JP2001192442A - 脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法 - Google Patents

脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法

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JP2001192442A
JP2001192442A JP2000327868A JP2000327868A JP2001192442A JP 2001192442 A JP2001192442 A JP 2001192442A JP 2000327868 A JP2000327868 A JP 2000327868A JP 2000327868 A JP2000327868 A JP 2000327868A JP 2001192442 A JP2001192442 A JP 2001192442A
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acid
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aliphatic
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Hiroyuki Suzuki
博之 鈴木
Akira Shinagawa
亮 品川
Shinji Ogawa
伸二 小川
Yasushi Kotaki
泰 小瀧
Hiroshi Minazu
宏 水津
Masanobu Ajioka
正伸 味岡
Yuji Terado
雄二 寺戸
Masatoshi Takagi
正利 高木
Shoji Hiraoka
章二 平岡
Katsuyuki Sakai
勝幸 酒井
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】脂肪族ポリエステルプレポリマーの結晶化を脂
肪族ポリエステルプレポリマーを溶解しない液体中で行
う事により、脂肪族ポリエステルプレポリマーを粒子同
士の融着、粒子の破損、粉末化等の問題を生ずる事無く
容易に結晶化する事が出来、更にその後固相重合を行う
事により、着色の少ない高分子量の脂肪族ポリエステル
を製造する事が出来る、脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーを結晶化する方法を提供する事。 【解決手段】触媒として有機スルホン酸系化合物を含
む、重量平均分子量が2,000〜100,000であ
る脂肪族ヒドロキシカルボン酸ユニット50%以上含有
する脂肪族ポリエステルプレポリマーを、酸性化合物を
添加した、脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解しな
い液体と接触させる事により結晶化させる事を特徴とす
る、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療用材料や汎用
樹脂の代替として有用な生分解性ポリマーである脂肪族
ヒドロキシカルボン酸ユニット50%以上含有する脂肪
族ポリエステルを固相重合法により製造するための脂肪
族ポリエステルプレポリマーの結晶化方法に関する。更
に詳しくは、触媒として有機スルホン酸系化合物を含
む、重量平均分子量が2,000〜100,000であ
る脂肪族ヒドロキシカルボン酸ユニット50%以上含有
する脂肪族ポリエステルプレポリマーを、酸性化合物を
添加した、脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解しな
い液体と接触させることにより結晶化させる脂肪族ポリ
エステルの液中結晶化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】[特開平8−34843号]特開平8−
34843号には、高分子量の脂肪族ポリエステルの製
造方法に関する技術が開示されている。すなわち、特定
の相対粘度ηrel(1.5)以上を有する脂肪族ポリエ
ステルを結晶化させた後、特定の条件で固相重合するこ
とにより、釣糸等として成形可能な高分子量で、かつ高
融点の脂肪族ポリエステルを得ることができる、とされ
ている。
【0003】しかしながら、結晶化の技術については、
室温での結晶化、水冷する等の結晶化を促進させるよう
な従来公知の様々な方法を用いることもできるとされて
いるに留まっており、本願の液体と接触させることによ
る結晶化については、示唆も開示もない。
【0004】[特開平8−165339号]特開平8−
165339号には、乳酸系共重合ポリエステル粒状物
の製造方法に関する技術が開示されている。すなわち、
乳酸成分とジカルボン酸成分とジオ−ル成分とからなる
乳酸系共重合ポリエステルを、ガラス転移点温度以上、
融点温度未満で結晶化させることにより、融着問題を解
決することができる、とされている。特開平8−165
339号には、公開特許公報段落番号0014〜001
6にも記載されているように、乳酸系共重合ポリエステ
ルを、溶融状態でダイスから押し出してストランドと
し、溶融ストランドを一定の冷却速度で冷却しながら結
晶化し、結晶化ストランドを切断して粒状化する技術、
及び一度冷却した乳酸系共重合ポリエステルを加熱して
結晶化させる技術が開示されている。特に、加熱して結
晶化させる方法は、乾燥した窒素などの不活性ガス雰囲
気下、乾燥空気下で行う事が好ましいと記載されてい
る。しかしながらこの発明にも、本願の液体と接触させ
ることによる結晶化については、示唆も開示もない。
【0005】[欧州特許EP−953589A2号]欧
州特許EP−953589A2号には、重量平均分子量
2,000〜100,000の脂肪族ヒドロキシカルボ
ン酸ユニット50%以上を含む脂肪族ポリエステルプレ
ポリマーを触媒の存在下、固相重合する事により、重量
平均分子量50,000〜1,000,000の脂肪族
ヒドロキシカルボン酸ユニット50%以上を含む脂肪族
ポリエステルの製造方法に関する技術が開示されてい
る。この発明の中には、脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーを、脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解しない液
体と接触させる事により結晶化させる技術、及び結晶化
に使用する液体に有機酸を添加してもよい、との記載が
ある。しかしながら、触媒に有機スルホン酸系化合物を
使用した場合、脂肪族ポリエステルプレポリマーを水と
接触させる事により結晶化させると、結晶化中に触媒の
有機スルホン酸系化合物が水側に溶出し、プレポリマー
中の触媒含有量が減少し、その減少量が大きすぎると、
結晶化した脂肪族ポリエステルプレポリマーを固相重合
