JP3651039B2 - 磁気記録方法及び磁気カードとその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、磁気記録方法、磁気カード、及びその磁気カードの製造方法に関し、特に、磁気カードの偽造防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗車券、テレホンカード、プリペイドカードなどの金券として利用されている磁気カード類は、カードを利用する毎に、カードに設けられた磁気記録層に残金等の所定の情報を所定の装置で書き換えることにより使用されている。これらの磁気カードには、偽造防止の策として、磁気記録層に保護層を設ける、あるいは磁気記録層を多層にする、または使用毎にカードにパンチ穴を開ける等の工夫が施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、磁気カードの普及と共に、磁気カードの情報を再生、記録する装置技術も発達し、磁気カードに記録した情報を容易に読み取り、さらには情報を書き込むことまで可能となった。具体的には、磁気カードの使用毎に、新しい情報を含む全情報が、旧情報の上にオーバーライトされる形で書き換えられるため、カードの情報を記録、再生する装置があれば、容易に情報の書換えが行え、これにより、カードの偽造が容易に行えることになり、近年磁気カードの偽造が目だって増えてきた。
【0004】
この原因として、磁性層の保磁力が2〜3kOeと低いことにあると考えられる。つまり、保磁力が低いと従来の磁気記録、再生装置で容易に情報の書換えができ、カードの偽造が可能となる。
【0005】
そこで、本発明の技術的課題は、かかる現状に鑑み、偽造を目的とした情報消去、書き込みが不可能である磁気カードを提供することにある。
【0006】
本発明の他の課題は、特殊な磁気記録再生装置を用いることなく、優れた偽造防止効果を有する磁気カードを提供することにある。
【0007】
さらに本発明の他の課題は、保磁力が高いため一度記録した情報の消去、書換えが困難(不可能)である磁気カードを提供することにある。
【0008】
又本発明の他の課題は、上記磁気カードのための磁気記録方法及びその磁気カードの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、カード基体上に保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化された磁性粉による磁性層を形成した磁気記録媒体を用意し、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であり、前記磁性層に所定方向で磁気記録をする際、初期情報は前記所定方向に少なくとも一箇所の未記録部分の情報領域を残して記録し、更にその後に記録される新規情報は、既存の情報を消去することなく、前記未記録部分の情報領域に記録することを特徴とする磁気記録方法が得られる。
【0010】
また本発明によれば、カード基体と、前記カード基体上の磁性粉よりなる磁性層とを有し、前記磁性層は保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化されており、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であることを特徴とする磁気カードが得られる。
【0011】
また本発明によれば、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%である磁性粉を用意すること、前記磁性粉に不活性雰囲気中で850〜1100℃の温度範囲で熱処理を施すこと、及び前記熱処理を施した磁性粉を用いて作製した磁性塗料をカード基体に塗布して磁性層を形成することを含むことを特徴とする磁気カードの製造方法が得られる。
【0012】
【実施例】
<実施例1>
図1は、本発明の一実施例による磁気カードの断面図である。この磁気カード1は、乗車券、テレホンカード、あるいはプリペイドカードなどの金券として利用されている。この、磁気カード1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるカード基体2の主面上に、磁性粉を用いた磁性塗料を塗布することによって磁性層3を形成し、さらにその上に必要に応じて保護層4を形成したものである。尚、以下の記載において希土類元素はYを含むものを意味する。
【0013】
磁性層3は保磁力3.5kOe以上でかつ保磁力1/2以下の印加磁界で飽和磁化の25%以上の磁化を有するものとする。また磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものである。ここで、RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素であり、TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属である。
【0014】
図2は、本発明の一実施例による磁気記録方式を説明するための磁気カード1の磁性層3の面からみた平面図である。磁気カード1の磁性層3には磁気カード1の長手方向での両端間にのびたストライプ状の情報記録層5が設けられている。情報記録領域5は、図2では便宜のため明瞭に黙視でき得るように記載したが、実際には黙視できない形態で設けられることが望ましい。
【0015】
情報記録領域5には、初期情報としての情報を、長手方向に隣接した複数の記録の集まりとして磁気的に記録しておく。従って、情報記録領域5の情報を既に記録している部分はハッチングを施して示した。
