JP2017103202A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた充放電サイクル特性をもつリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】負極合剤層2の構成物質である負極活物質3aの少なくとも一部は表面に平坦面8を有することにより、充放電サイクル特性を向上することができる。【選択図】図3

Description

本発明は、負極集電体と負極合剤層とからなる負極板、および正極板を含んで構成されるリチウムイオン二次電池に関するものである。
近年、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧と高エネルギー密度を有する二次電池として携帯電話やノート型パソコン、携帯電話などのモバイル電子機器の駆動用電源として実用化されている。また、リチウムイオン二次電池は急速な成長を遂げ、小型二次電池をリードする電池系として生産量は増え続けている。
リチウムイオン二次電池は、最近では、これら小型民生用途のみならず、車載用電池への需要が高まっており、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池の開発が加速されている。さらに、リチウムイオン二次電池の正極材料の高容量化に伴い、負極材料の高容量化が重要視されている。高容量の負極活物質としては、従来のリチウムイオン二次電池に採用されている黒鉛などの炭素質材料に代えて、シリコン(Si)、スズ(Sn)など、より多くのリチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料が注目されている。とりわけ、シリコンの微粒子がSiO中に分散した構造を持つSiOは、負荷特性に優れるなどの特徴も併せ持つことが報告されている。
ところが、前記SiOは、充放電反応に伴う体積膨張収縮が大きいため、電池の充放電サイクル毎にシリコン粒子が粉砕され、負極の表面に析出したSiが非水電解液溶媒と反応して不可逆な負極の容量の増大が生じたり、この反応によって電池内でガスが発生して電池缶が膨れたりするなどの問題が生じることも知られている。
従来このような問題に対しては、SiOの含有率や正極活物質と負極活物質との質量比を制限して充放電反応に伴う体積膨張収縮を抑制したり、SiOの表面に炭素などの導電質材料と被覆して負荷特性を改善したり、ハロゲン置換された環状カーボネートなどを添加した非水電解液を用いることで、充放電サイクル特性を向上したりする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−233245号公報
しかしながら、前記従来の構成では、負極活物質にSiOを使用しており、一部のSiOがリチウムイオンと反応し、リチウムシリケートが形成されるため、不可逆容量が多くなり初回充放電効率が低いという課題がある。また車載用電池への需要が高まっている中で更なる高寿命化が求められており、充放電サイクル特性を向上させる必要がある。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、充放電サイクル特性の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極集電体と前記正極集電体の表面に接して設けられる正極合剤層とからなる正極板と、負極集電体と前記負極集電体の表面に接して設けられる負極合剤層とからなる負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータとが電解液とともにケースに収納されるリチウムイオン二次電池であって、前記負極合剤層は、少なくとも第1の負極活物質と、前記第1の負極活物質を前記負極集電体の表面に固定化するバインダとを含み、前記第1の負極活物質は、少なくとも無機化合物にシリコン微粒子が分散された構造を有し、前記第1の負極活物質の少なくとも一部は表面に平坦面を有することを特徴とする。
本構成によって、優れた充放電サイクル特性のリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以上のように、負極合剤層の構成物質である負極活物質に平坦面を形成することにより、充放電サイクル特性を向上することができる。
リチウムイオン二次電池の構成を例示する断面図 本発明の一実施形態における負極板の構成を例示する概略図 本発明の一実施形態における好ましい負極活物質の構成を例示する概略図 本発明の一実施形態における好ましい負極活物質の構成を例示する概略図 不適切な負極活物質の構成を例示する概略図 本発明の一実施形態における負極合剤層の形成過程を順に例示する模式図 本発明の一実施形態における負極活物質の充放電時の構成変化を例示する断面模式図 本発明の一実施形態における負極活物質の構成を例示する概略図 不適切な負極合剤層の構成を例示する概略図 不適切な負極合剤層の構成を例示する概略図 実施例1から9および比較例1から6の電流性能を測定した結果を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1はリチウムイオン二次電池の構成を例示する断面図である。
図1に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池10は、例えば、正極板11と負極板12とセパレータ13からなる電極体と、非水電解液14と、それらを収納するケース15とから構成される。
本発明のリチウムイオン二次電池10は、上記の正極板11、セパレータ13、非水電解液14、およびケース15は特に限定されるものではないが、例えば、以下に記載するものを用いることができる。