した時に所望の重量平均分子量まで分子量が上がらない
という問題点があった。また、添加する有機酸として具
体的なものは記載されておらず、有機酸を添加する効果
についても記載が無い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題の一つは、脂肪族ポリエステルプレポリマーの
結晶化を脂肪族ポリエステルを溶解しない液体中で行な
うことにより、脂肪族ポリエステルプレポリマーを粒子
同士の融着、粒子の破損、粉末化等の問題を生ずること
なく容易に結晶化することができ、さらに、その後、固
相重合を行なうことにより、着色の少ない高分子量の脂
肪族ポリエステルを製造することができる、脂肪族ポリ
エステルを結晶化する方法を提供することにある。更
に、本発明が解決しようとする課題の一つは、脂肪族ポ
リエステルプレポリマーの結晶化を、酸性化合物を添加
した、脂肪族ポリエステルを溶解しない液体中で行なう
ことにより、結晶化における触媒の減少を抑制すること
ができ、その後、固相重合を行なうことにより、高分子
量の脂肪族ポリエステルを効率よく製造することができ
る、脂肪族ポリエステルを結晶化する方法を提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
状況を鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至
った。即ち、本発明は、以下の[1]〜[19]に記載
した事項により特定される。
【0008】[1] 触媒として有機スルホン酸系化合
物を含み、重量平均分子量が2,000〜100,00
0である、脂肪族ヒドロキシカルボン酸ユニット50%
以上含有する脂肪族ポリエステルプレポリマーを、酸性
化合物を添加した、脂肪族ポリエステルプレポリマーを
溶解しない液体と接触させることにより結晶化させるこ
とを特徴とする、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方
法。
【0009】[2] 脂肪族ポリエステルプレポリマー
が固体状態の脂肪族ポリエステルプレポリマーである、
[1]記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0010】[3] 溶融状態の脂肪族ポリエステルプ
レポリマーを、酸性化合物を添加した、脂肪族ポリエス
テルプレポリマーを溶解しない液体と接触させることに
より、固化させて結晶化させることを特徴とする、
[1]記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0011】[4] 脂肪族ポリエステルプレポリマー
を溶媒に溶解した溶液を、酸性化合物を添加した、脂肪
族ポリエステルプレポリマーを溶解しない液体と接触さ
せることにより、固化させて結晶化させることを特徴と
する、[1]記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方
法。
【0012】[5] 脂肪族ポリエステルプレポリマー
を溶解しない液体が、少なくとも一部に水を含むもので
ある、[1]乃至[4]の何れかに記載した、脂肪族ポ
リエステルの液中結晶化方法。
【0013】[6] 脂肪族ポリエステルプレポリマー
を溶解しない液体が、水である、[1]乃至[4]の何
れかに記載した、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方
法。
【0014】[7] 酸性化合物が、脂肪族ポリエステ
ルプレポリマーに含まれる触媒(有機スルホン酸系化合
物)と同じ化合物である、[1]乃至[6]の何れかに
記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0015】[8] 結晶化温度が、脂肪族ポリエステ
ルプレポリマーを溶解しない液体の凝固点以上脂肪族ポ
リエステルの融点未満である、[1]乃至[7]の何れ
かに記載の、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0016】[9] 結晶化温度が、脂肪族ポリエステ
ルプレポリマーを溶解しない液体の凝固点以上80℃以
下である、[1]乃至[7]の何れかに記載の脂肪族ポ
リエステルの液中結晶化方法。
【0017】[10] 結晶化温度が、脂肪族ポリエス
テルプレポリマーのガラス転移点Tg以上80℃以下で
ある、[1]乃至[7]の何れかに記載の脂肪族ポリエ
ステルの液中結晶化方法。
【0018】[11] 結晶化に供する脂肪族ポリエス
テルプレポリマーの量が、脂肪族ポリエステルプレポリ
マーを溶解しない液体と脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーの合計重量に対して、1重量%以上80重量%以下で
ある、[1]乃至[10]の何れかに記載の脂肪族ポリ
エステルの液中結晶化方法。
【0019】[12] 結晶化に供する脂肪族ポリエス
テルプレポリマーの量が、脂肪族ポリエステルプレポリ
マーを溶解しない液体と脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーの合計重量に対して、10重量%以上80重量%以下
である、[1]乃至[10]の何れかに記載の脂肪族ポ
リエステルの液中結晶化方法。
【0020】[13] 結晶化に要する時間が、1秒間
〜180分間であることを特徴とする、[1]乃至[1
2]の何れかに記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化
方法。
【0021】[14] 結晶化に要する時間が、10分
間〜120分間であることを特徴とする、[1]乃至
[12]の何れかに記載の脂肪族ポリエステルの液中結
晶化方法。
【0022】[15] 結晶化した脂肪族ポリエステル
プレポリマーの結晶化熱が、0〜30[J/g]のもの
であることを特徴とする、[1]乃至[14]の何れか
に記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0023】[16] 結晶化した脂肪族ポリエステル
プレポリマーの結晶化熱が、0〜10[J/g]のもの
であることを特徴とする、[1]乃至[14]の何れか
に記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0024】[17] 結晶化に供する脂肪族ポリエス
テルプレポリマーのガラス転移点Tgが、20℃以上6
0℃以下のものである、[1]乃至[16]の何れかに
記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
【0025】[18] 脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーがポリ乳酸である、[1]記載の脂肪族ポリエステル
の液中結晶化方法。
【0026】[19] 脂肪族ポリエステルプレポリマ
