JP2001160203A - MnBi磁性粉末とこれ以外の他の磁性粉末を用いた磁気カードの処理方法および処理装置 - Google Patents

MnBi磁性粉末とこれ以外の他の磁性粉末を用いた磁気カードの処理方法および処理装置

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JP2001160203A
JP2001160203A JP2000321370A JP2000321370A JP2001160203A JP 2001160203 A JP2001160203 A JP 2001160203A JP 2000321370 A JP2000321370 A JP 2000321370A JP 2000321370 A JP2000321370 A JP 2000321370A JP 2001160203 A JP2001160203 A JP 2001160203A
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magnetic powder
mnbi
powder
card
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Mikio Kishimoto
幹雄 岸本
Toshio Kanzaki
壽夫 神崎
Shinichi Kitahata
慎一 北畑
Toshinobu Sueyoshi
俊信 末吉
Noriaki Otani
紀昭 大谷
Hirobumi Tagawa
博文 田川
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Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 MnBi磁性粉末とこれ以外の他の磁性粉末
を用いた磁気カードの処理方法を提供する。 【解決手段】 基体上にMnBi磁性粉末とこれ以外の
他の磁性粉末を含む少なくとも1層の磁性層を設けた磁
気カードの処理方法において、上記磁性層に磁気記録さ
れた信号を再生するにあたり、MnBi磁性粉末の保磁
力よりも小さく、かつMnBi磁性粉末以外の他の磁性
粉末の保磁力よりも大きな強度の磁界を印加したのち、
再生することを特徴とする磁気カードの処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はMnBi磁性粉末
とこれ以外の他の磁性粉末を用いた磁気カードの処理方
法および処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、記録再生が容易である
ためビデオテ−プ、フロッピ−(登録商標)ディスク、
クレジットカ−ド、プリペイドカ−ド等として広く普及
している。ところが、記録再生が容易であるという特徴
は、逆に、記録したデ−タが誤って消去されやすく、ま
たデ−タの改ざんも容易に行えるという問題を発生させ
ており、たとえば、磁気カ−ドの場合、最近、各種ドア
やハンドバッグ等に使用されるようになってきている強
い磁界の磁石で消去されたり、磁気カ−ドのデ−タが書
き換えられて不正使用されるなどの事故や犯罪が多発し
ている。
【0003】この対策として、たとえば、光カ−ドのよ
うに、レ−ザ光により記録媒体に不可逆な変化を起こさ
せ、一度記録すると書き換えができない記録媒体や、デ
−タの改ざんが困難でセキュリティ−性の高いICカ−
ドなどが提案されているが、光カ−ドの場合は、光カ−
ドを記録、再生する光カ−ド専用の高価な装置を新たに
必要とし、また、ICカ−ドでは半導体を使用するため
高コストになるという難点があり、いずれも世界中に普
及している磁気カ−ドの記録、再生装置と代替するには
至らず、未だ期待されているほど普及していない。
【0004】そのため、磁気カ−ドの改ざんを防止する
方策が種々提案され、たとえば、磁気カ−ドにホログラ
ム印刷や高度な印刷技術を駆使した印刷を施すことが行
われているが、この方法ではカ−ドの外見上の偽造を防
止する点では効力を発揮することができても、磁気カ−
ドの磁気ストライプに書き込まれているデ−タの改ざん
に対しては、この改ざんが、たとえば、不正な手段で入
手した正規のクレジットカ−ドに、他人のクレジットカ
−ドから読み取ったデ−タを書き込むなどの方法で行わ
れ、書き込まれたデ−タが正規のものであるため、これ
を防止することができない。
【0005】これに対し、MnBi磁性粉末を記録素子
として使用する磁気記録媒体は、一旦記録すると室温で
は容易に書き換えができないという特徴を有することが
知られており(特公昭52−46801号、特公昭54
−19244号、特公昭54−33725号、特公昭5
7−38962号、特公昭57−38963号、特公昭
59−31764号)、特に、磁気カ−ド用のリ−ダが
世界の隅々まで普及している今日、デ−タが誤って消去
されたり、故意に書き換えられるなどの事故や犯罪が多
発しているクレジットカ−ド、プリペイドカ−ドなどに
おいて、事故や不正使用を防止できるものとして注目さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この種のM
nBi磁性粉末は、本質的に潮解性をもった磁性粉末
で、高温、高湿下に長時間保持すると腐食、分解して飽
和磁化が劣化する欠点を有し、この欠点を補うため、M
nBi磁性粉末を緻密な結合剤樹脂でくるんだり、また
気化性の防錆剤を磁性層中に含ませるなどの方法(特公
昭60−57127号、特公昭61−41048号)が
試みられているが、これらの方法では、分子状態に近い
水蒸気に対する遮断効果が小さく、徐々に水分子が磁性
層中に浸入していくのを充分に防止することができない
ため、未だ充分な効果が得られていない。
【0007】また、MnBi磁性粉末の構成元素の一つ
であるMnの酸化物であるMnO2は本来安定な酸化物
であるため、このMnO2 の均一な被膜を形成すれば耐
食性を改善できることが考えられるが、通常MnO2
形成するためには酸化性雰囲気下で高温に加熱する必要
があり、磁気記録用の微粒子磁性粉末を酸化性雰囲気下
で高温に加熱すると飽和磁化が著しく低下してしまう。
さらに、MnBiを酸化処理すると当然にMnの酸化物
と同時にBiの酸化物が生成され、また、MnとBiが
金属間化合物であるMnBiとして存在している間は通
常の環境下で比較的安定であるものが、水分が存在する
とMnとBiに分解してMnとBiの酸化物が生成さ
れ、これらのMnとBiの酸化物が生成されると、局部
電池が生じて水分の存在下でさらに分解、腐食が加速さ
れるため、MnO2 被膜形成による安定化をMnBi磁
性粉末に適用することは極めて難しい。
【0008】この発明は、かかる現状に鑑み種々検討を
行った結果なされたもので、MnBi磁性粉末を特定の
温度と雰囲気下で加熱処理させることにより、MnBi
磁性粉末の表面近傍にのみ特定構造のMn酸化物を優先
的に形成して、耐食性に優れたMnBi磁性粉末を提供
しようとするものであって、飽和磁化の劣化が極めてす
くない耐食性に優れたMnBi磁性粉末の提供を第1の
目的とし、このような耐食性に優れたMnBi磁性粉末
の製造方法を提供することを第2の目的とするものであ
る。また、第3の目的は、このMnBi磁性粉末に適し
た結合剤樹脂、添加剤を用いた磁気記録媒体を提供する
ことであり、第4の目的は、この磁気記録媒体を用い
て、一度記録すると書き換えできない磁気カ−ドを提供
することである。さらに、第5の目的は、このようなM
nBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体と通常の磁気記録
媒体とを組み合わせて使用することにより、新規な特性
をもった磁気記録媒体を提供することであり、第6の目
的は、このようなユニ−クな特性をもった磁気記録媒体
の記録再生方法およびそのための装置を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の磁性粉末は、
MnBiを主体とする磁性粉末において、磁性粉末の平
均粒子径が0.1μm以上20μm以下、16KOeの磁
界を印加して測定した保磁力が300Kにおいて300
0〜15000Oeで80Kにおいて50〜1000O
e、300Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定
した磁化量が20emu/g〜60emu/gであっ
て、温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日間放置
したときの磁化量の減少割合が40%以下、金属Biの
量が、式 金属Bi/(MnBi+金属Bi)<0.5 (但し、金属Biは、BiのX線回析ピ−クにおける
(012)面からのピ−ク面積であり、MnBiは、M
nBiのX線回析ピ−クにおける(101)面からのピ
−ク面積である。)で表される量であるMnBi磁性粉
末であり、さらにその磁性粒子の表面近傍に無機物の被
膜を形成したMnBi磁性粉末である。
【0010】また、このようなMnBi磁性粉末の製造
方法は、粒子径が50〜300メッシュのMn粉末また
はMnを主体とする粉末およびBiまたはBiを主体と
する粉末を、MnおよびBiの含有量がモル比で45:
55から65:35になるように予め混合した後、この
混合物をプレス成型し、非酸化性あるいは還元性雰囲気
中、Biの融点以下の温度で加熱反応させてMnBiと
し、次いでこのMnBiを非酸化性雰囲気中で粉砕し微
粒子化して行われ、さらに、このようにして得られた磁
性粉末を、酸素を含有する雰囲気中で加熱処理し、また
さらに酸素を含有する雰囲気および非酸化性雰囲気中で
加熱処理している。
【0011】さらに、この発明の磁気記録媒体は、上記
のMnBi磁性粉末を磁性層中に含有させて、16KO
eの磁界を印加して測定した保磁力が300Kにおいて
5000〜16000Oeで80Kにおいて100〜1
500Oe、300Kにおいて16KOeの磁界を印加
して測定した磁束密度が500〜2500G、長手方向
の角形が0.60〜0.95であって、温度60℃、相対湿
度90%の環境下に7日間放置したときの磁束密度の減
少割合が50%以下である磁気記録媒体であり、塩基性
官能基を有する結合剤樹脂や塩基性官能基を有する添加
剤を磁性層中にさらに含有させた磁気記録媒体である。
また、磁性層の表面あるいは磁性層と基体との間に撥水
層を設けた磁気記録媒体であり、上記のMnBi磁性粉
末とともに通常の磁性粉末を用いた磁性層を有する磁気
記録媒体であって、これらの磁気記録媒体を磁気カ−ド
としたものである。
【0012】また、この発明の磁気記録媒体記録再生方
法は、上記の磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態に
し、その後に磁気ヘッドを用いて信号を記録再生し、さ
らに、磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態にする
際、磁気記録媒体を低温に冷却した状態あるいは冷却後
直ちに、磁性層に交番磁界を印加して消磁状態にする記
録再生方法である。
【0013】さらに、この発明の磁気記録媒体記録再生
装置は、上記の磁気記録媒体に磁気記録された信号を磁
気ヘッドにより再生する磁気記録媒体再生装置の磁気ヘ
ッドの上流側に、磁性層に対して磁性層の保磁力より小
さい直流あるいは交番磁界を印加する磁界印加手段を設
けた磁気記録媒体の再生装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明の磁性粉末は、MnBi
を主体とする磁性粉末において、磁性粉末の平均粒子径
が0.1μm以上20μm以下、16KOeの磁界を印加
して測定した保磁力が300Kにおいて3000〜15
000Oeで80Kにおいて50〜1000Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁化
量が20emu/g〜60emu/gであって、温度6
0℃、相対湿度90%の環境下に7日間放置したときの
磁化量の減少割合が40%以下、金属Biの量が、式 金属Bi/(MnBi+金属Bi)<0.5 (但し、金属Biは、BiのX線回析ピ−クにおける
(012)面からのピ−ク面積であり、MnBiは、M
nBiのX線回析ピ−クにおける(101)面からのピ
−ク面積である。)で表される量であるMnBi磁性粉
末であり、さらにその磁性粒子の表面近傍に無機物の被
膜を形成したMnBi磁性粉末であって、その製造方法
は、粒子径が50〜300メッシュのMn粉末またはM
nを主体とする粉末およびBiまたはBiを主体とする
粉末を、MnおよびBiの含有量がモル比で45:55
から65:35になるように予め混合した後、この混合
物をプレス成型し、非酸化性あるいは還元性雰囲気中、
Biの融点以下の温度で加熱反応させてMnBiとし、
次いでこのMnBiを非酸化性雰囲気中で粉砕し微粒子
化して行われ、さらに、このようにして得られた磁性粉
末を、酸素を含有する雰囲気中で加熱処理し、またさら
に酸素を含有する雰囲気および非酸化性雰囲気中で加熱
処理しているため、耐食性が著しく向上され、飽和磁化
の劣化が極めて少ない。
【0015】また、このようなMnBiを主体とする磁
性粉末を磁性層中に含有させて、16KOeの磁界を印
加して測定した保磁力が300Kにおいて5000〜1
6000Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、
300Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した
磁束密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.6
0〜0.95であって、温度60℃、相対湿度90%の環
境下に7日間放置したときの磁束密度の減少割合が50
%以下である磁気記録媒体、さらに、磁性層中に塩基性
官能基を有する結合剤樹脂や塩基性官能基を有する添加
剤を磁性層中にさらに含有させ、また、磁性層の表面あ
るいは磁性層と基体との間に撥水層を設け、さらには、
上記のMnBi磁性粉末とともに通常の磁性粉末を用い
た磁性層を有する磁気カ−ドなどの磁気記録媒体は、一
度記録すると室温では容易に消去されない特徴を有し、
磁気カ−ドにおいて大問題であった改ざんを防止するこ
とができるとともに、高温、高湿下に長期間保存しても
飽和磁化の劣化が極めて少ない。
【0016】さらに、この発明の磁気記録媒体は、室温
では保磁力が10000Oe程度以上と極めて高いが、
100K程度以下の温度では保磁力が1500Oe程度
以下に低くなるという特異な性質を示すため、磁気記録
媒体を100K程度以下の低温に冷却して消磁状態に
し、その後に室温で、磁気ヘッドを用いて信号を記録し
て、室温では記録デ−タを容易に書き換えできないよう
にすることができる。また、磁気記録媒体再生装置の磁
気ヘッドの上流側に、磁性層に対して磁性層の保磁力よ
り小さい直流あるいは交番磁界を印加する磁界印加手段
を設けた磁気記録媒体の再生装置を用いて記録再生する
ことにより、この磁気記録媒体のデ−タをコピ−した改
ざん磁気記録媒体のデ−タは再生できず、真正の磁気記
録媒体のデ−タのみを再生できるようにすることができ
る。
【0017】以下、この発明について詳細に説明する。
まず、MnBi磁性粉末は、その一例の保磁力の温度依
存性を示す図1から明らかなように、室温では保磁力が
約12000Oeと高いが、温度が下がると低下し10
0Kでは1500Oe以下となる。従って、この性質を
利用して低温に冷却することにより消磁することがで
き、消磁後は室温で容易に磁化することができる。
【0018】また、このMnBi磁性粉末を用いた磁気
記録媒体の初期磁化曲線を示す図2から明らかなよう
に、低温で冷却して消磁状態にすると、室温で2000
Oe程度の低い磁界で容易に磁化することができる。し
かしながら、この磁気記録媒体は一度磁化すると140
00Oe程度の高い保磁力を示すようになり、その後の
デ−タの消去や書き換えがほとんど不可能になる。
【0019】図3はこのような磁気記録媒体を用いた磁
気カ−ドの消去特性を例示したもので、通常の磁気カ−
ドでは1000Oe程度の磁界を印加するとほぼ完全に
消磁されて、再生出力はほぼゼロになり、このことは通
常の磁気カ−ドのデ−タが容易に書き換えできることを
示している。これに対し、MnBi磁性粉末を用いた磁
気カ−ドでは、5000Oe程度の磁界を印加しても出
力は30%程度しか減少せず、また8000Oe程度の
磁界を印加しても、出力はまだ50%程度残っており、
このことは一度デ−タを記録すると、書き換えすること
が極めて困難であることを示している。
【0020】この発明のMnBi磁性粉末は、粉末冶金
法、ア−ク炉溶解法、高周波溶解法、溶融急冷法等によ
りMnBiインゴットとし、これを粉砕して製造され、
たとえば、粉末冶金法で製造する場合、インゴットを作
製する工程、これを粉砕する工程および安定化処理工程
に分けて下記のようにして製造される。なお、必ずしも
粉砕法によらずMnBi磁性粉末としてもよい。
【0021】まず、インゴットの作製は、50〜300
メッシュのMn粉およびBi粉を充分に混合し、これを
加圧プレスして成型体とし、インゴットが作製される。
なお、この混合は不活性雰囲気中で行うことが好ましい
が、酸化雰囲気中で混合しても構わない。
【0022】Mn粉およびBi粉を混合する場合、その
比率(Mn/Bi)はモル比で45:55から65:3
5の範囲にするのが好ましく、Biに比べてMnを多く
すると、MnBi磁性粉末としたときその表面にMnの
酸化物や水酸化物を形成することにより、MnBi磁性
粉末の耐食性が向上されて良質な磁性粉末が得られる。
このためBiに比べてMnを多くするのがより好まし
い。
【0023】ここで、使用されるMn粉およびBi粉と
しては、不純物の含有量が少ないものを使用するのが好
ましいが、磁気特性を調整するときは、これにNi、A
l、Cu、Pt、Zn、Feなどの金属を添加して使用
される。このような金属を添加する場合、その添加量
は、MnBiに対して0.6原子%より少なくては磁気特
性を良好に制御することができず、5.0原子%より多い
とMnBiの結晶構造自体が損なわれてMnBi本来の
特性を発揮することができなくなるため、0.6〜5.0原
子%の範囲内となるようにするのが好ましい。また、こ
れらの添加方法としては、予めMnとこれらの元素との
合金を作っておくことが好ましい。
【0024】また、このMn粉およびBi粉としては、
予め粉砕してあったものを用いてもよいし、フレ−クあ
るいはショット等の塊を粉砕により微粉化して用いても
よい。焼結反応により合成する場合には、MnとBiの
接触界面を通しての拡散反応によりMnBiが生成する
ため、Mn粉およびBi粉は50〜300メッシュに微
粉化したものを用いると生成反応がスム−ズに進み、表
面性に反応が大きく左右されるため、Mn粉およびBi
粉表面の酸化被膜を除去しておくことが好ましい。この
ため、予め酸等によりMn粉およびBi粉表面をエッチ
ングしたり、溶剤により脱脂するなど、粉末冶金法で行
われている表面処理を施しておくことが好ましい。これ
らMn粉およびBi粉の混合は、自動乳鉢、ボ−ルミル
等任意の手段で行われる。
【0025】Mn粉およびBi粉を加圧プレスして成型
体とする場合、加圧力は1〜8t/cm2 にするのが好
ましく、このような加圧力で加圧プレスして成型体とす
ると、焼結反応が促進されて均一なインゴットが作製さ
れる。これに対し加圧力が低すぎるとMnBiインゴッ
トの均一性が得られず、高すぎると加圧装置が高価とな
る割にMnBiインゴットの特性が向上されない。
【0026】得られた成型体は、ガラス容器あるいは金
属容器に密封され、容器内は真空あるいは不活性ガス雰
囲気として、熱処理中の酸化が防止される。不活性ガス
としては、水素、窒素、アルゴン等が使用されるが、コ
ストの点から窒素ガスが最適なものとして使用される。
このように成型体を密封した容器は、次いで、電気炉に
入れられて260〜271℃で2〜15日間熱処理され
る。この熱処理は温度が低すぎると熱処理に時間がかか
るとともに、得られるインゴットの磁化量が低くなり、
また高すぎるとBiが融解して流出し、均一なインゴッ
トが得られなくなるため、Biの融点直下で行うことが
好ましい。
【0027】このようにして作製されたMnBiインゴ
ットは取り出されて、予め自動乳鉢等により不活性ガス
雰囲気中で粗粉砕され、粒子サイズが100〜500μ
mに調整される。そして、ボ−ルミル、遊星ボ−ルミル
等を用いたボ−ルの衝撃を利用した湿式粉砕、あるいは
ジェットミル等の乾式粉砕により粒子間や容器の壁への
粒子の衝突による衝撃により微粒子化される。
