JP2001196105A - 光電変換素子および光電気化学電池 - Google Patents

光電変換素子および光電気化学電池

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JP2001196105A
JP2001196105A JP2000322802A JP2000322802A JP2001196105A JP 2001196105 A JP2001196105 A JP 2001196105A JP 2000322802 A JP2000322802 A JP 2000322802A JP 2000322802 A JP2000322802 A JP 2000322802A JP 2001196105 A JP2001196105 A JP 2001196105A
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Masahiro Asami
正弘 浅見
Michio Ono
三千夫 小野
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Fuji Photo Film Co Ltd
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/542Dye sensitized solar cells

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐久性を有し、短絡電流値が大きく、かつ動
作温度の低下した場合でも性能劣化の少ない、高効率の
光電変換素子および光電気化学電池を提供する。 【解決手段】 少なくとも半導体微粒子含有層と電荷移
動層を有する光電変換素子および光電気化学電池におい
て、該半導体微粒子を酸化亜鉛および酸化スズとし、か
つ、該電荷移動層を溶融塩電解質とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光電変換素子および
これを用いた光電気化学電池に関し、詳しくは色素で増
感された半導体微粒子を用いた、短絡電流が大きく、効
率の高い、光電変換素子および光電気化学電池に関す
る。
【0002】
【従来の技術】太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、
多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電
池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化
合物太陽電池が実用化もしくは主な研究開発の対象とな
っているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、
エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服す
る必要がある。一方、大面積化や低価格化を指向した有
機材料を用いた太陽電池もこれまでにも多く提案されて
いるが、変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があ
った。こうした状況の中で、Nature(第353巻、第737〜
740頁、1991年)および米国特許4927721号等に、色素に
よって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子お
よび太陽電池、ならびにこれを作成するための材料およ
び製造技術が開示された。提案された電池は、ルテニウ
ム錯体によって分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜
を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の第一
の利点は二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度
に精製することなく用いることができるため、安価な光
電変換素子を提供できる点である。第二の利点は用いら
れる色素の吸収がブロードなため、可視光線のほぼ全て
の波長領域の光を電気に変換できることである。しかし
ながら耐久性の観点からは上記に開示された材料では問
題が残されていた。すなわち、該方式では電解質に低分
子量有機溶媒であるメトキシアセトニトリルあるいはア
セトニトリルなどを含有しているため、電解質の液漏れ
や溶媒の蒸発などにより、特に戸外などの過酷な条件下
で長期に安定した性能を維持するのが困難であった。
【0003】こうした弱点を克服するため、電解質の固
体化による耐久性の向上技術が種々提案されてきた。例
えば、Tennakoneら(Semicond.Sci.Technol.,10,1689(1
995))は可視部に吸収を持たないp型半導体であるCu
Iを電解質に用いて固体化された太陽電池を開示してい
るが、変換効率は十分ではない。また、ホール輸送能を
有するポリピロールを固体電解質として用いた例(村
越、Chem.Lett.,1997,471)や、アリールアミンを用い
た例(U.Bach et al.,Nature,395,583(1998))も報告さ
れているが、これらの変換効率もまた十分なものではな
かった。これら以外にも、国際特許公開WO93/20
565号公報に開示された固体電解質を用いた光電変換
素子や、日本化学会誌,7(1997),484頁、特
開平7−2881142号公報、Solid State Ionics,
89(1986),263頁および特開平9−2735
2号公報などに開示された架橋ポリエチレンオキサイド
系高分子固体電解質を用いて固体化を実現した光電変換
素子などが報告されているが、いずれも光電変換特性は
十分なものではなかった。別のアプローチとして、比較
的低温で溶融状態を呈するピリジニウム塩、イミダゾリ
ウム塩、トリアゾニウム塩などの所謂溶融塩化合物を非
揮発性の電解質として用いる技術が、WO95/18456号、特
開平8−259543号、電気化学第65巻11号92
3頁(1997年)に報告されている。これらの技術
は、前述の完全固体化セルに比べて、比較的良好な変換
効率を示す特徴がある。しかしながら、本発明者らがそ
れらの技術を用いて太陽電池を作製したところ、種々問
題の生じることが明らかとなった。すなわち、これらの
溶融塩を電解質として構成した太陽電池性能は、有機溶
媒を用いて電解質溶液を調製して用いた太陽電池に比べ
て、短絡電流値が低く、さらに動作温度が低下したとき
に電流値がいっそう低下するという問題のあることが明
らかになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐久
性を保持したまま、短絡電流値が大きく、かつ動作温度
の低下した場合でも性能劣化の少ない、高効率の光電変
換素子および光電気化学電池を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、本発明
を特定する下記の事項およびその好ましい態様により、
達成された。 (1)少なくとも半導体微粒子含有層と電荷移動層を有
する光電変換素子において、該半導体微粒子が酸化亜鉛
および酸化スズを含んでなり、かつ、該電荷移動層が5
0質量%以上、100質量%以下の溶融塩電解質を含む
ことを特徴とする光電変換素子。 (2)前記酸化亜鉛と酸化スズを含んでなる半導体微粒
子が、酸化亜鉛微粒子と酸化スズ微粒子とを混合した
後、焼成することにより形成されたことを特徴とする上
記(1)記載の光電変換素子。 (3)前記酸化亜鉛と酸化スズを含んでなる半導体微粒
子が、酸化亜鉛微粒子に塩化スズを混合後、焼成するこ
とにより形成されたことを特徴とする(1)記載の光電
変換素子。 (4)前記酸化スズが二酸化スズであることを特徴とす
る上記(1)、(2)または(3)の光電変換素子。 (5)前記溶融塩電解質が、下記一般式(Y-a)、(Y-
b)および(Y-c)で表される化合物群の少なくとも1種
を含むことを特徴とする上記(1)、(2)、(3)ま
たは(4)記載の光電変換素子。
【0006】
【化2】
【0007】一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5
又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表
す。一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子又はリン原子を表
す。一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のRy1〜Ry6
はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基、或いは
置換又は無置換のアルケニル基を表す。また、一般式
(Y-b)中のRy1〜Ry4のうち2つ以上が互いに連結してA
y1を含む非芳香族環を形成してもよく、一般式(Y-c)
中のRy1〜Ry6のうち2つ以上が互いに連結して環構造を
形成してもよい。式(Y-a)、(Y-b)又は(Y-c)によ
り表される化合物は、Qy1又はRy1〜Ry6を介して多量体
を形成してもよい。 (6)前記半導体微粒子に色素を吸着させたことを特徴
とする(1)〜(5)いずれかに記載の光電変換素子。 (7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光電変換
素子を用いて構成したことを特徴とする光電気化学電
池。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の光電変換素子および光電気化学電池の構
成と材料について詳述する。本発明の光電変換素子は、
導電性支持体、導電性支持体上に設置される色素等によ
り増感した半導体膜(感光層)、電荷移動層および対極
からなる。この光電変換素子を外部回路で仕事をさせる
電池用途に使用できるようにしたものが光電気化学電池
である。感光層は目的に応じて設計され、単層構成でも
多層構成でもよい。感光層に入射した光は色素等を励起
する。励起された色素等はエネルギーの高い電子を有し
ており、この電子が色素等から半導体微粒子の伝導帯に
渡され、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。
電子移動によって生じた色素等の分子の酸化体は、対極
および電荷移動層から供給される電子により再生する。
半導体膜はこの電池の負極として働く。なお、本発明で
はそれぞれの層の境界において(例えば、導電性支持体
の導電層と感光層の境界、感光層と電荷移動層の境界、
電荷移動層と対極の境界など)、各層の構成成分同士が
相互に拡散して混合していてもよい。
【0009】本発明においては、半導体膜に少なくとも