ーが、L−乳酸とペンタエリスリトールとコハク酸を含
むものからなるスターポリマー、又はL−乳酸とトリメ
チロールプロパンとコハク酸を含むものからなるスター
ポリマーである、[1]記載の脂肪族ポリエステルの液
中結晶化方法。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて、詳細に説明する。
【0028】[脂肪族ポリエステルプレポリマー]本発
明における脂肪族ポリエステルプレポリマーとは、本発
明の結晶化を行なった後、固相重合をする為のものであ
る。触媒として有機スルホン酸系化合物を含む、重量平
均分子量が2,000〜100,000である脂肪族ヒ
ドロキシカルボン酸ユニット50%以上含有する脂肪族
ポリエステルプレポリマー(以下、プレポリマーという)
は、以下の6種類がある。
【0029】(1) 脂肪族ヒドロキシカルボン酸から
得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のホモポリマ
ー又はコポリマー又はそれらの混合物。
【0030】(2)脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と
脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸からなる脂肪族
ポリエステルとのコポリマー又はその混合物。
【0031】(3) 脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸
と多糖類のコポリマー又は混合物。
【0032】(4) 脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸
と多糖類と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸から
なる脂肪族ポリエステルとのコポリマー又はそれらの混
合物。
【0033】(5) 脂肪族ヒドロキシカルボン酸と3
個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールと2個以
上のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸及び/又は
その無水物からなるスターポリマー。
【0034】(6)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と3個
以上のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸及び/又
はその無水物と2個以上の水酸基を有する脂肪族多価ア
ルコールからなるスターポリマー。
【0035】(1)〜(6)のプレポリマーを製造する
ための脂肪族ヒドロキシカルボン酸については特に制限
はない。好適な具体例としては、乳酸の他に例えばグリ
コール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、
4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒ
ドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらのヒドロキ
シカルボン酸は単独で、または2種類以上組み合わせて
使用してもよい。また、乳酸のように分子内に不斉炭素
原子を有する場合には、D体、L体、及びそれらの等量
混合物(ラセミ体)が存在するが、得られるプレポリマ
ー重合体が結晶性を有していれば、それらの何れも使用
することができる。なかでも光学純度が95%以上、好
ましくは98%以上の発酵法で製造されるL-乳酸が特
に好ましい。
【0036】(2)及び(4)のプレポリマーを製造す
るための脂肪族二価アルコールは、特に制限されない。
好適な具体例は、例えば、エチレングリコール、ジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、プロピレン
グリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタン
ジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,
5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、
1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオー
ル、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ
る。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて
使用できる。また、分子内に不斉炭素を有する場合に
は、D体、L体及びそれらの等量混合物(ラセミ体)が
存在するが、それらの何れも使用することができる。
【0037】(2)及び(4)のプレポリマーを製造す
るための脂肪族二塩基酸は、特に制限されない。脂肪族
二塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、シュウ
酸、マロン酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二
酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸等の
脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等
の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらは、単独
で、又は、2種類以上組み合わせて使用することができ
る。また、分子内に不斉炭素原子を有する場合には、D
体、L体及びそれらの等量混合物(ラセミ体)が存在す
るが、それらの何れも使用することができる。
【0038】(3)及び(4)のプレポリマーを製造す
るための多糖類は、特に制限されない。多糖類の具体例
は、例えば、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロ
ース、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC
(カルボキシメチルセルロース)、ニトロセルロース、
セロハン、ビスコースレーヨン、キュプラ等の再生セル
ロース、ヘミセルロース、デンプン、アミロペクチン、
デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチ
ン、キチン、キトサン等及びこれらの混合物及びこれら
の誘導体が挙げられる。これらの内で特にエステル化セ
ルロースである酢酸セルロース、エーテル化セルロース
であるエチルセルロースが好ましい。多糖類の重量平均