【0028】このボ−ルの衝撃を利用した粉砕において
は、粉砕が進むにつれて、ボ−ルの径を段階的に小さく
して粉砕すると、より粒子径の均一な磁性粉末が得られ
る。元々、MnBiは六方晶構造を有するために、劈開
する性質を示し、このために高いエネルギ−をかけて粉
砕する必要はない。湿式粉砕の場合の液体としては有機
溶媒を使用することが好ましく、さらに有機溶媒として
はトルエン等の非極性用溶媒を使用し、あらかじめ溶媒
中の溶存水分を除去しておくことが好ましい。一方、乾
式粉砕の場合には、非酸化性雰囲気で行うことが好まし
い。この非酸化性雰囲気としては、真空あるいは窒素ガ
ス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が好適なものと
して用いられる。
【0029】このようにして得られるMnBi磁性粉末
の平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下の範囲にあ
り、粉砕条件により粒子径をコントロ−ルできる。粒子
径が0.1μmより小さいと、最終的に得られる磁性粉末
の飽和磁化が低下してしまい、また20μmを超える
と、磁性粉末の保磁力が十分な大きさとならず、また最
終的に得られる磁気記録媒体の表面平滑性が低下し、十
分な記録が行えない。
【0030】以上の工程により、16kOeの磁界を印
加して測定した保磁力が300Kにおいて3000〜1
5000Oeの範囲に、80Kにおいて50〜1000
Oeの範囲にあり、かつ300Kにおいて16kOeの
磁界を印加して測定した飽和磁化量が、20〜60em
u/gの範囲にあるMnBi磁性粉末が得られる。
【0031】しかしながら、このような方法で作製され
たMnBi磁性粉末は、化学的に不安定であり、高温、
高湿下に長時間保持すると腐食が進行し、飽和磁化が劣
化する問題があるため、以下のような安定化するための
処理が行われる。
【0032】MnBi磁性粉末の安定化処理方法として
は、大きく分けてMnBi磁性粉末の表面近傍に、Mn
Bi磁性粉末自身が有するMnあるいはBiを用いてこ
れらの金属の酸化物、水酸化物の被膜を形成する方法
と、MnあるいはBiを用いてこれらの金属の窒化物あ
るいは炭化物等の被膜を形成する方法、MnBi磁性粉
末に直接、あるいは前述の被膜を形成した上にさらにチ
タン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、カ−ボン
などの無機物の被膜を形成させる方法などがある。これ
らの方法はいずれもMnBi磁性粉末の表面に無機物の
被膜を形成するものであるが、MnBi磁性粉末の表面
に界面活性剤などの有機物の被膜を形成することも有効
である。
【0033】このような安定化処理方法において、無機
物の被膜を形成するものとして、MnBi磁性粉末の表
面近傍に、MnBi磁性粉末自身が有するMnあるいは
Biを用いてこれらの金属の酸化物、あるいは水酸化物
の被膜を形成する方法があり、以下その代表的なものと
して、酸素を利用して酸化物の被膜を形成する方法につ
いて説明する。
【0034】まず、第1段階処理のMnBi磁性粉末の
表面にMnおよびBiの酸化物の被膜を形成させる工程
は、温度が20〜150℃の範囲で、酸素含有雰囲気で
加熱処理される。
【0035】熱処理雰囲気としては、一定量の酸素を含
有する不活性ガスが好ましく、酸素を100ppmから
10000ppm程度含有する窒素ガスやアルゴンガス
中で加熱することが好ましい。空気中で加熱することも
可能であるが、空気中では酸化反応が急激に進行し易
く、均一な酸化被膜を得るためには微量の酸素ガスを含
む不活性ガス雰囲気下で熱処理することが好ましい。
【0036】また熱処理時間としては0.5時間から40
時間程度が適当で、温度が低いほど長時間熱処理するこ
とが好ましい。この熱処理によりMnBi磁性粉末の表
面にはMnOx(1≦x≦3.5)で表されるMnの酸化
物およびBiOx(1.5≦x≦2.5)で表されるBiの
酸化物が形成される。
【0037】MnBi磁性粉末は、本来MnとBiがモ
ル比で1:1で結合した金属間化合物であり、常識的に
はMnと同時に等モル量のBiの酸化物が生成する。し
かしながら本発明の熱処理を行うと、BiよりもMnの
酸化物が優先的に生成する。この理由は明らかではない
が、本発明のような緩やかな酸化条件で酸化すると、B
iに比べて電極電位の低いMnがBiよりも優先的に酸
化され、その結果、表面近傍では金属Biに比べて金属
Mnが稀薄になり、MnBi磁性粉末は表面近傍でMn
が稀薄になるため、磁性粒子内部では、MnとBiの濃
度分布ができる限り緩やかになるように、粒子内部から
表面に向かってMnが拡散し、拡散してきたMnもまた
優先的に酸化される結果、表面近傍にはMn酸化物が優
先的に形成されるためと思われる。
【0038】一方、MnBi磁性粉末を急激に酸化する
と、Mnと同時にBiの酸化物も生成される。Mnの酸
化物を優先的に形成させた磁性粉末と、Mnと同時にB
iの酸化物も形成させた磁性粉末では、初期状態におい
て飽和磁化にあまり差異は認められなくても、耐食性は
著しく異なり、Mnの酸化物を優先的に形成させた磁性
粉末は極めて優れた耐食性を示す。このように磁性粉末
表面近傍にMnOxで表されるMnの酸化物が優先的に
形成されていることは、X線光電子分光分析により明瞭
に認められる。
【0039】上記の熱処理により、Mnの酸化物が優先
的に生成されるが、同時にBiの酸化物もある程度生成
される。このMnとBiの酸化物の割合はMnとBiの
原子比(Mn/Bi)で表して2以上あることが好まし
く、2以下の場合にはMn酸化物とBi酸化物が局部電
池を形成しやすく、耐食性が不十分となる。一方、Mn
とBiの酸化物の割合は大きい方が耐食性の面からは好
ましいが、大きくするためには酸化の度合いを大きくす
る必要があり、その結果、飽和磁化の初期値が低下する
傾向を示す。そこで通常は、MnとBiの酸化物の割合
はMnとBiの原子比(Mn/Bi)で表して50以下
程度にすることが好ましい。
【0040】前述したように、酸化の度合いを大きくす
るほど表面近傍に形成される酸化物被膜は厚くなり、耐
食性は向上するが、飽和磁化の初期値が低下してしま
う。この酸化物被膜の量は、磁性粒子に対して約1〜5
0重量%である。この酸化物被膜の厚さを正確に測定す
ることは一般に困難であるが、磁性粉末の飽和磁化で表
して300Kにおいて20〜60emu/gの範囲にな
るように調整することが好ましい。飽和磁化が20em
u/gより小さい磁性粉末は、酸化物被膜の厚さが厚い
ため、耐食性は良好となるが、飽和磁化が低すぎて磁気
記録媒体とした時の再生出力が小さくなる。また60e
mu/gより大きいと酸化物被膜の厚さが薄すぎて耐食
性に劣る。
【0041】以上のような第1段階処理により、MnB
i磁性粉末の耐食性は著しく向上するが、この状態の磁
性粉末は触媒活性が極めて強く、磁気記録媒体では、磁
性粉末を通常有機物である結合剤樹脂中に分散させて使
用するため、このような触媒活性の強い磁性粉末が有機
物である結合剤樹脂と接すると、その触媒性により結合
剤樹脂が分解され、さらに分解した結合剤樹脂から生じ
た物質により磁性粉末が腐食する可能性がある。
【0042】そこで次に、第1段階処理により、MnB
i磁性粉末の表面近傍にMnOxの被膜を形成した後、
第2段階処理として、さらに不活性ガス中で熱処理し
て、このMnOxをMnO2 に変換する。このMnO2
は安定な酸化物であるが、酸化性雰囲気中で高温に加熱
しないと生成せず、通常500℃以上の高温で加熱する
必要がある。しかし酸化性雰囲気下でのこのような高温
加熱は、磁性粉末の飽和磁化を著しく低下させてしまう
だけでなく、磁性粉末が焼結凝集を引き起こす。
【0043】このような現状から、本発明者らは、種々
検討を行った結果、磁性粉末表面に直接MnO2 を形成
させるのではなく、一度MnOxとした後、不活性ガス
中で熱処理すると、比較的低温でMnO2 に効率よく変
換できることを見い出した。すなわち、金属Mnから直
接MnO2 を形成させるのではなく、MnOxを経由さ
せてMnO2 を生成させると、比較的低温で緻密なMn
2 被膜を形成させることが可能であることを発見し
た。
【0044】この熱処理温度としては、第1段階処理で
の熱処理温度よりも高いことが好ましく、通常200〜
400℃程度にするのが好ましい。温度が200℃より
低いとMnO2 への変換が不十分であり、400℃より
高いとMnBiがMnとBiに分解し易くなる。また不
活性ガスとしては通常窒素ガスやアルゴンガスが使用さ
れるが、真空中熱処理しても同じ効果が得られる。また
さらにMnO2 の構造としては、α型やβ型、さらにγ
型が知られているが、触媒活性が最も小さいβ型にする
ことが好ましく、β型にするためには熱処理温度を30
0〜400℃程度にすることが特に好ましい。
【0045】このような熱処理を施すことにより、Mn
Bi磁性粉末の表面近傍には、主としてMnO2 で表さ
れるMnの酸化物被膜が形成される。このような被膜が
形成されていることは、この磁性粉末をESCA(X線
光電子分光分析)で測定することにより明瞭に認めら
れ、ESCA分析チャ−トにおいてMnの4価のイオン
の2p電子にもとづくピ−ク面積が、金属Mnの2p電
子にもとづくピ−ク面積に比べて原子比で表すと0.5〜
50倍となる。またBiの酸化物被膜も同時に形成され
るが、Mnの酸化物被膜が優先的に形成される結果、同
じくESCAで測定すると、Mnイオンの2p電子にも
とづくピ−ク面積が、Biイオンの4f電子にもとづく
ピ−ク面積に比べて原子比で表すと2倍以上となる。
【0046】なお上記の方法は、MnBi磁性粉末の耐
食性を向上させるために、MnBi磁性粉末の表面にM
nの酸化物を形成させるための基本的な方法を述べたも
のであり、水分を微量含有する雰囲気中で磁性粉末に熱
処理を施すことにより、磁性粉末表面に水酸化物を形成
することも、またさらに上記Mnの酸化物とさらに水酸
化物を混在させて形成することも可能である。
【0047】このように熱処理により、MnBi磁性粉
末表面に主としてMnO2 で表されるMnの酸化物が優
先的に形成され、保磁力、配向性など特性を劣化させる
ことなく、耐食性に優れた磁性粉末を得ることができ
る。
【0048】このような処理を施した磁性粉末の飽和磁
化は、初期値で20〜60emu/gを示し、この磁性
粉末を温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日間保
持した後でも、その劣化率は40%以下となる。またこ
のような優れた耐食性は、すでに述べたようにMnBi
が本質的に有する潮解性が抑制され水分によるMnとB
iへの分解が防止されるためであるが、この熱処理を施
した磁性粉末をX線回析分析すると、MnとBiへの分
解が防止されることを反映して、温度60℃、相対湿度
90%の環境下に7日間保持した後でも金属Biの量
が、金属Bi/(MnBi+金属Bi)で表して0.5以
下となる。
【0049】この他、MnBi磁性粉末の表面に窒化物
あるいは炭化物の緻密な被膜を形成することによって
も、耐食性は著しく向上し、窒化物の被膜を形成するに
は、窒素やアンモニアガス雰囲気中、あるいは必要に応
じてこれらのガスに水素を含ませた混合ガス中で加熱処
理することにより形成することができる。また炭化物の
被膜を形成する場合には、一酸化炭素やメタンなどの炭
素を含むガス雰囲気中、あるいは必要に応じてこれらの
ガスに水素を含ませた混合ガス中で加熱処理することに
より形成することができる。加熱温度は通常300〜4
00℃とすることが好ましい。
【0050】またMnやBiなどの窒化物や炭化物をC
VD法や熱分解法などにより、気相から析出形成させる
ことも可能である。さらに前述した酸化物被膜を形成さ
せたMnBi磁性粉末表面に、さらにMnやBiなどの
窒化物あるいは炭化物を新たに析出形成させるとさらに
耐食性は向上する。
【0051】さらに、MnBi磁性粉末の表面にTi、
Si、Al、Zr、Mg、Pb、Pなどの金属の無機物
の被膜を形成させることによっても耐食性は向上し、緻
密な被膜を形成できるこれらの金属の安定な無機物とし
ては、酸化物が適している。
【0052】具体的には、酸化チタン、酸化ケイ素、酸
化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウ
ム、酸化鉛などがあり、これらの酸化物が2種類以上含
まれる複合酸化物や固溶体、たとえば、ムライト、チタ
ン酸アルミニウム、フォルステライト、コ−ディエライ
ト、スピネルなども用いられる。またこれらの酸化物、
複合酸化物、あるいは固溶体は、結晶状態でもアモルフ
ァス状態でも区別することなく用いることができる。
【0053】上記の酸化物、複合酸化物、あるいは固溶
体でMnBi磁性粉末表面を被覆するには、通常粉体の
表面改質に用いられている方法を適用できる。即ち、ゾ
ル・ゲル法、沈殿法、マイクロカプセル化法などの液相
法や、CVD法、熱分解法などの気相法あるいはメカノ
ケミカル法が用いられる。
【0054】例えば、液相法で被膜を形成する場合に
は、MnBi磁性粉末をトルエンなどの有機溶剤に分散
させた後、チタネ−ト、シラン、シラザンなどの有機金
属をこの分散液に添加して溶解させる。次にこの分散液
に微量水を添加するか、あるいはあらかじめMnBi磁
性粉末に水を付着させておくことにより、磁性粉末の表
面でこれらの有機金属を加水分解を起こさせ、磁性粉末
表面に吸着させる。次にこの磁性粉末を非酸化性ガス雰
囲気あるいは微量酸素を含有する雰囲気下で加熱する
と、磁性粉末表面に吸着していた有機金属が脱水縮合
し、酸化チタンや酸化ケイ素などの酸化物被膜が形成さ
れる。
【0055】以上説明したように、MnBi磁性粉末の
表面にMnやBiの酸化物、水酸化物被膜を形成するこ
とにより、またMnやBiの窒化物や炭化物被膜を形成
することにより、さらにTi、Si、Al、Zr、M
g、Pb、Pなどの金属の無機物の被膜を形成させるこ
とにより、MnBi磁性粉の耐食性は著しく向上させる
ことができる。またこれらの無機物の被膜は、重量比で
表してMnBiに対して2〜50%となるよう形成させ
ることが好ましく、この量が少ないと耐食性が不十分と
なり、また多過ぎると飽和磁化が低下する。上記の範囲
の無機物の被膜を形成させることにより、耐食性と磁気
特性のバランスがとれた磁性粉を得ることができる。
【0056】このような方法により、磁性粉末の平均粒
子径が0.1μm以上20μm以下の範囲にあり、かつ1
6kOeの磁界を印加して測定した保磁力が、300K
において3000〜15000Oeの範囲に、80Kに
おいて50〜1000Oeの範囲にあり、かつ300K
において16kOeの磁界を印加して測定した飽和磁化
量が、20〜60emu/gの範囲にあるMnBi磁性
粉末が得られる。
【0057】また上記の方法により処理した磁性粉末
は、優れた耐食性を示し、この磁性粉末を温度60℃、
相対湿度90%の環境下に7日間保持した後でも、その
劣化率は40%以下となる。さらに水分によるMnとB
iへの分解が防止されることを反映して、この磁性粉末
をX線回折分析すると、温度60℃、相対湿度90%の
環境下に7日間保持した後でも金属Biの量が、金属B
i/(MnBi+金属Bi)で表して0.5以下となる。
さらにこの磁性粉末は、高温、高湿下で優れた耐食性を
示すだけでなく、腐食性溶媒である塩化ナトリウム水溶
液や酢酸水溶液に浸漬しても、飽和磁化の劣化は少な
く、極めて優れた耐食性を示す。
【0058】以上のようにして製造されたMnBi磁性
粉末を用いる磁気記録媒体は、常法に準じて作製され、
たとえば、MnBi磁性粉末を、結合剤樹脂、有機溶剤
などとともに混合分散して磁性塗料を調製し、これを基
体上に塗布、乾燥して磁性層を形成して作製される。
【0059】ここに用いる結合剤樹脂としては、一般に
磁気記録媒体に用いられているものがいずれも使用さ
れ、たとえば、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポ
リビニルブチラ−ル樹脂、繊維素系樹脂、フッ素系樹
脂、ポリウレタン系樹脂、イソシアネ−ト化合物、放射
線硬化型樹脂などが用いられる。
【0060】なお、MnBi磁性粉末は、すでに述べた
ように水分が存在すると腐食、分解しやすく、特に水分
が酸性のときに腐食、分解が顕著になる。そこでMnB
i磁性粉末を磁性層中に均一に分散させる場合は上記の
結合剤樹脂で十分であるが、水分に対する安定性をさら
に向上させる上で、上記の結合剤樹脂中に塩基性官能基
を含ませることが好ましい。特に、MnBi磁性粉末は
前述した処理を施すことにより、耐食性は向上するが、
結合剤樹脂中にさらに塩基性官能基を含ませることによ
り、耐食性をさらに向上させることができる。この塩基
性官能基としては、たとえば、イミン、アミン、アミ
ド、チオ尿素、チアゾ−ル、アンモニウム塩またはホス
ホニウム化合物等が適している。
【0061】また磁性層中に塩基性官能基を含ませる手
段として、塩基性官能基を有する添加剤を添加すること
も効果的である。この添加剤に含ませる塩基性官能基
も、前記結合剤樹脂と同様に、イミン、アミン、アミ
ド、チオ尿素、チアゾ−ル、アンモニウム塩またはホス
ホニウム化合物等が適している。
【0062】具体的には、メチルアミン、エチルアミ
ン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミ
ン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、
オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデ
シルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テト
ラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、
ステアリルアミンなどの脂肪族第一アミン、ジメチルア
ミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロ
ピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどの脂
肪族第二アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミ
ン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミ
ルアミン、トリドデシルアミンなどの脂肪族第三アミ
ン、さらに脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族
アミンなどが好適なものとして使用される。さらにSi
やAl、Ti等のカップリング剤を各種のアミンで変性
したものなども好適なものとして使用できる。
【0063】このような塩基性官能基を含有する添加剤
の添加量は、一般的には多くなるほど耐食性向上に対す
る効果は大きいが、多過ぎると磁性層の磁束密度が低下
する。そこで、通常は磁性粉末に対して重量比で1〜1
5%程度とすることが好ましいが、磁性層の磁束密度を
さほど低下させることなく耐食性向上に効果の大きい範
囲として、4〜10重量%程度添加することが、特に好
ましい。
【0064】有機溶剤としては、トルエン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノ
ン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなど従来汎用され
ている有機溶剤が単独でまたは2種以上混合して使用さ
れる。また前述した理由により、これらの有機溶剤中に
溶存している水分はできる限り除去してから使用するこ
とが好ましく、また有機溶剤の中でも水を溶解しにくい
非極性の溶剤を使用することがさらに好ましい。
【0065】なお、磁性塗料中には、通常使用されてい
る各種の添加剤、例えば分散剤、潤滑剤、帯電防止剤な
どを任意に添加使用してもよいが、酸性の物質が存在す
るとMnBi磁性粉末が劣化し易くなる。従って、磁気
記録媒体に通常使用されている酸性の潤滑剤は、できる
限り添加量を少なくすることが耐食性の面からは好まし
い。
【0066】磁性粉末の含有割合としては、磁性層中に
占める磁性粉末の体積割合が5〜60%になるようにす
る必要があり、この割合が小さいと磁気記録媒体にした
ときの出力が低くなり、また同時に耐食性も低下する。
このように磁性粉末の体積割合が小さすぎると、耐食性
が低下する原因は不明であるが、塗膜中で結合剤樹脂の
占有割合が大きくなりすぎると、かえって水分が浸透し
