JP2001167890A - 有機発光素子と有機発光ディスプレイパネル及びそれらの製造方法 - Google Patents

有機発光素子と有機発光ディスプレイパネル及びそれらの製造方法

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JP2001167890A
JP2001167890A JP34713999A JP34713999A JP2001167890A JP 2001167890 A JP2001167890 A JP 2001167890A JP 34713999 A JP34713999 A JP 34713999A JP 34713999 A JP34713999 A JP 34713999A JP 2001167890 A JP2001167890 A JP 2001167890A
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carbon film
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organic
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JP34713999A
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Akira Gyotoku
明 行徳
Takahiro Komatsu
隆宏 小松
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、陽極の一部とした炭素膜の最適化
を図ること及び隔壁によって電極を分離する構成を取る
有機発光ディスプレイパネルにおいて、性能を損なうこ
となく、より高い特性を維持したままでその製造過程の
簡略化を図ることにあり、発光特性が向上した有機発光
素子と有機ディスプレイパネル及びそれらの製造方法を
提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明は、陰極と、有機膜と、陽極と、
前記有機膜と前記陽極間に形成された炭素膜によって構
成された有機発光素子であって、前記炭素膜のラマン分
光分析による測定結果が、1550cm-1付近と135
0cm-1付近にピークを持つラマンスペクトルを示し、
このラマンスペクトルを2成分のガウス関数を用いて近
似を行った場合、高波数側の面積強度に対する低波数側
の面積強度の相対強度の比が1.0以上3.0以下であ
る構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機材料に電流を
注入して発光を得る現象(有機エレクトロルミネッセン
ス)を利用して、種々のディスプレイ装置、バックライ
トやセンサ等の光源、若しくは光通信機器に使用される
有機発光素子等に係り、特にマトリックス状に配置した
画素によって表示を行う有機発光ディスプレイパネル及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1987年にコダック社のC.W.Ta
ngらにより、有機材料を正孔輸送層と発光層の2層に
分けた機能分離型の積層構造を有する有機発光素子が提
案され、10V以下の低電圧にもかかわらず1000c
d/m2以上の高い発光輝度が得られることが明らかと
なった〔C.W.Tang and S.A.Vans
lyke:Appl.Phys.Lett,51(19
87)913等参照〕。これ以降、有機発光素子が俄然
注目され始め、現在も同様な機能分離型の積層構造を有
する有機発光素子についての研究が盛んに行われて、一
部実用化され始めてきた。
【0003】ここで、従来の有機発光素子について図7
を用いて説明する。図7は従来の有機発光素子の構造を
示す要部断面図である。図7において、1は基板、2は
ITO等の透明な導電性膜からなる陽極(以下、ITO
膜と言うことがある。)、4は正孔輸送層、5は発光
層、7は陰極である。
【0004】図7に示したように従来の有機発光素子
は、ガラス等の透明又は半透明な基板1と、基板1上に
スパッタリング法や抵抗加熱蒸着法等により形成された
ITO等の透明な導電性膜からなる陽極2と、陽極2上
に抵抗加熱蒸着法等により形成されたN,N’−ジフェ
ニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,
1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(以下、TPD
と略称する。)等からなる正孔輸送層4と、正孔輸送層
4上に抵抗加熱蒸着法等により形成された8−Hydr
oxyquinoline Aluminum(以下、
Alq3と略称する。)等からなる発光層5と、発光層
5上に抵抗加熱蒸着法等により形成されたAlLi等の
金属膜からなる陰極7とを備えている。
【0005】また、図7に示した有機発光素子において
は、有機層6が正孔輸送層4と発光層5から構成されて
いる。
【0006】上記構成を有する有機発光素子の陽極2を
プラス極として、また陰極7をマイナス極として直流電
圧又は直流電流を印加すると、陽極2から正孔輸送層4
を介して発光層5に正孔が注入され、陰極7から発光層
5に電子が注入される。発光層5では正孔と電子の再結
合が生じ、これに伴って生成される励起子が励起状態か
ら基底状態へ移行する際に発光現象が起こる。また、有
機層6を構成する層構造や発光層5に用いる材料を変え
ることによって発光波長を変え、RGBの3色を表現す
ることができる。
【0007】このような構造を有した有機発光素子の発
光特性や信頼性を向上させるため、これまで主に以下の
改善が行われてきた。
【0008】1)発光層や正孔輸送層等の有機薄膜層の
構成やこれに用いる有機材料の改良。
【0009】2)正孔注入電極、電子注入電極に用いる
材料の改良。
【0010】例えば、1)については、第41回応用物
理学関係連合講演会講演予稿集記載のBe−ベンゾキノ
リノール錯体を発光材料に用いての高効率化、第47回
高分子学会年次大会講演予稿集に記載のトリフェニルア
ミンを多量体化することでの高寿命化等が挙げられる。
【0011】2)については、発光層へ電子の注入が容
易となるように電子注入電極と発光層との障壁を低くす
ることを目的としたLiFの提案(L.S.Hung
他、Appl.Phys.Lett.,70、152、
1997)、また、陽極側からの正孔注入を改善する試
みとして、銅フタロシアニン(CuPc)やスターバー
スト型アミン系材料を陽極上にバッファー層として導入
することで、駆動電圧を低減し効率を向上させている。
銅フタロシアニンやスターバースト型アミン材料につい
ての詳細はそれぞれ、S.A.Vanslyke他、A
ppl.Phys.Lett.,69、2160(19
96)、Y.Shirota他、Appl.Phys.