分子量は、3,000以上が好ましく、10,000以
上がより好ましい。エステル化セルロース及びエーテル
化セルロースの置換度は0.3〜3.0であることが好
ましく、1.0〜2.8であることが好ましい。
【0039】(5)及び(6)のプレポリマーを製造す
るための2個乃至3個以上の水酸基を有する脂肪族多価
アルコールについては特に制限されない。2個乃至3個
以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールの具体例と
しては、上記の脂肪族二価アルコールのほか、例えば、
グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリ
トール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパ
ン、イノシトール等の3個以上の水酸基を有する脂肪族
多価アルコールが挙げられる。これらは、単独で、又
は、2種類以上組み合わせて使用することができる。ま
た、分子内に不斉炭素原子を有する場合には、D体、L
体及びそれらの等量混合物(ラセミ体)が存在するが、
それらの何れも使用することができる。
【0040】(5)及び(6)のプレポリマーを製造す
るための2個乃至3個以上のカルボキシル基を有する脂
肪族多塩基酸は、特に制限されない。2個乃至3個以上
のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸の具体例とし
ては、上記の脂肪族二塩基酸のほか、例えば、1,2,
3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、
1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テ
トラヒドロフラン2R,3T,4T,5C−テトラカル
ボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン
酸、4−カルボキシ−1,1−シクロヘキサンジ酢酸、
1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、(1α,
3α,5β)−1,3,5−トリメチル−1,3,5−
シクロヘキサントリカルボン酸、2,3,4,5−フラ
ンテトラカルボン酸等の環状化合物及びその無水物、ブ
タン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、meso−
ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,3,
5−ペンタントリカルボン酸、2−メチルプロパントリ
カルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、
1,1,2−エタントリカルボン酸、1,2,4−ブタ
ントリカルボン酸等の線状化合物及びその無水物といっ
た3個以上のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸が
挙げられる。3個以上のカルボキシル基を有する脂肪族
多塩基酸の中では線状化合物及びその無水物が好まし
い。これらは、単独で、又は、2種類以上組み合わせて
使用することができる。また、分子内に不斉炭素原子を
有する場合には、D体、L体及びそれらの等量混合物
(ラセミ体)が存在するが、それらの何れも使用するこ
とができる。
【0041】(1)、(5)及び(6)のプレポリマー
は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、又は、脂肪族ヒドロ
キシカルボン酸と3個以上の水酸基を有する脂肪族多価
アルコールと2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族
多塩基酸、又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸と3個以上
のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸と2個以上の
水酸基を有する脂肪族多価アルコールを脱水重縮合反応
して得られる。
【0042】また、(1)、(2)、(3)及び(4)
のプレポリマーは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を脱水
重縮合反応して脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造
する過程で、他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、又は、
脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸からなる脂肪族
ポリエステル、又は多糖類を混合又は共重合することに
より得られる。
【0043】本発明で用いるプレポリマーとして、
(1)、(5)及び(6)のプレポリマーが好ましい。
(1)のプレポリマーとして、乳酸を原料としたポリ乳
酸がより好ましく、ポリL−乳酸が特に好ましい。
(5)のプレポリマーとして、L−乳酸とペンタエリス
リトールとコハク酸からなるスターポリマー又はL−乳
酸とトリメチロールプロパンとコハク酸からなるスター
ポリマーが特に好ましい。
【0044】(5)及び(6)のプレポリマーにおい
て、3個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールと
2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族多塩基酸及び
/又はその酸無水物、及び3個以上のカルボキシル基を
有する脂肪族多塩基酸及び/又はその酸無水物と2個以
上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールの組成は次の
とおりである。すなわち、3個以上の水酸基を有する脂
肪族多価アルコール、及び3個以上のカルボキシル基を
有する脂肪族多塩基酸及び/又はその酸無水物の重量
は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が単独で完全に重合し
たと仮定した場合の重合物の重量を基準として、0.0
05〜10%、好ましくは0.01〜5%に相当するも
のであり、かつ、3個以上の水酸基を有する脂肪族多価
アルコールの水酸基と2個以上のカルボキシル基を有す
る脂肪族多塩基酸及び/又はその酸無水物のカルボキシ
ル基の当量比、及び3個以上のカルボキシル基を有する
脂肪族多塩基酸及び/又はその酸無水物のカルボキシル
基と2個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールの
水酸基の当量比が、100:50〜200、好ましくは