酸化亜鉛と酸化スズを含む。これらは半導体微粒子より
構成されていることが好ましい。また、酸化スズとして
は二酸化スズが好ましい。これら少なくとも二種の酸化
物を含む半導体多孔質膜を構成する酸化物微粒子の粒子
サイズは、十分な電極表面積を有する多孔質電極を構成
する目的で、適宜選択することができ、特に制限は無い
が、酸化亜鉛微粒子の粒子サイズは、5nmから1000
nmが好ましく、10nmから500nmがより好ましい。ま
た、酸化スズ微粒子の粒子サイズは1nmから500nmが
好ましく、2nmから200nmがより好ましい。酸化亜鉛
と酸化スズの比率(質量比)は、得られる電極の光電変
換効率を高める目的で種々変わりうるが、好ましくは1
0:90から90:10の範囲から選ぶことができる。
さらに好ましくは30:70から70:30の比率であ
る。
【0010】酸化亜鉛と酸化スズより半導体多孔質膜を
形成するには、種々の方法を用いることが可能である
が、例えばK.Tennakone,Chem.Commun.,1999,15-16に開
示された方法を用いることができる。すなわち、結晶サ
イズ約0.015μmの微粒子酸化スズのコロイド水分散溶液
(濃度15%)1.5mlに酢酸0.1mlとシュウ酸亜鉛の熱分解
で調製した結晶サイズ約2μmの微粒子酸化亜鉛0.3gとを
加え、瑪瑙乳鉢で混合した後、さらに20mlのメタノール
を加え、30分間超音波分散して懸濁液を調製する。得ら
れた懸濁液を、150℃に加熱したフッ素ドープ酸化スズ
被膜を有する導電性ガラス基板上に8から10μmの厚みと
なるようにスプレイ塗布し、500℃で35分空気中で
焼成することで半導体多孔質電極を作成することができ
る。あるいはK.Tennakone,J.Phys.D:Appl.Phys.32(199
9),374-379に開示された方法を用いることができる。上
記の文献に開示されている第一の方法によれば、まず、
平均粒子サイズ〜0.55μmの酸化亜鉛0.4gと塩
化第一スズ1.4gを0.5mlの水と共に混合し、
0.3mlの硝酸と2mlのエタノールを加えた後瑪瑙
乳鉢で十分に混合する。得られたペーストをフッ素ドー
プ酸化スズ被膜を有する導電性ガラス基板上にひろげ、
150℃で3分間乾燥した後、500℃で4〜6分焼成する。
室温まで温度を下げた後に、表面の、基盤に固着してい
ない酸化物粒子を拭き取り、同様の操作を約6μmの層
ができるまで繰り返すことで半導体多孔質電極を作成す
ることができる。また、第二の方法としては、まず、平
均粒子サイズ〜1.5μmの酸化亜鉛0.6gと塩化第
一スズ0.6gを3mlの水、5mlのメタノールと共
に混合し、瑪瑙乳鉢で十分に混合する。混合物はさらに
10mlのメタノールを加えた後、30分間超音波分散し
て懸濁液を調製する。得られた懸濁液を、150℃に加熱
したフッ素ドープ酸化スズ被膜を有する導電性ガラス基
板上に8から10μmの厚みとなるようにスプレイ塗布し、
500℃で40分空気中で焼成することで半導体多孔質電
極を作成することができる。
【0011】これらの方法以外にも、種々の方法を用い
ることができる。すなわち、金属酸化物微粒子の調製と
して用いられる、金属ハロゲン化物やアルコキサイドの
加水分解によって得られる金属水酸化物からの水熱合成
なども好ましく用いることができる。これらの例として
は、金属ハロゲン化物やアルコキサイドを加水分解して
得られる金属水酸化物コロイド分散物を、オートクレー
ブ中で80℃〜250℃に加熱することで酸化物微粒子
を得る、所謂ゾル−ゲル法、金属水酸化物のゲルネット
ワークをあらかじめ形成させた後に、これをやはりオー
トクレーブ中で加熱することで酸化物微粒子を得る、所
謂ゲル−ゾル法などを好ましく挙げることができる。後
者の方法では、金属水酸化物を合成する前に、金属塩化
物やアルコキサイドを、あらかじめ金属と錯形成可能な
化合物と反応させ、安定な錯体を形成した後に水酸化物
ゲルを調製する方法も好ましく用いられる。
【0012】金属錯体を構成するための配位子として
は、OH基、カルボニル基、エステル基、カルボキシル
基を有する化合物、アミン化合物が好ましい。配位子
は、単座配位子、二座配位子、三座配位子であってもよ
い。多座配位子は、安定な錯体を形成するのに好まし
い。また、多核の配位化合物であってもよい。OH基を
有する化合物には、アルカノールアミン化合物、ポリオ
ール化合物、グリコール化合物、オキシカルボン酸、多
価フェノール等が挙げられる。カルボニル基を有する化
合物には、βジケトン化合物、βケトエステル化合物オ
キシム化合物、ジオキシム化合物、尿素化合物等が挙げ
られる。エステル基を有する化合物には、βケトエステ
ル化合物等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合
物には、多価カルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ
酸、窒素原子を含むカルボン酸が挙げられる。アミン化
合物には、アルカノールアミン化合物、ジアミン化合物
が挙げられる。好ましくは、アルカノールアミン化合
物、グリコール化合物、オキシカルボン酸、βジケトン
化合物、βケトエステル化合物、ジアミン化合物が用い
られる。特に好ましくは、アルカノールアミン化合物が
用いられる。具体的には、ジエタノールアミン、トリエ
タノールアミン、トリメチロールアミン、ペンタエリト
リオット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロ
パン、エチレンジアミン、アセチルアセトン、コハク
酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グ
リコール酸、アセト酢酸メチル、エチレングリコール、
へキシレングリコール、ジメチルグリオキシム、ピコリ
ン酸等が好ましく用いられる。特に好ましくは、トリエ
タノールアミンが用いられる。
【0013】本発明において、上記の酸化亜鉛および酸
化スズに併用して、種々の半導体を用いることができ
る。併用できる半導体としては金属のカルコゲニド(例
えば酸化物、硫化物、セレン化物等)に代表されるいわ
ゆる化合物半導体またはペロブスカイト構造を有する化
合物等を使用することができる。金属のカルコゲニドと
して好ましくはチタン、鉄、タングステン、ジルコニウ
ム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウ
ム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、も
しくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、
アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレ
ン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の
化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カ
ドミウム等のリン化物、ガリウムヒ素、銅−インジウム
−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が挙げられ
る。また、ペロブスカイト構造を有する化合物として好
ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウ
ム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸
カリウムが挙げられる。本発明において、酸化亜鉛と酸
化スズに併用できる半導体としてより好ましくは、具体
的にはTiO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S
3、CdSe、CdTe、CuInS2、CuInSe2が挙げられる。
【0014】本発明に用いられる半導体微粒子は、非晶
質でも、単結晶でも、多結晶でもよいが、特にナノメー
トルからマイクロメートルサイズの微粒子が好ましい。
これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算し
たときの直径で表すことができる。正確には、透過型電
子顕微鏡の写真の投影面積より求められる。簡易には、
粒子が結晶の場合、一次粒子のサイズの平均値は、X線
回折の線幅よりScherrerの式を用いて求めることができ
る。平均粒径は、5〜200nmであることが好ましく、
特に8〜100nmであることが好ましい。変動係数と
は、粒径の標準偏差を平均粒径で割った比率で、通常、
単位は%で表される。変動係数は、好ましくは、50%
以下で、さらに、好ましくは、30%以下、より好まし
くは、20%以下である。また、分散物中の半導体微粒
子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μ
mであることが好ましい。また、2種類以上の粒径分布
の異なる微粒子を混合して用いてもよく、この場合、小
さい粒子の平均粒径は10nm以下であることが好まし
い。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目
的で、粒径の大きな、例えば300nm以上の半導体粒子
を混合してもよい。
【0015】本発明において、半導体多孔質膜を担持す
る導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電
性があるものか、または表面に導電剤を含む導電層(導
電剤層)を有するガラスもしくはプラスチックの支持体
を使用することができる。後者の場合好ましい導電剤と
しては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、
ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金
属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフ
ッ素をドープしたもの等)が挙げられる。上記導電剤層
の厚さは、0.02〜10μm程度であることが好まし
い。導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表
面抵抗の範囲としては100Ω/□以下であり、さらに
好ましくは40Ω/□以下である。この下限には特に制
限はないが、通常0.1Ω/□程度である。導電性支持
体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明
であるとは光の透過率が10%以上であることを意味
し、50%以上であることが好ましく、70%以上が特
に好ましい。透明導電性支持体としてはガラスもしくは
プラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好
ましい。この中でもフッ素をドーピングした二酸化スズ
からなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラス
でできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが特に好ま
しい。また、低コストでフレキシブルな光電変換素子ま
たは太陽電池には、透明ポリマーフィルムに上記導電層
を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルム
には、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチ
レンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレ
ート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(S
PS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカ
ーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリ
スルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PE
S)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフ
ィン、ブロム化フェノキシ等がある。透明導電性支持体
を用いる場合、光はその支持体側から入射させることが
好ましい。この場合、導電性金属酸化物の塗布量はガラ
スもしくはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜
100gが好ましい。
【0016】透明導電性基板の抵抗を下げる目的で金属
リードを用いることも好ましい。金属リードの材質はア
ルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好
ましく、特にアルミニウム、銀が好ましい。金属リード
は透明基板に蒸着、スッパタリング等で設置し、その上
にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からな
る透明導電層を設けることが好ましい。また上記の透明
導電層を透明基板に設けたあと、透明導電層上に金属リ
ードを設置することも好ましい。金属リード設置による
入射光量の低下は1〜10%、より好ましくは1〜5%
である。
【0017】半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する
方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶
液を導電性支持体上に塗布する方法などが挙げられる。
光電変換素子の量産化、液物性や支持体の融通性を考え
た場合、湿式の膜付与方式が比較的有利である。湿式の
膜付与方式としては、塗布法、印刷法が代表的である。
分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノ
ール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロ
メタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が
挙げられる。分散の際、必要に応じてポリエチレングリ
コールのようなポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキ
レート剤などを分散助剤として用いてもよい。ポリエチ
レングリコールの分子量を変えることで、剥がれにくい
膜を形成したり、分散液の粘度が調整可能で、ポリエチ
レングリコールを使用するのは、好ましい。塗布方法と
しては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ
法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法
等、またアプリケーションとメータリングを同一部分で
できるものとして、特公昭58−4589号公報に開示
されているワイヤーバー法、米国特許2681294
号、同2761419号、同2761791号等に記載
のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン
法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー
法も好ましく用いられる。湿式印刷方法としては、従来
から凸版、オフセット、グラビアの3大印刷法をはじ
め、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。前記
方法の中から、液粘度やウェット厚みにより好ましい膜
付与方式を選択する。
【0018】液粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使
用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大
きく左右される。高粘度液(例えば0.01〜500Po
ise)ではエクストルージョン法やキャスト法が好まし
く、低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライド
ホッパー法もしくはワイヤーバー法もしくはスピン法が
好ましく、均一な膜にすることが可能である。なお、エ
クストルージョン法による低粘度液の塗布の場合でも塗
布量がある程度の量あれば塗布は可能である。また半導
体微粒子の高粘度ペーストの塗設にはしばしばスクリー
ン印刷が用いられており、この手法を使うこともでき
る。このように塗布液の液粘度、塗布量、支持体、塗布
速度等のパラメータに対応して、適宜ウェット膜の付与
方式を選択すればよい。
【0019】さらに、半導体微粒子層は単層と限定する
必要はない。微粒子の粒径の違った分散液を多層塗布す
ることも可能であり、また半導体の種類が異なる、ある
いはバインダー、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗
布することもでき、また一度の塗布で膜厚が不足の場合
にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストル
ージョン法またはスライドホッパー法が適している。ま
た多層塗布をする場合は同時に多層を塗布しても良く、
数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。さらに順次重
ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用でき
る。また、導電性支持体と半導体微粒子層の間に、短絡
防止などの目的で下塗り層(半導体微粒子層よりも緻密
な金属酸化物等の層、例えば酸化チタン層や酸化亜鉛
層)を設けることもできる。
【0020】一般に、半導体微粒子含有層の厚みが増大
するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため
光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増
すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがっ
て、半導体微粒子含有層には好ましい厚さが存在する
が、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学
電池として用いる場合は1〜30μmであることが好ま
しく、2〜25μmであることがより好ましい。半導体
微粒子の支持体1m2当たりの塗布量は0.5〜400
g、さらには5〜100gが好ましい。半導体微粒子は導
電性支持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタク
トさせるため、および塗膜強度の向上や支持体との密着
性を向上させるために加熱処理することが好ましい。好
ましい加熱処理温度の範囲は40℃以上700℃未満で
あり、より好ましくは100℃以上600℃以下であ
る。また加熱処理時間は10分〜10時間程度である。
ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い支持体を用い
る場合は、高温処理は支持体の劣化を招くため、好まし
くない。また、コストの観点からもできる限り低温であ
ることが好ましい。低温化は、5nm以下の小さい半導体
微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能
である。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大
させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導
体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化
チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液
を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。半導体
微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面
積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子層を
支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対し
て10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以
上であることが好ましい。この上限には特に制限はない
が、通常1000倍程度である。
【0021】本発明に使用する色素は錯体色素(特に金
属錯体色素)またはメチン色素が好ましい。本発明で
は、光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効
率を上げるため、二種類以上の色素を混合することがで
きる。そして、目的とする光源の波長域と強度分布に合
わせるように混合する色素とその割合を選ぶことができ
る。こうした色素は半導体微粒子の表面に対する適当な
結合基(interlocking group)を有していることが好ま
しい。好ましい結合基としては、OH基、COOH基、SO3H
