JP2001247673A - ポリアミド、ポリアミド組成物、およびその製造方法 - Google Patents

ポリアミド、ポリアミド組成物、およびその製造方法

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JP2001247673A JP2000061846A JP2000061846A JP2001247673A JP 2001247673 A JP2001247673 A JP 2001247673A JP 2000061846 A JP2000061846 A JP 2000061846A JP 2000061846 A JP2000061846 A JP 2000061846A JP 2001247673 A JP2001247673 A JP 2001247673A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械強度特性、低吸水性、耐熱特性に優れて
おり、射出成形部品、特に精密部品を成形する際に金型
汚れが発生しにくいポリアミドを提供する。 【解決手段】 本発明のポリアミドは、(A)テレフタ
ル酸と、直鎖及び側鎖を含む炭素数4〜12の脂肪族ジ
アミンとから誘導される繰り返し単位を90〜100モ
ル%、必要に応じて(B)イソフタル酸と炭素数4〜1
2の脂肪族ジアミンとから誘導される繰り返し単位を0
〜10モル%、必要に応じて(C)炭素数4〜18の脂
肪族ジカルボン酸と炭素数4〜12の脂肪族ジアミンと
から誘導される繰り返し単位を0〜10モル%、必要に
応じて(D)炭素数6〜20のラクタムまたはアミノカ
ルボン酸から誘導される繰り返し単位を0〜10モル%
の量で有し、かつ該ポリアミド中に含まれる、60℃の
メタノール中に3時間浸漬することにより測定したメタ
ノール可溶性成分の含量が0.5重量%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアミド、およ
びそれを含む組成物、ならびにこれらの製造方法に関す
るものである。更に詳しくは、本発明は、射出成形の際
に金型汚れが少なく、射出成形部品、特に精密部品を効
率的に精度良く製造することができ、耐熱性、低吸水
性、そして強度特性に優れるポリアミド、およびそれを
含む組成物に関し、さらにこれらを効率的に製造する方
法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】従来からポリアミド、およびその
製造法に関しては、種々の提案がされており、例えば本
出願人は、既に特開平4−50230号公報において、
テレフタル酸単位50〜90モル%および4,4−ビフ
ェニルジカルボン酸単位50〜10モル%からなるジカ
ルボン酸単位と、炭素原子数4〜25の脂肪族ジアミン
成分単位からなり、かつ濃硫酸中30℃で測定した極限
粘度(η)が0.5〜3.0dl/gの範囲内にあるポリア
ミド樹脂、およびその製造方法について開示している。
【0003】このようなポリアミドは耐熱性、耐薬品性
などの化学的特性、および諸強度特性に関して優れてい
る。これらの特性により、上記ポリアミドは射出成形等
によって成形品として広く用いられており、特に電気・
電子部品や自動車部品に多く用いられている。
【0004】電子部品の多くは台湾、東南アジアなど高
温多湿地帯で成形される事が多い。このような地方でポ
リアミドを使用する場合、ポリアミド樹脂の含水率が高
くなり、成形時に含有水分の蒸発に伴う発泡を引き起こ
しやすくなる。
【0005】また電子部品、特に表面実装用のプリント
配線板に搭載する部品、例えばコネクター類では、その
リフロー工程時に樹脂成形品表面にふくれが生じるとい
ったトラブルを起こす事がある。これは樹脂の含水率と
大きな相関があり、含水率が低い場合ではこのような膨
れは生じにくいことが分かっている。
【0006】従って電気・電子部品用のポリアミドに
は、低吸水型樹脂が望まれる。このようなポリアミドと
して、耐熱性、低吸水性に特に優れるものが知られてい
る(特開平7−228689号公報参照)。
【0007】また上記のような部品は、成形時に連続し
て安定した生産性が求められている。近年、電気・電子
部品では、部品の小型化が進む傾向にあり、連続生産性
とともに、より細やかな精度が求められている。しかし
ながら、本発明者らが上記のポリアミドを用いて、この
ような精密部品の射出成形を連続して行なった場合、金
型内に微粉末が析出することが分かった。このような微
粉末によって成形金型のベント穴が詰まることがあり、
成形を停止して金型を清掃する必要があるため、連続生
産性に支障をきたす場合がある。また、このような微粉
末は電子部品、特にコネクターのような微細な部品を成
形する場合、外観を損ねたり、寸法精度に支障をきたす
等の点で問題になることがある。
【0008】従って、成形時に金型汚れを起こし難く、
かつ耐熱性、低吸水性をはじめ、耐薬品性などの化学的
特性、および諸強度特性に関して優れているようなポリ
アミド樹脂ならびにその組成物の出現が望まれており、
このような樹脂を効率的に製造する方法の出現も併せて
望まれていた。
【0009】
【発明の目的】本発明では耐熱性、低吸水性をはじめ、
耐薬品性などの化学的特性、および諸強度特性などの諸
物性を低下させずに、成形時に金型汚れを起こし難いポ
リアミドを提供し、かつこのようなポリアミドを効率的
に製造する方法を開発することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】上記の課題を解決するために、本発明者
らが開発したポリアミドは、(a)テレフタル酸と、直
鎖及び側鎖を含む炭素数4〜12の脂肪族ジアミンとか
ら誘導される繰り返し単位と、必要に応じて(b)イソ
フタル酸と炭素数4〜12の脂肪族ジアミンとから誘導
される繰り返し単位と、必要に応じて(c)炭素数4〜
18の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4〜12の脂肪族ジ
アミンとから誘導される繰り返し単位と、必要に応じて
(d)炭素数6〜20のラクタムまたはアミノカルボン
酸から誘導される繰り返し単位を有するポリアミドであ
って、繰り返し単位(a)が90〜100モル%、繰り
返し単位(b)が0〜10モル%、繰り返し単位(c)が
0〜10モル%、繰り返し単位(d)が0〜10モル%
の量で結合してなるポリアミド(A)であり、かつ、該
ポリアミド(A)中に含有される、60℃のメタノール
中に3時間浸漬することにより測定したメタノール可溶
性成分(MO成分)の含量が0.5重量%以下であるこ
とを特徴としている。
【0011】本発明におけるMO成分(メタノール可溶
性成分)とは、下記のようにして測定されるものの総称
である。 (MO成分の測定方法)ISO599に概ね則った測定
方法を用いて、MO成分の測定を行う。以下にその具体
的方法を記す。
【0012】20〜30gのポリアミドの粉末(粒径10
〜50μm)と、200mlのメタノールを300mlの三角フ
ラスコに入れ、3時間撹拌しながら還流し、抽出操作を
行う。抽出液を冷却した後に濾過し、フラスコおよび抽
出残渣をメタノールで十分洗浄する。濾液と洗浄液を合
わせてナスフラスコに移し、減圧下に溶媒を留去し、乾
固させてMO成分を得る。このMO成分の重量を精密天
秤で秤量する。MO成分の含量(重量%)は次の式で求
める。
【0013】X=B/A×100 B:MO成分の重量 A:試験前のポリアミドの重量 X:MO成分の含量(重量%) 上記ポリアミド(A)を含む組成物についても、本発明
によって上記課題を解決するに至り、以下にそれら組成
物(B)〜(F)について記す。
【0014】(B):ポリアミド(A)100重量部に
対して、繊維状補強材が5〜250重量部からなるポリ
アミド組成物。 (C):ポリアミド(A)が99〜30重量%に対し
て、変性重合体および/またはアイオノマー樹脂が1〜
70重量%からなるポリアミド組成物。
【0015】(D):ポリアミド(A)が99〜30重
量%に対し、脂肪族ポリアミドが1〜70重量%からな
るポリアミド組成物。 (E):ポリアミド(A)、および難燃剤からなるポリ
アミド組成物。
【0016】(F):上記(B)から(E)に記載の組
成物について、いずれかの組成物の少なくとも2種類以
上を含んでなるポリアミド組成物。 本発明者等がMO成分を分析した結果、直鎖状、あるい
は環状のモノマー、および低次オリゴマーであることが
判明した。本発明者らがこれらを効率よく除去する方法
を検討した結果、上記(A)から(F)に記載のポリア
ミドおよびその組成物を製造するにあたって、その製造
工程うち、ポリアミドの濃硫酸中30℃で測定した極限
粘度(η)が0.1〜3.0dl/gにあるいずれかの
段階で、ポリアミドと液体状極性化合物とを接触させる
事により、MO成分の含量を0.5重量%以下、更には
0.1重量%以下にすることができるということが分か
った。
【0017】ここでの液体状極性化合物は、作業環境で
液体状態であり、特に常圧下23℃において液体状の化
合物を指し、水やメタノール、エタノール等がこれに相
当する。液体状極性化合物は水の単独使用、もしくはメ
タノールや、エタノールなど水可溶性の有機溶媒との混
合使用でも良く、更にはこれらの有機溶媒の単独使用、
もしくは複数の有機溶媒の混合溶液でも良い。これらは
ポリアミドの種類、MO成分の種類によって溶液の種類
を選択できる。また、上記ポリアミドと接触する液体状
極性化合物の温度が、50〜100℃の範囲内にあるこ
とが好ましく、ポリアミドと液体状極性化合物とを、数
分から数時間接触させることが好ましい。また上記ポリ
アミドの容量に対して1〜10倍の液体状極性化合物と
接触させることが好ましい。
【0018】
【発明の具体的説明】本発明のポリアミド、このポリア
ミドを含む組成物、およびその製造する方法について、
以下に具体的に説明する。ポリアミド 本発明のポリアミドを形成するジカルボン酸としては、
芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられ
る。ここで芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸
およびこの誘導体(例;塩、ハライド、エステル等)、
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例:イソフタ
