JPH09102117A - 磁気記録媒体およびその記録再生方法、並びにそのための記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体およびその記録再生方法、並びにそのための記録再生装置

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JPH09102117A
JPH09102117A JP28266295A JP28266295A JPH09102117A JP H09102117 A JPH09102117 A JP H09102117A JP 28266295 A JP28266295 A JP 28266295A JP 28266295 A JP28266295 A JP 28266295A JP H09102117 A JPH09102117 A JP H09102117A
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magnetic
signal
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recorded
magnetic powder
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JP28266295A
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English (en)
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Mikio Kishimoto
幹雄 岸本
Noriaki Otani
紀昭 大谷
Akihiko Ito
明彦 伊藤
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Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1度記録した信号の書き換えが極めて困難で
あり、磁気記録媒体に記録されているデ−タの改ざんに
よる不正使用を防止するとともに、信号の読み取りに特
殊な装置を必要とせず、汎用の装置を用いて読み取るこ
とができ、しかも通常の磁気記録媒体へのコピ−も容易
な磁気記録媒体を得ること。 【解決手段】 MnBiを主体とする磁性粉末を含有さ
せた磁性層を有する磁気信号の記録再生が可能な磁気記
録媒体を使用し、該磁性層の任意の領域にまず第1の信
号が記録され、この領域に部分的あるいは全面的に重な
るように第2の信号が記録され、信号の再生時におい
て、第2の信号を消去することにより、第1の信号が再
生される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、MnBi磁性粉
末を含有させた磁性層を有する磁気記録媒体に、第1の
デ−タと第2のデ−タを重ねて記録することにより、通
常の手段では記録されているデ−タを読み取ることが困
難で、再生時には後から記録した第2のデ−タを消去す
ることにより、先に記録した第2のデ−タを読み取るこ
とができるセキュリ−テイ性の高い磁気記録媒体に関す
る。さらにこの磁気記録媒体への信号の記録再生方法お
よびそのための記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、記録再生が容易である
ためにビデオテープ、フロッピ−ディスク、クレジット
カード、プリペイドカード等として広く普及している。
この記録再生が容易というのは、これらの磁気記録媒体
を記録再生する磁気ヘッドの保磁力と関係し、磁気記録
媒体の保磁力が磁気ヘッドの保磁力より高くなると磁気
信号の書き込みが困難となるため、一般に磁気ヘッドの
記録磁界の範囲で記録、再生が可能な保磁力を有する記
録素子が用いられている。ところがこの記録再生が容易
であるという特徴は、逆に、記録したデ−タが誤って消
去されやすく、またデ−タの改ざんも容易に行えるとい
う問題を発生させており、たとえば、磁気カ−ドの場
合、最近、各種ドアやハンドバッグなど我々の身近なと
ころに使用されるようになってきている強い磁界の磁石
で消去されたり、磁気カ−ドのデ−タが書き換えられて
不正使用されるなどの事故や犯罪が多発されている。
【0003】この対策としては、たとえば、光カ−ドの
ようにレ−ザ光により、記録媒体に不可逆な変化を起こ
させ、一度記録すると書き換えができない記録媒体や、
デ−タの改ざんが困難でセキュリティ−性の高いICカ
−ドなどが提案されているが、光カ−ドの場合は、光カ
−ドを記録、再生する光カ−ド専用の高価な装置を新た
に必要とし、またICカ−ドでは半導体を使用するため
高コストになるという難点があり、いずれも世界中に普
及している磁気カ−ドの記録、再生装置と代替するには
至らず、未だに期待されているほど普及していない。
【0004】そのため、磁気カ−ドの改ざんを防止する
方策が種々提案され、たとえば磁気カ−ドにホログラム
印刷や高度な印刷技術を駆使した印刷を施すことが行わ
れているが、この方法ではカ−ドの外見上の偽造を防止
する点では効力を発揮することができても、この改ざん
が、たとえば、不正な手段で入手した正規のクレジット
カ−ドに、他人のクレジットカ−ドから読み取ったデ−
タを書き込むなどの方法で行われた場合、書き込まれた
デ−タが正規のものであるため、これを防止することが
できない。
【0005】これに対し、MnBi磁性粉末を記録素子
として使用する磁気記録媒体は、一度信号を記録すると
室温では容易に消去されることがないという特長を有す
ることが知られており、(特公昭52−46801号、
特公昭54−19244号、特公昭54−33725
号、特公昭57−38962号、特公昭57−3896
3号、特公昭59−31764号)、特に、磁気カ−ド
用のリ−ダが世界の隅々まで普及している今日、デ−タ
が誤って消去されたり、故意に書き換えられるなどの事
故や犯罪が多発しているクレジットカードやキャッシュ
カ−ドなどにおいて、事故や不正使用を防止できるもの
として注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このようにMnBi磁
性粉末を記録素子として使用した磁気記録媒体は、クレ
ジットカードやキャッシュカ−ドなどに適用すると、1
度記録した信号は書き換えが極めて困難なため、カ−ド
に記録されているデ−タの改ざんによる不正使用を防止
する上で大きな威力を発揮する。一方、MnBi磁性粉
末を記録素子として使用した磁気記録媒体は記録されて
いる信号の読み取りに特殊な装置を必要とせず、汎用の
リ−ダ−を用いて読み取ることができる。これは、Mn
Bi磁性粉末を記録素子として使用した磁気記録媒体の
大きな利点である反面、MnBi磁性粉末を使用しない
通常の磁気記録媒体へのコピ−も容易になる。
【0007】本発明は、かかる現状に鑑み種々検討を行
った結果なされたもので、磁性層中にMnBi磁性粉と
300Kで16kOeの磁界を印加したときの保磁力が
200〜8000Oeの範囲の磁性粉とを含有させた磁
気記録媒体を用い、1度信号を記録すると、その後の書
き換えが極めて困難になるMnBi磁性粉末の性質を利
用するものである。すなわち、この媒体に2種類の信号
を重ね記録し、信号の再生時において、後から記録した
信号を消去してから再生することにより、先に記録した
信号のみを読み取るものである。すなわち2種類の信号
が重ね記録されているために、通常の方法では記録され
ている信号を読み取ることができず、再生前に消去する
ことにより、先に記録されている信号を読み取れるよう
にしたものである。さらに本発明では、信号の記録再生
ともに特殊なリ−ダ−ライタ−を必要とせず、基本的に
は汎用のリ−ダ−ライタ−を用いて、記録時には2回記
録し、再生時には消去後再生するだけで、上記の特性を
実現することができる。
【0008】類似の磁気記録媒体として、磁性層中に保
磁力の異なる2種類の磁性粉末を含有させ、記録時に
は、保磁力に応じて記録電流を変えて記録し、また再生
時には、保磁力の低い磁性粉末に対応する消去電流を流
して、保磁力の低い磁性粉末のみ消磁することにより、