基、シアノ基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基、また
は、オキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリ
チレートおよびα−ケトエノレートのようなπ伝導性を
有するキレート化基が挙げられる。この中でもCOOH基、
-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これら
の基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また
分子内塩を形成していてもよい。また、ポリメチン色素
の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環
を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部
分を結合基としてもよい。
【0022】以下に本発明で好ましく用いられる色素を
具体的に説明する。本発明に使用する色素が金属錯体色
素の場合、ルテニウム錯体色素が好ましい。ルテニウム
錯体色素としては、例えば、米国特許4927721号、同468
4537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5
525440号、特開平7-249790号、特表平10-504521号およ
び国際特許WO98/50393号の各明細書に記載の錯体色素が
挙げられる。
【0023】さらに本発明で用いるルテニウム錯体色素
は下記式(I)で表される色素が好ましい。 式(I) (A1)pRuBabc 式(I)中、pは0〜2であり、好ましくは2である。
Ruはルテニウムを表す。A1はCl、SCN、H2O、
Br、I、CN、NCO、およびSeCNから選択され
る配位子である。Ba、Bb、Bcはそれぞれ独立に以下
のB-1〜B-8から選択される有機配位子である。
【0024】
【化3】
【0025】ここで、Raは水素原子、ハロゲン原子、
炭素原子数(以下C数という)1〜12個で置換もしく
は無置換のアルキル基、C数7〜12個で置換もしくは
無置換のアラルキル基、またはC数6〜12個で置換も
しくは無置換のアリール基を表す。上記のアルキル基、
アラルキル基のアルキル部分は直鎖状であっても分岐状
であってもよく、アリール基、アラルキル基のアリール
部分は単環であっても多環(縮合環、環集合)であって
もよい。
【0026】以下に本発明に使用する金属錯体色素の好
ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】本発明で好ましく用いられるメチン色素
は、特開平11−35836号、特開平11−1583
95号、特開平11−163378号、特開平11−2
14730号、特開平11−214731号、欧州特許
892411号および同911841号の各公報に記載
の色素である。これらの色素の合成法については、エフ
・エム・ハーマー(F.M.Hamer)著「ヘテロサイクリック
・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティ
ド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dy
es and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・ア
ンド・サンズ(JohnWiley & Sons)社−ニューヨーク、ロ
ンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.S
turmer)著「ヘテロ素サイクリック・コンパウンズース
ペシャル・トピックス・イン・複素サイクリック・ケミ
ストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in
heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第
482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サン
ズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、
1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボ
ン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compou
nds)」2nd.Ed.vol.IV,part B,1977刊、第15章、
第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブ
リック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publis
hing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、英国特許第1,
077,611号、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal,第40
巻、第3号、253〜258頁、Dyes and Pigments,第
21巻、227〜234頁およびこれらの文献に引用さ
れた文献になどに記載されている。
【0031】半導体微粒子に色素を吸着させる方法は色
素溶液中によく乾燥した半導体微粒子を含有する作用電
極を浸漬するか、もしくは色素溶液を半導体微粒子層に
塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の
場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法
などが使える。浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行っ
てもよいし、特開平7-249790号に記載されているように
加熱還流して行ってもよい。後者の塗布方法としては、
ワイヤーバー法、スライドホッパ法、エクストルージョ
ン法、カーテン法、スピン法、スプレー法があり、印刷
方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリー
ン印刷等がある。
【0032】溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択で
きる。例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノ
ール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニト
リル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メト
キシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化
炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホ
ルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエー
テル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシ
ド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N
−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、
1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサ
ゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル
等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、
炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノ
ン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(ヘキサン、石油
エーテル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒
が挙げられる。
【0033】液粘度も半導体微粒子層の形成時と同様
に、高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエ
クストルージョン法の他、各種印刷法が、低粘度液(例
えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法もしく
はワイヤーバー法もしくはスピン法が適していて、均一
な膜にすることが可能である。
【0034】このように色素塗布液の液粘度、塗布量、
支持体、塗布速度等のパラメータに対応して、適宜付与
方式を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間
は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
【0035】色素の使用量は、全体で、支持体1m2当た
り0.01〜100mモルが好ましい。また、色素の半
導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して
0.01〜1mモルが好ましい。このような色素量とす
ることによって、半導体における増感効果が十分に得ら
れる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分
となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない
色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0036】未吸着の色素の存在は素子性能の外乱にな
るため、吸着後速やかに洗浄によって除去することが好
ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶
剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うの
がよい。また、吸着色素量を増大させるため、加熱処理
を吸着前に行うことが好ましい。加熱処理後、半導体微
粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さず
40〜80℃の間で素早く色素を吸着させることも好ま
しい。
【0037】会合など色素同士の相互作用を低減する目
