JP2001226739A - 溶接熱影響部靭性に優れた鋼材 - Google Patents

溶接熱影響部靭性に優れた鋼材

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JP2001226739A
JP2001226739A JP2000033242A JP2000033242A JP2001226739A JP 2001226739 A JP2001226739 A JP 2001226739A JP 2000033242 A JP2000033242 A JP 2000033242A JP 2000033242 A JP2000033242 A JP 2000033242A JP 2001226739 A JP2001226739 A JP 2001226739A
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Japan
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toughness
steel
haz
oxide
particles
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Toshihiko Koseki
敏彦 小関
Masanori Minagawa
昌紀 皆川
Tadashi Ishikawa
忠 石川
Masaaki Nagahara
政明 永原
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温に長時間加熱されたときのオーステナイ
ト粒粗大化を一層抑制し、優れたHAZ靭性を実現可能
する。 【解決手段】 粒子径が0.005〜2.0μm、特に
0.1〜2.0μm、組成として少なくともCa、A
l、Oを含み、Oを除いた元素が質量比で、Ca:3%
以上、Al:1%以上を含有し、残部が他の脱酸元素お
よび/または不可避不純物からなる粒子を、粒子数10
0〜3000個/mm2含有し、かつ、(%N)、(%T
i)、(%B)で示される当量式で求めたENが−0.
004〜−0.0005を満足する溶接熱影響部靭性の
優れた鋼材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、海洋構造
物、中高層ビル、橋梁などに使用される溶接熱影響部
(以下HAZと称す)の靭性に優れた溶接構造用鋼材に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、船舶、海洋構造物、中高層ビル、
橋梁などの大型構造物に使用される溶接用鋼材の材質特
性に対する要望は厳しさを増している。さらにそのよう
な構造物を建造する際、溶接の効率化を促進するため、
フラックス−バッキング溶接法、エレクトロガス溶接
法、エレクトロスラグ溶接法などに代表されるような大
入熱溶接法の適用が希望されており、鋼材自身の靭性と
同様に、HAZの靭性への要求も厳しさを増している。
【0003】大入熱溶接時の鋼材のHAZ靭性に注目し
た提案は従来から数多くある。
【0004】例えば、特公昭55−26164号公報等
に開示されるように、微細なTi窒化物を鋼中に確保す
ることによって、HAZのオーステナイト粒を小さく
し、靭性を向上させる方法がある。また、特開平3−2
64614号公報ではTi窒化物とMnSとの複合析出
物をフェライトの変態核として活用し、HAZの靭性を
向上させる方法が提案されている。さらに、特開平4−
143246公報ではTi窒化物とBNとの複合析出物
を粒界フェライトの析出核として活用し、HAZ靭性を
向上させる方法が提案されている。
【0005】しかしながら、Ti窒化物は、HAZのう
ち最高到達温度が1400℃を超える溶接金属との境界
(溶接ボンド部と称する)近傍ではほとんど固溶してし
まうので靭性向上効果が低下してしまうという問題があ
り、近年のHAZ靭性に対する厳しい要求や、超大入熱
溶接におけるHAZ靭性を達成することが困難である。
【0006】この溶接ボンド部近傍の靭性を改善する方
法として、Ti酸化物を含有した鋼が厚板、形鋼などの
様々な分野で使用されている。例えば、特開昭61−7
9745号公報や特開昭62−103344号公報に例
示されているように、Ti酸化物を含有した鋼が大入熱
