JP2001155970A - 電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびアルミニウム箔、ならびにアルミニウム箔の製造方法 - Google Patents
電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびアルミニウム箔、ならびにアルミニウム箔の製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔におい
て、深いエッチングピットを均一に発生させて確実に拡
面率を高め、静電容量のさらなる増大を図る。 【解決手段】 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有量が３ｐｐ
ｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純物か
らなるアルミニウム箔であって、平均結晶粒径が３００
μｍ以下であるとともに、箔表面において、立方体方位
｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の結晶
粒の面積が７５％以上を占める。
て、深いエッチングピットを均一に発生させて確実に拡
面率を高め、静電容量のさらなる増大を図る。 【解決手段】 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有量が３ｐｐ
ｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純物か
らなるアルミニウム箔であって、平均結晶粒径が３００
μｍ以下であるとともに、箔表面において、立方体方位
｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の結晶
粒の面積が７５％以上を占める。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、電解コンデンサ
電極として用いられるアルミニウム材およびアルミニウ
ム箔、さらにこのような電解コンデンサ電極用アルミニ
ウム箔の製造方法に関する。
電極として用いられるアルミニウム材およびアルミニウ
ム箔、さらにこのような電解コンデンサ電極用アルミニ
ウム箔の製造方法に関する。
【０００２】なお、この明細書において、「アルミニウ
ム」の語はアルミニウムおよびその合金の両者を含む意
味で用いられる。
ム」の語はアルミニウムおよびその合金の両者を含む意
味で用いられる。
【０００３】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化に伴い、電子機
器に組み込まれる電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
についても静電容量の向上が要望されている。
器に組み込まれる電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
についても静電容量の向上が要望されている。
【０００４】通常、電解コンデンサ電極に使用されるア
ルミニウム材は、拡面率を高めて静電容量を向上させる
ためにエッチング処理される。そして、エッチング処理
により形成されるエッチングピットの深さが深いほど拡
面率が高くなるため、エッチング適性を改善すべくエッ
チング処理の前工程としてアルミニウム材に様々な処理
が行われている。例えば、（１００）結晶方位の調整、
アルミニウム材へのＰｂ、Ｂｉ等微量不純物の添加によ
る組成の調整、最終焼鈍前の脱脂洗浄、最終焼鈍前の水
和処理と最終焼鈍での結晶性酸化膜の形成処理、最終焼
鈍前の酸化処理等である（特公昭５８−３４９２５号、
特開平３−１２２２６０号他）。また、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖ
等の元素を添加して表層への濃化を利用した方法も提案
されている（特開平４−６２８２２号）。
ルミニウム材は、拡面率を高めて静電容量を向上させる
ためにエッチング処理される。そして、エッチング処理
により形成されるエッチングピットの深さが深いほど拡
面率が高くなるため、エッチング適性を改善すべくエッ
チング処理の前工程としてアルミニウム材に様々な処理
が行われている。例えば、（１００）結晶方位の調整、
アルミニウム材へのＰｂ、Ｂｉ等微量不純物の添加によ
る組成の調整、最終焼鈍前の脱脂洗浄、最終焼鈍前の水
和処理と最終焼鈍での結晶性酸化膜の形成処理、最終焼
鈍前の酸化処理等である（特公昭５８−３４９２５号、
特開平３−１２２２６０号他）。また、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖ
等の元素を添加して表層への濃化を利用した方法も提案
されている（特開平４−６２８２２号）。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単に各
エッチングピットの深さを深くするだけではアルミニウ
ム箔の拡面率の向上が十分ではなく、さらに拡面率を向
上させるためには局部エッチング、未エッチング、表面
溶解を少なくして、エッチングピットをエッチング面で
均一に、かつ高密度に発生させる必要がある。前述され
たような種々の方法は、高密度かつ均一にエッチングピ
ットを発生させるという点で十分ではなく、ますます増
大しつつある静電容量への要望に応えうるものではな
い。
エッチングピットの深さを深くするだけではアルミニウ
ム箔の拡面率の向上が十分ではなく、さらに拡面率を向
上させるためには局部エッチング、未エッチング、表面
溶解を少なくして、エッチングピットをエッチング面で
均一に、かつ高密度に発生させる必要がある。前述され
たような種々の方法は、高密度かつ均一にエッチングピ
ットを発生させるという点で十分ではなく、ますます増
大しつつある静電容量への要望に応えうるものではな
い。