的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる
疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイ
ド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられ
る。また、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を
吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処
理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4
−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げ
られる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし
有機溶媒に溶解して用いてもよい。また、紫外線による
光劣化を防止する目的で紫外線吸収剤を共吸着させるこ
ともできる。
【0038】次に、溶融塩電解質を用いた電荷移動層に
ついて説明する。本発明において電荷移動層は、光励起
によって生じた色素の酸化体に電子を補充する機能を有
する層である。一般には酸化還元対を有機溶媒に溶解し
た電解液、電解液をポリマーマトリクスに含浸したゲル
電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、さらには固体電
解質や正孔(ホール)輸送材料など、種々のものが提案
されているが、本発明においては溶融塩電解質を用いる
ことが必要である。溶融塩電解質とは、例えば国際特許
公開WO95/18456号あるいは特開平8−259
543号特許明細書、または電気化学第65巻11号9
23頁(1997年)に記載のピリジニウム塩、イミダ
ゾリウム塩あるいはトリアゾニウム塩などの比較的低温
で液体状態となる塩を含む電解質である。これらの溶融
塩のうち、好ましいものは200℃以下で溶融状態とな
るものであり、さらに好ましくは150℃以下で溶融状
態となるものである。60℃以下の室温に近い温度で溶
融状態となるものを室温溶融塩と呼ぶこともあり、常温
作動条件での効率を高める上で好ましい。
【0039】好ましく用いることのできる溶融塩として
は、下記一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれ
かにより表されるものが挙げられる。
【0040】
【化7】
【0041】一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5
又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表
す。Qy1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及
び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子によ
り構成されるのが好ましい。
【0042】Qy1により形成される5員環は、オキサゾ
ール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール
環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジ
アゾール環又はトリアゾール環であるのが好ましく、オ
キサゾール環、チアゾール環又はイミダゾール環である
のがより好ましく、オキサゾール環又はイミダゾール環
であるのが特に好ましい。Qy1により形成される6員環
は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジ
ン環又はトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環
であるのがより好ましい。
【0043】一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子又はリン
原子を表す。一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のR
y1〜Ry6はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基
(好ましくは炭素原子数1〜24、直鎖状であっても分岐
状であっても、また環式であってもよく、例えばメチル
基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル
基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-
オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、
2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル
基、シクロペンチル基等)、或いは置換又は無置換のア
ルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24、直鎖状であ
っても分岐状であってもよく、例えばビニル基、アリル
基等)を表し、より好ましくは炭素原子数2〜18のアル
キル基又は炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特
に好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0044】また、一般式(Y-b)中のRy1〜Ry4のうち
2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成
してもよく、一般式(Y-c)中のRy1〜Ry6のうち2つ以
上が互いに連結して環構造を形成してもよい。また、一
般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のQy1及びRy1〜Ry6
は置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例とし
ては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、シアノ基、ア
ルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アリーロキ
シ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ
基、エチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(エト
キシカルボニル基等)、炭酸エステル基(エトキシカル
ボニルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、プロピオ
ニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスル
ホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基
(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニル
オキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホ
ニルオキシ基等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル
基等)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミ
ノ基等)、カルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル
基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル
基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-
カルボキシエチル基、ベンジル基等)、アリール基(フ
ェニル基、トルイル基等)、複素環基(ピリジル基、イ
ミダゾリル基、フラニル基等)、アルケニル基(ビニル
基、1-プロペニル基等)等が挙げられる。
【0045】一般式(Y-a)、(Y-b)又は(Y-c)によ
り表される化合物は、Qy1又はRy1〜Ry6を介して多量体
を形成してもよい。
【0046】これらの溶融塩は、単独で使用しても、2
種以上混合して使用してもよく、また、ヨウ素アニオン
を他のアニオンで置き換えた溶融塩と併用することもで
きる。ヨウ素アニオンと置き換えるアニオンとしては、
ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-等)、NSC-、BF4 -、P
F6 -、ClO4 -、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3SO3 -
CF3COO-、Ph4B-、(CF3SO2)3C-等が好ましい例として挙
げられ、(CF3SO2)2N-又はBF4 -であるのがより好まし
い。また、LiIなど他のヨウ素塩を添加することもで
きる。
【0047】上記溶融塩は、溶媒を用いずに使用するの
が好ましいが、後述する溶媒を添加しても構わない。こ
の場合、溶融塩の含有量は電解質組成物全体に対して50
質量%以上、100質量%以下であり、70%質量以上
であることが好ましい。また、塩のうち、50質量%以上
がヨウ素塩であることが好ましく、70質量%以上である
ことが更に好ましい。
【0048】電解質組成物は、実質的に溶融塩電解質と
酸化還元対の酸化体(具体的にはヨウ素)から構成され
ることが好ましい。この場合、ヨウ素の含有量は、電解
質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好まし
く、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0049】以下に、本発明において好ましく用いられ
る溶融塩の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけ
ではない。
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】本発明で溶融塩電解質に使用できる溶媒
は、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘
電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れ
たイオン伝導性を発現できる化合物であることが望まし