ル酸、ナフタレンジカルボン酸)およびこれらの誘導体
を挙げることができる。また、本発明では、ジカルボン
酸として、上記のような芳香族ジカルボン酸以外に脂肪
族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸を使用するこ
ともできる。ここで脂肪族ジカルボン酸を使用する場
合、脂肪族ジカルボン酸としては直鎖状の脂肪族ジカル
ボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜18、好ましくは
4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボ
ン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボ
ン酸の例としては、コハク酸(SA)、アジピン酸(A
A)、アゼライン酸、セバシン酸およびこれらの誘導体
を挙げることができる。これらの脂肪族ジカルボン酸の
中ではアジピン酸およびセバシン酸が好ましい。また、
脂環族ジカルボン酸としては、テトラシクロヘキサンジ
カルボン酸およびこの誘導体を挙げることができる。こ
こで、誘導体とは、ジアミンとの反応により繰り返し単
位を形成し得る誘導体(例;塩、ハライド、エステル
等)を含むものであり、さらに本発明では、ジカルボン
酸およびジアミンは、得られるポリアミド樹脂の特性を
損なわない範囲内でアルキル基等の置換基を有していて
もよい。以下本発明で使用される各成分は上記と同様の
意味である。
【0019】上記のようなジカルボン酸と共に本発明の
半芳香族ポリアミドを形成する繰り返し単位を構成する
ジアミンは、炭素数4〜25、好ましくは4〜12の脂
肪族ジアミンあるいはその誘導体である。脂肪族ジアミ
ンは、直鎖状のアルキレンジアミンであっても分岐を有
する鎖状のアルキレンジアミンであってもよい。
【0020】このようなアルキレンジアミンの具体例と
しては、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、
1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジ
アミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノ
デカン、1,11-ジアミノウンデカンおよび1,12-ジアミノ
ドデカンなどの直鎖状アルキレンジアミン、および1,4-
ジアミノ-1,1-ジメチルブタン、1,4-ジアミノ-1-エチル
ブタン、1,4-ジアミノ-1,2-ジメチルブタン、1,4-ジア
ミノ-1,3-ジメチルブタン、1,4-ジアミノ-1,4-ジメチル
ブタン、1,4-ジアミノ-2,3-ジメチルブタン、1,5-ジア
ミノ-2-メチルペンテン、1,2-ジアミノ-1-ブチルエタ
ン、1,6-ジアミノ-2,5-ジメチル ヘキサン、1,6-ジアミ
ノ-2,4-ジメチルヘキサン、1,6-ジアミノ-3,3-ジメチル
ヘキサン、1,6-ジアミノ-2,2-ジメチルヘキサン、1,6-
ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジアミノ-2,
4,4-トリメチルヘキサン、1,7-ジアミノ-2,3-ジメチル
ヘプタン、1,7-ジアミノ-2,4-ジメチルヘプタン、1,7-
ジアミノ-2,5-ジメチルヘプタン、1,7-ジアミノ-2,2-ジ
メチルヘプタン、1,8-ジアミノ-1,3-ジメチルオクタ
ン、1,8-ジアミノ-1,4-ジメチルオクタン、1,8-ジアミ
ノ-2,4-ジメチルオクタン、1,8-ジアミノ-3,4-ジメチル
オクタン、1,8-ジアミノ-4,5-ジメチルオクタン、1,8-
ジアミノ-2,2-ジメチルオクタン、1,8-ジアミノ-3,3-ジ
メチルオクタン、1,8-ジアミノ-4,4-ジメチルオクタ
ン、1,6-ジアミノ-2,4-ジエチルヘキサンおよび1,9-ジ
アミノ-5-メチルノナンなどの分岐を有する鎖状のアル
キレンジアミンを挙げることができる。
【0021】このような直鎖状あるいは分岐を有する鎖
状のアルキレンジアミンのうちでは、直鎖状アルキレン
ジアミンが好ましく、特に1,6-ジアミノヘキサン(ヘキ
サメチレンジアミン:HMDA)、1,8-ジアミノオクタ
ン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカンおよび
1,12-ジアミノドデカンなどの直鎖状のアルキレンジア
ミンが好ましく、これらは単独で、あるいは組み合わせ
て使用することができる。また、上記直鎖状のアルキレ
ンジアミンを主成分とし、これに少量の分岐アルキレン
ジアミンを混合した、例えば1,6-ジアミノヘキサンと1,
5-ジアミノ-2-メチルペンタンとの混合物も好ましく使
用することができる。また、1,9-ジアミノノナンと1,8-
ジアミノ-2-メチルオクタンとの混合物も好ましく使用
することができる。なお、上記のようなジアミンは、上
記ジカルボン酸と結合して繰り返し単位を形成すること
ができればよく、塩等の誘導体であってもよい。
【0022】本発明で用いるポリアミドでは、上記のよ
うなテレフタル酸(TA)とジアミンとからは次式
(I)で表される繰り返し単位が形成される。
【0023】
【化1】
【0024】上記式(I)において、R1は、使用した
ジアミンに由来する二価の炭化水素基であって、炭素数
4〜25、好ましくは4〜12のアルキレン基を表す。
また、本発明で、テレフタル酸(TA)と共にイソフタ
ル酸(IA)を使用した場合には、このイソフタル酸と
ジアミンとからは、下記(II)で表される繰り返し単位
が形成される。
【0025】
【化2】
【0026】上記式(II)において、R1は、使用した
ジアミンに由来する二価の炭化 水素基であって、炭素
数4〜25、好ましくは4〜12のアルキレン基を表
す。また、本発明で、テレフタル酸と共に脂肪族ジカル
ボン酸を使用した場合には、この脂肪族ジカルボン酸と
ジアミンとからは、下記(III)で表される繰り返し単
位が形成される。
【0027】
【化3】
【0028】上記式(III)において、R1は、使用した
ジアミンに由来する二価の炭化水素基であって、炭素数
4〜25、好ましくは4〜12のアルキレン基を表す。
また、nは通常は2〜18、好ましくは2〜16、さら
に好ましくは4〜12、特に6〜10の正の整数を表
す。
【0029】また、本発明のポリアミドは、上記のよう
なジカルボン酸とジアミンとからなる繰り返し単位の他
に、炭素数6〜20、好ましくは6〜12のラクタムま
たはアミノカルボン酸から誘導される繰り返し単位を有
していてもよい。このようなラクタムまたはアミノカル
ボン酸の具体的な例としては、ε-カプロラクタム、6-
アミノカプロン酸、ζ-エナントラクタム、η-カプリル
ラクタム、ω-ラウロラクタム、ω-ウンデカラクタム、
11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸等を
挙げることができる。上記のようなラクタムまたはアミ
ノカルボン酸からは、次式(IV)で表される構造の繰り
返し単位が形成される。
【0030】
【化4】
【0031】上記式(IV)において、nは5〜20、好
ましくは5〜19、特に5〜12の整数である。本発明
のポリアミドにおいて、上記式(I)〜(III)で表さ
れる繰り返し単位の量は、使用したジカルボン酸の量と
対応しており、また式(IV)で表される繰り返し単位の
量は、ラクタムまたはアミノカルボン酸の使用量に対応
している。
【0032】本発明においては、上記式(I)で表され
るようなテレフタル酸と炭素数4〜12の脂肪族ジアミ
ンとから誘導される繰り返し単位(a)が90〜100
モル%、好ましくは91%〜100%の量で重縮合し、
式(II)で表されるようなイソフタル酸と炭素数4〜1
2の脂肪族ジアミンとから誘導される繰り返し単位
(b)が0〜10モル%、好ましくは0〜9モル%の量
で重縮合し、式(III)で表されるような炭素数4〜1
8の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4〜12の脂肪族ジア
ミンとから誘導される繰り返し単位(c)が0〜10モ
ル%、好ましくは0〜9モル%の量で重縮合し、そして
式(IV)で表される炭素数6〜20のラクタムまたはア
ミノカルボン酸から誘導される繰り返し単位(d)が0
〜10モル%、好ましくは0〜9モル%の量で重縮合し
て半芳香族ポリアミドを形成している。
【0033】このようなポリアミドを製造するために用
いられる各ジカルボン酸量は、この全ジカルボン酸量を
100(モル%)としたとき、テレフタル酸は90〜1
00モル%、好ましくは91〜100%の範囲内で使用
することができ、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン
酸は0〜10モル%、好ましくは0〜9モル%の範囲内
で使用することができ、またさらに炭素数4〜18の直
鎖状脂肪族ジカルボン酸は0〜10モル%、好ましくは
0〜9モル%の範囲内で使用することができる。ジアミ
ンは上記ジカルボン酸とほぼ等モルになるように使用さ
れる。
【0034】さらに本発明では炭素数4〜12の脂肪族
ジアミン以外に、少量の脂環族ジアミンも使用すること
ができる。この脂環族ジアミンとしては、通常は、炭素
数が6〜25程度であり、かつ少なくとも1個の脂環族
炭化水素環を有するジアミンが使用される。
【0035】このような脂環族ジアミンの具体的な例と
して、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシク
ロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサ
ン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホ
ロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、
ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミ
ノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジ
メチルジシクロヘキ シルプロパン、4,4'-ジアミノ-3,
3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-