保磁力の高い磁性粉末に記録されている情報のみを再生
する方法が知られている。しかしこのような磁気記録媒
体では、単に保磁力の違いを利用して記録および、消磁
を行うため、記録および再生時の電流設定に細心の注意
を払う必要があり、そのための専用の装置が必要とな
る。しかもこの磁気記録媒体では、再生時に多かれ少な
かれ保磁力の大きい磁性粉末も消磁されてしまうため、
再生出力が低下する問題がある。
【0009】一方本発明の媒体では、MnBi磁性粉末
が1度信号を記録すると、その後の書き換えが極めて困
難になる性質を有するため、記録再生ともに電流値を変
える必要がないという極めて大きな利点を有する。さら
にMnBi磁性粉末が上記の性質を有するため、再生時
にMnBi磁性粉末が消磁されることはなく、安定して
再生できるという利点がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、磁性層中にMnBi磁性粉末を含有しており、さら
に本発明の特徴をより効果的に発揮させるためには、M
nBi磁性粉末と共に、300Kで16kOeの磁界を
印加して測定したときの保磁力が200〜8000Oe
の磁性粉末を磁性層中に含有させることが好ましい。こ
の磁性層を形成した媒体を低温に冷却して消磁状態にし
た後、磁性層の任意の領域にまず第1のデ−タを磁気ヘ
ッドを用いて記録する。この第1のデ−タが真のデ−タ
である。次に、この第1のデ−タを記録した領域に、部
分的、あるいは全面的に重なるように第2のデ−タを記
録する。この第2のデ−タは、真のデ−タを読み取りに
くくするための偽のデ−タである。MnBi磁性粉末は
1度信号を記録すると保磁力が10000Oe以上にな
り、その後の書き換えが極めて困難になるため、第2の
デ−タの記録電流の大小にかかわりなく、第2のデ−タ
はMnBi磁性粉末には記録されず、300Kで16k
Oeの磁界を印加して測定したときの保磁力が200〜
8000Oeの磁性粉末にのみ記録される。この状態で
再生しても、2種類のデ−タが混在しているためにデ−
タの読み取りエラ−を引き起こす。
【0011】次にデ−タを再生するときには、まずデ−
タが記録されている領域を消磁する。信号が記録された
状態のMnBi磁性粉末は、保磁力が10000Oe以
上あるため、消磁されず、300Kで16kOeの磁界
を印加して測定したときの保磁力が200〜8000O
eの磁性粉のみが消磁される。偽のデ−タは、300K
で16kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が
200〜8000Oeの磁性粉に記録されているため、
この消磁処理により偽のデ−タは消去されてしまう。こ
の状態で再生することにより、MnBi磁性粉末に記録
された真のデ−タである第1のデ−タのみが再生され
る。第1のデ−タ再生後は再び第2のデ−タを重ね記録
しておくことにより、通常の方法では真のデ−タの読み
取り困難な状態にしておく。
【0012】このように本発明の磁気記録媒体は、Mn
Bi磁性粉末を含有させた磁性層を、好ましくはMnB
i磁性粉末と共に300Kで16kOeの磁界を印加し
て測定したときの保磁力が200〜8000Oeの磁性
粉とを含有させた磁性層を用い、この磁性層に2種類の
信号を重ね記録することにより、通常の方法では信号を
読み取り困難にしたセキュリティ−性の高い磁気記録媒
体である。一方再生時には、この重ね記録した領域を消
磁し、その後再生することにより、最初に記録した真の
信号のみを再生することができる。またこの発明では、
信号の記録再生ともに、特殊な装置を必要とせず、基本
的には汎用の装置を用いて実現できるため、実用的価値
は極めて高い。
【0013】また本発明は、上述のように不正使用防止
を目的とした用途のほかにも、従来の磁気記録媒体では
実現し得なかった特殊な用途にも利用可能となる。例え
ば、磁気記録媒体は通常デ−タを記録後再生し、デ−タ
が不要なときは消磁する。一方本発明の媒体では従来の
磁気記録媒体とは全く逆の使用方法となり、消磁後デ−
タ再生が可能となり、デ−タを読み取る必要のない時
や、デ−タを読み取らないように望むときには、第2の
デ−タを重ね書きしておく。このように本発明は、従来
の磁気記録媒体とは全く異なる使用形態での展開も可能
となる。
【0014】本発明の磁気記録媒体は、磁気カ−ドに適
用したときに特に大きな威力を発揮するが、ラベル状の
基板に形成してこのラベルを他の物品に添付使用する
と、物品の形状に依らず広範囲の用途に利用できる。
【0015】さらに本発明は、上記の磁気記録媒体にこ
のようなユニ−クな特性を発揮させるために、この媒体
を低温に冷却して消磁状態にした後、磁性層の任意の領
域に2度信号を記録し、再生時には、消磁後再生するこ
の媒体特有の記録再生方法およびそのための装置を提供
する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体は、磁性層
中にMnBi磁性粉末を含有しており、さらに本発明の
特徴をより効果的に発揮させるためには、MnBi磁性
粉末と共に、300Kで16kOeの磁界を印加して測
定したときの保磁力が200〜8000Oeの磁性粉末
を磁性層中に含有させることが好ましい。この磁性層を
有する磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態にした
後、磁性層の任意の領域にまず第1のデ−タを記録す
る。その後この第1のデ−タを記録した領域に部分的あ
るいは全面的に重なるように第2のデ−タを記録する。
第1のデ−タは、MnBi磁性粉末にも300Kで16
kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が200
〜8000Oeの磁性粉にも記録されるが、MnBi磁
性粉末は1度記録すると保磁力が10000Oe以上に
なるため、その後の書き換えが困難になる。そこで第2
のデ−タは、主として300Kで16kOeの磁界を印
加して測定したときの保磁力が200〜8000Oeの
磁性粉に、第1のデ−タが書き換えられて記録される。
この状態では、媒体には2種類のデ−タが混在している
ため、通常の手段で記録デ−タを読み取ることは極めて
困難である。
【0017】一方デ−タを再生するときには、デ−タが
記録されている領域をまず消磁する。MnBi磁性粉末
に記録されているデ−タは消磁されないため、300K
で16kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が
200〜8000Oeの磁性粉に記録されているデ−
タ、即ち第2のデ−タのみが消磁される。この状態で再
生すると、記録されているデ−タは第1のデ−タのみに
なるため、第1のデ−タが再生される。すなわち、偽の
デ−タである第2のデ−タは消磁され、真のデ−タであ
る第1のデ−タのみが再生される。また必要なデ−タを
再生すると、再び偽のデ−タである第2のデ−タを重ね
記録して、読み取りが困難な状態にしておく。この記録
および再生を行うための装置としては、基本的には汎用
の装置を利用できる。
【0018】本発明を例えば、磁気カ−ドに適用する場
合には、デ−タ記録時には、カ−ドライタ−へのカ−ド
の挿入、排出過程をそれぞれ第1のデ−タの記録、第2
のデ−タの記録に対応させることができる。また再生時
は、カ−ドリ−ダへの挿入、排出過程をそれぞれ第2の
デ−タの消磁、第1のデ−タの再生過程に対応させるこ
とができる。またカ−ドを再度往復させると、第2のデ
−タを再び記録して、デ−タ読み取りが困難な状態にし
ておくことができる。このように、本発明の磁気記録媒
体は、記録再生に特殊な装置を必要とせず、また変更す
るとしても汎用の装置のソフトウェア−を部分的に変更
する程度であり、基本的には汎用の装置を使用できるこ
とも本発明の大きな特徴の一つである。
【0019】本発明の磁気記録媒体は、プリペ−ドカ−
ド、クレジットカ−ドなどの磁気カ−ドなどに特に適し
た媒体であるが、このようなカ−ド類のみならず、例え
ば、本媒体をバ−コ−ド情報を記録したラベル状にして
添付して使用すると、どのような形態のものにも適用可
能となる。