100:80〜120、より好ましくは100:90〜
110に相当するものである。
【0045】[触媒]本発明において、触媒として、プ
レポリマーに含まれている有機スルホン酸系化合物は、
特に制限されない。有機スルホン酸の具体例としては、
例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プ
ロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ペンタ
ンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタン
スルホン、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホ
ン酸、1ーデカンスルホン酸等の炭素数1〜10のアル
カンスルホン酸、エタンジスルホン酸、トリフルオロメ
タンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、
スルホ酢酸、タウリン、アミノメタンスルホン酸等の置
換アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トル
エンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−
キシレン−4−スルホン酸、メシチレンスルホン酸、p
−クロロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼ
ンスルホン酸、o−ニトロベンゼンスルホン酸、m−ニ
トロベンゼンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン
酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、o−ヒドロキシベ
ンゼンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン
酸、o−スルホ安息香酸等のベンゼンスルホン酸及びベ
ンゼンスルホン酸誘導体、ナフタレン−1−スルホン
酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1,5−ナフタレン
ジスルホン酸、2,5−ナフタレンジスルホン酸等のナ
フタレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸誘導体、
カンファースルホン酸、4−ヒドロキシピリジン−3−
スルホン酸等が挙げられる。又、これら有機スルホン酸
の酸無水物も使用することができる。これらの中では、
メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンス
ルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン
酸、m−キシレン−4−スルホン酸、p−クロロベンゼ
ンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸が
特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合
わせて使用することができる。
【0046】上記有機スルホン酸の種類によっては結晶
水を有するものもあり、この場合、触媒を添加する際
に、結晶水による得られる脂肪族ポリエステルの重量平
均分子量の低下を考慮しなければならない場合もある。
プレポリマーの重量平均分子量(Mw)が1,000以
下の時は結晶水を有したまま触媒を添加しても構わない
が、プレポリマーの重量平均分子量が1,000を超え
る場合は、重量平均分子量(Mw)が高くなるほど、触
媒が有する結晶水により、得られる脂肪族ポリエステル
の重量平均分子量が低下しやすくなるので予め触媒が有
する結晶水を除去してから触媒添加する方が、反応の進
行を阻害しないので好ましい。
【0047】[触媒の使用量]本発明においてプレポリ
マーを製造する際に使用する、触媒である有機スルホン
酸系化合物の量は、触媒の揮発性や酸強度等の触媒自身
の性質、反応条件を考慮して、実質的に、反応を促進さ
せることができれば特に制限されない。触媒の好ましい
使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、一般
的には、得られる脂肪族ポリエステルの0.05〜10
重量%の範囲が好ましく、0.10〜5重量%の範囲が
より好ましい。
【0048】[プレポリマーの製造方法]脱水重縮合反
応によりプレポリマーを製造する方法には、溶融重合方
法、有機溶媒を使用する溶液重合方法があり、所望の重
量平均分子量や操作の簡便性に応じて、適宜、公知の反
応方法が選択して用いられる。例えば、特開昭59−9
6123号公報記載の溶融重合方法、米国特許第5,3
10,865号、同第5,401,796号、同第5,
817,728号及び欧州特許 EP 0829503
−A号記載の溶液重合方法に準じた方法が用いられる。
また、EP−953589A2に記載されている高い光
学純度を維持する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸プレ
ポリマーを製造する方法も用いる事が出来る。
【0049】一般的に有機溶媒を使用する溶液重合方法
は、15,000以上の重量平均分子量を有するプレポ
リマーが効率的に得られる。また、乳酸を脱水重縮合す
る場合、溶液重合方法を用いると、副生するラクタイド
の析出による凝縮器部分の閉塞を防止できるという特徴
を有する。一方、有機溶媒を用いない溶融重合方法で
は、有機溶媒を留去する手間が省けるので、操作的に簡
便であるという特徴を有する。
【0050】[プレポリマーの重量平均分子量]プレポ
リマーの重量平均分子量は、2,000〜100,00
0であれば、特に制限されないが、、重合速度や有機溶
媒の使用の有無による操作の簡便性等を勘案して、反応
を効率的に行なう為には、重量平均分子量は5,000
〜20,000の範囲がより好ましい。
【0051】[プレポリマーの形態]本発明において使
用するプレポリマーは、固体状態、溶融状態、溶液状態
のいずれでもよい。固体状態では、その形状は特に限定
されるものではなく、板状、塊状、紐状、ペレット状、
粒状など使用することができる。均一な結晶化と、取り
扱いの容易さから、ペレット状、又は、粒状が好まし
い。プレポリマーをペレット状、又は、粒状に成形する
方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が用
いられる。溶融状態、溶液状態では、液と接触させる方
法は何ら限定されるものではない。例えば、脂肪族ポリ
エステル溶融液を、又は、脂肪族ポリエステルを溶媒に
溶解した脂肪族ポリエステル溶液を、水等の液体中に滴
下して固化させ結晶化させることもでき、この場合、球
状ペレットを得ることができる。ペレット形状や粒形状