易くなり、耐食性が低下すると予想される。一方磁性粉
末の体積割合が大きすぎると、磁性粉末の分散性が悪く
なって磁性粉末の配向性が低下すると同時に、結合剤樹
脂による磁性粉末の埋包効果が不十分になり、耐食性が
低下する。このようにMnBi磁性粉末の塗膜中での占
有体積割合は、通常の磁気記録媒体と同様に磁気特性や
記録特性に影響を与えることの他に、この磁性粉末を用
いた塗膜特有の問題点である耐食性にも影響を与える。
したがって磁気特性や記録特性のみならず、耐食性にも
優れた塗膜を得るには、磁性粉末の体積割合が5〜60
%になるように設計する必要があり、10〜50%にす
ると耐食性の向上により効果があり、20〜45%にす
ることが最も好ましい。
【0067】このように、MnBi磁性粉末を、結合剤
樹脂、有機溶剤などとともに混合分散して磁性塗料を調
製し、この磁性塗料をポリエステルフィルムなどの基体
上に任意の塗布手段によって塗布し、乾燥して磁性層を
形成する際、磁性塗料を基体上に塗布したのち、磁性層
面に対して平行に磁界配向を行うのが好ましく、この磁
界強度としては、500〜3000Oe程度が好まし
い。
【0068】このようにして、磁性層を形成すると、1
6kOeでの磁界を印加して測定した保磁力が、300
Kの温度において5000〜16000Oeの範囲に、
80Kの温度において100〜1500Oeの範囲にあ
り、かつ300Kにおいて16kOeの磁界を印加して
測定した磁束密度Bmが500〜2500Gの範囲で、
長手方向の角形Br/Bmが0.60〜0.95である磁気
記録媒体が得られる。
【0069】また磁気カ−ドに適用する場合には、あら
かじめ剥離層を塗布してある基体上に塗布する。なおこ
の剥離層としては、シリコ−ン系樹脂など従来よりテ−
プ、シ−ル、シ−トなどの剥離層に用いられている表面
活性の乏しい合成樹脂材料が使用できる。厚さとしては
0.1〜2.0μmが適当である。
【0070】またMnBi磁性粉末を含む磁性層の耐食
性や耐薬品性をさらに向上させるには、この剥離層と磁
性層との間にさらに撥水性樹脂からなる撥水層を設ける
ことが好ましい。この撥水性樹脂としては、ポリ塩化ビ
ニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコ−ル系重合体、
フッ素系樹脂またはフッ化ビニリデン系樹脂、アクリル
系樹脂等が使用できる。またこの撥水層の厚さとして
は、0.5〜10μmが好ましく、これより薄いと十分な
撥水効果が得られず、一方厚すぎるとスペーシングロス
が大きくなり、磁気記録媒体にしたときの出力が低下す
る。
【0071】このようにして作製された磁気記録媒体
は、優れた耐食性を示し、温度60℃、相対湿度90%
の環境下に7日間放置したときの磁束密度の減少割合が
50%以下となる。またさらに極めて厳しい腐食条件で
ある5%酢酸水溶液に24時間浸漬しても、磁束密度の
減少割合は80%以下となる。さらに、この磁気記録媒
体は、低温に冷却して消磁した後、300Kにおいて1
500Oeの磁場を印加したときの磁束密度の大きさ
が、300Kにおける飽和磁束密度の50%以上とな
る。
【0072】このようなMnBi磁性粉末は、他の磁性
粉末等と組み合わせて使用することももちろん可能で、
組み合わせて使用することにより、MnBi磁性粉末の
特性を活かした従来の磁気記録媒体にはないユニ−クな
特性をもった磁気記録媒体を提供することが可能にな
る。
【0073】この場合、混合する磁性粉末としては、ガ
ンマ酸化鉄磁性粉末、コバルト含有酸化鉄磁性粉末、B
a−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性粉末あ
るいはFeを主体とする金属磁性粉末等、室温での保磁
力が250〜3000Oe程度のものが好ましく使用さ
れる。MnBi磁性粉末にこれらの磁性粉末を混合して
使用する利点は、大きく分けて以下の4点である。
【0074】これらの磁性粉末は一般にMnBi磁性
粉末に比べて大きな飽和磁化を有するため、MnBi磁
性粉末を単独で使用した場合に比べて磁気記録媒体の磁
束密度が大きくなり、高出力が得られ易い。 酸化物磁性粉末を混合する場合には、これらの磁性粉
末には腐食の問題がないため、磁気記録媒体の耐食性が
さらに向上する。 MnBi磁性粉末と低保磁力の他の磁性粉末とを混合
すると、デ−タの改ざんが困難という特徴を維持して、
デ−タの書き込み電流値を低くすることが可能となる。 後に詳細に説明するが、デ−タを記録時に、同一ラッ
ク上に異なるデ−タを重ね書きし、再生時にフィルタ−
等を通して、デ−タを分離再生することにより、多重記
録できる。
【0075】MnBi磁性粉末と前述した磁性粉末とを
混合使用する場合でも、磁性塗料の調製は、MnBi磁
性粉末を単独で使用する場合と基本的には変わるもので
はない。しかし磁性粉末の分散手段や磁界配向強度など
は、混合する磁性粉末の種類や混合量によりある程度調
整することが好ましい。MnBi磁性粉末とこれらの磁
性粉末の混合割合としては、重量割合として1:9〜
7:3とすることが好ましく、MnBi磁性粉末と他の
磁性粉末の混合割合がこの比率より多い場合は、MnB
i磁性粉末を単独で用いる場合に比べて前記の利点が発
揮されにくく、また少なすぎる場合は、MnBi磁性粉
末を用いた磁気記録媒体の最も大きな特徴である、一度
デ−タを記録すると容易に消去されない特徴が損なわれ
る。
【0076】さらに、磁気記録媒体として、MnBi磁
性粉末を用いた磁性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co
含有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr
−フェライト磁性粉末あるいはFeを主体とする金属磁
性粉末等を用いた磁性層とを積層してもよく、このよう
に積層することの利点は、基本的には前述のMnBi磁
性粉末と他の磁性粉末とを混合して使用する場合と同様
である。
【0077】特に、このように磁性層を積層した磁気記
録媒体は、一つの磁気記録媒体上に書き換えできるデ−
タと、一度デ−タを書き込むと書き換えが極めて困難な
デ−タの2種類のデ−タを書き込むことができるという
特徴がある。
【0078】たとえば、MnBi磁性粉末を用いた磁性
層をストライプ状に形成しておき、このストライプを覆
うようにガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉
末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性
粉末あるいはFeを主体とする金属磁性粉末等を用いた
磁性層を塗布すると、MnBi磁性粉末を用いた磁性層
が積層されていない部分は、通常の磁気記録媒体と同様
にデ−タの書き換えができる。しかしながら、MnBi
磁性粉末を用いた磁性層と他の磁性粉末を用いた磁性層
が積層された部分には、デ−タは容易に書き込むことが
できるものの、書き換えが極めて困難になる。このよう
な特徴は、従来の磁気記録媒体では実現不可能であり、
MnBi磁性粉末を用いてこのような構成とすることに
より、初めて実現可能となるものである。
【0079】このように積層する場合の磁性層の厚さと
しては、例えば磁気カードに適用する場合には、上下層
ともに2〜20μm程度とし、全体の厚さとして3〜3
0μm程度とするのが好ましい。この厚さが薄すぎると
出力が小さくなる結果、カ−ドとしての信頼性が低くな
る。逆に厚過ぎると、磁性層全体に均一に記録すること
が困難になり、デ−タ再生時にエラ−レ−トが増加す
る。なお、この場合も前述した撥水樹脂層を磁性層表面
に形成したり、積層された2種類の磁性層の間に挿入す
るなど、前述した各種の手法を組み合わせて使用するこ
とが可能である。
【0080】このようにして形成される磁気記録媒体と
して、磁気カ−ドを作製する場合は、あらかじめ剥離層
を塗布してある基体ベ−スフィルム上に上記の磁性塗料
を磁界配向しながら塗布し、乾燥する。また必要に応じ
て、このようにして作製した磁性層上に接着層を塗布す
る。この接着層としては、通常ウレタン樹脂、アクリル
樹脂などの熱融着型の接着剤が好ましく使用されるが、
イソシアネ−ト硬化型、UV硬化型などの接着剤も使用
可能である。またこの接着剤を使用しなくても磁性層の
樹脂を利用してカード基板に熱融着させることも可能で
ある。
【0081】また磁性層の耐食性や耐水性をさらに向上
させる目的で、撥水層を設ける場合には、剥離層と磁性
層との間にさらに撥水性樹脂からなる撥水層を設ける。
この撥水層を用いる場合には、一般的な構成として基体
ベ−スフィルム、剥離層、撥水層、磁性層、接着層の構
成となる。また剥離層と磁性層との間にさらにカラ−層
などの隠蔽層を形成するなど、磁気カ−ドに通常用いら
れている手法を組み合わせて用いることももちろん可能
である。
【0082】また、上記のようにして形成された磁気記
録媒体の磁気テ−プを所定の幅にスリットした後、磁気
カ−ド基板などに接着層側を重ね合わせ、その上から加
熱ロ−ラで押圧するなどの方法で接着層をカ−ド基板表
面に仮接着させた後、基体フィルムを剥離することによ
って作製され、さらにプレス板などで加熱圧着すること
により、接着層、磁性層、剥離層を基板中に埋め込み、
カ−ドの形状に打ち抜くことによっても作製される。
【0083】このようにして作製された磁気記録媒体
は、初期化されて記録再生されるが、まず、MnBi磁
性粉末を用いた磁気記録媒体の初期化は、MnBi磁性
粉末が、室温では極めて大きな保磁力を有する反面、1
00K程度以下の低温に冷却すると、保磁力が著しく小
さくなるという性質を利用して行うものであり、100
K程度以下の温度において磁気記録媒体に300〜30
00Oeの交番磁界を印加して磁気記録媒体を消磁状態
にする工程である。このような初期化は、磁気テ−プの
状態で、テ−プを走行させながら行ってもよいし、また
リ−ルに巻いたままバッチ式に行ってもよい。また磁気
カ−ドとしてから行うことももちろん可能である。
【0084】また、デ−タの記録方法そのものは、通常
の磁気記録方法と特に変わることなく、たとえば、磁気
カ−ドに適用する場合には、磁気カ−ド用のエンコ−ド
機や磁気カ−ドリ−ダライタを用いてデ−タを記録する
ことができる。MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体
は、他の磁気記録媒体とは異なり一度デ−タを記録する
と、その後はデ−タの消去あるいは書き換えが極めて困
難になる。
【0085】このとき、MnBi磁性粉末と他の磁性粉
末とを混合して使用する場合や、MnBi磁性粉末を用
いた磁性層と他の磁性粉を用いた磁性層とを積層して使
用し、かつ多重記録する場合には、少なくともデ−タの
記録を2回行う。
【0086】その順序は、まず書き換えできない固定デ
−タ(A)をライタを用いて記録する。この状態ではM
nBi磁性粉末にも、またMnBi磁性粉末以外の磁性
粉末にも同一のデ−タ(A)が記録される。またこの時
の記録磁界は、MnBi磁性粉末と共に使用する他の磁
性粉末の保磁力に依存するが、MnBi磁性粉末以外の
磁性粉末が減磁しない範囲で、できる限り記録磁界は高
い方が好ましい。これはMnBi磁性粉末を用いた磁気
記録媒体特有の現象であり、記録磁界が高いほど磁気記
録媒体の保磁力が向上するという現象にもとづく。
【0087】次に書き換えできるデ−タ(B)を同一ト
ラック上に重ね記録する。このとき書き換えできない固
定デ−タ(A)と書き換えできるデ−タ(B)とは記録
密度を変えて記録する。この時の記録密度としては、一
般的には、固定デ−タに比べて、書き換えできるデ−タ
の方が大きな記録容量が必要になるため、固定デ−タに
対して、書き換えできるデ−タの記録密度を3〜100
倍高くすることが好ましい。また(A)と(B)の信号
からの磁界が相互に干渉することを防止して、フィルタ
−等を用いてデ−タを分離再生するためには、このよう
に記録密度の差異をもたせる必要がある。分離性から言
えば、この記録密度の差異は大きいほど好ましいが、
(A)のデ−タ量を多くするためには、100倍程度以
下にすることが好ましい。
【0088】また一般的には、記録密度の低いデ−タを
磁気記録媒体の下層に、記録密度の高いデ−タを上層に
形成することが好ましい。これは記録密度が高くなるほ
ど、磁気ヘッドと磁気記録媒体間のスペ−シングロスの
影響が大きくなるため、記録密度の高いデ−タほど磁気
ヘッドに近いところに配置することが好ましいためであ
る。
【0089】このような多重記録により、まずデ−タ
(A)が磁性層全体に渡って記録され、次にデ−タ
(B)を重ね記録すると、MnBi磁性粉末の他の磁性
粉末あるいはそれらの磁性粉末を用いた磁性層は、デ−
タ(B)に書き換えられる。一方MnBi磁性粉末ある
いはMnBi磁性粉末を用いた磁性層は、一度デ−タを
記録すると室温では保磁力が10000Oe以上と極め
て大きいため、後から記録したデ−タ(B)は記録され
ず、先に記録した固定デ−タ(A)のみが記録されたま
ま残る。
【0090】また書き換えできない(A)を記録した
後、直流磁界を印加すると、この(A)は外部磁界に対
してより安定化される。この時の磁界としては3000
〜10000Oe程度が好ましい。その後デ−タ(B)
を前述した方法で記録することにより、固定デ−タ
(A)と書き換えできるデ−タ(B)を同一トラック上
に記録することができる。
【0091】さらに、MnBi磁性粉末を用いた磁性層
と他の通常の磁性粉末を用いた磁性層とを積層すると、
一つの磁気記録媒体上に、書き換えできるデ−タと、一
度デ−タを書き込むと書き換えが極めて困難なデ−タの
2種類のデ−タを書き込むことができる。
【0092】たとえば、MnBi磁性粉末を用いた磁性
層をストライプ状に部分的に形成しておき、この磁性層
を覆うようにガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁
性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト
磁性粉末あるいはFeを主体とする金属磁性粉末等を用
いた磁性層を塗布する。MnBi磁性粉末を用いた磁性
層と他の磁性粉末を用いた磁性層が積層された部分に書
き込まれたデ−タは、書き換えが極めて困難になるが、
積層されていない部分は、通常の磁気記録媒体と同様に
デ−タの書き換えができる。
【0093】デ−タの記録方法としては、まず書き換え
できない固定デ−タ(a)をMnBi磁性粉末を用いた
磁性層と他の磁性粉末を用いた磁性層とが積層された部
分に通常の方法で記録する。この記録されたデ−タ
(a)を、改ざんを目的に他のデ−タ(b)に書き換え
ようとしても、MnBi磁性粉末を用いた磁性層に記録
されたデ−タ(a)は書き換えできないため、再生時に
は(a)と(b)のデ−タからくる2種類の信号が混在
してしまい、デ−タが破壊されて、通常のリ−ダでは再
生不能となる。この固定デ−タ(a)としては、例えば
磁気カ−ドに適用する場合には、カ−ドの発行日、発行
元、カ−ド所有者のID等、書き換えられてはいけない
デ−タを記録する。
【0094】一方MnBi磁性粉末以外の磁性粉末を用
いた磁性層のみからなる部分には、書き換えできるデ−
タ(c)を記録する。このデ−タ(c)は、通常の磁気
記録媒体と同様に、使用の都度任意に書き換えできる。
【0095】以上MnBi磁性粉末と他の磁性粉末を用
いた混合した磁性層、およびこれらの磁性粉末を用いた
磁性層をそれぞれ積層した磁性層を例にあげて説明した
が、これらの磁性層を各種組み合わせて使用することは
もちろん可能である。例えば、磁気カ−ドに適用する場
合には、カ−ドの片面に上記の積層磁性層を形成し、他
の面には酸化鉄磁性粉末やバリウムフェライト磁性粉末
を用いた通常の磁性層を形成するなども可能である。
【0096】また、デ−タの再生は、通常の磁気記録媒
体の再生方法と特に変わるところはなく、通常の磁気ヘ
ッドを用いて再生することができる。例えば磁気カ−ド
では磁気カ−ドリ−ダを用いて再生できる。
【0097】一方前述した多重記録したデ−タの再生に
は、実施例において詳細に説明するが、磁気ヘッドで読
み取った信号をバンドパスフィルタ−を通して、記録密
度の異なる2種類のデ−タ(A)、(B)に分離再生す
る。このバンドパスフィルタ−のバンド幅としては、通
常再生したい記録密度に対応する周波数を中心に+10
0%、−50%程の幅に設定することが好ましいが、要
求されるS/Nに応じてこの幅を変えることは可能であ
る。
【0098】以上磁気カ−ドに適用する場合を例にあげ
て説明したが、このような書き換えの極めて困難なデ−
タと、通常の磁気記録媒体と同様に書き換えできるデ−
タとを多重記録あるいは同一磁気記録媒体上に混在させ
て使用する用途としては、磁気カ−ドのみならず、磁気
テ−プやフロッピ−ディスクなど磁気記録媒体全てに適
用できることは言うまでもない。
【0099】前述したようにMnBi磁性粉末を用いた
磁気記録媒体(例えば磁気カ−ド)は、一度デ−タを記
録すると室温では容易に消去されない性質、すなわち記
録したデ−タを容易に改ざんできないという特徴を有し
ているが、この磁気カ−ドに記録されたデ−タは通常の
磁気カ−ドと同様の方法により容易に読み取れるため、
この磁気カ−ドのデ−タを他の通常の磁気カ−ドにコピ
−し、このカ−ドを真性カ−ドとして不正使用すること
が考えられる。
【0100】このため、MnBi磁性粉末を用いた真性
の磁気記録媒体のみしかデ−タを再生できない再生方法
およびそのための装置が必要で、かかる再生方法は、M
nBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体に記録されたデ−
タを再生する前に、前記磁性層の保磁力より小さい、直
流あるいは交番磁界を、例えば永久磁石や磁界印加用の
磁気ヘッドにより磁性層に印加する。
【0101】磁気カ−ドに適用した場合を例にあげて説
明すると、MnBi磁性粉末を用いた磁気カ−ドは、一
度デ−タを記録すると、室温では容易に消去されないた
め、このような磁界を印加してもデ−タはほとんど影響
を受けることはなく再生できる。一方、通常の磁気カ−
ドでは磁界によりデ−タが消去あるいは破壊されて読み
取れなくなるため、たとえMnBi磁性粉末を用いたカ
−ドがコピ−されても、このコピ−カ−ドのデ−タが再
生されることはない。
【0102】この磁界の強さとしては、MnBi磁性粉
末を用いた磁性層の保磁力よりも小さく、かつ通常の磁
性粉末を用いた磁性層の保磁力より大きくする必要があ
る。この磁界の強さとしては、例えばガンマ酸化鉄磁性
粉末やCo含有酸化鉄磁性粉末などを用いた磁性層に対
しては、500〜1000Oeの磁界印加によりコピ−
カ−ドのデ−タはほとんど消去されて読み取れなくな
る。一方Ba−フェライト磁性粉末やSr−フェライト
磁性粉末を用いた磁性層に対しては3000Oe程度の
磁界印加によりデ−タはほとんど消去される。したがっ
てこの印加磁界の範囲としては500〜5000Oeと
することが好ましい。この範囲内の磁界を印加しても、
MnBi磁性粉末を用いた磁性層に記録されたデ−タは
ほとんど影響を受けないため、デ−タを正確に読み取る
ことができる。
【0103】またこのような磁界は、直流磁界、交番磁
界のどちらでもよく、また前述の強度の磁界が発生する
ものであれば、特に手段は限定されない。例えば、直流
磁界を印加する場合には、永久磁石をデ−タ再生用の磁
気ヘッドとカ−ド挿入口の間に設置すればよい。また交
番磁界を印加する場合には、再生用の磁気ヘッドとカ−
ド挿入口の間に交番磁界印加用の磁気ヘッドを設置して
もよい。また再生用の磁気ヘッドを用いて磁気カ−ドに
直流あるいは交番磁界を印加した後、再度磁気カ−ドを
挿入してこの磁気ヘッドでデ−タを読み取ることも可能
である。
【0104】一方、本発明の再生方法および再生装置を
用いると、不正使用を目的とした磁気カ−ドのみならず
通常の磁気カ−ドのデ−タも誤って消去してしまう恐れ
がある。しかしこのようなトラブルは、通常の磁気カ−
ドは挿入できないようにするか、あるいは磁界印加前に
磁気カ−ドを排出するような工夫を加えたり、磁気カ−
ドに識別情報を付加するなどにより防止できる。
【0105】この識別情報としては、例えば磁気カ−ド
の一部に切欠部あるいは細孔などを設けて通常の磁気カ
−ドと形状的に異ならしめることにより実現できる。再
生装置に挿入した際に前記切欠部あるいは細孔を例えば
光学的あるいは機械的に検出し、切欠部あるいは細孔を
有している磁気カ−ドは挿入を許可し、切欠部あるいは
細孔のない磁気カ−ドは再生装置から排出される。ま
た、さらにカ−ド表面に赤外線あるいは紫外線励起の蛍
光体を含むインクで印刷し、赤外線あるいは紫外線で蛍