【０００６】この発明は、このような技術背景に鑑み
て、深いエッチングピットを高密度かつ均一に発生させ
て確実に拡面率を高め、静電容量のさらなる増大を図る
ことができる電解コンデンサ電極用アルミニウム材およ
びアルミニウム箔を提供しようとするものである。
て、深いエッチングピットを高密度かつ均一に発生させ
て確実に拡面率を高め、静電容量のさらなる増大を図る
ことができる電解コンデンサ電極用アルミニウム材およ
びアルミニウム箔を提供しようとするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、この発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材
は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有量が３ｐｐ
ｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純物か
らなること、または化学組成において、Ａｌ純度：９
９．９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：
２〜１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有する
とともに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２
６ｐｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有
し、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を
０．３ｐｐｍ以上かつ、合計で０．３〜３０ｐｐｍを含
有し、Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアル
ミニウムおよび不純物からなることを特徴とする。
に、この発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材
は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有量が３ｐｐ
ｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純物か
らなること、または化学組成において、Ａｌ純度：９
９．９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：
２〜１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有する
とともに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２
６ｐｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有
し、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を
０．３ｐｐｍ以上かつ、合計で０．３〜３０ｐｐｍを含
有し、Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアル
ミニウムおよび不純物からなることを特徴とする。
【０００８】また、この発明の電解コンデンサ電極用ア
ルミニウム箔は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．
９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜
１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとと
もに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐ
ｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含
有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムお
よび不純物からなるアルミニウム箔であって、平均結晶
粒径が３００μｍ以下であるとともに、箔表面におい
て、立方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１
０°以下の結晶粒の面積が７５％以上を占めること、ま
たは化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有し、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓ
ｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を０．３ｐｐｍ以上、
かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍを含有し、Ｂ含有量が３
ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純
物からなるアルミニウム箔であって、平均結晶粒径が３
００μｍ以下であるとともに、箔表面において、立方体
方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の
結晶粒の面積が７５％以上を占めることを特徴とする。
ルミニウム箔は、化学組成において、Ａｌ純度：９９．
９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜
１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとと
もに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐ
ｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含