は、特に限定されるものではない。ペレット形状や粒形
状は、粉砕状、チップ状、球状、円柱状、マーブル状、
タブレット状など特定の形状の必要はないが、一般に
は、球状、円柱状、又は、マーブル状が好ましい。ペレ
ット製造装置は、特に限定されるものではないが、例え
ば、サンドビック社製ストリップフォーマー、ロートフ
ォーマー、ダブルロールフィーダー、カイザー社製ロー
タリー式ドロップフォーマー、及び、ピストン式ドロッ
プフォーマー、三菱化成エンジニアリング社製ドラムク
ーラー、日本ベルディング社製スチールベルトクーラー
およびハイブリッドフォーマー等が挙げられる。
【0052】ポリ乳酸の溶融液滴発生装置と、ポリ乳酸
の溶液液滴発生装置は、特に限定されるものではない
が、それらの具体例としては、カイザー社製パスチレー
タ等が挙げられる。ペレットや粒の大きさは、特に限定
されるものではないが、製造工程におけるハンドリング
および二次成形の際のハンドリングを考慮すると、0.
1mm〜10mmが好ましく、1mm〜5mmがより好
ましい。
【0053】[液中結晶化]本明細書において、結晶化
とは、示差走査熱量計(DSC)測定(測定条件;試料
重量=約5mg、温度条件=20℃〜200℃、昇温速
度=10℃/分)を行い、測定された結晶化熱が30
[J/g]以下のものを意味する。本発明において用い
る結晶化装置は槽型装置でも塔型装置でも良く、攪拌装
置を搭載したものでもしていないものでも良いが、プレ
ポリマー同士が接触しない状態で結晶化する方が好まし
いので、攪拌装置を搭載したものの方が良い。結晶化装
置に、プレポリマーを溶解しない液体(以後、単に液体
という)、及びプレポリマーを装入する方法は特に限定
されず、液体中にプレポリマーを装入して液体と接触さ
せても、液体をプレポリマーに注いで液体と接触させる
こともできる。また、液体中にプレポリマーを装入して
液体と接触させる場合にはプレポリマーが固体状態で
も、溶融状態でも、溶媒に溶解した溶液状態でも良い。
溶融状態、溶媒に溶解した溶液状態では、液体と接触さ
せて固化した後、結晶化する。また、塔型結晶化装置を
用いる場合は、固体状プレポリマーと液体とを向流で接
触させることも並流で接触させることもできる。また、
流れている液体中に固体状プレポリマーを装入すること
もできる。液体を固体状プレポリマーに注いで接触させ
る方法は、プレポリマー固形物に液体を散布したり、プ
レポリマー固形物の充填された塔に液体を流通させるな
どの方法でもよい。
【0054】本発明の結晶化方法は、上記に従って、結
晶化装置に、液体とプレポリマーを装入し、酸性化合物
を添加した液体を結晶化温度に保持して結晶化させる。
具体的には、例えば、固体状のプレポリマーを、結晶化
温度に保持した、酸性化合物を添加した液体中に攪拌下
装入して結晶化する事が出来る。結晶化に供するプレポ
リマーの量は、特に制限されない。液体とプレポリマー
の合計重量に対する、結晶化に供するプレポリマーの量
として考えると、1重量%以上80重量%以下が好まし
い。更に好ましくは20〜80重量%である。プレポリ
マーの量が80重量%を超える範囲では融着し易くな
る。
【0055】[液体]結晶化で使用する、液体は、結晶
化温度でプレポリマーが溶解しないものであればよく、
一般的に使用される汎用溶媒を使用することができる。
水、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケ
トン類、エーテル類、エステル類が挙げられる。これら
は単一組成でもよく、混合して用いてもよい。アルコー
ルとしては例えば、メタノール、エタノール、プロパノ
ール、iso−プロパノール、ブタノール、iso−ブ
タノール、sec−ブタノール、tert−ブタノー
ル、ペンタノール、iso−ペンタノール、tert−
ペンタノール、ヘキサノール、iso−ヘキサノール、
tert−ヘキサノール、シクロヘキサノールが挙げら
れる。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、シクロヘキ
サン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−
デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカ
ン、n−テトラデカンが挙げられる。芳香族炭化水素と
しては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、
クメン、シメン、スチレン、エチルベンゼンが挙げられ
る。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンが
挙げられ、エーテルとしては、メチル−t−ブチルエー
テル、ジブチルエーテル、アニソールが挙げられ、エス
テル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチ
ル、乳酸エチル、乳酸ブチルが挙げられる。中でも、
水、若しくは水を含むものが好ましい。
【0056】[酸性化合物]本発明の結晶化において、
酸性化合物を添加した液体を使用することにより、プレ
ポリマー中の触媒(有機スルホン酸系化合物)が液体へ溶
出することを抑制、あるいは防止する効果がある。本発
明において、使用する酸性化合物は、特に制限されず、
有機酸でも、無機酸でも良いが、プレポリマーに含まれ
る触媒(有機スルホン酸系化合物)と同じ化合物である事
が好ましい。すなわち、プレポリマーに含まれている触
媒が、例えばメタンスルホン酸の場合、使用する酸性化
合物もメタンスルホン酸であることが好ましい。酸性化
合物の具体例は、有機スルホン酸系化合物があげられ、
本願明細書中の[触媒]の所に記してあるものを使用す
ることができる。
【0057】[酸性化合物の添加量]本発明において、
液体に添加する酸性化合物の量は、結晶化後のプレポリ
マーを固相重合した場合に、充分高い重量平均分子量の
脂肪族ポリエステルが得られる程度まで、プレポリマー
中に含有する触媒の溶出が抑制されれば特に制限されな
い。酸性化合物の添加量を、液体に対する酸性化合物の
重量%で表すと、0重量%より大きく、結晶化前のプレ
ポリマー中の触媒濃度以下であることが好ましい。
【0058】[結晶化温度]結晶化温度(結晶化におけ
る、プレポリマーを溶解しない液体の温度)は、使用す
る液体の凝固点以上プレポリマーの融点未満であればよ
い。しかし、温度が低すぎても結晶化に長時間を要し実
用的でなく、温度が高すぎてもプレポリマーが軟化し融
着し易くなるため好ましくない。したがって、実用的に
は10℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃
以下がより好ましい。また、プレポリマーのガラス転移
点Tg以上60℃以下も好ましい。また、融着を防止す
るためプレポリマーのガラス転移点Tg以下の温度で液