光体を励起させて、識別マ−クから発する蛍光を検出す
るなどの方法によっても識別できる。
【0106】この発明の好適な態様は、下記(1)〜
(55)のとおりである。 (1) MnBiを主体とする磁性粉末において、磁性
粉末の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下、16K
Oeの磁界を印加して測定した保磁力が300Kにおい
て3000〜15000Oeで80Kにおいて50〜1
000Oe、300Kにおいて16KOeの磁界を印加
して測定した磁化量が20emu/g〜60emu/g
であって、温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日
間放置したときの磁化量の減少割合が40%以下、金属
Biの量が、式 金属Bi/(MnBi+金属Bi)<0.5 (但し、金属Biは、BiのX線回析ピ−クにおける
(012)面からのピ−ク面積であり、MnBiは、M
nBiのX線回析ピ−クにおける(101)面からのピ
−ク面積である。)で表される量であることを特徴とす
る磁性粉末 (2) MnBiを主体とする磁性粉末が、磁性粒子に
対して1〜50重量%の無機物の被膜を形成させた磁性
粉末である(1)記載の磁性粉末 (3) 無機物の被膜が、MnおよびBiの酸化物ある
いは水酸化物で、MnとBiの酸化物あるいは水酸化物
の割合がMnとBiの原子比(Mn/Bi)で表して2
以上である(2)記載の磁性粉末 (4) Mnの酸化物が、Mnの酸化物をMnOxで表
したときMnとOとの原子比率xが1≦x≦3.5であ
り、Biの酸化物が、Biの酸化物をBiOxで表した
ときBiとOとの原子比率xが1.5≦x≦2.5である
(3)記載の磁性粉末 (5) Mnの酸化物をMnOxで表したときMnとO
との原子比率xが2の成分の含有量が、Mn酸化物ある
いはMn水酸化物中50原子%以上である(4)記載の
磁性粉末 (6) Mnの酸化物をMnOxで表したときMnとO
との原子比率xが2の成分が、主としてβ−MnO2
ある(5)記載の磁性粉末 (7) 無機物の被膜が、チタン、ケイ素、アルミニウ
ム、ジルコニウム、マグネシウム、鉛、リンから選ばれ
る少なくとも1種の酸化物である(2)記載の磁性粉末 (8) 無機物の被膜が、MnおよびBiの酸化物ある
いは水酸化物と、チタン、ケイ素、アルミニウム、ジル
コニウム、マグネシウム、鉛、リンから選ばれる少なく
とも1種の酸化物とからなる被膜である(2)記載の磁
性粉末 (9) チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウ
ム、マグネシウム、鉛、リンから選ばれる少なくとも1
種の酸化物の含有量が、MnBiに対して2〜50原子
%である(7)または(8)記載の磁性粉末 (10) MnBiに対してさらにニッケル、アルミニ
ウム、銅、白金、亜鉛、鉄から選ばれる少なくとも1種
の元素を0.6〜5.0原子%含有させた(1)または
(2)記載の磁性粉末 (11) 粒子径が50〜300メッシュのMnまたは
Mnを主体とする粉末およびBiまたはBiを主体とす
る粉末を、MnおよびBiの含有量がモル比で45:5
5から65:35になるように予め混合した後、この混
合物を成型し、非酸化性あるいは還元性雰囲気中、Bi
の融点以下の温度で加熱反応させることを特徴とするM
nBiの製造方法 (12) (11)で得られるMnBiを、さらに非酸
化性雰囲気中で粉砕して微粒子化することを特徴とする
MnBiを主成分とする磁性粉末の製造方法 (13) (12)で得られるMnBiを主体とする磁
性粉末を、さらに酸素を含有する雰囲気中で加熱処理す
ることを特徴とする磁性粉末の製造方法 (14) 加熱処理温度が、20〜250℃である(1
2)記載の磁性粉末の製造方法 (15) (12)で得られるMnBiを主体とする磁
性粉末を、さらに酸素を含有する雰囲気中および非酸化
性雰囲気中で加熱処理することを特徴とするMnBiを
主成分とする磁性粉末の製造方法 (16) 酸化性雰囲気中での加熱処理温度が20〜2
50℃で、非酸化性雰囲気中での加熱処理温度が200
〜400℃である(15)記載の磁性粉末の製造方法 (17) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95であって、温度60℃、相対湿度90%の環境下
に7日間放置したときの磁束密度の減少割合が50%以
下であることを特徴とする磁気記録媒体 (18) 磁性層中に、MnBiを主体とする平均粒子
径が0.1〜20μmの磁性粉末を含有させ、16KOe
の磁界を印加して測定した保磁力が300Kにおいて5
000〜16000Oeで80Kにおいて100〜15
00Oe、300Kにおいて16KOeの磁界を印加し
て測定した磁束密度が500〜2500G、長手方向の
角形が0.60〜0.95であって、温度60℃、相対湿度
90%の環境下に7日間放置したときの磁束密度の減少
割合が50%以下であることを特徴とする磁気記録媒体 (19) 低温で冷却して消磁した後、300Kにおい
て1500Oeの磁場を印加したときの磁束密度の大き
さが、300Kにおける飽和磁束密度の50%以上であ
る(17)または(18)記載の磁気記録媒体 (20) 磁性層の厚さが3〜30μmである(17)
または(18)記載の磁気記録媒体 (21) 磁性層中に、さらに添加剤として、イミン、
アミン、アミド、チオ尿素、チアゾ−ル、アンモニウム
塩または有機ホスホニウム化合物からなる塩基性官能基
を有する添加剤を含ませた(17)または(18)記載
の磁気記録媒体 (22) 磁性層が、MnBiを主体とする磁性粉末を
含有する磁性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸
化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェ
ライト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末
の中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末を含有する
磁性層とを積層形成した磁性層である(17)または
(18)記載の磁気記録媒体 (23) MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm
以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測定し
た保磁力が300Kにおいて3000〜15000Oe
で80Kにおいて50〜1000Oe、300Kにおい
て16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が20e
mu/g〜60emu/gである磁性粉末を含有する磁
性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉
末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性
粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から選
ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300Kで
測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を含
む磁性層とを積層形成したことを特徴とする磁気記録媒
体 (24) 積層形成した磁性層全体の厚さが4〜30μ
mで、上下各磁性層の厚さがともに2〜20μmである
(22)または(23)記載の磁気記録媒体 (25) 磁性層が、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有
酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フ
ェライト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉
末の中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末と、Mn
Bi磁性粉末とを含有する磁性層である(17)または
(18)記載の磁気記録媒体 (26) 磁性層中に、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含
有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−
フェライト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性
粉末の中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であっ
て、300Kで測定した保磁力が250〜3000Oe
の磁性粉末と、MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1
μm以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測
定した保磁力が300Kにおいて3000〜15000
Oeで80Kにおいて50〜1000Oe、300Kに
おいて16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が2
0emu/g〜60emu/gである磁性粉末とを含有
させたことを特徴とする磁気記録媒体 (27) 磁性層の同一トラック上に異なる2種の信号
が記録されている(17)〜(26)のいずれかに記載
の磁気記録媒体 (28) 磁性層の表面あるいは磁性層と基体との間
に、さらに撥水性樹脂からなる撥水層を設けた(17)
〜(27)のいずれかに記載の磁気記録媒体 (29) 磁気記録媒体が、カ−ド状基板の片面または
両面に磁性層を設けたカ−ド状の磁気記録媒体である
(17)〜(28)記載の磁気記録媒体 (30) 磁性層がストライプ状の磁性層である(2
9)記載の磁気記録媒体 (31) ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性
粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁
性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から
選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300K
で測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を
含有する磁性層からなる磁気ストライプと、MnBiを
主体とし、平均粒子径が0.1μm以上20μm以下、1
6KOeの磁界を印加して測定した保磁力が300Kに
おいて3000〜15000Oeで80Kにおいて50
〜1000Oe、300Kにおいて16KOeの磁界を
印加して測定した磁化量が20emu/g〜60emu
/gである磁性粉末を含有する磁性層からなる磁気スト
ライプとが、カ−ド状基板の表面または表裏両面に形成
されていることを特徴とする磁気カ−ド (32) MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm
以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測定し
た保磁力が300Kにおいて3000〜15000Oe
で80Kにおいて50〜1000Oe、300Kにおい
て16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が20e
mu/g〜60emu/gである磁性粉末を含有する磁
性層からなる磁気ストライプ上に、この磁気ストライプ
より広い面積でこの磁気ストライプを覆うようにガンマ
酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェ
ライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性粉末およびFe
を主成分とする金属磁性粉末の中から選ばれる少なくと
も1種の磁性粉末であって、300Kで測定した保磁力
が250〜3000Oeの磁性粉末を含有する磁性層を
設けた磁気カ−ド (33) ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性
粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁
性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から
選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300K
で測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を
含有する磁性層が、カード全面にわたって形成されてい
る(32)記載の磁気カ−ド (34) MnBiを主体とする磁性粉末を含んでなる
磁性層を有し、書き換え不可能な部分と書き換え可能な
部分とを有する磁気カ−ド (35) MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm
以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測定し
た保磁力が300Kにおいて3000〜15000Oe
で80Kにおいて50〜1000Oe、300Kにおい
て16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が20e
mu/g〜60emu/gである磁性粉末を含有する磁
性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉
末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性
粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から選
ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300Kで
測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を含
有する磁性層が積層された部分には書き換えできないデ
−タが記録され、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化
鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェラ
イト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の
中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、3
00Kで測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性
粉末を含有する磁性層から成る部分には書き換えできる
デ−タが記録されている(32)〜(34)のいずれか
に記載の磁気カ−ド (36) 磁性層の表面あるいは磁性層と基体との間
に、さらに撥水性樹脂からなる撥水層を設けた(31)
〜(35)のいずれかに記載の磁気カ−ド (37) 磁気カ−ドの片面が印刷面である(29)〜
(36)のいずれかに記載の磁気カ−ド (38) 磁気カ−ドの裏面に、さらにガンマ酸化鉄磁
性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁
性粉末、Sr−フェライト磁性粉末およびFeを主成分
とする金属磁性粉末の中から選ばれる少なくとも1種の
磁性粉末であって、300Kで測定した保磁力が250
〜3000Oeの磁性粉末を含有する磁性層を設けた
(29)〜(36)のいずれかに記載の磁気カ−ド (39) 磁性層上に、さらに厚さが1〜10μmの非
磁性層を設けた(29)〜(38)のいずれかに記載の
磁気カ−ド (40) 磁気ストライプ上に記録されているトラック
の本数が2本以上である(29)〜(39)のいずれか
に記載の磁気カ−ド (41) 磁気カ−ドの適宜位置に他の磁気カ−ドと区
別するための識別子が付されている(29)〜(40)
のいずれかに記載の磁気カ−ド (42) 識別子が潜像マ−クである(41)記載の磁
気カ−ド (43) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95である磁気記録媒体を、低温に冷却して消磁状態
にし、その後に磁気ヘッドを用いて信号を記録すること
を特徴とする磁気記録媒体の記録方法 (44) 磁気記録媒体が磁気カ−ドである(43)記
載の磁気記録媒体の記録方法 (45) 磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態にす
る際、磁気記録媒体を低温に冷却した状態あるいは冷却
後直ちに、さらに磁性層に交番磁界を印加して消磁状態
にする(43)または(44)記載の磁気記録媒体の記
録方法 (46) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95である磁気記録媒体を、消磁状態にし、その後に
磁気ヘッドを用いて信号を記録し、信号を記録した後磁
性層に交番磁界を印加して信号を安定化し、しかる後磁
気ヘッドを用いて記録信号を再生することを特徴とする
磁気記録媒体の記録再生方法 (47) 印加して信号を安定化する交番磁界の強度が
3000〜10000Oeである(46)記載の磁気記
録媒体の記録再生方法 (48) MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm
以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測定し
た保磁力が300Kにおいて3000〜15000Oe
で80Kにおいて50〜1000Oe、300Kにおい
て16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が20e
mu/g〜60emu/gである磁性粉末を含有する磁
性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉
末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性
粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から選
ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300Kで
測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を含
む磁性層とを積層形成した磁気記録媒体の上下磁性層に
まず第1の信号を記録し、しかる後第1の信号とは異な
る第2の信号を第1の信号を記録したトラックの一部分
あるいは全体に重なるように記録することを特徴とする
磁気記録媒体の記録方法 (49) MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm
以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測定し
た保磁力が300Kにおいて3000〜15000Oe
で80Kにおいて50〜1000Oe、300Kにおい
て16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が20e
mu/g〜60emu/gである磁性粉末を含有する磁
性層と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化鉄磁性粉
末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェライト磁性
粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の中から選
ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、300Kで
測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性粉末を含
む磁性層とを積層形成した磁気記録媒体の上下磁性層に
まず第1の信号を記録し、しかる後第1の信号とは異な