Lett.,65、807(1994)に記載されてい
る。
【0012】この様に、効率や信頼性等の諸特性の改善
を目的としたこれまでの有機発光素子の開発は、主とし
て、材料の視点から行われてきた。本願発明者らは、こ
の流れに沿った開発以外にも様々な観点、特に陽極界面
に着目した開発を行った結果、陽極と有機膜のと界面で
起きる劣化がダークスポットと呼ばれる未発光部の発生
や発光効率、更には半減期寿命等に著しい影響を与える
ことを見出し、その対策として、炭素膜を陽極の一部と
した構成が非常に効果的であることを見つけ出した。特
開平8−31573号公報、第43回応用物理学会学術
講演会講演予稿集P1122等で開示してきたように、
炭素膜によってこれらダークスポットや発光効率、半減
期寿命等の問題を改善することができ、有機発光素子の
品質を著しく向上させることが可能となった。また、炭
素膜を用いた同様な効果については特開平7−1304
68号公報にも開示されている。この様に、陽極の一部
を炭素膜とすることで有機発光素子の特性を向上させる
ことが明らかとなったが、炭素膜の効果については不明
な点も多く、最適な炭素膜についても明らかにされてい
なかった。我々は、炭素膜について更に詳細に検討した
結果、有機発光素子おける炭素膜の要求性能を把握し、
最適な炭素膜とはどのようなものであるのかを見つけ出
すと共に、有機発光素子を用いたディスプレイパネルに
て、炭素膜を適用させるために必要な実用上の構成につ
いても様々な新たな知見を得ることができた。
【0013】以下、炭素膜を用いた有機発光ディスプレ
イパネルを作製する上での具体的課題について、図8を
参照しながら説明する。
【0014】図8(a)は隔壁を用いて陰極を分離し、
ドットマトリックスを形成した有機発光ディスプレイパ
ネルの概略部分の斜視図を示しており、同図(b)がA
−A’部分に沿って切断した場合の断面図、同図(c)
がB−B’部分に沿って切断した場合の断面図である。
1は基板、2はITO等の透明な導電性膜からなる陽
極、4は正孔輸送層、5は発光層、7は陰極、8は隔壁
である。
【0015】図8(b)で示すパターニングされたIT
O膜2上に炭素膜を配し陽極として構成するには、パタ
ーニングされたITO膜2上にのみ炭素膜を形成する構
成と、ITO膜2上だけでなく、パターニングされたI
TO膜2の間隙を含めた全面に炭素膜を形成する構成の
二つがある。
【0016】しかしながら、前者の構成を得るための方
法としては、パターニングする前のITO膜2上の全面
に炭素膜を形成し、フォトリソグラフィーを用いてIT
O膜及び炭素膜を同時にパターニングする方法や、炭素
膜を形成する時にメタルマスクを用いて、パターニング
されたITO膜2上にのみ膜を形成する方法がある。有
機発光素子は半導体接合に基づいた発光機構を取るので
接合界面の清浄度は強く求められ、従って、炭素膜を形
成した後にフォトリソグラフィーの工程を取ることは特
性面からも好ましくなく、しかも炭素膜の付着力は一般
に強くないため、炭素膜を形成した後にフォトリソグラ
フィー工程を通せば、剥離等の問題を引き起こす。ま
た、数百μm程度の微細パターニングされたITO膜2
上にのみ炭素膜を形成するために、メタルマスクを用
い、これを微細パターニングされたITO膜2と真空プ
ロセス装置内で位置合わせする事は工程的にも煩雑とな
り、更にITO膜は透明であるので、位置合わせはなお
のこと困難となる。
【0017】従って、ITO膜2上だけでなく、パター
ニングされたITO膜2の間隙を含めた全面に炭素膜を
形成する構成にした方が工程的にも簡単で、特性的にも
好ましいが、その場合、陽極間の絶縁性を保たなければ
ならない。
【0018】一方、図8(c)で示す隔壁8で挟まれた
個々の画素となる有機発光素子は、陰極7よりも有機膜
6の幅を広くし、この有機膜6を介することで陰極7と
陽極(ITO膜)2との絶縁を取らなければ、有機膜6
に電流が流れず発光しない。ところが、有機発光素子を
作製するために用いる蒸着法は、高真空で作製するため
にミーンフリーパスが長く、斜め蒸着成分が少ない。ま
た、スパッタリング法等と異なり、成膜条件による斜め
蒸着成分の制御は困難である。従って、有機膜6を隔壁
8の根元近くまで形成させ、絶縁が取れるほど陰極7の
幅よりも広くすることは困難であり、陽極(ITO膜)
2と陰極7の絶縁性を確保することは難しい。これを改
善する方法としては、特開平9−330792号公報に
開示されているように、幅の広いポリイミドやSiO2
等の絶縁膜上に隔壁を形成する方法が取られているが、
パターニングが2回以上必要となり工数的にも多く、歩
留まりも低下してしまう。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】上述した様に、従来の
有機発光素子や有機発光ディスプレイパネルにおける様
々な課題・問題点をまとめると以下に示す3つの内容と