有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムお
よび不純物からなるアルミニウム箔であって、平均結晶
粒径が３００μｍ以下であるとともに、箔表面におい
て、立方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１
０°以下の結晶粒の面積が７５％以上を占めること、ま
たは化学組成において、Ａｌ純度：９９．９６％以上で
あり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、
Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するとともに、Ｔｉ、
Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐｍ以上、か
つ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有し、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓ
ｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を０．３ｐｐｍ以上、
かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍを含有し、Ｂ含有量が３
ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよび不純
物からなるアルミニウム箔であって、平均結晶粒径が３
００μｍ以下であるとともに、箔表面において、立方体
方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の
結晶粒の面積が７５％以上を占めることを特徴とする。
【０００９】また、電解コンデンサ電極用アルミニウム
箔の製造方法は、請求項１または２の化学組成を有する
アルミニウム材に対し、箔圧延後の最終焼鈍を３８０〜
５５０℃の範囲で行うことを特徴とする。
箔の製造方法は、請求項１または２の化学組成を有する
アルミニウム材に対し、箔圧延後の最終焼鈍を３８０〜
５５０℃の範囲で行うことを特徴とする。
【００１０】この発明の電解コンデンサ電極用アルミニ
ウム材または箔の化学組成において、各元素の添加意義
および含有量の限定理由は次のとおりである。
ウム材または箔の化学組成において、各元素の添加意義
および含有量の限定理由は次のとおりである。
【００１１】アルミニウム純度を９９．９６％以上とす
るのは、９９．９６％未満では不純物量が多くなって、
微量添加元素の含有量を制御しても、エッチング時に過
溶解が生じやすくなってエッチング特性が低下するため
である。
るのは、９９．９６％未満では不純物量が多くなって、
微量添加元素の含有量を制御しても、エッチング時に過
溶解が生じやすくなってエッチング特性が低下するため
である。
【００１２】Ｓｉは再結晶時の結晶粒の粗大化を防止す
る効果がある。含有量が２ｐｐｍ未満では前記効果に乏
しく、２０ｐｐｍを超えるとエッチングピットの分布が
不均一になるため、２〜２０ｐｐｍに規定する。Ｓｉ含
有量の好ましい上限値は１５ｐｐｍである。
る効果がある。含有量が２ｐｐｍ未満では前記効果に乏
しく、２０ｐｐｍを超えるとエッチングピットの分布が
不均一になるため、２〜２０ｐｐｍに規定する。Ｓｉ含
有量の好ましい上限値は１５ｐｐｍである。
【００１３】Ｆｅはアルミニウムに不可避的に含有され
る元素であり、多量に含有していると最終焼鈍温度によ
ってはＡｌ−Ｆｅ系の析出物を形成してエッチングピッ
トの形成を不均一にする。Ｆｅ含有量が１５ｐｐｍを超
えるとＡｌ−Ｆｅ系の析出物を形成しやすくなり、２ｐ
ｐｍ未満に規制するのは精製コストの面で不利であるた
め、２〜１５ｐｐｍとする。Ｆｅ含有量の好ましい上限
値は４ｐｐｍである。
る元素であり、多量に含有していると最終焼鈍温度によ
ってはＡｌ−Ｆｅ系の析出物を形成してエッチングピッ
トの形成を不均一にする。Ｆｅ含有量が１５ｐｐｍを超
えるとＡｌ−Ｆｅ系の析出物を形成しやすくなり、２ｐ
ｐｍ未満に規制するのは精製コストの面で不利であるた
め、２〜１５ｐｐｍとする。Ｆｅ含有量の好ましい上限
値は４ｐｐｍである。
【００１４】Ｃｕは、エッチング性の向上に寄与する元
素である。含有量が２０ｐｐｍ未満ではその効果が乏し
く、２００ｐｐｍを超えると結晶組織において立方体方
位の形成を阻害してエッチング特性を阻害するため、２
０〜２００ｐｐｍの範囲に規定する。Ｃｕ含有量の好ま
しい下限値は３０ｐｐｍであり、好ましい上限値は１５
０ｐｐｍである。
素である。含有量が２０ｐｐｍ未満ではその効果が乏し
く、２００ｐｐｍを超えると結晶組織において立方体方
位の形成を阻害してエッチング特性を阻害するため、２
０〜２００ｐｐｍの範囲に規定する。Ｃｕ含有量の好ま
しい下限値は３０ｐｐｍであり、好ましい上限値は１５
０ｐｐｍである。
【００１５】Ｔｉ、ＺｒおよびＶは、それぞれエッチン
グピット発生を増大させる効果がある。これらの元素は
少なくとも１種の含有によって前記効果を得ることがで
き、２種以上の併用で相乗効果が得られる。これらの元
素の含有量は少なくとも１種が単独で２６ｐｐｍ未満で
は前記効果に乏しく、合計で１００ｐｐｍを超えるとエ
ッチングピットの分布が不均一になるため、合計含有量
を２６〜１００ｐｐｍの範囲とする。これらの元素の合
計含有量の好ましい上限値は７０ｐｐｍである。
グピット発生を増大させる効果がある。これらの元素は
少なくとも１種の含有によって前記効果を得ることがで
き、２種以上の併用で相乗効果が得られる。これらの元
素の含有量は少なくとも１種が単独で２６ｐｐｍ未満で
は前記効果に乏しく、合計で１００ｐｐｍを超えるとエ
ッチングピットの分布が不均一になるため、合計含有量
を２６〜１００ｐｐｍの範囲とする。これらの元素の合