る第2の信号を第1の信号を記録したトラックの一部分
あるいは全体に重なるように記録して、第1の信号をM
nBiを主体とし、平均粒子径が0.1μm以上20μm
以下、16KOeの磁界を印加して測定した保磁力が3
00Kにおいて3000〜15000Oeで80Kにお
いて50〜1000Oe、300Kにおいて16KOe
の磁界を印加して測定した磁化量が20emu/g〜6
0emu/gである磁性粉末を含有する磁性層に記録
し、第2の信号をガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含有酸化
鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−フェラ
イト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性粉末の
中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であって、3
00Kで測定した保磁力が250〜3000Oeの磁性
粉末を含む磁性層に記録することを特徴とする磁気記録
媒体の記録方法 (50) 磁性層中に、ガンマ酸化鉄磁性粉末、Co含
有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、Sr−
フェライト磁性粉末およびFeを主成分とする金属磁性
粉末の中から選ばれる少なくとも1種の磁性粉末であっ
て、300Kで測定した保磁力が250〜3000Oe
の磁性粉末と、MnBiを主体とし、平均粒子径が0.1
μm以上20μm以下、16KOeの磁界を印加して測
定した保磁力が300Kにおいて3000〜15000
Oeで80Kにおいて50〜1000Oe、300Kに
おいて16KOeの磁界を印加して測定した磁化量が2
0emu/g〜60emu/gである磁性粉末とを含有
させた磁気記録媒体に、まず第1の信号を記録し、しか
る後第1の信号とは異なる第2の信号を、第1の信号を
記録したトラックの一部分あるいは全体に重なるように
2種類の信号を記録することを特徴とする磁気記録媒体
の記録方法 (51) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95である磁気記録媒体に、信号を磁気記録し、磁気
記録された信号を再生するに際し、磁気記録された信号
を磁気ヘッドで再生する前に磁性層の保磁力より小さい
直流あるいは交番磁界を磁性層に印加することを特徴と
する磁気記録媒体の再生方法 (52) 磁性層の保磁力より小さい直流を磁性層に印
加する手段が永久磁石である(51)記載の磁気記録媒
体の再生方法 (53) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95である磁気記録媒体に、信号を磁気記録し、磁気
記録された信号を再生するに際し、磁性層の保磁力より
小さいバイアス磁界を印加しながら信号を再生すること
を特徴とする磁気記録媒体の再生方法 (54) 磁性層中に、MnBiを主体とする磁性粉末
を5〜60容量%含有させ、16KOeの磁界を印加し
て測定した保磁力が300Kにおいて5000〜160
00Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、30
0Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した磁束
密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.60〜
0.95である磁気記録媒体に磁気記録された信号を磁気
ヘッドにより再生する磁気記録媒体の再生装置におい
て、磁気ヘッドの上流側に磁性層に対して磁性層の保磁
力より小さい直流あるいは交番磁界を印加する磁界印加
手段を設けたことを特徴とする磁気記録媒体の再生装置 (55) 磁性層の保磁力より小さい直流を磁性層に印
加する手段が永久磁石である(54)記載の磁気記録媒
体の再生装置
【0107】
【実施例】次に、この発明の実施例を示して、より具体
的に説明する。 《MnBi磁性粉末の合成》まず、MnBi磁性粉末の
合成について述べる。MnBi磁性粉末の合成方法はM
nBiインゴットを作製する工程およびこれを原料とし
て粉砕によりMnBi磁性粉末を作製する工程、および
粉砕したMnBi磁性粉末を熱処理する工程に分けられ
る。
【0108】(1)MnBiインゴットの作製 Mnフレ−ク(フルウチ化学社製;純度99.9%)、B
iショット(フルウチ化学社製;純度99.9%)を乳鉢
を用いて粉砕し、Mn、Biそれぞれの粒子サイズが1
0〜500メッシュの範囲でふるい分けし、粒子サイズ
の異なるMnおよびBi粉を用意した。次に、これらの
MnおよびBi粉をMnとBiのモル比が25:75か
ら75:25の範囲になるように秤量し、ボ−ルミルを
用いて十分混合した。
【0109】次にこれらの混合物を、加圧プレス機を用
いて、0.2〜20t/cm2 の圧力で6mmφ×6mm
の円柱状に成型した。この成型体を密閉式のアルミ容器
に入れ、真空に引いた後、窒素ガスを0.5気圧導入し
た。次にこの容器を電気炉に入れ、250〜300℃の
温度で1〜30日間熱処理した。熱処理後、空気中に取
り出し、乳鉢で軽く粉砕して磁気特性を測定した。磁気
特性としては、最大磁界16kOeの磁界を印加したと
きの保磁力と16kOeにおける磁化量を測定した。保
磁力は、作製条件にあまり依存せず500〜1000O
eであったが、磁化量は作製条件により大きく異なっ
た。そこで、磁化量の値からインゴット中のMnBiの
生成度合いを評価し、MnBi作製のための最適条件を
求めた。
【0110】実施例1〜32 原料となるMnおよびBi粉の粒子サイズ、Mnおよび
Bi粉の混合割合、MnおよびBi粉の混合物の成型圧
力、成型体の熱処理温度および熱処理時間を下記表1及
び表2に示すように変化させてMnBiインゴットを作
製し、得られたMnBiインゴットの磁化量の測定し
た。下記表1及び表2はその結果である。
【0111】
【0112】
【0113】表1および表2より、原料のMnとBiの
粒子サイズは、熱処理により得られるインゴットの磁化
量に影響を与えることがわかる。この粒子サイズが小さ
過ぎると粒子の表面積が大きくなる結果、粒子表面に形
成される酸化被膜の割合が多くなって反応が阻害され、
また粒子が大き過ぎると表面積が小さくなり過ぎる結
果、MnとBiが拡散反応により進行するための接触面
積が小さくなって反応速度が遅くなり、得られるインゴ
ットの磁化量が小さくなる。従って、表1および表2よ
り原料のMnとBiの粒子の最適の大きさは、50〜3
00メッシュであることがわかる。
【0114】また、原料のMnとBiの混合割合に関し
ては、モル比でMnとBiの比が45:55から65:
35の範囲のとき40emu/g以上の高い磁化量が得
られ、特にこの比が55:45から50:50とMnの
混合割合がBiの混合割合よりわずかに多いときに、5
0emu/g以上の大きな磁化量が得られることがわか
る。さらに、MnとBiの混合物のプレス成型圧として
は、高くしても特に問題となることはないが、あまり高
くすることは生産上好ましくなく、十分高い磁化量を得
るためには1〜8t/cm2 が好ましい。
【0115】また、この成型物の熱処理温度は高い磁化
量を得る上で極めて重要で、Biの融点直下で熱処理す
ることが好ましい。Biの融点以上で熱処理するとBi
のみが溶融凝集するため、MnBiとしての反応性が著
しく低下する。一方この温度が低いと、MnとBiの拡
散反応の速度が遅くなる結果、高い磁化量を得るために
は、極めて長時間の熱処理が必要になる。生産性を考え
るとこの熱処理は、Biの融点直下の260〜271℃
で行うことが好ましい。
【0116】また、加熱処理時間に関しては、長過ぎて
特に問題となることはないが、2〜15日間の熱処理に
より、反応はほぼ終了し、磁化量として50emu/g
以上の高い値が得られる。
【0117】実施例33〜39 (2)MnBiインゴットの粉砕 得られたMnBiインゴットをグロ−ブボックスを使用
して不活性(窒素)雰囲気中で乳鉢を用いて粗粉砕した
後、さらにボ−ルミルおよびジェットミルを用いて微粉
砕した。なお、インゴットとしては、実施例3で示した
方法で作製したものを用いた。ボ−ルミル粉砕に関して
は、遊星ボ−ルミルを用いて、MnBi10重量部に対
して溶剤100重量部を加えて、各種溶媒中で粉砕し
た。粉砕方法としては、同一径のジルコニアボ−ルを用
いて同一の粉砕条件で粉砕したものと、まずジルコニア
ボ−ルで回転数(100rpm)を小さくして、緩やか
な粉砕条件で第1段階の粉砕を行った後、さらに小さい
ボ−ル径のジルコニアボ−ルを用いて回転数(150r
pm)を大きくして第2段階の粉砕を行ったものについ
て比較した。ジェットミルに関しては、粉砕時の雰囲気
を変えて粉砕した。表3はこのようにして得られたMn
Bi粉の平均粒径、保磁力および磁化量を測定した結果
である。
【0118】
【0119】表3より明らかなように、ボ−ルミル、ジ
ェットミルいずれの方法においてもMnBiの微粒子を
作製することができる。特にボールミル粉砕において
は、溶剤にトルエン、キシレンなどの非極性溶剤を用い
ると、粉砕による磁化量の低下が少なく好ましい。また
粉砕が進行するにつれてボ−ル径を小さくして粉砕する
と、より粒径分布の揃った粒子が得られる。このこと
は、表3の実施例35からもわかるように、粒径が小さ
いにもかかわらず、高い飽和磁化が得られており、磁化
量低下の原因となる微細粉の生成が少ないためである。
【0120】図4〜7には、実施例35で示した2段階
粉砕により、まず第1段階の粉砕を2時間行った後、第
2段階の粉砕を時間を変えて行ったときの平均粒子径の
変化、300Kおよび80Kにおける保磁力、および3
00Kにおける飽和磁化を示す。
【0121】また図8には、粉砕によるS* の変化を調
べた結果を示す。このS* は図9に示すようにヒステリ
シス曲線の減磁曲線の傾きから求めたパラメ−タ−で、
この値が大きいほど粒子の保磁力分布がシャ−プである
ことを示す。なおこれらの測定は、いずれも300Kに
おいて16kOeの磁界を印加して行った。
【0122】これらの図から、粉砕時間が長くなるにし
たがって、粒子径は小さくなり、また300Kおよび8
0Kにおける保磁力はともに増加するが、飽和磁化は逆
に低下する。また粉砕時間が長くなるにしたがって、S
* も増加し保磁力分布がシャ−プになっていくことがわ
かり、これらの結果より、保磁力分布のシャ−プな磁性
粉末を得るためには、300Kにおける保磁力を300
0Oe以上にする必要があることがわかる。
【0123】一方、300Kにおける保磁力が1500
0Oe以上となると、磁気記録媒体にした時に改ざん防
止機能は一層増すが、図7からわかるように、磁化量が
著しく低下してしまう。従って、300Kにおける保磁
力は3000〜15000Oeの範囲に設定することが
好ましい。また、本発明の磁気記録媒体は、低温で冷却
消磁して初期化した後、室温において記録を行うが、8
0Kにおける保磁力が1000Oe以上になると、低温
における消磁特性が悪くなる。
【0124】また、80Kにおいて保磁力が50Oe以
下になる磁性粉末は、粒子径が大き過ぎて磁気記録媒体
にしたときの磁性粉末の配向性や磁気記録媒体の表面性
に劣る。したがって80Kにおける保磁力としては、5
0〜1000Oeの範囲に設定することが好ましい。ま
た粉砕が進むにつれて磁化量も低下するが、磁気記録媒
体にしたときに十分高い出力を得るためには、300K
において20emu/g以上の磁化量が必要となる。ま
たMnBiで表される組成の化合物が生成したときの最
大の磁化量は、ほぼ60emu/gであるため、磁化量
の値としては、20〜60emu/gに設定することが
好ましい。
【0125】以上の検討の結果、粒子径、保磁力、飽和
磁化は相互に関連しており、本発明の磁気記録媒体に使
用するために要求される項目、即ち、 磁気記録媒体に適した粒子径 低温における消磁特性 室温における改ざんを防止するための高い保磁力 高出力を得るための高い磁化量 の4つを全て満たすためには、平均粒子径を0.1μm以
上20μm以下に、300Kにおける保磁力を3000
〜15000Oeの範囲に、80Kにおける保磁力を5
0〜1000Oeの範囲にして、かつ300Kにおける
磁化量を20〜60emu/gとする必要があることが
わかる。以上説明したように、MnBi磁性粉末の特性
が上記の値を同時に全て満たすことにより、初めて本発
明の磁気記録媒体用に供することができる。
【0126】実施例40〜55,比較例1 《MnBi磁性粉末の安定化処理》前記の方法により、
目的とする形状、特性を有するMnBi磁性粉末が得ら
れるが、この状態のMnBi磁性粉末は不安定で、水分
の存在により腐食が進行し、磁化量が低下する。そこで
以下に述べる熱処理により安定化を行う。熱処理を行う
磁性粉末として、表3の実施例35に示した方法により
ボ−ルミル粉砕した磁性粉末を用いた例について説明す
る。
【0127】ボ−ルミル粉砕した後、まずトルエンに浸
した状態でMnBi磁性粉末を取り出し、熱処理容器に
移して室温(25℃)で約2時間真空乾燥した。次に同
じ容器に入れたまま、まず第1段階の熱処理として、温
度を20〜150℃の範囲で種々変化させて熱処理し
た。また加熱時間は熱処理温度が低い場合は一般に長
く、また熱処理温度が高い場合は短く設定し、本実施例
では0.5〜24時間の範囲で熱処理した例について示
す。また熱処理雰囲気としては、酸素を1000ppm
含有する窒素ガスを使用した例について示す。
【0128】さらに引き続き第2段階の熱処理として、
容器に充填されている酸素混合ガスを真空引きして除去
した後、窒素ガスあるいはアルゴンガスを加熱時に1ト
−ルを超えないように約0.3ト−ル導入し、温度を15
0〜450℃の間で種々変化させて加熱処理した。この
場合も第1段階の熱処理と同様に、加熱時間は熱処理温
度に応じて調製することが好ましいが、加熱時間を2時
間で一定とした例について示す。
【0129】第1段階および第2段階の熱処理条件を変
えて熱処理を行った磁性粉末の磁化量、保磁力、磁化量
の劣化率および金属Biの量を調べた結果を、表4ない
し表6に示す。なお、磁化量の劣化率および金属Biの
量は下記の方法で測定した。
【0130】<磁化量の劣化率>磁性粉末を温度60
℃、湿度90%の雰囲気中、ガラスシャ−レに入れた状
態で7日間保持し、保持前の飽和磁化に対する保持後の
飽和磁化の変化から飽和磁化の劣化率を求めた。
【0131】<金属Biの量>磁性粉末を温度60℃、
湿度90%の雰囲気中、ガラスシャ−レに入れた状態で
7日間保持した後の金属Biの量をX線回折装置を用い
て調べた。MnBiの(101)面からの回折ピ−クと
金属Biの(012)面からの回折ピ−クの面積を求
め、以下の式から求めた値を金属Biの量とした。 金属Biの量=金属Biのピ−ク面積/(MnBiのピ
−ク面積+金属Biのピ−ク面積)
【0132】なお図10に、温度60℃、湿度90%の
環境下にMnBi磁性粉末を保持したときの金属Biの
量をX線回折図から求めた一例を示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】また、これらの磁性粉末の表面近傍に形成
されているMnおよびBi酸化物の割合、MnおよびB
iと酸素との原子比率、およびMnO2 成分の割合を光
電子分光分析法により調べた結果を表7に示す。なお、
MnおよびBi酸化物の割合、MnおよびBiと酸素と
の原子比率、およびMnO2 成分の割合は、下記の方法
で測定した。
【0137】<MnおよびBi酸化物の割合>MnBi
磁性粉末の表面近傍に形成されているMn酸化物とBi
酸化物の割合は光電子分光分析法を用いて測定した。線
源にはMgを用いて、Mnの酸化物に関しては2p電子
を、Biの酸化物に関しては4f電子を測定した。例と
して図11、図12にそれぞれMnの2pおよびBiの
4fスペクトルを示す。両スペクトル共にMn酸化物、
Bi酸化物と同時にMnBiにもとづく金属Mnおよび
金属Biのスペクトルも観察される。これらのスペクト
ルをコンピュ−タを使って分離し、Mn酸化物、Bi酸
化物にもとづくスペクトルの面積を求めた。Mn酸化物
とBi酸化物の割合は、Mnの酸化物の2p32 電子
のスペクトルとBi酸化物の4f72 電子のスペクト
ルの面積割合から求めた。
【0138】<MnおよびBiと酸素との原子比率、お
よびMnO2 成分の割合>またMnおよびBiの酸化物
は価数の異なる数種類の酸化物から構成されている。そ
こで、図11および図12に示したピ−クをあらかじめ
測定した価数の明らかなMnおよびBiの酸化物の標準
サンプルのピ−クを用いて、コンピュ−タフィッティン
グによりピ−ク分離を行った。分離した各ピ−クの面積
からMnOxおよびBiOxで表したときのMnおよび
Biと酸素との原子比率xと、MnOx中のx=2とな
る成分の割合を求めた。
【0139】
【0140】表4ないし表6から明らかなように、本発
明の熱処理を行ったMnBi磁性粉末は、温度60℃、
湿度90%の高温多湿下に7日間放置しても、飽和磁化
の劣化率は40%以下であり、また金属Biの量も0.5
以下となり、耐食性が著しく向上することがわかる。
【0141】さらに表7からは、このような耐食性に優
れるMnBi磁性粉末の表面近傍には特定構造のMnの
酸化物が優先的に形成されることがわかる。特にMnと
Biの酸化物の割合が、MnとBiの原子比(Mn/B
i)で表して2以上のときに良好な耐食性を示すことが
わかる。またさらにこのMnの酸化物の構造としては、
MnOxで表したときのxが2の成分が全Mn酸化物中
50原子%以上存在させると、より良好な耐食性を示す
ことがわかる。
【0142】《MnBi磁性粉末への酸化物被膜の形
成》MnBi磁性粉末の表面に酸化物の被膜を形成させ
た磁性粉末として、TiO 2 およびSiO2 の被膜を形
成させた磁性粉末を例にあげて説明する。 実施例56 MnBi磁性粉末(安定化処理粉末) 100重量部 テトライソプロピルチタネ−ト 3 〃 トルエン 1125 〃 上記の組成物を、常温で30分間超音波を使って、混
合、分散させた。MnBi磁性粉末としては、実施例4
1で示した安定化処理を行った磁性粉末を使用した。こ
の操作でテトライソプロピルチタネ−トは大気中、ある
いはMnBi磁性粉末表面に存在する水分によって加水
分解をおこし、MnBi磁性粉末表面に吸着する。
【0143】次に、上記テトライソプロピルチタネ−ト
を吸着させたMnBi磁性粉末を窒素ガス中350℃で
2時間加熱処理した。この加熱処理によって、MnBi
磁性粉末に吸着していたテトライソプロピルチタネ−ト
が脱水縮合し、緻密なTiO 2 被膜を形成した。
【0144】実施例57 実施例56において、MnBi磁性粉末として実施例4
1で示した安定化処理を行った磁性粉末に代えて、比較
例1で示した安定化処理を行っていない磁性粉末を用い
た以外は、実施例56と同様な方法でMnBi磁性粉末
の表面にTiO 2 被膜を形成した。
【0145】実施例58 実施例56においてテトライソプロピルチタネ−ト3重
量部に代えてテトラメトキシシラン5重量部を用いたこ
とと、さらにMnBi磁性粉末をあらかじめ温度60
℃、湿度90%の雰囲気に10分間保持して、磁性粉末
表面に水分を積極的に吸着させておいた以外は、実施例
56と同様の方法により、テトラメトキシシランを磁性
粉末表面に吸着させ、その後加熱処理を行うことにより
磁性粉末の表面にSiO2 の被膜を形成した。
【0146】実施例59 実施例58において、MnBi磁性粉末として実施例4
1で示した安定化処理を行った磁性粉末に代えて、比較
例1で示した安定化処理を行っていない磁性粉末を用い
た以外は、実施例58と同様な方法でMnBi磁性粉末
の表面にSiO 2 被膜を形成した。
【0147】これら4種類の磁性粉末について、300
Kにおける磁化量、保磁力、磁化量の劣化率および金属
Biの量を調べた結果を表8に示す。
【0148】
【0149】表8より明らかなように、安定化処理を行
った磁性粉末を用いた場合(実施例56、実施例58)
では、酸化物被膜を形成させることにより耐食性はさら
に向上することがわかる。また安定化処理を行っていな
い磁性粉末を用いた場合(実施例57、実施例59)で
も、酸化物被膜を形成させることにより耐食性を改善で
きることがわかる。
【0150】《磁性塗料および磁性層の作製》基本的な
磁性塗料の作製方法として、以下の組成物をボールミル
により充分に分散させて磁性塗料を調製した。なお磁性
粉末としては、実施例41に示した熱処理を施したMn
Bi磁性粉末を用いた。この磁性粉末の平均粒子径は2.