溶接部靭性向上に非常に有効であり、高張力鋼への適用
が有望である。この原理は、鋼の融点においても安定な
Ti酸化物をサイトとして、溶接後の温度低下途中にT
i窒化物、MnS等が析出し、さらにそれらをサイトと
して微細フェライトが生成し、その結果靭性に有害な粗
大フェライトの生成が抑制され、靭性の劣化が防止でき
るというものである。しかしながら、このようなTi酸
化物は鋼中へ分散される個数をあまり多くすることがで
きない。
【0007】その原因はTi酸化物の粗大化や凝集合体
であり、Ti酸化物の個数を増加させようとすれば5μ
m以上の粗大なTi酸化物、いわゆる介在物が増加して
しまう。この5μm以上の介在物は構造物の破壊の起点
となって有害であり、靭性の低下を引き起こす。したが
って、さらなるHAZ靭性の向上を達成するためには、
粗大化や凝集合体が起こりにくく、Ti酸化物よりも微
細に分散する酸化物を活用する必要がある。
【0008】また、このようなTi酸化物の鋼中への分
散方法としては、Al等の強脱酸元素を実質的に含まな
い溶鋼中へのTi添加によるものが多い。しかしなが
ら、単に溶鋼中にTiを添加するだけでは鋼中のTi酸
化物の個数、分散度を制御することは困難であり、さら
には、TiN、MnS等の析出物の個数、分散度を制御
することも困難である。その結果、Ti脱酸のみによっ
てTi酸化物を分散させた鋼においては、例えば、Ti
酸化物の個数が充分でなかったり、厚板の板厚方向の靭
性変動を生じる等の問題点が認められる。
【0009】さらに、上記特開昭61−79745号公
報などの方法では、Ti酸化物を生成しやすくするため
に、Al量の上限を、0.007%という非常に少ない
量で制限している。鋼材中のAl量が少ない場合、Al
N析出物量の不足などの原因により、母材の靭性が低下
する場合がある。また、通常使用されている溶接材料を
用いてAl量の少ない鋼板を溶接した場合、溶接金属の
靭性が低下する場合がある。
【0010】このような課題に対して、特開平6−29
3937号公報においてTi添加直後のAlを添加する
ことで、生成するTi−Al複合酸化物を活用する技術
が提案されている。この技術により、大入熱溶接HAZ
靭性を大幅に向上させることが可能であるが、直近、造
船業界、建設業界においては、200kJ/cm以上、
大きいものでは1000kJ/cmものさらなる溶接入
熱の増加が進められており、より一層のHAZ靭性を有
する鋼材が必要とされている。この際、特に溶接融合部
近傍の靭性向上が必要となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な超大入熱の溶接においても、飛躍的にHAZ特性を向
上するために、高温に長時間加熱されたときのオーステ
ナイト粒粗大化を一層抑制し、優れたHAZ靭性を実現
可能にした溶接熱影響部靭性に優れた鋼材を提供するこ
とを課題とした。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題を
解決するためになされたものであり、その手段1は、質
量%で、C :0.03〜0.18%、Si:≦0.5
%、Mn:0.4〜2.0%、P :≦0.02%、S
:≦0.02%、Al:0.005〜0.04%、T
i:0.005〜0.03%、Ca:0.0005〜
0.003%、N :0.0005〜0.007%、B
:0.0005〜0.003%を含有し、残部はFe
および不可避不純物からなり、かつ、EN=(%N)−
0.292(%Ti)−1.292(%B)なる当量式
において−0.004≦EN≦−0.0005を満足
し、かつ、円相当粒子径が0.005〜2.0μm、組
成として少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除いた
元素の平均質量比で、Ca:3%以上、Al:1%以上
を含有し、残部が他の脱酸元素および/または不可避不
純物からなる酸化物粒子を100〜3000個/mm2
含有する溶接熱影響部靭性の優れた鋼材である。
【0013】さらに、手段2は、質量%で、Cu:≦
1.0%、Ni:≦1.5%、Nb:≦0.04%、V
:≦0.1%、Cr:≦0.6%、Mo:≦0.6
%、Mg:≦0.003%、REM:≦0.05%の1
種または2種以上を含有する上記手段1の溶接熱影響部
靭性の優れた鋼材である。