計含有量の好ましい上限値は７０ｐｐｍである。
【００１６】ＢはＴｉ、ＺｒおよびＶと化合物を形成す
ると、エッチングピットを局部的に集中発生させるおそ
れがあるため、可及的に少ないことが好ましく、３ｐｐ
ｍ以下に規制する。Ｂ含有量の好ましい上限値は１ｐｐ
ｍである。
ると、エッチングピットを局部的に集中発生させるおそ
れがあるため、可及的に少ないことが好ましく、３ｐｐ
ｍ以下に規制する。Ｂ含有量の好ましい上限値は１ｐｐ
ｍである。
【００１７】Ｐｂ、Ｉｎ、ＳｎおよＳｂは、最終焼鈍時
に箔表面に濃化し、エッチング初期のエッチングピット
発生を均一化し、局部的なエッチングピット発生を抑制
する。これらの元素は少なくとも１種の含有によって前
記効果を得ることができ、２種以上の併用で相乗効果が
得られる。これらの元素は少なくとも１種が単独で０．
３ｐｐｍ未満では前記効果に乏しく、合計で３０ｐｐｍ
を超えると箔表面の溶解が激しくなり静電容量が却って
低下するため、合計含有量を０．３〜３０ｐｐｍの範囲
とする。これらの元素の合計含有量の好ましい下限値は
０．５ｐｐｍであり、好ましい上限値は２０ｐｐｍであ
る。
に箔表面に濃化し、エッチング初期のエッチングピット
発生を均一化し、局部的なエッチングピット発生を抑制
する。これらの元素は少なくとも１種の含有によって前
記効果を得ることができ、２種以上の併用で相乗効果が
得られる。これらの元素は少なくとも１種が単独で０．
３ｐｐｍ未満では前記効果に乏しく、合計で３０ｐｐｍ
を超えると箔表面の溶解が激しくなり静電容量が却って
低下するため、合計含有量を０．３〜３０ｐｐｍの範囲
とする。これらの元素の合計含有量の好ましい下限値は
０．５ｐｐｍであり、好ましい上限値は２０ｐｐｍであ
る。
【００１８】請求項１および２のアルミニウム材は、電
解コンデンサ電極材料として化学組成を規定するもので
あり、その形状は圧延によって得られる箔はもとより、
圧延前のスラブや圧延の中間段階のものをも包含する。
解コンデンサ電極材料として化学組成を規定するもので
あり、その形状は圧延によって得られる箔はもとより、
圧延前のスラブや圧延の中間段階のものをも包含する。
【００１９】一方、請求項３および４の電解コンデンサ
電極用アルミニウム箔は圧延および最終焼鈍を経た箔を
対象とし、上述の化学組成に加えて、結晶粒および箔表
面の結晶粒の立方体方位占有率によっても規定する。
電極用アルミニウム箔は圧延および最終焼鈍を経た箔を
対象とし、上述の化学組成に加えて、結晶粒および箔表
面の結晶粒の立方体方位占有率によっても規定する。
【００２０】即ち、この発明の電解コンデンサ電極用ア
ルミニウム箔はエッチングピットが高密度となり表面積
が拡大することで、高い静電容量が実現される。ただ
し、エッチングピットが高密度になることにより、エッ
チング箔の強度が低下するおそれがあるため、箔強度を
低下させないために、結晶粒を平均粒径で３００μｍ以
下に規定したものである。平均結晶粒の好ましい上限値
は２００μｍである。また、箔表面は立方体方位占有率
の高い結晶組織であることが好ましい。立方体方位占有
率の低い箔では、エッチング時に箔表面の溶解量が増
し、箔厚が部分的に薄くなって箔強度を維持できなくな
り、十分な拡面率の向上を図ることができない。そのた
め、この発明のアルミニウム箔においては、立方体方位
｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の結晶
粒の面積が７５％以上であることを要件とする。好まし
い立方体方位占有率は８０％以上、特に好ましくは９０
％以上である。
ルミニウム箔はエッチングピットが高密度となり表面積
が拡大することで、高い静電容量が実現される。ただ
し、エッチングピットが高密度になることにより、エッ
チング箔の強度が低下するおそれがあるため、箔強度を
低下させないために、結晶粒を平均粒径で３００μｍ以
下に規定したものである。平均結晶粒の好ましい上限値
は２００μｍである。また、箔表面は立方体方位占有率
の高い結晶組織であることが好ましい。立方体方位占有
率の低い箔では、エッチング時に箔表面の溶解量が増
し、箔厚が部分的に薄くなって箔強度を維持できなくな
り、十分な拡面率の向上を図ることができない。そのた
め、この発明のアルミニウム箔においては、立方体方位
｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以下の結晶
粒の面積が７５％以上であることを要件とする。好まし
い立方体方位占有率は８０％以上、特に好ましくは９０
％以上である。
【００２１】また通常、電解コンデンサ電極用アルミニ
ウム箔は、アルミニウム鋳塊の面削、熱間圧延、中間焼
鈍を含む冷間圧延、箔圧延、脱脂洗浄、最終焼鈍の各工
程を経て製作される。そして、この発明の電解コンデン
サ電極用アルミニウム箔の製造方法においては、箔圧延
後の最終焼鈍を３８０〜５５０℃の範囲で行うことによ
り、平均結晶粒径、箔表面の立方体方位占有率といった
箔の結晶組織を上記範囲に制御することができる。結晶
組織を上記範囲に制御するために、最終焼鈍温度が３８
０℃未満では、Ａｌ−Ｆｅ系の析出物が結晶粒界に析出
し、粒界が優先的にエッチングされ、エッチングピット
の発生が不均一になる。一方、５５０℃を超えると、結
晶粒が粗大となり箔表面の立方体方位占有率が低下す
る。最終焼鈍温度の好ましい下限値は４００℃であり、
好ましい上限値は５００℃、特に好ましい上限値は４８
０℃である。なお、最終焼鈍における加熱時間は常法に
よれば良く、２〜２４時間が好ましい。
ウム箔は、アルミニウム鋳塊の面削、熱間圧延、中間焼
鈍を含む冷間圧延、箔圧延、脱脂洗浄、最終焼鈍の各工
程を経て製作される。そして、この発明の電解コンデン
サ電極用アルミニウム箔の製造方法においては、箔圧延
後の最終焼鈍を３８０〜５５０℃の範囲で行うことによ
り、平均結晶粒径、箔表面の立方体方位占有率といった
箔の結晶組織を上記範囲に制御することができる。結晶
組織を上記範囲に制御するために、最終焼鈍温度が３８