【0020】以下、この発明について詳細に説明する。
まず、MnBi磁性粉末は、保磁力の温度依存性の一例
を示す図1から明らかなように、室温では保磁力が約1
2000Oeと高いが、温度が下がると低下し、100
Kでは1500Oe以下となる。したがって、この性質
を利用して低温に冷却することにより消磁することがで
き、消磁後は室温で容易に磁化することができる。
【0021】また、このMnBi磁性粉末を用いた磁気
記録媒体の初期磁化曲線を示す図2からも明らかなよう
に、低温に冷却して消磁状態にすると、室温で2000
Oe程度の低い磁界で容易に磁化することができる。し
かしながら、この磁気記録媒体は一度磁化すると、14
000Oe程度の高い保磁力を示すようになり、その後
のデ-タの消去や書き換えがほとんど不可能になる。
【0022】図3はこのような磁気記録媒体を用いた磁
気カ−ドの消去特性を例示したもので、300Kで16
kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が200
〜8000Oeの磁性粉のみを用いた磁気カ−ドでは1
000Oe程度の磁界を印加するとほぼ完全に消磁され
て、再生出力はほぼゼロになり、当然であるが、これら
の磁性粉は容易にデ−タの消磁、記録が行えることをを
示している。これに対し、MnBi磁性粉末を用いた磁
気カ−ドでは、5000Oe程度の磁界を印加しても出
力は30%程度しか減少せず、また8000Oe程度の
磁界を印加しても、出力はまだ50%程度残っている。
このことは、MnBi磁性粉末に1度デ−タを記録する
と、その後デ−タを重ね書きしても、前に記録されたデ
−タが書き換えられずに残ることを示している。
【0023】本発明のMnBi磁性粉末は、粉末冶金
法、アーク炉溶解法、高周波溶解法、溶融急冷法等によ
りMnBiインゴットとし、これを粉砕して製造され、
たとえば、粉末冶金法で製造する場合、インゴットを作
製する工程、これを粉砕する工程および安定化処理工程
に分けて下記のようにして製造される。なお必ずしも粉
砕法によらずMnBi磁性粉末としてもよい。
【0024】まずインゴットの作製は、50〜300メ
ッシュのMn粉およびBi粉を充分に混合し、これを加
圧プレスして成型体とし、インゴットが作製される。な
お、この混合は不活性雰囲気中で行うことが好ましい
が、酸化雰囲気中で混合しても構わない。
【0025】Mn粉およびBi粉を混合する場合、その
比率(Mn/Bi)はモル比で45:55から65:3
5の範囲にするのが好ましく、Biに比べてMnを多く
すると、MnBi磁性粉末としたときにその表面にMn
の酸化物や水酸化物を形成することにより、MnBi磁
性粉末の耐食性が向上し、良質な磁性粉末が得られる。
このため、Biに比べてMnを多くするのがより好まし
い。
【0026】ここで使用されるMn粉およびBi粉とし
ては、不純物の含有量が少ないものを使用するのが好ま
しいが、磁気特性を調整するときには、これにNi、A
l、Cu、Pt、Zn、Feなどの金属を添加して使用
される。このような金属を添加する場合、その添加量
は、MnBiに対して0.6原子%より少なくては磁気
特性を良好に制御することはできず、5.0原子%より
多いとMnBiの結晶構造自体が損なわれMnBi本来
の特性を発揮できなくなるため、0.6〜5.0原子%
の範囲内になるようにするのが好ましい。また、これら
の添加方法としては、あらかじめMnとこれらの元素の
合金を作っておくことが好ましい。
【0027】また、Mn粉またはBi粉としては、あら
かじめ粉砕してあったものを用いてもよいし、フレーク
あるいはショット等の塊を粉砕により微粉化して用いて
もよい。焼結反応により合成する場合には、MnとBi
の接触界面を通しての拡散反応によりMnBiが生成す
るため、Mn粉およびBi粉は50〜300メッシュに
微粉化したものを用いると生成反応がスム−ズに進み、
表面性に反応が大きく左右されるため、Mn粉およびB
i粉表面をエッチングしたり、溶剤により脱脂するな
ど、粉末冶金法で行われている表面処理を施しておくこ
とが好ましい。これらMn粉およびBi粉の混合は、自
動乳鉢、ボールミルなど任意の手段で行われる。
【0028】Mn粉およびBi粉を加圧プレスして成型
体とする場合、加圧力は1〜8t/cm2にするのが好
ましく、このような加圧力で加圧プレスして成型体とす
ると、焼結反応が促進されて均一なインゴットが作製さ
れる。これに対し加圧力が低すぎるとMnBiインゴッ
トの均一性が得られず、高すぎると加圧装置が高価とな
る割にMnBiインゴットの特性が向上されない。
【0029】得られた成型体は、ガラス容器あるいは金
属容器に密封され、容器内は真空あるいは不活性ガス雰
囲気とし、熱処理中の酸化が防止される。不活性ガスと
しては、水素、窒素、アルゴン等が使用できるが、コス
トの点から窒素ガスが最適なものとして使用される。こ
のように成型体を密封した容器は、次いで、電気炉に入
れられて、260〜271℃で2〜15日間熱処理され
る。この熱処理は温度が低すぐると熱処理に時間がかか
るとともに、得られるインゴットの磁化量が低くなり、
また高すぎるとBiが融解して流出し、均一なインゴッ
トが得られなくなるため、Biの融点直下で行うことが
好ましい。
【0030】このようにして作製されたMnBiインゴ
ットは取り出されて、予め自動乳鉢等により不活性ガス
雰囲気中で粗粉砕され、粒子サイズが100〜500μ
mに調整される。そして、ボールミル、遊星ボールミル
等を用いたボ−ルの衝撃を利用した湿式粉砕、あるいは
ジェットミル等の乾式粉砕により粒子間や容器の壁への
粒子の衝突による衝撃により微粒子化される。
【0031】このボ−ルの衝撃を利用した粉砕において
は、粉砕が進むにつれて、ボ−ルの径を段階的に小さく
して粉砕すると、より粒子径の均一な磁性粉が得られ
る。元々、MnBiは六方晶構造を有するために、劈開
する性質を示し、このために高いエネルギーをかけて粉
砕する必要はない。湿式粉砕の場合の液体としては有機
溶媒を使用することが好ましく、さらに有機溶媒として
はトルエン等の非極性用溶媒を使用し、あらかじめ溶媒
中の溶存水分を除去しておくことがことが好ましい。一
方、乾式粉砕の場合には、非酸化性雰囲気で行うことが
好ましい。この非酸化性雰囲気としては、真空あるいは
窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が好適な
ものとして用いられる。
【0032】このようにして得られるMnBi磁性粉末
の平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下の範囲に
あり、粉砕条件により粒子径をコントロールできる。粒
子径が0.1μmより小さいと、最終的に得られる磁性
粉の飽和磁化が低下してしまい、また20μmを超える
と、磁性粉の保磁力が十分な大きさとならず、また最終
的に得られる媒体の表面平滑性が低下し、十分な記録が
行えない。
【0033】以上の工程により、16kOeの磁界を印
加して測定した保磁力が300Kにおいて3000〜1
50000Oeの範囲に、80Kにおいて50〜100
0Oeの範囲にあり、かつ300Kにおいて16kOe
の磁界を印加して測定した飽和磁化量が、20〜60e
mu/gの範囲にあるMnBi磁性粉末が得られる。
【0034】しかしながら、このような方法で作製した
MnBi磁性粉末は、化学的に不安定であり、高温、高
湿下に長時間保持すると腐食が進行し、磁化が劣化する
問題にあるため、以下のような安定化するための処理が
行われる。
【0035】MnBi磁性粉末の安定化処理方法として
は、MnBi磁性粉末の表面近傍に、MnBi磁性粉末
自身が有するMnあるいはBiを用いてこれらの金属の
酸化物、水酸化物の被膜を形成する方法や、Mnあるい
はBiを用いてこれらの金属の窒化物あるいは炭化物等
の被膜を形成する方法、さらにMnBi磁性粉末に直
接、あるいは前述の被膜を形成した上にさらにチタン、
ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、カ−ボンなどの
無機物の被膜を形成させるなどの方法がある。これらの
方法はいずれもMnBi磁性粉末の表面に無機物の被膜