5μm、保磁力は9500Oe、飽和磁化は50.4em
u/gである。
【0151】 実施例60 MnBi磁性粉末 100重量部 MPR−TAO(日新化学社製;アミン変性塩化ビニル−酢 25 〃 酸ビニル共重合体) シクロヘキサノン 50 〃 トルエン 50 〃 この磁性塗料を剥離層を形成した厚さ30μmのPET
フィルム上に、乾燥後の厚さが15μmになるように1
500Oeの長手配向磁場を印加しながら塗布した。
【0152】実施例61 実施例60における磁性塗料の組成において、MPR−
TAOに代えてエスレックP(積水化学社製;アミン変
性スチレン−アクリル共重合体)を同量使用した以外
は、実施例60と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層
を作製した。
【0153】実施例62 実施例60における磁性塗料の組成において、さらに添
加剤としてドデシルアミンを6重量部加えた以外は、実
施例60と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層を作製
した。
【0154】実施例63 実施例60における磁性塗料の組成において、さらに添
加剤としてステアリルアミンを1重量部加えた以外は、
実施例60と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層を作
製した。
【0155】実施例64 実施例60における磁性塗料の組成において、さらに添
加剤としてステアリルアミンを6重量部加えた以外は、
実施例60と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層を作
製した。
【0156】比較例2 実施例60における磁性塗料の組成において、MPR−
TAOに代えてVAGH(UCC社製;塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体)を同量使用し、さらに添加剤として
ステアリルアミンを6重量部加えた以外は、実施例60
と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層を作製した。
【0157】比較例3 実施例60における磁性塗料の組成において、MPR−
TAOに代えてMR−110(日本ゼオン社製;スルホ
ン酸塩変性スチレン−アクリル共重合体)を同量使用し
た以外は、実施例60と同様にして、磁性塗料を調製
し、磁性層を作製した。
【0158】比較例4 実施例60における磁性塗料の組成において、MPR−
TAOに代えて自社においてリン酸変性した塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体(自社合成品)を同量使用した以
外は、実施例60と同様にして磁性塗料を調製し、磁性
層を作製した。
【0159】比較例5 実施例60における磁性塗料の組成において、MPR−
TAOに代えてVAGH(UCC社製;塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体)を同量使用した以外は、実施例60
と同様にして磁性塗料を調製し、磁性層を作製した。
【0160】このようにして作製した磁性層について、
磁気特性と耐食性を調べた。磁気特性としては、300
Kにおいて16kOeの磁界を印加して測定した保磁力
Hc、磁束密度Bm、長手方向の角形Br/Bmを、ま
た耐食性としては塗膜を温度60℃、湿度90%の環境
下に7日間放置した後の磁束密度の劣化率を測定した。
表9はその結果である。
【0161】表9
【0162】表9より明らかなように、結合剤樹脂に従
来の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を用いたもの(比
較例5)では、耐食性改善の効果は認められない。さら
に分散性を向上させることを目的に酸性の官能基を含有
させた結合剤樹脂を用いた場合(比較例3、比較例4)
には、耐食性はさらに劣化する。一方、塩基性官能基と
してアミン基を含ませた結合剤樹脂を用いると(実施例
60、実施例61)、耐食性が著しく向上する。
【0163】さらに添加剤として塩基性官能基を有する
添加剤を加えると耐食性はさらに向上し、添加量が多く
なるほど磁束密度は低下の傾向にあるが、耐食性は一層
向上する。このように結合剤樹脂あるいは添加剤に塩基
性官能基を含ませると耐食性が著しく向上する理由は明
らかではないが、以下のように予想している。
【0164】MnBi磁性粉末の表面には主としてMn
の酸化物が形成されているが、このMnの酸化物は塩基
性である。結合剤樹脂が磁性粉末表面に吸着するとき、
通常その官能基の側を磁性粉末に向けて吸着する。そこ
で樹脂の官能基が酸性であると磁性粉末表面で酸−アル
カリ反応が起こり、MnBi磁性粉末のMnとBiへの
分解を促進する。この反応は、水分が存在すると官能基
の酸としての性質がより強くなるため、より分解が促進
され磁化が劣化する。一方樹脂あるいは添加剤の官能基
が塩基性の場合には、官能基の側を磁性粉末の表面に向
けて吸着しても、官能基も塩基性であるため、磁性粉末
表面でMnとBiへの分解反応は起こらない。従って、
この場合官能基はMnBi磁性粉末にダメ−ジを与える
ことなく吸着する。さらに、これら塩基性官能基をもっ
た樹脂あるいは添加剤が、MnBi磁性粉末に一旦吸着
すると、主鎖である例えばアルキル基等が外部から侵入
する水分等と磁性粉末と反応することを阻止する作用を
示すため、耐食性が向上すると予想している。
【0165】実施例65〜67 実施例60における磁性塗料の組成において、実施例6
0で使用したMnBi磁性粉末に代えて、図8に示すM
nBiインゴットに第1段階の粉砕を行った後、第2段
階の粉砕で粉砕時間を変えて作製したS* の異なる磁性
粉末の内、第2段階の粉砕時間が0時間(S* 0.2
1)、1時間(S* 0.45)および4時間(S* 0.5
1)のMnBiを用いて、実施例41と同様の条件で処
理した磁性粉末を同量使用した以外は、実施例60と同
様にして磁性層を作製した。
【0166】比較例6 比較例3における磁性塗料の組成において、MnBi磁
性粉末に代えて、Coγ−Fe23 粉末(粒径0.4μ
m、保磁力650Oe、S* 0.48)を同量使用した以
外は、比較例3と同様にして磁性層を作製した。
【0167】実施例65〜67および比較例6で得られ
た磁性層について、これらの磁性層を消磁した後、30
0Kにおいて初期磁化を測定し、図13に示した。ま
た、これらの磁性層を三和ニュ−テック社製のカ−ドリ
−ダライタを用い、ヘッド磁界約1500Oeに相当す
る記録電流で記録して再生を行ったところ、Coγ−F
23 粉末および図13において磁束密度が飽和磁束
密度に対して50%以上を示したMnBi磁性粉末を用
いた磁性層は記録デ−タを正常に再生することができ
た。このように1500Oeの磁界を印加したときの磁
束密度が飽和磁束密度の50%以上ある磁気記録媒体が
正常に再生できる理由は以下のように考えられる。すな
わち、磁束密度が50%以上あれば、読みだしに十分な
出力が得られるが、この値が50%以下になると磁束密
度が低くなり、出力が低下することとなるほか、図13
に示すように初期磁化曲線の傾きが急峻でない磁気記録
媒体では、記録磁化が磁性層内で不安定となり、その結
果読みだしエラーが生じやすいためと考えられる。
【0168】以上の結果、MnBi磁性粉末を用いた磁
気記録媒体においては、消磁後の初期磁化曲線の立ち上
がりが急峻な磁気記録媒体ほど低電流で飽和記録するこ
とが可能であり、1500Oeの磁界を印加したときの
磁束密度が飽和磁束密度の50%以上である磁気記録媒
体が、カ−ドリ−ダライタで記録再生したときに読み取
りエラ−を起こさず、デ−タの読み取りが可能であるこ
とがわかる。
【0169】《撥水層の形成》磁性層の表面に撥水性の
樹脂からなる撥水層を設けると耐食性や耐酸性がさらに
向上する。形成方法としては、例えば磁気カ−ドに適用
する場合には、剥離層と磁性層との間に設ける。以下に
撥水層を設けた実施例を示す。
【0170】 実施例68 サラン樹脂F216(旭化成社製;塩化ビニリデン樹脂) 100重量部 テトラヒドロフラン 200 〃 トルエン 100 〃 この組成の塗料を、アクリル酸系樹脂からなる剥離層を
形成したPETフィルム上に、乾燥後の厚さが2.5μm
になるように塗布し、撥水層を形成した。この撥水層上
に実施例64で示した磁性塗料を、乾燥後の厚さが15
μmになるように1500Oeの長手配向磁場を印加し
ながら塗布した。しかる後、これを6mm幅にスリット
して磁気テ−プを作製した。
【0171】次いで、このようにして得られた磁気テ−
プの磁性層を、厚さ0.76mmの磁気カ−ド用の塩化ビ
ニル基板に重ね合わせ、上から加熱ロ−ラで押圧して塩
化ビニル基板上に接着させた。接着後、PETフィルム
を剥離し、プレス板で加熱圧着して磁性層を塩化ビニル
基板中に埋設した後、カ−ドサイズに打ち抜いて磁気カ
−ドを作製した。
【0172】実施例69 上記実施例68における撥水塗料の組成において、サラ
ン樹脂F216に代えて、エバ−ル樹脂F216(クラ
レ社製;エチレンビニルアルコ−ル共重合体)を同量使
用した以外は、実施例68と同様にして撥水塗料を調整
し、磁気カ−ドを作製した。
【0173】実施例70 上記実施例68において、磁性層上にさらに撥水層を形
成した以外は、実施例68と同様にして磁気カ−ドを作
製した。すなわち、剥離層上に撥水層を形成し、その上
に磁性層を形成した後、磁性層を撥水層で挟むように、
さらに磁性層上に撥水層を形成した。
【0174】比較例7 上記実施例68において、剥離層と磁性層との間の撥水
層の形成を省いた以外は、実施例68と同様にして磁性
塗料を調整し、磁気カ−ドを作製した。
【0175】各実施例および比較例で得られた磁気カ−
ドについて、磁性層の耐食性と耐酸性を調べた。耐食性
は以下の要領で測定した。まずカ−ド作製直後にカ−ド
の磁性層の一部分を切り出し、300Kにおいて16k
Oeの磁界を印加して磁束密度Bmを測定し、この値を
初期値とした。次に、同一カ−ドを温度60℃、湿度9
0%の環境下に7日間放置した後、再びカ−ドの磁性層
の一部分を同じ面積になるように切り出し、300Kに
おいて16kOeの磁界を印加して磁束密度を測定し
た。このときの初期値に対する磁束密度の劣化率から耐
食性を求めた。また耐酸性は、耐食性と同じ要領で、カ
−ドを5%の酢酸水溶液に室温(25℃)で1日間浸漬
することによる磁束密度の劣化率から求めた。表10は
その結果である。
【0176】
【0177】表10より明らかなように、撥水層を形成
する(実施例68)ことにより、撥水層を形成していな
い磁気カ−ド(比較例7)に比べて、耐食性に関しては
若干優れた特性を示す。一方、耐酸性に関しては、撥水
層を形成していない磁気カ−ド(比較例7)において
は、5%の酢酸水溶液に浸漬することにより、Bmは8
9.2%も低下するのに対して、剥離層と磁性層との間に
撥水層を形成(実施例68、69)すると、Bmの劣化
率は2〜6%となり、耐酸性が顕著に向上することがわ
かる。また磁性層を挟むように撥水層を形成した磁気カ
−ド(実施例70)では、その効果はさらに大きくな
る。これは撥水層が外部から磁気カ−ドの磁性層に水が
侵入するのを防止するためである。
【0178】実施例71〜87 《磁気カ−ドの作製および記録再生特性》次に各種の磁
性粉末を用いて磁性塗料および磁性層を作製し、磁気カ
−ドにして記録再生特性を評価した。磁性粉末として
は、図4〜8に示した粉砕時間を変えて作製した特性の
異なる各種の磁性粉末を使用した。これらの磁性粉末
は、実施例4で示した方法により作製したMnBiイン
ゴットを用い、実施例35で示した2段階粉砕により粉
砕したものである。またこれらの磁性粉末は、粉砕後実
施例41で示した方法により熱処理を行い安定化してい
る。また磁性塗料および磁性層は、実施例64で示した
方法において、結合剤樹脂に対する磁性粉末の重量部を
変えることにより、磁性層中での磁性粉末の体積割合が
異なる磁性層を作製した。なお体積割合は、磁性粉末の
比重を8.0とし、磁性粉末の飽和磁化から磁性粉末が磁
性層中に100%充填されたときの磁束密度を計算で求
め、この値に対する磁束密度の実測値の比から求めた。
【0179】(1)磁気カ−ドの作製 磁気カ−ドは基本的には実施例68に示した方法により
作製したが、再度作製方法を簡単に説明すると以下の様
になる。実施例64の方法により作製した磁気塗膜を6
mm幅にスリットして磁気テ−プとする。次いで、この
ようにして得られた磁気テ−プの磁性層を、厚さ0.76
mmの磁気カ−ド用の塩化ビニル基板に重ね合わせ、上
から加熱ロ−ラで押圧して塩化ビニル基板上に接着させ
た。接着後、PETフィルムを剥離し、プレス板で加熱
圧着して磁性層を塩化ビニル基板中に埋設した後、カ−
ドサイズに打ち抜いて、磁気カ−ドを作製した。なお、
本例では、撥水層を形成していない磁気カ−ドについて
調べた結果を示すが、溌水層を形成しても、磁気カード
の作製方法、記録再生特性については溌水層を形成しな
いものと本質的に変わるものでない。
【0180】(2)デ−タの記録再生 磁気カ−ドを液体窒素中に浸すことにより冷却した。こ
のあと速やかに1000Oeの交流磁界を印加して初期
化した。デ−タの記録は、磁気カ−ドリ−ダ−ライタ−
(三和ニュ−テック社製;CRS−700)を用いて、
記録電流を200ミリアンペアにして、記録密度が21
0FCIおよび420FCIの矩形波を記録した。デ−
タの再生も、同じ磁気カ−ドリ−ダ−ライタ−を用いて
行った。
【0181】表11に各種のMnBi磁性粉末を用いて
作製した磁性層の評価結果を示し、表12に各種のMn
Bi磁性粉末を用いて作製した磁気カ−ドの評価結果を
示す。磁性層に関しては、300Kおよび80Kにおけ
る保磁力Hcと、300Kにおける磁束密度Bm、角形
Br/Bm、およびこの磁性層を温度60℃、相対湿度
90%の雰囲気に7日間放置した後の磁束密度の減少割
合を測定した。また磁気カ−ドに関しては、210FC
Iにおける再生出力、分解能(420FCIにおける再
生出力に対する210FCIにおける再生出力の比)を
測定した。
【0182】これらの磁気カ−ドの主要な記録特性であ
る再生出力、分解能、書き換え防止機能の内、再生出力
は300Kにおける磁束密度に、分解能と書き換え防止
機能は300Kにおける保磁力の影響を強く受ける。
【0183】図14に、300Kにおける保磁力を10
000Oeから15000Oeの範囲にして、磁性粉末
の体積割合を変えることにより磁束密度を変えた磁気カ
−ドについて、磁束密度と210FCIにおける再生出
力の関係を調べた結果を示す。また、図15に、300
Kにおける磁気記録媒体の磁束密度を1200Gから1
800Gの範囲にして、300Kにおける保磁力を変え
た磁気カ−ドの書き換え防止機能を調べた結果を示す。
ここで、書き換え防止機能は以下のようにして行った。
すなわち、磁気カ−ドを消磁した後、300Kにおいて
210FCIの信号を飽和記録(直流電流250mA)
して再生し、この再生出力を初期値とする。次に、記録
を行った磁気ヘッドと同じ磁気ヘッドを用いて約700
0Oeの磁界に相当する直流電流(500mA)を流し
て直流消磁し、その後210FCIの信号出力を再生し
た。
【0184】
【0185】
【0186】表11および表12より明らかなように、
磁性層の保磁力が300Kにおいて5000Oe以下の
ものは分解能が80%以下と低い値になる。また保磁力
が5000Oe以下の磁気記録媒体では、本発明の磁気
記録媒体の特徴である一度記録すると書き換えできない
という特徴も十分には発揮できない。一方80Kにおけ
る保磁力が1500Oe以上の磁性層では、低温におけ
る消磁特性が不十分になるため、室温における記録も不
十分になり、高い出力が得られにくく、特に記録密度の
高い420FCIの出力が低くなる結果、分解能も低く
なる。さらに磁束密度は210FCIの出力に関係し、
図14からわかるように、磁束密度が大きいほど高い出
力が得られ、磁束密度が500G以下では十分な大きさ
の出力が得られない。
【0187】また角形は分解能と密接な関係があり、角
形が0.60以下になると、分解能が顕著に劣化する。ま
たこのような最適の保磁力、磁束密度、角形を得るため
には、磁性層中の磁性粉末の体積割合を最適にする必要
があり、5〜60%の範囲のときに総合的に優れた特性
の磁性層ならびに磁気カ−ドが得られることがわかる。
また300Kにおいて高い保磁力を得るためには、一般
に使用する磁性粉末の粒子径を小さくする必要がある
が、300Kにおける保磁力が16000Oe以上にな
ると磁束密度も小さくなり、出力が低下する。さらに、
図15からわかるように、書き換え防止機能は、300
Kにおける保磁力と密接な関係があり、保磁力が500
0Oe以上あると、防止機能をより発揮する。
【0188】以上の検討の結果、 低温で初期化工程において、十分に消磁される; 室温でのデ−タ書き込みにおいて、できる限り低い電
流値で書き込める; 磁性粉末が分散性、配向性に優れる; 出力、分解能が読み取りエラ−を起こさないだけの十
分に高い値を示す; 本磁気記録媒体の特徴である一度デ−タを記録する
と、室温では容易に書き換えできない性質を示す; 高温、多湿下に放置したときの磁束密度の劣化が小さ
い; という特性を同時に満たす磁気記録媒体とするために
は、磁性粉末の体積割合、300Kおよび80Kにおけ
る保磁力、300Kにおける磁束密度、長手方向の角形
をバランスよく設定する必要があることがわかる。
【0189】これらの因子は相互に関連しており、 磁性層中のMnBi磁性粉末の体積割合の範囲が5〜
60%; 16kOeの磁界を印加して測定した保磁力の範囲
が、300Kにおいて5000〜16000Oe; 16kOeの磁界を印加して測定した保磁力の範囲
が、80Kにおいて100〜1500Oe; 16kOeの磁界を印加して測定した磁束密度の範囲
が、300Kにおいて500〜2500G; 16kOeの磁界を印加して測定した長手方向の角形
の範囲が、0.60〜0.95; という条件を全て同時に満たして、初めて上記の特性を
もった磁気記録媒体が得られることがわかる。
【0190】《多層および磁性粉末混合磁気カ−ドの作
製》MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体は、一度記
録すると室温では容易に書き換えられない特徴を有する
が、この特徴を他の磁気記録媒体と組み合わせて使用す
ると、従来の磁気記録媒体にはない斬新な特徴をもった
磁気記録媒体が得られる。
【0191】磁気カ−ドに適用する場合を例にあげれ
ば、MnBi磁性粉末を用いた磁性層と、Co−γ−F
23 などの通常の磁気記録用の磁性粉末を用いた磁
性層の2種類の磁性層をカ−ド面上の異なる位置に形成
すると、一度デ−タを書き込むと書き換えできない固定
デ−タと、ユ−ザ−が自由に書き換えできるデ−タの2
種類のデ−タを有する磁気カ−ドを得ることができる。
【0192】固定デ−タとしては、偽造や改ざんが行わ
れてはいけないカード所有者のIDや暗証番号、カ−ド
発行場所や発行年月日などを記録し、書き換え可能なデ
−タとしては、カ−ドの使用履歴を使用の都度記録する
などの利用法が考えられる。
【0193】さらに、MnBi磁性粉末を用いた磁性層
と、Co−γ−Fe23 などの他の磁性粉末を用いた
磁性層を積層するか、あるいはMnBi磁性粉末とCo
−γ−Fe23 などの他の磁性粉末を混合して使用す
ると、書き換えできない固定デ−タと、書き換えできる
デ−タの2種類のデ−タを同一トラック上に多重記録す
ることが可能になる。