【0016】
情報記録領域5には長手方向に隣接して既存の情報領域51と未記録部分の情報領域52とが設けられている。既存の情報領域51には固定情報を記録しておく。磁気カード1を使用する毎に順次新しい情報を記録する際には、既存の情報領域51の記録情報を消去することなく、未記録部分の情報領域52に新規情報を記録する。
【0017】
次に、磁気カード1の磁性層3を形成するための磁性粉について具体的に説明する。純度99%以上のSm、Coを溶解してSmの組成値が17.0〜18.0at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末(第1粉末)と、Smの組成値が20.0〜22.0at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末(第2粉末)とを作製した。そしてこれらの粉末を総合Sm値が19.0at%となるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径が1.5〜2.0μmの混合粉末を得た。これらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。そして、磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を表1に示す。ここでは、いずれの粉末も高保磁力であり目標特性を満足するものであった。
【0018】
【表1】
【0019】
これらのインゴットをディスクミルを用いて粉砕し、Smの組成値が16.0〜22.0at%間で混合し、得られた混合粗粉末を更にボルテックスを用いて粉砕し、平均粒径が1.5〜2.0μmの粉末を得た。そしてこれらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。そして、これらの粉末の磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を図3に黒丸印のプロットで示す。ここでσ5/σ18は、18kOe印加に対する5kOe印加での磁化量の比であり、HCJ(7)は、7kOe印加した場合の保磁力である。ここで、Sm値は保磁力に大きく影響し、17.0at%を下回ると、あるいは21.5at%を上回ると保磁力は減少し、記録した情報の消去が容易になる。
【0020】
Smの組成値が16.7at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末と、Smの組成値が22.2at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末を作製し、Smの組成値が16.7〜22.0at%間の所定の組成となるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径が1.5〜2.0μmの混合粉末を得た。これらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。
【0021】
そして、これらの粉末の磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を図3に白丸印のプロットで示す。この場合もSm値は保磁力に大きく影響し、17.0at%を下回ると、あるいは21.5at%を上回ると保磁力は減少し、記録した情報の消去が容易になる。即ち、Sm値は17.0at%〜21.5at%であることが望ましい。
【0022】
<実施例2>
純度99%以上のSm,Coを溶解してSmの組成値が16.7at%、Coの組成値がbalの組成を有する合金と、Smの組成値が22.2at%、Coの組成値がbalの組成を有する合金とを作製した。そして、これらの合金を1100℃の温度で、Arガス雰囲気中で12時間以上均質化処理を行った。
【0023】
これらのインゴットをディスクミルを用いて粉砕し、得られた粗粉末を、Smの組成値が19.0at%になるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径1.5μmの粉末を得た。そして、Ar雰囲気中、1000℃で熱処理を施し磁性層粉末を得た。
【0024】
上述の様にして得られた磁性粉末を用いて次の方法で磁性塗料を作製した。溶剤(トルエン)100重量部に対し、上記磁性粉末40重量部、アクリル系樹脂17重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂28重量部をそれぞれ秤量し、加圧式ニーダーを用いてアルゴンガス中で1時間混練し、得られた混和物を磁性塗料とした。そして、上記磁性塗料をポリエチレンフタレート(PET)のカード基体2上に、厚さ20μmとなるように塗布し磁性層3を生成し、磁気カード1を作製した。
【0025】
得られた磁気カードの磁性層3に、磁気カードリーダ・ライタ内蔵の磁気ヘッド(発生磁界約5kG)を用いて、長手方向に一部未記録部分を残し、FM方式により記録を行った。そして、その磁気カードリーダ・ライタを用い読み取りを試みた結果、記録を行ったすべての情報を読み取ることができた。更に、前記同様な方法で、同様な磁気カードリーダ・ライタを用い磁気カードの未記録部分にのみ新たに記録を行い、読み取ったところ、既設の情報に上書きあるいは消去することなく新規情報は記録されており、既設、新設の両情報を全て読み取ることができた。
【0026】
