JP2001243946A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池

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JP2001243946A
JP2001243946A JP2000053317A JP2000053317A JP2001243946A JP 2001243946 A JP2001243946 A JP 2001243946A JP 2000053317 A JP2000053317 A JP 2000053317A JP 2000053317 A JP2000053317 A JP 2000053317A JP 2001243946 A JP2001243946 A JP 2001243946A
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Yoshiaki Nitta
芳明 新田
Harunari Shimamura
治成 島村
Noriyuki Negi
教之 禰宜
Sukeyoshi Yamamoto
祐義 山本
Yukiteru Takeshita
幸輝 竹下
Mitsuharu Yonemura
光治 米村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭素を負極材料とする従来の非水電解質二次
電池に比べて、充放電サイクルを低下させずに放電容量
が向上した非水電解質二次電池を提供する。 【解決手段】 Si、Sn、Znの少なくとも一種からなる固
相Aの核粒子の周囲の全面または一部を固相Bによって
被覆した複合粒子からなり、固相Bは、固相Aの構成元
素であるSi、Sn、Znのいずれかと、周期表の2族、遷移
元素、12族、13族、および14族元素よりなる群から選ば
れた少なくとも一種の元素(但し、固相Aの構成元素お
よび炭素を除く)との固溶体または金属間化合物からな
り、前記複合粒子が1〜50質量%のセラミックスを含有
することを特徴とする非水電解質二次電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム二次電池
で代表される非水電解質二次電池に関し、特にその負極
材料に特徴を有する非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、移動体通信機器、携帯電子機器の
主電源として利用されているリチウム二次電池は、起電
力が高く、高エネルギー密度であるという特長を有す
る。最初に考えられた、負極材料としてリチウム金属を
用いたリチウム二次電池は、エネルギー密度は非常に高
いものの、充電時に負極にデンドライトが析出し、充放
電を繰り返すことにより、このデンドライトがセパレー
タを突き破って正極側に達し、内部短絡を起こす恐れが
あった。また、析出したデンドライトは、比表面積が大
きいため反応活性度が高く、その表面で電解液中の溶媒
と反応して、電子伝導性に乏しい固体電解質的な界面皮
膜を形成する。そのため、電池の内部抵抗が高くなった
り、電子伝導のネットワークから孤立した粒子が存在す
るようになり、これらが充放電効率を低下させる要因と
なっている。以上の理由から、負極材料としてリチウム
金属を用いたリチウム二次電池は、信頼性が低く、サイ
クル寿命が短いため、実用電池として使用するには問題
があった。
【0003】そこで、リチウム金属に替わる負極材料と
して、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を使
用することが試みられ、リチウム二次電池が実用化され
るに至った。負極材料として炭素材料を用いたリチウム
二次電池では、通常の条件下では充電時の負極への金属
リチウムの析出は起こらないため、デンドライトによる
内部短絡の問題はない。しかし、炭素材料の一つである
黒鉛の理論容量は372mAh/g (LiC6 として) にすぎず、L
i金属単体の理論容量の10分の1程度と少ないので、リ
チウム二次電池の放電容量が低くならざるを得ない。そ
のため、炭素以外の負極材料を使用して、リチウム二次
電池の高容量化を目指す試みもなされている。
【0004】炭素以外の負極材料として、リチウムと化
合物を形成する単体金属材料および単体非金属材料が知
られている。例えば、ケイ素(Si) (米国特許3,969,139
号)、スズ(Sn) (米国特許4,436,796 号)、亜鉛(Zn)の
リチウムを最も多く含む化合物の組成式は、それぞれLi
22Si5 、Li22Sn5 、LiZnであり、この化合物における割
合よりLiが少なければ、充電時に金属リチウムは通常は
析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題は
ない。これら化合物と各単体材料との間の電気化学容量
は、それぞれ4199 mAh/g、993 mAh/g 、410 mAh/g であ
り、いずれも黒鉛の理論容量よりも大きい。
【0005】また、リチウムと化合物を形成する単体の
金属または非金属材料の他にも、化合物型の負極材料と
して、特開平4−126371号、特開平7−29602 号、特開
平7−240201号、特開平8−153517号各公報には遷移元
素珪化物などからなる金属間化合物が、特開平9−6365
1 号公報には4B族 (14族) 元素及びP、Sbの少なくと
も一つを含む金属間化合物からなり、その結晶構造がCa
F2型、ZnS 型、AlLiSi型のいずれかからなる負極材料が
提案されている。このほか、特開平10−294112号公報に
超急冷の金属硅化物を負極材料として用いることが提案
され、さらに特開平11−86853 号公報に、金属間化合物
相を含み、かつこの金属間化合物に含まれる元素で構成
される上記金属間化合物以外の相を1相以上含む粒子を
用いることなどが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、炭素材料より
も高容量を示す上記の負極材料には、それぞれ次に述べ
るような問題点がある。リチウムと化合物を形成する単
体の金属材料および非金属材料は、炭素材料に比べて充
放電サイクル特性が悪いという共通した欠点がある。そ
の理由は、充電時と放電時のリチウムの吸蔵・放出に伴
う体積差が大きくなるため、材料に大きな歪みや亀裂が
生じ、粒子が微細化するためと考えられている。さら
に、この微細化した粒子間に空間が生じ、電子伝導ネッ
トワークが分断され、電気化学的な反応に関与できない
部分が増加することも、充放電容量の低下に寄与すると
考えられる。即ち、リチウムと化合物を形成する単体の
金属または非金属材料はいずれも、充放電時の体積変化
と組織変化が大きいことが、炭素負極材料に比べて充放
電サイクル特性が悪い理由であると推察される。
【0007】一方、上述した化合物型の負極材料では、
例えば、特開平7−240201号公報に示された遷移元素珪
化物等の珪化物負極材料を用いた電池の場合、実施例と
比較例に示された1サイクル目、50サイクル目、100 サ
イクル目の電池容量を見ると、リチウム金属からなる負
極材料と比較して充放電サイクル特性は改善されている
ものの、天然黒鉛負極材料と比較した電池容量は最大で
も12%程度しか増加していない。従って、遷移元素珪化