3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルメタ
ン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシ
クロヘキシルプロパン、α,α'-ビス(4-アミノシクロ
ヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス
(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼ
ン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シク
ロヘキサンおよびα,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシ
ル)-1,3-シクロヘキサンなどの脂環族ジアミンを挙げ
ることができる。これらの脂環族ジアミンのうちでは、
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ
シクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノシクロヘキ
シル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサ
ンおよび4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシ
ルメタンが好ましく、さらに、ビス(4-アミノシクロヘ
キシル)メタン、1,3-ビス(アミノシクロヘキシル)メ
タンおよび1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが
特に好ましい。これらのジアミンは単独で、あるいは組
み合わせて使用することができる。
【0036】本発明においては、上記式(I)で表され
るようなテレフタル酸と炭素数4〜21、好ましくは4
〜12の脂肪族ジアミンとから誘導される繰り返し単位
(a)が90〜100モル%の量で重縮合する場合、炭
素数の少ない脂肪族ジアミンでは融点がポリアミドの分
解温度を超える場合もあるため、脂肪族ジアミンの炭素
数は好ましくは6以上、特に好ましくは8〜10であ
る。
【0037】ポリアミド低次縮合物は、上記のようなジ
カルボン酸(あるいはその誘導体)とジアミン(あるい
はその誘導体)とを加えて、さらに必要に応じてラクタ
ムまたはアミノカルボン酸とを加えて、触媒の存在下に
加熱することにより生成することができる。また、この
反応において、ジアミンは、芳香族ジカルボン酸の総量
(テレフタル酸と、必要により使用される他の芳香族ジ
カルボン酸あるいは直鎖状脂肪族ジカルボン酸との合計
量)1モルに対して、ほぼ1モルの割合で使用される。
この反応は、通常は不活性ガス雰囲気下で行われ、一般
には反応容器内を窒素ガス等の不活性ガスで置換する。
また、ポリアミドの重縮合反応を制御するために、水を
予め封入しておく事が望ましく、水に可溶な有機溶媒、
例えばメタノール、エタノール等のアルコール等が含有
されていてもよい。
【0038】本発明で低次縮合物を製造する際の触媒と
しては、リン酸、その塩およびリン酸エステル化合物;
亜リン酸、その塩およびエステル化合物;並びに、次亜
リン酸、その塩およびエステル化合物を使用することが
できる。
【0039】具体的には、リン酸塩としては、リン酸カ
リウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸
マグネシウム、リン酸マンガン、リン酸ニッケルおよび
リン酸コバルトを挙げることができる。
【0040】リン酸エステル化合物としては、具体的に
は、リン酸の、メチルエステル、エチルエステル、イソ
プロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステ
ル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシ
ルエステル、ステアリルエステルおよびフェニルエステ
ルを挙げることができる。
【0041】また、亜リン酸塩としては、亜リン酸カリ
ウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リ
ン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、亜リン酸ニッケ
ルおよび亜リン酸コバルトを挙げることができる。
【0042】亜リン酸エステル化合物としては、亜リン
酸の、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピル
エステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデ
シルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステ
ル、ステアリルエステルおよびフェニルエステルを挙げ
ることができる。
【0043】また、次亜リン酸塩としては、次亜リン酸
カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウ
ム、次亜リン酸バジウム、次亜リン酸マグネシウム、次
亜リン酸マンガン、次亜リン酸ニッケルおよび次亜リン
酸コバルトを挙げることができる。
【0044】次亜リン酸エステル化合物としては、次亜
リン酸の、メチルエステル、エチルエステル、イソプロ
ピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イ
ソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエス
テル、ステアリルエステルおよびフェニルエステルを挙
げることができる。
【0045】これらのリン酸化合物は、単独であるいは
組み合わせて使用することができる。このようなリン系
化合物は、上記のようなジカルボン酸に対して、通常は
0.001〜5モル%、好ましくは0.002〜2モル
%の割合で用いられる。
【0046】また、この反応に際しては、末端封止剤を
使用することが好ましい。この末端封止剤としては、安
息香酸、安息香酸のアルカリ金属塩、酢酸等を使用する
ことができる。このような末端封止剤は、ジカルボン酸
1モルに対して、通常は0.001〜5モル、好ましく
は0.01〜2モルの量で使用される。この末端封止剤
の使用量を調整することにより、得られる低次縮合物の
平均分子量、具体的には極限粘度(η)を制御すること
ができる。
【0047】このような低次縮合物を調製する際の反応
条件は、具体的には、反応温度は通常は200〜290
℃、好ましくは220〜280℃、反応時間は通常は
0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。
【0048】さらにこの反応は常圧から加圧のいずれの
条件で行うことができるが、加圧条件で反応を行うこと
が好ましく、反応圧は、通常20〜60kg/cm2、好ま
しくは25〜50kg/cm2の範囲内に設定される。
【0049】そして、このようにして重縮合反応を行う
ことにより、30℃の濃硫酸中で測定した極限粘度
(η)が、通常は0.05〜0.6dl/g、好ましく
は0. 08〜0.3dl/gの範囲内にある低次縮合物
を得ることができる。
【0050】このような極限粘度を有するポリアミドの
数平均分子量は通常は700〜2000の範囲内にあ
る。こうして水性媒体中に生成したポリアミド低次縮合
物は、反応液と分離される。この反応液とポリアミド低
次縮合物との分離には、例えば濾過、遠心分離等の方法
を採用することもできるが、生成した半芳香族ポリアミ
ド低次縮合物を含有する反応液を、ノズルを介して大気
中にフラッシュすることにより、固液分離する方法が効
率的である。
【0051】本発明のMO成分の少ないポリアミド
(A)、およびその組成物(B)〜(F)は、例えば次
の方法により製造することができる。 (1) 公知の方法でポリアミド低次縮合物を製造し、そ
の低次縮合物を液体状極性化合物と接触させ、次いで低
次縮合物を重合する方法。 (2) ポリアミドの高重合物を従来の方法で製造後、液
体状極性化合物と接触させる方法。 (3) (1)または(2)によって得られたポリアミドに、
(B)〜(F)記載の各添加剤を添加して、溶融混練す
る方法。 (4) ポリアミドを従来の方法で製造後、(B)〜
(F)記載の各添加剤を添加して溶融混練した後に、液
体状極性化合物と接触させる方法。
【0052】本発明では、上記ポリアミドと液体状極性
化合物とを接触するにあたって、ポリアミド製造工程う
ち、組成物の濃硫酸中30℃で測定した極限粘度(η)
が0.1〜3.0 dl/gにあるいずれかの段階で、
ポリアミドと液体状極性化合物を接触させる事により、
MO成分の含量が0.5重量%以下、更には0.1%未
満とすることを特徴としている。
【0053】また本発明において、ポリアミド組成物か
らMO成分を除去する液体状極性化合物としては、水、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロ
パノールなどのアルコール類、アセトン、エチルメチル
ケトンなどのケトン類、蟻酸、酢酸などのカルボン酸
類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの
多価アルコール類等を用いることができる。
【0054】これらの溶媒は、各々単独で使用しても良
く、また組み合わせて混合溶媒として使用することも出
来る。これらのうち、価格や溶剤除去工程などを考慮す
ると、メタノールおよびエタノールが好ましい。これら
の溶媒を水と混合して用いる場合は、溶媒と水との混合
比は、接触させるポリアミドの種類によって任意に選定
することができるが、水に対して重量比で0〜100
%、好ましくは10〜100%の量で使用できる。
【0055】MO成分としては、未反応のジカルボン
酸、未反応のジアミンおよび未反応のラクタム、または
アミノカルボン酸、ならびにジアミン1分子とジカルボ
ン酸1分子とから形成される環状オリゴマー、特に環状
メチレンアジパミド、あるいは他の低次オリゴマー成分
の低次縮合物が含有される。なおポリアミド中における
このMO成分の含量は、1重量%にも達することがあ
る。これに対して本発明のポリアミドは、上記MO成分
の含量が低く、本発明ではこのMO成分の含量は、0.