上記の情報を記録した磁気カードの磁性層の既設記録部分に、前記磁気カードリーダ・ライタを用い上書きを試みた。そして、前記磁気カードリーダ・ライタのヘッドで読み取ったところ既設の情報を全て読み取ることができ、新規の情報を上書きできないことが確認された。
【0027】
次に、磁気ヘッドを用いて磁気カードの全情報の消去を試みた。消去処理を試みた磁気カードを磁気ヘッドを用いて読み取ったところ、既設の情報は磁気ヘッドによる消去処理によって消去されることなく、全て読み取ることができた。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、情報の記録は容易に行えるが、記録した情報の消去、書換えが困難(不可能)であるため、偽造を目的とした情報消去、書き込みが不可能である磁気カードが得られる。従って、本発明は工業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による磁気カードの断面図である。
【図2】本発明の一実施例による磁気記録方式を説明するための磁気カードの平面図である。
【図3】インゴット粉末と還元粉末の磁気特性を振動試料型磁力計を用いて測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 磁気カード
2 カード基体
3 磁性層
4 保護層
5 情報記録領域
51 既存の情報領域
52 未記録部分の情報領域
【産業上の利用分野】
本発明は、磁気記録方法、磁気カード、及びその磁気カードの製造方法に関し、特に、磁気カードの偽造防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗車券、テレホンカード、プリペイドカードなどの金券として利用されている磁気カード類は、カードを利用する毎に、カードに設けられた磁気記録層に残金等の所定の情報を所定の装置で書き換えることにより使用されている。これらの磁気カードには、偽造防止の策として、磁気記録層に保護層を設ける、あるいは磁気記録層を多層にする、または使用毎にカードにパンチ穴を開ける等の工夫が施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、磁気カードの普及と共に、磁気カードの情報を再生、記録する装置技術も発達し、磁気カードに記録した情報を容易に読み取り、さらには情報を書き込むことまで可能となった。具体的には、磁気カードの使用毎に、新しい情報を含む全情報が、旧情報の上にオーバーライトされる形で書き換えられるため、カードの情報を記録、再生する装置があれば、容易に情報の書換えが行え、これにより、カードの偽造が容易に行えることになり、近年磁気カードの偽造が目だって増えてきた。
【0004】
この原因として、磁性層の保磁力が2〜3kOeと低いことにあると考えられる。つまり、保磁力が低いと従来の磁気記録、再生装置で容易に情報の書換えができ、カードの偽造が可能となる。
【0005】
そこで、本発明の技術的課題は、かかる現状に鑑み、偽造を目的とした情報消去、書き込みが不可能である磁気カードを提供することにある。
【0006】
本発明の他の課題は、特殊な磁気記録再生装置を用いることなく、優れた偽造防止効果を有する磁気カードを提供することにある。
【0007】
さらに本発明の他の課題は、保磁力が高いため一度記録した情報の消去、書換えが困難(不可能)である磁気カードを提供することにある。
【0008】
又本発明の他の課題は、上記磁気カードのための磁気記録方法及びその磁気カードの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、カード基体上に保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化された磁性粉による磁性層を形成した磁気記録媒体を用意し、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であり、前記磁性層に所定方向で磁気記録をする際、初期情報は前記所定方向に少なくとも一箇所の未記録部分の情報領域を残して記録し、更にその後に記録される新規情報は、既存の情報を消去することなく、前記未記録部分の情報領域に記録することを特徴とする磁気記録方法が得られる。
【0010】
また本発明によれば、カード基体と、前記カード基体上の磁性粉よりなる磁性層とを有し、前記磁性層は保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化されており、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であることを特徴とする磁気カードが得られる。
【0011】
また本発明によれば、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%である磁性粉を用意すること、前記磁性粉に不活性雰囲気中で850〜1100℃の温度範囲で熱処理を施すこと、及び前記熱処理を施した磁性粉を用いて作製した磁性塗料をカード基体に塗布して磁性層を形成することを含むことを特徴とする磁気カードの製造方法が得られる。
【0012】
【実施例】
<実施例1>
図1は、本発明の一実施例による磁気カードの断面図である。この磁気カード1は、乗車券、テレホンカード、あるいはプリペイドカードなどの金券として利用されている。この、磁気カード1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるカード基体2の主面上に、磁性粉を用いた磁性塗料を塗布することによって磁性層3を形成し、さらにその上に必要に応じて保護層4を形成したものである。尚、以下の記載において希土類元素はYを含むものを意味する。