なる。
【0020】1)炭素膜を陽極の一部とした有機発光素
子及び有機発光ディスプレイパネルの場合。
【0021】有機発光素子の特性を最も高める炭素膜
の構造は不明。
【0022】陽極間の絶縁性を確保すると共に、工数
的にも簡単で優れた素子性能を有する有機発光ディスプ
レイパネルを得るために必要な炭素膜の特性は不明。
【0023】2)隔壁によって電極を分離した構造を取
る有機発光ディスプレイパネルの場合。
【0024】陽極と陰極間の絶縁性が高く優れた性能
を持ち、工数も少なく簡単な構造を有した有機発光ディ
スプレイパネルは未だ提案されていない。
【0025】本発明において解決すべき課題は、陽極の
一部とした炭素膜の最適化を図ること及び隔壁によって
電極を分離する構成を取る有機発光ディスプレイパネル
において、性能を損なうことなく、より高い特性を維持
したままでその製造過程の簡略化を図ることにあり、発
光特性が向上した有機発光素子と有機ディスプレイパネ
ル及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する
ために本発明は、基板と、基板上に陽極と有機層と陰極
とを備えた積層構造体であって、陽極の少なくとも一部
分が炭素膜によって構成され、炭素膜のラマン分光分析
による測定結果が、1550cm-1付近と1350cm
-1付近にピークを持つラマンスペクトルを示し、このラ
マンスペクトルを2成分のガウス関数を用いて近似を行
った場合、高波側の面積強度に対する低波側の面積強度
の相対強度の比が1.0以上3.0以下であることを特
徴とする。
【0027】このような特性を有した炭素膜を陽極の一
部に用いることで、有機発光素子にとっての炭素膜が好
ましい特性となり、信頼性が高く、発光効率の高い有機
発光素子を得ることができる。
【0028】また、その製造方法は、炭素膜を形成する
に当ってDCスパッタリング法又はDCマグネトロンス
パッタリング法を用いて形成する工程を含むことを特徴
とする。このような方法で炭素膜を作製することは、有
機発光素子にとって好ましい表面状態、比抵抗となり、
特性向上が図られる。
【0029】上記の課題を解決するために本発明は、
基板と、基板上に個々電気的に分離されたストライプ状
の陰極と有機膜と個々電気的に分離されたストライプ状
の陽極によって構成された画像表示配列を有している有
機発光ディスプレイパネルであって、陽極の少なくとも
一部分が炭素膜により構成され、その炭素膜の比抵抗値
が、100Ω・cmより高い絶縁性を有することを特徴
とする。
【0030】このような特性を有した炭素膜を用いるこ
とで、基板全面に炭素膜を形成しても、電気的に分離さ
れた陽極間の絶縁性を損なうことなく優れた性能を得る
ことができ、陽極上にのみ炭素膜を形成する場合と比べ
て製造過程を非常に簡略化できる。
【0031】また、その製造方法は、炭素膜を形成する
に当ってDCスパッタリング又はDCマグネトロンスパ
ッタリングを用いて形成する工程を含むことを特徴とす
る。このような方法で炭素膜を作製することは、RFス
パッタリング法やRFマグネトロンスパッタリング法で
形成する場合に比べて簡単に膜の比抵抗を制御すること
ができ、容易に特性向上が図られる。
【0032】上記の課題を解決するために本発明は、
光透過性の基板の上に、光透過性の第1の電極を形成す
るとともにこの第1の電極の一部を露出させる絶縁性の
隔壁を第1の電極よりも上に突き出る層厚として形成
し、第1の電極及び隔壁の上に、有機膜を形成するとと
もにこの有機膜の上に第2の電極を形成する有機発光デ
ィスプレイパネルであって、前記第1電極と前記有機膜
の間に炭素膜を配した構造を持つとともにこの炭素膜が
有機膜を介してその上に形成される前記第2の電極膜よ
りもこの絶縁性の隔壁側に伸長して、隔壁によって規制
される方向の幅が第2電極よりも広くなることを特徴と
する。
【0033】このような構成であれば、例え、有機膜の
幅が陰極より狭くても、炭素膜によって陰極と陽極の短
絡を防ぐことができ、しかも、炭素膜を形成するために
用いるスパッタリング法は、有機膜や陰極を形成するた
めに用いる蒸着法に比べて根本的なミーンフリーパスが
短いため、成膜時のガス圧を制御するだけで隔壁の根元
近くまで容易に形成できる。そのため、隔壁に何らかの
工夫をすること無く簡単な製造過程によって、陰極と陽
極間に高い絶縁性を得ることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、陰極と有機膜と少なくとも一部分が炭素膜よりなる
陽極によって構成された有機発光素子において、前記炭
素膜のラマン分光分析による測定結果が、1550cm
-1付近と1350cm-1付近にピークを持つラマンスペ
クトルを示し、このラマンスペクトルを2成分のガウス
関数を用いて近似を行った場合、高波側の面積強度に対
する低波側の面積強度の相対強度の比が1.0以上3.
