JP2001196214A - ボンド磁石のリサイクル原料粉末の製造方法及びボンド磁石のリサイクル方法 - Google Patents

ボンド磁石のリサイクル原料粉末の製造方法及びボンド磁石のリサイクル方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボンド磁石に対して、従来のリサイクル方法
では、再生・再資源化が不十分である。 【解決手段】磁性材料粉末を原料粉末として粘結剤を混
合して成型されたボンド磁石から、磁性材料粉末を製造
するリサイクル方法において、(a)前記ボンド磁石か
ら、それに含まれる粘結剤の全て若しくはそのうちの所
定割合を除去して、前記磁性材料粉末を分離回収する工
程と、(b)この分離回収された磁性材料粉末のうち、
所定の粒径以下の粒子を全て若しくはそのうちの所定割
合を除去する工程と、(c)この所定粒径以下の粒子が
除かれた磁性材料粉末を、バージンの磁性材料粉末と所
定の比率で混合して新たな原料粉末とする工程と、を少
なくとも備えたリサイクル方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、寸法精度、加工性
に優れており工業材料に広く利用されているボンド磁石
の再資源化リサイクルに関する発明である。
【0002】
【従来の技術】硬質磁性材料は、どの種類においても一
般的に硬くてもろい材質が多く、またそれらの製造工程
も鋳造したり、焼結したり、熱処理したりして、最終に
所定の寸法に入れるために研削仕上げが施されるのが普
通である。この結果、寸法公差が厳しく要求される用途
に対して加工コストが高価になり、ひいては製品のコス
トの著しい上昇を招くことになる。また、複雑な形状や
薄肉品を作りにくい。
【0003】これら加工上の欠点を改善して使用され始
めたのがボンド磁石である。このボンド磁石は、硬質磁
性材料粉末をプラスチックやゴムなどの粘結剤と混合し
た上で成型した磁石であり、寸法精度は高く、複雑な形
状のもの薄肉のものなど加工容易であり、割れたり欠け
たりする心配もなく軽いといった特徴がある。ボンド磁
石は非磁性物質の粘結剤を2〜15wt%(容積では2
5〜50%)含むために、磁気特性は、鋳造磁石や焼結
磁石に比べて劣るが、希土類磁石のような強力な粉末が
得られるようになったために、急激に特性が向上して用
途が広がっている。
【0004】希土類磁石などの磁性粉末を適当な粒度に
そろえた上で、粘結剤を混合し、圧縮成型や射出成型な
どによって成型加工する。粘結剤が熱硬化性樹脂の場合
は、続いて熱硬化を行う。ボンド磁石において、密度や
空隙存在率は磁気特性に大きく影響するため、磁性粉末
の粒度や粘結剤の混合比は、特性向上のために重要な因
子である。
【0005】一方、粘結剤と磁性材料粉末との混合物と
なるために、使用後のボンド磁石あるいは工程不良品と
なったボンド磁石の分解、再資源化は、より困難となっ
た。特に、粘結剤が熱硬化性樹脂の場合は、硬化反応に
より3次元化し、一般的には不溶不融の固体となるた
め、これら樹脂硬化物は従来から分解処理は困難であ
り、再生処理、再使用には適合し難いものであるとされ
ていた。
【0006】しかし、廃棄物問題はますます深刻さを増
していることや資源の有効利用を考えれば、使用後およ
び工程不良品のボンド磁石についても、減容化技術、再
利用のための処理技術などの開発が急がれる。特に、ボ
ンド磁石は、金属や金属酸化物などによって構成されて
いるが、金属などは粘結材である樹脂材料よりも高価な
有価物であり、その再生及び再利用の可能性を阻んでい
るという点は、より大きな問題となっている。コバルト
やネオジムなど希土類金属などからなる磁石は尚更であ
る。
【0007】そこで、ボンド磁石のリサイクルについて
も、幾つか検討されているが、特にエポキシ樹脂など熱
硬化性樹脂を粘結剤とするボンド磁石は、全く分離分解
処理困難であるために、従来は、ボンド磁石を粉砕し、
バージンの磁石粉末に若干混合して更に粘結剤を加えて
成型し再資源化するだけであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そのような従来の粉砕
する方法では、磁石粉末と粘結剤と分離できていないた
めに、再資源化品での、リサイクル原料の混合率を上げ
れば、ボンド磁石中の密度、すなわち磁石粉末含有率が
下がることになり、従来品と同等の密度のボンド磁石を
得ることができない。従って、磁気特性は落ちる。
【0009】また、磁石粉末は、原料粉末から更に微紛
化すると、特性が低下する傾向にある。従って、従来の
粉砕によれば、磁石粉末自身の微紛化も避けられないた
め、磁気特性は落ちる。
【0010】また、ボンド磁石成型時の圧力で、磁石粉
末の粒径は小さくなる。しかし、従来の方法では、粘結
剤と磁石粉末を分離できないため、この粒度のまま混合
されて、再利用することになり、やはり磁気特性は落ち
る。
【0011】つまりボンド磁石に対して、従来の方法で
は、再生・再資源化が不十分であるのが現状である。
【0012】本発明ではこれら課題に対し、いかなる種
類のボンド磁石からも磁性材料を分離し、従来と特性の
変わらないボンド磁石をリサイクルする方法を提供する
ことを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】第1の本発明(請求項1
に対応)は、 磁性材料粉末を原料粉末として粘結剤を
混合して成型されたボンド磁石から、磁性材料粉末を製
造するリサイクル方法において、(a)前記ボンド磁石
から、それに含まれる粘結剤の全て若しくはそのうちの
所定割合を除去して、前記磁性材料粉末を分離回収する
工程と、(b)この分離回収された磁性材料粉末のう
ち、所定の粒径以下の粒子を全て若しくはそのうちの所
定割合を除去する工程と、(c)この所定粒径以下の粒
子が除かれた磁性材料粉末を、バージンの磁性材料粉末
と所定の比率で混合して新たな原料粉末とする工程と、
を少なくとも備えたリサイクル方法である。
【0014】第2の本発明(請求項2に対応)は、 磁
性材料粉末を原料粉末として粘結剤を混合して成型され
たボンド磁石をリサイクルする方法において、(a)前
記ボンド磁石から、それに含まれる粘結剤の全て若しく
はそのうちの所定割合を除去して、前記磁性材料粉末を
分離回収する工程と、(b)この分離回収された磁性材
料粉末のうち、所定の粒径以下の粒子を全て若しくはそ
のうちの所定割合を除去する工程と、(c)この所定粒
径以下の粒子が除かれた磁性材料粉末を、バージンの磁
性材料粉末と所定の比率で混合して新たな原料粉末とす
る工程と、(d)前記新たに作られた原料粉末に、粘結
剤を所定割合で混合し、成型する工程を備えたリサイク
ル方法である。
【0015】第3の本発明(請求項3に対応)は、 前
記工程(a)における除去される粘結剤の所定の割合
は、前記工程(c)における前記所定の混合比率との関
係で決める第1又は2の本発明のリサイクル方法であ
る。
【0016】第4の本発明(請求項4に対応)は、 前
記工程(b)における所定の粒径は、前記工程(c)に
おける前記所定の混合比率との関係で決める第1又は2
の本発明のリサイクル方法である。
【0017】第5の本発明(請求項5に対応)は、 前
記工程(b)における所定の割合は、前記工程(c)に
おける前記所定の混合比率との関係で決める第1又は2
の本発明のリサイクル方法である。
【0018】第6の本発明(請求項6に対応)は、 前
記工程(c)における前記バージンの磁性材料粉末の平
均粒径は、前記工程(c)における前記所定の混合比率
との関係で決める第1又は2の本発明のリサイクル方法
である。
【0019】第7の本発明(請求項7に対応)は、 前
記工程(c)における前記バージンの磁性材料粉末の平
均粒径は、前記工程(a)で用いられた前記ボンド磁石
が含む磁性材料粉末の平均粒径よりも大きい第1又は2
の本発明のリサイクル方法である。
【0020】第8の本発明(請求項8に対応)は、 工
程(b)における前記所定の粒径をφ20〜100μmの間
に設定する第1又は2の本発明のリサイクル方法であ
る。
【0021】第9の本発明(請求項9に対応)は、 前
記粘結剤が熱可塑性樹脂であるボンド磁石において、前
記工程(a)が、前記熱可塑性樹脂を可溶である溶剤に
よる溶解分離工程である第1又は2の本発明のリサイク
ル方法である。
【0022】第10の本発明(請求項10に対応)は、
前記工程(a)が、前記ボンド磁石を、分解槽内にお
いて粘結材を分解し得る溶剤を含む分解液に接触させ、
200℃以上でかつ前記溶剤の臨界温度未満の温度に加
熱する工程(e)を含む第1又は2の本発明のボンド磁
石のリサイクル方法である。
【0023】第11の本発明(請求項11に対応)は、
前記工程(e)における前記溶剤が、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、トリ
エチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−
メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ジ
メトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、
2−ブトキシ エタノール、2−イソペンチルオキシエ
タノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノ
キシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、1−
メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロ
パノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン
グリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコー
ルモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエ
チルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエー
テルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエーテ
ル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレン、1,4−ヒ
ドロキシナフタレン、ナフトール、1,4−ナフトキノ
ン、ピッチ、クレオソート油、メチルイソブチルケト
ン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4
−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセト
ン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノ
ンおよびアセトフェノンよりなる群から選択される少な
くとも1種である第10の本発明のリサイクル方法であ
る。
【0024】第12の本発明(請求項12に対応)は、
前記工程(d)における、前記粘結剤の混合比率を、
前記工程(a)で用いられた前記ボンド磁石の粘結剤の
混合比率より、小さくする第2の本発明のリサイクル方
法である。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明にリサイクル方法に供され
るボンド磁石は、プラスチックやゴムなどを粘結剤とし
て成型される磁石である。磁性材料粉末を粘結材と混合
した上で、成型される。この粘結剤と磁性材料粉末の種
類によって分類されている。粘結剤にプラスチックを用
いるものをプラスチックボンド磁石と呼び、プラスチッ
クとしては、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルファイ
ド、エポキシ樹脂などが用いられる。エポキシ樹脂など
熱硬化製樹脂が粘結材として使用される場合は、成型の
後に熱硬化される。磁性材料粉末としては、主に酸化物
系磁石と希土類磁石が用いられる。酸化物系磁石は、ア
ルニコ磁石やフェライト磁石、希土類磁石は、SmCo
5などの希土類コバルト合金やSmTl7合金、Nd2Fe
14Bなどのネオジム系が用いられる。
【0026】ボンド磁石においては、密度や空隙存在率
は磁気特性に大きく影響する。従って、ボンド磁石の作
製においては、使用される磁性材料粉末の粒度や粘結材
量などの調整が重要である。また、小さすぎる磁性材料
粉末はボンド磁石に成型されたときの磁気特性に寄与で
きない。
【0027】磁性材料粉末を原料粉末として粘結剤と混
合した上で成型されたボンド磁石は、射出や圧縮などの
成型時の圧力によって、密度が上がり、粘結材によって
空隙も埋められ、磁気特性の高いものとすることができ
る。しかし、いったん成型されたボンド磁石における磁
性材料粉末は、成型時の圧力によって粉砕されることに
なり、ボンド磁石から磁性材料粉末を分離回収しても、
バージンの磁性材料粉末に比べると、粒子は概して小さ
くなっている。
【0028】この粒子のまま、バージンの磁性材料粉末
と混合し、再び粘結剤を混合して成型しても、磁気特性
向上に寄与しない微小粒子が存在するため、あるいは最
適な密度に調整できないために、ボンド磁石の磁気特性
は低くなり、初期の特性を満たすことができない。
【0029】本発明のリサイクル方法は、磁性材料粉末
を原料粉末として粘結剤と混合した上で成型されたボン
ド磁石に対して、(a)ボンド磁石からできるだけ多く
の前記粘結剤を除去して前記磁性材料粉末を分離回収す
る工程と、(b)分離回収された磁性材料粉末において
所定の粒径以下の粒子をできるだけ除く工程と、(c)
その磁性材料粉末をバージンの磁性材料粉末と混合して
新たな原料粉末とする工程と、(d)その混合された原
料粉末に更に粘結剤を混合して成型する工程を少なくと
も有する。
【0030】工程(c)において、バージンの磁性材料
粉末混合するに先んじて、工程(b)において分離回収
された磁性材料粉末において所定の粒径以下の粒子をで
きるだけ除くため、磁気特性に寄与しない成型時の圧力
による粉砕効果によって微小化された粒子を取り除くこ
とができると共に、バージンの磁性材料粉末を混合した
時に適切な密度に調整することができる。
【0031】従って、磁気特性が向上し、バージンの磁
性材料粉末を原料粉末として粘結剤と混合した上で成型
されたボンド磁石と同等の特性とすることができる。
【0032】前記工程(c)における前記バージンの磁
性材料粉末の平均粒径は、前記工程(a)で用いられた
前記ボンド磁石が含む磁性材料粉末の平均粒径よりも大
きいさらに本発明では、工程(c)において、分離回収
された磁性材料粉末と混合するバージンの磁性材料粉末
の平均粒径を、前記工程(a)で用いられた前記ボンド
磁石が含む磁性材料粉末の平均粒径よりも大きくするこ
ともできる。
【0033】いったん成型されたボンド磁石から分離回
収された磁石粉末は、成型時の圧力による粉砕によっ
て、初期の原料磁石粉末に比べると、粒子は概して小さ
くなっている。これを分級すると共に、平均粒径を大に
したバージンの磁性材料粉末を混合することによって、
粒径の分布をより最適化することができる。その結果、
磁気特性が向上し、分離回収された磁性材料粉末を使っ
ているにも代わらず、バージンのみの磁性材料粉末を原
料粉末として粘結剤と混合した上で成型されたボンド磁
石と同等の特性とすることができる。
【0034】また、工程(a)において、粘結剤が熱可
塑性樹脂であるボンド磁石の場合は、工程(a)が、前
記熱可塑性樹脂を可溶である溶剤による溶解分離とする
ことができる。
【0035】熱可塑性樹脂である粘結剤としては、ナイ
ロン樹脂、ポリフェニレンスルファイド等が用いられ
る。熱可塑製樹脂を可溶である本工程の溶解分離に供せ
られる溶剤としては、アセトン、アセチルアセトン、ア
セトアルデヒド、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチ
ル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソ
ブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジメチルス
ルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸
イソプロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン、ジエチルエーテル、水、エタノール、メタノー
ル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、クレゾ
ール、フェノール、レゾルジノール、ギ酸、グルタル
酸、硫酸、リン酸、ニトロアルコール等の溶剤や、ハロ
ゲン化アルコール、ハロゲン化アルカリ金属のアルコー
ル溶液、ハロゲン化アルカリ土類金属のアルコール溶
液、ロダン酸アルコール溶液、70%泡水クロラール、
モノヒドロキシシアン化合物、エチレングリコール、ベ
ンジルアルコールなどが挙げられる。
【0036】またはこれら溶剤の複数からなる混合溶剤
であっても良い。また、溶解させるために加温させても
良い。特に、ポリフェニレンスルファイドの場合、室温
での溶剤へ溶解性は低く、200℃程度以上の加温が好
ましい。
【0037】また、工程(a)において、ボンド磁石
を、分解槽内において熱硬化性樹脂硬化物を分解し得る
溶剤を含む分解液に接触させ、200℃以上でかつ前記
溶剤の臨界温度未満の温度に加熱する工程を含むことが
好ましい。
【0038】この場合、溶剤には、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジ
プロピレングリコール、イソプレングリコール、トリエ
チレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エト
キシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノー
ル、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタ
ノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−
(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノ
ール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、1−メトキ
シー2−プロパロール、1−エトキシー2−プロパノー
ル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ
メチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラ
エチレングリコール、テトラリン、ビフェニル、ナフタ
レン、メチルナフタレン、1,4−ヒドロキシナフタレ
ン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッチ、クレ
オソート油、メチルイソブチルケトン、イソホロン、2
−ヘキサノン、2−ペプタノン、4−ペプタノン、ジイ
ソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロン、シクロ
ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン
からなる群から選択される少なくとも1種が用いられ
る。
【0039】ボンド磁石を、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、イソプレングリコール、トリエチレング
リコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタ
ノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イ
ソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2
−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシル
オキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−
(ベンジルオキシ)エタノール、1−メトキシー2−プ
ロパロール、1−エトキシー2−プロパノール、ジエチ
レングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブ
チルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエー
テル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ト
リエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピ
レングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレング
リコールからなる群から選択される少なくとも1つの溶
剤を含む分解液に浸漬し、加温することによって、粘結
材が化学分解される。
【0040】粘結材が、エポキシ樹脂など熱硬化性樹脂
であっても、この分解液によって3次元架橋鎖が化学分
解される。
【0041】また、テトラリン、ビフェニル、ナフタレ
ン、メチルナフタレン、1,4−ヒドロキシナフタレ
ン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッチ、クレ
オソート油、メチルイソブチルケトン、イソホロン、2
−ヘキサノン、2−ペプタノン、4−ペプタノン、ジイ
ソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロン、シクロ
ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン
などの溶剤は加温することによって、粘結材の分解にと
って良好な液相となり、粘結材の液相熱分解反応が効率
よく進行する。この場合、粘結材が、従来では分解処理
困難であるエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂であっても
効率よく分解することができる。
【0042】粘結材が分解されることによってボンド磁
石硬化物を結合する機能は低下し、ボンド磁石は崩壊す
る。すなわちボンド磁石は、粘結材によって束縛してい
た磁石粉末を保持できなくなる。従って、粘結材成分
と、磁石粉末との分離が容易となる。
【0043】すなわち本工程によって、これまで分解処
理困難だった熱硬化性樹脂エポキシ樹脂をはじめとする
粘結材を容易に分解することができる。そして分解後、
ボンド磁石から磁石粉末を分離回収することができる。
【0044】また、以上の工程において、分解液への接
触温度は、大きな分解反応速度が得るためには高温であ
る方が好ましく、特に250℃以上で反応速度は飛躍的
に加速される(例えば特開平12−198878参
照)。しかし、温度が高すぎると、圧力が高くなりすぎ
高耐圧の反応器が必要となること、分解によるガス生成
分が多くなるために回収が困難になること、分解液自体
の分解も問題となること、磁石の酸化など劣化反応も活
発になることから、分解液への浸漬時における温度は臨
界温度未満であることが好ましい。
【0045】例えばプロピレングリコールの場合、臨界
温度は351℃である。以上のことから分解液への接触
させる温度は、200℃以上かつ臨界温度未満で加温す
ることが好ましい。なお、200℃でも反応速度が十分
加速されることを本発明は確認した。
【0046】また、工程(d)において、前記粘結剤の
混合比率を、前記工程(a)で用いられた前記ボンド磁
石の粘結剤の混合比率より、小さくする。そのようにす
る理由は次の通りである。
【0047】粘結材は、磁石粉末を結合させる働きをす
るが、少なくては粉末粒子間の空隙を埋めることができ
ず、多すぎてもボンド磁石の密度を下げるだけで、いず
れの場合も最適な磁気特性とすることができない。
【0048】工程(a)においては、ボンド磁石から磁
性粉末材料を100%分離回収できるのが最善ではある
が、わずかではあるものの若干量の粘結材を一部保持し
たまま分離されることがある。その場合は、工程(b)
を経ても、一部は粘結材を保持したまま、再び粘結材を
混合して成型される。しかし、このままでは最適量以上
の粘結材が混入されることとなり、最適な磁気特性は発
揮できない。
【0049】そこで、分離回収された磁性材料粉末を含
む原料粉末に対する粘結剤の混合比率を、前記工程
(a)で用いられた前記ボンド磁石の粘結剤の混合比率
より、小さくする。これによって磁性材料の密度を大き
くし、磁気特性を向上させることができる。
【0050】以下、具体的に実施の形態を挙げて本発明
をより詳細に説明する。
【0051】(実施の形態1)本発明のボンド磁石のリ
サイクル方法の実施の形態について説明する。
【0052】本実施の形態では、エポキシ樹脂を粘結材
とし、希土類磁石粉末を凝集硬化させたボンド磁石を例
に本発明の分解処理方法について説明する。
【0053】希土類磁石には、SmCo磁石などもある
が、本実施の形態ではNd−Fe−B磁石を例に説明す
る。
【0054】Nd−Fe−B磁石粉末を原料粉末とし
て、重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧縮成
形によってリング状にし、更に熱硬化によってボンド磁
石を得た。これを試験の対象とした。
【0055】このリング状ボンド磁石を、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2
−ジメトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノー
ル、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシ
エタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェ
ノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、1
−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プ
ロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリ
コールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモ
ノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレン、1,4
−ヒドロキシナフタレン、ナフトール、1,4−ナフト
キノン、ピッチ、クレオソート油、メチルイソブチルケ
トン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、
4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセ
トン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサ
ノンおよびアセトフェノンよりなる群から選択される少
なくとも1種の溶剤を含む分解液に接触させて分解処理
を行う。本実施の形態では、テトラリンからなる分解液
を用いた。ボンド磁石を、この分解液に浸漬し分解槽に
仕込んだ後、分解槽ごと300℃で3時間加温した。
【0056】その結果、粘結材である樹脂は完全に分解
され、分解液中に溶解もしくは分散し、磁石粉末が分解
槽底部に沈降していた。
【0057】次に、この分解液中に沈降した磁性材料粉
末を回収し、バージンの磁性材料粉末と混合する。この
混合に先んじて、分離回収した磁性材料粉末を53μm
を分級点として分級し、53μm以下の粒子をできるだ
け除去して、平均粒径を大にした上で、バージンの磁性
材料粉末と重量比で50:50の混合を行った。また、
比較例として、全く分級をしないものについてもバージ
ンの磁性材料粉末と重量比で50:50の混合を行っ
た。これら混合して得られた新たな原料粉末及びバージ
ンの磁性材料、分離回収された磁石粉末の粒度分布を
(表1)に示した。
【0058】
【表1】 次に、この混合された2種類の新たな原料粉末に対し
て、再び重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧
縮成形によってリング状にし、更に熱硬化によってボン
ド磁石を得た。これらボンド磁石の磁気特性を測定し
た。
【0059】これらボンド磁石と、分解処理前のボンド
磁石の密度と最大磁気エネルギー積を(表2)に示し
た。
【0060】分離回収後に分級してバージンの磁性材料
粉末と混合して作製したボンド磁石では、分解前のボン
ド磁石と密度の値も近く、最大磁気エネルギー積もほぼ
近い値となった。
【0061】しかし、全く分級をせずにバージンの磁性
材料粉末と混合して作製したボンド磁石については、密
度、最大磁気エネルギー積ともに分解前のボンド磁石よ
り小さい値となった。他の磁気特性についても同様の傾
向であり、分離回収された磁性材料粉末をバージンの磁
性材料粉末と混合するに先んじて、分級して所定の粒径
以下の粒子をできるだけ除くことにより、再び作製した
ボンド磁石の磁気特性を向上させ、分解前のボンド磁石
と同等の物性とすることができる。
【0062】
【表2】 なお、エポキシ樹脂を粘結材とするボンド磁石の組成、
構成などは本実施の形態の値に限定されない。その他の
樹脂やゴムであってもいいし、磁性粉末材料も、その他
希土類磁石、アルニコ磁石などで有っても良い。
【0063】また、原料粉末である磁性粉末材料は本実
施例の粒度分布に限定されないし、分解後に分離回収さ
