3
9の側壁39a及び個別配線電極41の側壁41aのハ
ングオーバー部分においても、その部分の表面勾配が緩
和された上に均等な厚さに形成されるので、電極の表面
は勿論のこと、側壁39a及び41aの部分においても
充分な絶縁性が得られる。
【0062】尚、上記の絶縁膜49は、絶縁性を有する
材料であれば材質については特に限定されるものではな
いが、下部層の段差平滑用回転塗布膜48が珪素化合物
系である場合は上部層の絶縁膜49も珪素化合物である
方が密着性等の面で良い結果が得られる。
【0063】図2は、第2の実施の形態における印字ヘ
ッドの模式的側断面図である。尚、同図に示す印字ヘッ
ド30′においては、保護膜以外の部分の構成は、図1
に示した印字ヘッド30と同一の構成であるので、説明
に要する部分と新たな構成の保護膜の部分以外には番号
の付与を省略している。
【0064】図2に示す印字ヘッド30′において、発
熱部36、共通電極39、個別配線電極41及びパッシ
ベーション膜34の上に形成される保護膜51は、下部
層の絶縁膜52と上部層の段差平滑用回転塗布膜53と
から成る。本例では、上記の発熱部36を形成する抵抗
膜35は、Ta−Si−O−N系化合物からなる薄膜で
形成されており、絶縁膜52はTa−Si−O系化合物
からなる絶縁膜である。そして、先に絶縁膜52を下部
層として形成し、この絶縁膜52の上に絶縁性のある段
差平滑用回転塗布膜53を形成する。すなわち、図1の
印字ヘッド30の場合とは、絶縁膜と段差平滑用回転塗
布膜の成膜の順序が入れ代わって逆になっている。
【0065】成膜の順序が入れ代わることに応じて成膜
の方法も変り、最初に物理的気相成長法又は化学的気相
成長法によるTa−Si−O系の絶縁層52が500Å
〜3000Åの厚さで成膜され、次に回転式塗布装置に
よる段差平滑用回転塗布膜53が厚さ500Å〜200
0Åで成膜される。
【0066】このように、電極の側壁下方角部の絶縁性
に問題を有するにも拘らず絶縁層の形成を先に行う理由
は、Ta−Si−O−N系(又はTa−Si−O系でも
良い)から成る発熱部36を形成する抵抗膜35は、大
気中でアニールした場合、表面にTa−Si−O系との
密着性の良い自己酸化膜が形成されるからであり、使用
されるインクの導電性が低く、インクによる腐蝕や電気
分解の問題よりもキャビテーション損傷の問題が重要視
される場合、すなわち、発熱部36と絶縁層52との密
着性が問われる場合には、このように、Ta−Si−O
−N系又はTa−Si−O系の発熱部36の上にTa−
Si−O系の絶縁膜52を積層した方が相互の密着性が
よく、良好なキャビテーション耐性が得られるからであ
る。
【0067】とはいえ、Ta−Si−O系の絶縁膜52
は、通常スパッタにより成膜するため、上述したように
電極の側壁の段差部分の保護が不十分である。この保護
の不充分な段差部分を更に保護して、この部分の絶縁性
を確保するために、絶縁膜52の上に更に絶縁性の段差
平滑用回転塗布膜53を成膜する。これにより、絶縁膜
52の絶縁性の不充分な側壁段差部分の表面勾配が緩和
されて、必要な絶縁性が確保される。
【0068】図3は、第3の実施の形態における印字ヘ
ッドの模式的側断面図である。尚、同図に示す印字ヘッ
ド30″において、新たな構成となる保護膜以外の部分
の構成は、図1に示した印字ヘッド30と同一の構成で
あるので、それらの構成部分には図1と同一の番号を付
与して示している。また、図3には、隔壁及びオリフィ
ス板の図示を省略している。
【0069】図3に示す印字ヘッド30″は、共通電極
39、発熱部36、個別配線電極41及びパッシベーシ
ョン膜34の上に被覆される保護膜54は、共通電極3
9、発熱部36、個別配線電極41及びパッシベーショ
ン膜34の上に直接被着される第1絶縁膜55、この第
1絶縁膜55の上に積層された段差平滑用回転塗布膜5
6、この段差平滑用回転塗布膜56に積層された第2絶
縁膜57から成る。
【0070】このように保護膜54を多層構造とし、こ
の場合も発熱部36つまり抵抗膜34にはTa−Si−
O−N系化合物を用い、これに直接重畳される第1絶縁
膜55にはTa−Si−O系化合物を用いて、厚さ10
0Å〜200Åμmで成膜する。また、段差平滑用回転
塗布膜56には上述したような適宜の皮膜形成用液体材
料を用いて厚さ500Å〜2000Åで成膜する。そし
て、更にその上に第2絶縁膜57を適宜な絶縁皮膜形成
材料を用いて厚さ500Å〜3000Åで成膜する。
【0071】上記のようにTa−Si−O−N系化合物
の発熱部36に対して第1絶縁膜55がTa−Si−O
系化合物であるので、発熱部36と第1絶縁膜55との
密着性は極めて強く、優れたキャビテーション耐性を有
する発熱部36の構造が得られる。
【0072】また、この第1絶縁膜55の電極側壁下方
角部の段差部の表面勾配を段差平滑用回転塗布膜56に