物等といった化合物型の負極材料は、黒鉛負極材料に比
べて大幅な容量増加は達成され得ないと推察される。
【0008】また、特開平9−63651 号公報に示された
材料は、その実施例と比較例の対比から、Li−Pb合金負
極材料より充放電サイクル特性が改善され、かつ黒鉛負
極材料よりも高容量であることが示されている。しか
し、10〜20サイクルまでの充放電サイクルで放電容量の
減少が著しく、最も良好と思われるMg2Sn においても約
20サイクル後には初期容量の70%程度に放電容量が減少
している。
【0009】単体材料とその金属間化合物とを備えた、
例えば特開平4−126371号公報や特開平7−29602 号公
報に記載の負極材料は、確かに単体のみで用いるよりも
金属間化合物や合金などの作用により構造の維持が可能
になり、サイクル特性の改善がみられるが、単体材料自
身が電解液と直接反応する界面が存在するため、この部
分での金属間化合物や合金による構造維持の寄与がなく
なり、単体材料が示す挙動と同様になる。従って、十分
なサイクル特性を得ることが困難である。
【0010】ニッケル珪化物を負極材料に用いる、例え
ば、特開平8−153517号公報記載の材料は、サイクル特
性に優れた特性が得られるが、単体材料の存在比率が極
端に少ないために、放電容量が低くなる。
【0011】また、遷移金属元素などに対する単体材料
元素の比率を多くした仕込み組成で超急冷して得られ
る、例えば、特開平10−294112号公報記載の材料は、確
かに単体材料比率が大きいため高容量が得られるが、全
ての粒子において単体材料と金属間化合物の複合あるい
は包接化が行えず、金属間化合物などの作用による構造
維持が困難になる。この場合、単体材料と電解液との直
接反応界面が存在するようになり、構造維持をもたらす
金属間化合物などの寄与が得られなくなり、単体材料が
示す挙動と類似する。従って、十分なサイクル特性を得
ることが困難である。
【0012】特開平11−86853 号公報に示された材料
は、周期率表の3B〜5B族 (13〜15族) から選ばれた
元素を含み、かつ材料組織上2相以上を含む粒子で構成
されており、前記の相が全てリチウムを吸蔵することが
できる粒子である。2相以上にすることで、充放電に伴
う互いの構造変化を緩和し合い、粒子の崩壊を抑制して
いるものと考えられるが、実施例に示された1〜100 サ
イクルまでの放電容量の劣化率から、例えば300 サイク
ル後の放電容量を計算すると、現在実用化に至っている
炭素材料よりも小さくなると推察される。
【0013】以上に説明したように、現在実用化されて
いる黒鉛系負極材料より放電容量が高く、かつ300 サイ
クル後のサイクル寿命が黒鉛に匹敵するようなリチウム
二次電池の負極材料は、従来技術において容易に得るこ
とはできない。本発明はかかる負極材料を備えたリチウ
ム二次電池を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、固相A
からなる核粒子の周囲の全面または一部を固相Bで被覆
した複合粒子からなる負極材料を含む負極を備えた非水
電解質二次電池であって、前記固相Aはケイ素、スズ、
亜鉛の少なくとも一種を構成元素として含み、前記固相
Bは、固相Aの構成元素であるケイ素、スズ、亜鉛のい
ずれかと、周期表の2族元素、遷移元素、12族元素、13
族元素、および14族元素よりなる群から選ばれた少なく
とも一種の元素(但し、固相Aの構成元素および炭素を
除く)との固溶体または金属間化合物からなり、そして
前記複合粒子がセラミックスを含有する、ことを特徴と
する非水電解質二次電池によって、上記課題を解決する
ことができる。
【0015】本発明で用いる前記複合粒子からなる負極
材料では、複合粒子の固相Aが高容量を与え、固相Bが
固相Aの充放電で起きる膨張収縮を抑える役割を担うこ
とで充放電サイクル特性を改善し、さらに複合粒子の固
相A又は固相Bのいずれか一方又は両方の中にセラミッ
クスを有することで、充放電の際に負極材料の粒子を構
成する相の膨張収縮で生じるクラックの進展を抑制し、
充放電容量のサイクル特性を向上させることができる。
セラミックスとしては、SiC 、Si3N4 、Al2O3、TiC 、T
iB2、Y2O3、ZrB2、HfB2、ZrO2、ZnO 、WC、W2C 等が挙
げられる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は、非水電解質およびリチ
ウムの吸蔵・放出が可能な正極と負極を備えた非水電解
質二次電池に関する。本発明の非水電解質二次電池で
は、負極が、固相Aの核粒子の周囲の全面または一部
を、固相Bによって被覆した複合粒子からなる負極材料
を含んでいる。
【0017】この複合粒子の固相Aは、ケイ素、スズ、
亜鉛の少なくとも一種を構成元素として含み、固相B
は、固相Aの構成元素であるケイ素、スズ、亜鉛のいず
れかと、周期表の2族元素、遷移元素、12族元素、13族
元素、および14族元素よりなる群から選ばれた少なくと
も一種の元素(但し、固相Aの構成元素および炭素を除
く)との固溶体または金属間化合物からなる。この固相
Aの核粒子の周囲を固相Bで被覆した複合粒子は、さら
にセラミックスを含有している。セラミックスは固相A
か固相Bのいずれか一方の相に含まれているだけでもよ
く、あるいは固相Aと固相Bの両相に含まれていてもよ
い。
【0018】本発明に用いることができるセラミックス
としては、SiC 、Si3N4 、Al2O3 、TiC 、TiB2、Y2O3
ZrB2、HfB2、ZrO2、ZnO 、WC、W2C 等があり、この群か
ら選ばれた少なくとも一種以上のセラミックスを用いる
ことができる。
【0019】本発明で用いる負極材料の固相Aは、高容
量を与えるケイ素、スズ、亜鉛の少なくともいずれかを
構成元素として含むことから、主として充放電容量の高
容量化に寄与しているものと考えられる。また、固相A
からなる核粒子の周囲の全面または一部を被覆している
固相Bは、固相Aの充放電で起きる膨張収縮を抑え、核
粒子の崩壊を抑制することから、主として充放電サイク
ル特性の改善に寄与しており、固相Bに含有されるリチ
ウム量は、通常、金属、固溶体、金属間化合物のそれぞ
れ単独の場合より少ない。
【0020】このように高容量と充放電サイクル特性の
改善にそれぞれ寄与する2相にすることで、従来技術の
課題をある程度は解決できる。しかし、A相とB相の2
相だけでは、膨張収縮に伴う応力歪は異相境界に蓄積さ
れるため、約300 サイクルといった多くの回数の充放電
サイクルを繰り返すと、クラックが発生して、最終的に
は粒子の崩壊が起こり、充放電サイクルに伴う充放電容
量の急激な減少が起こる。TEM(透過電子顕微鏡)で
充放電サイクル後の負極材料を観察すると、固相Aや固
相B内でクラックの進展が確認された。即ち、この2相
だけでは、サイクル寿命を十分に改善することができな
い。
【0021】サイクル寿命を十分に改善するには、充放
電時の体積膨張収縮に伴う応力歪が異相境界に蓄積され
るのを防止して、充放電サイクルの繰り返しにより生ず
る応力歪を緩和し、クラック進展を抑制することが有効
である。それにより、高容量で充放電容量のサイクル特
性にも優れた負極材料が得られると期待される。
【0022】本発明では、クラック進展を抑制するた