れた磁性材料粉末の分級も本実施の形態の値に限定され
ない。
【0064】また、分解処理時の温度も、もちろん本実
施の形態の値に限定されず、250℃以上臨界温度未満
の範囲であれば良い。
【0065】また、本実施の形態では分解処理溶液とし
てエチレングリコールの例を示したが、組成、配合比な
どは以上の例に限定されず、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、イソプレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、2−ジメトキシエ
タノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキ
シエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2
−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノー
ル、2−ベンジルオキシエタノール、1−メトキシ−2
−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジ
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレング
リコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル
エーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラ
リン、ビフェニル、ナフタレン、1,4−ヒドロキシナ
フタレン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッ
チ、クレオソート油、メチルイソブチルケトン、イソホ
ロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノ
ン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロ
ン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンおよび
からなる群から選択される少なくとも1つの溶剤を含ん
でいればよい。
【0066】また、本発明では、溶剤の酸化劣化を防ぐ
ため、あるいは磁石粉末の酸化劣化などを防ぐために、
分離のための分解に先んじて、分解槽内の酸素を排除す
る工程を設けることもできる。酸素を排除する工程の1
例は、窒素を送気して分解液内を含む分解槽内の気体を
窒素置換する工程である。窒素を送気するには、ボンド
磁石および分解液を仕込んだ分解槽に、ガス導入管およ
び排気バルブを設け、窒素ガスボンベから直接送気する
などしてできる。また他の例は、減圧して分解槽内の気
体を排気する工程である。減圧するには、樹脂硬化物お
よび分解液を仕込んだ分解槽に排気バルブを設け、真空
ポンプを配管するなどしてできる。どちらの工程におい
ても、分解液を攪拌したり、適度に加温したりすること
によって酸素排除の効率を上げることができる。
【0067】好ましい工程は、窒素の送気によって分解
液内の気体を窒素置換した後に、分解槽内の気体を減圧
排気する工程である。
【0068】これら酸素排除の前処理の後に分解処理を
行うことにより、高温反応処理時の主な分解液劣化原因
である酸化を防ぎ、分解液の寿命を延ばし繰り返し使用
性を向上させる。さらにボンド磁石の磁石粉末を構成す
る合金類などの酸化劣化なども防止し、分離回収される
磁石粉末の品位も向上することができる。特に、ネオジ
ムなど希土類金属は酸化され易いために、処理後も品位
を保つ効果的な工程である。
【0069】また、本発明の処理方法においては、以上
の分解液に、溶剤の酸化劣化を防ぐため、あるいは磁石
を構成する金属類などの酸化劣化を防ぐために、分解液
に更に酸化防止剤あるいは還元剤を直接仕込むこともで
きる。
【0070】酸化防止剤や還元剤には、ヒドロキノン、
メトキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、ブチルカテ
コール、ブチルヒドロキノン、次亜りん酸ナトリウム、
チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸からなる群から選
択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0071】これらは本発明の分解液に対して、溶解性
が良好であるため供しやすい、あるいは効果の大きいも
のである。
【0072】また、分解後に分離回収された磁性材料粉
末をアセトン等の溶剤で洗浄する工程を加えても良い。
更には、分解回収後あるいは洗浄後において残存する分
解樹脂や付着した溶剤を完全に取り除くために乾燥の工
程を加えても良い。いずれの工程も加えることによっ
て、分離回収された磁性材料粉末に付着する不純物をよ
り完全に取り除くことができ、再びボンド磁石として成
型された時の磁気特性を向上させることができる。
【0073】なお、分解液は繰り返し使った後に、溶解
物を分離して再利用することもできるし、そのままオイ
ルとして燃料に使用することもできる。
【0074】(実施の形態2)本発明のボンド磁石のリ
サイクル方法の実施の形態について説明する。
【0075】本実施の形態では、ナイロン樹脂をバイン
ダとし希土類磁石粉末を凝集硬化させた樹脂硬化物であ
るボンド磁石を例に本発明の方法について説明する。
【0076】希土類磁石には、SmCo磁石などもある
が、本実施の形態ではNd−Fe−B磁石を例に説明す
る。
【0077】Nd−Fe−B磁石粉末を原料粉末とし
て、重量比で7%のナイロン樹脂を混練した後、射出成
形によってリング状のボンド磁石を得た。これを試験の
対象とした。
【0078】このリング状ボンド磁石を、クレゾールに
浸漬して粘結材であるナイロン樹脂を溶解させ、不溶な
原料粉末であるNd−Fe−B磁石粉末をろ過などによ
り分別し、乾燥することによってNd−Fe−B粉末を
回収することができた。この粉末は、もう一度ボンド磁
石あるいは焼結磁石として再利用するすることができ
る。
【0079】次に、この回収された磁性材料粉末をバー
ジンの磁性材料粉末と混合する。この混合に先んじて、
分離回収した磁性材料粉末を35μmを分級点として分
級し、35μm以下の粒子をできるだけ除いて平均粒径
を大にした上で、バージンの磁性材料粉末と重量比で6
0:40の混合を行った。また、比較例として、全く分
級をしないものについてもバージンの磁性材料粉末と重
量比で60:40の混合を行った。これら混合された新
たな原料粉末及びバージンの磁性材料粉末、分離回収さ
れた磁性材料粉末の粒度分布を(表3)に示した。
【0080】
【表3】 次に、この混合された2種類の原料粉末に対して、再び
重量比で7%ナイロン樹脂を混練した後、射出成形によ
ってリング状のボンド磁石を再び作製した。これらボン
ド磁石の磁気特性を測定した。
【0081】これらボンド磁石と、溶解分離前のボンド
磁石の密度と最大磁気エネルギー積を(表4)に示し
た。分離後に分級してバージンの磁性材料粉末と混合し
て作製したボンド磁石では、分解前のボンド磁石と密度
の値も近く、最大磁気エネルギー積もさほど変わらない
値となった。
【0082】しかし、全く分級をせずにバージンの磁性
材料粉末と混合して作製したボンド磁石については、密
度、最大磁気エネルギー積ともに溶解分離前のボンド磁
石よりかなり小さい値となった。他の磁気特性について
も同様の傾向であり、分離回収された磁性材料粉末をバ
ージンの磁性材料粉末と混合するに先んじて、分級し所
定の粒径以下の粒子をできるだけ除くことにより、再び
作製したボンド磁石の磁気特性を向上させ、溶解分離前
のボンド磁石と同等の物性とすることができる。
【0083】
【表4】 なお、ナイロン樹脂を粘結材とするボンド磁石の組成、
構成などは本実施の形態の値に限定されない。そ他の熱
可塑性の樹脂やゴムであってもいいし、磁性粉末材料
も、その他希土類磁石、アルニコ磁石などで有っても良
い。
【0084】また、原料粉末である磁性粉末材料の本実
施例の粒度分布に限定されないし、分解後に分離回収さ
れた磁性材料粉末の分級も本実施の形態の値に限定され
ない。
【0085】また、溶解分離時の溶剤は、本実施の形態
のクレゾールに限定されず、フェノール、レゾルジノー
ル、ギ酸、グルタル酸、硫酸、リン酸、ニトロアルコー
ル等の溶剤や、ハロゲン化アルコール、ハロゲン化アル
カリ金属のアルコール溶液、ハロゲン化アルカリ土類金
属のアルコール溶液、ロダン酸アルコール溶液、70%
泡水クロラール、モノヒドロキシシアン化合物などの溶
剤やその混合物であっても良い。また、溶解分離時に粘
結材の溶解性を助けるために、加温しても良い。130
℃程度に加温すれば、メタノール、エチレングリコー
ル、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメ
チルホルムアミドなどの溶剤を用いることもできる。
【0086】また、本実施の形態のナイロン樹脂以外の
熱可塑性樹脂が粘結材に用いられた場合は、溶解分離時
の溶剤は、その他のアセトン、アせチルアセトン、アセ
トアルデヒド、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、
メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジメチルスルホ
キシド、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチ
ル、酢酸イソプロピル、酢酸ヌチル、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、
クロロホルム、トルエン、クレゾール、メタノール、エ
タノール、水等の溶剤やその混合物を使用することがで
きる。
【0087】また、溶解分離で分離回収された磁性材料
粉末をアセトン等の溶剤で洗浄する工程を加えても良
い。更には、分解回収後あるいは洗浄後において残存す