正極板11は、導電性を有するフィルムからなる正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられた正極合剤層とからなる。正極集電体は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、銅、ニッケルなどの金属箔やエキスパンドメタルや、PETなどの高分子フィルムの表面に金属を蒸着した積層体、導電性高分子フィルムなど従来と同様のものを用いることができ、特に限定されるものではない。正極合剤層は、少なくとも正極活物質と導電助材とバインダとからなる。正極活物質は、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物(これらは、通常、LiNiO、LiCoO、LiMnで表されるが、LiとNiの比、LiとCoの比、LiとMnの比は化学量論組成からずれている場合が多い)などのリチウム含有複合金属酸化物を用いることができる。また、これらのリチウム含有複合金属酸化物は単独でまたは2種以上の混合物として、あるいはそれらの固溶体として用いることができるが、特に限定されるものではない。導電助材は、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ファイバー状カーボン、燐片状黒鉛を用いることができるが、特に限定されるものではない。バインダは、例えば、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマーおよび多糖類の単独、あるいは混合物を用いることができる。具体的には、バインダは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンや、ヘキサフルオロプロペンとの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース樹脂などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
また、セパレータ13は、正極板11と負極板12とを絶縁し、かつその内部(セパレータ13を構成する材料内またはセパレータ13内に形成された空孔内)をリチウムイオンが移動できるものであり、かつリチウムイオン二次電池10の使用時に安定な素材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンからなる絶縁性の高分子多孔フィルムや、セルロースからなる絶縁性の不織布である。また、セパレータ13は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの無機物粒子や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの有機物粒子、前記無機物粒子と有機物粒子との混合物、結着材、溶媒、各種添加剤などを混合したものを、塗布し、乾燥させ、圧延することにより形成することもできる。セパレータ13の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上50μm以下である。
非水電解液14は、非水溶媒と電解質とからなる。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトンなどである。これらの非水溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。また、正極板11および負極板12上に良好な皮膜を形成するため、または過充電時の安定性を確保するために、非水溶媒として、ビニレンカーボネート(VC)、またはシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。また、前記非水溶媒は、前記した材料に限らず、一定の電解液を用いることも可能である。また、非水電解液14の電解質は、特に限定されないが、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]などのリチウム塩などである。
ケース15は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属を成形したものや、アルミニウムなどの金属層と高分子層とを積層したフィルムなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
次に、本発明において、特徴的な負極板について、図2〜図10を参照して、以下に詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態における負極板の構成を例示する概略図であり、円で囲んだ部分の拡大図を合わせて表示する。図3,図4は本発明の一実施形態における好ましい負極活物質の構成を例示する概略図、図5は不適切な負極活物質の構成を例示する概略図、図6は本発明の一実施形態における負極合剤層の形成過程を順に例示する模式図、図7は本発明の一実施形態における負極活物質の充放電時の構成変化を例示する断面模式図、図8は本発明の一実施形態における負極活物質の構成を例示する概略図、図9,図10は不適切な負極合剤層の構成を例示する概略図である。
負極板12は、図2に示すような、導電性を有するフィルムからなる負極集電体1と、前記負極集電体1の少なくとも一つの表面に設けられた負極合剤層2とからなる。図2では、負極集電体1を負極合剤層2で挟み込む構成を示し、負極集電体1の表裏2つの表面に負極合剤層2が設けられている場合を図示した。
負極集電体1は、例えば、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ニッケルなどの金属箔やエキスパンドメタルや、PETなどの高分子フィルムの表面に金属を蒸着した積層体、導電性高分子フィルムなど従来と同様のものを用いることができるが、特に限定されるものではない。