【0194】特にこのように多重記録を行えば、磁気カ
−ドの印刷領域を狭めることなくデ−タを記録できるの
みならず、書き込まれているデ−タを解読することが極
めて困難になり、極めてセキュリティ−性の高い磁気カ
−ドが得られる。
【0195】MnBi磁性粉末を用いた磁性層と、Co
−γ−Fe23 などの他の磁性粉末を用いた磁性層の
2種類の磁性層をカ−ド面上の異なる位置に形成する場
合には、すでに述べた方法により作製したMnBi磁性
塗料と、通常磁気記録媒体用に使用されている磁性塗料
とを用いて、それぞれ異なる位置に磁性層を形成するこ
とにより実現できる。
【0196】そこで、本実施例では、MnBi磁性粉末
を用いた磁性層と、Co−γ−Fe 23 などの他の磁
性粉末を用いた磁性層をカ−ド面上の異なる位置に形成
する場合、MnBi磁性粉末を用いた磁性層とCo−γ
−Fe23 などの他の磁性粉末を用いた磁性層を積層
する場合、およびMnBi磁性粉末とCo−γ−Fe 2
3 などの他の磁性粉末を混合して使用する場合を例に
あげて説明する。
【0197】《積層、単層混在カード》MnBi磁性粉
末を用いた磁性層をストライプ状に形成しておき、この
磁性層を覆うように、Co−γ−Fe23 やバリウム
フェライト磁性粉末などの磁気記録媒体用に使用されて
いる通常の磁性粉末を用いた磁性層をカ−ド表面全面に
形成した例について説明する。
【0198】実施例88 (1)書き換えできない磁性層用塗料の作製 書き換えできない磁性層用塗料としては、実施例64に
おいて示したMnBi磁性粉末を用いた磁性塗料を使用
した。
【0199】(2)書き換えできる磁性層用塗料の作製 書き換えできる通常の磁気記録用の磁性塗料としては、
保磁力640Oe、飽和磁化74.5emu/g、平均粒
子長さ0.3μmのCo−γ−Fe23 磁性粉末を使用
した。
【0200】 Co−γ−Fe23 磁性粉末 80重量部 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(UCC社製;VAGH) 10 〃 ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業社製;T−5250) 6 〃 シクロヘキサノン 75 〃 トルエン 75 〃 この組成物をサンドグラインダ−ミルにより充分に混練
分散させた後、多官能性ポリイソシアネ−ト化合物(日
本ポリウレタン工業社製;コロネ−トL)を5重量部加
えて磁性塗料とした。
【0201】(3)磁性層の作製 まずMnBi磁性粉末を用いた磁性塗料を、厚さ190
μmのPETベ−スフィルム上に、ストライプ状に、乾
燥後の厚さが5μmになるように1500Oeの長手配
向磁界を印加しながら塗布した。このストライプは幅が
5mmで、磁気カ−ドにしたときに、ストライプが磁気
カ−ドの長辺に並行になるように形成した。引き続きC
o−γ−Fe23 磁性粉末を用いた塗料を、このスト
ライプを覆うようにPETベ−スフィルム面全面に、乾
燥後の厚さが10μmになるように1500Oeの長手
配向磁界を印加しながら塗布した。
【0202】(4)磁気カ−ドの作製 2種類の磁性層を形成した上記のPETベ−スフィルム
をカ−ド形状に打ち抜いて、磁気カ−ドとした。
【0203】(5)初期化および記録再生 初期化は、前述した方法により行った。すなわちカ−ド
を液体窒素に浸すことにより冷却し、このあと速やかに
1000Oeの交流磁界を印加して初期化した。信号の
記録は以下の方法により行った。
【0204】磁気カ−ドリ−ダライタ(三和ニュ−テッ
ク社製;CRS−700)を用いて、MnBi磁性粉末
を用いた磁性層とCo−γ−Fe23 磁性粉末を用い
た磁性層が積層されている部分に、まず書き換えできな
い固定デ−タとして、記録電流100mAで、(0,
1,2,3,4,)の数字の列を記録した。次に書き換
え可能な信号として、Co−γ−Fe23 磁性粉末を
用いた磁性層のみが形成されている部分に、同じ磁気カ
−ドリ−ダライタを用いて、記録電流100mAで、
(5,6,7,8,9)の数字列を記録した。
【0205】次に、記録時と同じ磁気カ−ドリ−ダライ
タを用いて、記録デ−タを再生した。その結果、積層部
分からは、記録時と同じ(0,1,2,3,4,)の数
字の列を再生できた。またCo−γ−Fe23 磁性粉
末を用いた磁性層のみが形成されている部分からは、
(5,6,7,8,9)の数字列を再生できた。次に改
ざんを想定して、記録電流100mAで、積層部分には
(5,6,7,8,9)の数字列を、Co−γ−Fe2
3 磁性粉末を用いた磁性層のみが形成されている部分
には(0,1,2,3,4,)の数字列をオ−バ−ライ
ト記録した。
【0206】再び同じカ−ドリ−ダライタを用いて再生
した結果、Co−γ−Fe23 磁性粉末を用いた磁性
層のみが形成されている部分からは、(0,1,2,
3,4)のデ−タが再生され、正常にデ−タが書き換え
られていることを確認した。
【0207】一方、積層部分は読み取りエラ−となり、
デ−タの再生ができなかった。これは、MnBi磁性粉
末を用いた磁性層に一度書き込まれたデ−タは書き換え
できないため、MnBi磁性粉末を用いた磁性層に最初
に書き込まれた(0,1,2,3,4)のデ−タと、C
o−γ−Fe23 磁性粉末を用いた磁性層にオ−バ−
ライトされたデ−タの(5,6,7,8,9)が混在
し、その結果読み取りエラ−を起こしたためである。
【0208】このようにMnBi磁性粉末を用いた磁性
層と、Co−γ−Fe23 などの他の磁性粉末を用い
た磁性層の2種類の磁性層をカ−ド面上の異なる位置に
形成することにより、一度デ−タを書き込むと書き換え
できない固定デ−タと、ユ−ザ−が自由に書き換えでき
るデ−タの2種類のデ−タを有するカ−ドを得ることが
できる。
【0209】実施例89 実施例88において、Co−γ−Fe23 磁性塗料に
代えて、保磁力2800Oe、飽和磁化64.5emu/
g、平均粒子長さ0.6μmのバリウムフェライト磁性粉
末を使用した以外は、実施例88と同様の方法により、
磁気カ−ドを作製した。このカ−ドについて、記録電流
を200mAとした以外は、実施例88と同じデ−タを
記録し、再生した。結果は、実施例88と同じくMnB
i磁性粉末を用いた磁性層と、バリウムフェライト磁性
粉末を用いた磁性層とが積層された部分は読み取りエラ
−となり、バリウムフェライト磁性粉末を用いた磁性層
のみが形成された部分は正常に書き換えられていること
を確認した。
【0210】《混合磁性粉末使用および磁性層積層磁気
カ−ド》MnBi磁性粉末と、ガンマ酸化鉄磁性粉末、
Co含有酸化鉄磁性粉末、Ba−フェライト磁性粉末、
Sr−フェライト磁性粉末あるいはFeを主体とする金
属磁性粉末等、室温で250〜3000Oeの保磁力を
有する他の磁性粉末とを混合して使用することにより、
またはMnBi磁性粉末を用いた磁性層と上記の磁性粉
末を用いた磁性層とを積層することによっても、MnB
i磁性粉末だけを用いた磁性層と同様にデ−タの改ざん
が困難という特徴を発揮することができる。即ちMnB
i以外の他の磁性粉末、あるいはこの磁性粉末を用いた
磁性層のデ−タが書き換えられても、MnBi磁性粉末
あるいはMnBi磁性粉末を用いた磁性層のデ−タは書
き換えられないため、2種類の信号が混在し、通常のリ
−ダでは読み取り不可となる。
【0211】磁気記録媒体をこのような構成にすること
の利点は、既述したように、 上記の磁性粉末は一般にMnBi磁性粉末に比べて大
きな飽和磁化を有するため、MnBi磁性粉末だけを使
用した場合に比べて磁気記録媒体の磁束密度が大きくな
り、高出力が得られ易い。 酸化物系の磁性粉末を併用する場合には、これらの磁
性粉末には腐食の問題がないため、磁気記録媒体の耐食
性がさらに向上する。 MnBi磁性粉末と他の低保磁力磁性粉末とを併用す
ることにより、デ−タの改ざんが困難という特徴を維持
して、デ−タの書き込み電流値を低くすることが可能に
なる。 デ−タ記録時に同一トラック上に異なるデ−タを重ね
書きし、再生時にフィルタ−等を通して、デ−タを分離
再生することにより、多重記録が可能になる。 の4点である。
【0212】これらの利点の内、〜の利点はMnB
i磁性粉末を用いた磁気記録媒体が持っている特徴と基
本的には変わるものではない。しかし、の利点はMn
Bi磁性粉末と他の磁性粉末とを混合して使用するか、
あるいはこれらの磁性粉末を用いた磁気記録媒体を積層
することにより初めて実現できるものであり、書き換え
できない固定デ−タと、書き換えできるデ−タの2種類
のデ−タを同一トラック上に多重記録することが可能と
なる。そこでの利点を実現するための磁気記録媒体、
およびその記録再生特性について説明する。
【0213】実施例90 (積層磁気カ−ドの作製)MnBi磁性粉末を用いた磁
気記録媒体と他の磁性粉末を用いた磁気記録媒体とを積
層して使用することにより、書き換えできない固定デ−
タと、書き換えできるデ−タの2種類のデ−タを同一ト
ラック上に多重記録できる磁気カ−ドの例について説明
する。
【0214】(1)書き換えできない磁性層塗料の作製 書き換えできない磁性層用の磁性塗料としては、実施例
64において示したMnBi磁性粉末を用いた塗料を使
用した。
【0215】(2)書き換えできる磁性層用塗料の作製 書き換えできる通常の磁気記録用の磁性塗料としては、
保磁力640Oe、飽和磁化74.5emu/g、平均粒
子長さ0.3μmのCo−γ−Fe23 磁性粉末を使用
した。
【0216】 Co−γ−Fe23 磁性粉末 80重量部 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(UCC社製;VAGH) 10 〃 ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業社製;T−5250) 6 〃 シクロヘキサノン 75 〃 トルエン 75 〃 この組成物をサンドグラインダ−ミルにより充分に混練
分散させた後、多官能性ポリイソシアネ−ト化合物(日
本ポリウレタン工業社製;コロネ−トL)を5重量部加
えて磁性塗料とした。
【0217】(3)磁性層の作製 まずCo−γ−Fe23 磁性粉末を用いた上層用の磁
性塗料を、剥離層を形成した厚さ30μmのPETベー
スフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmになるように
15000eの長手配向磁界を印加しながら塗布した。
引き続きこの塗膜の表面に、MnBi磁性粉末を用いた
塗料を乾燥後の厚さが10μmになるように1500O
eの長手配向磁界を印加しながら塗布した。
【0218】(4)磁気カ−ドの作製 実施例68で説明した方法と同じ方法により、磁性層を
磁気テ−プ状にスリットした後、加熱圧着により、塩ビ
基板中に埋め込み、磁気カ−ドとした。
【0219】(5)初期化および記録再生 初期化は、前述した方法と同じ方法により行った。信号
の記録は以下の方法により行った。磁気カ−ドリ−ダラ
イタ(三和ニュ−テック社製;CRS−700)を用い
て、先ず書き換えできない固定デ−タとして、記録電流
200mAで、ビット長さに換算して400μmの正弦
波を記録した。この信号を(A)信号とした。次に書き
換え可能な信号として、同じ磁気カ−ドリ−ダライタを
用いて、記録電流100mAで、ビット長さに換算して
100μmの正弦波を記録した。
【0220】信号の再生は、記録時と同じ磁気カ−ドリ
−ダライタを用いて、再生信号電圧を求めた。再生出力
は、上、下層の信号を分離するために、磁気ヘッドから
の出力をバンドパスフィルタ−を経由させてオシロスコ
−プに取り込み、その再生波形の振幅から求めた。なお
バンドパスフィルタ−としては、測定する周波数を中心
にして+100%、−50%の周波数を通過させるよう
にロ−パスフィルタ−とハイパスフィルタ−の周波数を
設定した。
【0221】実施例91 実施例90において、書き換えできる磁性層に使用する
磁性粉末をCo−γ−Fe23 磁性粉末から、保磁力
2800Oe、飽和磁化64.5emu/g、平均粒子長
さ0.6μmのバリウムフェライト磁性粉末に変えた以外
は、実施例90と同様にして、上層がバリウムフェライ
ト磁性粉末からなる磁性層、下層がMnBi磁性粉末か
らなる磁性層の構成の磁気カ−ドを作製し、実施例90
と同様の方法により信号を記録し、再生した。
【0222】実施例92 実施例90において、書き換えできる磁性層に使用する
磁性粉末をCo−γ−Fe23 磁性粉末から、保磁力
300Oe、飽和磁化74.3emu/g、平均粒子長さ
0.5μmのγ−Fe23 の磁性粉末に変えた以外は、
実施例90と同様にして、上層がγ−Fe23 磁性粉
末からなる磁性層、下層がMnBi磁性粉末からなる磁
性層の構成の磁気カ−ドを作製し、実施例90と同様の
方法により信号を記録し、再生した。
【0223】実施例93 (混合粉使用磁気カ−ドの作製)MnBi磁性粉末と他
の磁性粉末を混合して使用することにより、書き換えで
きない固定デ−タと、書き換えできるデ−タの2種類の
デ−タを同一トラック上に多重記録できるカ−ドの例に
ついて説明する。
【0224】実施例90において、書き換えできる磁性
層用の磁性塗料の組成において、磁性粉末をCo−γ−
Fe23 磁性粉末に変えてCo−γ−Fe23 磁性
粉末とMnBi磁性粉末が重量比で7:3になるように
混合した磁性粉末を使用した磁性塗料を調製した。この
磁性塗料を剥離層を形成した厚さ30μmのPETベ−
スフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmになるように
1500Oeの長手配向磁界を印加しながら塗布した。
その後、実施例90と同様に磁性層を磁気テ−プ状にス
リットした後、加熱圧着により、塩ビ基板中に埋め込
み、磁気カ−ドとした。信号の記録再生は、実施例90
と同様の方法で行った。
【0225】実施例94 実施例93において、Co−γ−Fe23 磁性粉末と
MnBi磁性粉末の混合割合を重量比で7:3から5:
5に変更した以外は、実施例93と同様にして磁性塗料
を調製し、磁気カ−ドを作製して信号の記録再生を行っ
た。
【0226】実施例95 実施例93において、混合する磁性粉末をCo−γ−F
23 磁性粉末とMnBi磁性粉末からγ−Fe2
3 磁性粉末とMnBi磁性粉末に変更し、その混合割合
を重量比で7:3とした以外は、実施例93と同様にし
て磁性塗料を調製し、磁気カ−ドを作製して信号の記録
再生を行った。
【0227】比較例8 実施例90において説明したCo−γ−Fe23 磁性
粉末を用いた磁性塗料のみを用いて、この磁性塗料を剥
離層を形成した厚さ30μmのPETベースフィルム上
に、乾燥後の厚さが20μmになるように1500Oe
の長手配向磁界を印加しながら塗布し、磁気カ−ドを作
製して信号の記録再生を行った。
【0228】比較例9 実施例91において説明したバリウムフェライト磁性粉
末を用いた磁性塗料のみを用いて、この磁性塗料を剥離
層を形成した厚さ30μmのPETベースフィルム上
に、乾燥後の厚さが20μmになるように3000Oe
の長手配向磁界を印加しながら塗布し、磁気カ−ドを作
製して信号の記録再生を行った。
【0229】比較例10 実施例64に示した、MnBi磁性粉末を用いた磁性塗
料を用いて塗膜を作製し、この磁性塗料を剥離層を形成
した厚さ30μmのPETベースフィルム上に、乾燥後
の厚さが20μmになるように1500Oeの長手配向
磁界を印加しながら塗布し、実施例91と同様にして磁
気カ−ドを作製して信号の記録再生を行った。
【0230】実施例90〜95、比較例8〜10で得ら
れた磁気カ−ドについて再生出力を調べた結果を表13
に示す。また同時に記録デ−タの安定性を調べるため
に、信号を記録後、4000Oeの直流磁界を印加する
ことによる再生出力の変化を調べた結果も併せて示す。
【0231】
【0232】表13から明らかなように、MnBi磁性
粉末を用いた磁性層と他の磁性粉末を用いた磁性層を積
層した実施例90〜92の磁気カ−ドでは、固定信号
(A)に書き換えできる信号(B)を重ね書きしても、
固定信号(A)、書き換えできる信号(B)ともに高出
力で分離再生できることがわかる。
【0233】また磁性粉末としてMnBi磁性粉末と他
の磁性粉末を混合して使用したカ−ド(実施例93〜9
5)においても、固定信号(A)、書き換えできる信号
(B)ともに高出力で分離再生できることがわかる。一
方Co−γ−Fe23 磁性粉末およびバリウムフェラ
イト磁性粉末のみを用いたカ−ド(比較例8、9)で
は、(B)信号を重ね書きすると、(A)信号は消去さ
れてしまい、再生することはできない。
【0234】一方MnBi磁性粉末のみを用いたカ−ド
(比較例9)では、(B)信号を重ね書きしても、
(A)信号は消去されずに残り、書き換えできないこと
がわかる。これはMnBi磁性粉末を用いた媒体の特徴
の一つである。
【0235】次に磁界安定性であるが、MnBi磁性粉
末を用いたカ−ド(実施例90〜95、比較例10)は
いずれも、4000Oeの磁界を印加した後でも、最初
に記録した信号(A)は消去されずに残っており、固定
デ−タとしての機能を果たしていることがわかる。一
方、Co−γ−Fe23 磁性粉末およびバリウムフェ
ライト磁性粉末のみを用いたカ−ド(比較例8、9)で
は、4000Oeの磁界を印加すると最初に記録した信
号(A)はもとより、後から記録した信号(B)も再生
不能なレベルまで消去されてしまうことがわかる。
【0236】さらにMnBi磁性粉末と他の磁性粉末の
混合磁性粉末を使用する場合には、実施例93と実施例
94の比較からわかるように、MnBi磁性粉末の混合
割合を増加させると、先に記録する固定信号(A)の出
力の割合が書き換えできる信号(B)の出力に対して大
きくなる。
【0237】本実施例では、磁性層を積層した磁気記録
媒体として、MnBi磁性粉末を用いた磁性層も、Mn
Bi磁性粉末以外の他の磁性粉末を用いた磁性層もとも
に厚さを10μmとした例について説明した。しかし、
両磁性層の厚さを変えることにより、固定信号(A)と
書き換えできる信号(B)の出力割合を任意に変えるこ
とはもちろん可能である。
【0238】また本実施例では、磁性層を積層する場合
および混合磁性粉末を使用する場合の基本的な構成を述
べたものであり、磁性層の表面や裏面、さらに積層する
磁性層の間に他の磁性層や撥水層などを目的に応じて形
成することはもちろん可能である。
【0239】このように、MnBi磁性粉末を含む磁性
層とMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末を用いた磁性
層を積層したり、あるいはMnBi磁性粉末とMnBi
磁性粉末以外の他の磁性粉末との混合磁性粉末を含む磁
性層を形成して磁気カ−ドとする場合、その形態として
は種々の形態があり、前記したようにストライプ状に設
ける他、カ−ド全面に設けてもよい。
【0240】また、図16に示すように、カ−ド基板1
上にストライプ状のMnBi磁性粉末を含む磁性層2を
埋設し、カ−ド基板1およびMnBi磁性粉末を含む磁
性層2上にMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末を用い
た磁性層3を積層してもよく、さらに、図17に示すよ
うに、カ−ド基板1上にストライプ状のMnBi磁性粉
末を含む磁性層2を形成し、この磁性層2を覆うように
MnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末を用いた磁性層3
をカ−ド基板1上に形成してもよい。
【0241】また、図18に示すように、カ−ド基板1
上にストライプ状のMnBi磁性粉末を含む磁性層2を