め、固相Aからなる核粒子の周囲の全面または一部を固
相Bで被覆した複合粒子に、セラミックスを含有させ
る。この複合粒子中にセラミックス相が均一に分散して
いると、セラミックス相のところでクラック偏向し、ク
ラック進展のエネルギー解放率が増加するため、クラッ
ク進展抵抗の増加につながり、クラックが進展するのを
抑制するものと推測される。また、セラミックス相はリ
チウムとの充放電反応には関与しないため、充放電時の
体積膨張収縮は起こらない。従って、本発明により、上
記複合粒子中にセラミックスを含有させた負極材料を用
いると、複合粒子内でのクラックの進展を抑制し、高容
量でサイクル特性にも優れた非水電解質二次電池を提供
することができる。
【0023】本発明においてクラック進行を抑制する目
的で負極材料に含有させるセラミックスは、固相A及び
固相Bの結晶構造を変化させないよう、固相Aの核粒子
を固相Bで全面的または部分的に被覆してなる複合粒子
内に、凝集せずに均一に分散させる。
【0024】本発明で用いるセラミックス含有複合粒子
の製造方法は特に限定されるものではないが、次のよう
な方法が可能である。第一の方法は、固相Aと固相Bの
構成元素を所定の比率で混合した複合粒子原料とセラミ
ックスとを混合し、セラミックスが溶融しない温度で複
合粒子原料を溶融させ、乾式噴霧法(ガスアトマイズ
法)、湿式噴霧法(液体アトマイズ法)、ロール急冷
法、回転電極法などで急冷・凝固させる方法である。
【0025】複合粒子原料は、冷却中に固相Aと固相B
が析出するように選択する。冷却中に最初に固相Aが析
出した場合には、この析出物が固相Aの核粒子となり、
その周囲に固相Bが後から析出し、固相Aが固相Bで部
分的または全面的に被覆された複合粒子が得られる。し
かし、固相Aが後から析出した場合でも、その析出物が
粒子状であれば、やはり固相Aの核粒子が固相Bで被覆
された複合粒子を得ることができる。
【0026】この方法の変形では、上記の複合粒子原料
を、セラミックスと混合せずに、セラミックスが溶融し
ない温度で溶融させ、出湯した溶融物が急冷・凝固する
前にセラミックスを溶融物内に吹き込んでから、急冷・
凝固させる。急冷・凝固は上記と同様の方法で実施でき
る。
【0027】いずれの方法でも、必要に応じて、粉砕、
分級などにより粒子径を調節することができる。さらに
必要に応じて、金属状態図における複合粒子の構成元素
比率での固相線温度よりも低い温度で熱処理して、好ま
しい固溶体もしくは金属間化合物の組織を得ることがで
きる。冷却方法は、十分に冷却可能な方法であれば、上
記以外の方法も用いることができる。
【0028】別の方法として、粉末焼結法、メカニカル
アロイング法などの固相反応を利用して、セラミックス
含有複合粒子を製造することもできる。1例として、固
相Aと固相Bの構成元素を所定の比率で混合したものと
セラミックスを混合し、その混合粉を遊星ボールミルに
よりメカニカルアロイング法で数時間処理し、その合成
粉を仕込み組成から決まる固溶体または金属間化合物の
固相線温度より低い温度で熱処理することで製造するこ
とができる。
【0029】別の例として、固相Aと固相Bの構成元素
を所定の比率で混合したものを乾式噴霧法、湿式噴霧
法、ロール急冷法、回転電極法などで急冷・凝固させて
得た合成粉、または固相Aと固相Bの構成元素を所定の
比率で混合したものを粉末焼結法、メカニカルアロイン
グ法などの固相反応処理を行うことで得た合成粉、にセ
ラミックスを混合し、粉末焼結法で処理することでセラ
ミックス含有複合粒子を製造することができる。さら
に、固相Aと固相Bの構成元素を所定の比率で混合した
ものとセラミックスを混合し、粉末焼結法で処理するこ
とでも得られる。この最後に述べた粉末焼結法を利用し
た製造方法は、工程が単純であり、特に好ましい方法で
ある。
【0030】前述したように、セラミックスは、固相A
と固相Bの結晶構造を変化させてはならない。また、セ
ラミックスと固相Aとの界面、又はセラミックスと固相
Bとの界面に、化学的に不安定な反応相を作ってはなら
ない。そのような界面が存在すると、界面の結合力が弱
いため、界面に沿ってクラックの進展を助長させること
になり好ましくない。
【0031】本発明におけるクラックの進行を抑制する
セラミックスが、固相A及び固相Bの結晶構造を変化さ
せないように固相Aおよび/または固相B内に凝集せず
均一に分散されているかは、走査型電子顕微鏡(SEM) 、
電子式プローブX線マイクロアナライザー(EPMA)等を用
いて観察確認が可能であることを本発明者らは究明し
た。
【0032】本発明で用いるセラミックスは、SiC 、Si
3N4 、Al2O3 、TiC 、TiB2、Y2O3、ZrB2、HfB2、ZrO2
ZnO 、WC、W2C よりなる群から選ばれた少なくとも一種
以上であることが望ましい。これらのセラミックスは、
固相A及び固相Bの結晶構造を変化させないからであ
る。これら以外のセラミックスでも、結晶構造を変化さ
せず、セラミックスと固相との界面に不安定な反応相を
つくらないものであればよい。
【0033】セラミックスは、該複合粒子に対して1質
量%以上、50質量%以下の範囲であることが好ましい。
1質量%未満では、複合粒子内に均一に分散されたとし
ても、その絶対量が少ないため、発生したクラックの進
展を十分に抑制することができず、充放電サイクル特性
の向上は期待できない。一方、50質量%を越えると、複
合粒子内のリチウムを含有できないセラミックスの重量
の割合が大きいため、放電容量の低下が著しくなる。
【0034】複合粒子及びセラミックスの粒径は特に限
定されないが、セラミックス含有複合粒子の平均粒径は
0.1 μm以上、50μm以下が好ましく、この複合粒子の
核粒子である固相Aの平均粒径は0.01μm以上、40μm
以下が好ましい。従って、セラミックスの粒径は、0.01
μm以上、10μm以下が好ましい。
【0035】上述したセラミックス含有複合粒子を負極
材料として使用して、常法に従って、非水電解質二次電
池用の負極を製造することができる。例えば、まず負極
材料の粉末に、適当な結着剤とその溶媒を、必要に応じ
て導電性向上のために適当な導電剤の粉末と一緒に混合
し、混合物をホモジナイザー、ガラスビーズ等を適宜用
いて充分に攪拌し、スラリー状にする。このスラリーを
電極基板となる集電体にドクターブレード等を用いて塗
布し、乾燥した後、ロール圧延等で圧密化させ、必要で
あれば適当な大きさに切断すると、集電体の表面に負極
材料を含有する電極合剤層を有する負極板が得られる。
【0036】負極用導電剤は、電子伝導性材料であれば
何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人
造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類;アセチレンブ
ラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、フ
ァーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック
等のカーボンブラック類;炭素繊維、金属繊維などの導
電性繊維類;銅、ニッケル等の金属粉末類;ポリフェニ
