JP2001179506A - 複合高硬度工具 - Google Patents

複合高硬度工具

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JP2001179506A
JP2001179506A JP36581199A JP36581199A JP2001179506A JP 2001179506 A JP2001179506 A JP 2001179506A JP 36581199 A JP36581199 A JP 36581199A JP 36581199 A JP36581199 A JP 36581199A JP 2001179506 A JP2001179506 A JP 2001179506A
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cutting
tool
layer
compound layer
cbn
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JP36581199A
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English (en)
Inventor
Toshiyoshi Wakabayashi
俊嘉 若林
Tomohiro Fukaya
朋弘 深谷
Junichi Shiraishi
順一 白石
Tetsuo Nakai
哲男 中井
Hisanori Ohara
久典 大原
Haruyo Fukui
治世 福井
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切削油を使用できない過酷な切削条件下にお
いても、工具刃先の機械的な欠損や摩擦熱による熱的摩
耗等を抑え、高速、高能率、高精度の加工時条件下で、
充分な寿命を保証する複合高硬度工具を提供する。 【解決手段】 工具刃先の少なくとも切削に関与する部
分が、CBNを30〜80体積%含んだCBN焼結体1
1を基材とし、CBN焼結体11の結合材が周期律表4
a、5a、6a族元素の窒化物、酸化物、硼化物、炭化
物並びにこれらの固溶体からなる群から選択される少な
くとも1種と、アルミニウム化合物及び不可避的不純物
から構成される基材の表面に、V、Cr、Hf、Zr、
Alのいずれか1種と、窒化物、酸化物、炭化物から選
択される1種以上の元素とを主成分とする化合物層13
を被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、立方晶窒化硼素
(以下、CBNと言う)を主成分とした焼結体から成る
複合高硬度工具の改良に関するものである。詳しくは、
無潤滑切削における強度および耐摩耗性に優れた硬質耐
摩耗層から成る複合被膜を有する切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】CBNは、ダイヤモンドにつぐ高い硬度
を有する材料で、CBN焼結体は主に金属の切削工具と
して使用されている。CBN焼結体は、結合材を用いて
CBN結晶粒子を高温高圧下で焼結させて作られる。そ
して主に切削工具に使用されているCBN焼結体は次の
2種類に大別できる。 (1)CBN粒子を20〜80体積%含有し、結合材と
してTiの炭化物、窒化物、炭窒化物及びAlの化合物
を用いるもので、主に焼入鋼の切削加工に利用されてい
る。(例 特開昭53−77811号公報) (2)CBN粒子を70体積%以上含有し、結合材とし
てAl、Co金属を用いたもので、主に高硬度鋼や鋳鉄
の切削加工に利用されている。(例 特公昭52−43
846号公報)
【0003】これらのCBN焼結体の耐摩耗性を更に向
上させるため、特開平8−323506号公報には硬質
耐摩耗層を被覆する手段が開示されている。この従来技
術は、CBN焼結体の結合材が周期律表4a、5a、6
a族元素の窒化物、酸化物、硼化物、炭化物並びにこれ
らの固溶体からなる群から選択される少なくとも1種
と、アルミニウム化合物及び不可避的不純物から構成さ
れる基材の表面に、中間層、第1および第2の硬質耐摩
耗層、さらに表面層の積層膜を被膜したものである。
【0004】詳しくは中間層は、周期律表4a、5a、
6a族元素の窒化物、酸化物、炭化物およびこれらの固
溶体からなる群から選択される材料で、特に、TiC、
TiCN、TiCNOが好ましい。第1の硬質耐摩耗層
は、TiN層とAlN層とを繰り返して積層し、第2の
硬質耐摩耗層は、Al23層またはAl23とTiCN