【0013】
磁性層3は保磁力3.5kOe以上でかつ保磁力1/2以下の印加磁界で飽和磁化の25%以上の磁化を有するものとする。また磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものである。ここで、RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素であり、TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属である。
【0014】
図2は、本発明の一実施例による磁気記録方式を説明するための磁気カード1の磁性層3の面からみた平面図である。磁気カード1の磁性層3には磁気カード1の長手方向での両端間にのびたストライプ状の情報記録層5が設けられている。情報記録領域5は、図2では便宜のため明瞭に黙視でき得るように記載したが、実際には黙視できない形態で設けられることが望ましい。
【0015】
情報記録領域5には、初期情報としての情報を、長手方向に隣接した複数の記録の集まりとして磁気的に記録しておく。従って、情報記録領域5の情報を既に記録している部分はハッチングを施して示した。
【0016】
情報記録領域5には長手方向に隣接して既存の情報領域51と未記録部分の情報領域52とが設けられている。既存の情報領域51には固定情報を記録しておく。磁気カード1を使用する毎に順次新しい情報を記録する際には、既存の情報領域51の記録情報を消去することなく、未記録部分の情報領域52に新規情報を記録する。
【0017】
次に、磁気カード1の磁性層3を形成するための磁性粉について具体的に説明する。純度99%以上のSm、Coを溶解してSmの組成値が17.0〜18.0at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末(第1粉末)と、Smの組成値が20.0〜22.0at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末(第2粉末)とを作製した。そしてこれらの粉末を総合Sm値が19.0at%となるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径が1.5〜2.0μmの混合粉末を得た。これらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。そして、磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を表1に示す。ここでは、いずれの粉末も高保磁力であり目標特性を満足するものであった。
【0018】
【表1】
【0019】
これらのインゴットをディスクミルを用いて粉砕し、Smの組成値が16.0〜22.0at%間で混合し、得られた混合粗粉末を更にボルテックスを用いて粉砕し、平均粒径が1.5〜2.0μmの粉末を得た。そしてこれらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。そして、これらの粉末の磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を図3に黒丸印のプロットで示す。ここでσ5/σ18は、18kOe印加に対する5kOe印加での磁化量の比であり、HCJ(7)は、7kOe印加した場合の保磁力である。ここで、Sm値は保磁力に大きく影響し、17.0at%を下回ると、あるいは21.5at%を上回ると保磁力は減少し、記録した情報の消去が容易になる。
【0020】
Smの組成値が16.7at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末と、Smの組成値が22.2at%、Coの組成値がbalの組成を有する還元合金粉末を作製し、Smの組成値が16.7〜22.0at%間の所定の組成となるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径が1.5〜2.0μmの混合粉末を得た。これらの混合粉末に、Ar雰囲気中、1000℃で所定の時間熱処理を施した。
【0021】
そして、これらの粉末の磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定し、その結果を図3に白丸印のプロットで示す。この場合もSm値は保磁力に大きく影響し、17.0at%を下回ると、あるいは21.5at%を上回ると保磁力は減少し、記録した情報の消去が容易になる。即ち、Sm値は17.0at%〜21.5at%であることが望ましい。
【0022】
<実施例2>
純度99%以上のSm,Coを溶解してSmの組成値が16.7at%、Coの組成値がbalの組成を有する合金と、Smの組成値が22.2at%、Coの組成値がbalの組成を有する合金とを作製した。そして、これらの合金を1100℃の温度で、Arガス雰囲気中で12時間以上均質化処理を行った。
【0023】
これらのインゴットをディスクミルを用いて粉砕し、得られた粗粉末を、Smの組成値が19.0at%になるように混合し、ボルテックスを用いて粉砕し、平均径1.5μmの粉末を得た。そして、Ar雰囲気中、1000℃で熱処理を施し磁性層粉末を得た。
【0024】