を形成するものであるが、MnBi磁性粉末の表面に界
面活性剤などの有機物の被膜を形成することも有効であ
る。
【0036】これらの安定化処理方法において、代表的
なものとして、酸素を利用してMnBi磁性粉末の表面
にMnおよびBiの酸化物の被膜を形成する方法につい
て説明について説明する。
【0037】まずMnBi磁性粉末を100ppmから
10000ppm程度の酸素を含有する窒素ガスやアル
ゴンガス中、20〜150℃の温度で加熱する。加熱時
間としては0.5時間から40時間程度が適当である。
温度が低いほど、この加熱時間を長くすることが好まし
い。この処理により、MnおよびBiの酸化物が形成さ
れる。特にこの処理において、MnBi磁性粉末の化学
的安定性に大きく寄与するMnの酸化物の優先的に形成
される。
【0038】この酸化の度合いを大きくするほど表面近
傍に形成される酸化物被膜は厚くなり、化学的安定性は
向上するが、飽和磁化の初期値が低下してしまう。この
酸化物の厚さを正確に測定することは困難であるが、磁
性粉末の飽和磁化で表して300Kにおいて20〜60
emu/gの範囲になるように調整することが好まし
い。飽和磁化が20emu/gより小さい磁性粉末は、
酸化物被膜の厚さが厚いため、化学的安定性は良好とな
るが、飽和磁化が低すぎて磁気記録媒体とした時の再生
出力が小さくなる。また60emu/gより大きいとい
酸化物被膜の厚さが薄すぎて化学的安定性に劣る。
【0039】以上のような処理により、MnBi磁性粉
末の化学的安定性は著しく向上するが、この状態の磁性
粉末は触媒活性が極めて強く、磁気記録媒体では、磁性
粉末を通常有機物である結合剤樹脂中に分散させて使用
するため、このような触媒活性の強い磁性粉が有機物で
ある結合剤樹脂と接すると、その触媒性により結合剤樹
脂が分解され、さらに分解した結合剤樹脂から生じた物
質により磁性粉末が腐食する可能性がある。
【0040】そこで次に、前述の処理を行った後、さら
に不活性ガス中熱処理して、MnBi磁性粉末の表面近
傍に形成されているMnの酸化物を安定な酸化物である
MnO2に変換する。このMnO2への変換は、前述の熱
処理温度よりも高いことが好ましく、通常200〜40
0℃程度にするのが好ましい。温度が200℃より低い
とMnO2への変換が不十分であり、400℃より高い
とMnBiがMnとBiに分解し易くなる。また不活性
ガスとしては通常窒素ガスやアルゴンガスが使用される
が、真空中熱処理しても同じ効果が得られる。またさら
にMnO2の構造としては、α型やβ型、さらにγ型が
知られているが、触媒活性が最も小さいβ型にすること
が好ましく、β型にするためには熱処理温度を300〜
400℃にすることが特に好ましい。
【0041】このような熱処理を施すことにより、Mn
Bi磁性粉末の表面近傍には、主としてMnO2で表さ
れるMnの酸化物被膜が形成され、化学的安定性に優
れ、磁性粉末の平均粒子径が0.1μm以上20μm以
下の範囲にあり、かつ16kOeの磁界を印加して測定
した保磁力が、300Kにおいて3000〜15000
Oeの範囲に、80Kにおいて50〜1000Oeの範
囲にあり、かつ300Kにおいて16kOeの磁界を印
加して測定した飽和磁化量が、20〜60emu/gの
範囲にあり、さらに結合剤樹脂中での分散性、配向性な
どに優れた磁性粉末を得ることができる。
【0042】以上のようにして製造されたMnBi磁性
粉末は、300Kで16kOeの磁界を印加して測定し
たときの保磁力が200〜8000Oeの他の酸化物磁
性粉末、金属磁性粉末、合金磁性粉末や化合物磁性粉末
と共に使用することが好ましい。この酸化物磁性粉末と
しては、ガンマ酸化鉄磁性粉末、マグネタイト磁性粉末
やガンマ酸化鉄マグネタイト磁性粉末などの酸化鉄磁性
粉末、二酸化クロム磁性粉末、コバルトを含有させたコ
バルト含有酸化鉄磁性粉末などが使用される。
【0043】またこれらの磁性粉末の形状としては、特
に限定されることはなく、針状であっても、また粒状で
あっても構わない。なぜならこれらの磁性粉末は、Mn
Bi磁性粉末に記録された真のデ−タの読み取りを困難
にすることを目的に添加しており、これらの磁性粉末に
記録されたデ−タを読み取ることを目的にしていないた
めである。したがって、磁界によってある程度磁化を維
持できる保磁力と磁化量を有しているものならば、その
磁気特性や形状に関しては、特に制限はない。
【0044】またバリウムフェライト磁性粉末、ストロ
ンチウムフェライト磁性粉末や鉛フェライト磁性粉末な
どの六方晶フェライト磁性粉末は一般に、上記の磁性粉
末に比べて保磁力が大きく消磁されにくい。そこでこれ
らの磁性粉末を使用すると、磁石等により偽のデ−タで
ある第2デ−タが消磁されることを防止する効果が大き
い。
【0045】また金属磁性粉末としては、鉄を主成分と
した金属磁性粉末が好適なものとして使用される。また
合金磁性粉末としては、鉄−ニッケル合金磁性粉末や鉄
−コバルト合金磁性粉末などが好適なものとして使用さ
れる。
【0046】次に、MnBi磁性粉末と共に、300K
で16kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が
200〜8000Oeの他の磁性粉末を使用する場合に
は、MnBi磁性粉末とこれらの磁性粉末の添加割合
を、9:1から6:4の範囲にすることが好ましい。M
nBi磁性粉末自身にある程度保磁力の分布があるた
め、MnBi磁性粉末だけでも保磁力の低い成分に第2
のデ−タが記録され、第1のデ−タの読み取りを困難に
する効果がある。しかし真のデ−タである第1のデ−タ
に対して、偽のデ−タである第2のデ−タの出力が低い
ため、カ−ドリ−ダによっては第1のデ−タが読み取ら
れる可能性が高くなる。したがって第2のデ−タの出力
を高くして、第1のデ−タの読み取りを確実に防止する
ためには、MnBi磁性粉末に対して、300Kで16
kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が200
〜8000Oeの他の磁性粉末を1/9以上添加するこ
とが好ましい。またこの比が大きくなるほど第1のデ−
タの読み取り防止効果は大きくなるが、第1のデ−タの
出力そのものが小さくなり、消磁後第1のデ−タ再生時
に読み取りエラ−が生じ易くなるため、上記の比を4/
6以下にすることが好ましい。
【0047】本発明の磁気記録媒体は常法に準じて作製
され、たとえば、これらの磁性粉末を結合剤樹脂、有機
溶剤などとともに混合分散して磁性塗料を調製し、これ
を基体上に塗布、乾燥して磁性層を形成して作製され
る。
【0048】ここに用いる結合剤樹脂としては、一般に
磁気記録媒体に用いられているものがいずれも使用さ
れ、たとえば、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポ
リビニルブチラール樹脂、繊維素系樹脂、フッ素系樹
脂、ポリウレタン系樹脂、イソシアネート化合物、放射
線硬化型樹脂などが用いられる。
【0049】なおMnBi磁性粉末は、すでに述べたよ
うに水分が存在すると腐食、分解しやすく、特に水分が
酸性のときに腐食、分解が顕著になる。そこでMnBi
磁性粉末を磁性層中に均一に分散させる場合は上記の結
合剤樹脂で十分であるが、水分に対する安定性をさらに
向上させる上で、上記の結合剤樹脂中にさらに塩基性官
能基を含ませることにより、化学的安定性をさらに向上
させることができる。この塩基性官能基としては、たと
えば、イミン、アミン、アミド、チオ尿素、チオゾ-
ル、アンモニウム塩またはホスホニウム化合物等が適し
ている。
【0050】また磁性層中に塩基性官能基を含ませる手
段として、塩基性官能基を有する添加剤を添加すること
も効果的である。この添加剤に含ませる塩基性官能基
も、前記結合剤樹脂と同様に、イミン、アミン、アミ
ド、チオ尿素、チオゾ-ル、アンモニウム塩またはホス
ホニウム化合物等が適している。
【0051】具体的には、メチルアミン、エチルアミ
ン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミ
ン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、
オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデ
シルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テト
ラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、
ステアリルアミンなどの脂肪族第一アミン、ジメチルア
ミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロ
ピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどの脂
肪族第二アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミ
ン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミ
ルアミン、トリドデシルアミンなどの脂肪族第三アミ
ン、さらに脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族
アミンなどが好適なものとして使用される。さらにSi
やAl、Ti等のカップリング剤を各種のアミンで変性
したものなども好適なものとして使用できる。
【0052】このような塩基性官能基を含有する添加剤
の添加量は、一般的には多くなるほど化学的安定性は向
上するが、多過ぎると磁性層の磁束密度が低下する。そ
こで、通常は磁性粉末に対して重量比で1〜15%程度
とすることが好ましいが、磁性層の磁束密度をさほど低
下させることなく耐食性向上に効果の大きい範囲とし
て、2〜10重量%程度添加することが、特に好まし
い。
【0053】有機溶剤としては、トルエン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノ
ン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなど従来汎用され
ている有機溶剤が単独でまたは2種以上混合して使用さ
れる。また前述した理由により、これらの有機溶剤中に
溶存している水分はできる限り除去してから使用するこ
とが好ましく、また有機溶剤の中でも水を溶解しにくい
非極性の溶剤を使用することがさらに好ましい。
【0054】なお、磁性塗料中には、通常使用されてい
る各種の添加剤、例えば分散剤、潤滑剤、帯電防止剤な
どを任意に添加使用してもよいが、酸性の物質が存在す
るとMnBi磁性粉末が劣化しやくなる。したがって磁
気記録媒体に通常使用されている酸性の潤滑剤は、でき
る限り添加量を少なくすることが化学的安定性の面から
は好ましい。
【0055】磁性粉末の含有割合としては、磁性層中に
占める磁性粉の体積割合が5〜60%になるようにする
ことが好ましい。この割合が小さいと磁気記録媒体にし
たときの出力が低くなり、また同時に耐食性も低下す
る。一方磁性粉末の体積割合が大きすぎると、磁性粉の
分散性が悪くなって磁性粉末の配向性が低下すると同時
に、結合剤樹脂による磁性粉の埋包効果が不十分にな
り、化学的安定性が低下する。このようにMnBi磁性
粉末の塗膜中で占有体積割合は、通常の磁気記録媒体と
同様に磁気特性や記録特性に影響を与えることの他に、
この磁性粉を用いた塗膜特有の問題点である化学的安定
性にも影響を与える。したがって磁気特性や記録特性の
みならず、化学的安定性にも優れた塗膜を得るには、磁
性粉末の体積割合が5〜60%になるようにすることが
好ましく、特に20〜50%としたときにの磁気特性や
記録特性など総合特性において、最も優れた特性が得ら
れる。
【0056】このようにMnBi磁性粉粉末と300K
で16kOeの磁界を印加して測定したときの保磁力が
200〜8000Oeの他の磁性粉末から成る磁性粉末
を結合剤樹脂、有機溶剤などとともに混合分散して磁性
塗料を調整し、この磁性塗料をポリエステルなどの基体
上に任意の塗布手段によって塗布し、乾燥して磁性層を
形成する際、磁性塗料を基体上に塗布したのち、磁性層
面に対して平行に磁界配向を行なうのが好ましい。この
磁界強度としては、1000〜5000Oe程度が好ま
しい。
【0057】一方磁気記録媒体の作製方法として、塗布
法によらず上記の磁性塗料を印刷法により作製すること
も可能である。この場合には磁界配向処理を行わず、磁
気記録媒体が作製される。このように磁界配向処理を行
わずに作製された磁気記録媒体においても、本発明の効
果に何ら変わりないことは言うまでもない。
【0058】このようにして磁性層を形成すると、その
保磁力Hc、磁束密度Bm、角型Br/Bmは、MnB
i磁性粉粉末と共に使用する磁性粉末の種類や添加割合
によって異なるが、300Kの温度において16kOe
の磁界を印加して測定したときに、保磁力は200〜1
2000Oeの範囲に、磁束密度は200〜3000G
の範囲になる。
【0059】本発明の磁気記録媒体をプリペ−ドカ−ド
などの磁気カ−ドに適用する場合には、磁性層の厚さと
して5〜30μmになるように塗布した後、さらにその
表面に保護層やカラ−層などの隠蔽層を0.5〜10μ
mの厚さになるように形成することが好ましい。
【0060】またMnBi磁性粉末を含む磁性層の表面
にさらに撥水性樹脂からなる撥水層を設けると、化学的
安定性や耐薬品性がさらに向上する。この撥水性樹脂と
しては、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-ビニルア
ルコ-ル系重合体、フッ素系樹脂またはフッ化ビニリデ
ン系樹脂、アクリル系樹脂等が使用できる。またこの撥
水層の厚さとしては、0.5〜5μmが好ましく、これ
より薄いと十分な撥水効果が得られず、一方厚すぎると
スペ-シングロスが大きくなり、記録媒体にしたときの
出力が低下する。
【0061】以上は、磁性層中にMnBi磁性粉末と3
00Kで16kOeの磁界を印加して測定したときの保
磁力が200〜8000Oeの他の磁性粉末とを共に含
有させた媒体について説明したが、MnBi磁性粉末か
ら成る磁性層と、300Kで16kOeの磁界を印加し
て測定したときの保磁力が200〜8000Oeのの他
の磁性粉末から成る磁性層を積層させることによっても
同様の特性を得ることができる。しかし、磁性層中に、
MnBi磁性粉末と通常磁気記録媒体用に使用されてい
る他の磁性粉末とを共に含有させた媒体の方が、製造コ
ストが低くなり、実用的メリットは大きい。
【0062】このようにして作製された磁気記録媒体
は、低温に冷却して消磁状態にした後に記録される。M
nBi磁性粉末を含有する磁性層を用いた磁気記録媒体
を消磁状態にするには、MnBi磁性粉末が室温では極
めて大きな保磁力を有する反面、100K程度以下の低
温に冷却すると、保磁力が著るしく小さくなるという性
質を利用して行う。100K程度以下の温度において磁
気記録媒体に300〜3000Oeの交番磁界を印加す
ることにより、本発明の磁気記録媒体を消磁状態にする
ことができる。
【0063】デ−タの記録方法としては、デ−タを2度
記録することを除けば、通常の磁気記録媒体への記録方
法と特に変わるものではない。たとえば磁気カ−ドに適
用する場合には、磁気カ−ド用のエンコ−ド機や磁気カ
−ドリ−ダライタ−を用いて、まず真のデ−タである第
1のデ−タを記録する。次にこの第1のデ−タを記録し
た領域に、部分的あるいは全面的に重なるように第2の
デ−タを記録する。この第2のデ−タは第1のデ−タを
読み取りを困難にすることを目的にした偽のデ−タであ
るため、特に意味のあるデ−タを記録する必要はない。
また第2のデ−タの記録位置としては、第1のデ−タの
記録位置に全面的に重ねて記録することが好ましいが、
ある程度重ねて記録することにより、第1のデ−タの読
み取りを防止する効果を発揮できる。
【0064】一方、記録デ−タを再生するときには、ま
ず上記のデ−タが記録されている領域を消磁する。この
消磁により、300Kで16kOeの磁界を印加して測
定したときの保磁力が200〜8000Oeの磁性粉末
に記録されている第2のデ−タが消磁される。この消磁