とを2層以上積層した多層膜である。表面層は、中間層
と同様のTiNにより形成される。以上で構成される硬
質耐摩耗層でCBN焼結体を被覆することにより、被膜
の密着性が改善され、耐欠損性と耐摩耗性とを兼ね備
え、従来切削工具に比較して著しく長い寿命を有するこ
とができると説明されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、環境問題に対す
る企業の取り組みが活発化する中で、切削加工において
も廃液として処理される切削液を減らす動きが進んでい
る。又、コスト競争力強化、製品納期短縮、使用エネル
ギー削減のため、従来以上の高速高能率高精度加工が要
求されている。従来のCBN焼結体材料は、ダイヤモン
ドに匹敵する硬度と熱伝導率の良さから、切削液を使用
できない過酷な切削条件下において実用化されつつあ
る。しかしながら、工具刃先の機械的な欠損や摩擦熱に
よる熱的摩耗等により、高速、高能率、高精度加工の分
野では充分な寿命が達成できないのが現状である。又、
従来のCBN焼結体工具被膜であるTiN、TiC、T
iAlNは耐摩耗性を重視したものであり、加工初期に
被膜剥離が発生し易い高速、高能率、高精度加工の分野
では、CBN焼結体の特性以上の耐摩耗性向上の効果は
得られていなかった。本発明は、無潤滑切削条件下でも
上記の問題点を解消し充分な寿命を保証する複合高硬度
工具を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】工具刃先の少なくとも切
削に関与する部分が、CBNを30〜80体積%含んだ
CBN焼結体を基材とし、CBN焼結体の結合材が周期
律表4a、5a、6a族元素の窒化物、酸化物、硼化
物、炭化物並びにこれらの固溶体からなる群から選択さ
れる少なくとも1種と、アルミニウム化合物及び不可避
的不純物から成り、基材の表面にV、Cr、Hf、Z
r、Alのいずれか1種と、窒化物、酸化物、炭化物か
ら選択される1種以上の元素とを主成分とする化合物層
を被覆する。
【0007】化合物層で被覆されている少なくとも切削
に関与する部分、特に、被削材と接する主切刃からノー
ズコーナに伸びる切刃稜線部及びすくい面の面粗度を、
中心線平均粗さ(Ra)で、0.2μm以下に制御す
る。そして、化合物層の膜厚は、中間層、表面層の有無
に関わらず0.005〜15μmであることが好まし
い。
【0008】化合物層と基材の間に配置される中間層
は、周期律表4a、5a、6a族元素及びAl、Siの
いずれか1種と、窒化物、酸化物、炭化物から選択され
る1種以上の元素とから成り、化合物層と基材の密着性
を向上させる。又、中間層の膜厚は0.02〜5μmで
あることが好ましい。
【0009】化合物層の最表面に配置される表面層は、
周期律表4a、5a、6a族元素及びAl、Siのいず
れか1種と、窒化物、酸化物、炭化物から選択される1
種以上の元素とから成り、切削初期の耐摩耗性を向上さ
せる。又、表面層の膜厚は0.05〜5μmであること
が好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】従来の被膜は、耐摩耗性を重視し
た硬質耐摩耗層であった。これに対し本発明は、基材の
硬度に比較して柔らかい化合物層の被膜を表面上に形成
することにより、CBN焼結体表面の滑り性を飛躍的に
改善し、無潤滑切削のように過酷な条件での工具摩耗を
減らし、耐摩耗性や高温強度を向上させて工具寿命を大
幅に向上させるものである。
【0011】そして、無潤滑切削条件下で工具摩耗を抑
制するには、(1)高硬度と優れた熱伝導率を有する基
材を採用する。(2)基材と被削材との化学的親和性を
減らす。(3)基材表面が原子レベルで剥がれることに
よって自己潤滑性を持たせる。(4)基材表面の平滑度
を上げる、等である。
【0012】(1)について、本発明の基材には、CB
Nを30〜80体積%含んだCBN焼結体を用いる。こ
のCBN焼結体はCBN粒子の結合材を周期律表4a、
5a、6a族元素の窒化物、酸化物、硼化物、炭化物並
びにこれらの固溶体からなる群から選択される少なくと
も1種と、アルミニウム化合物及び不可避的不純物から
構成する。これによりダイヤモンドに匹敵する硬度を有
し、基材の弾塑性変形に被膜が追従できないことに起因
する被膜層の剥離を抑制できる。さらに、無潤滑切削の
ように過酷な条件で刃先が赤熱する高温下でも、CBN
焼結体の優れた熱伝導率によつて素早く工具ホルダー側
に放熱することができる。尚、CBNの含有量は、下限
未満であれば耐摩耗性が低下し、上限を超えると耐欠損