負極合剤層2は、少なくとも負極活物質(第1の負極活物質)3aを備え、さらに、負極活物質3b、3cを備えても良い。また、負極合剤層2は、負極活物質3a、3b、3cを負極集電体1の表面に固定化するためのバインダ4を備える。バインダ4は、正極板11(図1参照)と同様のものを用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマーおよび多糖類の単独、あるいは混合物を用いることができる。具体的には、バインダ4は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンや、ヘキサフルオロプロペンとの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース樹脂などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
負極活物質3aは、図3〜図4に示すように、無機化合物6にシリコン微粒子5が分散された構造である。
シリコン微粒子5のサイズは5nmより大きく1000nm未満が好ましく、より好ましくは5nmより大きく200nm未満が好ましい。シリコン微粒子5を200nm未満の微粒子にすることにより、充放電時のシリコン微粒子5の膨張収縮の体積変化を小さくすることができる。さらにシリコン微粒子5を無機化合物6が覆う構造とすることにより、シリコン微粒子5の膨張収縮を抑制することができる。これに対してシリコン微粒子5が200nm以上の場合、充放電時のシリコン微粒子5の膨張収縮による体積変化が大きいため、無機化合物6が覆っている構造においても割れ等の問題を生じやすい。ただし、200nm未満のシリコン微粒子を形成するために製造時間が長くなるため、高コスト化に繋がる。シリコン微粒子5が1000nm未満の粒子サイズであれば、膨張収縮による体積変化が大きくなるため200nmより前記問題は生じやすいが、製造コストは抑えることが出来るため、シリコン微粒子5は1000nm未満であることが好ましい。
この構成と同時に、あるいはこの構成とは別に、無機化合物6内に空隙7を有しても良い。そして、負極活物質3aは部分的に平坦な平坦面8を有する。
平坦面8は任意の立体形状の負極活物質3aの表面の一部が平面となっている面である。負極活物質3aの断面形状を観察した場合、平坦な面である平坦面8は直線形体となっている。その直線部の長さαと真直度βの比(β/α)は、0.07未満が好ましい。また、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)は、0.3より大きいことが好ましい。バインダ4により負極活物質3aが負極集電体1の表面に固定され、負極合剤層2が形成される。前記直線部の長さαと真直度βの比(β/α)が0.07未満、かつ、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)が0.3より大きい平坦面8を有する負極活物質3a(図3、図4)を含むことにより、負極活物質3aと負極集電体1との接点の面積が増えるため負極合剤層2と負極集電体1との密着性が向上する。図5では、直線部の長さαと真直度βの比(β/α)は、0.07未満、かつ、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)は、0.3以下になる構成として、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)が0.25となる構成を例示している。
図6に示すように、負極合剤層2を形成する際、例えばダイなどの塗布装置を用いて負極集電体1上に負極活物質3a、3b、3c、バインダ4、溶媒9を含む溶液を塗布する(図6の(a)塗布直後)。その後、溶媒9を乾燥させる過程(図6の(b)乾燥中)において、乾燥時生じる対流により負極活物質3a、3b、3cは移動しながら負極合剤層2を形成する。直線部の長さαと真直度βの比(β/α)が0.07未満、かつ、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)が0.3より大きい平坦面8を有することにより、溶媒9中を対流により負極活物質3a、3b、3cは移動しながら、平坦面8を有する負極活物質3aは負極集電体1と強い付着力が働き、平坦面8が負極集電体1に接触する状態で溶媒が乾燥し、負極活物質3aの平坦面8が負極集電体1の接点となるように負極合剤層2を形成することができる(図6の(c)乾燥後)。したがって、負極集電体1と負極活物質3aとの間での接点が増え、負極集電体1と負極合剤層2との密着性を向上することができる。これにより、負極集電体1から負極合剤層2の剥がれ等による集電性の劣化を抑制できるため、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池10が実現できる。しかし、前記直線部の長さαと真直度βの比(β/α)が0.07未満、かつ、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)が0.3以下の平坦な面を有する負極活物質3a(図5)を用いる場合は、平坦面を有する効果が低く、負極集電体1と負極合剤層2との密着性を向上する効果が得られない。また、前記直線部の長さαと真直度βの比(β/α)が0.07以上で平坦な面を有さない粒子を用いる場合は、負極集電体との密着性が低下し、充放電サイクル特性の低下の要因となる。そのため、シリコン微粒子5の平坦面8は直線部の長さαと真直度βの比(β/α)が0.07未満、かつ、直線部の長さαと負極活物質3aの粒径Rの比(α/R)が0.3より大きいことが好ましい。
なおこの負極活物質3aに平坦な面を形成させるには、例えば、2枚の金属板間に試料であるシリコン微粒子5を分散した無機化合物6を挟み、例えば50から5000MPaの圧力をかけながら、200℃以上800℃以下で焼成し、所定の粒径に粉砕したものを用いることができるが、特に限定されるものではない。