レン誘導体などの有機導電性材料、などを単独又は混合
物として使用することができる。これらの導電剤のなか
で、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維が特に好
ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極
材料に対して1〜50質量%が好ましく、特に1〜30質量
%が好ましい。なお、本発明で用いる負極材料は、セラ
ミックス相を除く固相A及び固相B自身は電子伝導性を
有するため、導電剤を添加しなくても電極として機能さ
せることができる。
【0037】負極用結着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性
樹脂のいずれであってもよい。好ましい結着剤は、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオ
ロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチ
レンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサ
フルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−
ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP) 、テトラフル
オロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共
重合体(PFA) 、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロ
ピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオ
ロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレ
ン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチ
レン(PCTFE) 、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロ
ピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン
共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重
合体(ECTFE) 、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロ
ピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニ
リデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフ
ルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合
体もしくはそのNa+ イオン架橋体、エチレン−メタクリ
ル酸共重合体もしくはそのNa+ イオン架橋体、エチレン
−アクリル酸メチル共重合体およびそのNa+イオン架橋
体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体もしくはそ
のNa+ イオン架橋体等を挙げることができ、これらの材
料を単独又は混合物として用いることができる。
【0038】これらの材料の中で、負極用結着剤として
より好ましいのは、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ
化ビニリデン(PVDF)、エチレン−アクリル酸共重合体も
しくはそのNa+ イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸
共重合体もしくはそのNa+ イオン架橋体、エチレン−ア
クリル酸メチル共重合体およびそのNa+ イオン架橋体、
ならびにエチレン−メタクリル酸メチル共重合体もしく
はそのNa+ イオン架橋体である。
【0039】負極用集電体としては、構成された電池に
おいて化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でも
よい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、
銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステン
レス鋼の表面をカーボン、ニッケルまたはチタンで処理
したものなどを用いることができる。特に、銅あるいは
銅合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用い
ることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹
凸を付けることが望ましい。集電体の形状は、フォイル
の他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたも
の、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが
用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500 μ
mが適当である。
【0040】本発明の非水電解質二次電池は、基本構造
として、負極板、正極板、セパレーター、非水電解質を
含んでいる。負極板は前述したセラミックス含有複合粒
子を用いて製造するが、他の要素である正極板、セパレ
ーター、電解質については特に制限されず、従来より公
知のもの、或いは今後開発される材料を適当に使用すれ
ばよい。
【0041】正極材料としては、リチウム含有遷移金属
酸化物を用いることができる。例えば、Lix CoO2、Lix
NiO2、Lix MnO2、Lix Coy Ni1-y O2、Lix Coy1-y Oz
、Lix Ni1-yy Oz 、Lix Mn2 O4、Lix Mn2-yy O4
(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、
Cr、Pb、Sb、Bの少なくとも一種、x=0〜1.2 、y=
0〜0.9 、z= 2.0〜2.3)が挙げられる。ここで、上記
のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減
する。遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およ
びそのリチウム化合物、ニオブ酸化物およびそのリチウ
ム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シ
ェブレル相化合物等の他の正極材料を用いることもでき
る。また、複数の異なった正極材料を混合して用いるこ
とも可能である。正極材料の平均粒径は、特に限定され
ないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0042】このような正極材料の粉末を使用して、負
極について説明したのと同様の材料および方法により正