5重量%以下であり、さらに好ましくは0.3重量%以
下、特に0.10重量%未満の範囲内にあることが好ま
しい。MO成分が0.10重量%未満の場合では、金型への
付着物がほとんど観察される事なく、連続して寸法精度
に優れた射出成形品、特に精密部品を成形することがで
きる。
【0056】本発明のポリアミドを製造する第1の方法
では、上記のようにして得られたポリアミド低次縮合物
を、液体状極性化合物と接触させ、乾燥させた後に後重
合を行う。
【0057】本発明において、このポリアミド低次縮合
物と接触する液体状極性化合物の温度は高い方が好まし
く、この処理に使用する液体状極性化合物の温度はポリ
アミド低次縮合物の種類や分子量により異なるが、30
〜100℃、好ましくは50〜100℃である。
【0058】また、このポリアミド低次縮合物と液体状
極性化合物との接触時間は、ポリアミド低次縮合物の種
類や分子量により異なるが、1分〜6時間、好ましくは
1〜180分である。ポリアミド低次縮合物と液体状極
性化合物との接触を、ドラム等の容器内で行う場合は攪
拌しながら接触させることが望ましい。
【0059】本発明において、ポリアミド低次縮合物と
接触する液体状極性化合物の量は、ポリアミド低次縮合
物から液体状極性化合物中に移行させようとする成分の
量、液体状極性化合物温度、および接触方法などにより
適宜設定することができるが、通常は、ポリアミド低次
縮合物100重量部に対して、50〜10000重量
部、好ましくは200〜1000重量部である。
【0060】こうして液体状極性化合物と接触したポリ
アミド低次縮合物は、多量の液体状極性化合物を含んで
いるため、本発明の方法では、この液体状極性化合物と
接触したポリアミド低次縮合物を乾燥した後、続く工程
で使用する。
【0061】このポリアミド低次縮合物の乾燥は、真空
下あるいは不活性気流(例:窒素気流)下で行うことが
好ましく、乾燥温度は、一般にはポリアミド低次縮合物
の溶融する温度よりも低い温度に設定され、通常は10
0〜180℃、好ましくは120〜140℃であり、こ
うした条件で乾燥ポリアミド低次縮合物中に含有される
極性化合物濃度を、通常は5000ppm以下、好ましく
は3000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下
になるように低減させる。この乾燥には、加熱手段とし
て赤外線等を併用することができる。
【0062】本発明では上記のようにして得られた乾燥
ポリアミド低次縮合物を用いて後重合(重縮合反応)を
行う。この後重合(後重縮合反応)は、乾燥ポリアミド
低次縮合物を加熱して、溶融状態にし、この溶融物に剪
断応力を付与しながら行なうことが好ましい。この反応
に際しては、乾燥ポリアミド低次縮合物が少なくとも溶
融する温度に加熱する。一般には、乾燥ポリアミド低次
縮合物の融点以上の温度、好ましくはこの融点よりも1
0〜60℃高い温度に加熱される。
【0063】剪断応力は、例えばベント付き二軸押出
機、ニーダーあるいはブラベンダー等を用いることによ
り溶融物に付与することができる。こうして溶融物に剪
断応力を付与することにより、溶融状態にある乾燥ポリ
アミド低次縮合物が相互に重縮合すると共に、縮合物の
重縮合反応も進行するものと考えられる。
【0064】本発明のMO成分の少ないポリアミドを製
造するための第2の方法としては、極限粘度(η)が
0.6dl/g以上の高分子量のポリアミドを製造し、
次いで該高分子量のポリアミドを液体状極性化合物にて
洗浄処理する方法が挙げられる。
【0065】この高分子量のポリアミドを製造する方法
としては、公知の各種の方法が採用できる。例えば、上
述したような低次縮合物を製造した後、この低次縮合物
を溶融混練することにより製造してもよく、また上述し
た各化合物を加熱下に反応させて直接高分子量のポリア
ミドを形成してもよい。
【0066】MO成分の含量を0.5重量%、好ましく
は0.1重量%未満にするために、得られたポリアミド
を液体状極性化合物とを接触させて、ポリアミド中に含
有される上記MO成分を液体状極性化合物中に移行させ
て除去する。ここで使用される液体状極性化合物は、前
記で挙げた液体状極性化合物と同様に、水、有機化合
物、もしくはこれらの混合物のことを指す。ポリアミド
と液体状極性化合物とは、加温ないし加熱下に接触させ
ることが好ましく、この際、液体状極性化合物の温度お
よび量は前述の低次縮合物の場合と同様であり、このポ
リアミドと液体状極性化合物との接触時間は、通常は1
分〜12時間、好ましくは3分〜6時間、特に好ましく
は3〜180分である。
【0067】上記のようにして、MO成分を多量に含む
ポリアミドを液体状極性化合物と接触することにより、
ポリアミド中のMO成分の一部は液体状極性化合物に抽
出される。こうしてMO成分が抽出された液体状極性化
合物と、ポリアミドとを分離することにより、ポリアミ
ド中のMO成分の量を上記のような量に低減することが
できる。
【0068】液体状極性化合物とポリアミドとの分離に
は、例えば濾過法、遠心分離法等公知の方法を利用する
ことができる。こうして液体状極性化合物から分離され
たポリアミドは、通常はさらに含有される水分を除去す
るために乾燥される。
【0069】このポリアミドの乾燥において、乾燥温度
が100〜250℃、好ましくは120〜200℃であ
ること以外は、条件および乾燥後のポリアミドが含有す
る水分濃度は、低次縮合物の場合と同様である。
【0070】本発明のMO成分の少ないポリアミドを製
造するための第3の方法としては、濃硫酸中30℃で測
定した極限粘度(η)が0.1〜3.0dl/gにある
ポリアミドを製造し、次いで前述の(B)〜(F)に挙
げられた各添加剤を添加して、溶融混練した後に、この
混練物と液体状極性化合物と接触させる方法が挙げられ
る。そして上記要領で乾燥させることにより、MO成分
を液体状極性化合物(極性媒体)中に抽出することがで
きる。
【0071】また、MO成分を低減させる他の方法とし
て、上記ポリアミド低次縮合物を調製し、次いでこの低
次縮合物を固相重合させて、極限粘度(η)が0.5〜
1.5dl/gの範囲のポリアミド前駆体を調製し、さ
らに上記前駆体を溶融重合させて、極限粘度(η)が
0.8〜3.0dl/gの範囲のポリアミドを得て、そ
してこの工程の何れかの段階において、ポリアミドと液
体状極性化合物とを接触させ、上記要領で乾燥させるこ
とにより、MO成分を液体状極性化合物中に抽出するこ
とができる。
【0072】本発明のポリアミドを用いて成形体を製造
する際には、必要により、安定剤、顔料および滑剤等の
ポリアミドを用いた成形の際に通常使用される成分を添
加することができる。
【0073】上記のようにして製造されるポリアミド
は、上述のような繰り返し単位を有するとともに、その
ガラス転移温度は、70〜150℃、好ましくは80〜
125℃の範囲内にある。さらに本発明のポリアミド
は、結晶性であるので融点を有しており、一般にこの融
点は260〜360℃、多くの場合280〜330℃の
範囲内にある。
【0074】また、本発明のポリアミドは、このポリア
ミドの融点以上、分解温度未満に加熱して、通常の成形
装置を使用して所望の形状に成形することができる。こ
のようにして得られるポリアミドは、MO成分の含量が
低いので、MO成分に起因する金型汚れが生じにくく、
安定した状態で成形体を効率よく製造することができ
る。さらに、このように処理することによってもポリア
ミドの特性は低下することはなく、このように処理した
ポリアミドを使用して形成した成形体は、ポリアミドが
本質的に有している優れた特性である耐熱性、機械的強
度、および低吸水性を保持する。繊維状補強材 本発明で用いられる繊維状補強材としては、ガラス繊
維、チタン酸カリウム繊維、金属被覆ガラス繊維、セラ
ミックス繊維、ウォラストナイト、炭素繊維、金属炭化
物繊維、金属硬化物繊維等の無機繊維状補強材あるいは
有機繊維状補強材が用いられる。またこのような繊維状
補強材の表面をシラン系化合物、例えばビニルトリエト
キシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等で処理して
おいてもよい。これらの中では、耐熱性の点から無機繊
維状補強材が好ましく、とくにガラス繊維が補強効果に
最も優れるので好ましい。
【0075】このような繊維状補強材は、上記族ポリア
ミド100重量部に対して、5〜250重量部、好まし
くは10〜220重量部、さらに好ましくは15〜15
0重量部の量で配合される。変性重合体 本発明で用いられる変性重合体としては、(i)変性α
−オレフィン系重合体、または(ii)変性芳香族ビニル
・共役ジエン共重合体またはその水素化物が用いられ
る。
【0076】変性α−オレフィン系重合体(i)は、α
−オレフィンからなる単位を主成分として含有するα−
オレフィン系重合体100重量部に対して不飽和カルボ
ン酸またはその誘導体からなる単位を0.01〜10重
量部、好ましくは0.05〜5重量部の範囲でグラフト
共重合してなり、さらに190℃におけるメルトフロー
レート(MFR190℃)が0.01〜50g/10mi
n、好ましくは0.05〜20g/10minの範囲にあるも
のが好ましい。
【0077】さらに、該変性α−オレフィン系重合体
(i)の他の物性は、分子量分布(Mw/Mn)が通常