い。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、
プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3
−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、
ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、
エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレング
リコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール
ジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアル
キルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタ
ノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プ
ロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレ
ングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレング
リコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレ
ングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン
などの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジ
ニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリ
ル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ジメチルス
ルフォキシド(DMSO)、スルフォランなど非プロト
ン極性物質などを用いることができる。これら溶媒は一
種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0058】本発明の電解質にはLiI、NaI、K
I、CsI、CaI2 などの金属ヨウ化物、LiBr、
NaBr、KBr、CsBr、CaBr2 などの金属臭
化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブロマイ
ド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合
物の臭素塩などのほか、フェロシアン酸塩−フェリシア
ン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属
錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキ
ルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、
ヒドロキノン−キノンなどを添加することもできる。
【0059】また、本発明では、J. Am. Ceram. Soc .,
80 (12)3157-3171(1997)に記載されているようなter-ブ
チルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の
塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物を
添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05M以上2M
以下である。
【0060】なお、電荷移動層中の水分としては10,
000ppm以下が好ましく、さらに好ましくは2,0
00ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以
下である。
【0061】本発明においては、溶融塩電解質に、有機
溶媒に酸化還元対を溶解した電解液を一部混合して用い
ることもできる。また、ゲル化剤によりゲル化(固体
化)したり、ゲル電解質と併用したり、さらには固体電
解質と半導体多孔質電極層の間に溶融塩電解質を存在さ
せることもできる。
【0062】電荷移動層の形成方法に関しては2通りの
方法が考えられる。1つは増感色素を担持させた半導体
微粒子含有層の上に先に対極を貼り合わせておき、その
間隙に液状の電荷移動層を挟み込む方法である。もう1
つは半導体微粒子含有層上に直接電荷移動層を付与する
方法で、対極はその後付与することになる。前者の場合
の電荷移動層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管
現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして
気相を液相に置換する真空プロセスが利用できる。後者
の場合、電荷移動層を半導体微粒子含有層上に、浸漬
法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクスト
ルージョン法、スライドホッパー法、ワーヤーバー法、
スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等によ
り付与し、その後対極を付与してエッジ部の液漏洩防止
措置も施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式
で塗布して重合等の方法により固体化する方法もあり、
その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与すること
もできる。
【0063】酸化還元対を生成させるために電解質にヨ
ウ素などを導入する場合、前述の電解質溶液に添加する
ほか、電解質層の形成後、これをヨウ素などと共に密閉
容器内に置き、電解質中に拡散させる手法等により導入
することができる。また、ヨウ素などは後述の対極に塗
布あるいは蒸着する方法により光電気化学電池として用
いる光電変換素子を組み立てたときに電解質層中に導入
することができる。
【0064】対極は、光電変換素子を光電気化学電池と
したとき、光電気化学電池の正極として働くものであ
る。対極は通常前述の導電性支持体と同様に導電性層を
有する支持体を用いることもできるが、強度や密封性が
十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要で
ない。具体的に対極に用いる導電性の材料としては金属
(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、
インジウム等)、炭素、または導電性の金属酸化物(イ
ンジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープ
したもの等)が挙げられる。対極の厚さは、特に制限は
ないが、3nm以上10μm以下であることが好まし
い。金属材料である場合は、その膜厚は好ましくは5μ
m以下であり、さらに好ましくは5nm以上3μm以下
の範囲である。感光層に光が到達するためには、前述の
導電性支持体と対極の少なくとも一方は実質的に透明で
なければならない。本発明の光電気化学電池において
は、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から
入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射する
性質を有することがさらに好ましい。本発明において対
極としては金属または導電性の酸化物を蒸着したガラス
またはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
【0065】対極の塗設については電荷移動層の付与で
記したように、電荷移動層の上に付与する場合と先に半
導体微粒子含有層上に付与する場合の2通りある。いず
れの場合も、対極材の種類や電荷移動層の種類により、
適宜、電荷移動層上または半導体微粒子含有層上に対極
材を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせなどの方法に
より形成可能である。例えば、対極を貼り合わせる場合
は、上記の導電性材料を塗布、蒸着、CVD等の手法に
より導電層として設けられた基板を貼り合わせることが
できる。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に
直接、前述の導電性材料を塗布、メッキ、PVD、CV
D等の手法で対極を形成することができる。
【0066】さらに、半導体電極の導電性支持体または
対極に保護層、反射防止膜など、必要な他の機能の層を
設けることも可能である。このような層を多層にて機能
分離させる場合、同時多層塗布や逐次で塗布することが
可能であるが、生産性を優先させると同時多層塗布がよ
り好ましい。同時多層塗布では、生産性および膜付与均
一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルー
ジョン法が適している。また、これらの機能層はその材
料により、蒸着や貼り付けなどの手法を用いて設けるこ
ともできる。
【0067】本発明の光電気化学電池では構成物の劣化
や内容物の揮散を防止するために電池の側面をポリマー
や接着剤等で密封するのが好ましい。
【0068】次に本発明の光電変換素子をいわゆる太陽
電池に適用する場合のセル構造およびモジュール構造に
ついて説明する。色素増感型太陽電池のセル内部の構造
は、基本的には上述した光電変換素子や光電気化学電池
と同じであるが、図2または図3に示すように目的に合
わせ様々な形態が可能である。大きく二つに分ければ、
両面から光の入射が可能な構造[図2(a)(d)、図
3(g)]と、片面からのみ可能なタイプ[図2(b)
(c)、図3(e)(f)]である。図2(a)は、2
枚の透明導電層12間に色素吸着半導体微粒子層である
酸化亜鉛+酸化スズ層10と電荷移動層11とを介在さ
せた構造である。図2(b)は、透明基板13上に一部
金属リード9を設け、さらに透明導電層12を設け、下
塗り層14、色素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層10、
電荷移動層11および金属層8をこの順で設け、さらに
支持基板15を配置した構造である。図2(c)は支持
基板15上に金属層8を有し、下塗り層14を介して色
素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層10を設け、さらに電
荷移動層11と透明導電層12とを設け、一部に金属リ
ード9を設けた透明基板13を金属リード9を内側にし