【0014】また、手段3は、酸化物の粒子径が0.1
〜2.0μmである前記手段1または2の溶接熱影響部
靭性の優れた鋼材である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明者らはHAZ靭性を向上させる金属組織要
因として、1400℃以上に加熱されるHAZ領域の再
加熱オーステナイト細粒化を、酸化物を利用して達成す
ることを検討した。
【0016】再加熱オーステナイト粒を細粒化するため
には高温でのオーステナイト粒の成長を抑制することが
必要である。その手段として最も有効な方法は、分散粒
子によりオーステナイトの粒界をピンニングし、粒界の
移動を止める方法が考えられる。そのような作用をする
分散粒子の一つとしては、従来、Ti窒化物が有効であ
ると考えられていた。しかしながらTi窒化物は140
0℃以上の高温では固溶する割合が大きくなるため、溶
接入熱の増加に伴いピンニング効果が小さくなることは
先に述べた。これに対し、高温で安定な酸化物をピンニ
ング粒子として活用することが必要である。
【0017】また、分散粒子による結晶粒界のピンニン
グ効果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子
径が大きいほど大きい。ただし、分散粒子の体積率は鋼
中に含まれる粒子を構成する元素の濃度によって上限が
あるので、体積率を一定と仮定した場合には、粒子径は
ある程度小さい方がピンニングには有効である。このよ
うな観点から、本発明者らは酸化物の体積分率を大き
く、かつ適正な粒子径となるよう、種々の検討を行っ
た。
【0018】酸化物の体積分率を大きくする手段の一つ
として、酸素量を増大させることがあるが、酸素量の増
大は材質に有害な粗大介在物をも多数生成する原因とな
るため、有効な手段ではない。そこで本発明者らは、酸
素を最大限に利用するため、酸素との溶解度積が小さい
元素を活用することを検討した。酸素との溶解度積が小
さい、すなわち強脱酸元素として、一般的にはAlが用
いられる。しかしながら、Alだけでは酸素を充分利用
するには不充分であり、さらにAlよりも強い脱酸元素
が必要で、種々検討の結果、溶鋼中最強の脱酸力を持つ
Caを活用することが有効との結論に至った。そして、
脱酸元素として主にCaを含んだ実験を種々行った結
果、鋼中に生成する酸化物粒子の組成として、Caが3
%以上、Alが1%以上含まれることで、酸化物の体積
分率すなわち酸化物量を大きくすることが可能となるこ
とを知見した。この結果をもとに、鋼中に含まれる粒子
の組成を、少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除い
た元素が質量比でCa:3%以上、Al:1%以上とし
た。この際、残部の酸化物構成元素として、脱酸力がA
lとCaの間にあるMgあるいは/およびREMを含ま
せても本発明の効果は有効であり、なおかつ、不可避的
に混入するSi、Mn、TiなどのAlより弱い脱酸元
素および/またはCaなどと不可避的にむずびつくSな
どの不純物元素を含んでも本発明効果に影響のないこと
を確認した。
【0019】次に、ピンニングに有効な粒子の大きさに
ついて述べる。分散粒子による結晶粒界のピンニング効
果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子径が
大きいほど大きいが、粒子の体積率が一定のとき、一個
の粒子の大きさが小さい程、粒子数が多くなりピンニン
グ効果が大きくなるが、あまり小さくなると粒界に存在
する粒子の割合が小さくなるため、その効果は低減する
と考えた。粒子の大きさを種々変化させた試験片を用い
て、高温に加熱したときのオーステナイト粒径を詳細に
調査した結果、ピンニングには粒子の大きさとして、
0.005〜2.0μmのものが効果が大きいことをつ
きとめ、さらにその中でも、0.1〜2.0μmの粒子
の大きさが特に有効であることを知見するに至った。ま
た0.005μmより小さい酸化物粒子はほとんど観察
されなかった。この結果より、必要な粒子径を0.00
5〜2.0μm、その中でも特に0.1〜2.0μmと
した。
【0020】次にHAZ靭性に必要なピンニング粒子の
個数について検討した。粒子個数が多いほど組織単位は
微細になり、そのため図1に示すように、粒子個数が1