る樹脂や付着した溶剤を完全に取り除くために乾燥の工
程を加えても良い。いずれの工程も加えることによっ
て、分離回収される磁性材料粉末に付着する不純物をよ
り完全に取り除くことができ、再びボンド磁石として成
型された時の磁気特性を向上させることができる。
【0088】なお、溶解分離の溶剤は繰り返し使った後
に、溶解物を分離して再利用することもできるし、その
ままオイルとして燃料に使用することもできる。また、
分離された樹脂溶解物は、再びボンド磁石用の粘結材な
どに使用することができる。
【0089】(実施の形態3)本発明のボンド磁石のリ
サイクル方法の実施の形態について説明する。
【0090】本実施の形態では、エポキシ樹脂を粘結材
とし、希土類磁石粉末を凝集硬化させたボンド磁石を例
に本発明の方法について説明する。
【0091】希土類磁石には、SmCo磁石などもある
が、本実施の形態ではNd−Fe−B磁石を例に説明す
る。
【0092】Nd−Fe−B磁石粉末を原料粉末とし
て、重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧縮成
形によってリング状にし、更に熱硬化によってボンド磁
石を得た。これを試験の対象とした。
【0093】このリング状ボンド磁石を、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2
−ジメトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノー
ル、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシ
エタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェ
ノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、1
−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プ
ロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリ
コールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモ
ノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレン、1,4
−ヒドロキシナフタレン、ナフトール、1,4−ナフト
キノン、ピッチ、クレオソート油、メチルイソブチルケ
トン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、
4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセ
トン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサ
ノンおよびアセトフェノンよりなる群から選択される少
なくとも1種の溶剤を含む分解液に接触させて分解処理
を行う。本実施の形態では、テトラリンからなる分解液
を用いた。ボンド磁石を、この分解液に浸漬し分解槽に
仕込んだ後、分解槽ごと300℃で3時間加温した。
【0094】その結果、粘結材である樹脂は完全に分解
され、分解液中に溶解もしくは分散し、磁石粉末が分解
槽底部に沈降していた。
【0095】次に、この分解液中に沈降した磁性材料粉
末を回収し、バージンの磁性材料粉末と混合する。この
混合に先んじて、分離回収された磁性材料粉末を53μ
mを分級点として分級し、53μm以下の粒子をだきる
だけ除いた上で、バージンの磁性材料粉末と重量比で7
0:30の混合を行った。また、バージンの磁性材料粉
末についても、混合に先んじて、75μmを分級点とし
て分級し、試験材料としたボンド磁石が有する磁性材料
粉末の平均粒径(103μm)に比べて、平均粒径を1
18μmと大きくする工程を更に加え、それぞれ分級の
工程を終えた後、分離回収された磁性材料粉末とバージ
ンの磁性材料粉末と重量比で70:30の混合を行っ
た。
【0096】また、比較例として、バージンの磁性材料
粉末、分離回収された磁性材料粉末ともに全く分級をし
ないものについても重量比で70:30の混合を行っ
た。これら混合して得られた原料粉末及びバージンの磁
性材料粉末、分離回収された磁性材料粉末の粒度分布を
(表5)に示した。
【0097】
【表5】 次に、これら3種の混合され新たに得られた原料粉末に
対して、再び重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した
後、圧縮成形によってリング状にし、更に熱硬化によっ
てボンド磁石を得た。これらボンド磁石の磁気特性を測
定した。
【0098】これらボンド磁石と、分解処理前のボンド
磁石の密度と最大磁気エネルギー積を(表6)に示し
た。分級を施した磁性材料粉末で作製したボンド磁石で
は共に、全く分級を施さずに混合して作製したボンド磁
石より磁気特性は高く、分級による磁気特性向上の効果
が見られる。また、分級を施した上で作製したボンド磁
石について比較すると、分離回収された磁石粉末だけで
なく、バージンの磁性材料粉末も分級によって平均粒径
を大にした上で混合して作製したボンド磁石の方が、磁
気特性は高いことがわかる。
【0099】
【表6】 このように、分離回収後に分級してバージンの磁性材料
粉末と混合して作製したボンド磁石では、分解前のボン
ド磁石と密度の値も近く、最大磁気エネルギー積もほぼ
近い値となるが、更に混合するもう一方のバージンの磁
性材料粉末の平均粒径をより大にした方が、ボンド磁石
にしたときの特性はより高く、分解前のボンド磁石と同
レベルの磁気特性を有する。
【0100】なお、エポキシ樹脂を粘結材とするボンド
磁石の組成、構成などは本実施の形態の値に限定されな
い。その他の樹脂やゴムであってもいいし、磁性粉末材
料も、その他希土類磁石、アルニコ磁石などで有っても
良い。
【0101】また、原料粉末である磁性粉末材料の本実
施例の粒度分布に限定されないし、分解後に分離回収さ
れた磁性材料粉末の分級も本実施の形態の値に限定され
ない。
【0102】また、分解処理時の温度も、もちろん本実
施の形態の値に限定されず、200℃以上臨界温度未満
の範囲であれば良い。
【0103】また、本実施の形態では分解処理溶液とし
てエチレングリコールの例を示したが、組成、配合比な
どは以上の例に限定されず、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、イソプレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、2−ジメトキシエ
タノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキ
シエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2
−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノー
ル、2−ベンジルオキシエタノール、1−メトキシ−2
−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジ
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレング
リコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル
エーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラ
リン、ビフェニル、ナフタレン、1,4−ヒドロキシナ
フタレン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッ
チ、クレオソート油、メチルイソブチルケトン、イソホ
ロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノ
ン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロ
ン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンおよび
からなる群から選択される少なくとも1つの溶剤を含ん
でいればよい。
【0104】また、本発明では、溶剤の酸化劣化を防ぐ
ため、あるいは磁石粉末の酸化劣化などを防ぐために、
分離のための分解に先んじて、分解槽内の酸素を排除す
る工程を設けることもできる。酸素を排除する工程の1
例は、窒素を送気して分解液内を含む分解槽内の気体を
窒素置換する工程である。窒素を送気するには、ボンド
磁石および分解液を仕込んだ分解槽に、ガス導入管およ
び排気バルブを設け、窒素ガスボンベから直接送気する
などしてできる。また他の例は、減圧して分解槽内の気
体を排気する工程である。減圧するには、樹脂硬化物お
よび分解液を仕込んだ分解槽に排気バルブを設け、真空
ポンプを配管するなどしてできる。どちらの工程におい
ても、分解液を攪拌したり、適度に加温したりすること
によって酸素排除の効率を上げることができる。
【0105】好ましい工程は、窒素の送気によって分解
液内の気体を窒素置換した後に、分解槽内の気体を減圧
排気する工程である。
【0106】これら酸素排除の前処理の後に分解処理を
行うことにより、高温反応処理時の主な分解液劣化原因
である酸化を防ぎ、分解液の寿命を延ばし繰り返し使用
性を向上させる。さらにボンド磁石の磁石粉末を構成す
る合金類などの酸化劣化なども防止し、分離回収される
磁石粉末の品位も向上することができる。特に、ネオジ
ムなど希土類金属は酸化され易いために、処理後も品位
を保つ効果的な工程である。
【0107】また、本発明の方法においては、以上の分
解液に、溶剤の酸化劣化を防ぐため、あるいは磁石を構
成する金属類などの酸化劣化を防ぐために、分解液に更
に酸化防止剤あるいは還元剤を直接仕込むこともでき