1.5〜50、好ましくは2〜30の範囲である。該変
性α−オレフィン系重合体(i)中の不飽和カルボン酸
またはその誘導体からなる単位のグラフト割合が0.0
1重量部より小さくなると、半芳香族ポリアミドに対す
る相溶性が悪くなり、ポリアミド組成物の衝撃強度が低
下し、10重量部より大きくなると、該グラフト変性物
の架橋度が増大して、ポリアミドに配合しても組成物の
耐衝撃性を改善する効果が低下するようになることがあ
る。
【0078】該変性α−オレフィン系重合体(i)のベ
ースとなるα−オレフィン系重合体は、α−オレフィン
からなる単位を主成分とする重合体であり、一成分であ
ってもよく、または複数の成分、すなわち二以上のα−
オレフィンからなる単位のみから構成されていてもよ
く、この場合α−オレフィンの他に少量のジエンからな
る単位を含有していても差しつかえない。
【0079】該α−オレフィン系重合体を構成するα−
オレフィンの含有率は、特に制限されないが、通常65
モル%以上、好ましくは70モル%以上の範囲であり、
ジエンの含有率は通常0〜20モル%、好ましくは0〜
15モル%の範囲である。
【0080】このようなα−オレフィン系重合体を製造
する際に用いられるα−オレフィンとしては、エチレ
ン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-
ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1- デセン、1-ド
デセンなどを例示することができ、ジエンとしては、1,
4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン
2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエンなどの非共役ジ
エン、ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどの共役
ジエンなどを例示することができる。
【0081】該α−オレフィン系重合体としては、ポリ
エチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・
1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共
重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-
オクテン共重合体、エチレン・1-デセン共重合体、プロ
ピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重
合体、プロピレン・4-メチル-1- ペンテン共重合体、プ
ロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-デセン
共重合体、プロピレン・1-ドデセン共重合体などのα−
オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキ
サジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペ
ンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリ
デン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン
・2,5-ノルボルナジエン共重合体、エチレン・1-ブテン
・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1-ブテン
・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-
エチリデン 2-ノルボルネン共重合体などのα−オレフ
ィン・非共役ジエン共重合体などを例示することができ
る。該α−オレフィン系重合体と後記不飽和カルボン酸
またはその誘導体とを後記方法によって反応させること
により、変性α−オレフィン系重合体が得られる。
【0082】該α−オレフィン系重合体をグラフト変性
する際に用いられるグラフトモノマーとしては、アクリ
ル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン
酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒ
ドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシ
ス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸
(ナジック酸TM)、メチル−エンドシ ス−ビシクロ[2.
2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック
TM) などの不飽和ジカルボン酸、および塩化マレニ
ル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、
マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジ
ルマレエートなどの上記不飽和ジカルボン酸の酸ハライ
ド、アミド、イミド、酸無水物、エステルなどの不飽和
ジカルボン酸の誘導体が挙げられる。これらの中では、
不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、
とくにマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物
が好適である。
【0083】該不飽和カルボン酸またはその誘導体から
選ばれるグラフトモノマーをα−オレフィン系重合体に
グラフト共重合して前記変性α−オレフィン系重合体
(i)を製造するには、従来公知の種々の方法を採用す
ることができる。たとえば、該α−オレフィン系重合体
を溶融させ、グラフトモノマーを添加してグラフト共重
合させる方法、あるいは溶媒に溶解させ、グラフトモノ
マーを添加してグラフト共重合させる方法がある。いず
れの場合にも前記グラフトモノマーを効率よくグラフト
共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下に反応
を実施することが好ましい。グラフト変性を行うための
反応は通常60〜350℃の温度で行われる。ラジカル
開始剤の使用割合は該α−オレフィン系重合体100重
量部に対して通常0.01〜20重量部の範囲である。
ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペル
エステル、アゾ化合物などを使用することができる。
【0084】また本発明で用いられる変性芳香族ビニル
・共役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)は、芳
香族ビニル系炭化水素と共役ジエン系化合物とのブロッ
ク共重合体のグラフト変性物であり、さらに本発明にお
いてはこれらの共重合体の水素化物のグラフト変性物を
使用することもできる。
【0085】このような芳香族ビニル・共役ジエン共重
合体またはその水素化物の具体的な例としては、スチレ
ン・ブタジエンブロック共重合体ゴム、スチレン・ブタジ
エン・スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン・イソプ
レンブロック共重合体ゴム、スチレン・イソプレン・スチ
レンブロック共重合体ゴム、水素添加スチレン・ブタジ
エン・スチレンブロック共重合体ゴム、および水素添加
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム等
を挙げることができる。
【0086】これらの共重合体中において、芳香族ビニ
ルから誘導される繰返し単位と共役ジエンから誘導され
る繰返し単位とのモル比(芳香族ビニル炭化水素/共役
ジエン)は、通常は10/90〜70/30である。ま
た、水素添加した共重合体ゴムとは、上記の共重合体ゴ
ム中に残存する二重結合の一部または全部を水素化した
共重合体である。この芳香族ビニル・共役ジエン共重合
体またはその水添物について135℃の デカリン中で
測定した極限粘度(η)は、通常は0.01〜10dl
/g、好ましく は0.08〜7dl/gの範囲内にあ
り、ガラス転移温度(Tg)は、通常は0℃以下、好ま
しくは−10℃以下、特に好ましくは−20℃以下であ
る。また、X線回折法により測定した結晶化度は0〜1
0%、好ましくは0〜7%、特に好ましくは0〜5%の
範囲内にある。
【0087】本発明で使用される変性芳香族ビニル・共
役ジエン共重合体は、上記のような未変性の芳香族ビニ
ル・共役ジエン共重合体を、上記変性α-オレフィン共重
合体の製造方法と同様に、不飽和カルボン酸、不飽和カ
ルボン酸無水物あるいは不飽和カルボン酸誘導体を用い
てグラフト変性することにより製造される。
【0088】ここで使用される不飽和カルボン酸、不飽
和カルボン酸無水物あるいは不飽和カルボン酸誘導体の
例としては、上記グラフト変性α-オレフィン共重合体
を製造する際に使用される化合物を挙げることができ、
このようなグラフト変性剤は、単独であるいは組み合わ