極板を製造することができる。正極用導電剤は、用いる
正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電
子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛
(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類;
アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネル
ブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サー
マルブラック等のカーボンブラック類;炭素繊維、金属
繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン、アルミニウ
ム等の金属粉末類;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの
導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化
物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料など
を、単独又混合物として使用することができる。これら
のうと、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい
導電剤である。導電剤の添加量は特に限定されないが、
正極材料に対して1〜50質量%が好ましく、特に1〜30
質量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜
15質量%の範囲が特に好ましい。
【0043】正極用結着剤としては、負極用結着剤に関
して列挙したのと同様の材料を使用することができる。
好ましい正極用結着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)お
よびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0044】正極用集電体は、用いる正極材料の充放電
電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば
何でもよい。適当な材料の例としては、ステンレス鋼、
アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、
アルミニウムやステンレス鋼の表面をカーボンまたはチ
タンで処理したものなどを用いることができる。特に、
アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。こ
れらの材料の表面を酸化して用いることもできる。ま
た、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望
ましい。集電体の形状は、フォイルの他、フィルム、シ
ート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質
体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられ
る。厚みは、特に限定されないが、1〜500 μmが適当
である。
【0045】正極と負極のいずれの電極合剤にも、導電
剤や結着剤の他、フィラー、分散剤、イオン伝導体、圧
力増強剤、及びその他の各種添加剤を適宜含有させるこ
とができる。フィラーは、構成された電池において、化
学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いるこ
とができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなど
のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用
いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、電
極合剤の固形分に対して0〜30質量%の範囲が好まし
い。
【0046】本発明の非水電解質二次電池における負極
板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面の対向面に
負極合剤面が存在していることが好ましい。
【0047】非水電解質二次電池に用いる非水電解質
は、代表的には、リチウム塩を適当な非水溶媒に溶解さ
せた溶液からなる。非水溶媒としては、例えば、エチレ
ンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)、ブ
チレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)な
どの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DM
C)、ジエチルカーボネート(DEC) 、エチルメチルカーボ
ネート(EMC) 、ジプロピルカーボネート(DPC) などの鎖
状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオ
ン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン
酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン
類; 1,2−ジメトキシエタン(DME) 、 1,2−ジエトキシ
エタン(DEE) 、エトキシメトキシエタン(EME) 等の鎖状
エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒ
ドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシ
ド、 1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミ
ド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニト
リル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグ
ライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジ
オキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−
2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導
体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、 1,3
−プロパンサルホン、アニソール、ジメチルスルホキシ
ド、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶
媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を
混合して使用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カ
ーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カ
ーボネート及び脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が
好ましい。
【0048】これらの溶媒に溶解させるリチウム塩とし
ては、例えば、LiClO4、LiBF4 、LiPF6 、LiAlCl4 、Li
SbF6、LiSCN 、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)
2 、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10 、低級脂肪族カ
ルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI 、クロロボランリ
チウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げ
ることができ、これらを単独又は二種以上を組み合わせ
て使用することができる。特にLiPF6 を含有することが
より好ましい。
【0049】本発明における特に好ましい非水電解質
は、非水溶媒としてエチレンカーボネートとエチルメチ
ルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6
を少なくとも含む溶液である。支持電解質の非水溶媒に
対する溶解量は、特に限定されないが、 0.2〜2mol/l
が好ましく、特に 0.5〜1.5 mol/l とすることがより好
ましい。電池内の電解質の充填量はを特に限定されず、
正極材料や負極材料の量や電池のサイズによって必要量
を用いることができる。
【0050】非水電解質二次電池の電解質としては、上
述したような溶液でなはく、固体電解質を用いることも
できる。固体電解質は、無機固体電解質と有機固体電解
質に大別される。無機固体電解質の例としては、Liの窒
化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られてい
る。なかでも、Li4SiO4 、Li4SiO4-LiI-LiOH、xLi3PO4-
(1-x)Li4SiO4、Li2SiS3 、Li3PO4-Li2S-SiS2、硫化リン
化合物などが有効である。有機固体電解質としては、例
えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサ
イド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレ
ンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニ
リデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの
誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効であ
る。
【0051】さらに、放電や充放電特性を改良する目的
で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。
例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールア
ミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライ
ム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼ
ン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム
塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げる
ことができる。
【0052】本発明の非水電解質二次電池に用いるセパ
レータとしては、大きなイオン透過度と所定の機械的強
度を持つ、絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、
一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を持つこ
とが好ましい。耐有機溶剤性と疎水性から、ポリプロピ
レン、ポリエチレンなどを単独又は組み合わせたオレフ
ィン系ポリマーあるいはガラス繊維などからつくられた
シートや不織布または織布を用いることが好ましい。セ
パレータの孔径は、電極板より脱離した正負極材料、結
着剤、導電剤が透過しない範囲であることが望ましく、
例えば、0.01〜1μmの範囲とすることができる。セパ
レータの厚みは、一般的には、10〜300μmが用いられ
る。また、セラミックパッケージの空孔率は、電子やイ
オンの透過性と素材や膜圧に応じて決定されるが、一般
的には30〜80%の範囲内であることが望ましい。
【0053】ポリマー材料に、溶媒とその溶媒に溶解す
るリチウム塩とから構成される有機電解液を吸収保持さ
せたものを正極合剤、負極合剤に含ませ、さらに有機電
解液を吸収保持するポリマーからなる多孔性のセパレー
タを正極、負極と一体化してた電池を構成することも可
能である。このポリマー材料としては、有機電解液を吸
収保持できるものであればよいが、特にフッ化ビニリデ
ンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体が好ましい。
【0054】本発明の非水電解質二次電池の形状は、コ
イン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平
型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれ
にも適用できる。本発明の非水電解質二次電池は、携帯
情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自
動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用
いることができるが、用途は特にこれらに限定されるわ
けではない。
【0055】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【0056】
【実施例1】負極材料の製造方法 表1に本実施例で用いた負極材料(材料A〜材料S)の
固相Aと固相Bの成分(単体元素、金属間化合物、固溶
体)、仕込み時の元素比率、および固相線温度を示す。
本実施例で採用した具体的な製造方法は次の通りであ
る。
【0057】負極材料の複合粒子を構成する固相Aと固
相Bの構成元素を所定の比率で混合した複合粒子原料
に、その5質量%の量のセラミックスSiC を投入し、遊
星ボールミルで混合した。各材料の粒径は、複合粒子原
料が約1〜50μm、SiC が約0.05〜2μmであった。こ
の混合粉末を、表1に示す仕込み比率から決まる固相線
温度より10℃〜50℃程度低い温度で、不活性雰囲気下、
30 MPaで4時間ホットプレス焼結した。得られた焼結品
をボールミルで粉砕し、篩で分級して、粒径45μm以下
の粒子にした材料A〜材料Sを得た。
【0058】これらの負極材料は、電子顕微鏡観察結果
から、固相Aの核粒子の周囲の全面または一部が固相B