る。
【0108】酸化防止剤や還元剤には、ヒドロキノン、
メトキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、ブチルカテ
コール、ブチルヒドロキノン、次亜りん酸ナトリウム、
チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸からなる群から選
択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0109】これらは本発明の分解液に対して、溶解性
が良好であるため供しやすい、あるいは効果の大きいも
のである。
【0110】また、分解後に分離回収された磁性材料粉
末をアセトン等の溶剤で洗浄する工程を加えても良い。
更には、分解回収後あるいは洗浄後において残存する分
解樹脂や付着した溶剤を完全に取り除くために乾燥の工
程を加えても良い。いずれの工程も加えることによっ
て、分離回収される磁性材料粉末に付着する不純物をよ
り完全に取り除くことができ、再びボンド磁石として成
型された時の磁気特性を向上させることができる。
【0111】なお、分解液は繰り返し使った後に、溶解
物を分離して再利用することもできるし、そのままオイ
ルとして燃料に使用することもできる。
【0112】(実施の形態4)本発明のボンド磁石のリ
サイクル方法の実施の形態について説明する。
【0113】本実施の形態では、エポキシ樹脂を粘結材
とし、希土類磁石粉末を凝集硬化させたボンド磁石を例
に本発明の方法について説明する。
【0114】希土類磁石には、SmCo磁石などもある
が、本実施の形態ではNd−Fe−B磁石を例に説明す
る。
【0115】Nd−Fe−B磁石粉末を原料粉末とし
て、重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧縮成
形によってリング状にし、更に熱硬化によってボンド磁
石を得た。これを試験の対象とした。
【0116】このリング状ボンド磁石を、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2
−ジメトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノー
ル、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシ
エタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェ
ノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、1
−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プ
ロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリ
コールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモ
ノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレン、1,4
−ヒドロキシナフタレン、ナフトール、1,4−ナフト
キノン、ピッチ、クレオソート油、メチルイソブチルケ
トン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、
4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセ
トン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサ
ノンおよびアセトフェノンよりなる群から選択される少
なくとも1種の溶剤を含む分解液に接触させて分解処理
を行う。本実施の形態では、テトラリンからなる分解液
を用いた。ボンド磁石を、この分解液に浸漬し分解槽に
仕込んだ後、分解槽ごと300℃で3時間加温した。
【0117】その結果、粘結材である樹脂は完全に分解
され、分解液中に溶解もしくは分散し、磁石粉末が分解
槽底部に沈降していた。
【0118】次に、この分解液中に沈降した磁性材料粉
末を回収し、バージンの磁性材料粉末と混合する。
【0119】この混合に先んじて、分離回収された磁性
材料粉末を分級し、後記する所定の粒径以下の粒子をで
きるだけ除いた上で、バージンの磁性材料粉末と重量比
で50:50の混合を行った。
【0120】この混合された原料粉末に対して、再び重
量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧縮成形によ
ってリング状にし、更に熱硬化によってボンド磁石を得
た。
【0121】なお、分離回収された磁性材料粉末を分級
する所定の粒径を、10、20、53、100、12
0、150μmに設定し、それぞれ得られたボンド磁石
の磁気特性を測定して比較した。これら原料粒子及びバ
ージンの磁性材料粉末、分離回収された磁性材料粉末の
粒度分布を(表7)に示した。
【0122】
【表7】 これら6種類のボンド磁石と、分解処理前のボンド磁石
の密度と最大磁気エネルギー積を(表8)に示した。分
級の粒径を20,53,100μmに設定し作製したボ
ンド磁石では、密度、最大磁気エネルギー積ともに比較
的高い値を示し、分解前のボンド磁石と同等レベルの値
となった。しかし、分級点の小さい10μmや、分級点
の大きい120、150μmでは、作製したボンド磁石
の密度、最大磁気エネルギー積ともに分解前のボンド磁
石と比べて比較的小さめの値となった。
【0123】
【表8】 このことから、分級により分級点以下の粒子をできるだ
け除く工程を導入することによって、バージンの磁性材
料粉末と混合して作製したボンド磁石の磁気特性は向上
するが、前処理工程における分級点が20〜100μm
であれば、より好ましいことがわかった。
【0124】なお、エポキシ樹脂を粘結材とするボンド
磁石の組成、構成などは本実施の形態の値に限定されな
い。その他の樹脂やゴムであってもいいし、磁性粉末材
料も、その他希土類磁石、アルニコ磁石などで有っても
良い。
【0125】また、原料粉末である磁性粉末材料の本実
施例の粒度分布に限定されないし、分解後に分離回収さ
れた磁性材料粉末の分級も本実施の形態の値に限定され
ない。
【0126】また、分解処理時の温度も、もちろん本実
施の形態の値に限定されず、200℃以上臨界温度未満
の範囲であれば良い。
【0127】また、本実施の形態では分解処理溶液とし
てエチレングリコールの例を示したが、組成、配合比な
どは以上の例に限定されず、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、イソプレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、2−ジメトキシエ
タノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキ
シエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2
−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノー
ル、2−ベンジルオキシエタノール、1−メトキシ−2
−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジ
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレング
リコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル
エーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラ
リン、ビフェニル、ナフタレン、1,4−ヒドロキシナ
フタレン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッ
チ、クレオソート油、メチルイソブチルケトン、イソホ
ロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノ
ン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロ
ン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンおよび
からなる群から選択される少なくとも1つの溶剤を含ん
でいればよい。
【0128】また、本発明では、溶剤の酸化劣化を防ぐ
ため、あるいは磁石粉末の酸化劣化などを防ぐために、
分離のための分解に先んじて、分解槽内の酸素を排除す
る工程を設けることもできる。酸素を排除する工程の1
例は、窒素を送気して分解液内を含む分解槽内の気体を
窒素置換する工程である。窒素を送気するには、ボンド
磁石および分解液を仕込んだ分解槽に、ガス導入管およ
び排気バルブを設け、窒素ガスボンベから直接送気する
などしてできる。また他の例は、減圧して分解槽内の気
体を排気する工程である。減圧するには、樹脂硬化物お
よび分解液を仕込んだ分解槽に排気バルブを設け、真空
ポンプを配管するなどしてできる。どちらの工程におい
ても、分解液を攪拌したり、適度に加温したりすること
によって酸素排除の効率を上げることができる。
【0129】好ましい工程は、窒素の送気によって分解
液内の気体を窒素置換した後に、分解槽内の気体を減圧
排気する工程である。
【0130】これら酸素排除の前処理の後に分解処理を
行うことにより、高温反応処理時の主な分解液劣化原因
である酸化を防ぎ、分解液の寿命を延ばし繰り返し使用
性を向上させる。さらにボンド磁石の磁石粉末を構成す
る合金類などの酸化劣化なども防止し、分離回収される
磁石粉末の品位も向上することができる。特に、ネオジ
ムなど希土類金属は酸化され易いために、処理後も品位
を保つ効果的な工程である。
【0131】また、本発明の処理方法においては、以上
の分解液に、溶剤の酸化劣化を防ぐため、あるいは磁石