よって緩和した後、第2の絶縁層57を積層しているの
で、この最も絶縁性が要求される部分に対してより確実
な絶縁性が得られる。
【0073】尚、上記の例では、段差平滑用膜として回
転塗布膜を用いているが、段差平滑用膜はこれに限ら
ず、浸漬法等の他の方法によっても形成することが可能
である。
【0074】また、第1絶縁膜55の膜厚が第2絶縁膜
57の膜厚よりも薄く形成されているが、第1絶縁膜5
5、第2絶縁膜57ともに同じ厚さであっても良く、ま
た、第1絶縁膜55の膜厚が第2絶縁膜57の膜厚より
も厚くなるように形成しても良い。
【0075】更にまた、表面平滑性を重視する場合は、
保護膜54の三層構造を、上記のように第1絶縁層、段
差平滑用回転塗布膜、第2絶縁層とするのではなく、第
1段差平滑用回転塗布膜、絶縁層、第2段差平滑用回転
塗布膜となるように構成しても良い。
【0076】加えて、本発明は、発熱素子とその駆動回
路を同一基板上に設置したモノリシック型インクジェッ
トプリンタヘッドに限らず、発熱素子と駆動回路基板を
別個の基板に配設したインクジェットプリンタヘッドに
も好適に適用できることは勿論である。
【0077】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、発熱素子に被着する保護膜を段差平滑膜と絶縁膜
からなる多層構造膜とするので、電極が多層に形成され
て側壁や端面にオーバーハング状の段差が形成されてい
ても必要最小限な膜厚で必要な絶縁性及び耐腐食性を十
分に確保することができ、耐キャビテーション性に優れ
ると共にインクの電気分解による気泡の発生が確実に防
止され且つエネルギー効率に優れたインクジェットプリ
ンタヘッドを提供することができる。
【0078】即ち、本発明の第1の実施の形態のように
構成することにより、発熱部や電極を保護する保護膜
を、インクと直接接触する発熱部、共通電極及び個別配
線電極に液状材料を用いて段差平滑用回転塗布膜を形成
して二層構造の電極側壁に形成される段差部分の表面勾
配を緩和した後その上に絶縁膜を成膜して形成するの
で、薄いながらも均一な厚さの絶縁膜を形成することが
可能となり、これにより、保護膜の厚さを抑制して発熱
部のエネルギー損失を低減させてエネルギー効率を高め
ると共に信頼性の高い絶縁性保護膜を有する高密度で高
精細なサーマル式インクジェットプリンタヘッドを提供
することが可能となる。
【0079】また、本発明の第2の実施の形態のように
構成することにより、発熱部との密着性が良い絶縁膜を
先に成膜してから絶縁性を有する液体材料を用いて段差
平滑用回転塗布膜を形成するので、キャビテーション耐
性により優れた発熱部を形成すると共に絶縁性の不充分
な側壁段差部分の表面勾配が緩和されて、より良い絶縁
性が確保されるようになる。
【0080】また、本発明の第3の実施の形態のように
構成することにより、保護膜を、発熱部と密着性の良い
絶縁膜と段差平滑用回転塗布膜と他の絶縁膜から成る三
層構造とするので、薄い保護膜ながらエネルギー効率、
絶縁性、キャビテーション耐性が共に良好なサーマル式
インクジェットプリンタヘッドの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるサーマル式のインク
ジェットプリンタヘッドの模式的側断面図である。
【図2】第2の実施の形態におけるサーマル式のインク
ジェットプリンタヘッドの模式的側断面図である。
【図3】第3の実施の形態におけるサーマル式のインク
ジェットプリンタヘッドの模式的側断面図である。
【図4】(a),(b),(c) は従来の印字ヘッドの製造方法を
工程順に模式的に示す概略の平面図と断面図である。
【図5】(a),(b),(c) の上段は図4(a),(b),(c) の一部
拡大詳細図、中段は上段のA−A′断面矢視図、下段は
上段のB−B′断面矢視図である。
【図6】(a) はモノカラー用印字ヘッドを1個のチップ
基板上に4列並べてフルカラー用印字ヘッドを構成した
例を示す図、(b) は製造工程の途上にあるシリコウエハ
上におけるフルカラー用印字ヘッドを示す図である。
【図7】従来の発熱部、共通電極及び個別配線電極を中
心する構成部分を更に詳しく示す模式的拡大断面図であ
る。
【図8】電極腐蝕の問題を解決すべく提案されている電
極の側壁部分の絶縁膜の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 チップ基板 2 駆動回路 2−1 駆動回路端子 3 パッシベーション膜 4 発熱部 4′ 発熱部列 5 共通電極 5a 側壁 5−1 共通電極給電端子 6 個別配線電極 6a 側壁 6′ 個別配線電極列 7 インク供給溝 8 インク給送孔 9 隔壁 9−1、9−2 シール隔壁 9−3 区画隔壁 11 オリフィス板 12 インク加圧室 13 インク流路 14 吐出ノズル 15 モノカラー用インクジェットプリンタヘッド 16 チップ基板 17(17a、17b、17c、17d) ノズル列 18 フルカラー用インクジェットプリンタヘッド 19 シリコウエハ 21 絶縁層 22 抵抗膜 23 下地電極膜 24 上部電極膜 25 絶縁保護膜 30、30´、30″ サーマル式インクジェットプリ