性が低下する。
【0013】(2)については、基材の表面に比較的柔
らかいZrN、ZrC、ZrCN、VN、VC、VC
N、CrN、HfC等の化合物層を被覆することによっ
て、構成刃先を形成する現象を削減させることができ
る。即ち、切削加工中の温度で軟化した被削材が工具の
切れ刃近傍に接触し、付着し、再び固化することによる
構成刃先は、被削材との化学的親和性の少ない化合物層
により、成長する前に脱落し切れ刃先端部の微少な欠損
を防ぐ。
【0014】(3)については、従来の耐摩耗性を重視
したTiN、TiC、TiAlN等の硬質耐摩耗層に比
べて比較的柔らかい化合物層で代替することによって、
基材表面の滑り性が飛躍的に改善され、固体潤滑性、耐
溶着性などの特性が向上する。結果として、加工初期の
被膜剥離も排除され耐摩耗性も飛躍的に向上する。
【0015】(4)については、工具刃先の少なくとも
切削に関与する部分の平滑度を面粗度Ra0.2以下に
調整することで達成される。CBN焼結体の刃付け方法
は、特に限定されない限り#600以上のダイヤモンド
砥石を用いた研削仕上げの後、回転運動を行うブラシ表
面に5〜8μmの粒子径(#2000相当)のダイヤモ
ンド遊離砥粒を塗布したものを、工具すくい面側から押
し当てゝ切刃稜線部のホーニング加工を実施するのが好
ましい。このようにして基材の表面の面粗度を中心線平
均粗さ(Ra)で、0.2μm以下に調整すれば、工具
刃先の化合物層の被覆されている被削材と接する切削に
関与する主切刃からノーズコーナに伸びる切刃稜線部及
びすくい面の面粗度は、成膜過程に不測の異常がなけれ
ば中心線平均粗さ(Ra)で、0.2μm以下に自動的
に制御される。表面粗さが0.2μmを超えると、切刃
稜線部における微少な凹凸が被削材の仕上げ面に転写さ
れるため高精度の寸法が保証されない。特に、特異なピ
ークが存在すると、そこを起点に被膜の剥離や摩耗の進
行を許すことになる。
【0016】図1に、CBN焼結体11を用いた切削工
具(インサート4)の外観図を示す。CBN焼結体11
は、通常、超硬合金から成る台金3と一体の2層構造を
成しているが、CBN焼結体11単体のインサート4で
あってもよい。このインサート4は、超硬合金から成る
工具母材1の角部に鑞付けされる。図1における角部の
CBN焼結体11は、一方にしか示されていないが、切
削可能な各角部に配置される。この切削工具は、取付け
穴2を利用して工具ホルダー(図示せず)に装着され
る。
【0017】次に、工具刃先周辺の工具用語を図2を参
照して説明する。図2(イ)は、図1の刃先を構成する
線20を直角に横断して見た、ポジティブ型の刃先の断
面図である。11はCBN焼結体を示し、15は逃げ
面、16はすくい面、17は刃先稜線部である。この刃
先稜線部17は、図1の刃先を構成する線20に沿って
ホーニング加工され、5〜30μmの断面曲率半径Rを
有する曲線に形成されている。θ1はすくい角、θ2は
逃げ角を示す。
【0018】図2(ロ)は、図1の刃先の先端を上面か
ら見た平面図である。被削材21を切込み量tにて矢印
A方向に切削するとき、18は主切刃となり、19はノ
ーズコーナと呼ばれる。刃先稜線部17やノーズコーナ
19にホーニング加工を施し鋭利な角部を丸めるのは、
切削初期の刃先の欠損を防ぐ有効な公知技術であると共
に被膜の剥離を防ぐのに有効な手段である。
【0019】図3に、CBN焼結体11を被覆する本発
明の多層膜の構造断面図を示す。多層被膜の構造は、化
合物層13は必須であって、中間層12と化合物層13
或いは化合物層13と表面層14、もしくは図3の如く
3層であることが最も好ましい。中間層12は、周期律
表4a、5a、6a族元素及びAl、Siのいずれか1
種と、窒化物、酸化物、炭化物から選択される1種以上
の元素とから成る。この中間層12は、化合物層13の
CBN焼結体11への密着性を向上させる。中間層12
の膜厚は0.02μm未満では密着性の向上が見られ
ず、5μmを超えると効果は飽和する。1〜3μmの膜
厚であれば更に好ましい。
【0020】化合物層13は、従来の耐摩耗性を重視し
た硬質耐摩耗層に比べ比較的柔らかい化合物から成り、
CBN焼結体11と被削材21の化学的親和性を減ら
せ、CBN焼結体11の表面の滑り性を飛躍的に改善す
る。そして、固体潤滑性、耐溶着性などの特性が向上す
る結果、耐摩耗性も向上する。化合物層13の膜厚は、
0.005μm未満では滑り性の改善に寄与せず、15
μmを超えると化合物層中の残留応力の影響で割れを生
じたり、中間層12との密着性が低下し剥離を起こし易