を構成する金属類などの酸化劣化を防ぐために、分解液
に更に酸化防止剤あるいは還元剤を直接仕込むこともで
きる。
【0132】酸化防止剤や還元剤には、ヒドロキノン、
メトキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、ブチルカテ
コール、ブチルヒドロキノン、次亜りん酸ナトリウム、
チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸からなる群から選
択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0133】これらは本発明の分解液に対して、溶解性
が良好であるため供しやすい、あるいは効果の大きいも
のである。
【0134】また、分解後に分離回収された磁性材料粉
末をアセトン等の溶剤で洗浄する工程を加えても良い。
更には、分解回収後あるいは洗浄後において残存する分
解樹脂や付着した溶剤を完全に取り除くために乾燥の工
程を加えても良い。いずれの工程も加えることによっ
て、分離回収される磁性材料粉末に付着する不純物をよ
り完全に取り除くことができ、再びボンド磁石として成
型された時の磁気特性を向上させることができる。
【0135】なお、分解液は繰り返し使った後に、溶解
物を分離して再利用することもできるし、そのままオイ
ルとして燃料に使用することもできる。
【0136】(実施の形態5)本発明のボンド磁石のリ
サイクル方法の実施の形態について説明する。
【0137】本実施の形態では、エポキシ樹脂を粘結材
とし、希土類磁石粉末を凝集硬化させたボンド磁石を例
に本発明の分解処理方法について説明する。
【0138】希土類磁石には、SmCo磁石などもある
が、本実施の形態ではNd−Fe−B磁石を例に説明す
る。
【0139】Nd−Fe−B磁石粉末を原料粉末とし
て、重量比で3%のエポキシ樹脂を混練した後、圧縮成
形によってリング状にし、更に熱硬化によってボンド磁
石を得た。これを試験の対象とした。
【0140】このリング状ボンド磁石を、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2
−ジメトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノー
ル、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシ
エタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェ
ノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、1
−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プ
ロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリ
コールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモ
ノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテルおよびトリプロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレン、1,4
−ヒドロキシナフタレン、ナフトール、1,4−ナフト
キノン、ピッチ、クレオソート油、メチルイソブチルケ
トン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、
4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセ
トン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサ
ノンおよびアセトフェノンよりなる群から選択される少
なくとも1種の溶剤を含む分解液に接触させて分解処理
を行う。本実施の形態では、テトラリンからなる分解液
を用いた。ボンド磁石を、この分解液に浸漬し分解槽に
仕込んだ後、分解槽ごと300℃で3時間加温した。
【0141】その結果、粘結材である樹脂は完全に分解
され、分解液中に溶解もしくは分散し、磁石粉末が分解
槽底部に沈降していた。
【0142】次に、この分解液中に沈降した磁性材料粉
末を回収し、バージンの磁性材料粉末と混合する。この
混合に先んじて、分離回収された磁性材料粉末を53μ
mを分級点として分級し、53μm以下の粒子をできる
だけ除いた上で、バージンの磁性材料粉末と重量比で5
0:50の混合を行った。次に、この混合された原料粉
末に対して、重量比で3.2%、3%、2.8%のエポ
キシ樹脂を混練した後、それぞれ圧縮成形によってリン
グ状にし、更に熱硬化によって2種のボンド磁石を得
た。これらボンド磁石の磁気特性を測定した。
【0143】これらボンド磁石と、分解処理前のボンド
磁石の密度と最大磁気エネルギー積を(表9)に示し
た。両者の比較から、粘結材エポキシ樹脂の混合比率
を、分解前のボンド磁石における樹脂混合比率よりも少
なくした方が、密度、最大磁気エネルギー積とも向上す
る結果となった。
【0144】これはボンド磁石から分解処理によって磁
性材料粉末を分離回収しても、少しばかりの樹脂分解物
が不純物として混在する。すなわち、バージンの磁性材
料粉末に比べて、粘結材によって埋めるべき空隙も少な
く、磁石粉末を結合できるだけの樹脂量があれば十分で
あり、バージンの磁性材料粉末からボンド磁石を作製す
るときよりも少ない粘結材混合比率が最適である。これ
以上に樹脂を混合すれば、ボンド磁石の密度は下がり、
磁気特性も下がってしまう。
【0145】
【表9】 以上のように、ボンド磁石を分解して分離回収された磁
性材料粉末を含む原料粉末に対する粘結剤の混合比率
は、分解したボンド磁石における磁性材料粉末に対する
粘結剤の混合比率よりも小さいことが好ましい。
【0146】なお、エポキシ樹脂を粘結材とするボンド
磁石の組成、構成などは本実施の形態の値に限定されな
い。その他の樹脂やゴムであってもいいし、磁性粉末材
料も、その他希土類磁石、アルニコ磁石などで有っても
良い。
【0147】また、原料粉末である磁性粉末材料の本実
施例の粒度分布に限定されないし、分解後に分離回収さ
れた磁石粉末の分級も本実施の形態の値に限定されな
い。
【0148】また、分解処理時の温度も、もちろん本実
施の形態の値に限定されず、200℃以上臨界温度未満
の範囲であれば良い。
【0149】また、本実施の形態では分解処理溶液とし
てエチレングリコールの例を示したが、組成、配合比な
どは以上の例に限定されず、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、イソプレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、2−ジメトキシエ
タノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキ
シエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2
−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノー
ル、2−ベンジルオキシエタノール、1−メトキシ−2
−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジ
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレング
リコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル
エーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラ
リン、ビフェニル、ナフタレン、1,4−ヒドロキシナ
フタレン、ナフトール、1,4−ナフトキノン、ピッ
チ、クレオソート油、メチルイソブチルケトン、イソホ
ロン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノ
ン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロ
ン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンおよび
からなる群から選択される少なくとも1つの溶剤を含ん
でいればよい。
【0150】また、本発明では、溶剤の酸化劣化を防ぐ
ため、あるいは磁石粉末の酸化劣化などを防ぐために、
分離のための分解に先んじて、分解槽内の酸素を排除す
る工程を設けることもできる。酸素を排除する工程の1
例は、窒素を送気して分解液内を含む分解槽内の気体を
窒素置換する工程である。窒素を送気するには、ボンド
磁石および分解液を仕込んだ分解槽に、ガス導入管およ
び排気バルブを設け、窒素ガスボンベから直接送気する
などしてできる。また他の例は、減圧して分解槽内の気
体を排気する工程である。減圧するには、樹脂硬化物お
よび分解液を仕込んだ分解槽に排気バルブを設け、真空
ポンプを配管するなどしてできる。どちらの工程におい
ても、分解液を攪拌したり、適度に加温したりすること
によって酸素排除の効率を上げることができる。
【0151】好ましい工程は、窒素の送気によって分解
液内の気体を窒素置換した後に、分解槽内の気体を減圧
排気する工程である。
【0152】これら酸素排除の前処理の後に分解処理を
行うことにより、高温反応処理時の主な分解液劣化原因
である酸化を防ぎ、分解液の寿命を延ばし繰り返し使用
性を向上させる。さらにボンド磁石の磁石粉末を構成す
る合金類などの酸化劣化なども防止し、分離回収される
磁石粉末の品位も向上することができる。特に、ネオジ
ムなど希土類金属は酸化され易いために、処理後も品位
を保つ効果的な工程である。
【0153】また、本発明の処理方法においては、以上
の分解液に、溶剤の酸化劣化を防ぐため、あるいは磁石