ンタヘッド 31 チップ基板 32 絶縁層 33 駆動回路 34 パッシベーション膜 35 抵抗膜 36 発熱部 37 下地配線膜 38 上部配線膜 39 共通電極 41 個別配線電極 42 インク供給溝 43 インク供給孔 44 隔壁 45 オリフィス板 46 インク加圧室 47 吐出ノズル 48、53 段差平滑用回転塗布膜 49、52 絶縁膜 50、51、54 保護膜 55 第1絶縁膜 56 段差平滑用回転塗布膜 57 第2絶縁膜
フロントページの続き (72)発明者 櫻岡 聡 東京都青梅市今井3丁目10番6号 カシオ 計算機株式会社青梅事業所内 Fターム(参考) 2C057 AF53 AF66 AF70 AG46 AG99 AP02 AP52 AP53 AP54 AP57 BA04 BA13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを加熱して気泡を発生させ該気泡
    の圧力によりインクを所定方向に噴射させて記録を行う
    サーマル式インクジェットプリンタヘッドであって、 基板上に、発熱抵抗体層からなる発熱部の両端に配線電
    極層が電気的に接続されて成るインクを加熱する為の発
    熱素子を複数個設置し、前記発熱抵抗体層及び前記配線
    電極層の少なくともインクと接触する表面で段差を形成
    する部分に絶縁性を備えた保護膜を被覆し、 該保護膜は、前記段差を形成する部分の表面勾配を緩和
    するための段差平滑用膜と絶縁膜とからなる多層膜であ
    ることを特徴とするサーマル式インクジェットプリンタ
    ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記保護膜は、前記発熱素子の表面に段
    差平滑用回転塗布膜を被着し、該段差平滑用回転塗布膜
    の上に絶縁膜を積層してなることを特徴とする請求項1
    記載のサーマル式インクジェットプリンタヘッド。
  3. 【請求項3】 前記絶縁膜は、物理的気相成長法又は化
    学的気相成長法により形成されることを特徴とする請求
    項2記載のサーマル式インクジェットプリンタヘッド。
  4. 【請求項4】 前記段差平滑用回転塗布膜は、珪素化合
    物からなり、前記絶縁膜も珪素化合物からなることを特
    徴とする請求項2記載のサーマル式インクジェットプリ
    ンタヘッド。
  5. 【請求項5】 前記保護膜は、発熱素子表面に前記絶縁
    膜を被着し、該絶縁膜の上に段差平滑用回転塗布膜を積
    層してなることを特徴とする請求項1記載のサーマル式
    インクジェットプリンタヘッド。
  6. 【請求項6】 前記発熱抵抗体層は、Ta−Si−O−
    N系化合物からなり、前記絶縁膜は、Ta−Si−O系
    化合物からなることを特徴とする請求項5記載のサーマ
    ル式インクジェットプリンタヘッド。
  7. 【請求項7】 前記保護膜は、前記発熱素子の表面に第
    1絶縁膜を被着し、該第1絶縁膜の上に段差平滑用回転
    塗布膜を積層し、更に該段差平滑用回転塗布膜の上に第
    2絶縁膜を積層してなることを特徴とする請求項1記載
    のサーマル式インクジェットプリンタヘッド。
  8. 【請求項8】 前記発熱抵抗体層は、Ta−Si−O−
    N系化合物からなり、前記第1絶縁膜は、Ta−Si−
    O系化合物からなることを特徴とする請求項7記載のサ
    ーマル式インクジェットプリンタヘッド。
  9. 【請求項9】 前記第1絶縁膜は、その膜厚が前記第2
    絶縁膜の膜厚よりも薄く形成されていることを特徴とす
    る請求項7又は8記載のサーマル式インクジェットプリ
    ンタヘッド。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103328220A (zh) * 2011-01-31 2013-09-25 惠普发展公司,有限责任合伙企业 流体喷射组件和相关方法

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CN103328220A (zh) * 2011-01-31 2013-09-25 惠普发展公司,有限责任合伙企业 流体喷射组件和相关方法

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