0以下であることで、高い発光効率が得られるという作
用を有する。
【0035】本発明の請求項2に記載の発明は、請求項
1に記載の有機発光素子の製造方法であって、陽極の一
部分となる炭素膜を形成する方法として、DCマグネト
ロンスパッタ法又はDCスパッタ法用いることで、目的
のラマンスペクトルを有した構造を容易に得ることがで
きるという作用を有する。
【0036】本発明の請求項3に記載の発明は、個々電
気的に分離されたストライプ状の陰極と有機膜と個々電
気的に分離されたストライプ状の陽極によって構成され
た画像表示配列を有している有機発光ディスプレイパネ
ルであって、前記陽極の少なくとも一部分が炭素膜によ
り構成され、その炭素膜の比抵抗値が、100Ω・cm
より高い絶縁性を有することで、簡単な構成で陽極間の
絶縁性が高いという作用を有する。
【0037】本発明の請求項4に記載の発明は、請求項
3記載の有機発光ディスプレイパネルを製造する方法で
あって、陽極の一部分となる炭素膜を形成する方法とし
て、DCマグネトロンスパッタ法又はDCスパッタ法用
いることで、目的の比抵抗値を容易に得ることができる
という作用を有する。
【0038】本発明の請求項5に記載の発明は、光透過
性の基板の上に、光透過性の第1の電極を形成するとと
もにこの第1の電極の一部を露出させる絶縁性の隔壁を
第1の電極よりも上に突き出る層厚として形成し、第1
の電極及び隔壁の上に、有機膜を形成するとともにこの
有機膜の上に第2の電極を形成する有機発光ディスプレ
イパネルであって、前記第1電極と前記有機膜の間に炭
素膜を配した構造を持つとともにこの炭素膜が有機膜を
介してその上に形成される前記第2の電極膜よりもこの
絶縁性の隔壁側に伸長して、隔壁によって規制される方
向の幅が第2電極よりも広くすることで、第1電極と第
2電極間の絶縁性を高めるという作用を有する。
【0039】本発明の請求項6記載の発明は、前記請求
項5記載の有機発光ディスプレイパネルであって、第1
電極と有機膜との間の炭素膜が、ラマン分光分析による
測定結果が、1550cm-1付近と1350cm-1付近
にピークを持つラマンスペクトルを示し、このラマンス
ペクトルを2成分のガウス関数を用いて近似を行った場
合、高波側の面積強度に対する低波側の面積強度の相対
強度の比が1.0以上3.0以下である及び/又は比抵
抗値が、100Ω・cmより高い絶縁性を有すること
で、発光効率と陽極と陰極間の絶縁性を高めるという作
用を有する。
【0040】本発明の請求項7記載の発明は、請求項5
または6記載の有機発光ディスプレイパネルを製造する
方法であって、第1電極上に形成する炭素膜を形成する
方法として、DCマグネトロンスパッタ法又はDCスパ
ッタ法を用いることで、目的のラマンスペクトル及び/
又は比抵抗値を容易に得ることができるという作用を有
する。
【0041】請求項8記載の発明は、陰極と、有機膜
と、陽極と、前記有機膜と前記陽極間に形成された炭素
膜によって構成された有機発光素子であって、前記炭素
膜のラマン分光分析による測定結果が、1550cm-1
付近と1350cm-1付近にピークを持つラマンスペク
トルを示し、このラマンスペクトルを2成分のガウス関
数を用いて近似を行った場合、高波数側の面積強度に対
する低波数側の面積強度の相対強度の比が1.0以上
3.0以下であることを特徴とする有機発光素子であっ
て、高い発光効率が得られるという作用を有する。
【0042】上記請求項に記載の基板としては、透明又
は半透明なガラス、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)、ポリカーボネート、非晶質ポリオレフィン等が用
いられる。また、基板はこれらの材料を薄膜とした可撓
性を有するフレキシブル基板であっても良い。
【0043】陽極としては、アルミニウム、バナジウ
ム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、金、銀、
白金、パラジウム、炭素等、または、それらの合金が挙
げられ、さらに、ITO、ATO(SbをドープしたS
nO2)、AZO(AlをドープしたZnO)に代表さ
れる酸化インジウム、酸化スズ等の酸化金属も挙げられ
る、このように、正孔を容易に注入できるような大きな
仕事関数を持つ導電性材料が用いられ、さらに、これに
積層される炭素膜で構成される。
【0044】また、炭素としては、その純度が、好まし
くは90%以上であり、より好ましくは99%以上であ
る。そして、陽極を構成する正孔を容易に注入できるよ
うな大きな仕事関数を持つ導電性材料と、これに積層さ
れる炭素の組み合わせとしては、透明又は半透明である
機能と正孔を容易に注入できる機能を併せ持つと言う理
由で、ITOと炭素、ATOと炭素等に代表される、酸
化インジウム、酸化スズ等の酸化金属と炭素の組み合わ
せが好ましい。
【0045】陽極は、少なくとも一部分が、このような
炭素で成膜された炭素膜よりなるものであり、この炭素
膜がラマン分光分析によって測定した結果、1550c
-1付近と1350cm-1付近にピークを持つラマンス
ペクトルを示し、このラマンスペクトルを2成分のガウ
ス関数を用いて近似を行った場合、高波側の面積強度に
対する低波側の面積強度の相対強度の比が1.0以上
3.0以下になっていることである。
【0046】なお、本発明においては、構成の説明を簡
単にする上で、炭素膜を陽極の一部と扱う事が多いが、
炭素膜の定義はこれに限定されるものではなく、その定
義は、上述した正孔を容易に注入できるような大きな仕
事関数を持つ導電性材料を陽極とし、これに積層される
炭素膜をバッファ層、或いは、中間層としても、何ら差
し支えない。
【0047】また、有機薄膜層は、発光層のみの単層構
造の他に、正孔輸送層と発光層又は発光層と電子輸送層
の2層構造や、正孔輸送層と発光層と電子輸送層の3層
構造のいずれの構造でもよい。但し、このような2層構
造又は3層構造の場合には、正孔輸送層と陽極が、又は
電子輸送層と陰極が接するように積層して形成される。
【0048】また、発光層としては、可視領域で蛍光特
性を有し、かつ成膜性の良い蛍光体からなるものが好ま
しく、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeB
2)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチ
ル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジア
ゾール、4,4’−ビス(5,7−ベンチル−2−ベン
ゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス〔5,7
−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサ
ゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−
ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,
5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベ
ンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7
−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサ
ゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビ
ス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェ
ン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフ
ェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−
2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾ
オキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビ
ニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオ
キサゾール系、2,2’−(p−フェニレンジビニレ
ン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、
2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニ
ル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カ
ルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベ
ンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤や、トリス(8−キ
ノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)
マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノー
ル)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)ア
ルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)イン
ジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アル
ミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−ク
ロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ
−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛(「)−
ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等
の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピ
ンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物
や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、
1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビ
ス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼ
ン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、
1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4
−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等の
スチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチ
ルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチ
リル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)
ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリ
ル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)
ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニ
ル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体や、
ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジ
アゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタ
ジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系
誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体等が用いられ
る。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コ
ロネン等も用いられる。
【0049】また、正孔輸送層としては、正孔移動度が
高く、透明で成膜性の良いものが好ましくTPDの他
に、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロ
シアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニ
ンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス
{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキ
サン、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミ
ン、N,N,N’,N’−テトラキス(P−トリル)−
P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリ
ルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミ
ノ)−2−2’−ジメチルトリフェニルメタン、N,
N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノ
ビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−m
−トリル−4,N,N−ジフェニル−N,N’−ビス
(3−メチルフェニル)−1,1’−4,4’−ジアミ
ン、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ
ール等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルア
ミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4’
−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベ
ン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オ
キサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリ
アリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラ
ゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニー
ルアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキ
サゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フ
ルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘
導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オ
リゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリ
ディン系化合物や、ポリ3−メチルチオフェン等の有機
材料が用いられる。
【0050】また、ポリカーボネート等の高分子中に低
分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分
散系の正孔輸送層も用いられる。
【0051】また、電子輸送層としては、1,3−ビス
(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサ
ジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のジョキサジ
アゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェ
ニルキノン誘導体等が用いられる。
【0052】また、陰極としては、Al、In、Mg、
Ti等の金属や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等の
Mg合金や、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−
Ba合金等のAl合金、LiO2/AlやLiF/Al
等の積層膜が用いられる。
【0053】以下、本発明の実施の一形態について図面
に基づいて説明する。
【0054】(実施の形態1)図1は、本発明の一実施
の形態における有機発光素子の構造を示す要部断面図で
ある。図1において、基板1、ITO膜2、陽極3、正
孔輸送層4、発光層5、有機膜6、及び陰極7は図7で
示した従来の技術と同様のものであるので、同一の符号
を付して説明を省略する。
【0055】本実施の形態における有機発光素子が従来
の技術と異なっているのは、陽極3の一部分が炭素膜9
を備え、しかもこの炭素膜9がラマン分光分析によって
測定した結果、1550cm-1付近と1350cm-1
近にピークを持つラマンスペクトルを示し、このラマン
スペクトルを2成分のガウス関数を用いて近似を行った
場合、高波側の面積強度に対する低波側の面積強度の相
対強度の比が1.0以上3.0以下になっていることで
ある。
【0056】上記構成を有する本実施の形態における有
機発光素子の動作は、正孔がITO膜2から炭素膜9を
介してから正孔輸送層4に注入されること以外は従来の
技術と同様のものであるので説明については省略する。
【0057】以上のように本実施の形態によれば、陽極
3から有機膜6への正孔の注入が従来と比べて効率良く
行われることにより、有機発光素子の発光効率を向上さ
せることが可能になる。
【0058】(実施の形態2)図2は、本発明の一実施
の形態における有機発光ディスプレイパネルの構造を示
す要部断面図である。図2において、基板1、ITO膜
2、陽極3、正孔輸送層4、発光層5、有機膜6及び陰
極7は図8で示した従来の技術と同様のものであるの
で、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】本実施の形態における有機発光ディスプレ
イパネルが従来の技術と異なっているのは、陽極3の一
部分が炭素膜9を備え、しかもこの炭素膜9が比抵抗値
で100Ω・cm以上の絶縁性を有していることであ
る。
【0060】上記構成を有する本実施の形態における有
機発光ディスプレイパネルの動作原理としては、供給さ
れた電流は、100Ω・cm以上の比抵抗値を有する炭
素膜9を介してITO膜2間で流れることはないが、正
孔はITO膜2から炭素膜9を介して正孔輸送層4に注
入されることで電流は流れ、その後は従来と同様の発光
過程を経て発光に達する。
【0061】炭素膜9から有機膜6への電流注入、つま
り半導体結合によって電気を流そうとした場合、炭素膜
9は絶縁性が高くても導体とした振る舞いを行い、高電
圧を印加しなくても電流が流れるのに対し、炭素膜を通
してITO膜間に電流が流れる場合を想定する、つま
り、オーミック接合を介して電流が流れる場合を想定す
ると、炭素膜9の絶縁性が高いため、極微小の電流しか
流れず、有機発光素子としての挙動にはほとんど影響無
い。これは、有機発光素子のような半導体結合で電流を
流す場合、閾値電圧に相当する抵抗が存在するため、炭
素膜9がその分の抵抗となっても電圧を高めることも無
く電流をスムーズに流すことができ、逆に炭素膜9によ
る有機膜6とITO膜2との仕事関数の差を改善するこ
とができるため、効率良く電流注入が可能となると考え
られる。
【0062】この新たな知見によって、ITO膜2上に
のみ炭素膜9を形成しなければならないという複雑な製
造過程を経ることなく、簡単な構造で性能の高い有機発
光ディスプレイパネルを得ることが可能になった。
【0063】この効果を達成するために必要な炭素膜の
絶縁性を以下の計算により求めた。
【0064】炭素膜を全面に配した場合に生じる隣接す
るITO膜間の抵抗をR1(Ω)、隣のドットがある明
るさを持って発光するしたときの漏れ電流I1(m
A)、パネルとして最も明るく発光させるときの電圧を
V1とすると、 R1≧V1/I1 (1) でなければならない。ここで、カーボン膜の比抵抗をρ
(Ω・cm)、カーボンの膜厚をt(cm)、ドット幅
をD(cm)、ITO間の幅をL(cm)とすると、抵
抗R=比抵抗・長さ/断面積より、 R1=ρ・L/t・D (2) となる。(1)、(2)式より、 ρ≧V1・t・D/I1・L (3) 発光輝度100(cd/m2)、発光エリア300μm
×300μm、パネル大きさ10cm×10cmとする
と、駆動デューティーは約300となりそのため瞬時に
発光させなければならない輝度は30000(cd/m
2)となる。また、その時に必要な駆動電圧V1は、一
般的な有機発光素子の電圧−輝度の関係からおよそ15
Vである。