を構成する金属類などの酸化劣化を防ぐために、分解液
に更に酸化防止剤あるいは還元剤を直接仕込むこともで
きる。
【0154】酸化防止剤や還元剤には、ヒドロキノン、
メトキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、ブチルカテ
コール、ブチルヒドロキノン、次亜りん酸ナトリウム、
チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸からなる群から選
択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0155】これらは本発明の分解液に対して、溶解性
が良好であるため供しやすい、あるいは効果の大きいも
のである。
【0156】また、分解後に分離回収された磁性材料粉
末をアセトン等の溶剤で洗浄する工程を加えても良い。
更には、分解回収後あるいは洗浄後において残存する分
解樹脂や付着した溶剤を完全に取り除くために乾燥の工
程を加えても良い。いずれの工程も加えることによっ
て、分離回収される磁性材料粉末に付着する不純物をよ
り完全に取り除くことができ、再びボンド磁石として成
型された時の磁気特性を向上させることができる。
【0157】なお、分解液は繰り返し使った後に、溶解
物を分離して再利用することもできるし、そのままオイ
ルとして燃料に使用することもできる。
【0158】なお、以上全ての実施例において、前記工
程(a)における除去される粘結剤の所定の割合は、前
記工程(c)における前記所定の混合比率との関係で決
めることが望ましい。すなわち、バージンの磁性材料粉
末の割合が多いときは、除去すべき粘結剤の所定の割合
は比較的低くても良く、これに反してバージンの磁性材
料粉末の割合が少ない場合は、出きる限り粘結剤を除去
しておくことが望ましい。
【0159】また、前記工程(b)における所定の粒径
は、前記工程(c)における前記所定の混合比率との関
係で決めることが望ましい。すなわち、工程(c)で混
合するバージンの磁性材料粉末の割合が比較的多い場合
は、上記所定の粒径は比較的小さい値でもかまわない。
【0160】また、前記工程(b)における所定の割合
は、前記工程(c)における前記所定の混合比率との関
係で決めることが望ましい。すなわち、工程(c)で混
合するバージンの磁性材料粉末の割合が比較的多い場合
は、除去される所定の粒径以下の粒子の割合は、比較的
小さな値でもかまわない。
【0161】また、前記工程(c)における前記バージ
ンの磁性材料粉末の平均粒径は、前記工程(c)におけ
る前記所定の混合比率との関係で決めることが望まし
い。すなわち、工程(c)で混合するバージンの磁性材
料粉末の割合が比較的多い場合は、バージンの磁性材料
粉末の平均粒径の値は比較的小さくてもかまわない。
【0162】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるリサ
イクル方法を用いれば、ボンド磁石の粘結材から容易に
磁石粉末を分別回収し、再利用して、磁気特性の高いリ
サイクルした磁性材料粉末が得られる。
【0163】さらに本発明によるボンド磁石のリサイク
ル方法によれば、磁気特性に優れたボンド磁石を作製す
ることができ、工程不良や使用済みのボンド磁石から有
価物を回収し、再生リサイクルすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山縣 芳和 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 山下 文敏 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性材料粉末を原料粉末として粘結剤を
    混合して成型されたボンド磁石から、磁性材料粉末を製
    造するリサイクル方法において、 (a)前記ボンド磁石から、それに含まれる粘結剤の全
    て若しくはそのうちの所定割合を除去して、前記磁性材
    料粉末を分離回収する工程と、 (b)この分離回収された磁性材料粉末のうち、所定の
    粒径以下の粒子を全て若しくはそのうちの所定割合を除
    去する工程と、 (c)この所定粒径以下の粒子が除かれた磁性材料粉末
    を、バージンの磁性材料粉末と所定の比率で混合して新
    たな原料粉末とする工程と、 を少なくとも備えたリサイクル方法。
  2. 【請求項2】 磁性材料粉末を原料粉末として粘結剤を
    混合して成型されたボンド磁石をリサイクルする方法に
    おいて、 (a)前記ボンド磁石から、それに含まれる粘結剤の全
    て若しくはそのうちの所定割合を除去して、前記磁性材
    料粉末を分離回収する工程と、 (b)この分離回収された磁性材料粉末のうち、所定の
    粒径以下の粒子を全て若しくはそのうちの所定割合を除
    去する工程と、 (c)この所定粒径以下の粒子が除かれた磁性材料粉末
    を、バージンの磁性材料粉末と所定の比率で混合して新
    たな原料粉末とする工程と、 (d)前記新たに作られた原料粉末に、粘結剤を所定割
    合で混合し、成型する工程を備えたリサイクル方法。
  3. 【請求項3】 前記工程(a)における除去される粘結
    剤の所定の割合は、前記工程(c)における前記所定の
    混合比率との関係で決める請求項1又は2記載のリサイ
    クル方法。
  4. 【請求項4】 前記工程(b)における所定の粒径は、
    前記工程(c)における前記所定の混合比率との関係で
    決める請求項1又は2記載のリサイクル方法。
  5. 【請求項5】 前記工程(b)における所定の割合は、
    前記工程(c)における前記所定の混合比率との関係で
    決める請求項1又は2記載のリサイクル方法。
  6. 【請求項6】 前記工程(c)における前記バージンの
    磁性材料粉末の平均粒径は、前記工程(c)における前
    記所定の混合比率との関係で決める請求項1又は2記載
    のリサイクル方法。
  7. 【請求項7】 前記工程(c)における前記バージンの
    磁性材料粉末の平均粒径は、前記工程(a)で用いられ
    た前記ボンド磁石が含む磁性材料粉末の平均粒径よりも
    大きい請求項1又は2記載のリサイクル方法。
  8. 【請求項8】 工程(b)における前記所定の粒径をφ
    20〜100μmの間に設定する請求項1又は2記載のリサ
    イクル方法。
  9. 【請求項9】 前記粘結剤が熱可塑性樹脂であるボンド
    磁石において、前記工程(a)が、前記熱可塑性樹脂を
    可溶である溶剤による溶解分離工程である請求項1又は
    2記載のリサイクル方法。
  10. 【請求項10】 前記工程(a)が、前記ボンド磁石
    を、分解槽内において粘結材を分解し得る溶剤を含む分
    解液に接触させ、200℃以上でかつ前記溶剤の臨界温
    度未満の温度に加熱する工程(e)を含む請求項1又は
    2記載のボンド磁石のリサイクル方法。
  11. 【請求項11】 前記工程(e)における前記溶剤が、
    エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレ
    ングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレング
    リコール、トリエチレングリコール、テトラエチレング
    リコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタ
    ノール、2−ジメトキシエタノール、2−イソプロポキ
    シエタノール、2−ブトキシ エタノール、2−イソペ
    ンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノー
    ル、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエ
    タノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エト
    キシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノメ
    チルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテ
    ル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロ
    ピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレング
    リコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール
    モノメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールモ
    ノメチルエーテル、テトラリン、ビフェニル、ナフタレ
    ン、1,4−ヒドロキシナフタレン、ナフトール、1,
    4−ナフトキノン、ピッチ、クレオソート油、メチルイ
    ソブチルケトン、イソホロン、2−ヘキサノン、2−ヘ
    プタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセ
    トニルアセトン、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシ
    クロヘキサノンおよびアセトフェノンよりなる群から選
    択される少なくとも1種である請求項10記載のリサイ
    クル方法。
  12. 【請求項12】 前記工程(d)における、前記粘結剤
    の混合比率を、前記工程(a)で用いられた前記ボンド
    磁石の粘結剤の混合比率より、小さくする請求項2記載
    のリサイクル方法。
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