と接触させ、その後温度を上げて結晶化させてもよい。
また、接触温度は、範囲内であれば徐々に昇温してもよ
く、また徐冷してもよいが、好ましくは一定温度で保温
する。徐々に昇温する場合の昇温速度、徐冷する場合の
冷却速度は特に制限されるものではないが、好ましくは
0.1〜20[℃/分]である。
【0059】[結晶化時間]結晶化時間、すなわち液体
と接触させる時間は、プレポリマーが結晶化すればよ
く、特に制限されないが、結晶化の間にプレポリマー中
の不純物を除去することが可能なので、精製度合いや結
晶化後の乾燥のし易さ等を勘案して設定する。一般的に
は、1〜180分間が好ましく、10〜120分間が更
に好ましい。プレポリマーの重量平均分子量が1万以下
の場合、180分間以上液と接触させると、プレポリマ
ーの強度が低下する場合があるので好ましくない。例え
ば、重量平均分子量が1万のポリ乳酸は、液体が水の場
合、温度が50℃であれば30分間で結晶化する。
【0060】[固相重合]本出願明細書において、「固
相重合」なる語の概念は、反応系に存在するポリマーの
融点より低い温度で重合反応することにより分子量を増
加させる重合方法を意味する。すなわち、反応系に存在
するポリマーの固体状態を維持したままで、重合反応す
ることにより分子量を増加させる重合方法を意味する。
固相重合の反応温度は、一般的には、反応系に存在する
ポリマーの融点未満の温度、かつ、ガラス転移点Tg以
上の温度が好ましく、反応系に存在するポリマーの融点
未満の温度、かつ、100℃以上の温度がさらに好まし
い。
【0061】また、固相重合の方式は、例えば窒素ガ
ス、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガス、クリ
プトンガス等の不活性ガスや乾燥空気等を流通させる流
通ガス雰囲気下で重合反応させる方式や、減圧下または
加圧下で重合反応させる方式があるが、固相重合終了後
の脂肪族ポリエステルの分子量が、固相重合開始前の分
子量の数値以上であれば特に限定されない。減圧下また
は加圧下で重合反応を行う場合、反応系内の圧力は、重
合速度や、使用する触媒の種類及び使用量、脱水重縮合
反応の場合には反応により生成した水を除去する速度や
効率、到達分子量等を考慮して設定される。固相重合の
実施の詳細についてはEP−953589A2の記載に
準じた方法で行う。
【0062】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるもので
はない。実施例においては、脂肪族ポリエステルの典型
的な具体例であるポリ乳酸を中心に説明する。この実施
例で用いた評価方法は、以下のとおりである。
【0063】(1)重量平均分子量 得られた脂肪族ポリエステル重合体の重量平均分子量
(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
(カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)により、ポリ
スチレン標準サンプルとの比較で求めた。
【0064】(2) 黄色度(YI値) 2mm厚のプレートサンプルを作成し、これについて、
黄色度を日本工業規格JIS K−7103に従って、
SMカラーコンピューター(型式:SM−6−IS−2
B、スガ試験機(株))にて測定した。
【0065】(3)脂肪族ポリエステル中の有機スルホ
ン酸濃度 脂肪族ポリエステル中の有機スルホン酸濃度は電気伝導
度計検出器に接続された高速液体クロマトグラフィーに
より定量した。即ち、試料をクロロホルムに溶解した
後、アセトニトリル/水の混合液で触媒を抽出し、電気
伝導度計検出器に接続された高速液体クロマトグラフィ
ーにより定量した。
【0066】[実施例1] (結晶化)2000mlガラス製丸底フラスコに90%
L−乳酸1070g、メタンスルホン酸3.85gを仕
込んだ。窒素置換を行った後、徐々に昇温、減圧した。
最終的に反応温度160℃、反応圧力1.3KPaで1
5時間反応させた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量
は1万であった。このポリ乳酸を造粒機で米粒大のペレ
ットとした。50℃のメタンスルホン酸1000ppm
水溶液80gにペレット20gを装入し、60分間攪拌
した。ペレット同士の融着、破損は全く見られなかっ
た。ペレットを取り出し、室温下減圧乾燥して示差走査
熱量計で測定したところ、結晶化熱は検出されなかっ
た。ペレット中メタンスルホン酸含有量は3500pp
mであった。 (固相重合)得られた結晶化ペレットを用いて、固相重
合を行った。窒素流通下140℃で80時間反応させ、
重量平均分子量17万、YI=5のポリ乳酸を得た。重
合反応中ペレットの融着、破損、粉末化および装置内で
の閉塞は全く見られなかった。
【0067】[比較例1] (結晶化)2000mlガラス製丸底フラスコに90%
L−乳酸1070g、メタンスルホン酸3.85gを仕
込んだ。窒素置換を行った後、徐々に昇温、減圧した。
最終的に反応温度160℃、反応圧力1.3KPaで1
5時間反応させた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量
は1万であった。このポリ乳酸を造粒機で米粒大のペレ
ットとした。ペレット20gを50℃の水80gに装入
し、60分間攪拌した。ペレット同士の融着、破損は全
く見られなかった。ペレットを取り出し、室温下減圧乾
燥して示差走査熱量計で測定したところ、結晶化熱は検
出されなかった。ペレット中メタンスルホン酸含有量は
2800ppmであった。 (固相重合)得られた結晶化ペレットを用いて、固相重
合を行った。窒素流通下140℃で80時間反応させ、
重量平均分子量12万、YI=5のポリ乳酸を得た。重
合反応中ペレットの融着、破損、粉末化および装置内で
の閉塞は全く見られなかった。
【0068】[比較例2] (結晶化)2000mlガラス製丸底フラスコに90%
L−乳酸1070g、メタンスルホン酸3.85gを仕
込んだ。窒素置換を行った後、徐々に昇温、減圧した。
最終的に反応温度160℃、反応圧力1.3KPaで1
5時間反応させた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量
は1万であった。このポリ乳酸を造粒機で米粒大のペレ
ットとした。このペレットを50℃のオーブン中に入
れ、結晶化を行った。60分後でもペレットは透明であ
り、示差走査熱量計で測定したところ、結晶化熱は40
[J/g]であった。
【0069】[比較例3] (結晶化)2000mlガラス製丸底フラスコに90%
L−乳酸1070g、メタンスルホン酸3.85gを仕
込んだ。窒素置換を行った後、徐々に昇温、減圧した。
最終的に反応温度160℃、反応圧力1.3KPaで1
5時間反応させた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量