せて使用することができる。このようなグラフト変性剤
のうちでは、不飽和カルボン酸無水物を使用することが
好ましく、無水マレイン酸または無水ナジック酸が特に
好ましい。上記のような未変性の共重合体またはその水
素化物にこのようなグラフト変性剤をグラフト重合させ
るには、上記α−オレフィン共重合体の変性の際に説明
した溶液法および溶融法等の方法を採用することができ
る。グラフト変性を行うための反応(グラフト反応)に
おいて、グラフト変性剤は、その反応性を考慮して使用
量が設定されるが、一般には、未変性の芳香族ビニル・
共役ジエン共重合体または水素化物100重量部に対し
て、1〜10重量部の割合で使用される。グラフト反応
を行う際には、上記と同様に有機ペルオキシド、有機ペ
ルエステルおよびアゾ化合物などのラジカル開始剤を使
用することができる。こうしてグラフト反応を行うこと
により、未反応の芳香族ビニル・共役ジエン 共重合体
または水素化物100重量部あたり、グラフト変性剤が
通常は0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重
量部の割合でグラフト重合したグラフト変性芳香族ビニ
ル・共役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)を得
ることができる。
【0089】こうして得られたグラフト変性芳香族ビニ
ル・共役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)は、
低結晶性ないし非晶性の共重合体であることが好まし
く、実質的に非晶性であることが好ましい。すなわち、
X線回折法により測定した結晶化度が10%以下、好ま
しくは7%以下であり、特に好ましくは5%以下の変性
共重合体が使用され、さらに結晶化度が実質的に0%で
ある変性共重合体が好ましく使用される。従って、この
変性芳香族ビニル・共役ジエン共重合体またはその水素
化物には、明確な融点を示さないものが多い。さらに、
結晶化度が低いため、このグラフト変性芳香族ビニル・
共役ジエン共重合体またはその水素化物は軟質であり、
引張りモジュラスは、通常は0.01MPa以上2,0
00MPa未満の範囲、好ましくは0.1MPa〜1,
500MPaの範囲内にある。
【0090】また、このグラフト変性芳香族ビニル・共
役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)のメルトイ
ンデックス(190℃で測定測定した値)は、通常は
0.1〜30g/10分、好ましくは1.0〜20g/10
分、特に好ましくは2.0〜15g/10分の範囲内にあ
る。
【0091】さらに、このグラフト変性芳香族ビニル・
共役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)のガラス
転移温度(Tg)は、通常は−150〜+50℃、好まし
くは−80〜−20℃の範囲内にあり、135℃のデカ
リン中で測定した極限粘度[η]は、通常は0.01〜
10dl/g、好ましくは1〜5dl/gの範囲内にある。
【0092】上記のようなグラフト変性芳香族ビニル・
共役ジエン共重合体またはその水素化物(ii)を使用す
ることにより、靱性に優れた成形体を得ることができ
る。本発明のポリアミド組成物において、前記ポリアミ
ドは99〜30重量部、好ましくは99.0〜60重量
部の範囲で用いられ、該変性α−オレフィン系重合体
(i)、または変性芳香族ビニル・共役ジエン共重合体
またはその水素化物(ii)は、1〜70重量部、好まし
くは1.0〜40重量部の範囲で用いられることが望ま
しい。
【0093】該変性α−オレフィン系重合体(i)の配
合割合が前記の範囲内にあると、該ポリアミド組成物の
引張り強度、曲げ強度、弾性率、耐熱性が向上するよう
になる。
【0094】変性芳香族ビニル・共役ジエン共重合体ま
たはその水素化物(ii)の配合割合が前記の範囲内にあ
ると、該ポリアミド組成物の引張り強度、曲げ強度、弾
性率、耐熱性が向上するようになる。アイオノマー樹脂 本発明で用いられるアイオノマー樹脂は、エチレン−不
飽和カルボン酸共重合体を2価の金属イオンあるいは1
価の金属イオンで部分的に中和したものである。アイオ
ノマー樹脂を構成するエチレン-不飽和カルボン酸共重
合体は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であ
るが、この不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8の
不飽和カルボン酸、具体的には、アクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメ
チルエステルおよびマレイン酸モノエチルエステル等が
用いられる。これらの不飽和カルボン酸のうちで、アク
リル酸、メタクリル酸が特に好ましく用いられる。
【0095】本発明で用いられるエチレン−不飽和カル
ボン酸共重合体は、エチレンと上記のような不飽和カル
ボン酸に加えて、第3成分を含んでいてもよく、このよ
うな第3成分としては、炭素数3〜12程度の極性ビニ
ル化合物、たとえばアクリル酸エチル、アクリル酸イソ
ブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチルなどの
不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルなどのビニルエ
ステルが用いられる。
【0096】本発明で用いられるエチレン不飽和カルボ
ン酸共重合体では、エチレンは通常は50〜99重量
%、好ましくは70〜98重量%の量で存在し、また不
飽和カルボン酸は、通常は1〜50重量%、好ましくは
2〜30重量%の量で存在している。また、エチレン−
不飽和カルボン酸共重合体がエチレン成分および不飽和
カルボン酸に加えて、第3成分を含む場合、第3成分は
通常は40重量%以下の量、好ましくは30重量%以下
の量で存在している。
【0097】本発明で用いられるアイオノマー樹脂は、
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキ
シル基の少なくとも一部が2価の金属イオンあるいは1
価の金属イオン、好ましくは2価の遷移金属イオンで中
和されている。このようなアイオノマー樹脂に用いられ
る金属イオンとしては、Na+、Li+、K+などのアルカ
リ金属イオン、Zn++、Co++、Ni++、Pb++、Cu
++などの2価の遷移金属イオンあるいはCa++、Mg++
などのアルカリ土類金属イオンが好ましく、Zn++を用
いることが特に好ましい。
【0098】上記のような2価の金属イオン、好ましく
は2価の遷移金属イオンによるエチレン−不飽和カルボ
ン酸共重合体のカルボキシル基の中和度は、3〜95%
であることが好ましい。アイオノマー樹脂を形成する金
属の種類は1種類に限定されるものではなく、本発明で
使用されるアイオノマー樹脂は、2種類以上の金属イオ
ンを有していてもよい。このようなアイオノマー樹脂は
上記変性共重合体を使用する場合と同等の量で用いられ
る。またアイオノマー樹脂は、変性重合体と併用するこ
とができる。
【0099】本発明のポリアミド組成物において、前記
ポリアミドは99〜30重量部、好ましくは99〜50
重量部、さらに好ましくは99〜70重量部の範囲で用
いられ、上記変性重合体および/またはアイオノマー樹
脂は、1〜70重量部、好ましくは1〜50重量部、さ
らに好ましくは1〜30重量部の範囲で用いられること
が望ましい。
【0100】本発明のポリアミドと変性重合体および/
またはアイオノマー樹脂とからなる組成物は、耐衝撃
性、特に低温での耐衝撃性が優れるのみならず、MO成
分が少ないため、成形時に金型汚れが少なく、コネクタ
ー用途等に好適である。脂肪族ポリアミド 本発明で用いられる脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族
ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合により形成さ
れるポリアミド、ラクタム類の開環重合により形成され
るポリアミド、および脂肪族アミノカルボン酸と脂肪族
ジアミンとラクタム類とから形成されるポリアミドが挙
げられる。
【0101】脂肪族ポリアミドの具体例としては、ポリ
テトラメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアジパ
ミド、ポリヘキサメチレンスペラミド、ポリヘキサメチ
レンセバカミド、ポリヘキサメチレンウンデカミド、ポ
リヘキサメチレンドデカミドのような脂肪族ジアミンと
脂肪族ジカルボン酸とから形成されるポリアミド;なら
びに、ポリカプロラクタム、ポリウンデカミドおよびポ
リドデカミドのようなラクタム類またはアミノカルボン
酸から形成されるポリアミドを挙げることができる。
【0102】本発明においては、上記脂肪族ポリアミド
のうちでは、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレン
アジパミド、ポリヘキサメチレンスペラミド、ポリウン
デカミド、ポリドデカミド、ポリヘキサメチレンウンデ
カミドおよびポリヘキサメチレンドデカミドのいずれか