て配置した構造である。図2(d)は、透明基板13上
に一部金属リード9を設け、これと透明導電層12との
間に下塗り層14と色素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層
10と電荷移動層11とを介在させた構造である。図3
(e)は、透明基板13上に透明導電層12を有し、下
塗り層14を介して色素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層
10を設け、さらに電荷移動層11および金属層8を設
け、この上に支持基板15を配置した構造である。図3
(f)は、支持基板15上に金属層8を有し、下塗り層
14を介して色素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層10を
設け、さらに電荷移動層11および透明導電層12を設
け、この上に透明基板13を配置した構造である。図3
(g)は、透明導電層12を有する透明基板13間に、
透明導電層12を内側にして下塗り層14、色素吸着し
た酸化亜鉛+酸化スズ層10および電荷移動層11を介
在させた構造である。
【0069】本発明の色素増感型太陽電池のモジュール
構造は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様の
構造をとりうる。一般的には、金属・セラミック等の支
持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護
ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構
造とすることができるが、支持基板に強化ガラス等の透
明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持
基板側から光を取り込むことも可能である。具体的に
は、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイ
プ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造ある
いはアモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基
板一体型などのモジュール構造が可能である。これらの
モジュール構造は使用目的や使用場所(環境)により適
宜選択できる。本発明の素子を基板一体型でモジュール
化した例を図4に示す。図4の構造は、透明基板13の
一方の面上に透明導電層12を有し、この上にさらに色
素吸着した酸化亜鉛+酸化スズ層10、溶融塩電解質を
含む電荷移動層16および金属層8を設けたセルをモジ
ュール化したものであり、透明基板13の他方の面には
反射防止層17が設けられている。この場合、入射光の
利用効率を高めるため、感光部である色素吸着した酸化
亜鉛+酸化スズ層10の面積比率(光の入射面である透
明基板13側から見たときの面積比率)を大きくした方
が好ましい。
【0070】スーパーストレートタイプやサブストレー
トタイプの代表的な構造は、片側または両側が透明で反
射防止処理を施された支持基板の間に、一定間隔にセル
が配置され、隣り合うセル間が金属リードまたはフレキ
シブル配線等によって接続されており、外縁部に集電電
極を配置して、発生した電力を外部に取り出す構造にな
っている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率
アップのため、目的に応じ、エチレンビニルアセテート
(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフイルム
または充填樹脂の形で用いることができる。また、外部
からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必
要のない場所に使う場合には、表面保護層を透明プラス
チックフイルムで構成したり、または、上記充填・封止
材料を硬化させることによって保護機能を付与し、片側
の支持基板を無くすことも可能である。支持基板の周囲
は、内部の密封およびモジュールの剛性確保のため、金
属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板と
フレームの間は封止材で密封シールする。
【0071】また、セルそのものや支持基板、充填材お
よび封止部材に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太
陽電池を構成することもできる。このように、使用目的
や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池
を製作することができる。
【0072】スーパーストレートタイプの太陽電池モジ
ュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロ
ント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上に
セルを封止材・セル間接続用リード線・背面封止材等と
共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗
せ、外縁部にフレームをセットして作ることができる。
一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から
送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しなが
ら、その上にセルをセル間接続用リード線・封止材等と
共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部に
フレームをセットして作製することができる。
【0073】図4に示した構造のモジュールは、支持基
板上に透明電極・感光層・電荷移動層・裏面電極等が立
体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ・選
択エッチング・CVD・PVDといった半導体プロセス
技術、あるいはパターン塗布または広幅で塗布した後に
レーザースクライビングやプラズマCVM(Solar Ener
gy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記
載)または研削等の機械的手法などの方法でパターニン
グすることができ、これらにより所望のモジュール構造
を得ることができる。
【0074】以下にその他の部材や工程について詳述す
る。封止材料としては、液状のEVA(エチレンビニル
アセテート)やフッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹
脂混合物、フイルム状のEVA等、耐候性付与・電気絶
縁性付与・集光効率向上・セル保護性(耐衝撃性)向上等
の目的に応じ様々な素材が使用可能である。これらを、
セル上に固定する方法としては、封止材の物性に合わ
せ、フイルム状の素材ではロール加圧後加熱密着や真空
加圧後加熱密着、液またはペースト状の材料ではロール
コート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷
等の様々な方法がある。また、透明フィラーを封止材に
混入して強度を上げたり、光透過率を上げることができ
る。モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐
候性・防湿性が高い樹脂を使って封止するとよい。
【0075】支持基板としてPET・PEN等の可撓性
素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してそ
の上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層
を積層する事ができ、生産性の高い工程を造ることがで
きる。
【0076】発電効率を上げるため、モジュールの光取
り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反
射防止処理が施される。これには、反射防止膜をラミネ
ートする方法、反射防止層をコーティングする方法があ
る。また、セルの表面をグルービングまたはテクスチャ
リング等の方法で処理することによって入射した光の利
用効率を高めることが可能である。
【0077】発電効率を上げるためには、光を損失無く
モジュール内に取り込むことが最重要だが、光電変換層
を透過してその内側迄到達した光を反射させて光電変換
層側に効率良く戻すことも重要である。この為には、支
持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着または
メッキする方法、セルの最下層にAl-MgまたはAl-
Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、あるい
は、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を
作り反射率を高める方法等がある。
【0078】発電効率を上げる為には、セル間接続抵抗
を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要
である。ワイヤーボンディングや導電性のフレキシブル
シートで接続するのが一般的だが、導電性粘着テープや
導電性接着剤を使ってセルの固定機能と電気的な接続機
能を兼ねる方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパ
ターン塗布する方法等がある。
【0079】ポリマーフィルムなどのフレキシブル支持
体を使った太陽電池では、ロール状の支持体を送り出し
ながら半導体の塗設の説明で示した方法によって、順
次、セルを形成・所望のサイズに切断した後、周縁部を
フレキシブルで防湿性の有る素材でシールして、電池本
体を作製できる。また、Solar Energy Materials and S
olar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」とよばれ
るモジュール構造とすることもできる。フレキシブル支
持体の太陽電池では、更にこれを曲面ガラス等に接着固
定して使用することもできる。
【0080】
【実施例】以下、本発明を以下の実施例および比較例に
よって具体的に説明する。 1.二酸化チタン粒子含有分散液の作製(比較例用) オートクレーブ温度を250℃16時間にした以外はバ
ルベらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・
ソサイエティ 80巻3157頁記載の硝酸を用いた方法と同
様の方法で二酸化チタン濃度8質量%の二酸化チタン分