くなる。
【0021】表面層14は、、周期律表4a、5a、6
a族元素及びAl、Siのいずれか1種と、窒化物、酸
化物、炭化物から選択される1種以上の元素とから成
る。この表面層14は、切削初期の耐摩耗性を向上させ
るものであり、その膜厚は、0.05μm未満では被膜
の耐久性に乏しく、5μmを超えると化合物層13との
密着性が低下する。
【0022】(実施例)CBN焼結体11の焼結にあた
り、表1に示す4種類のCBN体積含有率と結合材の組
合わせからなる混合粉末を用意した。この混合粉末を
4.5Gpa、1300℃の超高圧高温雰囲気で20分
間焼結して、基材となるCBN焼結体11を作った。そ
して図1に示す切削工具のインサート4を形成し、ダイ
ヤモンド砥石で刃付けした後、断面曲率半径R=20μ
mのホーニング処理を施し所定の表面粗さに仕上げた。
【0023】
【表1】
【0024】出来上がったインサート4は、公知のアー
ク式イオンプレーテイング法を用いて、図4に示す成膜
装置31内に配置し、その表面にで多層膜を形成した。
中間層12と表面層14の生成には、周期律表4a、5
a、6a族元素及びAl、Siのいずれか1種と、窒化
物、酸化物、炭化物から選択される1種以上の元素とか
らなる金属ターゲット32を配置する。化合物層13の
生成には、V、Cr、Hf、Zr、Alのいずれか1種
と、窒化物、酸化物、炭化物から選択される1種以上の
元素とからなる金属33が配置される。
【0025】これら合金ターゲット32、33、の中心
で回転するテーブル35にインサート保持具36が固定
されている。先ず、そのインサート保持具36に複数の
インサート4をクランプし、真空アークの電源(図4で
は便宜的に37、38として示す)の放電電流によつて
ターゲツト材料の蒸発量を制御しながら、中間層12、
化合物層13、表面層14を被膜した。
【0026】次いで、成膜装置31内の真空度を7×1
-3Paの雰囲気とし、ついでアルゴンガスをガス導入
口39より導入し、インサート4を加熱ヒータ40を用
いて400℃まで加熱した。次に、インサート保持具3
6にバイアス電源41から−1000Vの電圧をかけて
洗浄を行った後、アルゴンガスをガス排出口42から排
気した。この後、成膜装置31内に窒素ガス、水素ガ
ス、アルゴンガス、酸素ガス、メタンガス、アセチレン
ガスのいずれか1種類あるいは数種類をガス導入口39
より導入し、成膜装置31内の圧力を2Paに保持し
た。真空アーク放電により金属ターゲット32、33、
を蒸発し、イオン化させることによつてインサート4の
表面に中間層12、化合物層13、表面層14を被膜し
た。この工程では、インサート保持具36にバイアス電
源41から−50〜−400Vの電圧を印加した。
【0027】工具摩耗を仔細に観察すると、切り屑排出
時に工具すくい面と切り屑が接触することによるクレー
ター摩耗と加工中の被削材と工具逃げ面が接触すること
による逃げ面摩耗の進展から工具寿命に至ることが判
る。図5で、インサートの刃先稜線部周辺に生ずる工具
摩耗の発生個所と態様を説明する。インサート4の刃先
稜線部17を境に、すくい面16に生ずるのがクレータ
摩耗である。主切刃側の逃げ面15aに生ずるのは逃げ
面摩耗であり、その大きさをVbで表わす。副切刃側の
逃げ面15bに生ずるのは境界摩耗である。ノーズコー
ナー19の直下に生ずるのはノーズ摩耗である。
【0028】表2〜5に示す40種類の試料に対し、次
の切削条件にて加工時間10分、20分、30分後の面
摩耗Vb(mm)を対象に評価した結果について説明す
る。 被側材 焼入鋼 SUJ2(焼入硬度 HRC6
0) φ50×150丸棒外周切削 工具形状 ISO規格CNMA120408
(ノーズコーナ19のr=0.8mm) 切削速度 150mm/min 切込み量 0.2mm 送り量 0.1mm/rev
【0029】先ず、表1のA種のCBN焼結体から成る
基材に中間層、化合物層、表面層を被覆した表2に示す
試料No1〜19を対象に、逃げ面への耐摩耗性寄与度
を評価した。工具すくい面の面粗度は、試料1をRa
0.4、その他は全てRa0.15に整えた。尚、☆を
付す試料は、本発明の構成範囲外の比較例である。
【0030】
【表2】
【0031】表2の結果を考察すると、ZrNの化合物
層を20μm被覆した単層の試料6が、加工時間30分
後の逃げ面摩耗は最も大きく、次に、比較例である化合
物層の被膜されていない試料1も耐摩耗性に劣る。化合
物層の厚さは5μm近傍が好適である。中間層及び表面
層は、0.05〜5μmの範囲の被膜厚さが好適である