は、第2のデ−タを全て消磁することが好ましいが、全
て消磁されなくても、ある程度消磁して第2のデ−タか
らの出力を低減するだけでも、第1のデ−タの読み取り
精度が高くなる。またこの消磁方法としては、カ−ドリ
−ダライタ−に装備されている磁気ヘッドに直流あるい
は交流電流を流して消磁してもよいし、永久磁石等を用
いて、上記のデ−タ記録領域を消磁することも可能であ
る。
【0065】上記の消磁により、偽のデ−タである第2
のデ−タは消磁されるが、MnBi磁性粉末に記録され
ている真のデ−タである第1のデ−タだけは消磁されな
いため、第1のデ−タだけが再生される。この再生方法
は、通常の磁気記録媒体の再生方法と特に変わるもので
はなく、カ−ドリ−ダ等を用いて再生される。
【0066】また既述したように、本発明の磁気記録媒
体は、記録再生ともに基本的には汎用の装置を利用でき
る大きな特徴がある。たとえば磁気カ−ドに適用する場
合には、デ−タ記録時にはカ−ドライタ−へのカ−ドの
挿入および排出過程を第1のデ−タ記録および第2のデ
−タ記録に対応させることができる。また再生時には、
カ−ドリ−ダへの挿入および排出過程をそれぞれ第2の
デ−タの消磁および第1のデ−タの再生に対応させるこ
とができる。また第1のデ−タを再生した後、再び偽の
第2のデ−タを記録して第1のデ−タの読み取りを防止
するためには、カ−ドを再度挿入、排出することによ
り、第2のデ−タを重ね記録することができる。
【0067】このように本発明の磁気記録媒体は、記録
再生に特殊な装置を必要とせず、また変更するとしても
汎用の装置のソフトウェア−を変更する程度であり、装
置成のハ−ドウェア−の部分をそのまま使用することが
できる。以上説明したように本発明の磁気記録媒体は、
従来の磁気記録媒体には見られない極めて実用的価値の
高い特徴をもった磁気記録媒体であると同時に、この磁
気記録媒体にデ−タを記録再生するための装置として、
基本的には汎用の装置を利用できるという極めて大きな
利点をもっている。
【0068】
【実施例】
《MnBi磁性粉末の作製》粒子サイズが200メッシ
ュになるように粉砕したMn粉末およびBi粉末を、M
nとBiがモル比で55:45になるように秤量し、ボ
−ルミルを用いて十分混合した。
【0069】次にこれらの混合物を、加圧プレス機を用
いて、3t/cm2の圧力で直径20mm、高さ10m
mの円柱状に成型した。この成型体を密閉式のアルミ容
器に入れ、真空に引いた後、窒素ガスを0.5気圧導入
した。次にこの容器を電気炉に入れ、270℃の温度で
10日間熱処理した。熱処理後、MnBiインゴット空
気中に取り出し、乳鉢で軽く粉砕して磁気特性を測定し
た。300Kで最大磁界16kOeの磁界を印加して測
定した保磁力は840Oeで、磁化量は53.6emu
/gであった。
【0070】次に上記の粗粉砕したMnBi粉末を、遊
星ボールミルを用いて微粉砕した。内容積1000cc
のボ−ルミルポットに、直径3mmのジルコニアボ−ル
を内容積の1/3を占めるように充填した。この中に、
粗粉砕したMnBi粉末500gと、溶媒としてトルエ
ンを500g入れ、回転数150rpmで4時間粉砕し
た。得られたMnBi磁性粉末を取り出し、トルエンを
蒸発させた後、磁気特性を測定した。300Kで最大磁
界16kOeの磁界を印加して測定した保磁力および磁
化量は、それぞれ8600Oeおよび39.2emu/
gであった。
【0071】前記の方法により得られたMnBi磁性粉
末に、以下の方法で安定化処理を施した。トルエンに浸
した状態でMnBi磁性粉末を取り出し、熱処理容器に
移して室温で約2間真空乾燥した。次に同じ容器に入れ
たまま、酸素を1000ppm含有する窒素ガスを1気
圧導入し、40℃の温度において、15時間熱処理を行
った。
【0072】引き続き第2段階の熱処理として、容器に
充填されている酸素混合ガスを真空引きして除去した
後、窒素ガスを0.5気圧導入し、温度を330℃まで
上昇させた後、この温度で2時間加熱処理した。
【0073】上記の方法により、最終的に得られたMn
Bi磁性粉末の平均粒子径は、1.8μmで、300K
で最大磁界16kOeの磁界を印加して測定した保磁力
および磁化量は、それぞれ8500Oeおよび46.3
emu/gであった。
【0074】《磁性塗料の作製》 〔実施例1〕磁性粉末として、上記の方法で作製したM
nBi磁性粉末と針状のγ−Fe23磁性粉末を用い、
以下の組成物を調合した。γ−Fe23磁性粉末として
は、平均粒子サイズ0.4μm、保磁力340Oe(3
00Kで16kOeの磁界を印加した時の値、以下同
じ)、飽和磁化74.6emu/gのものを用いた。
【0075】 MnBi磁性粉末(Hc:8500Oe) 70 重量部 γ−Fe23 磁性粉末(Hc:340Oe) 30 重量部 VAGH(UCC社製塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体) 25 重量部 メチルイソブチルケトン 50 重量部 トルエン 50 重量部 この組成物をボ−ルミルにより十分分散させた後、厚さ
190μmのPETベ−スフイルム上に、乾燥後の厚さ
が15μmになるように2000Oeの長手配向磁場を
印加しながら塗布した。
【0076】〔実施例2〕実施例1における磁性塗料の
組成において、MnBi磁性粉末およびγ−Fe23
磁性粉末の添加割合を、それぞれ70重量部および30
重量部から、80重量部および20重量部に変更した以
外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を
作製した。
【0077】〔実施例3〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、平均粒子サイズ0.4
μm、保磁力340Oe、飽和磁化74.6emu/g
のγ−Fe23磁性粉末に代えて、平均粒子サイズ0.
9μm、保磁力1750Oe、飽和磁化53.3emu
/gのバリウムフェライト磁性粉末に変更し、かつMn
Bi磁性粉末およびバリウムフェライト磁性粉末の添加
割合を、それぞれ80重量部および20重量部とした以
外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を
作製した。
【0078】〔実施例4〕実施例3における磁性塗料の
組成において、MnBi磁性粉末およびバリウムフェラ
イト磁性粉末の添加割合を、それぞれ80重量部および
20重量部から、90重量部および10重量部に変更し
た以外は、実施例3と同様にして磁性塗料を調整し、塗
膜を作製した。
【0079】〔実施例5〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、平均粒子サイズ0.4
μm、保磁力340Oe、飽和磁化74.6emu/g
のγ−Fe23磁性粉末に代えて、平均粒子サイズ0.
9μm、保磁力2750Oe、飽和磁化53.4emu
/gのバリウムフェライト磁性粉末に変更し、かつMn
Bi磁性粉末およびバリウムフェライト磁性粉末の添加
割合を、それぞれ80重量部および20重量部とした以
外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を
作製した。
【0080】〔実施例6〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、平均粒子サイズ0.4
μm、保磁力340Oe、飽和磁化74.6emu/g
のγ−Fe23磁性粉末に代えて、平均粒子サイズ3.
5μm、保磁力7800Oe、飽和磁化40.9emu
/gのサマリウムコバルト磁性粉末に変更し、かつMn
Bi磁性粉末およびサマリウムコバルト磁性粉末の添加
割合を、それぞれ80重量部および20重量部とした以
外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を
作製した。
【0081】〔実施例7〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、平均粒子サイズ0.4
μm、保磁力340Oe、飽和磁化74.6emu/g
のγ−Fe23磁性粉末に代えて、平均粒子サイズ0.