は1万であった。このポリ乳酸を造粒機で米粒大のペレ
ットとした。このペレットを60℃のオーブン中に入
れ、結晶化を行ったが、30分後ペレットは融着してい
た。
【0070】[比較例4] (結晶化)2000mlガラス製丸底フラスコに90%
L−乳酸1070g、メタンスルホン酸3.85gを仕
込んだ。窒素置換を行った後、徐々に昇温、減圧した。
最終的に反応温度160℃、反応圧力1.3KPaで1
5時間反応させた。得られたポリ乳酸の重量平均分子量
は1万であった。このポリ乳酸を造粒機で米粒大のペレ
ットとした。このペレットを100℃のオーブン中に入
れ、60分間結晶化を行った。示差走査熱量計で測定し
たところ、結晶化熱は観測されなかった。 (固相重合)得られた結晶化ペレットを用いて、固相重
合を行った。窒素流通下140℃で80時間反応さ
せ、、重量平均分子量16万、YI=35のポリ乳酸を
得た。
【0071】
【発明の効果】本発明の方法によれば、脂肪族ポリエス
テルプレポリマーの結晶化を脂肪族ポリエステルプレポ
リマーを溶解しない液体中で行なうことにより、脂肪族
ポリエステルプレポリマーを粒子同士の融着、粒子の破
損、粉末化等の問題を生ずることなく容易に結晶化する
ことができ、さらに、その後、固相重合を行なうことに
より、着色の少ない高分子量の脂肪族ポリエステルを製
造することができるものである。また、脂肪族ポリエス
テルプレポリマーの結晶化を酸性化合物を添加した、脂
肪族ポリエステルプレポリマーを溶解しない液体中で行
なうことにより、結晶化における触媒の減少を抑制する
ことができ、その後、固相重合を行なうことにより、高
分子量の脂肪族ポリエステルを効率よく製造することが
できるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小瀧 泰 福岡県大牟田市浅牟田町30 三井化学株式 会社内 (72)発明者 水津 宏 東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 三 井化学株式会 社内 (72)発明者 味岡 正伸 福岡県大牟田市浅牟田町30 三井化学株式 会社内 (72)発明者 寺戸 雄二 福岡県大牟田市浅牟田町30 三井化学株式 会社内 (72)発明者 高木 正利 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内 (72)発明者 平岡 章二 山口県玖珂郡和木町和木6−1−2 三井 化学株式会社内 (72)発明者 酒井 勝幸 山口県玖珂郡和木町和木6−1−2 三井 化学株式会社内 Fターム(参考) 4J029 AA02 AA03 AB04 AC01 AC02 AC05 BA02 BA03 BA04 BA05 BA08 BA09 BA10 BD07A BF09 BF10 CA01 CA02 CA03 CA04 CA05 CA06 CD03 EA01 EA02 EA03 EA05 FC03 FC04 FC05 FC07 FC08 FC12 FC14 FC29 JC361 KC01 KE12 KF02 KJ08

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 触媒として有機スルホン酸系化合物を含
    み、重量平均分子量が2,000〜100,000であ
    る、脂肪族ヒドロキシカルボン酸ユニット50%以上含
    有する脂肪族ポリエステルプレポリマーを、酸性化合物
    を添加した、脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解し
    ない液体と接触させることにより結晶化させることを特
    徴とする、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
  2. 【請求項2】 脂肪族ポリエステルプレポリマーが固体
    状態の脂肪族ポリエステルプレポリマーである、請求項
    1記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
  3. 【請求項3】 溶融状態の脂肪族ポリエステルプレポリ
    マーを、酸性化合物を添加した、脂肪族ポリエステルプ
    レポリマーを溶解しない液体と接触させることにより、
    固化させて結晶化させることを特徴とする、請求項1記
    載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
  4. 【請求項4】 脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶媒
    に溶解した溶液を、酸性化合物を添加した、脂肪族ポリ
    エステルプレポリマーを溶解しない液体と接触させるこ
    とにより、固化させて結晶化させることを特徴とする、
    請求項1記載の脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
  5. 【請求項5】 脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解
    しない液体が、少なくとも一部に水を含むものである、
    請求項1乃至4の何れかに記載した、脂肪族ポリエステ
    ルの液中結晶化方法。
  6. 【請求項6】 脂肪族ポリエステルプレポリマーを溶解
    しない液体が、水である、請求項1乃至4の何れかに記
    載した、脂肪族ポリエステルの液中結晶化方法。
  7. 【請求項7】 酸性化合物が、脂肪族ポリエステルプレ
    ポリマーに含まれる触媒(有機スルホン酸系化合物)と同
    じ化合物である、請求項1乃至6の何れかに記載の脂肪
    族ポリエステルの液中結晶化方法。
  8. 【請求項8】 結晶化温度が、脂肪族ポリエステルプレ
    ポリマーを溶解しない液体の凝固点以上80℃以下であ
    る、請求項1乃至7の何れかに記載した脂肪族ポリエス
    テルの液中結晶化方法。
  9. 【請求項9】 結晶化温度が、脂肪族ポリエステルプレ
    ポリマーのガラス転移点Tg以上80℃以下である、請
    求項1乃至7の何れかに記載した脂肪族ポリエステルの
    液中結晶化方法。
  10. 【請求項10】 脂肪族ポリエステルプレポリマーがポ
    リ乳酸である、請求項1記載の脂肪族ポリエステルの液
    中結晶化方法。
  11. 【請求項11】 脂肪族ポリエステルプレポリマーが、
    L−乳酸とペンタエリスリトールとコハク酸を含むもの
    からなるスターポリマー、又はL−乳酸とトリメチロー
    ルプロパンとコハク酸を含むものからなるスターポリマ
    ーである、請求項1記載の脂肪族ポリエステルの液中結
    晶化方法。
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