を使用すると組成物の成形流動性が向上するため好まし
い。特にポリウンデカミド、ポリドデカミド、ポリヘキ
サメチレンウンデカミド、ポリヘキサメチレンドデカミ
ドを用いると組成物の耐熱老化性が向上するため好まし
い。このような脂肪族ポリアミドの極限粘度(η)(3
0℃の濃硫酸中で測定した値)は、通常は0.5〜3.0
dl/g、好ましくは0.7〜1.5dl/gの範囲内に
ある。
【0103】本発明のポリアミド系(樹脂)組成物にお
いて、本発明のポリアミドは99〜30重量%、好まし
くは99〜70重量%、さらに好ましくは97〜80重
量%の量で含有されており、上記のような脂肪族ポリア
ミドは、1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%、
さらに好ましくは3〜20重量%の量で含有されている
ことが望ましい。脂肪族ポリアミドをこのような含有率
にすることで、靱性が向上し、耐熱性および低吸水性な
どの特性のバランスに優れた成形体を製造可能な組成物
とすることができる。また、成形性も改善できる。難燃剤 本発明で用いられる難燃剤としては、有機難燃剤と無機
難燃助剤とが挙げられる。
【0104】この難燃剤のうち有機難燃剤としては、特
に(i)ハロゲン化ポリスチレンおよび/または(ii)ハ
ロゲン化フェノールの縮合物が好ましい。以下にハロゲ
ン化ポリスチレンおよびハロゲン化フェノールの縮合物
について説明する。
【0105】本発明で用いられるハロゲン化ポリスチレ
ンとしては、下記一般式(1)で表される重合体が用い
られる。
【0106】
【化5】
【0107】上記式中、RはHまたはCH3であり、X
はBrまたはClであり、mは1〜5の整数であり、そ
してnは2以上の整数である。一般式(1)で表される
ハロゲン化ポリスチレンとしては、具体的には、ポリジ
ブロモスチレン、ポリトリブロモスチレン、ポリペンタ
ブロモスチレン、ポリジクロロスチレン、ポリトリクロ
ロスチレン、ポリペンタクロロスチレン、ポリトリブロ
モα−メチルスチレン等が用いられる。これらハロゲン
化ポリスチレンの中では、ポリトリブロモスチレンが難
燃性、耐熱性、耐熱老化性の改良効果が優れるので好ま
しい。ポリジブロモスチレンは、成形性が優れている点
で好ましい。ハロゲン化ポリスチレンはハロゲン化スチ
レンないしハロゲン化α−メチルスチレンを重合する
か、またはポリスチレン、ポリα−メチルスチレンをハ
ロゲン化することによって製造される。
【0108】本発明で用いるハロゲン化フェノールの縮
合物は、下記一般式(2)で表される。
【0109】
【化6】
【0110】上記式中、XはBrまたはClであり、p
は1〜4の整数であり、そしてqは5以上の整数であ
る。一般式(2)で表されるハロゲン化フェノールの縮
合物としては、具体的には、ポリジブロモ-p-フェニレ
ンオキシド、ポリトリブロモ-p-フェニレンオキシド、
ポリジクロロ-p-フェニレンオキシド、ポリブロモ-p-フ
ェニレンオキシド、ポリジブロモ-o-フェニレンオキシ
ド等を挙げられる。これらハロゲン化フェノールの縮合
物の中では、ポリジブロモ-p-フェニレンオキシドが耐
熱性、難燃性の改良効果が優れるので好ましい。これら
の難燃剤であるハロゲン化ポリスチレンおよびハロゲン
化フェノールの縮合物の中では、ポリトリブロモスチレ
ンが、組成物の成形加工時の熱安定性に優れ、難燃効果
にも優れているので最も好ましい。
【0111】また本発明のポリアミド組成物は、無機難
燃助剤として、金属化合物を含有していることが好まし
い。金属化合物としては、例えば酸化アンチモン、酸化
亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの金属酸化物や、
例えばホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩などを挙げること
ができ、特にアンチモン酸ナトリウムを含有しているこ
とが好ましい。このアンチモン酸ナトリウムは、式 N
aSbO3で表される化学組成を有するものであり、粒
径30μm以下、特に10μm以下の微粒子の形態で用
いることが好ましい。
【0112】さらに本発明のポリアミド組成物は、熱安
定剤としてさらに酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイド
ロタルサイト類またはリン化合物を含有していることが
好ましく、これらの酸化物はできるだけ微細であること
が好ましく、粒径30μm以下、特に10μm以下であ
ることが望ましい。
【0113】上記のような有機難燃剤は、ポリアミド1
00重量部に対して、20〜100重量部、好ましくは
30〜80重量部、さらに40〜65重量部の量で含ま
れていることが望ましい。また無機難燃助剤は、ポリア
ミド100重量部に対して、2〜20重量部、好ましく
は4〜16重量部、さらに好ましくは6〜14重量部の
量で含まれていることが望ましい。
【0114】本発明では、特に有機難燃剤と無機難燃剤
とを併用することが好ましい。本発明のポリアミドと難
燃剤とからなる組成物は、難燃性に優れているのみなら
ず、成形時に金型汚れが少ないため、リフローハンダ部
品等の用途に好適である。その他の成分 本発明のポリアミド組成物は、本発明の目的を損なわな
い範囲で前記成分に加えて、他の耐熱安定剤、耐候安定
剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、染
料、無機あるいは有機充填剤、核剤、カーボンブラッ
ク、タルク、クレー、マイカ等の無機化合物等の種々公
知の配合剤を含有していてもよい。
【0115】さらにまた、他の各種重合体、ポリスチレ
ン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、
ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、弗素樹脂、
シリコーン樹脂、脂肪族ポリアミド等を含有してもよ
い。
【0116】本発明のポリアミド組成物を調製するに
は、各成分を、種々公知の方法、例えばヘンシェルミキ
サー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブ
レンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出
機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶
融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用すればよ
い。
【0117】本発明のポリアミド組成物に含まれるポリ
アミドは、MO成分の含量が低いので、MO成分に起因
する金型汚れが生じにくく、金型のベントがつまりにく
く安定した状態で成形体を製造することができる。さら
に、MO成分の含量を低下させることによってもポリア
ミドの特性は低下することはなく、本発明のポリアミド
組成物を使用して形成した成形体は、ポリアミドが本質
的に有している優れた特性である耐熱性、機械的強度、
低吸水性および低摩耗性を保持するとともに耐衝撃性、
曲げ強度などに優れている。特に、ポリアミド組成物に
難燃剤を導入すると、得られる成形体は上述した特性に
優れるとともに難燃性にも優れる。
【0118】また、本発明のポリアミド組成物は、この
ポリアミドの融点以上、分解温度未満に加熱して、通常
の成形装置を使用して所望の形状に成形することができ
る。
【0119】
【発明の効果】本発明により、ポリアミドのもつ優れた
機械強度特性、耐熱特性を損なう事なく、金型汚れが少
ない半芳香族ポリアミドならびにその組成物を効率よく
製造する事ができ、射出成形部品、特に精密部品を効率
的に精度良く製造することができる。
【0120】
【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらにより限定的に解釈されるもので
はない。なお、実施例中のMO成分、金型付着物、引張
強度、および金型汚れ評価は以下の方法により測定し
た。MO成分 :ISO 599に概ね則った測定方法を用い
て、MO成分の測定を行なった。以下にその具体的方法
を記す。20〜30gのポリアミドの粉末(粒径10〜50
μm)と、200mlのメタノールを300mlの三角フラス
コに入れ、3時間撹拌しながら還流し、抽出操作を行な
った。抽出液を冷却した後に濾過し、フラスコおよび抽
出残渣をメタノールで十分洗浄した。濾液と洗浄液を合
わせてナスフラスコに移し、減圧下に溶媒を留去し、乾
固させてMO成分を得た。このMO成分の重量を精密天
秤で秤量した。MO成分の含量(重量%)は次の式で求
めた。
【0121】X=B/A×100 B:MO成分の重量 A:試験前のポリアミドの重量 X:MO成分の含量(重量%)金型付着物 :射出成形金型にスパイラル状ガスベントを
設け、シリンダ温度310℃、金型温度70℃で500
ショット射出成形し、金型付着物を全量回収し、この重
量を精密天秤で秤量した。引張強度 :試験はASTM−D638に従い、試験片は
射出成形して得た。これを絶乾状態に乾燥した後に強度
を測定した。金型汚れ評価 :薄層ガスベントのある成形金型を用い、
連続射出成形を行なった。ガスベント周辺の樹脂に、ガ