によって被覆されており、セラミックスは固相Aや固相
B内に凝集せず均一に分散されていることが確認でき
た。
【0059】
【表1】
【0060】円筒型電池の製造方法 上記の負極材料を用いて円筒型の非水電解質二次電池を
作製した。図1に、本実施例で作製した円筒型電池の縦
断面図を示す。正極板5及び負極板6がセパレーター7
を介して複数回渦巻状に巻回されて電池ケース1内に収
納されている。正極板5からは正極リード5aが引き出
されて封口板2に接続され、負極板6からは負極リード
6aが引き出されて電池ケース1の底部に接続されてい
る。電池ケースやリード板は、耐有機電解液性の電子伝
導性をもつ金属や合金を用いることができる。例えば、
鉄、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、銅、アル
ミニウムなどの金属あるいはそれらの合金が用いられ
る。特に、電池ケースはステンレス鋼板、Al−Mn合金板
を加工したもの、正極リードはアルミニウム、負極リー
ドはニッケルが最も好ましい。また、電池ケースには、
軽量化を図るため各種エンジニアリングプラスチックス
及びこれと金属の併用したものを用いることも可能であ
る。8は絶縁リングで極板群4の上下部にそれぞれ設け
られている。
【0061】電池ケースに有機電解液を注入し、封口板
を用いて電池缶を形成する。このとき、安全弁を封口板
として用いることができる。安全弁の他、従来から知ら
れている種々の安全素子を備えつけても良い。例えば、
過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC 素
子などが用いられる。その他の電池ケースの内圧上昇の
対策として、電池ケースに切込を入れる方法、ガスケッ
ト亀裂方法あるいは封口板亀裂方法あるいはリード板と
の切断方法を利用することができる。また、充電器に過
充電や過放電対策を組み込んだ保護回路を具備させる
か、あるいは、独立に接続させてもよい。電池の過充電
対策としては、電池内圧の上昇により電流を遮断する方
式を具備することができる。このとき、内圧を上げる化
合物を合剤の中あるいは電解質の中に含ませることがで
きる。内圧を上げる化合物としてはLi2CO3、LiHCO3、Na
2CO3、NaHCO3、CaCO3 、MgCO3 などの炭酸塩などがあげ
られる。
【0062】キャップ、電池ケース、シート、リード板
の溶接法は、公知の方法(例、直流又は交流の電気溶
接、レーザー溶接、超音波溶接)を用いることができ
る。封口用シール剤は、アスファルトなどの従来から知
られている化合物や混合物を用いることができる。
【0063】負極板6は、上で得た前記負極材料75質量
%に対し、導電剤である炭素粉末20質量%と結着剤のポ
リフッ化ビニリデン樹脂5質量%を混合し、これらを脱
水N−メチルピロリドンに分散させてスラリーを作製
し、銅箔からなる負極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延
して作製した。
【0064】一方、正極板5は、コバルト酸リチウム粉
末85質量%に対し、導電剤の炭素粉末10質量%と結着剤
のポリフッ化ビニリデン樹脂5質量%を混合し、これら
を脱水N−メチルピロリジノンに分散させてスラリーを
作製し、アルミ箔からなる正極集電体上に塗布し、乾燥
後、圧延して作製した。
【0065】有機電解液としては、エチレンカーボネー
トとエチルメチルカーボネートの体積比1:1の混合溶
媒に、LiPF6 を1.5 mol/l の濃度で溶解して得た溶液を
使用した。
【0066】以上のようにして、表1に示す材料A〜S
を負極材料として用いた電池A〜Sを作製した。作製し
た円筒型電池は直径18 mm 、高さ65 mm である。これら
の電池を100 mAの定電流で4.1 V になるまで充電した
後、100 mAの定電流で2.0 V になるまで放電する充放電
サイクルを繰り返した。この充放電は20℃の恒温槽の中
で行った。充放電は300 サイクルまで繰り返し行い、1
サイクル目の初期放電容量に対する300 サイクル目の放
電容量の比を容量維持率として表2に示す。参考まで
に、負極材料が黒鉛である場合のデータも表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】本発明の負極材料を用いた電池Aから電池
Sの300 サイクル目の放電容量は、黒鉛を負極材料に用
いた現行の電池Tに比べて高くなった。また、300 サイ
クル後の容量維持率は、負極材料が黒鉛である場合とほ
ぼ同じであるか、それよりやや劣る程度に抑えられた。
【0069】本実施例で用いた負極材料を構成する元素
は、固相AがSnの場合、2族元素としてMg、遷移元素と
してFeおよびMo、12族元素としてZnおよびCd嘉、13族元
素としてIn、14族元素としてPbを用いたが、これら以外
の各族の元素を用いても同様な結果が得られた。また固
相AがSiの場合、2族元素としてMg、遷移元素としてCo
およびNi、12族元素としてZn、13族元素としてAl、14族
元素としてSnを用いたが、これら以外の各族の元素を用
いても同様な結果が得られた。また固相AがZnの場合、
2族元素としてMg、遷移元素としてCuおよびV、12族元
素としてCd、13族元素としてAl、14族元素としてGeを用
いたが、これら以外の各族の元素を用いても同様な効果
が得られた。
【0070】負極材料の構成元素の仕込み比率について
は、特に限定されたものではなく、相が2相になり、1
相(固相A)が主にSn、Siおよび/またはZnを主体とし
た相で、もう一つ別の相(固相B)がその周りを一部ま
たは全部を被覆するような状態になればよく、仕込み組
成を特に限定するものではない。さらに、相Aは、Sn、
Si、Znのみからだけではなく、これら以外の元素、例え
ば、O、C、N、S、Ca、Mg、Al、Fe、W、V、Ti、C
u、Cr、Co、P等の元素が微量存在している場合も含ま
れる。相Bは、表1に示した固溶体、金属間化合物のみ
からなるだけではなく、それぞれの各固溶体、金属間化
合物を構成している元素やそれ以外の元素、例えば、
O、C、N、S、Ca、Mg、Al、Fe、W、V、Ti、Cu、C
r、Co、P等の元素が微量存在している場合も含まれ
る。
【0071】本実施例ではセラミックスとしてSiC を用
いたが、セラミックスはSiC に限定されるものでなく、
SiC に代えて、Si3N4 、Al2O3 、TiC 、TiB2、Y2O3、Zr
B2、HfB2、ZrO2、ZnO 、WC、W2C から選んだ一種類のセ
ラミックスを使用するか、またはこれらとSiC から選ば
れた2種以上のセラミックスを用いても、同様な結果が
得られた。
【0072】本実施例で用いたセラミックスの好ましい
粒径は、固相A及び固相Bからなる複合粒子の粒径に依
存するが、観察した範囲内では0.01μm以上、10μm以
下の範囲で好ましい結果が得られた。
【0073】
【実施例2】実施例1と同様の方法で、固相A粒子の周
囲の全面または一部が固相Bによって被覆されており、
セラミックスは固相A及び固相Bからなる複合粒子内に
凝集せず均一に分散されている負極材料を作製した。た
だし、セラミックスの種類を変化させた。
【0074】表3に本実施例で用いたセラミックスの種
類、初期放電容量、300 サイクル目の放電容量、初期の