０℃未満では、Ａｌ−Ｆｅ系の析出物が結晶粒界に析出
し、粒界が優先的にエッチングされ、エッチングピット
の発生が不均一になる。一方、５５０℃を超えると、結
晶粒が粗大となり箔表面の立方体方位占有率が低下す
る。最終焼鈍温度の好ましい下限値は４００℃であり、
好ましい上限値は５００℃、特に好ましい上限値は４８
０℃である。なお、最終焼鈍における加熱時間は常法に
よれば良く、２〜２４時間が好ましい。
【００２２】
【実施例】次に、この発明の具体的実施例について説明
する。
する。
【００２３】箔の製造に際しては、まず、小型ブックモ
ールドにて、Ａｌ純度９９．９９％の高純度アルミニウ
ムに対し表１に示す元素をそれぞれ添加した組成の鋳塊
を作製した。そして、これらの鋳塊に対し、面削、熱間
圧延、冷間圧延、中間焼鈍を経て厚さ１００μｍの箔に
圧延し、脱脂洗浄後に表２示す各温度で２４時間最終焼
鈍した。これらの箔について、平均結晶粒径および立方
体方位占有率を調べた。
ールドにて、Ａｌ純度９９．９９％の高純度アルミニウ
ムに対し表１に示す元素をそれぞれ添加した組成の鋳塊
を作製した。そして、これらの鋳塊に対し、面削、熱間
圧延、冷間圧延、中間焼鈍を経て厚さ１００μｍの箔に
圧延し、脱脂洗浄後に表２示す各温度で２４時間最終焼
鈍した。これらの箔について、平均結晶粒径および立方
体方位占有率を調べた。
【００２４】次に、各箔に対し、８０℃、５wt％塩酸＋
２０wt％硫酸の混合浴を用いて、０．２Ａ／ｃｍ2で１
００秒間直流電解エッチングした後、同液中で１２分間
ケミカルエッチングを施し、エッチングによる溶解量お
よび引張強度を調べた。
２０wt％硫酸の混合浴を用いて、０．２Ａ／ｃｍ2で１
００秒間直流電解エッチングした後、同液中で１２分間
ケミカルエッチングを施し、エッチングによる溶解量お
よび引張強度を調べた。
【００２５】次いで、これらのエッチド箔に対し、５％
ほう酸浴中で３５０Ｖで化成処理を行った後３wt％ほう
酸アンモニウム中で静電容量を測定した。
ほう酸浴中で３５０Ｖで化成処理を行った後３wt％ほう
酸アンモニウム中で静電容量を測定した。
【００２６】圧延箔の平均結晶粒径および立方体方位占
有率、エッチングによる溶解量、エッチド箔の引張強
度、静電容量を、表２に併せて示す。なお、溶解量およ
び静電容量は比較例４をそれぞれ１００％とした相対値
で示す。立方体方位からの方位差の測定については，Ｅ
ＢＳＰ（Electron Back Scattering Pattern）法により
行った。
有率、エッチングによる溶解量、エッチド箔の引張強
度、静電容量を、表２に併せて示す。なお、溶解量およ
び静電容量は比較例４をそれぞれ１００％とした相対値
で示す。立方体方位からの方位差の測定については，Ｅ
ＢＳＰ（Electron Back Scattering Pattern）法により
行った。
【００２７】
【表１】
【００２８】
【表２】
【００２９】表１、２の結果から、箔の化学組成、ある
いはさらに結晶組織を規定することにより拡面率を増大
させて高い静電容量が得られることを確認できた。ま
た、最終焼鈍温度を規定することにより、エッチング特
性に優れた結晶組織に制御できることを確認できた。
いはさらに結晶組織を規定することにより拡面率を増大
させて高い静電容量が得られることを確認できた。ま
た、最終焼鈍温度を規定することにより、エッチング特
性に優れた結晶組織に制御できることを確認できた。
【００３０】
【発明の効果】以上の次第で、この発明の電解コンデン
サ電極用アルミニウム材は、化学組成において、Ａｌ純
度：９９．９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、
Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含
有するとともに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１
種を２６ｐｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含
有し、Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアル
ミニウムおよび不純物からなるものであるから、エッチ
ング時に過剰溶解を生じさせることなくエッチングピッ
トを高密度かつ均一に発生させて、拡面率を増大させる
ことができる。そして、このような拡面率の増大により
静電容量の向上を図ることができる。また、上記組成に
加えて、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１
種を０．３ｐｐｍ以上、かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍ
を含有するアルミニウム材では、さらにエッチング特性
が向上してエッチングによる拡面率の増大を図ることが
できる。
サ電極用アルミニウム材は、化学組成において、Ａｌ純
度：９９．９６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、
Ｆｅ：２〜１５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含
有するとともに、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１
種を２６ｐｐｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含
有し、Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアル
ミニウムおよび不純物からなるものであるから、エッチ
ング時に過剰溶解を生じさせることなくエッチングピッ
トを高密度かつ均一に発生させて、拡面率を増大させる
ことができる。そして、このような拡面率の増大により