【0065】人間の目で認識できる輝度は1(cd/m
2)程度であり、有機発光素子の効率を10cd/Aと
見積もると、許される漏れ電流密度は0.01(mA/
cm 2)以下となる。駆動デューティー300を考慮す
れば、許容漏れ電流密度は3(mA/cm2)となり、
100μm×100μmドットに流れる電流I1は3×
10-4mAとなる。(3)式にこれらV1とI1の値及
びL=10μm、D=100μm、炭素膜は2nm以上
の膜厚があれば効果があることを考えてt=0.002
μmを代入すると、ρ≧100(Ω・cm)となる。
【0066】今回の計算は、ある一定の条件下で算出さ
れた炭素膜の比抵抗値であり、パネルサイズ、ドットの
大きさ、有機発光素子の特性及び炭素膜の膜厚等によっ
て必要とされる炭素膜の比抵抗値は変わってくる。従っ
て、比抵抗値100Ω・cmという値が特に重要な意味
があるのではなく、要は、この考え方に基づいた算出方
法で、漏れ電流を流さないためのある値以上の比抵抗値
が重要である。
【0067】(実施の形態3)図3は、本発明の一実施
の形態における有機発光ディスプレイパネルの構造を示
す要部断面図である。図3において、基板1、ITO膜
2、有機膜6、陰極7及び隔壁8は図8(c)で示した
従来の技術と同様のものであるので、同一の符号を付し
て説明を省略する。
【0068】本実施の形態における有機発光ディスプレ
イパネルが従来の技術と異なっているのは、ITO膜2
と有機膜6の間に炭素膜8を配した構造を持つととも
に、この炭素膜8が有機膜6を介してその上に形成され
る陰極7よりも隔壁8側に伸長して、炭素膜8の幅が陰
極7よりも広くなった構造を有していることである。
【0069】上記構成を有する本実施の形態における有
機発光ディスプレイパネルの動作原理としては、ITO
膜2と陰極7に印可された電圧によって、ITO膜2か
ら炭素膜8を介して正孔が有機膜6注入され、一方電子
は陰極7から有機膜6に注入され、その後は従来と同様
の発光過程を経て発光に達する。
【0070】以上のように本実施の形態によれば、例え
有機膜の幅が陰極より狭くても、炭素膜が介在すること
で画素端部での陰極と陽極の短絡を防ぐことができ、未
発光や漏れ電流による効率低下の問題を防ぐことが可能
になる。
【0071】以上に述べた実施の形態では、有機発光素
子の層構成が、陽極/正孔注入層/発光層/陰極の場合
について説明したが、特にこれに限定するものではな
く、例えば、陽極/発光層/陰極としてもよく、或い
は、陽極/発光層/電子注入層/陰極としてもよく、更
には、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極と
してもよい。また、上記構成の様に、基板側から陽極を
形成したような構成ではなくても陰極から形成した様な
反転構成であってもよい。また、これらの層を覆うよう
に例えば、SiO2やGeO等の保護膜があってもよ
い。
【0072】
【実施例】次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づ
いて説明する。
【0073】(実施例1)市販のITO付きガラス基板
(三容真空工業製、シート抵抗8Ω)を中性洗剤による
手洗い洗浄した後、濃度3%、温度60℃のKOH水溶
液で5分間超音波洗浄、続いて80℃の純水による5分
間超音波洗浄した後、エアーブローによる乾燥を行う。
この洗浄後の基板をDCマグネトロンスパッタ装置(ア
ネルバ製、ターゲットサイズ8インチ)内の基板ホルダ
ーにセット、チャンバー内を6×10-7Torr以下の
真空度まで排気した後、スパッタリングを行い基板に炭
素膜を成膜した。ターゲットには、巴工業製のグラファ
イトカーボンを用い、投入電力500W、スパッタガス
圧は1〜10mTorrの成膜条件で行った。導入ガス
にはアルゴンガスと水素ガス又はアルゴンガスと窒素ガ
スの混合ガスを用い、これが混合ガスの割合を変えるこ
とで得られる炭素膜の構造を制御した。このような方法
で作製した炭素膜をラマン分光分析による構造解析を行
った。
【0074】図4にアルゴンガスと窒素ガスの割合が
1:1の混合ガスを用いて、スパッタガス圧5mTor
rで作製した炭素膜のラマン分光分析結果のグラフを示
す。横軸はラマンシフトの波数で、縦軸はピーク強度で
ある。図4において、10は分析によって測定されたラ
マン分光分析測定波形であり、11はその測定波形を近
似してスムージングしたラマン分光分析測定曲線、12
は測定曲線11の第1ピークである波数1550cm-1
地点の2成分のガウス関数で近似した近似曲線、13は
測定曲線11の第2ピークである波数1350cm-1
点の2成分のガウス関数で近似した近似曲線である。曲
線12と横軸で囲まれた面積(面積強度)で、曲線13
と横軸で囲まれた面積(面積強度)を割った相対強度の
値が2.47である。
【0075】(実施例2)上記実施例1で示した方法で
構造を制御した炭素膜を陽極の一部とした有機発光素子
を作製、その素子の発光特性を評価した。以下に具体的
実施方法について説明する。
【0076】市販のITO付きガラス基板(三容真空工
業製、シート抵抗8Ω)にレジスト材(東京応化社製、
OFPR−800)をスピンコート法により塗布して厚
さ約10μmのレジスト膜を形成、露光、現像してレジ
スト膜を所定の形状にパターニングした。次に、この基
板を60℃で50%の塩酸中に浸漬して、レジスト膜が
形成されていない部分のITO膜をエッチングした後、
レジスト膜も除去、所定のパターン形状を有したITO
膜基板を得た。この基板を上記実施例1で示した方法で
洗浄後、導入ガスの混合比を制御することで種々の構造
を有した50nmの炭素膜を基板上に形成する。これら
炭素膜のラマン分光分析による高波数側の面積強度に対
する低波数側の面積強度の相対強度の比は、0.93、
1.15、2.98、3.05である。具体的成膜条件
は、上記実施例1に準じる。この様にして得られた炭素
膜付きITO基板に、2×10-6Torr以下の真空度
まで排気した抵抗加熱蒸着装置内にて、正孔輸送層とし
てTPDを約50nm、発光層としてAlq3を約75
nm、陰極としてAlLiを100nm形成、有機発光
素子を完成させる。
【0077】なお、TPDとAlq3の蒸着速度は、共
に約0.2nm/s、AlLiの蒸着速度は約1nm/
sである。
【0078】以上の方法により、ITO膜、炭素膜、正
孔輸送層、発光層、陰極で構成された有機発光素子の電
圧−輝度特性を調べた結果を図5に示す。尚、図には炭
素膜を形成せずにITO膜、正孔輸送層、発光層、陰極
で構成された有機発光素子の特性も比較のために併せて
記載している。
【0079】図5に示した電圧−輝度特性の関係から、
有機発光素子の発光特性は、陽極の一部分となる炭素膜
の構造に強く影響され、好ましい特性を得るには、高波
数側の面積強度に対する低波数側の面積強度の相対強度
の比が1.0以上3.0以下でなければならない。
【0080】(実施例3)炭素膜を作製する装置として
RFマグネトロンスパッタ装置を用いる以外は、第2実
施例と同様の方法、構成を有した有機発光素子を作製、
その素子の電圧−輝度特性の測定結果を図6に示す。タ
ーゲット、スパッタガス圧及び混合ガス比等、RFとD