放電容量に対する300 サイクル目の放電容量の比 (容量
維持率) を示す。本実施例では、実施例1の材料Jと同
様に、固相AとしてSi、固相BとしてはNiSi2 、固相A
と固相Bの構成元素の仕込み比率をSi:Ni=69:31原子
%、セラミックスの含有量は複合粒子に対して5質量%
とした。
【0075】
【表3】
【0076】本発明の負極材料を用いた電池aから電池
mの300 サイクル目の放電容量は、黒鉛を負極材料に用
いた現行の電池Tに比べて大きくなった。また本実施例
の電池mのように、セラミックスとしてSiC 、Si3N4
Al2O3 、TiC 、TiB2、Y2O3、ZrB2、HfB2、ZrO2、ZnO 、
WC、W2C から選ばれた二種以上のセラミックスを用いた
場合も同様な結果が得られた。
【0077】
【実施例3】実施例1と同様の方法で、固相A粒子の周
囲の全面または一部が固相Bによって被覆されており、
セラミックスは固相A及び固相Bからなる複合粒子内に
凝集せず均一に分散されている負極材料を作製した。た
だし、セラミックスの含有量を変化させた。
【0078】表4に本実施例で用いたセラミックス以外
の元素の仕込み比率、セラミックスの含有量、初期放電
容量、300 サイクル目の放電容量、初期の放電容量に対
する300 サイクル目の放電容量の比 (容量維持率) を示
す。本実施例では、実施例1の材料Jと同様に、固相A
としてSi、固相BとしてはNiSi2 、セラミックスとして
SiC を用いた。
【0079】
【表4】
【0080】セラミックスの含有量が複合粒子に対して
1質量%以上、50質量%以下の範囲である負極材料を用
いた電池nから電池pの300 サイクル目の放電容量は、
黒鉛を負極材料に用いた現行の電池Tに比べて大きくな
った。しかし、セラミックスの含有量が該負極材料に対
して1質量%未満である電池qは、クラックの進展を抑
制できず、容量維持率は小さくなった。また、セラミッ
クスの含有量が複合粒子に対して50質量%を越える電池
rは、仕込み時のケイ素、スズ、亜鉛の元素比率を大き
くしても、リチウムとの充放電反応に関与しないセラミ
ックス相の割合が多すぎるため、初期の充放電容量が小
さくなってしまい、高容量化が実現できない。
【0081】なお、本実施例で用いた負極材料を構成す
る元素には、実施例1で挙げた全材料を用いることがで
きる。また、負極材料構成元素の仕込み比率について
は、特に限定されたものではない。本実施例ではセラミ
ックスとしてSiCを用いたが、セラミックスはSiC に限
定されるものでなく、SiC に代えて、Si3N4 、Al2O3
TiC 、TiB2、Y2O3、ZrB2、HfB2、ZrO2、ZnO 、WC、W2C
から選んだ一種類のセラミックスを使用するか、または
これらとSiC から選ばれた2種以上のセラミックスを用
いても、同様な結果が得られた。
【0082】本実施例で用いたセラミックスの好ましい
粒径は、固相A及び固相Bからなる複合粒子の粒径に依
存するが、観察した範囲内では0.01μm以上、10μm以
下の範囲で好ましい結果が得られた。
【0083】
【発明の効果】本発明の非水電解質二次電池は、従来の
炭素材料を負極材料とした非水電解質二次電池に比べ
て、放電容量が高く、かつ充放電時の体積膨張収縮に伴
うクラックの進展を抑制される結果、充放電容量のサイ
クル特性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した円筒型の試験用非水電解質二
次電池の縦断面図である。
【符号の説明】
15電池ケース、 正極板、6 負極板、7 セパレー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新田 芳明 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 島村 治成 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 禰宜 教之 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属工 業株式会社エレクトロニクス技術研究所内 (72)発明者 山本 祐義 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属工 業株式会社エレクトロニクス技術研究所内 (72)発明者 竹下 幸輝 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属工 業株式会社エレクトロニクス技術研究所内 (72)発明者 米村 光治 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属工 業株式会社エレクトロニクス技術研究所内 Fターム(参考) 5H029 AJ03 AJ05 AK03 AK05 AK16 AK18 AL01 AL06 AL12 AM03 AM04 AM05 AM07 AM16 BJ02 BJ14 BJ27 DJ08 DJ16 DJ17 EJ01 EJ05 EJ08 HJ01 5H050 AA07 AA08 BA17 BA18 CA02 CA07 CA08 CA09 CA11 CA20 CB01 CB07 CB08 CB11 CB12 DA03 DA09 DA12 EA02 EA12 EA14 FA05 FA17 FA18 HA01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固相Aからなる核粒子の周囲の全面また
    は一部を固相Bで被覆した複合粒子からなる負極材料を
    含む負極を備えた非水電解質二次電池であって、 前記固相Aはケイ素、スズ、亜鉛の少なくとも一種を構
    成元素として含み、 前記固相Bは、固相Aの構成元素であるケイ素、スズ、
    亜鉛のいずれかと、周期表の2族元素、遷移元素、12族
    元素、13族元素、および14族元素よりなる群から選ばれ
    た少なくとも一種の元素(但し、固相Aの構成元素およ
    び炭素を除く)との固溶体または金属間化合物からな
    り、そして前記複合粒子がセラミックスを含有する、こ
    とを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 【請求項2】 セラミックスが、SiC 、Si3N4 、Al2O
    3 、TiC 、TiB2、Y2O3、ZrB2、HfB2、ZrO2、ZnO 、WC、
    W2C よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上であ
    る、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  3. 【請求項3】 セラミックスが、該複合粒子に対して1
    質量%以上、50質量%以下の範囲で含まれる請求項1記
    載の非水電解質二次電池。
JP2000053317A 2000-02-29 2000-02-29 非水電解質二次電池 Expired - Fee Related JP3882447B2 (ja)

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