散物を得た。得られた二酸化チタン粒子の平均粒径は約
15nmであった。変動係数は43%であった。ここでの
平均粒径は、X線回折の(101)反射の回折線幅より
求めたものを用いた。この分散物に二酸化チタンに対し
30質量%のポリエチレングリコール(分子量500,
000、和光純薬製)を添加し、混合して分散液1を得
た。
【0081】2.酸化亜鉛/酸化スズ混合粒子含有分散
液の作成 K.Tennakone,Chem.Commun.,1999,15-16に開示された方
法と同様の方法で酸化亜鉛/酸化スズ混合粒子含有分散
液を作成した。すなわち、結晶サイズ約0.015μmの微粒
子二酸化スズのコロイド水分散溶液(濃度15%)1.5mlに
酢酸0.1mlとシュウ酸亜鉛の熱分解で調製した結晶サイ
ズ約2μmの微粒子酸化亜鉛0.3gとを加え、瑪瑙乳鉢で混
合した後、さらに20mlのメタノールを加え、30分間超音
波分散して懸濁液を調製し、分散液2とした。分散液2
に含まれる酸化亜鉛と酸化スズの重量比は57:43で
あった。分散液2とは、酸化亜鉛を単独で用いたことの
みが異なる分散液を調製し、分散液3とした。分散液2
とは、酸化亜鉛と酸化スズの重量比を30:70に変え
たことのみが異なる分散液を調製し、分散液4とした。
分散液2とは、酸化亜鉛と酸化スズの重量比を53:4
7に変えたことのみが異なる分散液を調製し、分散液5
とした。分散液2とは、酸化亜鉛と酸化スズの重量比を
70:30に変えたことのみが異なる分散液を調製し、
分散液6とした。分散液2とは、酸化スズを単独で用い
たことのみが異なる分散液を調製し、分散液7とした。
【0082】3.色素を吸着した半導体電極の作成 フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導
電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗は約10Ω/□)
の導電面側に金属酸化物微粒子からなる半導体多孔質電
極を形成した。まず、分散液1をドクターブレードで1
00μmの厚みで塗布し、25℃で30分間乾燥した
後、電気炉(ヤマト科学製マッフル炉FP−32型)で
500℃にて35分間焼成した。二酸化チタンの塗布量
は13.5g/m2であり、膜厚は9μmであった。これを
電極1とした。次に分散液2を、150℃に加熱した上記
と同じフッ素をドープした酸化スズをコーティングした
透明導電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗は約10Ω
/□)の導電面側にスプレイ塗布し、500℃で35分
空気中で焼成し、厚さ9μmの半導体層を有する半導体
多孔質電極を作成し、これを電極2とした。分散液3か
ら7についても同様に透明電極基盤上にスプレイ塗布
し、500℃で35分空気中で焼成し、厚さ9μmの半
導体多孔質膜よりなる電極3から7を作成した。これら
の電極を冷却した後、R−1色素の溶液(色素3×10
-4モル/リットル、溶媒:エタノール)中で3分間加熱
還流することで色素を染着させた。色素の染着された半
導体塗膜をアセトニトリルで洗浄し暗所にて自然乾燥さ
せた。色素の吸着量は半導体電極の面積1m2あたりお
よそ0.9〜1.1×10-3モル範囲であった。
【0083】4.光電気化学電池の作成 上述のようにして作成した色素増感された半導体電極基
盤を用いて光電気化学電池を作成した。まず、電極1を
カットし(2cm×2cm)、これと同じ大きさの白金蒸着
ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管
現象を利用して電解質(Y8−1:1.0g、ビスシア
ノエチルエーテル:8.8g、ヨウ素:0.2g の混
合物)を導入することにより、光化学電池C−1を得
た。次に、電極1を用いて電解質を溶融塩電解質(Y8
−1:7.0g、Y7−2:2.8g、ヨウ素:0.2
gの混合物)に変えることで、同様にして光化学電池C
−2を得た。用いる半導体電極基盤を電極2に変え、光
化学電池C−1と同様にして光化学電池C−3を作成し
た。さらに、電解質を溶融塩電解質(Y8−1:7.0
g、Y7−2:2.8g、ヨウ素:0.2g の混合
物)に変えることで、光化学電池C−4を得た。これに
より、図1に示した基本構成の通り、導電性支持体(ガ
ラス1上に導電剤層2が設層されたもの)、酸化亜鉛/
酸化スズ電極3、色素層4、溶融塩電解質層5、白金層
6およびガラス7よりなる本発明の光電気化学電池が組
み立てられた。光化学電池C−4とは、それぞれ半導体
電極を電極3〜7に変えたことのみが異なる以外は同様
にして、光化学電池C−5、C−6、C−7、C−8お
よびC−9を作成した。光化学電池C−7とは、用いる
溶融塩電解質の組成を変えることで、光電気化学電池C
−10からC−15を作成した。作成した光電気化学電
池の構成を、下記の表1に比較してまとめた。
【0084】
【表1】
【0085】5.光電変換効率の測定 500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィ
ルター(Oriel社製AM1.5)を通すことにより模
擬太陽光を発生させた。この光の強度は100mW/cm2
あった。前述の光電気化学電池の導電性ガラスと白金蒸
着ガラスにそれぞれ、ワニ口クリップを接続し、光電気
化学電池の温度が50℃で一定になるように温度制御し
て加温した状態で、模擬太陽光を照射し、発生した電気
を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)にて測
定した。測定結果から光電気化学電池の特性として開放
電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変
換効率(η)を求めた。次に、同じ光化学電池C−1から
C−15を用いて電池の温度が25℃となるように制御
した条件下で同様に電池特性を求めた。さらに、光化学
電池を80℃で7日間保存した後に、50℃の条件で光
起電力を測定し、電池特性を求め、耐久性を調べた。得
られた結果をまとめて表2および表3に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】上記実施例の結果から、以下のことがわか
る。まず、比較の二酸化チタン電極に溶媒型電解質を組
合わせた光電気化学電池C−1は、組立て直後の50℃
における性能は比較的良好で、かつ25℃での性能も低
下が少ないが、80℃で保存したときの劣化が著しい。
溶融塩型電解質に変えたC−2では、耐久性が向上する
ものの、組立て直後の性能が低下し、かつ25℃に温度
を低下させた場合の性能劣化も大きい。酸化亜鉛/酸化
スズの混合電極を用いると、耐久性に優れた溶融塩電解
質を用いた場合でも、組立て直後の性能に優れており、
かつ、25℃に温度が低下した場合でも性能の低下が少
ない。この特性は、酸化亜鉛あるいは酸化スズを単独に
用いた場合には見られない、驚くべき効果であった。本
発明の半導体電極に溶融塩型電解質を組合わせることで
はじめて、耐久性と高い光電変換特性とを併せ持つ、優
れた光化学電池を構成することができる。
【0089】
【発明の効果】本発明によって、短絡電流高く、効率に
優れ、かつ耐久性にも優れた色素増感光電変換素子およ
び光電気化学電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作成した光電気化学電池の構成を示す
断面図である。
【図2】光電気化学電池の基本的な構成例を示す断面図
である。
【図3】光電気化学電池の基本的な構成例を示す断面図
である。
【図4】基板一体型のモジュール構成例を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
1 導電性ガラス 2 導電剤層 3 酸化亜鉛/酸化スズ層 4 色素層 5 溶融塩電解質層 6 白金層 7 ガラス 8 金属層 9 金属リード 10 色素吸着酸化亜鉛/酸化スズ層 11 溶融塩電解質含有電荷移動層 12 透明導電層 13 透明基板 14 下塗り層 15 支持基板 16 溶融塩電解質含有電荷移動層 17 反射防止層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも半導体微粒子含有層と電荷移
    動層を有する光電変換素子において、該半導体微粒子が
    酸化亜鉛および酸化スズを含んでなり、かつ、該電荷移
    動層が50質量%以上、100質量%以下の溶融塩電解質
    を含むことを特徴とする光電変換素子。
  2. 【請求項2】 前記酸化亜鉛と酸化スズを含んでなる半
    導体微粒子が、酸化亜鉛微粒子と酸化スズ微粒子とを混
    合した後、焼成することにより形成されたことを特徴と
    する請求項1記載の光電変換素子。
  3. 【請求項3】 前記酸化亜鉛と酸化スズを含んでなる半
    導体微粒子が、酸化亜鉛微粒子に塩化スズを混合後、焼
    成することにより形成されたことを特徴とする請求項1
    記載の光電変換素子。
  4. 【請求項4】 前記溶融塩電解質が、下記一般式(Y-
    a)、(Y-b)および(Y-c)で表される化合物群の少な
    くとも1種を含むことを特徴とする請求項1、2または
    3記載の光電変換素子。 【化1】 一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5又は6員環の
    芳香族カチオンを形成しうる原子団を表す。一般式(Y-
    b)中、Ay1は窒素原子又はリン原子を表す。一般式(Y-
    a)、(Y-b)及び(Y-c)中のRy1〜Ry6はそれぞれ独立
    に置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換
    のアルケニル基を表す。また、一般式(Y-b)中のRy1
    Ry4のうち2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族
    環を形成してもよく、一般式(Y-c)中のRy1〜Ry6のう
    ち2つ以上が互いに連結して環構造を形成してもよい。
    式(Y-a)、(Y-b)又は(Y-c)により表される化合物
    は、Qy1又はRy1〜Ry6を介して多量体を形成してもよ
    い。
  5. 【請求項5】 前記半導体微粒子に色素を吸着させたこ
    とを特徴とする請求項1、2、3または4記載の光電変
    換素子。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の光電
    変換素子を用いて構成したことを特徴とする光電気化学
    電池。
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