挟むようにMnBi磁性粉末を含む磁性層2上にMnB
i磁性粉末以外の他の磁性粉末を用いた磁性層3を形成
してもよい。
【0242】さらに、図19に示すように、カ−ド基板
1の表面にストライプ状のMnBi磁性粉末を含む磁性
層2を埋設形成し、カ−ド基板1の裏面にMnBi磁性
粉末以外の他の磁性粉末を用いたストライプ状の磁性層
3を埋設形成してもよく、また、図20に示すように、
カ−ド基板1の表面にストライプ状のMnBi磁性粉末
を含む磁性層2およびMnBi磁性粉末以外の他の磁性
粉末を用いたストライプ状の磁性層3を併設するように
埋設形成してもよい。
【0243】さらに、図21に示すように、カ−ド基板
1の表面全面にMnBi磁性粉末を含む磁性層2を形成
し、カ−ド基板1の裏面全面にMnBi磁性粉末以外の
他の磁性粉末を用いた磁性層3を形成してもよく、ま
た、図22に示すように、カ−ド基板1の表裏面全面に
MnBi磁性粉末を含む磁性層2を形成し、これらの磁
性層2上にさらにMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末
を用いた磁性層3を積層形成してもよい。
【0244】《磁気記録媒体の再生装置》これまで説明
したようにMnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体(例
えば磁気カ−ド)は、一度デ−タを記録すると室温では
容易に消去されることのない性質、すなわち記録したデ
−タは容易には改ざんできないという特徴を有してい
る。一方デ−タの読み取りには、特殊な装置は必要とせ
ず、通常のカ−ドリ−ダを使用できることも大きな特徴
の一つである。このようにカ−ドに書き込まれたデ−タ
の改ざんが困難であるという特徴は、カ−ドそのものの
偽造を防止するための高度な印刷技術等と組み合わせる
ことことにより、強力なセキュリティ−性を発揮する。
【0245】一方、この磁気カ−ドに記録されたデ−タ
が通常の磁気カ−ドと同様の方法により汎用のリ−ダ−
を用いて読み取れる特徴は、この磁気カ−ドのデ−タを
他の通常の磁気カ−ドにコピ−することも可能にする。
人の目を通さないでカ−ドを使用する用途においては、
たとえ偽造カ−ドであっても、記録されているデ−タが
正しいデ−タであれば、真性カ−ドとしてデ−タを読み
取ってしまう。
【0246】そこでこのようなコピ−カ−ドによる再生
を防止し、MnBi磁性粉末を用いていた真正な磁気カ
−ドのみしかデ−タを再生することができない再生方法
および再生装置について説明する。
【0247】実施例96 再生装置を図23に示す。この再生装置10は、カ−ド
挿入口11から挿入した磁気カ−ド12に記録されてい
るデ−タを読み出すための再生ヘッド13が設置されて
おり、その再生ヘッド13とカ−ド挿入口11の間に5
00〜5000Oeの磁界強度を有する永久磁石14が
設置されている。
【0248】図24に示す再生装置10は、図23で示
した装置の永久磁石14の代わりに交流磁界印加用の磁
気ヘッド15が配置されている。再生ヘッド13で再生
する前にカ−ドにこの磁気ヘッドにより磁界を印加でき
るようにする。
【0249】図25に示す再生装置は、図23で示した
装置の再生ヘッド13に直流バイアス電源16が接続さ
れ、その再生ヘッド13によって直流バイアス磁界を印
加しながらデ−タを再生する仕組みになっている。
【0250】本実施例の再生方法および再生装置を用い
ると、不正使用を目的とした磁気カ−ドのみならず通常
の磁気カ−ドのデ−タも誤って消去してしまう恐れがあ
る。しかしこのうよなトラブルは、通常の磁気カ−ドは
挿入できないか、あるいは磁界印加前に磁気カ−ドを排
出するようにカ−ドの形状に工夫を加えるか、磁気デ−
タ以外の識別情報を付加することにより防止することが
できる。
【0251】図26は、磁気カ−ド12の一部に切欠部
17あるいは細孔などを設けて通常の磁気カ−ドと形状
的に異ならしめた例を示している。再生装置に挿入した
際に前記切欠部17あるいは細孔を例えば光学的あるい
は機械的に検出し、切欠部17あるいは細孔を有してい
る磁気カ−ドは挿入を許可し、切欠部17あるいは細孔
がないカ−ドは直ちに再生装置から排出される。
【0252】図27は、磁気カ−ド12の表面に例えば
赤外線あるいは紫外線励起型の蛍光体を含むインクで印
刷して識別マ−ク18を付した例を示しており、この識
別マ−ク18は殆ど透明に近いため、磁気カ−ド12の
外観を損ねることはない。この磁気カ−ドを再生装置に
挿入した際、前記識別マ−ク18に赤外線あるいは紫外
線を照射して蛍光体を励起せしめ、識別マ−ク18から
発する蛍光を検出することにより、識別マ−ク18を付
した磁気カ−ド12と、そうでない磁気カ−ドを識別す
る。
【0253】次に本装置を用いて、磁気カ−ドについて
記録再生を行った結果について説明する。測定には、前
記比較例8〜10に示した磁気カ−ドを用いた。比較例
10の磁気カ−ドがMnBi磁性粉末を用いたカ−ド
で、比較例8および9が通常の磁気記録媒体に使用され
ている磁性粉末であるCo−γ−Fe23 およびバリ
ウムフェライト磁性粉末を用いたカ−ドである。
【0254】まずMnBi磁性粉末を用いたカ−ドを初
期化し、デ−タを記録した。初期化は、すでに述べたよ
うにカ−ドを液体窒素に浸して冷却し、このあと速やか
に1000Oeの交番磁界を印加して行った。次に、磁
気カ−ドリ−ダライタを用いて、記録電流:200ミリ
アンペア、記録密度:210FCI、で矩形波を記録し
た。また比較例7、8のCo−γ−Fe23 およびバ
リウムフェライト磁性粉末を用いたカ−ドについては、
初期化工程を省いて同様の方法でデ−タを記録した。
【0255】デ−タの再生であるが、まず信号の記録に
用いたリ−ダライタを用いて初期再生出力を求めた。こ
のリ−ダライタには磁気ヘッドとしてギャップ長さが2
0ミクロンのMnZnフェライトヘッドを使用してい
る。
【0256】次に図23に示した構成の再生装置を用い
て各カ−ドの再生出力を測定した。この装置の永久磁石
14によるカ−ド表面における磁界は約2500Oeで
ある。この再生装置で測定した再生出力の値は、前記の
リ−ダライタを用いて測定した初期再生出力の値に対す
る相対値として求めた。また再生出力の値は、再生波形
をオシロスコ−プで観測し、その振幅から求めた。
【0257】次に図24に示した、永久磁石14の代わ
りにギャップ長さが40μmのリング型磁気ヘッドを取
り付けた再生装置を用いて、同様の測定を行った。この
ヘッドに周波数が1キロヘルツ、記録電流が100ミリ
アンペアの電流を流して磁界を印加した。この時の磁界
の値は、磁性層の位置で約2000Oeであった。これ
ら2種類の装置を用いた再生出力の測定結果を表14に
示す。
【0258】
【0259】表14から明らかなように、磁気ヘッドで
信号を再生する前にMnBi磁性粉末を用いた磁気カ−
ドの保磁力よりも小さい磁界を磁性層に印加すると、M
nBi磁性粉末を用いた磁気カ−ドにおいては、ほとん
ど再生出力が変化しないのに対して、通常の磁気記録用
の磁性粉末を用いたカ−ドでは、再生出力が著しく低く
なることがわかる。
【0260】このことはMnBi磁性粉末を用いた真正
な磁気カ−ドに記録されているデ−タを、一方の通常の
磁性粉末を用いたカ−ドにコピ−した磁気カ−ドでは、
デ−タが消去あるいは破壊されてしまい、読み取り不能
となることがわかる。従って、MnBi磁性粉末を用い
た真正な磁気カ−ドのデ−タのみが再生不可能となり、
コピ−カ−ドによる不整使用を防止できることがわか
る。
【0261】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の磁性粉
末は、MnBiを主体とする磁性粉末において、磁性粉
末の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下、16KO
eの磁界を印加して測定した保磁力が300Kにおいて
3000〜15000Oeで80Kにおいて50〜10
00Oe、300Kにおいて16KOeの磁界を印加し
て測定した磁化量が20emu/g〜60emu/gで
あって、温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日間
放置したときの磁化量の減少割合が40%以下、金属B
iの量が、式 金属Bi/(MnBi+金属Bi)<0.5 (但し、金属Biは、BiのX線回析ピ−クにおける
(012)面からのピ−ク面積であり、MnBiは、M
nBiのX線回析ピ−クにおける(101)面からのピ
−ク面積である。)で表される量であるMnBi磁性粉
末であり、さらにその磁性粒子の表面近傍に無機物の被
膜を形成したMnBi磁性粉末であって、その製造方法
は、粒子径が50〜300メッシュのMn粉末またはM
nを主体とする粉末およびBiまたはBiを主体とする
粉末を、MnおよびBiの含有量がモル比で45:55
から65:35になるように予め混合した後、この混合
物をプレス成型し、非酸化性あるいは還元性雰囲気中、
Biの融点以下の温度で加熱反応させてMnBiとし、
次いでこのMnBiを非酸化性雰囲気中で粉砕し微粒子
化して行われ、さらに、このようにして得られた磁性粉
末を、酸素を含有する雰囲気中で加熱処理し、またさら
に酸素を含有する雰囲気および非酸化性雰囲気中で加熱
処理しているため、耐食性が著しく向上され、飽和磁化
の劣化が極めて少ない。
【0262】また、このようなMnBiを主体とする磁
性粉末を磁性層中に含有させて、16KOeの磁界を印
加して測定した保磁力が300Kにおいて5000〜1
6000Oeで80Kにおいて100〜1500Oe、
300Kにおいて16KOeの磁界を印加して測定した
磁束密度が500〜2500G、長手方向の角形が0.6
0〜0.95であって、温度60℃、相対湿度90%の環
境下に7日間放置したときの磁束密度の減少割合が50
%以下である磁気記録媒体、さらに、磁性層中に塩基性
官能基を有する結合剤樹脂や塩基性官能基を有する分散
剤を磁性層中にさらに含有させ、また、磁性層の表面あ
るいは磁性層と基体との間に撥水層を設け、さらには、
上記のMnBi磁性粉末とともに通常の磁性粉末を用い
た磁性層を有する磁気カ−ドなどの磁気記録媒体は、一
度記録すると室温では容易に消去されない特徴を有し、
磁気カ−ドにおいて大問題であった改ざんを防止するこ
とができるとともに、高温、高湿下に長期間保存しても
飽和磁化の劣化が極めて少ない。
【0263】さらに、この発明の磁気記録媒体は、室温
では保磁力が10000Oe程度以上と極めて高いが、
100K程度以下の温度では保磁力が1500Oe程度
以下に低くなるという特異な性質を示すため、磁気記録
媒体を100K程度以下の低温に冷却して消磁状態に
し、その後に室温で、磁気ヘッドを用いて信号を記録し
て、室温では記録デ−タを容易に書き換えできないよう
に、磁気記録媒体再生装置の磁気ヘッドの上流側に、磁
性層に対して磁性層の保磁力より小さい直流あるいは交
番磁界を印加する磁界印加手段を設けた磁気記録媒体の
再生装置を用いて記録再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MnBi磁性粉末の保磁力の温度依存性の一例
を示した図である。
【図2】MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体の初期
磁化曲線およびヒステリシス曲線の一例を示した図であ
る。
【図3】MnBi磁性粉末およびCo−γ−Fe23
磁性粉末を用いた磁気カ−ドの再生出力の磁界安定性を
調べた図である。
【図4】MnBi磁性粉末の粉砕時間と粒子径の関係を
調べた図である。
【図5】MnBi磁性粉末の粉砕時間と300Kにおけ
る保磁力との関係を調べた図である。
【図6】MnBi磁性粉末の粉砕時間と80Kにおける
保磁力との関係を調べた図である。
【図7】MnBi磁性粉末の粉砕時間と300Kにおけ
る磁化量との関係を調べた図である。
【図8】MnBi磁性粉末の粉砕時間とS* との関係を
調べた図である。
【図9】S* の測定方法を説明した図である。
【図10】MnBi磁性粉末を加湿環境下に保持したと
きのMnBi磁性粉末のX線回析結果を示した図であ
る。
【図11】光電子分光分析によるMnのスペクトルを示
した図である。
【図12】光電子分光分析によるBiのスペクトルを示
した図である。
【図13】MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体への
印加磁界と磁束密度の関係図である。
【図14】MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体の磁
束密度と出力との関係図である。
【図15】MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体の保
磁力と改ざん防止機能との関係図である。
【図16】本発明で得られる磁気カ−ドの一例を示す拡
大断面図である。
【図17】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図18】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図19】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図20】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図21】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図22】本発明で得られる磁気カ−ドの他の例を示す
拡大断面図である。
【図23】本発明の実施例に係る再生装置の概略構成図
である。
【図24】本発明の他の実施例に係る再生装置の概略構
成図である。
【図25】本発明のさらに他の実施例に係る再生装置の
概略構成図である。
【図26】本発明の実施例に係るカ−ド状磁気記録媒体
の平面図である。
【図27】本発明の他の実施例に係るカ−ド状磁気記録
媒体の平面図である。
【符号の説明】
1 カ−ド基板 2,3 磁性層 10 再生装置 12 磁気カ−ド 13 再生ヘッド 14 永久磁石 15 磁気ヘッド 16 バイアス電源 17 切欠部 18 識別マ−ク
フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平6−192902 (32)優先日 平成6年7月25日(1994.7.25) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−222418 (32)優先日 平成6年8月24日(1994.8.24) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−247117 (32)優先日 平成6年9月14日(1994.9.14) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−247118 (32)優先日 平成6年9月14日(1994.9.14) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 北畑 慎一 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 末吉 俊信 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 大谷 紀昭 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 田川 博文 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上にMnBi磁性粉末とこれ以外の
    他の磁性粉末を含む少なくとも1層の磁性層を設けた磁
    気カードの処理方法において、上記磁性層に磁気記録さ
    れた信号を再生するにあたり、MnBi磁性粉末の保磁
    力よりも小さく、かつMnBi磁性粉末以外の他の磁性
    粉末の保磁力よりも大きな強度の磁界を印加したのち、
    再生することを特徴とする磁気カードの処理方法。
  2. 【請求項2】 MnBi磁性粉末の保磁力よりも小さ
    く、かつMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末の保磁力
    よりも大きな強度の磁界を印加する前にも、あらかじめ
    磁性層に磁気記録された信号の再生を行うようにした請
    求項1に記載の磁気カードの処理方法。
  3. 【請求項3】 磁性層が、MnBi磁性粉末のみを含む
    磁性層と、MnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末を含む
    磁性層とを積層した構成からなる請求項1または2に記
    載の磁気カードの処理方法。
  4. 【請求項4】 磁性層が、MnBi磁性粉末とこれ以外
    の他の磁性粉末の両者を含む磁性層である請求項1また
    は2に記載の磁気カードの処理方法。
  5. 【請求項5】 基体上にMnBi磁性粉末とこれ以外の
    他の磁性粉末を含む少なくとも1層の磁性層を設けた磁
    気カードの処理装置において、上記磁性層に磁気記録さ
    れた信号を再生する前に、MnBi磁性粉末の保磁力よ
    りも小さく、かつMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末
    の保磁力よりも大きな強度の磁界を印加する手段を有す
    ることを特徴とする磁気カードの処理装置。
  6. 【請求項6】 MnBi磁性粉末の保磁力よりも小さ
    く、かつMnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末の保磁力
    よりも大きな強度の磁界を印加する手段とともに、この
    手段の前にあらかじめ磁性層に磁気記録された信号の再
    生を行う手段を有する請求項5に記載の磁気カードの処
    理装置。
  7. 【請求項7】 MnBi磁性粉末に固定信号が記録さ
    れ、MnBi磁性粉末以外の他の磁性粉末に書き換え可
    能な信号が記録されており、後者の書き換え可能な信号
    の記録密度が前者の固定信号の記録密度の3〜100倍
    である請求項5または6に記載の磁気カードの処理装
    置。
JP2000321370A 1994-04-14 2000-10-20 MnBi磁性粉末とこれ以外の他の磁性粉末を用いた磁気カードの処理方法および処理装置 Pending JP2001160203A (ja)

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JP22241894 1994-08-24
JP6-101877 1994-09-14
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JP24711794 1994-09-14
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JP6-247118 1994-09-14
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101693519B1 (ko) * 2015-08-11 2017-01-06 주식회사 포스코 MnBi 영구자석 제조 방법

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