2μm、保磁力230Oe、飽和磁化70.6emu/
gの粒状のコバルト添加γ−Fe23 磁性粉末に変更
し、かつMnBi磁性粉末およびコバルト添加γ−Fe
23 磁性粉末の添加割合を、それぞれ70重量部およ
び30重量部とした以外は、実施例1と同様にして磁性
塗料を調整し、塗膜を作製した。
【0082】〔実施例8〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、γ−Fe23磁性粉末
を添加せず、MnBi磁性粉末のみを使用して、MnB
i磁性粉末の添加割合を100重量部として、実施例1
と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を作製した。
【0083】〔比較例1〕実施例1における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、MnBi磁性粉末を添
加せず、保磁力340Oeのγ−Fe23 磁性粉末の
みを使用して、γ−Fe23 磁性粉末の添加割合を1
00重量部として、実施例1と同様にして磁性塗料を調
整し、塗膜を作製した。
【0084】〔比較例2〕実施例3における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、MnBi磁性粉末を添
加せず、保磁力1750Oeのバリウムフェライト磁性
粉末のみを使用して、バリウムフェライト磁性粉末の添
加割合を、100重量部として、実施例3と同様にして
磁性塗料を調整し、塗膜を作製した。
【0085】〔比較例3〕実施例5における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、MnBi磁性粉末を添
加せず、保磁力2750Oeのバリウムフェライト磁性
粉末のみを使用して、バリウムフェライト磁性粉末の添
加割合を、100重量部として、実施例5と同様にして
磁性塗料を調整し、塗膜を作製した。
【0086】〔比較例4〕実施例6における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、MnBi磁性粉末を添
加せず、保磁力7800Oeのサマリウムコバルト磁性
粉末のみを使用して、サマリウムコバルト磁性粉末の添
加割合を、100重量部として、実施例6と同様にして
磁性塗料を調整し、塗膜を作製した。
【0087】〔比較例5〕実施例7における磁性塗料の
組成において、磁性粉末として、MnBi磁性粉末を添
加せず、保磁力230Oeの粒状のコバルト添加γ−F
23磁性粉末のみを使用して、粒状のコバルト添加γ
−Fe23磁性粉末の添加割合を、100重量部とし
て、実施例7と同様にして磁性塗料を調整し、塗膜を作
製した。
【0088】このようにして作製した塗膜について、3
00Kで16kOeの磁界を印加して測定した保磁力H
c、磁束密度Bm、長手方向の角形Br/Bmを測定し
た結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】なお本実施例として、MnBi磁性粉末と
共に添加する磁性粉末として、ガンマ酸化鉄磁性粉末、
バリウムフェライト磁性粉末、サマリウムコバルト磁性
粉末および粒状のコバルト添加γ−Fe23磁性粉末を
例にあげて説明したが、このほかにも300Kで16k
Oeの磁界を印加して測定したときの保磁力が200〜
8000Oeの磁性粉末は全て使用可能である。即ち、
300Kで16kOeの磁界を印加して測定したときの
保磁力が200〜8000Oeの範囲にあり、記録した
デ−タを維持できて、任意に消去および書き換えが可能
な磁性粉末であれば、基本的には全て使用可能である。
【0091】さらに本実施例では、媒体構成として、最
も基本的な構成のものについて説明したが、磁性塗料中
に各種の添加剤を添加しても、本発明の特徴をなんら損
なうものではない。また本媒体をプリペ−ドカ−ド等の
磁気カ−ドに適用する場合には、磁性層の表面に各種の
保護層やカラ−層などの隠蔽層を形成することが好まし
い。このような保護層や隠蔽層を形成しても、本発明の
特徴をなんら損なうものではないことも言うまでもな
い。
【0092】《磁気カ−ドの作製および記録再生方法》 〔実施例9〕実施例および比較例の塗膜を用いて磁気カ
−ドを作製した。磁気カ−ドは厚さ190μmのPET
ベ−スフイルムに塗布した磁性層を磁気カ−ドの形状に
打ち抜いて作製した。
【0093】まずこれらの磁気カ−ドを液体窒素中に浸
すことにより冷却し、このあと速やかに1000Oeの
交流磁界を印加して消磁し、初期化した。信号の記録に
は、磁気カ−ドリ−ダライタ−(三和ニュ−テック製C
RS−700)を用いて、記録電流を200ミリアンペ
アにして、まず第1の信号として1から0までの10個
の数字〔デ−タ(A)〕を記録した。次に第2の信号と
して同一トラック上にaからjまでのアルファベットを
10文字〔デ−タ(B)〕記録した。
【0094】信号の再生は、カ−ドアナライザ−(ミナ
トエレクトロニクス製モデル6900)を用いて、以下
の3種類の方法で行った。
【0095】(1)カ−ドアナライザ−を用いて、第1
の信号と第2の信号を重ね書きした部分を、通常の方法
により記録デ−タを再生し、同時に再生出力を求めた。
【0096】(2)記録時と同じ磁気カ−ドリ−ダライ
タ−を用いて、記録電流200ミリアンペアの直流電流
を流して、第1の信号と第2の信号を重ね書きした部分
を、まず消磁した。次にカ−ドアナライザ−を用いて、
消磁した部分を通常の方法により再生し、同時に再生出
力を求めた。
【0097】(3)第1の信号と第2の信号を重ね書き
した部分を、まず磁界強度3000Oeの永久磁石でま
ず消磁した。次にカ−ドアナライザ−を用いて、消磁し
た部分を通常の方法により再生し、同時に再生出力を求
めた。
【0098】実施例および比較例の磁気カ−ドについ
て、(1)〜(3)の方法で再生した結果を表2に示
す。
【0099】
【表2】
【0100】実施例1〜8に示す、MnBi磁性粉末に
針状γ−Fe23磁性粉末、バリウムフェライト磁性粉
末、サマリウムコバルト磁性粉末、粒状のコバルト添加
γ−Fe23磁性粉末を添加したカ−ド、およびMnB
i磁性粉末のみを使用したカ−ドでは、通常の方法で再
生(再生方法1)すると、いずれも再生エラ−を引き起
こす。これは第1の信号であるデ−タ(A)は、MnB
i磁性粉末にも共に添加した他の磁性粉末にも記録され
るが、後から記録した第2の信号であるデ−タ(B)
は、MnBi磁性粉末にはほとんど記録されず、主とし
て共に添加した他の磁性粉に記録される結果、2種類の
デ−タが混在してしまい再生エラ−を引き起こしたもの
である。またMnBi磁性粉末のみを使用した実施例8
のカ−ドにおいても、再生エラ−を引き起こしたのは、
MnBi磁性粉末がある程度保磁力に分布があり、その
結果、保磁力の低い成分に第2の信号であるデ−タ
(B)が書き込まれたためである。
【0101】一方、MnBi磁性粉末を使用していない
比較例1〜5のカ−ドにおいては、いずれのカ−ドも第
2の信号であるデ−タ(B)が再生される。これは最初
に記録した第1の信号が後から記録した第2の信号によ
って書き換えられたためであり、通常の磁気記録媒体が
示す性質である。
【0102】次に、本発明の記録再生方法である、第1
の信号に第2の信号を重ね記録した後、磁気ヘッドで消
磁した後再生(再生方法2)すると、実施例1〜8に示
すいずれのカ−ドにおいても、先に記録した第1の信号
であるデ−タ(A)が正常に再生される。これは後から
記録した第2の信号であるデ−タ(B)が消去されたこ
とにより、記録されている信号はデ−タ(A)のみとな
り、その結果正常に再生されるようになったためであ
る。
【0103】一方、MnBi磁性粉末を使用していない
比較例1〜5のカ−ドにおいては、いずれのカ−ドも再
生エラ−を引き起こす。これはMnBi磁性粉末を含ん
でいないため、カ−ドに書き込まれていたデ−タが全て
消去されてしまったためである。
【0104】さらに本発明の記録再生方法は、消磁を永
久磁石を用いて行った場合(再生方法3)にも基本的に
は同じ効果が認められる。実施例1〜2に示すMnBi
磁性粉末に保磁力340Oeの針状γ−Fe23磁性粉
末を添加したカ−ド、実施例3〜4に示すMnBi磁性
粉末に保磁力1750Oeのバリウムフェライト磁性粉
末を添加したカ−ド、実施例5に示すMnBi磁性粉末
に保磁力2750Oeのバリウムフェライト磁性粉末を
添加したカ−ド、実施例7に示すMnBi磁性粉末に保
磁力230Oeの粒状のコバルト添加γ−Fe23磁性
粉末を添加したカ−ド、および実施例8に示すMnBi
磁性粉末のみを用いたカ−ドにおいても、磁気ヘッドで
消磁した場合の再生方法と同様に、先に記録した第1の
信号であるデ−タ(A)が正常に再生される。
【0105】一方、実施例6に示すMnBi磁性粉末に
保磁力7800Oeのサマリウムコバルト磁性粉末を添
加したカ−ドにおいては、再生エラ−を引き起こす。こ
れはMnBi磁性粉末と共に添加する磁性粉末の保磁力
が大きいため、この実施例に用いた永久磁石の磁界強度