また本発明において、負極活物質3aの形状以外に、負極活物質3aの母材となる無機化合物6も重要である。無機化合物6は、リチウムイオン伝導性を有する化合物であれば、特に限定させるものではない。例えば、SiO、B、Pなどの酸素を含む化合物、LiS−P、LiN、Li10GeP12、Li3.25Ge0.250.75、LiS−B−LiI、LiS−GeSなどのリチウムを含む化合物、LiBO、LiPO、LiSi、LiSiO、LiSiO、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.5l0.3Ti1.7(PO、LiLaZr12、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(POなどの酸素とリチウムを含む化合物などを用いることができる。
また前記無機化合物6は、融点がシリコンより低いことがより好ましい。シリコンより低い融点の無機化合物6を用いることにより、シリコンの結晶状態やシリコンの粒子サイズを変化させることなく、無機化合物のみを焼結することが可能となる。
また、負極活物質3aは粒子内に空隙7を含む構造であることが好ましい。図7に示すように、負極活物質3aの粒子内部に空隙7を含むことにより、充電時におけるリチウムイオンの吸蔵によりシリコン微粒子5の体積が膨張し(図7の(a)の状態)、放電時におけるリチウムイオンの放出によりシリコン微粒子5の体積が収縮する(図7の(b)の状態)。このシリコン微粒子5の体積変化を負極活物質3a内に空隙7を含むことにより吸収できるため、シリコン微粒子5の体積変化による割れ等を防ぐことができ、初回充放電効率および充放電サイクル特性が改善される。なお、シリコン微粒子5の体積変化により負極活物質3aが割れると、シリコン微粒子5の比表面積が大きくなるため、非水電解液14との副反応が加速され、初回充放電効率および充放電サイクル特性が低下する要因となるが、空隙7を設けることにより、初回充放電効率および充放電サイクル特性が低下を抑制することができる。
前記空隙7は、負極活物質3aにおいて、平坦面8近傍の領域以外の領域の無機化合物6中の空隙率に比べて平坦面8近傍の空隙率が低くなっていることが好ましい。前述したように、平坦面8において負極集電体1との密着性や負極活物質3a間の密着性を向上させるため、平坦面8近傍において空隙率が低いことにより、その密着性を確保することができ、平坦面8以外の部分の空隙7で充放電時のシリコン微粒子5の体積変化を吸収することができる。これにより、充放電サイクル特性を向上することができる。
負極活物質(第2の負極活物質)3bとしては、図8に示すように、無機化合物6にシリコン微粒子5が分散された構造であり、かつ、その粒子内に空隙7を有する。また、負極活物質3bは、負極活物質3aと異なり、平坦な面を有しない。
負極合剤層2は、負極活物質3aのみを含む構成としても良いが、負極活物質3aと負極活物質3bとを含むことが好ましい。また、負極活物質3aと負極活物質3bとの比率(負極活物質3a/負極活物質3b)は、0.01より大きく1.0より小さいことが好ましい。図9に示すように、負極活物質3aと負極活物質3bとの比率が1.0以上であると表面粗さの小さい平坦面8の割合が増えるため、シリコン微粒子5を含む負極活物質3a、3bの比表面積が小さくなり、負極活物質3a、3bと非水電解液14との接触面が低下する。負極活物質3a、3bと非水電解液14との接触面が低下することにより、リチウムイオンの吸蔵および放出量が低下するため、出入力特性が低下する。また、図10に示すように、負極活物質3aと負極活物質3bとの比率が0.01以下であると、平坦面8が少なくなるため、負極活物質3a、3bと前述した負極集電体1との密着性や負極活物質3a、3b間の密着性の効果が得られず、充放電サイクル特性の低下する要因となる。
負極合剤層2は、負極活物質3aまたは、負極活物質3aおよび負極活物質3bに加えて負極活物質(第3の負極活物質)3cを含むことができる。負極活物質3cとしては、黒鉛などの炭素材料を用いることができるが、特に限定されるものではない。
負極合剤層2中に黒鉛などの炭素材料を用いる場合は、負極活物質3aと負極活物質3bとを併せた粒子と黒鉛などの炭素材料との比率(黒鉛粒子/(負極活物質3aと負極活物質3bとの総量))は、2.0以上99.0以下であることが好ましい。比率が前記範囲内であれば、高容量化とサイクル特性向上の両立が可能となる。負極活物質3aと負極活物質3bとを併せた粒子と炭素材料との比率が99.0より大きいと、高容量化に寄与するシリコン微粒子5の割合が低下するため高容量化の効果が小さくなる。また、2.0より小さいと電子伝導に寄与する黒鉛粒子の割合が低下するため電子伝導性が低下する。
以下、本発明の一実施の形態における実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。図11は実施例1から9および比較例1から6の電池性能を測定した結果を示す図である。
以下実施例1から9および比較例1から6において、正極板11、セパレータ13、非水電解液14、ケース15はいずれの場合においても同じものを用いた。
正極板11は、正極集電体として、厚み15μmのアルミニウム箔を用い、その両表面に設けた正極合剤層は、活物質としてのコバルト酸リチウム100重量部、導電助材としてのアセチレンブラック5重量部、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン5重量部からなり、片面厚み30μmとしたものである。
セパレータ13は、厚み27μmのポリプロピレン製の微多孔膜を用い、非水電解液14としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:1:1の重量比率で混合した溶媒に、溶質として1モル/Lの六フッ化リン酸リチウムを溶解したものを用いた。また、ケース15としては、直径26mm、高さ65mmの円筒型のものを用いた。