Cという投入電力方法以外の条件は全て同じにしてい
る。
【0081】同一構成、同一ディメンジョンにもかかわ
らず、炭素膜を形成する方法の違いによって、有機発光
素子の特性が強く影響される。有機発光素子の電極の一
部として炭素膜を用いる場合には、DCマグネトロンス
パッタ法がRFマグネトロンスパッタ法より適してい
る。
【0082】この原因は明らかではないが、成膜法の違
いによる膜構造、表面粗さ等が影響していると思われ
る。
【0083】なお、本実施例では、DCマグネトロンス
パッタ法とRFマグネトロンスパッタ法の違いについて
のみ記載したが、磁界によるプラズマの封じこめ効果の
無いDCスパッタ法やRFスパッタ法についても調べた
結果、ほぼ同様の傾向、つまりDCスパッタの方がRF
スパッタよりも特性が優れる傾向にあることを確認して
いる。
【0084】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、炭素膜の
特性を最適化することで、それを用いた有機発光素子の
発光特性を向上させることができる。
【0085】また、有機発光素子を用いてディスプレイ
パネルを構成する場合、陽極間同士の短絡による電流漏
れや陽極と陰極間の短絡による電流漏れを起こすことな
く良好な発光特性を維持したまま、しかも、複雑な製造
プロセスを用いることなく非常に簡単な製造プロセスで
ディスプレイパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における有機発光素子の
構造を示す要部断面図
【図2】本発明の一実施の形態における有機発光ディス
プレイパネルの構造を示す要部断面図
【図3】本発明の一実施の形態における有機発光ディス
プレイパネルの構造を示す要部断面図
【図4】実施例1の炭素膜のラマン分光分析結果を示す
グラフ
【図5】実施例2の有機発光素子の印可電圧と発光輝度
の関係を示すグラフ
【図6】実施例3の有機発光素子の印可電圧と発光輝度
の関係を示すグラフ
【図7】従来の有機発光素子の構造を示す要部断面図
【図8】(a)従来の有機発光ディスプレイパネルの概
略部分の斜視図 (b)A−A’断面図 (c)B−B’断面図
【符号の説明】
1 基板 2 ITO膜 3 陽極 4 正孔輸送層 5 発光層 6 有機膜 7 陰極 8 隔壁 9 炭素膜 10 ラマン分光分析測定波形 11 ラマン分光分析測定曲線 12 波数1550cm-1地点の2成分のガウス関数で
近似した近似曲線 13 波数1350cm-1地点の2成分のガウス関数で
近似した近似曲線

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陰極と、有機膜と、少なくとも一部分が炭
    素膜よりなる陽極によって構成された有機発光素子であ
    って、前記炭素膜のラマン分光分析による測定結果が、
    1550cm-1付近と1350cm-1付近にピークを持
    つラマンスペクトルを示し、このラマンスペクトルを2
    成分のガウス関数を用いて近似を行った場合、高波数側
    の面積強度に対する低波数側の面積強度の相対強度の比
    が1.0以上3.0以下であることを特徴とする有機発
    光素子。
  2. 【請求項2】請求項1記載の有機発光素子を製造する方
    法であって、陽極の少なくとも一部分となる炭素膜が、
    DCマグネトロンスパッタ法またはDCスパッタ法によ
    って形成されたことを特徴とする有機発光素子の製造方
    法。
  3. 【請求項3】個々電気的に分離されたストライプ状の陰
    極と、有機膜と、個々電気的に分離されたストライプ状
    の陽極によって構成された画像表示配列を有している有
    機発光ディスプレイパネルであって、前記陽極の少なく
    とも一部分が炭素膜により構成され、その炭素膜の比抵
    抗値が、100Ω・cmより高い絶縁性を有することを
    特徴とする有機発光ディスプレイパネル。
  4. 【請求項4】請求項3記載の有機発光ディスプレイパネ
    ルを製造する方法であって、陽極の少なくとも一部分と
    なる炭素膜が、DCマグネトロンスパッタ法またはDC
    スパッタ法によって形成されたことを特徴とする有機発
    光ディスプレイパネルの製造方法。
  5. 【請求項5】光透過性の基板の上に、光透過性の第1の
    電極を形成するとともに、この第1の電極の一部を露出
    させる絶縁性の隔壁を第1の電極よりも上に突き出る層
    厚として形成し、第1の電極及び隔壁の上に、有機膜を
    形成するとともにこの有機膜の上に第2の電極を形成す
    る有機発光ディスプレイパネルであって、前記第1電極
    と前記有機膜の間に炭素膜を配した構造を持つとともに
    この炭素膜が有機膜を介してその上に形成される前記第
    2の電極膜よりもこの絶縁性の隔壁側に伸長して、隔壁
    によって規制される方向の幅が第2電極よりも広くなる
    ことを特徴とした有機発光ディスプレイパネル。
  6. 【請求項6】前記請求項5記載の有機発光ディスプレイ
    パネルであって、第1電極と有機膜との間の炭素膜が、
    ラマン分光分析による測定結果が、1550cm-1付近
    と1350cm-1付近にピークを持つラマンスペクトル
    を示し、このラマンスペクトルを2成分のガウス関数を
    用いて近似を行った場合、高波側の面積強度に対する低
    波側の面積強度の相対強度の比が1.0以上3.0以下
    である及び/又は比抵抗値が、100Ω・cmより高い
    絶縁性を有することを特徴とする有機発光ディスプレイ
    パネル。
  7. 【請求項7】請求項5,6いずれか1記載の有機発光デ
    ィスプレイパネルを製造する方法であって、第1電極上
    に形成する炭素膜が、DCマグネトロンスパッタ法また
    はDCスパッタ法によって形成されたことを特徴とする
    有機発光ディスプレイパネルの製造方法。
  8. 【請求項8】陰極と、有機膜と、陽極と、前記有機膜と
    前記陽極間に形成された炭素膜によって構成された有機
    発光素子であって、前記炭素膜のラマン分光分析による
    測定結果が、1550cm-1付近と1350cm-1付近
    にピークを持つラマンスペクトルを示し、このラマンス
    ペクトルを2成分のガウス関数を用いて近似を行った場
    合、高波数側の面積強度に対する低波数側の面積強度の
    相対強度の比が1.0以上3.0以下であることを特徴
    とする有機発光素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011199247A (ja) * 2010-03-17 2011-10-06 Samsung Mobile Display Co Ltd 有機発光表示装置及びこれを含むタッチ表示装置
US8102116B2 (en) * 2008-12-19 2012-01-24 Canon Kabushiki Kaisha Organic light-emitting device

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