00個を超えると急激にHAZ靭性が向上する。しか
し、粒子数が3000個/mm 2を超えると粒子間隔が
小さくなり、加熱オーステナイト粒の微細化には有効で
あるが、介在物を起点とする破壊の間隔が小さくなるた
めシャルピー衝撃吸収エネルギーに代表される靭性には
むしろ有害であることが分かった。したがって、有効か
つ必要な粒子個数を、100〜3000個/mm2とし
た。
【0021】該酸化物の大きさおよび個数の測定は、例
えば以下の要領で行う。母材となる鋼板から抽出レプリ
カを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍で20
視野以上、観察面積にして1000μm2以上を観察す
ることで該酸化物の大きさおよび個数を測定する。この
とき、粒子が適正に観察可能であれば、観察倍率を低く
してもかまわない。
【0022】酸化物粒子は、溶鋼を脱酸する際に生成す
る。これを一次酸化物と称する。さらには鋳造、凝固中
に溶鋼温度の低下とともにTi−Al−Ca酸化物は生
成する。これを二次酸化物と称する。本発明では、一次
酸化物と二次酸化物とのどちらを用いてもかまわない。
【0023】なお、鋼材を製造するプロセスとして、通
常圧延まま、制御圧延、さらにこれと制御冷却と焼もど
しの組合せ、および焼き入れ・焼もどしの組合せなどで
あっても酸化物の効果は影響を受けない。
【0024】一方、このようにして鋼中に酸化物を分散
することにより、HAZの再加熱オーステナイト粒はピ
ンニングにより極めて有効に細粒化し、HAZ靭性もそ
れに伴い向上するが、同時にオーステナイト粒が微細化
するに伴い粒界面積が増し、粒界からのフェライト生成
能も増し、非常に厳しい靭性要求においては、特に粒界
の角部(粒界三重点)の比較的粗大なフェライトが起点
となって靭性向上を律速していることが新たな問題点と
して見出された。言い換えれば、このような粒界および
粒界三重点に形成する比較的粗大なフェライトを抑制・
改善することができれば、HAZ微細化効果と重畳して
さらに靭性を大幅に向上することが可能である。このよ
うな粒界および粒界三重点に生成する比較的粗大なフェ
ライトの問題は、大入熱溶接のHAZ組織を酸化物によ
って従来になく微細化することで初めて見出されたもの
である。
【0025】本発明者らは、HAZ組織の微細化による
靭性向上の効果を飛躍的に向上すべく、さらに検討を加
えた。その結果、微細な酸化物を多数分散して再加熱オ
ーステナイト粒を細粒化した場合、HAZ組織の形成過
程中で粒界および粒界三重点のフェライトの成長を抑制
するためには、Bの添加が極めて有効であることを見出
した。さらにBの添加効果の機構を詳細に調査した結
果、BとNのバランスが重要であり、溶接熱サイクルの
冷却中にフェライト生成が起こる段階でBがNに完全に
捕捉されず固溶状態で残存していることがBの添加効果
を高め、細粒HAZの靭性を大幅に向上させ、安定化さ
せることが明らかとなった。
【0026】Ti添加鋼では、TiとNの親和力が極め
て大きいため、Tiによって消費されるNを考慮した結
果、図2に示すごとく、HAZ靭性はEN=(%N)−
0.292(%Ti)−1.292(%B)なる当量で
よく整理でき、当量値が−0.004〜−0.0005
の範囲であれば、その添加効果が大きく、靭性が大幅に
向上することが分かった。この当量値が−0.004未
満の場合はBと同時にTiも固溶状態となり焼き入れ性
の著しい増加の下、HAZ靭性は劣化する。他方、−
0.0005を超える場合は固溶Bが確保できず、フェ
ライトの微細化効果はない。
【0027】次に本発明の基本成分範囲の限定理由につ
いて述べる。
【0028】Cは鋼の強度を向上させる有効な成分とし
て下限を0.03%とし、また過剰の添加は、鋼材の溶
接性やHAZ靭性などを著しく低下させるので、上限を
0.18%とした。
【0029】Siは母材の強度確保、脱酸などに必要な
成分であるが、HAZの硬化により靭性が低下するのを
防止するため上限を0.5%とした。
【0030】Mnは母材の強度、靭性の確保に有効な成
分として0.4%以上の添加が必要であるが、溶接部の
靭性、割れ性などの許容できる範囲で上限を2.0%と
した。
【0031】Pは含有量が少ないほど望ましいが、これ
を工業的に低減させるためには多大なコストがかかるこ
とから、0.02%を上限とした。