静電容量の向上を図ることができる。また、上記組成に
加えて、Ｐｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１
種を０．３ｐｐｍ以上、かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍ
を含有するアルミニウム材では、さらにエッチング特性
が向上してエッチングによる拡面率の増大を図ることが
できる。
【００３１】また、この発明の電解コンデンサ電極用ア
ルミニウム箔は、前記化学組成に加えて、平均結晶粒径
が３００μｍ以下であるとともに、箔表面において、立
方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以
下の結晶粒の面積が７５％以上を占めるものであるか
ら、エッチングによる拡面率の増大を確かなものとして
静電容量の向上を図ることができる。
ルミニウム箔は、前記化学組成に加えて、平均結晶粒径
が３００μｍ以下であるとともに、箔表面において、立
方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°以
下の結晶粒の面積が７５％以上を占めるものであるか
ら、エッチングによる拡面率の増大を確かなものとして
静電容量の向上を図ることができる。
【００３２】さらに、この発明の電解コンデンサ電極用
アルミニウム箔の製造方法は、上記化学組成を有するア
ルミニウム材に対し、箔圧延後の最終焼鈍を３８０〜５
５０℃の範囲で行うものであるから、平均結晶粒径、箔
表面の立方体方位占有率といった箔の結晶組織を上記範
囲に制御することができる。
アルミニウム箔の製造方法は、上記化学組成を有するア
ルミニウム材に対し、箔圧延後の最終焼鈍を３８０〜５
５０℃の範囲で行うものであるから、平均結晶粒径、箔
表面の立方体方位占有率といった箔の結晶組織を上記範
囲に制御することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｃ２２Ｆ 1/04 Ｈ０１Ｇ 9/04 ３４６ (72)発明者 渡邊 潔 堺市海山町６丁224番地 昭和アルミニウ ム株式会社内 (72)発明者 山ノ井 智明 堺市海山町６丁224番地 昭和アルミニウ ム株式会社内 (72)発明者 張 進 堺市海山町６丁224番地 昭和アルミニウ ム株式会社内
Claims (5)
- 【請求項１】 化学組成において、Ａｌ純度：９９．９
６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１
５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するととも
に、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐ
ｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有
量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよ
び不純物からなることを特徴とする電解コンデンサ電極
用アルミニウム材。 - 【請求項２】 化学組成において、Ａｌ純度：９９．９
６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１
５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するととも
に、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐ
ｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有し、Ｐ
ｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を０．３
ｐｐｍ以上、かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍを含有し、
Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウ
ムおよび不純物からなることを特徴とする電解コンデン
サ電極用アルミニウム材。 - 【請求項３】 化学組成において、Ａｌ純度：９９．９
６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１
５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するととも
に、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐ
ｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍ含有し、Ｂ含有
量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウムおよ
び不純物からなるアルミニウム箔であって、平均結晶粒
径が３００μｍ以下であるとともに、箔表面において、
立方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が１０°
以下の結晶粒の面積が７５％以上を占めることを特徴と
する電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。 - 【請求項４】 化学組成において、Ａｌ純度：９９．９
６％以上であり、Ｓｉ：２〜２０ｐｐｍ、Ｆｅ：２〜１
５ｐｐｍ、Ｃｕ：２０〜２００ｐｐｍを含有するととも
に、Ｔｉ、Ｚｒ、Ｖのうちの少なくとも１種を２６ｐｐ
ｍ以上、かつ合計で２６〜１００ｐｐｍを含有し、Ｐ
ｂ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｂのうちの少なくとも１種を０．３
ｐｐｍ以上、かつ合計で０．３〜３０ｐｐｍを含有し、
Ｂ含有量が３ｐｐｍ以下に規制され、残部がアルミニウ