ではこれらの磁性粉末を充分に消磁できず、後から記録
したデ−タ(B)が消去されずに残っていることが原因
である。したがってMnBi磁性粉末と共に添加する磁
性粉末の保磁力の大きさに応じて消磁磁界強度を選ぶ必
要があり、MnBi磁性粉末と共に添加する磁性粉末の
保磁力が大きい場合は、消磁磁界強度の大きくする必要
がある 上記の傾向は比較例1〜5のカ−ドにおいても認めら
れ、消磁を永久磁石を用いて行うと、保磁力に小さい比
較例1、2、3および5のカ−ドでは、デ−タが消去さ
れてしまって再生エラ−を引き起こすが、保磁力の大き
い比較例4のカ−ドでは、永久磁石の磁界強度では充分
に消去できず、後から記録した信号であるデ−タ(B)
が再生される。
【0106】このようにMnBi磁性粉末を用いない比
較例1〜5に示すカ−ドでは、デ−タは完全に書き換え
られ、さらに書き換えられたデ−タは消去される。一
方、MnBi磁性粉末を用いた本発明のカ−ドでは、真
のデ−タである第1のデ−タを記録した後、偽のデ−タ
である第2のデ−タを重ね書きすると、2種類のデ−タ
が混在して通常の方法ではデ−タを再生できなくなる。
一方、このデ−タを消磁すると、後から記録した第2の
デ−タだけが消去され、真のデ−タである第1のデ−タ
が正常に再生されるようになる。
【0107】本発明の磁気記録媒体の適用例として、磁
気カ−ドに適用した例について説明したが、このような
磁気カ−ドのみならず、本発明の磁気記録媒体を例えば
ラベル状のシ−ト上に形成し、このラベルを他の物品に
添付して使用すれば、使用する物品の形状にとらわれず
広範囲の用途に適用できる。
【0108】
【発明の効果】以上のように、本発明では、MnBiを
主体とする磁性粉末を含有させた特定の磁性層に第1の
信号と第2の信号を記録し、信号の再生時において、第
2の信号を消去して、第1の信号が再生することによ
り、通常の方法では第1の信号を読み取ることは不可能
で、第1の信号の再生出力の低下等の弊害を招くおそれ
がなく、デ−タの誤消去や改ざんによる不正使用を防止
する磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MnBi磁性粉末の保磁力の温度依存性を示す
一例を示した図である。
【図2】MnBi磁性粉末を用いた磁気記録媒体の初期
磁化曲線およびヒステリシス曲線の一例を示す図であ
る。
【図3】MnBi磁性粉末およびCo-γ-Fe23磁性
粉末を用いた磁気カ−ドの再生出力の磁界安定性を調べ
た図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気信号の記録再生が可能な磁気記録媒
    体において、 MnBiを主体とする磁性粉末を含有さ
    せた磁性層を有し、該磁性層の任意の領域にまず第1の
    信号が記録され、この領域に部分的あるいは全面的に重
    なるように第2の信号が記録され、信号の再生時におい
    て、第2の信号を消去することにより、第1の信号が再
    生されることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 磁気信号の記録再生が可能な磁気記録媒
    体において、MnBiを主体とする磁性粉末と、300
    Kにおいて16kOeの磁界を印加して測定した保磁力
    が200Oe〜8000Oeの範囲にある磁性粉末を含
    有させた磁性層を有し、かつ該磁性層が300Kにおい
    て16kOeの磁界を印加して測定した保磁力が200
    〜12000Oe、磁束密度が200〜3000Gの範
    囲にあり、さらに該磁性層の任意の領域にまず第1の信
    号が記録され、この領域に部分的あるいは全面的に重な
    るように第2の信号が記録され、信号の再生時におい
    て、第2の信号を消去することにより、第1の信号が再
    生されることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 磁気信号の記録再生が可能な磁気記録媒
    体への信号の記録再生方法において、該磁気記録媒体が
    MnBiを主体とする磁性粉末を含有する磁性層を有
    し、まず該磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態にし
    た後、上記磁性層の任意の領域にまず第1の信号を記録
    し、しかる後この領域に部分的あるいは全面的に重なる
    ように第2の信号を記録し、信号の再生時において、後
    から記録した第2の信号を消去することにより、第1の
    信号を再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再
    生方法。
  4. 【請求項4】 磁気信号の記録再生が可能な磁気記録媒
    体への信号の記録再生方法において、該磁気記録媒体が
    MnBiを主体とする磁性粉末と、300Kにおいて1
    6kOeの磁界を印加して測定した保磁力が200Oe
    〜8000Oeの範囲にある磁性粉末を含有する磁性層
    を有し、まず該磁気記録媒体を低温に冷却して消磁状態
    にした後、上記磁性層の任意の領域にまず第1の信号を
    記録し、しかる後この領域に部分的あるいは全面的に重
    なるように第2の信号を記録し、信号の再生時におい
    て、後から記録した第2の信号を消去することにより、
    第1の信号を再生することを特徴とする磁気記録媒体の
    記録再生方法。
  5. 【請求項5】 300Kにおいて16kOeの磁界を印
    加して測定した保磁力が200Oe〜8000Oeの範
    囲にある磁性粉末が,酸化物磁性粉末、金属磁性粉末、
    合金磁性粉末および化合物磁性粉末の中から選ばれた少
    なくとも1種の磁性粉末であることを特徴とする請求項
    2記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 磁気記録媒体が、カ−ド状の基板の片面
    または両面に磁性層を設けたカ−ド状の磁気記録媒体で
    ある請求項1あるいは2記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 磁性層がカ−ド状の基板の全面、部分的
    またはストライプ状に設けられていることを特徴とする
    請求項11記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 磁性層がラベル状の基板上に形成されて
    いることを特徴とする請求項1あるいは2記載の磁気記
    録媒体。
  9. 【請求項9】 磁性層の任意の領域にまず第1の信号を
    記録し、しかる後この領域に部分的あるいは全面的に重
    なるように第2の信号を記録し、信号の再生時におい
    て、後から記録した第2の信号を消去することにより、
    第1の信号を再生する記録再生過程を、同一の磁気ヘッ
    ドで行うことを特徴とする請求項3あるいは4記載の磁
    気記録媒体の記録再生方法。
  10. 【請求項10】 MnBiを主体とする磁性粉末を含有
    する磁性層を有する磁気記録媒体の磁性層の任意の領域
    にまず第1の信号を記録し、しかる後この領域に部分的
    あるいは前面的に重なるように第2の信号を記録し、信
    号の再生時において、後から記録した第2の信号を消去
    することにより、第1の信号を再生する記録再生過程を
    同一の磁気ヘッドで行うための磁気ヘッドを備えたこと
    を特徴とする磁気記録媒体の記録再生装置。
  11. 【請求項11】 MnBiを主体とする磁性粉末と、3
    00Kにおいて16kOeの磁界を印加して測定した保
    磁力が200Oe〜8000Oeの範囲にある磁性粉末
    とを含有する磁性層を有する磁気記録媒体の磁性層の任
    意の領域にまず第1の信号を記録し、しかる後この領域
    に部分的あるいは全面的に重なるように第2の信号を記
    録し、信号の再生時において、後から記録した第2の信
    号を消去することにより、第1の信号を再生する記録再
    生過程を同一の磁気ヘッドで行うための磁気ヘッドを備
    えたことを特徴とする磁気記録媒体の記録再生装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6753076B2 (en) 2000-07-14 2004-06-22 Lintec Corporation Forgery-preventive identification medium and method for ascertaining the genuineness thereof
CN105321643A (zh) * 2014-07-29 2016-02-10 Lg电子株式会社 MnBi基磁性物质、其制备方法、MnBi基烧结磁体及其制备方法

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