【0032】Sは含有量が少ないほど望ましいが、これ
を工業的に低減させるためには多大なコストがかかるこ
とから、0.02%を上限とした。
【0033】Alは重要な脱酸元素であり、下限値を
0.005%とした。また、Alが多量に存在すると、
鋳片の表面品位が劣化するため、上限を0.04%とし
た。
【0034】TiはNと結合してTi窒化物を形成させ
るために0.005%以上添加する。しかし、固溶Ti
量が増加するとHAZ靭性が低下するため、0.03%
を上限とした。
【0035】CaはCa系酸化物を生成させるために
0.0005%以上の添加が必要である。しかしなが
ら、過剰の添加は粗大介在物を生成させるため、0.0
03%を上限とした。
【0036】NはTiNとして析出することでHAZ靭
性の向上効果があるため、下限を0.0005%とし
た。しかしながら固溶Nが増大するとHAZ靭性の低下
を招くことから0.007%を上限とした。
【0037】Bは固溶状態で加熱オーステナイト粒の粒
界に生成するフェライトの成長を抑制する有効な元素で
あり、少なくとも0.0005%添加する。しかし多量
に添加すると鋼材の靭性を劣化させるため、上限を0.
003%とした。
【0038】Cuは鋼材の強度を向上させるために有効
であるが、1.0%を超えるとHAZ靭性を低下させる
ことから、1.0%を上限とした。
【0039】Niは鋼材の強度および靭性を向上させる
ために有効であるが、Ni量の増加は製造コストを上昇
させるので、1.5%を上限とした。
【0040】Nbは焼き入れ性を向上させることにより
母材の強度および靭性を向上させるために有効な元素で
あるが、HAZ部においては過剰な添加は靭性を著しく
低下させるため0.04%を上限とした。
【0041】V、Cr、MoについてもNbと同様な効
果を有することから、それぞれ0.1%、0.6%、
0.6%を上限とした。
【0042】Mg、REMはいずれも溶鋼中Caに次ぐ
脱酸力を有し、Caによる微細酸化物形成を補助する働
きがあるが、過剰に入れるとCaと比較してコストアッ
プが大きいとともに、粗大介在物を作って鋼板およびH
AZの靭性を阻害することから、上限をそれぞれ0.0
03%、0.05%とした。
【0043】なお、本発明は、船舶、海洋構造物、中高
層ビル、橋梁などに使用される溶接構造用鋼材全般に加
えて、鋼管用素材の鋼板、棒鋼、条鋼、熱延鋼板などに
も適用可能であり、いずれの場合も溶接継手部の靭性の
大幅向上が得られる。
【0044】
【実施例】表1に示した化学成分で、50〜60キロ鋼
を試作した。1〜8が本発明鋼、9〜15が比較鋼であ
る。試作鋼は転炉溶製し、RHにて真空脱ガス処理時に
脱酸を行っている。Ti投入前に溶鋼の溶存酸素をSi
で調整し、その後Ti、Al、Caを順に添加し脱酸を
行ない、連続鋳造により280mm厚鋳片に鋳造した
後、加熱圧延を経て、板厚50mmの鋼板として製造し
た。得られた鋼板を1パスのエレクトロスラグ溶接し
た。入熱は約280kJ/cm2である。
【0045】
【表1】
【0046】表2には、酸化物粒子の平均組成、電子顕
微鏡にて測定した粒子径0.005〜2.0μmの粒子
数、EN=(%N)−0.292(%Ti)−1.29
2(%B)の値、100倍の光学顕微鏡20視野にて切
断法で測定したしたHAZ組織のオーステナイト粒の平
均径、およびオーステナイト粒界あるいは粒界三重点の
最大フェライトサイズ(幅)、およびHAZの靭性を示
す。HAZ靭性評価のためのシャルピー試験は−40℃
にて行い、記載の値はボンドからHAZ1mmの部位で
9本の試験を行ない、その平均値である。
【0047】
【表2】
【0048】表2から明らかなように、1〜8の本発明
鋼は比較鋼と比べて優れたHAZ靭性を有することが判
る。すなわち、粒子径が0.005〜2.0μmで、C
a、Alを所定の組成で含む酸化物の粒子数が100〜
3000個/mm2の範囲であることによって、比較鋼
と比較してHAZ組織のオーステナイト粒径も小さく、
かつ、Bの効果によりオーステナイト粒界あるいは粒界
三重点のフェライトも小さくなっており、その結果、−
40℃のシャルピー吸収エネルギー値は、鋼構造物の破
壊力学的立場から一般に要求される平均50Jを大きく
上回っており、HAZ靭性に極めて優れているのが明ら
かである。なお、1、2、4、5、7、8は粒子径0.