負極板12は、厚み10μmの電解銅箔からなる負極集電体1と、負極集電体1の両表面に設けた負極合剤層2とから構成される。負極合剤層2は、負極活物質3a、負極活物質3b、負極活物質3cおよびバインダ4を備え、厚み50μmである。負極活物質3a、負極活物質3bはシリコン微粒子5を含む無機化合物6から構成される。負極活物質3cは活物質として黒鉛を用いた。負極合剤層2は、活物質として黒鉛とシリコン微粒子を含む無機化合物との混合粉末100重量部、バインダ4としてのカルボキシルメチルセルロース1重量部、スチレン−ブタジエンゴム2重量部を用いた。以上の構成は、実施例、比較例の各場合において同じとし、本発明の特徴的な条件である、負極活物質3aと負極活物質3bとの比率、負極活物質3aと負極活物質3bとを併せた粒子量と黒鉛との比率、負極活物質3aの平坦面8の直線部の長さαと真直度βの比(β/α)、平坦面8近傍とそれ以外の領域での負極活物質3a内の空隙率差、については、実施例および比較例の各場合で用いた条件を図11にまとめた。
なお、負極活物質3a内の空隙率差は粒子断面SEM画像より、負極活物質3a内を5分割し、画像処理により平坦面8近傍とそれ以外の領域の空隙率を測定し、最大値から最小値の差を算出した。
上述の正極板11と負極板12を、セパレータ13を介して重ねて捲回した集電体を、非水電解液14とともにケース15内に収納して、実施例1から9、および比較例1から6のリチウムイオン二次電池を作製した。
以上の各電池の充放電を、25℃環境下において、400mAの定電流で、充電上限電圧4.2V、放電下限電圧2.5Vの条件下で行い、充電容量(mAh)および放電容量(mAh)を測定した。また、この充電および放電の一連の操作を500サイクル繰り返し、500サイクル目の充電容量および放電容量を測定した。この測定結果から初回充放電効率と容量維持率を算出した。なお、初回充放電効率は、「(1サイクル目放電容量/1サイクル目の充電容量)×100%」により算出され、容量維持率は、「(500サイクル目放電容量/1サイクル目放電容量)×100%」により算出される。算出した結果も、図11に併せて記載した。
図11に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1から9の電池のいずれにおいても、高い容量維持比率を実現し、車載用途などで求められる優れた充放電サイクル特性を実現可能である。これに対し、本発明の範囲外となる比較例1から6の電池のいずれにおいても、容量維持率が実施例1から9に比べて低く、車載用途などで求められる充放電サイクル特性を満足できるものではない。
本発明は、充放電サイクル特性の向上を図ることができ、負極集電体と負極合剤層とからなる負極板、および正極板を備えるリチウムイオン二次電池等に有用である。
1 負極集電体
2 負極合剤層
3a 負極活物質(第1の負極活物質)
3b 負極活物質(第2の負極活物質)
3c 負極活物質(第3の負極活物質)
4 バインダ
5 シリコン微粒子
6 無機化合物
7 空隙
8 平坦面
9 溶媒
10 リチウムイオン二次電池
11 正極板
12 負極板
13 セパレータ
14 非水電解液
15 ケース

Claims (10)

  1. 正極集電体と前記正極集電体の表面に接して設けられる正極合剤層とからなる正極板と、負極集電体と前記負極集電体の表面に接して設けられる負極合剤層とからなる負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータとが電解液とともにケースに収納されるリチウムイオン二次電池であって、
    前記負極合剤層は、少なくとも第1の負極活物質と、前記第1の負極活物質を前記負極集電体の表面に固定化するバインダとを含み、
    前記第1の負極活物質は、少なくとも無機化合物にシリコン微粒子が分散された構造を有し、前記第1の負極活物質の少なくとも一部は表面に平坦面を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記無機化合物は、シリコンより融点が低いことを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記無機化合物は、酸素を含む無機化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記無機化合物は、リチウムを含む無機化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記第1の負極活物質は、前記無機化合物内に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記平坦面の近傍における前記空隙の空隙率が他の領域における前記空隙の空隙率より低いことを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記負極合剤層は第2の負極活物質をさらに含み、前記第2の負極活物質は少なくとも無機化合物にシリコン微粒子が分散された構造を有し、前記平坦面は前記第1の負極活物質にのみ設けられることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記負極合剤層は、前記第1の負極活物質より前記第2の負極活物質を多く含むことを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との比率が、0.01<前記第1の負極活物質/前記第2の負極活物質<1.0であることを特徴とする請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記負極合剤層は、黒鉛粉末からなる第3の負極活物質をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
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