上述の様にして得られた磁性粉末を用いて次の方法で磁性塗料を作製した。溶剤(トルエン)100重量部に対し、上記磁性粉末40重量部、アクリル系樹脂17重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂28重量部をそれぞれ秤量し、加圧式ニーダーを用いてアルゴンガス中で1時間混練し、得られた混和物を磁性塗料とした。そして、上記磁性塗料をポリエチレンフタレート(PET)のカード基体2上に、厚さ20μmとなるように塗布し磁性層3を生成し、磁気カード1を作製した。
【0025】
得られた磁気カードの磁性層3に、磁気カードリーダ・ライタ内蔵の磁気ヘッド(発生磁界約5kG)を用いて、長手方向に一部未記録部分を残し、FM方式により記録を行った。そして、その磁気カードリーダ・ライタを用い読み取りを試みた結果、記録を行ったすべての情報を読み取ることができた。更に、前記同様な方法で、同様な磁気カードリーダ・ライタを用い磁気カードの未記録部分にのみ新たに記録を行い、読み取ったところ、既設の情報に上書きあるいは消去することなく新規情報は記録されており、既設、新設の両情報を全て読み取ることができた。
【0026】
上記の情報を記録した磁気カードの磁性層の既設記録部分に、前記磁気カードリーダ・ライタを用い上書きを試みた。そして、前記磁気カードリーダ・ライタのヘッドで読み取ったところ既設の情報を全て読み取ることができ、新規の情報を上書きできないことが確認された。
【0027】
次に、磁気ヘッドを用いて磁気カードの全情報の消去を試みた。消去処理を試みた磁気カードを磁気ヘッドを用いて読み取ったところ、既設の情報は磁気ヘッドによる消去処理によって消去されることなく、全て読み取ることができた。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、情報の記録は容易に行えるが、記録した情報の消去、書換えが困難(不可能)であるため、偽造を目的とした情報消去、書き込みが不可能である磁気カードが得られる。従って、本発明は工業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による磁気カードの断面図である。
【図2】本発明の一実施例による磁気記録方式を説明するための磁気カードの平面図である。
【図3】インゴット粉末と還元粉末の磁気特性を振動試料型磁力計を用いて測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 磁気カード
2 カード基体
3 磁性層
4 保護層
5 情報記録領域
51 既存の情報領域
52 未記録部分の情報領域
Claims (7)
- カード基体上に保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化された磁性粉による磁性層を形成した磁気記録媒体を用意し、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であり、前記磁性層に所定方向で磁気記録をする際、初期情報は前記所定方向に少なくとも一箇所の未記録部分の情報領域を残して記録し、更にその後に記録される新規情報は、既存の情報を消去することなく、前記未記録部分の情報領域に記録することを特徴とする磁気記録方法。
- カード基体と、前記カード基体上の磁性粉よりなる磁性層とを有し、前記磁性層は保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化されており、前記磁性粉は、RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記磁性粉における前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%であることを特徴とする磁気カード。
- 前記磁性層に初期情報を所定方向に少なくとも一箇所の未記録部分の情報領域を残して記録した請求項2記載の磁気カード。
- RとTからなる組成の異なる少なくとも2種の粉末を混合したものであり、前記RはSmを主成分とする少なくとも1種類の希土類元素(ここで希土類元素はYを含むものである)であり、前記TはCoを主成分とする少なくとも1種類の遷移金属であり、前記Rの組成値は17.0at%〜21.5at%である磁性粉を用意すること、
前記磁性粉に不活性雰囲気中で850〜1100℃の温度範囲で熱処理を施しすこと、及び
前記熱処理を施した磁性粉を用いて作製した磁性塗料をカード基体に塗布して磁性層を形成すること、
を含むことを特徴とする磁気カードの製造方法。 - さらに前記磁性層を保磁力の大きくとも1/2の印加磁界で飽和磁化の少なくとも25%に磁化することを含む請求項4記載の磁気カードの製造方法。
- 前記磁性粉はRとTからなる組成の異なる少なくとも2種の合金を粉砕して得られたものである請求項4又は5記載の磁気カードの製造方法。
- 前記磁性粉はRとTからなる組成の異なる少なくとも2種の還元粉末を混合したものである請求項4又は5記載の磁気カードの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32725594A JP3651039B2 (ja) | 1994-12-28 | 1994-12-28 | 磁気記録方法及び磁気カードとその製造方法 |
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JP32725594A JP3651039B2 (ja) | 1994-12-28 | 1994-12-28 | 磁気記録方法及び磁気カードとその製造方法 |
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