ス焼けが原因と思われる変色が目視にて確認できるまで
のショット数を測定した。
【0122】
【実施例1】テレフタル酸46.5kg(280.1モル)、ジア
ミン成分−1を45.0kg(284.3モル)、安息香酸0.4kg
(3.5モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.06kg
(0.6モル)および蒸留水27.5 kgをオートクレーブに入
れ、反応釜内部を十分に窒素置換した。なお、ジアミン
成分−1とは、1,9−ジアミノノナン(以下、NMD
Aと略記する)と、2−メチル−1,8−ジアミノオク
タン(以下、MODAと略記する)のモル比が、85:
15の事を指す。撹拌しながら、内部温度を4時間かけ
て250℃に昇温した。そのまま1時間反応を続けた
後、反応器内の反応生成物をノズルを会して大気中にフ
ラッシュさせ、固液分離と冷却を同時に行ない、次いで
乾燥して、(η)=0.1dl/gのポリアミド低次縮
合物を得た。このポリアミド低次縮合物を二軸押出機に
て溶融重合して、(η)=0.9dl/gのポリアミド
を得た。これを100℃の水に6時間接触させ、ポリア
ミドを得た。このポリアミドについて、MO成分含有
量、金型付着物および引張り強度を測定した。その結果
を表1に示す。
【0123】
【実施例2】実施例1において、ジアミン成分−1を、
NMDAとMODAとのモル比を81:19としたジア
ミン成分−2にした以外は、実施例1に記載した方法で
ポリアミドを製造した。このポリアミドについてMO成
分含有量、金型付着物、および引張り強度を測定した。
その結果を表1に示す。
【0124】
【実施例3】実施例2において、100℃の水に6時間
接触させるかわりに、60℃のメタノールに3時間接触さ
せた以外は、実施例2に記載した方法でポリアミドを製
造した。このポリアミドについてMO成分含有量、金型
付着物、および引張り強度を測定した。その結果を表1
に示す。
【0125】
【比較例1】実施例1において、水に接触しないこと以
外は同じ方法でポリアミドを製造した。このポリアミド
についてMO成分含有量、金型付着物、および引張り強
度を測定した。その結果を表1に示す。
【0126】
【比較例2】実施例2において、水に接触しないこと以
外は同じ方法でポリアミドを製造した。このポリアミド
についてMO成分含有量、金型付着物、および引張り強
度を測定した。その結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【実施例4】実施例2において、水に接触する前のポリ
アミド40重量部に対して、繊維補強材(ここではガラ
ス繊維:旭ファイバーグラス(株)製 CS03JAF
T2A)30重量部、変性重合体(ここではマレイン化
SEBS:旭化成(株)製タフテックM1913)2重
量部、難燃剤(ここではポリジブロモポリスチレン:グ
レートレイクスケミカル製 PDBS−80)28重量
部を加え、二軸押出機にて溶融混練して組成物を得た。
この組成物を100℃の水に6時間接触させ、ポリアミ
ドを得た。この組成物について、MO成分含有量、およ
び金型汚れを測定した。その結果を表2に示す。
【0129】
【実施例5】実施例2において、水に接触する前のポリ
アミド40重量部に対して、繊維補強材(ここではガラ
ス繊維:旭ファイバーグラス(株)製 CS03JAF
T2A)30重量部、変性重合体(ここではマレイン化
SEBS:旭化成(株)製タフテックM1913)2重
量部、難燃剤(ここではポリジブロモポリスチレン:グ
レートレイクスケミカル製 PDBS−80)28重量
部を加え、二軸押出機にて溶融混練して組成物を得た。
この組成物を100℃の水に3時間接触させてポリアミ
ドを得た。この組成物について、MO成分含有量、およ
び金型汚れを測定した。その結果を表2に示す。
【0130】
【実施例6】実施例3において、メタノールに接触する
前のポリアミド40重量部に対して、繊維補強材(ここ
ではガラス繊維:旭ファイバーグラス(株)製 CS0
3JAFT2A)30重量部、変性重合体(ここではマ
レイン化SEBS:旭化成(株)製 タフテックM19
13)2重量部、難燃剤(ここではポリジブロモポリス
チレン:グレートレイクスケミカル製 PDBS−8
0)28重量部を加え、二軸押出機にて溶融混練して組
成物を得た。この組成物を60℃のメタノールに2時間
接触させポリアミドを得た。この組成物について、MO
成分含有量、および金型汚れを測定した。その結果を表
2に示す。
【0131】
【比較例3】実施例4において、水に接触しないこと以
外は同じ方法で組成物を製造した。この組成物について
MO成分含有量、および金型汚れを測定した。その結果
を表2に示す。
【0132】
【比較例4】実施例5において、水に接触しないこと以
外は同じ方法でポリアミドを製造した。この組成物につ
いてMO成分含有量、および金型汚れを測定した。その
結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 51/00 C08L 51/00 71/10 71/10 77/00 77/00 // B29C 45/00 B29C 45/00 B29K 77:00 B29K 77:00 Fターム(参考) 4F071 AA54 AA55 AA78 AB28 AD01 AE07 AE17 AH12 BA01 BB05 4F206 AA29 AH17 AH33 AH36 JA07 JQ81 4J001 DA01 DB02 EA02 EA06 EA07 EA08 EA15 EA16 EA17 EB06 EB07 EB08 EB09 EB10 EB14 EB36 EB37 EB46 EC04 EC07 EC08 EC09 EC13 EE16D EE28C EE74D EE75D EE76D FA01 FA03 FB03 FC06 GA12 GB04 GB12 GD06 HA01 JA07 JB50 JC01 4J002 BB212 BB233 BC115 BN052 BN212 CH075 CL031 CL034 CL051 DA016 DB016 DE186 DJ006 DL006 FA046 FB106 FB136 FB146 FD016 FD135 GQ00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)テレフタル酸と、直鎖及び側鎖を含
    む炭素数4〜12の脂肪族ジアミンとから誘導される繰
    り返し単位と、必要に応じて(b)イソフタル酸と炭素
    数4〜12の脂肪族ジアミンとから誘導される繰り返し
    単位と、必要に応じて(c)炭素数4〜18の脂肪族ジ
    カルボン酸と炭素数4〜12の脂肪族ジアミンとから誘
    導される繰り返し単位と、必要に応じて(d)炭素数6
    〜20のラクタムまたはアミノカルボン酸から誘導され
    る繰り返し単位を有するポリアミドであって、繰り返し
    単位(a)が90〜100モル%、繰り返し単位(b)が
    0〜10モル%、繰り返し単位(c)が0〜10モル
    %、繰り返し単位(d)が0〜10モル%の量で結合し
    てなり、かつ、該ポリアミド中に含有される、60℃の
    メタノール中に3時間浸漬することにより測定したメタ
    ノール可溶性成分(MO成分)の含量が0.5重量%以
    下であることを特徴とするポリアミド。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のポリアミドに繊維状補強
    材、変性重合体、アイオノマー樹脂、脂肪族ポリアミ
    ド、および難燃剤のうち少なくとも1種類以上を含んで
    なることを特徴とするポリアミド組成物。
  3. 【請求項3】請求項1に記載のポリアミドを製造するに
    際に、その製造工程のうち、濃硫酸中30℃で測定した
    ポリアミドの極限粘度(η)が0.1〜3.0dl/g
    にあるいずれかの段階で、ポリアミドと液体状極性化合
    物とを接触させる事により、60℃のメタノール中に3
    時間浸漬することにより測定したメタノール可溶性成分
    の含量が0.5重量%以下となるようにすることを特徴
    とするポリアミドの製造方法。
  4. 【請求項4】請求項2に記載のポリアミド組成物を製造
    するに際に、その製造工程のうち、濃硫酸中30℃で測
    定したポリアミドの極限粘度(η)が0.1〜3.0d
    l/gにあるいずれかの段階で、ポリアミドと液体状極
    性化合物とを接触させる事により、60℃のメタノール
    中に3時間浸漬することにより測定したメタノール可溶
    性成分の含量が0.5重量%以下となるようにすること
    を特徴とするポリアミド組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1に記載のポリアミドを用いて、連
    続的に射出成形を行うことを特徴とする射出成形品の製
    造方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載のポリアミドを用いること
    を特徴とする精密部品の製造方法。
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