ムおよび不純物からなるアルミニウム箔であって、平均
結晶粒径が３００μｍ以下であるとともに、箔表面にお
いて、立方体方位｛１００｝〈００１〉からの方位差が
１０°以下の結晶粒の面積が７５％以上を占めることを
特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。 - 【請求項５】 請求項１または２の化学組成を有するア
ルミニウム材に対し、箔圧延後の最終焼鈍を３８０〜５
５０℃の範囲で行うことを特徴とする電解コンデンサ電
極用アルミニウム箔の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP33548299A JP4916605B2 (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびアルミニウム箔、ならびにアルミニウム箔の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP33548299A JP4916605B2 (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびアルミニウム箔、ならびにアルミニウム箔の製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2001155970A true JP2001155970A (ja) | 2001-06-08 |
| JP4916605B2 JP4916605B2 (ja) | 2012-04-18 |
Family
ID=18289076
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP33548299A Expired - Lifetime JP4916605B2 (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 電解コンデンサ電極用アルミニウム材およびアルミニウム箔、ならびにアルミニウム箔の製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP4916605B2 (ja) |
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| EP1541704A1 (en) * | 2002-06-28 | 2005-06-15 | Showa Denko K.K. | Process for producing aluminum material for electrolytic capacitor electrode, aluminum material for electrolytic capacitor electrode and electrolytic capacitor |
| JP2009062594A (ja) * | 2007-09-07 | 2009-03-26 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | アルミニウム箔材 |
| JP2009062595A (ja) * | 2007-09-07 | 2009-03-26 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | アルミニウム箔材 |
| JP2010100917A (ja) * | 2008-10-27 | 2010-05-06 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔 |
-
1999
- 1999-11-26 JP JP33548299A patent/JP4916605B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| EP1541704A1 (en) * | 2002-06-28 | 2005-06-15 | Showa Denko K.K. | Process for producing aluminum material for electrolytic capacitor electrode, aluminum material for electrolytic capacitor electrode and electrolytic capacitor |
| EP1541704A4 (en) * | 2002-06-28 | 2006-05-24 | Showa Denko Kk | PROCESS FOR PRODUCING ALUMINUM MATERIAL FOR ELECTROLYTIC CAPACITOR ELECTRODE, ALUMINUM MATERIAL FOR ELECTROLYTIC CAPACITOR ELECTRODE AND ELECTROLYTIC CAPACITOR |
| JP2009062594A (ja) * | 2007-09-07 | 2009-03-26 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | アルミニウム箔材 |
| JP2009062595A (ja) * | 2007-09-07 | 2009-03-26 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | アルミニウム箔材 |
| JP2010100917A (ja) * | 2008-10-27 | 2010-05-06 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔 |
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP4916605B2 (ja) | 2012-04-18 |
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