ことを示している。
【0032】次に、表3に示す資料No20〜24によ
つて、工具すくい面の面粗度が逃げ面摩耗に及ぼす影響
について調べた。尚、表3中のCBN焼結体から成る基
材は、表1のA種のCBN焼結体に化合物相であるZr
Nを5μm被覆したインサートを用いた。
【0033】
【表3】
【0034】表3の結果を考察すると、すくい面の面粗
度に関し、本発明の推奨値を超える比較例である試料2
0、21であっても逃げ面摩耗に与える影響は鈍感であ
ることが判った。しかし、後述する表6の被削材の仕上
げ面粗さに与える影響は無視できない。
【0035】さらに、基材のCBN焼結体に表1のA種
を用いた表4に示す試料No25〜34によって、従来
の化合物層であるTiN、TiAlN、TiCと本発明
の化合物層の耐摩耗性を比較した。尚、工具すくい面の
面粗度は、Ra0.15に揃えた。
【0036】
【表4】
【0037】表4の結果を考察すると、化合物層の組成
を本発明の推奨する範囲で変更しても逃げ面摩耗量は安
定していることが判る。又、本発明の化合物層より比較
的硬質の被膜である従来の化合物層が被膜される試料は
厚みが同等であっても、比較的早期に被膜の脱落が認め
られるが、本発明の化合物層のように比較的柔らかい被
膜である場合は、基材表面の滑り性が飛躍的に改善さ
れ、固体潤滑性、耐溶着性などの特性が向上することが
認められた。
【0038】そして、表1に示すCBN体積含有率を
B、C、D種に変更した試料No35〜40について、
化合物層の有無による耐摩耗性への寄与度について調べ
た結果を表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】表5の結果を考察すると、いずれの種類の
CBN焼結体の基材であっても、化合物層を被膜するこ
とによって、耐摩耗性が約25%改善されることが判
る。又、CBNの含有量が30〜80体積%の範囲にあ
れば、いずれの基材であっても同等の耐摩耗性を有し、
充分な耐欠損性を有することが判る。
【0041】以上は、インサート自身の刃先稜線部周辺
の摩耗について考察したが、次は、図5に示した副切刃
側の逃げ面15bに生ずる境界摩耗の進行によって、被
削材の仕上げ面がどんなダメージを受けるか調べた。表
6の試料No41〜46に対し、次の切削条件にて理論
(幾何学的)面粗さ(Ra)が0.1であるべき仕上げ
面が、境界摩耗によってRa0.4を超えるまでの切削
距離(Km)を評価した。尚、表6の面粗度Raの測定
は、すくい面の刃先近傍で行うため測定距離が取れず、
カットオフ値0.8mm、測定長さ0.8mmで行っ
た。 被削材 浸炭材 SCM420(高周波焼入
硬度 HRC60)φ50×150丸棒外周切削 工具形状 ISO規格CNMA120408
(ノーズコーナ19のr=0.8mm) 切削速度 180m/min 切込み量 0.15mm 送り量 0.05mm/rev
【0042】ここで、理論面粗さの概念を図6によって
説明する。ノーズコーナrのインサート4によって被削
材21を切削するとき、1回転当たりの送り量をf、面
粗さの最大高さRmax(μm)は、次の理論式で表わ
せる。 Rmax=(f2/8×r)×1000 上式に先の切削条件を代入すればRmax=0.39μ
mとなる。これを中心線平均粗さRaに換算するには、
Ra=Rmax×0.25とすればよいから、Ra≒
0.1μmとなる。
【0043】
【表6】
【0044】表6の結果を考察すると、化合物層が被覆
されてなく、かつ工具すくい面の面粗度も本発明の構成
範囲外にある試料46が最も早期に限界面粗度を超え、
中間層、化合物層、表面層が正しく被覆されていても、
工具すくい面の面粗度が本発明の推奨値を超える試料4
4、45は、境界摩耗の進展が速く被削材の仕上げ面を
傷めることが判る。
【0045】
【発明の効果】本発明は、切削油を使用できない過酷な
切削条件下においても、工具刃先の機械的な欠損や摩擦
熱による熱的摩耗を抑えるために、工具刃先の少なくと
も切削に関与する部分に、CBNを30〜80体積%含
んだCBN焼結体の結合材が周期律表4a、5a、6a
族元素の窒化物、酸化物、硼化物、炭化物並びにこれら
の固溶体からなる群から選択される少なくとも1種と、
アルミニウム化合物及び不可避的不純物から構成される
基材を配置し、その表面に、V、Cr、Hf、Zr、A
lのいずれか1種と、窒化物、酸化物、炭化物から選択
される1種以上の元素とを主成分とする比較的柔らかい
化合物層を被覆したから、加工初期に被膜剥離が発生し