1〜2.0μmの粒子数も100個/mm2以上あり、
3および6と比較して相対的にオーステナイト粒径が小
さく、かつ、シャルピー吸収エネルギーも高い。
【0049】一方、比較例9〜15は、いずれもシャル
ピー試験−40℃で50J未満の低い靭性しか示さなか
った。これらの原因は比較例9〜12、では、鋼材の化
学成分が本発明範囲から外れ、酸化物粒子が本発明範囲
内の組成、個数になっていないためであり、13、14
は酸化物組成、個数は本発明の範囲内であるが、EN当
量が本発明範囲から外れているためである。また、比較
例15は他の鋼より鋼中酸素量が高く酸化物粒子数が本
発明の上限を外れているためである。
【0050】
【発明の効果】本発明は、200kJ/cm以上の超溶
接入熱を必要とする船舶、海洋構造物、中高層ビル,橋
梁などの破壊に対する厳しい靭性要求を満足する鋼板を
供給するものであり、この種の産業分野にもたらす効果
は極めて大きく、さらに構造物の安全性の意味から社会
に対する貢献も非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化物粒子数とHAZ靭性の関係を示す図であ
る。
【図2】当量値ENとHAZ靭性の関係を示す図であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 石川 忠 大分市大字西ノ州1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内 (72)発明者 永原 政明 大分市大字西ノ州1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C :0.03〜0.18
    %、Si:≦0.5%、Mn:0.4〜2.0%、P
    :≦0.02%、S :≦0.02%、Al:0.0
    05〜0.04%、Ti:0.005〜0.03%、C
    a:0.0005〜0.003%、N :0.0005
    〜0.007%、B :0.0005〜0.003%を
    含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、か
    つ、EN=(%N)−0.292(%Ti)−1.29
    2(%B)なる当量式において−0.004≦EN≦−
    0.0005を満足し、かつ、円相当粒子径が0.00
    5〜2.0μm、組成として少なくともCa、Al、O
    を含み、Oを除いた元素の平均質量比で、Ca:3%以
    上、Al:1%以上を含有し、残部が他の脱酸元素およ
    び/または不可避不純物からなる酸化物粒子を、粒子数
    100〜3000個/mm2含有することを特徴とする
    溶接熱影響部靭性の優れた鋼材。
  2. 【請求項2】 質量%で、Cu:≦1.0%、Ni:≦
    1.5%、Nb:≦0.04%、V :≦0.1%、C
    r:≦0.6%、Mo:≦0.6%、Mg:≦0.00
    3%、REM:≦0.05%の1種または2種以上を含
    有することを特徴とする請求項1記載の溶接熱影響部靭
    性の優れた鋼材。
  3. 【請求項3】 前記酸化物粒子円相当径が0.1〜2.
    0μmであることを特徴とするの請求項1または2記載
    の溶接熱影響部靭性の優れた鋼材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012133872A1 (ja) * 2011-03-28 2012-10-04 Jfeスチール株式会社 板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法、その厚鋼板を用いた隅肉溶接継手
JP2012214884A (ja) * 2011-03-28 2012-11-08 Jfe Steel Corp 板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法

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WO2012133872A1 (ja) * 2011-03-28 2012-10-04 Jfeスチール株式会社 板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法、その厚鋼板を用いた隅肉溶接継手
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