易い高速、高精度加工においても、CBN焼結体の特性
以上の耐摩耗性の向上された長寿命の複合高硬度工具を
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のCBN焼結体を用いた切削工具の外観
図である。
【図2】本発明において使用する工具用語の説明図であ
る。
【図3】本発明のCBN焼結体を被覆する多層膜の構造
断面図である。
【図4】本発明の成膜装置の構造断面図である。
【図5】本発明において使用する刃先稜線部周辺の工具
摩耗の発生個所と態様の説明図である。
【図6】本発明において使用する理論面粗さの概念の説
明図である。
【符号の説明】
1 工具母材 2 取付け穴 3 台金 4 インサート 11 CBN焼結体 12 中間層 13 化合物層 14 表面層 15 逃げ面 16 すくい面 17 刃先稜線部 18 主切刃 19 ノーズコーナ 20 刃先を構成する線 21 被削材 31 成膜装置 32、33 金属ターゲット 35 テーブル 36 インサート保持具 37、38 真空アークの電源 39 ガス導入口 40 加熱ヒータ 41 バイアス電源 42 ガス排出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 14/06 C23C 14/32 Z // C23C 14/32 C04B 35/58 103H (72)発明者 白石 順一 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 中井 哲男 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 大原 久典 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 福井 治世 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 Fターム(参考) 3C046 FF11 FF13 FF17 FF25 FF32 FF35 FF42 FF43 FF50 FF51 HH06 HH08 4G001 BA34 BB34 BC72 BD12 BD13 4K029 AA04 BA31 BA35 BA54 BA56 BA60 BB02 BC02 BD05 CA03 DD06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】工具刃先の少なくとも切削に関与する部分
    が、CBNを30〜80体積%含んだCBN焼結体を基
    材とし、前記CBN焼結体のCBN粒子の結合材が周期
    律表4a、5a、6a族元素の窒化物、酸化物、硼化
    物、炭化物並びにこれらの固溶体からなる群から選択さ
    れる少なくとも1種と、アルミニウム化合物及び不可避
    的不純物から成り、前記基材の表面にV、Cr、Hf、
    Zr、Alのいずれか1種と、窒化物、酸化物、炭化物
    から選択される1種以上の元素とを主成分とする化合物
    層で被覆されていることを特徴とする複合高硬度工具。
  2. 【請求項2】前記化合物層で被覆されている少なくとも
    切削に関与する部分の面粗度(Ra)が、0.2μm以
    下であることを特徴とする請求項1に記載の複合高硬度
    工具。
  3. 【請求項3】前記化合物層の膜厚が、0.005〜15
    μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合高硬
    度工具。
  4. 【請求項4】前記化合物層と基材の間に、周期律表4
    a、5a、6a族元素及びAl、Siのいずれか1種
    と、窒化物、酸化物、炭化物から選択される1種以上の
    元素とからなる中間層を有することを特徴とする請求項
    1に記載の複合高硬度工具。
  5. 【請求項5】前記中間層の膜厚が0.02〜5μmであ
    ることを特徴とする請求項4に記載の複合高硬度工具。
  6. 【請求項6】前記化合物層の最表面に、周期律表4a、
    5a、6a族元素及びAl、Siのいずれか1種と、窒
    化物、酸化物、炭化物から選択される1種以上の元素と
    からなる表面層を有することを特徴とする請求項1に記
    載の複合高硬度工具。
  7. 【請求項7】前記表面層の膜厚が0.05〜5μmであ
    ることを特徴とする請求項6に記載の複合高硬度工具。
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